説明

押下ヘッド

【課題】ノズル筒内に残存した内容液が固化しても、内容液をつまらせること無く良好に吐出する。
【解決手段】上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステム11に装着される有頂筒状の押下部12と、押下部12に前方に向けて突設されるとともに、前端に内容液が吐出される吐出孔13が形成されたノズル筒14と、を備える押下ヘッド1であって、押下部12のうち、少なくとも頂壁18aは、ノズル筒14に対して下方に向けて弾性変位可能に配設され、ノズル筒14内には、頂壁18aに連結されて該頂壁18aの下方移動に伴い前方に移動する突き出し延体30が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押下ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムに装着される有頂筒状の押下部と、該押下部に前方に向けて突設されるとともに、前端に内容液が吐出される吐出孔が形成されたノズル筒と、を備える押下ヘッドが知られている。
この種の押下ヘッドとして、例えば下記特許文献1に示されるような、ノズル筒の内部に、内容液の流動によって前後動させられ吐出孔を開閉する栓体が配設された構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−81052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の押下ヘッドでは、吐出孔が栓体により閉じられていても、ノズル筒内に残存した内容液は固化するおそれがあり、また、栓体が内容液の流動によって前後動させられるので、栓体の前後動が不安定になるおそれもあった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ノズル筒内に残存した内容液が固化しても、内容液をつまらせること無く良好に吐出することができる押下ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の押下ヘッドは、上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムに装着される有頂筒状の押下部と、該押下部に前方に向けて突設されるとともに、前端に内容液が吐出される吐出孔が形成されたノズル筒と、を備える押下ヘッドであって、前記押下部のうち、少なくとも頂壁は、前記ノズル筒に対して下方に向けて弾性変位可能に配設され、前記ノズル筒内には、前記頂壁に連結されて該頂壁の下方移動に伴い前方に移動する突き出し延体が配設されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ノズル筒内に突き出し延体が配設されているので、前回吐出時にノズル筒内に残存した内容液が固化していても、押下ヘッドを押下して内容液を吐出する際に、頂壁の下方移動に伴い突き出し延体が前方に移動させられることによって、ノズル筒内の固化した内容液を、突き出し延体により吐出孔から突き出したり突き崩したりすること等が可能になり、内容液をつまらせること無く良好に吐出することができる。
さらに、突き出し延体が押下部の頂壁に連結されているので、押下部に加えた押下力を突き出し延体に効果的に伝え易くすることが可能になり、突き出し延体を確実に前後動させることができる。
【0008】
ここで、前記押下部の頂壁および突き出し延体は、軟材質により一体に形成され、前記押下部の頂壁は、前記ノズル筒の内部とステムの内部とを接続する接続通路の一部を画成してもよい。
【0009】
この場合、押下部の頂壁が、ノズル筒の内部とステムの内部とを接続する接続通路の一部を画成しているので、押下部を押下してその頂壁を下方に弾性変位させつつ内容液を吐出した後に、押下を解除して押下部の頂壁を上方に復元変位させたときに、接続通路内が負圧になり、ノズル筒内の内容液をステム側に引き込み易くすることが可能になり、ノズル筒内の内容液が吐出孔から垂れ落ちるのを抑制することができるとともに、ノズル筒内の内容液の残存量を低減することができる。
また、押下部の頂壁および突き出し延体が、軟材質により一体に形成されているので、構造を複雑にすることなく前述の作用効果を奏功させることができる。
【0010】
また、前記ノズル筒の内部には、突き出し延体を、上下方向および前後方向の双方向に直交する左右方向の両側から支持する支持体が配設されてもよい。
【0011】
この場合、ノズル筒の内部に支持体が配設されているので、突き出し延体を、例えばノズル筒の内面に突き当てたり折曲変形させたりせずに、押下部の上下動に伴いスムーズに前後動させることができる。
【0012】
さらに、前記支持体は、ノズル筒の内部に、左右方向に間隔をあけて配置されて前後方向に延設された一対の板体により構成されてもよい。
