説明

抗菌防臭靴および中敷き

【課題】 靴を履いた状態で抗菌・防臭作用を示す抗菌防臭靴および中敷きを提供する。
【解決手段】 抗菌防臭靴10内には、圧電素子21と、紫外線発光ダイオード22が装着されている。人の歩行・運動によって生ずる圧力変化を利用して圧電素子21が発電し、その電気エネルギーで紫外線発光ダイオード22を発光させる。こうして紫外線発光ダイオード22から放出される紫外線により、靴内での雑菌の発生や増殖、異臭の発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌防臭靴および中敷きに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、靴を履いた状態では、靴の内部は体温により温められ、足から出る汗により湿度が高くなり、また皮脂等の分泌等によって汚れるために、微生物が容易に繁殖し、悪臭を発するようになる。また、こうして使用された靴は、使用後に適切に管理しないと、カビの発生を招くこともある。そこで近年では、例えば、靴の中敷きに活性炭等の消臭剤を含ませたり、靴の素材に光(紫外線)を浴びることによって抗菌作用を示す触媒を分散させる等の抗菌(殺菌)・防臭加工が施されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、活性炭等には使用寿命があるために、定期的に交換しなければならず、しかもその防臭効果は経時的に低下する。また、抗菌触媒は光が照射されなければ抗菌(または殺菌)効果を示さないために、非使用時に紫外線を含む光に所定時間あてるという処理を行わなければならず、靴を履いている状態では抗菌効果を示さないと考えられる。
【特許文献1】特開2004−41385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、靴を履いた状態で抗菌・防臭作用を示す抗菌防臭靴および中敷きを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点によれば、靴内に装着され、人の歩行・運動によって生ずる圧力変化によって発電する圧電素子と、前記圧電素子で発生した電気エネルギーを利用して所定波長の紫外線を発光する紫外線発光素子と、を有することを特徴とする抗菌防臭靴、が提供される。
【0006】
ここで、紫外線発光素子は、紫外線が靴の内部空間に放射されるように、適所に配置することができ、例えば、靴を履いた際に足指の付け根に対応する部分に配設されていることが好ましい。抗菌防臭靴の内側に紫外線が照射されることによって抗菌作用を示す光触媒を分散させることも好ましい。さらに、紫外線発光素子から発光される紫外線を所定位置へ導くための導波部材(例えば、光ファイバ、ガラスビーズ等)をさらに具備し、この導波部材によって、紫外線発光素子から離れた場所で紫外線が靴内に放射される構成とすることも好ましい。なお、紫外線発光素子としては紫外線発光ダイオード(UV−LED)が好適に用いられる。
【0007】
本発明の第2の観点によれば、靴内に装着され、人の歩行・運動によって生ずる圧力変化によって発電する圧電素子と、前記圧電素子で発生した電気エネルギーを利用してオゾンを発生するオゾナイザと、を有することを特徴とする抗菌防臭靴、が提供される。
【0008】
上記第1の観点および第2の観点に係る抗菌防臭靴において、圧電素子は靴底部や中敷きに設けることができる。
【0009】
本発明の第3の観点によれば、靴内に装着される中敷きであって、人の歩行・運動によって生ずる圧力変化によって発電する圧電素子と、前記圧電素子で発生した電気エネルギーを利用して所定波長の紫外線を発光する紫外線発光素子および/またはオゾンを発生するオゾナイザと、を有することを特徴とする中敷き、が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗菌防臭靴によれば、人が靴を履いている状態で、靴内に紫外線またはオゾンを放出させることができるために、靴を履いている状態で抗菌・防臭効果を得ることができる。つまり、靴を履いているときに足を衛生的に保持することができ、また、靴内での雑菌の発生や繁殖、異臭の発生を抑制することができる。また、本発明に係る中敷きは、活性炭含有中敷き等のように定期的に新品と交換する必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に抗菌防臭靴10の概略断面図を示し、図2に抗菌防臭靴10の内底の概略平面図を示す。抗菌防臭靴10の靴底部15には、圧電素子21と所定数の紫外線発光ダイオード(UV−LED)22が配設されている。
【0012】
