説明

拡大撮像アダプタ

【課題】ズーム機能による手軽な倍率変更を有効に活かしつつ、汎用的なビデオカメラにおけると同様な撮像と“ビデオ顕微鏡”におけるような高倍率での拡大撮像を必要に応じて手軽に使い分けることができる撮像具の提供。
【解決手段】ズーム機能を有するカメラユニットを内蔵の撮像具本体1に補助レンズ16を有する拡大撮像アダプタ2を組み合わせた構造とし、拡大撮像アダプタの補助レンズを、例えば拡大撮像アダプタを撮像具本体に装着し、また取り外すことで、カメラユニットへの像光の入射経路から外した状態での撮像具本体による撮像と、補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路に位置決めさせた状態での拡大撮像とを選択的に行えるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像具乃至拡大撮像アダプタに関し、より詳しくは通常のビデオカメラ的な撮像と高倍率な拡大撮像を選択的に行うことのできる撮像具乃至拡大撮像アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
最近は小型で高性能なビデオカメラが汎用化され、広く一般に使われるようになっている。この汎用的なビデオカメラは、一般的にオートフォーカス機能と共に通常10倍程度のズーム比を持つズーム機能を備えており、このズーム比の範囲で所望の大きさの影像を自由に得ることを可能とし、ビデオ映像分野に大きな広がりをもたらしている。ただ汎用的なビデオカメラは、日常的な大きさの影像(一般にディスプレイ画面上の像として1倍以下である影像)を基準としており、したがって一般的なビデオカメラでは例えば数倍〜数百倍と言った顕微鏡レベルに拡大した影像を得ることはできない。
【0003】
一方、ビデオカメラは、例えば理容や美容管理のための肌や毛髪の拡大観察、あるいは皮膚の病変組織などの拡大観察、さらには工業製品の微小な欠陥の検査などのために“ビデオ顕微鏡”としても広く利用されている。これらの特殊ビデオカメラは、例えば特開平1−308527号公報や特開平2−207401号公報などにおいて知られているが、これらは何れも光学系が専用化されているために、通常のビデオカメラ的な撮像を行うことが出来ず、高倍率の拡大影像しか得ることができない。
【0004】
ところで、上記のような各種の観察や検査については、単に目的部分の拡大観察だけでなく、その目的部分を全体との関係で観察や検査する必要のある場合が少なくない。例えば肌のしみやしわの観察であれば、そのしみやしわが顔のどの部分にあるかを先ず撮像し、それからしみやしわの拡大撮像を行うようにし、また皮膚の病変部分の治療に際して患者に病変の状態や治療過程を説明したりするのに用いる場合にも、全体像と拡大部分像を組み合わせることが非常に有用である。また工業製品の検査であれば、微小な欠陥を持つ製品の全体像からその欠陥が製品のどの部分にあるかを示すようにすることが望まれる。
【0005】
しかるに上記のように従来の“ビデオ顕微鏡”は、高倍率での拡大撮像しか行えず、また一般的なビデオカメラは、高倍率での撮像を行えない。そのため上記のような要求に簡単に対応できず、また拡大撮像用の“ビデオ顕微鏡”と通常倍率撮像用の一般的なビデオカメラの2種類を使い分けることで対応するにしても、扱いが面倒になるなどとかく不便が多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような事情を背景になされたのが本発明で、ズーム機能による手軽な倍率変更を有効に活かしつつ、汎用的なビデオカメラにおけると同様な撮像と“ビデオ顕微鏡”におけるような高倍率での拡大撮像を必要に応じて手軽に使い分けることができる撮像具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による撮像具は、ズーム機能を有するカメラユニットを内蔵の撮像具本体と、所定の拡大倍率を持つ補助レンズを有し、この補助レンズを撮像具本体におけるカメラユニットへの像光の入射経路に対し選択的に位置決め可能とする拡大撮像アダプタと、撮像具本体又は拡大撮像アダプタに組み込まれた照明手段とを備えてなり、補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路から外した状態での撮像具本体による撮像と、補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路に位置決めさせた状態で、照明手段により撮像対象物を照明しつつ行う拡大撮像とを選択的に行えるようにしてなっている。
【0008】
この撮像具は、補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路から外した状態で用いると通常一般のビデオカメラ的な撮像、つまりディスプレイ画面上での再生像として1倍以下の大きさの影像が得られ、また比較的離れた位置から対象物を撮像するような撮像を行うことができる。それには、一般的なビデオカメラの使い方と同様に撮像具本体を手に持ち、ズーム機能における最近接可能距離の範囲で自由な距離から撮像する。
【0009】
一方、補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路に位置決めさせた状態とすると、補助レンズが与える拡大倍率に応じた高倍率での拡大撮像をズーム機能におけるズーム比の範囲で可変的に行うことができる。ここで「高倍率」とは、上記通常撮像における1倍以下に比べ大きな拡大となる5倍程度以上に拡大する場合を実質的に意味している。
【0010】