【0013】
この場合、支持体が一対の板体により構成されているので、突き出し延体における支持体との接触箇所を少なく抑えることにより、ノズル筒内の内容液が固化しても、突き出し延体が支持体に密着するのを抑制することが可能になり、押下部の下方移動に伴い突き出し延体を確実に前方に移動させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る押下ヘッドによれば、ノズル筒内に残存した内容液が固化しても、内容液をつまらせること無く良好に吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る一実施形態として示した押下ヘッドを吐出器本体に装着した状態を示す一部断面側面図である。
【図2】図1に示す押下ヘッドのA−A線矢視断面図である。
【図3】図1に示す押下ヘッドを押下した状態を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係る押下ヘッド1は、図1および図3に示すように、上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステム11に装着される有頂筒状の押下部12と、該押下部12に前方に向けて突設されるとともに、前端に内容液が吐出される吐出孔13が形成されたノズル筒14と、を備えている。
【0017】
ここで、押下ヘッド1が装着されるステム11を有する吐出器本体2は、内容液が充填された容器の口部に装着される装着キャップ51と、装着キャップ51の上端に設けられ、押下ヘッド1およびステム11を下降端位置に保持する保持筒52と、装着キャップ51に取り付けられ該装着キャップ51から下方に突出するシリンダ53と、内部がシリンダ53内に連通するとともに該シリンダ53内から上方に起立した前記ステム11と、シリンダ53内に配設されるとともにステム11に連係する図示されないピストンと、を備えている。
【0018】
以上の構成において、装着キャップ51、保持筒52、ステム11、および押下部12それぞれの中心軸は共通軸上に位置している。以下、この共通軸を中心軸Oといい、中心軸Oに直交する方向を径方向といい、さらに中心軸O回りに周回する方向を周方向という。また、径方向のうち、押下部12からノズル筒14が延在する方向を前方といい、これと反対側を後方という。
【0019】
押下部12は、ステム11に外嵌された嵌合筒15と、嵌合筒15を径方向の外側から囲繞する囲繞筒16と、これらの両筒15、16の上端縁同士を連結する連結環板17と、嵌合筒15および連結環板17を上方から一体に覆う天板部18と、を備えている。
【0020】
嵌合筒15の下部の外周面には、吐出器本体2の保持筒52に螺着される雄ねじ部15aが形成され、上部の外周面には、上下方向に延びる突リブ15bが周方向に間隔をあけて複数形成されている。嵌合筒15に、ノズル筒14の後端が接続されていて、ノズル筒14の内部は、嵌合筒15の内部を通してステム11の内部に連通している。
囲繞筒16は、ノズル筒14により前後方向に貫かれ、このノズル筒14の前端に吐出孔13が形成されている。
連結環板17の外周縁部には、上方に向けて支持筒体21が突設されている。
【0021】
天板部18は、上方から下方に向かうに従い漸次縮径された多段の有頂筒状に形成されている。
ここで、ノズル筒14、嵌合筒15、囲繞筒16、および連結環板17は、例えばポリプロピレン等の一般的な樹脂材料で一体に形成され、これら14〜17と天板部18とは別体となっている。
図示の例では、天板部18は、例えばニトリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー若しくはウレタン等の軟材質により2段の有頂筒状に形成され、下側に位置する下側筒部22が、連結環板17の支持筒体21内に嵌合されている。下側筒部22の下部には、径方向の外側に突出して下方に向けて延在し、支持筒体21に外嵌された被支持筒体23が配設されている。なお、被支持筒体23は、支持筒体21にアンダーカット嵌合されている。
【0022】
天板部18のうち、上側に位置する上側筒部24は有頂筒状に形成され、嵌合筒15の上端開口を覆う頂壁18aを有している。この上側筒部24の下端と、下側筒部22の上端と、の間には、環板部25が配設されていて、この環板部25と、上側筒部24の下端、および下側筒部22の上端と、が弾性ヒンジ26を介して各別に連結されている。
これにより、押下部12を押下すると、弾性ヒンジ26が弾性変形することで、押下部12のうち、少なくとも頂壁18aがノズル筒14に対して下方に向けて弾性変位し、この押下を解除すると弾性ヒンジ26が復元変形することで上方に復元変位するようになっている。また図示の例では、押下部12を押下すると、ステム11が上方付勢力に抗して下方移動する前に、頂壁18aがノズル筒14に対して下方移動するようになっている。
