説明

拡径掘削用バケット

【課題】機械高さを低くできる拡径掘削用バケットを得る。
【解決手段】底蓋96におけるヒンジ94の回転中心位置が底蓋96の外周縁よりも内側の位置にあるので、開放された底蓋96のヒンジ94の位置から底蓋96の外周縁までの距離が、底蓋96の最大外径の距離よりも短くなる。このため、ヒンジ94を底蓋96の端部に設けたものと比べて、拡径バケット10を地上面に引き上げたときの拡径バケット10の外周縁から地上面までの距離を短く設定することができ、掘削機27の機械高さを低く抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の基礎となる場所打ちコンクリート拡底杭の施工に用いる拡径掘削用バケットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、構造物の大型化、高層化に伴い、基礎杭には高い鉛直支持性能が要求されており、大口径の拡底杭が用いられている。
【0003】
拡底杭の施工には、鉛直方向に掘削された軸穴において、回転しながら軸半径方向に拡径して掘削を行う各種構成の拡径掘削用バケットが用いられている。
【0004】
拡径掘削用バケットには、一般に、開閉機構を備えた底蓋が設けられており、底蓋が閉止された状態で、掘削時に排出される土砂がバケット内に貯留されるようになっている。また、地上面において、底蓋が開放されることにより、土砂がバケット外へ排出されるようになっている。
【0005】
拡径掘削用バケットの底蓋の開閉機構の例として、下方に凸な円盤状の底蓋の一端を蝶番で取り付け、開閉手段の操作によって開閉するバケットの底蓋の開閉機構が開示されている。(例えば、特許文献1参照)
しかしながら、このバケットの底蓋の開閉機構においては、底蓋を端部の蝶番の回りに回動させて開放する機構となっており、底蓋を完全に開放するためには、掘削機本体に懸架されたバケットの下端部から地上面までの距離が、少なくとも底蓋の外径以上の長さである必要がある。
【0006】
このため、底蓋を開放する場合に、バケットの機械高さを多く必要とし、また、掘削機本体における機械高さの制限により、拡径幅を大きくすることができない。
【特許文献1】特開昭62−10392
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、機械高さを低くできる拡径掘削用バケットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、掘削機本体に懸架され回転する回転軸に設けられ、拡縮して縦穴の穴壁を掘削する拡翼部と、前記回転軸の下端部に設けられた支持体と、前記支持体に回転可能に連結され、前記拡翼部が縮径したときの下方開口を閉じる底蓋と、前記底蓋を閉状態でロックする開閉手段と、を有する拡径掘削用バケットであって、前記底蓋の外周縁よりも内側の位置で、前記底蓋が前記支持体に回転可能に連結されたことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、底蓋の回転中心位置が底蓋の外周縁よりも内側の位置にあるので、底蓋が開閉手段により開放され回転したときに、連結位置から底蓋の外周縁までの距離が底蓋の最大外径の距離よりも短くなる。このため、バケットを地上面に引き上げたときのバケットの外周縁から地上面までの距離を短く設定することができ、掘削機の機械高さを低く抑えることができる。
【0010】
また、機械高さが低い掘削機でも底蓋を十分に開放することができるので、土砂等を、効率良くバケットから排出させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記開閉手段が、前記底蓋に設けられた長方形状の穴部と、前記支持体に回転可能に軸支され前記穴部と一致したとき挿通可能となる長方形状のロック部材と、前記ロック部材を前記穴部と一致しない位置へ回転させる付勢手段と、前記ロック部材に形成され前記穴部の穴縁部に当って前記ロック部材を前記穴部と一致させる方向へ回転させるテーパ面と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、底蓋を地面に押し当て閉止方向に回転させると、底蓋の穴部がロック部材に当たり、ここで、ロック部材のテーパ面が穴部の穴縁部にならって回転する。穴部とロック部材が一致すると、ロック部材が穴部を通過する。通過すると、付勢手段がロック部材を穴部と一致しない位置へ回転させるので、底蓋がロックされる。
【0013】