上記のような撮像具については、補助レンズに関し物体距離を固定的に与える物体距離固定部を拡大撮像アダプタに設けると共に、この拡大撮像アダプタを撮像具本体に対し着脱可能とし、そして拡大撮像に際してはこの拡大撮像アダプタを撮像具本体に装着することで補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路に位置決めさせ、その物体距離固定部の先端を撮像対象物に当接させた状態で撮像できるようにする構造が可能である。
【0011】
この構造によると、物体距離を物体距離固定部により固定化することで、高倍率での撮像の場合に受け易い手振れの影響をなくすことが可能となる。即ち物体距離固定部の先端を撮像対象物乃至これを支持する支持物に当接させた状態として物体距離を固定化することで、手振れの影響を解消でき、高倍率での撮像を安定的に行うことができる。
【0012】
また上記のような撮像具については、拡大撮像アダプタにおける補助レンズを移動可能とし、この移動により補助レンズを撮像具本体におけるカメラユニットへの像光の入射経路に対し選択的に位置決め可能とさせる構造も可能である。
【0013】
この構造は、拡大撮像アダプタをその都度取り付けたり取り外したりする手間が省けるという利点がある。この補助レンズを移動する方式についても、拡大撮像アダプタに物体距離固定部を設けることが可能で、そうすることで上記と同様な利点が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、汎用的なズーム機能による手軽な倍率変更を有効に活かしつつ、通常倍率での撮像と高倍率での拡大撮像を必要に応じて手軽に使い分けることができるので、ビデオ映像分野にさらに大きな広がりをもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施例を説明する。第1の実施例による撮像具は、図1〜図4に示すように、撮像具本体1とこれに着脱可能とした拡大撮像アダプタ2よりなっている。
【0016】
撮像具本体1は、片手に軽く握れる程度のサイズの箱状に形成したケーシング3で覆われている。ケーシング3の内部には、図3に見られるように、カメラユニット4及び制御ユニット5が内蔵され、またケーシング3の先端側には筒状の像光路6が設けられ、この像光路6の先端側前方を囲むようにして照明手段7が設けられ、その前面には第1偏光子8が設けられている。また像光路6には振動面回転手段9と第2偏光子10が設けられている。さらにケーシング3の外側面には、図1〜図3に見られるように、画像操作スイッチ11、偏光操作スイッチ12、ズーム操作スイッチ13及び照明操作スイッチ14が設けられている。
【0017】
カメラユニット4は、CCDとこれの制御処理機構、それに電動ズーム機構及びオートフォーカス機構をユニット化して形成されている。
【0018】
照明手段7は、高倍率での撮像や後述の偏光利用の通常撮像の際に撮像対象物の照明に用いられる。この例の照明手段7は、馬蹄状の蛍光灯が用いられ、これと相似形の反射カバー7cで囲った構造とされ、像光路6の周囲からほぼ円形状に照明光を前方に照射できるように配されていている。そしてそこからの照明光はその前方に配された第1偏光子8により偏光化されて対象物を照明する。
【0019】
第2偏光子10は、像光路6からカメラユニット4に入射する影像光から偏光成分を遮断するように機能する。そしてこれにより表面反射光を除いた無反射影像を得ることができる。つまり照明手段7からの照明光は上述のように第1偏光子8により偏光化されて撮像対象物を照明するが、この偏光化した照明光で照明された撮像対象物からの影像光には、その表面で反射してその偏光状態を保っている影像光と非表面反射することで自然光化した影像光が混じっている。そこで偏光操作スイッチ12で振動面回転手段9を作動させて偏光影像光を第2偏光子10で遮断すると表面反射光が除かれ、無反射影像を得ることができ、また偏光影像光の遮断を行わなければ表面反射光を含んだ影像を得ることができる。
【0020】
制御ユニット5は、照明手段7の点灯制御回路を含み、また画像メモリ及び画像固定化制御用の制御手段を含んでいる。そして点灯制御回路で照明手段7の点灯制御を行い、また撮像ユニットが出力する画像信号を画像メモリを介して図外のディスプレイに出力し、さらに画像固定化制御用の制御手段により、画像操作スイッチ11の操作に応じて画像メモリへの画像データの取り込みを停止すると同時に、最後に取り込んだ画像データをディスプレイ装置へ繰り返して出力する画像固定化制御を行うようになっている。
【0021】
拡大撮像アダプタ2は、フード体15に補助レンズ16を保持させた構造となっている。フード体15は、全体として先細りの角筒状に形成され、先端に像光取入れ開口17が設けられると共に、基端側の内部にはブラケット部18が設けられ、このブラケット部18に補助レンズ16を保持している。またフード体15は、ブラケット部18に保持した補助レンズ16と像光取入れ開口17の間に所定の間隔W(図3)が与えられ、この間隔Wに対応する部分が物体距離固定部19とされ、その先端、つまり像光取入れ開口17を撮像対象物の撮像対象部位に当接させることで補助レンズ16に関する物体距離をWとして固定的に設定するのに機能するようにされている。さらにフード体15は、基端部がケーシング3の先端部の形状と対応する形状とされ、ケーシング3の先端部に設けてある接続受け部20(図2)を介して撮像具本体1に着脱可能に接続できるようにされている。なおこの拡大撮像アダプタ2における補助レンズ15は、数cm程度の焦点距離を持ち、10倍程度の拡大能を持つレンズ設計としてある。したがってズーム比10との組み合わせにより10〜100倍の拡大倍率が可能となる。
