振動型アクチュエータの駆動装置
【課題】電圧振幅で駆動制御をするに当たり、パルス信号を発生させる際のスイッチングによる損失の増大や駆動回路が複雑になることを抑制でき、指令値どおりの振幅の交流電圧の印加が可能な振動型アクチュエータの駆動装置を提供する。
【解決手段】電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加し、振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させる振動型アクチュエータの駆動装置であって、交流電圧の振幅を指令する電圧振幅指令手段と、電圧振幅指令の増加に応じて、パルス幅指令およびパルス幅指令の変化率を単調に増加させてパルス幅指令を出力するパルス幅指令手段と、交流電圧と同じ周波数で且つ交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号を生成して交流電圧を印加する際に、パルス幅指令に基づいて、パルス幅指令に相当するパルス幅のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、を有する。
【解決手段】電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加し、振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させる振動型アクチュエータの駆動装置であって、交流電圧の振幅を指令する電圧振幅指令手段と、電圧振幅指令の増加に応じて、パルス幅指令およびパルス幅指令の変化率を単調に増加させてパルス幅指令を出力するパルス幅指令手段と、交流電圧と同じ周波数で且つ交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号を生成して交流電圧を印加する際に、パルス幅指令に基づいて、パルス幅指令に相当するパルス幅のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータ駆動装置に関する。特に、電気−機械エネルギー変換素子に印加する交流電圧を生成する手段がパルス生成手段であって、そのパルス幅を操作して上記交流電圧の振幅を変化させる振動型アクチュエータの駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動型アクチュエータの一形態として、極性が交互に反転している複数の圧電素子と、この圧電素子に接着された振動体と、振動体に圧接された移動体からなる振動型アクチュエータが知られている。
この振動型アクチュエータでは、各圧電素子に、互いに90°の位相差を持つ2相の交流信号が印加される。これによって振動体上に進行波が発生し、移動体は摩擦力により駆動力を得ることができる。
振動型アクチュエータでは、電磁力を用いたアクチュエータと比較して低速での駆動トルクが大きく、応答性が良いという有利な点を有している。
【0003】
一般に、振動型アクチュエータの回転速度あるいは位置を制御する方法として、交流電圧の周波数、電圧振幅および位相差のいずれか、またはそれを組み合わせて制御する方法が知られている。
その中でも、ダイナミックレンジが広く速度制御が容易である周波数による制御が最も一般的な制御手法であるが、電圧振幅、位相差による制御もそれぞれの特徴を生かした制御手法が提案されている。
電圧振幅による速度制御は、周波数で制御する場合に比べ、特に低速で制御する際に、制御特性が安定しており高精度な位置制御には有効な制御方法である。
しかし、電圧振幅を変化させるには、電源電圧を制御してパルス幅の波高値を変化させる方法や増幅器のゲインを変化させる方法等が必要で、回路が複雑になるという問題があった。
【0004】
このような問題に対処する方法として、パルス信号のパルス幅を変化させ、振動型アクチュエータに印加する交流電圧の振幅を変化させる方式がいくつか提案されており、特許文献1では、つぎのような振動型アクチュエータが提案されている。
すなわち、特許文献1では、公知の三角波比較方式PWM変調でパルス信号を作成しており、所望の電圧振幅に相当する電圧と駆動周波数より高周波の三角波を比較することで、所望の電圧振幅の信号を出力するように構成されている。
また、特許文献2では、移動体を速度制御する際に、振動型アクチュエータの状態量と状態量の指令値に基づいて電圧指令値を決定し、電圧指令値の変化に対してパルス信号のパルス幅を線形に変化させて速度制御を行う提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−305771号公報
【特許文献2】特開2007−189823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、電圧振幅の指令値の変化に対して印加電圧の振幅を線形に変化させるために、パルス信号を駆動周波数より高い周波数で発生させている。そのため、パルス信号を発生させる際のスイッチングによる損失が大きく、また、駆動回路が複雑になるという課題を有している。
また、特許文献2では、パルス幅の変化に対して駆動電圧の振幅が線形に変化しないため、指令値どおりの振幅の交流電圧を振動型アクチュエータに印加できないという課題を有している。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、電圧振幅で駆動制御をするに当たり、パルス信号を発生させる際のスイッチングによる損失の増大や駆動回路が複雑になることを抑制でき、
指令値どおりの振幅の交流電圧の印加が可能となる振動型アクチュエータの駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の振動型アクチュエータの駆動装置は、
電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加して振動体に振動を励起し、前記振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させ、
前記移動体を前記振動体に対して相対移動させる振動型アクチュエータの駆動装置であって、
前記交流電圧の振幅を指令する電圧振幅指令手段と、
前記電圧振幅指令手段から出力された前記電圧振幅指令の増加に応じて、パルス幅指令およびパルス幅指令の変化率を単調に増加させてパルス幅指令を出力するパルス幅指令手段と、
前記交流電圧と同じ周波数で且つ前記交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号を生成して電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加する際に、
前記パルス幅指令手段から出力された前記パルス幅指令に基づいて、該パルス幅指令に相当するパルス幅のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
を有することを特徴とする。
また、本発明の振動型アクチュエータの駆動装置は、
電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加して振動体に振動を励起し、前記振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させ、