このように、底蓋の閉止時に、ロック部材が自動で回転するので、底蓋の閉止が容易となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記支持体が、前記回転軸に着脱可能に設けられていることを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、支持体が着脱可能であるので、例えば、底蓋を掘削ビット付きの底蓋に交換して杭孔の軸部を掘削するなどして、拡径掘削用バケットを多機能化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記構成としたので、機械高さを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0018】
図1及び図3に示すように、掘削機27は、クレーン28と、旋回装置30と、位置決めアーム32とにより構成されている。
【0019】
クレーン28は、ケリーバ12を吊り下げ、矢印UP、DOWN方向に昇降させる。また、クレーン28から張り出した位置決めアーム32の先端に、旋回装置30が取付けられている。
【0020】
旋回装置30は、ケリーバ12をグリップして矢印Rの方向に旋回させる。
【0021】
ケリーバ12の下端部には、拡径バケット10の固定ポスト36の上端部に設けられた連結ブラケット14が、ピンで連結されている。
【0022】
この拡径バケット10は、縮径された状態で、予め、他の掘削手段を用いて地盤25を鉛直方向に掘削して形成された軸部22の底部へ挿入される。軸部22には、ベントナイト等の安定液Lが図示しない補給管から注入されており、孔壁の倒壊を防止している。
【0023】
次に、拡径バケット10について説明する。
【0024】
図2及び図3は、拡径バケット10の縮径時又は拡径時における側面図及び底面図である。なお、左右対称であるので、装置構成が理解し易いように、紙面の手前側及び奥側の構造部品の図示を省略している。
【0025】
図2及び図3に示すように、固定ポスト36は、四角柱の柱である。
【0026】
固定ポスト36の側面からそれぞれブラケット71が張出している。ブラケット71に形成された連結孔には、ピン70が挿入されている。
【0027】
ピン70には、開閉リンク68の一端が回転可能に連結されている。開閉リンク68の他端は、ピン66で、下部アーム50の中央及び補助リンク63の下端へ回転可能に連結されている。
【0028】
下部アーム50の一端部は、ピン46で昇降フレーム40に回転可能に連結されている。
【0029】
昇降フレーム40は、固定ポスト36の外形よりも大きい内形を有する箱状の挿通部42と、挿通部42から固定ポスト36の側面と平行に張り出されたブラケット41とにより構成されている。
【0030】
一方、下部アーム50の他端部は、ピン54でブラケット58に回転可能に連結されている。
【0031】
ブラケット58の下部アーム50が連結された位置の上方には、ピン56で上方アーム52の一端部が回転可能に連結されている。また、上方アーム52の他端部は、ピン48で昇降フレーム40に回転可能に連結され、下部アーム50と上部アーム52は平行リンクとなっている。
【0032】
上方アーム52の中央には、ピン64で補助リンク63の上端が回転可能に連結されている。
【0033】
また、上部アーム52及び下部アーム50がピン46、ピン48を中心に回転することにより、昇降フレーム40は、固定ポスト36の外周に沿って軸方向に移動可能となっている。
【0034】
このようにして、開閉リンク68、上部アーム52、下部アーム50、及び補助リンク63により、リンク機構が形成されている。
【0035】
一方、ブラケット58の外面には、拡翼16が溶接等により固定されており、下部アーム50及び上部アーム52の回転動作により拡翼16が拡縮するようになっている。
【0036】
図3bに示すように、拡翼16は、ベース97と、側面壁98と、掘削ビット99とにより構成されている。
【0037】
ベース97は、ブラケット58と同様の材質からなり、ブラケット58と略直角方向に溶接により固定されている。側面壁98は、中空円筒を軸方向に4分割した形状で、ベース97の一端部に溶接により固定されている。
【0038】
掘削ビット99は、ベース97の外方側面に上下方向に複数固定されている。また、掘削ビット99は、旋回装置30(図1参照)がケリーバ12(図1参照)を旋回させると、固定ポスト36と一体に旋回して、拡径量に応じて軸部22の内周壁を掘削する。
【0039】
また、拡翼16は、縮径したときに4つの側面壁98が組合い、下部開口102が形成された略円筒となる。
【0040】
ここで、昇降フレーム40の上部には、ブラケット44が設けられている。ブラケット44は、上方から見てコの字形状に形成されており、側面には挿通孔45を有している。
【0041】
挿通孔45には、油圧シリンダ72のシリンダ本体74から突設された支持ピン76が軸支され、挿通孔45を支点として油圧シリンダ72が揺動可能となっている。
【0042】
なお、ブラケット44は、対面して一対設けられており、挿通孔45から支持ピン76が抜けないように保持している。