【0022】
以上のような撮像具を用いて通常倍率での撮像を行うには、図2の状態の撮像具本体1だけを用い、撮像具本体1を手に握って操作しつつ目的の撮像対象物に向けて必要な調整を行いながらその像を取り込む。この調整は、操作者が適当と思う影像サイズや撮像アングルの選択で、この操作の間に取り込まれて連続的にディスプレイ装置に表示される影像を見ながら、撮像対象物と撮像具本体1の距離関係やズーム操作スイッチ13でズーム状態を調節して進める。これが済んだ、つまり得られる影像が操作者の望む状態になったら、そこで画像操作スイッチ11を操作する。すると、前述のような画像固定化制御が発動され画像操作スイッチ11の操作時点での画像が目的の提示資料として固定的にディスプレイ装置に表示される。
【0023】
この撮像具本体1だけを用いての撮像の場合には基本的には外部光を照明光とするが、照明手段7による照明光が有効に働く範囲の物体距離で撮像する場合には、照明手段7を利用して上述の無反射撮像を行うこともできる。
【0024】
一方高倍率での拡大撮像の場合には、図1のように拡大撮像アダプタ2を撮像具本体1に接続して用い、拡大撮像アダプタ2のフード体16の先端を撮像対象物に当接させた状態とし、照明操作スイッチ14の操作で点灯させた照明手段7により撮像対象物を照明して撮像する。この場合にも必要に応じてズーム調節や画像固定化を行うことは上述と同様である。
【0025】
図5及び図6に示すのは、本発明の第2の実施例による撮像具である。この例の撮像具は、基本的には上記実施例の撮像具と同様であるが、その拡大撮像アダプタ30の構造において相違がある。即ち拡大撮像アダプタ30は、撮像具本体1に予め取り付けてあり、上記実施例の場合と同様にして物体距離固定部31を形成するフード体32にガイド部32gを介してレンズ保持体33を図6中の矢印Xの如くスライド可能に保持させた構造とされ、このレンズ保持体33を操作レバ34の操作で移動させることで、それが保持している補助レンズ16に図6に実線で示す状態つまりカメラユニット4への像光の入射経路に位置決めさせた状態と、図6に二点鎖線で示す状態つまりカメラユニットへの像光の入射経路から外した状態とを選択的に取らせることができるようにされている。
【0026】
したがってこの撮像具では、通常倍率での撮像は、補助レンズ16を図6に二点鎖線で示す状態として撮像し、一方高倍率での拡大撮像は、補助レンズ16を図6に実線で示す状態として撮像することになる。なおその他の構成は上記実施例と同様であるので、共通する部分を同一符号で示してそれらの説明を省略している。
【0027】
なお以上の各実施例では、照明手段を撮像具本体に設けるようにしているが、必要に応じて拡大撮像アダプタに照明手段を組み込むようにしても基本的な機能要求を満足させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施例による撮像具の一部破断を含む斜視図。
【図2】図1の撮像具の撮像具本体の斜視図。
【図3】図1の撮像具の内部構造を示す一部省略の断面図。
【図4】図1の撮像具の内部構造を示す一部省略の断面図。
【図5】本発明の第2の実施例による撮像具の図3相当の断面図。
【図6】図5の撮像具における補助レンズの移動機構についての説明図。
【符号の説明】
【0029】
1 撮像具本体
2 拡大撮像アダプタ
4 カメラユニット
7 照明手段
16 補助レンズ
19 物体距離固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズーム機能を有するカメラユニットを有する撮像具本体に取り付けて用いる拡大撮像アダプタであって、
所定の拡大倍率を持つ補助レンズと、
前記撮像具本体に脱着自在な固定を行う固定手段と、
照明を行う照明手段と、
を備えてなり、
前記補助レンズは、前記撮像具本体に前記固定手段が固定されたときに、前記撮像具本体におけるカメラユニットへの像光の入射経路に対して位置決めされるようにされ、
前記補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路から外した状態での撮像と、前記補助レンズをカメラユニットへの像光の入射経路に位置決めさせた状態で、前記照明手段により撮像対象物を照明しつつ行なう拡大撮像とを、前記撮像具本体に選択的に行わせることができるようになっているとともに、
前記補助レンズに撮像対象物までの物体距離を固定的に与える物体距離固定部を備えており、
拡大撮像に際しては前記撮像具本体に装着された前記拡大撮像アダプタの前記物体距離固定部の先端を撮像対象物に当接させた状態で撮像できるようになっている、
拡大撮像アダプタ。
【請求項2】
前記補助レンズは移動可能とされており、この移動により前記補助レンズが前記撮像具本体におけるカメラユニットへの像光の入射経路に対し選択的に位置決め可能となっている、
請求項1に記載の拡大撮像アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−179081(P2007−179081A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91698(P2007−91698)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【分割の表示】特願2004−345036(P2004−345036)の分割
【原出願日】平成7年3月8日(1995.3.8)
【出願人】(300053553)スカラ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】