【0023】
ここで、連結環板17のうち、ノズル筒14が直下に位置する前側部分には、ノズル筒14の内部に向けて開口し、該ノズル筒14の内部と押下部12の天板部18の内側とを連通する連通開口19が形成されている。これにより、押下部12の天板部18は、ノズル筒14の内部とステム11の内部とを接続する接続通路の一部を画成している。なお、連通開口19は、ノズル筒14の内部と嵌合筒15の内部とを前後方向に連通する接続開口20と一体に形成されている。さらに図示の例では、連通開口19および接続開口20は、嵌合筒15の上端開口と一体に形成されている。
【0024】
そして本実施形態では、ノズル筒14内に、押下部12の頂壁18aに連結されて該頂壁18aの下方移動に伴い前方に移動する突き出し延体30が配設されている。
図示の例では、突き出し延体30は、前後方向に延在しかつ弾性変形自在に形成された中実の棒体となっている。また、押下部12の頂壁18aおよび突き出し延体30は、前述の軟材質により一体に形成されている。突き出し延体30は、天板部18の頂壁18aから下方に延在し、嵌合筒15の上端開口および接続開口20を通してノズル筒14内に至っている。
【0025】
ここで、突き出し延体30は、ノズル筒14内を前後動する際に、嵌合筒15において、その上端開口および接続開口20が位置する上端部の内周面のうち、上下方向および前後方向の双方向に直交する左右方向で対向する対向部分を摺動するようになっている。
そして、突き出し延体30の前端は、吐出孔13よりも後方に位置していて、押下部12を押下して内容液を吐出するときに、吐出孔13に到達するようになっている。なお、図示の例では、突き出し延体30は、押下部12の押下時に、前端が、吐出孔13の開口面上に位置するように配設されている。
ここで、押下部12を押下すると、前述したように、ステム11が下方移動する前に、頂壁18aがノズル筒14に対して下方移動するようになっているので、押下部12の押下時には、容器内の内容液がステム11の上端開口から流出する前に、突き出し延体30が前方に移動されるようになっている。
【0026】
ノズル筒14の内部には、突き出し延体30を左右方向の両側から支持する支持体31が配設されている。突き出し延体30は、ノズル筒14内を前後動するときに、支持体31上を摺動するようになっている。また支持体31は、図2に示されるように、ノズル筒14の内部に、左右方向に間隔をあけて配置されて前後方向に延設された一対の板体により構成されている。
なお、支持体31の前後方向の端部は、前後方向の内側から外側に向かうに従い漸次、上方に向けた突出高さが低くなっている。また、支持体31の前端部は、後端部よりもノズル筒14の内面から急峻に上方に向けて突出している。さらに、支持体31の前端は、吐出孔13よりも後方に位置し、支持体31の後端は、ノズル筒14の後端に位置している。
また、嵌合筒15の上端部の内周面における前記対向部分を、支持体31と左右方向で同じ位置に配置することが好ましい。
【0027】
以上説明したように、本実施形態による押下ヘッド1によれば、ノズル筒14内に突き出し延体30が配設されているので、前回吐出時にノズル筒14内に残存した内容液が固化していても、押下ヘッド1を押下して内容液を吐出する際に、頂壁18aの下方移動に伴い突き出し延体30が前方に移動させられることによって、ノズル筒14内の固化した内容液を、突き出し延体30により吐出孔13から突き出したり突き崩したりすること等が可能になり、内容液をつまらせること無く良好に吐出することができる。
さらに本実施形態では、押下部12を押下すると、まず突き出し延体30が前方に移動され、その後に、容器内の内容液がステム11内を通してノズル筒14内に到達するので、ノズル筒14内に固化した内容液があったとしても、まずこれを吐出孔13から突き出す等した後に、内容液をノズル筒14内に至らせることが可能になり、より一層確実に良好な吐出を実現することができる。
さらに、突き出し延体30が押下部12の頂壁18aに連結されているので、押下部12に加えた押下力を突き出し延体30に効果的に伝え易くすることが可能になり、突き出し延体30を確実に前後動させることができる。
【0028】
また、押下部12の頂壁18aが、ノズル筒14の内部とステム11の内部とを接続する接続通路の一部を画成しているので、押下部12を押下してその頂壁18aを下方に弾性変位させつつ内容液を吐出した後に、押下を解除して押下部12の頂壁18aを上方に復元変位させたときに、接続通路内が負圧になり、ノズル筒14内の内容液をステム11側の後方に引き込み易くすることが可能になり、ノズル筒14内の内容液が吐出孔13から垂れ落ちるのを抑制することができるとともに、ノズル筒14内の内容液の残存量を低減することができる。