【0043】
油圧シリンダ72のシリンダ本体74には、油を供給するためのチューブ88が接続されている。ピストンとシリンダ本体74の間に油圧をかけることで、ピストンロッド80が伸縮する構成である。
【0044】
また、油圧シリンダ72の内部には、ピストンロッド80の伸縮状態を検知してストローク長を測定する磁歪式の変位センサが設けられており、ピストンロッド80のストローク長のデータが、図示しない送信ケーブルを通って、掘削機27(図1参照)に送信されるようになっている。
【0045】
掘削機27では、予め求められたピストンロッド80のストローク長と、拡翼16の拡縮径距離との関係式に上記のデータが入力されることにより、拡翼16の拡縮径距離が求められるようになっている。
【0046】
また、油圧シリンダ72のピストンロッド80の先端には、下部アーム50に溶接された伝達部材60が、ピン62で回転可能に連結されている。
【0047】
伝達部材60は、拡翼16が最大に拡径したとき、ピストンロッド80を縮ませるような形状とされている。
【0048】
ここで、拡翼16の拡縮動作について説明する。なお、左右対称なので、右側の拡翼16を例に採って説明する。
【0049】
まず、拡翼16の縮径動作について説明する。
【0050】
図3aに示す拡翼16の拡径状態から、油圧シリンダ72のピストンロッド80が伸び始めると、油圧シリンダ72は、支持ピン76を支点として反時計回りに揺動し、伝達部材60及び下部アーム50は、ピン46を中心に時計回りに回転を始める。
【0051】
開閉リンク68は、ピン66に引き上げられ反時計回りに回転し、固定ポスト36側へ倒れる。このため、昇降フレーム40は、開閉リンク68に突き上げられる下部アーム50により上昇する。これにより、下部アーム50は、固定ポスト36側へ倒れ込み、そして、補助リンク63で連結された上部アーム52も同時に平行リンクを保持したまま、固定ポスト36側へ倒れ込む。この結果、拡翼16は、縮径方向に移動する。
【0052】
次に、拡翼16の拡径動作について説明する。
【0053】
図2に示す拡翼16の縮径状態から、油圧シリンダ72のピストンロッド80が縮み始めると、油圧シリンダ72は、支持ピン76を支点として時計回りに揺動し、伝達部材60及び下部アーム50は、ピン46を中心に反時計回りに回転を始める。
【0054】
開閉リンク68は、ピン66に押し下げられ時計回りに回転し、固定ポスト36から離れる方向へ倒れる。このため、昇降フレーム40は、開閉リンク68に押し下げられる下部アーム50により下降する。
【0055】
これにより、下部アーム50は、固定ポスト36から離れる方向へ倒れ込み、そして、補助リンク63で連結された上部アーム52も同時に平行リンクを保持したまま、固定ポスト36から離れる方向へ倒れ込む。この結果、拡翼16は、拡径方向に移動する。
【0056】
このようにして、拡翼16の拡縮径動作が行われるようになっている。
【0057】
次に、図4に示すように、固定ポスト36の上方には、軸部材84が固定ボルト86によって固定されている。なお、装置構成が理解し易いように、紙面の手前側及び奥側の構成部品の図示を省略している。
【0058】
軸部材84の側面の略直角方向には、支持部材108が張り出している。
【0059】
支持部材108は、軸部材84に溶接された外筒109と、外筒109の内部を図示しないモータ等の駆動手段により駆動され移動スライドする内筒111とにより構成されている。また、内筒111の一端には、スタビライザ82が固定ボルト110により固定されており、内筒111及びスタビライザ82が一体となって移動するようになっている。
【0060】
スタビライザ82は、円弧状の側面を有しており、4方向のスタビライザ82の側面を結んで形成される円の径は、伸縮アーム108の伸縮により所定の大きさに設定可能となっている。
【0061】
外筒109の下部と軸部材84の下部との間には、補助フレーム112が張架されている。補助フレーム112により外筒109の倒れが防止されている。また、隣接する2つの外筒109の間には、補助フレーム114が張架されている。
【0062】
補助フレーム114には、円筒中空形状のチューブガード90が立設されており、油圧シリンダ72のチューブ88が、チューブガード90を挿通され、地上方向へ伸びている。
【0063】
なお、油圧シリンダ72を駆動する図示しない駆動部は、ケリーバ12の回転と同期して回転するように設置されており、ケリーバ12の回転によりチューブ88がからまるのを防止している。
【0064】
ここで、スタビライザ82により形成される円の径を、軸部22(図1参照)の径に近い大きさとすることにより、ケリーバ12及び固定ポスト36の中心位置がずれることがあっても、スタビライザ82の側面が軸部22の内壁と接触して反力を受け、掘削した穴の中心位置に戻されるので、掘削される穴の径が必要以上に拡大されない。