圧電素子21としては、円形の圧電セラミックス板23の表裏面に電極24a・24bが形成された構造のものを示しているが、圧電素子21はこれに限定されるものではなく、例えば、四角形や矩形の圧電セラミックス板、このような圧電セラミックス板と金属板等の補強板とを貼り合わせた構造を有するもの(例えば、圧電スピーカに用いられている圧電音響素子や、ユニモルフ素子、バイモルフ素子)を用いることができる。なお、圧電セラミックス板は、いわゆる積層構造(積層コンデンサ型の電極構造)を有していてもよい。
【0013】
紫外線発光ダイオード22は、例えば、所定の電圧が印加されると所定波長の紫外線を発生するもので、例えば、約200〜400nmの波長域の紫外線を放射するものを用いることができる。各紫外線発光ダイオード22は並列接続され、圧電素子21の各電極24a・24bと接続されている。なお、圧電素子21の発電特性に応じて、整流回路(整流ブリッジ回路)や安定化回路(昇圧回路)を設けてもよい。
【0014】
各紫外線発光ダイオード22は、紫外線が抗菌防臭靴10の内部空間に向けて放射されるように配置する。図2には靴を履いた際に足指の付け根(足指の間)に対応する部分において、抗菌防臭靴10の内部空間に突出するように、各紫外線発光ダイオード22を配置した形態が示されている。なお、紫外線発光ダイオード22の配設位置はこれに限定されるものではなく、例えば、足先部等のデッドスペースに配置してもよい。
【0015】
このような抗菌防臭靴10では、人が抗菌防臭靴10を履いて歩行・運動(例えば、走る、足踏みする、ジャンプする等の靴を履いた状態で一般的に行われる動作という)すると、踵から靴底部15に加わる力(押圧力)が変化する。圧電素子21はこの押圧力によって変形し、発電する。こうして圧電素子21で発生した電気エネルギーが紫外線発光ダイオード22に給電され、紫外線発光ダイオード22が紫外線を放射する。
【0016】
抗菌防臭靴10では、こうして紫外線発光ダイオード22から放射される紫外線によって、雑菌の発生や繁殖、異臭の発生を抑制し、また靴内を殺菌することができる。
【0017】
抗菌防臭靴10では、上述の通り、紫外線によって直接的に抗菌・防臭効果を得ることができるが、紫外線が照射されることによって抗菌・殺菌作用を示す光触媒を抗菌防臭靴10靴の内側に分散させておくことも好ましい。その場合には、紫外線による直接的な抗菌・防臭効果に加えて、光触媒の抗菌・殺菌作用によっても、雑菌の発生と繁殖および異臭の発生を抑制することができる。
【0018】
図3に別の抗菌防臭靴11の内底の概略平面図を示す。この抗菌防臭靴11は、図1および図2に示した抗菌防臭靴10に用いられている紫外線発光ダイオード22に代えて、所定の電圧が印加されることによってオゾンを発生するオゾナイザ25を備えた構造を有している。オゾナイザ25は小型の素子であっても一般的に駆動電圧が高いために、昇圧回路(図示せず)が必要となる場合がある。オゾナイザ25は、例えば、靴底部の上側に通気性のある材料が用いられている場合には、その素材の中に埋設することができる。
【0019】
このような抗菌防臭靴11でも、人が抗菌防臭靴11を履いて歩行・運動すると、踵から靴底部15に加わる押圧力によって圧電素子21が発電し、こうして圧電素子21で発生した電気エネルギーがオゾナイザ25に給電されて、オゾンが発生する。発生したオゾンガスが靴内を拡散することで、雑菌の発生や繁殖、異臭の発生が抑制され、また靴内を殺菌することができる。
【0020】
図4は本発明に係る中敷き30の概略平面図である。中敷き30は、その裏面側に圧電素子21が配設され、その表面に突出するように紫外線発光ダイオード22が取り付けられている。このような中敷き30を抗菌防臭靴10・11以外の一般的な靴(抗菌防臭靴効果の小さい靴)に装着することにより、抗菌防臭靴10・11と同等の抗菌防臭効果を得ることができる。また、従来の活性炭等の消臭剤が充填された中敷きのように、定期的に交換する必要もなく、また、防臭特性等の経時劣化も、実質的に起こらない。
【0021】
なお、このような中敷き30では、例えば、紫外線発光ダイオード22を取り付ける位置を、足の形、指の長さ等の個人差に適応させるために、複数位置から選択することができる構成としてもよい。例えば、中敷き30に紫外線発光ダイオード22を取り付けることができる複数の穴部を設け、使用者が紫外線発光ダイオード22を取り付ける位置を決めて、紫外線発光ダイオード22をその穴部に簡単に装着することができるようにする。また、中敷き30と同じ素材等からなり、この穴部に装着することができるパッチを準備し、残りの穴部にこのパッチを装着するようにしてもよい。
【0022】