また、押下部12の頂壁18aおよび突き出し延体30が、軟材質により一体に形成されているので、構造を複雑にすることなく前述の作用効果を奏功させることができる。
【0029】
さらに、ノズル筒14の内部に支持体31が配設されているので、突き出し延体30を、例えばノズル筒14の内面に突き当てたり折曲変形させたりせずに、押下部12の上下動に伴いスムーズに前後動させることができる。
また、支持体31が一対の板体により構成されているので、突き出し延体30における支持体31との接触箇所を少なく抑えることにより、ノズル筒14内の内容液が固化しても、突き出し延体30が支持体31に密着するのを抑制することが可能になり、押下部12の下方移動に伴い突き出し延体30を確実に前方に移動させることができる。
【0030】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0031】
例えば前記実施形態では、押下部12の頂壁18aおよび突き出し延体30を一体に形成したが、互いに別体としてもよいし、これらの天板部18および突き出し延体30は、例えば硬質の合成樹脂材料等で形成してもよい。また、突き出し延体30は筒体であってもよい。
また前記実施形態では、突き出し延体30が前進端位置に位置したときに、その前端を吐出孔13に至らせるようにしたが、吐出孔13よりも後方に位置させたままにしてもよく、吐出孔13よりも前方に位置させるようにしてもよい。
さらに、押下部12の天板部18は、前記実施形態に限らず適宜変更してもよい。
また、前記実施形態では、支持体31として、左右方向に間隔をあけて配置されて前後方向に延設された一対の板体を示したが、例えば、上面に、下方に向けて曲面をなして窪み前後方向に延びる凹条部が形成されたブロック体等としてもよい。
さらに、突き出し延体30の前端部に、該突き出し延体30の前後動に伴って吐出孔13を開閉する栓体を配設し、ノズル筒14内の内容物が固化することを抑制するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、弾性ヒンジ26が弾性変形することで、押下部12のうち、少なくとも頂壁18aがノズル筒14に対して上下方向に弾性変位する構成を示したが、これに代えて例えば、頂壁18aと、嵌合筒15若しくは連結環板17と、の間に、頂壁18aを上方付勢状態で下方移動可能に支持する例えばスプリング等の弾性部材を配設してもよい。
【0032】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
ノズル筒内に残存した内容液が固化しても、内容液をつまらせること無く良好に吐出することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 押下ヘッド
11 ステム
12 押下部
13 吐出孔
14 ノズル筒
18a 頂壁
30 突き出し延体
31 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムに装着される有頂筒状の押下部と、
該押下部に前方に向けて突設されるとともに、前端に内容液が吐出される吐出孔が形成されたノズル筒と、
を備える押下ヘッドであって、
前記押下部のうち、少なくとも頂壁は、前記ノズル筒に対して下方に向けて弾性変位可能に配設され、
前記ノズル筒内には、前記頂壁に連結されて該頂壁の下方移動に伴い前方に移動する突き出し延体が配設されていることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の押下ヘッドであって、
前記押下部の頂壁および突き出し延体は、軟材質により一体に形成され、前記押下部の頂壁は、前記ノズル筒の内部とステムの内部とを接続する接続通路の一部を画成していることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の押下ヘッドであって、
前記ノズル筒の内部には、突き出し延体を、上下方向および前後方向の双方向に直交する左右方向の両側から支持する支持体が配設されていることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項4】
請求項3記載の押下ヘッドであって、
前記支持体は、ノズル筒の内部に、左右方向に間隔をあけて配置されて前後方向に延設された一対の板体により構成されていることを特徴とする押下ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71771(P2013−71771A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213898(P2011−213898)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】