【0065】
次に、図5及び図6に示すように、固定ポスト36(図2参照)には、略水平方向に伸びる底蓋支持フレーム92から立設したポスト91が、ボルト及びナットにより着脱可能に固定されている。底蓋支持フレーム92の一端には、ヒンジ94が設けられている。
【0066】
底蓋支持フレーム92の下方側には、下方に凸の略円盤形状の底蓋96が設けられている。底蓋96は、底蓋96の外周縁よりも内側の位置で、ヒンジ94によって、底蓋支持フレーム92に回転可能に連結されている。
【0067】
これにより、底蓋96は、下方に向けて開閉可能となっており、拡翼16で構成された前述の下部開口102(図3b参照)を塞ぐようになっている。
【0068】
また、ポスト91及び底蓋支持フレーム92は、底蓋96を支持する支持体であり、ポスト91を固定ポスト36に対して着脱させることで、底蓋96を交換可能となっている。
【0069】
底蓋96の交換例として、例えば、掘削用ビットが取り付けられた掘削用底蓋に交換し、前述の軸部22を掘削することが挙げられる。
【0070】
底蓋96におけるヒンジ94と反対側の位置で底蓋96の斜面には、筒状の窪み部120が形成されており、窪み部120の上部開口は、ベース板122で閉じられている。
【0071】
ベース122の略中央には、長方形状の開口部124が形成されている。
【0072】
一方、底蓋支持フレーム92における蝶番94と反対側の位置には、中空円筒状の支柱126が立設されている。
【0073】
支柱126の中空部には、円柱棒状で支柱126の中空部の内径よりも小さい外径を有する丸棒130が、支柱126の軸方向を中心として回転可能に挿通されている。底蓋支持フレーム92と、支柱126との間には、斜め方向に柱状の補助部材128が設けられており、補助部材128によって、支柱126の倒れが防止されている。
【0074】
丸棒130の上端部には、丸棒130と一体成型され、丸棒130の半径方向に張り出されたハンドル136が設けられている。
【0075】
ハンドル136を回転させることにより、丸棒130が軸回りに回転するようになっている。
【0076】
ハンドル136には、スプリング144の一端が接続され、スプリング144の他端が、支柱126の上部に設けられたブラケット138の係止部146に固定されることにより、ハンドル136は、スプリング144が縮む方向に付勢されている。
【0077】
ブラケット138上には、レバーフック140が設けられており、スプリング144に付勢されたハンドル136を所定位置において保持可能となっている。
【0078】
一方、丸棒130の下端部には、多面体のロック部材132が、溶接等により固定され、窪み部120の中に配置されている。
【0079】
ロック部材132は、図6bに示すように、長方形状の上面Jと、五角形状の側面E及びFと、長方形状の側面G及びHと、三角形状の下部斜面A、B、C、Dとで構成された多面体形状となっている。
【0080】
ここで、ロック部材132の上面Jの縦横比は、開口部124と略同一であり、上面Jの外形寸法は、開口部124の内径寸法よりも小さくなっている。また、ロック部材132の中心位置と、開口部124の中心位置とが一致するように、予め、ロック部材132と、開口部124とが配置されている。
【0081】
これにより、ロック部材132と開口部124とが一致したとき、開口部124をロック部材132が挿通可能となっている。
【0082】
また、ハンドル136がレバーフック140に当たっているとき、ロック部材132の長手方向がハンドル136の軸と垂直な方向から角度θ傾斜した方向となるように、丸棒130に溶接されている。
【0083】
ここで、底蓋96の開閉について説明する。
【0084】
図7は、開口部124とロック部材132を底面側から見た状態を示している。
【0085】
図7aに示すように、底蓋96(図6参照)を地面に押し当て閉止方向に回転すると、ロック部材132と開口部124とが接触する。このとき接触しているのは、開口部124の縁と斜面B、Cであり、斜面A、Dは接触しない。
【0086】
次に、図7bに示すように、底蓋96がさらに閉止方向に回転して、開口部124がロック部材132に向かうと、斜面B、Cは、開口部124の縁にならうように滑り、ロック部材132が矢印X方向に回転する。
【0087】
次に、図7cに示すように、ロック部材132の矢印X方向の回転により、ロック部材132と開口部124とが一致すると、ロック部材132は、開口部124を通過する。
【0088】
次に、図7dに示すように、開口部124を通過したロック部材132は、スプリング144(図6参照)の付勢力により、矢印Y方向に回転されて斜めになり、底蓋96をロックする。
【0089】
以上の工程により底蓋96は閉止されロックされる。
【0090】