抗菌防臭靴10に用いられている紫外線発光ダイオード22をオゾナイザ25に代えることによって抗菌防臭靴11としたように、中敷き30に取り付けられている紫外線発光ダイオード22をオゾナイザ25に代えてもよい。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、圧電素子21を配設位置は、図1および図2に示すように、踵の真下部分に限定されるものではない。図5に、土踏まずの下側等の靴のほぼ中央部に、その長手方向に平行にバイモルフ素子等の屈曲変位型圧電素子26が配置された抗菌防臭靴12の内底の概略平面図を示す。この抗菌防臭靴12では、人の歩行・運動等によって靴底部15に生ずる撓みを利用して、屈曲変位型圧電素子26を屈曲させ、発電させることができる。
【0024】
また、紫外線発光ダイオード22は靴の内部空間に露出した形態で配設されなければならないものではない。図6に、紫外線発光ダイオード22で発光した紫外線を、光ファイバ27等の導波部材を用いて中敷き全体に均等に分散させて、靴の内部空間に放射されるように構成された抗菌防臭靴13の内底の概略平面図を示す。この抗菌防臭靴13では、紫外線発光ダイオード22は、例えば、かかと部分等に埋設することができる。このような構成によれば、抗菌防臭作用の効果を靴内で均等に得ることができる。また、紫外線発光ダイオード22の数を少なくすることができ、コストダウンを図ることもできる。
【0025】
なお、光ファイバ27の先端(放出端)には、拡散レンズ等を設けることも好ましい。また、光ファイバ27に代えて、ガラスビーズ等を用いることもできる。中敷き30についても同様の構成に変更することができる。
【0026】
上記説明においては、1つの靴内または中敷きに紫外線発光ダイオード22またはオゾナイザ25のいずれか一方を配設した実施形態について説明したが、1つの靴内または中敷きに、紫外線発光ダイオード22とオゾナイザ25の両方を適所に配設してもよい。
【0027】
本発明に係る抗菌防臭靴および中敷きを使用する際には、例えば、紫外線を照射することによって抗菌・殺菌作用を示すような光触媒が練り込まれた靴下を併用すると、さらに高い抗菌・防臭効果を得ることができる。本発明は、革靴、ウォーキングシューズ等の各種運動靴、スニーカー、ゴム長靴、ブーツ等各種の靴に適用されることは言うまでもない。
【0028】
なお、圧電素子に代えて各種の電池(例えば、ボタン型の一次電池や二次電池)を用いても、靴の抗菌防臭の効果を得ることができる。例えば、靴を履いて歩行等するときに靴に掛かる加速度を利用して、電池からの給電をオン/オフするスイッチを設けると、電池寿命を長く保つことができる。さらに、圧電素子で発電した電気エネルギーを二次電池等に蓄えておいて、靴を脱いだ後に、一定時間、靴内に紫外線やオゾンが放出されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る抗菌防臭靴の概略断面図。
【図2】図1に示す抗菌防臭靴の内底の概略平面図。
【図3】本発明に係る別の抗菌防臭靴の内底の概略平面図。
【図4】抗菌防臭中敷きの概略平面図。
【図5】本発明に係るさらに別の抗菌防臭靴の内底の概略平面図。
【図6】本発明に係るさらに別の抗菌防臭靴の内底の概略平面図。
【符号の説明】
【0030】
10・11・12・13;抗菌防臭靴
15;靴底部
21;圧電素子
22;紫外線発光ダイオード
23;圧電セラミックス板
24a・24b;電極
25;オゾナイザ
26;屈曲変位型圧電素子
27;光ファイバ
30;中敷き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴内に装着され、人の歩行・運動によって生ずる圧力変化によって発電する圧電素子と、
前記圧電素子で発生した電気エネルギーを利用して所定波長の紫外線を発光する紫外線発光素子と、
を有することを特徴とする抗菌防臭靴。
【請求項2】
前記紫外線発光素子は、靴を履いた際に足指の付け根に対応する部分に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の抗菌防臭靴。
【請求項3】
前記紫外線発光素子から発光される紫外線を所定位置へ導くための導波部材をさらに具備し、
前記導波部材によって、前記紫外線発光素子から離れた場所で紫外線が靴内に放射されることを特徴とする請求項1に記載の抗菌防臭靴。
【請求項4】
靴内に装着され、人の歩行・運動によって生ずる圧力変化によって発電する圧電素子と、
前記圧電素子で発生した電気エネルギーを利用してオゾンを発生するオゾナイザと、
を有することを特徴とする抗菌防臭靴。
【請求項5】
靴内に装着される中敷きであって、
人の歩行・運動によって生ずる圧力変化によって発電する圧電素子と、
前記圧電素子で発生した電気エネルギーを利用して所定波長の紫外線を発光する紫外線発光素子および/またはオゾンを発生するオゾナイザと、
を有することを特徴とする中敷き。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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