一方、底蓋96を開放する場合は、作業者が、ハンドル136(図6参照)を矢印X方向に回すことにより、ロック部材132と開口部124とが一致し、ロックが解除され、自重で底蓋96が回転して開放される。
【0091】
このように、底蓋96の開閉が行われるようになっている。
【0092】
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
【0093】
図8aに示すように、予め、他の掘削手段を用いて地盤25の鉛直方向に軸部22を掘削する。軸部22には、ベントナイト等の安定液Lが補給されており、孔壁の倒壊を防止している。
【0094】
次に、図1及び図8bに示すように、クレーン28がケリーバ12を矢印down方向へ降下させ、縮径した状態の拡径バケット10が、軸部22の拡底部18に降下する。
【0095】
次に、図1及び図8cに示すように、旋回装置30が駆動され、ケリーバ12が矢印R方向に旋回する。
【0096】
次に、図3及び図8cに示すように、油圧シリンダ72をピストンロッド80が縮小する方向に動作させ、ピストンロッド80の長さが縮まると、伝達部材60、下部アーム50、開閉リンク68の回転量がリンク機構により増幅され、昇降フレーム40は下降し、拡翼16の拡径が行われる。
【0097】
拡翼16は、旋回しながら拡径し、掘削ビット99によって軸部22の内壁が掘削され、拡径孔100が形成される。軸部22と拡径孔100により、杭孔24が構成されている。
【0098】
ここで、油圧シリンダ72の内部に設けられた変位センサにより、ピストンロッド80のストローク長が測定されており、事前に求められたピストンロッド80のストローク長と拡径孔100の径との関係式に入力され、掘削途中の拡径孔100の内径が求められる。
【0099】
スタビライザ82は、軸部22に位置しており、ケリーバ12及び固定ポスト36の軸中心は、杭孔24の中心から大きくずれることはない。
【0100】
拡径孔100の内径が所定量になると、旋回装置30が停止され、ケリーバ12及び固定ポスト36が旋回を停止する。
【0101】
旋回装置30の停止後、油圧シリンダ72をピストンロッド80が伸長する方向に動作させ、ピストンロッド80が伸びると、拡翼16は、縮径しながら掘削により発生した土砂Mを回収する。縮径した拡翼16の下部には、底蓋96があるので、回収した土砂Mが拡径バケット10の内部に貯留される。
【0102】
次に、図6及び図8dに示すように、縮径が終わった拡径バケット10は、クレーン28(図1参照)により引き上げられた後、杭孔24から離れた場所に移動する。
【0103】
ここで、作業者がハンドル136を図6aの矢印X方向に回すと、開口部124とロック部材132が一致し、底蓋96が拡径バケット10の下方側に開放される。これにより、拡径バケット10内に貯留していた土砂Mが、拡径バケット10の外へ排出される。
【0104】
このとき、底蓋96のヒンジ94の回転中心位置が底蓋96の外周縁よりも内側の位置にあるので、開放された底蓋96のヒンジ94の位置から底蓋96の外周縁までの距離が、底蓋96の最大外径の距離よりも短くなる。
【0105】
このため、ヒンジ94を底蓋96の端部に設けたものと比べて、拡径バケット10を地上面に引き上げたときの拡径バケット10の外周縁から地上面までの距離を短く設定することができ、掘削機27の機械高さを低く抑えることができる。
【0106】
また、機械高さが低い掘削機でも底蓋96を十分に開放することができる。 次に、土砂Mが排出された後、底蓋96を地面に押し当て閉止方向に回転させると、図7に示すように、ロック部材132が開口部124の縁にならうように滑り、ロック部材132が矢印X方向に回転する。
【0107】
ロック部材132の矢印X方向の回転により、ロック部材132と開口部124とが一致すると、ロック部材132は、開口部124を通過する。
【0108】
ロック部材132は、開口部124の通過後、スプリング144(図6参照)の付勢力により回転して斜めになり、底蓋96をロックする。
【0109】
このあと、図示しない円筒形状の鉄筋かごが杭孔24の内部に挿入され、トレミー管によって杭孔24の底部から徐々にコンクリートが満たされるとともに、ポンプ等により安定液Lが杭孔24から排出され、コンクリート拡底杭が完成する。
【0110】
以上説明したように、本発明の実施形態においては、底蓋96と底蓋支持フレーム92とを連結するヒンジ94の回転中心位置が、底蓋96の外周縁よりも内側の位置にあるので、底蓋96が底蓋ロック機構148により開放され回転したときに、ヒンジ94から底蓋96の外周縁までの距離が、底蓋96の最大外径の距離よりも短くなる。
【0111】
このため、拡径バケット10を地上面に引き上げたときの拡径バケット10の外周縁から地上面までの距離を短く設定することができ、掘削機27の機械高さを低く抑えることができる。
【0112】
また、機械高さが低い掘削機でも底蓋96を十分に開放することができるので、土砂M等を、効率良く拡径バケット10から排出させることができる。
【0113】
さらに、底蓋96を地面に押し当て閉止方向に回転させると、開口部124がロック部材132に当たり、ロック部材132の斜面B及び斜面Cが、開口部124の穴縁部にならって滑り、ロック部材132が自動で回転するので、底蓋の閉止が容易となる。
【0114】
さらに、底蓋96を掘削ビット付きの底蓋に交換して杭孔24の軸部22を掘削するなどして、拡径バケット10を多機能化することができる。
【0115】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0116】
底蓋96に穴部及び刃部を設け、掘削しながら土砂を収容し、杭孔24の掘削を行うようにしてもよい。
【0117】
ロック部材132の傾斜角度θは、ハンドル136が回転可能な範囲で、自由に設定してよい。
【0118】
ハンドル136の付勢手段としては、スプリング144の引張力を利用する以外に、弾性体を用いて、スプリング144と反対の方向からハンドル136を押圧するものであってもよい。
【0119】
また、本実施形態の底蓋の開閉機構は、拡底部の掘削のみならず、中間拡径の掘削にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の実施形態に係る場所打ちコンクリート杭を施工する際に使用される装置の全体図である。
【図2】本発明の実施形態に係る拡径バケットの縮径状態における側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る拡径バケットの拡径状態における側面図及び底面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスタビライザの側面図及び平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る底蓋の平面図及び側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る底蓋の拡大図及びロック部材の斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る底蓋ロック機構の説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る拡径掘削の施工手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0121】
10 拡径バケット(拡径掘削用バケット)
16 拡翼(拡翼部)
27 掘削機(掘削機本体)
36 固定ポスト(回転軸)
91 ポスト(支持体)
92 底蓋支持フレーム(支持体)
96 底蓋(蓋体)
102 下部開口(下部開口)
124 開口部(穴部)
132 ロック部材(ロック部材)
144 スプリング(付勢手段)
148 底蓋ロック機構(開閉手段)
B 斜面B(テーパ面)
C 斜面C(テーパ面)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機本体に懸架され回転する回転軸に設けられ、拡縮して縦穴の穴壁を掘削する拡翼部と、
前記回転軸の下端部に設けられた支持体と、
前記支持体に回転可能に連結され、前記拡翼部が縮径したときの下方開口を閉じる底蓋と、
前記底蓋を閉状態でロックする開閉手段と、
を有する拡径掘削用バケットであって、
前記底蓋の外周縁よりも内側の位置で、前記底蓋が前記支持体に回転可能に連結されたことを特徴とする拡径掘削用バケット。
【請求項2】
前記開閉手段が、
前記底蓋に設けられた長方形状の穴部と、
前記支持体に回転可能に軸支され前記穴部と一致したとき挿通可能となる長方形状のロック部材と、
前記ロック部材を前記穴部と一致しない位置へ回転させる付勢手段と、
前記ロック部材に形成され前記穴部の穴縁部に当って前記ロック部材を前記穴部と一致させる方向へ回転させるテーパ面と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の拡径掘削用バケット。
【請求項3】
前記支持体が、前記回転軸に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の拡径掘削用バケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−13944(P2008−13944A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183731(P2006−183731)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】