前記移動体を前記振動体に対して相対移動させる振動型アクチュエータの駆動装置であって、
前記振動型アクチュエータの状態量を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記状態量と、所定の状態量との差に応じて前記交流電圧の電圧振幅指令を出力する制御手段と、
前記制御手段から出力された前記電圧振幅指令の増加に応じて、パルス幅指令およびパルス幅指令の変化率を単調に増加させてパルス幅指令を出力するパルス幅指令手段と、
前記交流電圧と同じ周波数で且つ前記交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号を生成して電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加する際に、
前記パルス幅指令手段から出力された前記パルス幅指令に基づいて、該パルス幅指令に相当するパルス幅のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電圧振幅で駆動制御をするに当たり、パルス信号を発生させる際のスイッチングによる損失の増大や駆動回路が複雑になることを抑制でき、
指令値どおりの振幅の交流電圧の印加が可能となる振動型アクチュエータの駆動装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの駆動装置の構成例を説明する図。
【図2】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの構成例を示す図。
【図3】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの圧電素子上に形成された給電用の電極パターンを示す図。
【図4】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの振動子の振動の時間的変化を示す図。
【図5】本発明の実施例1における振動型アクチュエータのドライバの回路を示す図。
【図6】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの圧電素子に印加される電圧の時間変化を示す図。
【図7】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの駆動装置のパルス幅と電圧振幅の関係を示す図。
【図8】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの駆動装置の振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルの設定値を示す図。
【図9】本発明の実施例2における振動型アクチュエータの駆動装置の構成例を説明する図。
【図10】本発明の実施例3における振動型アクチュエータの駆動装置の構成例を説明する図。
【図11】本発明の実施例3における振動型アクチュエータの駆動装置の振幅変調進行性振動波を発生させるための加振信号を示す図。
【図12】本発明の実施例3における振動型アクチュエータの駆動装置の振幅変調進行性振動波の振動軌跡を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0012】
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用した振動型アクチュエータの駆動装置の構成例について説明する。
本実施例の振動型アクチュエータの駆動装置は、電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加して振動体に振動を励起し、振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させ、移動体を前記振動体に対して相対移動させる構成を備える。
図1は、上記振動型アクチュエータの駆動装置のブロック図である。
図1において、1は後述する圧電素子10aおよび10bを含む振動型アクチュエータである。
2は振幅指令発生部(電圧振幅指令手段)であり、振動型アクチュエータ1に印加する駆動電圧の振幅の目標値である振幅指令信号6を振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部(パルス幅指令手段)3に与える。
振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3は、振幅指令発生部2からの振幅指令信号6をもとに、後述するパルス発生部(パルス信号生成手段)4が出力するパルス信号8のパルス幅に相当するパルス幅指令信号7を出力する。
パルス発生部4では、パルス幅指令信号7に相当するパルス幅のパルス信号8を発生させ、ドライバ5に送る。
そして、パルス信号8により、後述するドライバ5の駆動回路のスイッチング素子がONし、圧電素子10aおよび10bに交流信号Φ10a+、Φ10a−、Φ10b+、Φ10b−がそれぞれ印加される。
【0013】
次に、振動型アクチュエータ1の具体的構成について説明する。
図2は振動型アクチュエータ1の構成図であり、9は後述する圧電素子10によって加振される振動体、10は振動体9に挟持される積層の圧電素子、11は圧電素子10に給電するためのフレキシブル基板である。
12は振動体9の上面に形成される楕円振動との間に生ずる摩擦力によって回転するロータである。
図3は圧電素子10上に形成された給電用の電極パターンであり、電極10a(+)と10b(+)には、互いに90°位相のずれた交流信号Φ10a+、Φ10b+が印加される。
また、それぞれの(−)の電極には、(+)の電極と位相が180°ずれた交流信号Φ10a−、Φ10b−が印加される。このような位相関係の駆動電圧を各電極に印加すると、棒状の振動子に直交する2つの曲げ振動が形成される。これにより、図4に示すようにくびれを持つ振動体9の上部が振れ回るように回転振動する。
この回転振動によって、振動体9と加圧接触されるロータ12に駆動力を伝達している。
図1の振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3では、パルス幅指令信号7を振幅指令信号6の増加に応じて逆正弦関数状に変化させる。以下にその理由を説明する。
図5は、図1のドライバ5の駆動回路を示しており、スイッチング素子51〜58を含む2つのフルブリッジ回路で構成されている。
この2つのフルブリッジ回路の出力には、インダクタンス59および60をそれぞれ直列に接続した圧電素子10aおよび10bが接続されている。
スイッチング素子51〜58の各ゲートには、図1のパルス信号8に相当するp81〜p88がそれぞれ送られる。
【0014】
次に、駆動回路の各点における電圧の時間変化について説明する。
図6は、図5に示すパルス信号p81〜p88の周期をT、ON時間をPWとして振動型アクチュエータ1を駆動させた時のタイミングチャートである。
図6(a)はA1−A2間の電圧波形、図6(b)はA1における電圧波形、図6(c)はA2における電圧波形、図6(d)は圧電素子10aの両端に印加される電圧波形をそれぞれ示したものである。
【0015】
図6の(a)の電圧波形をフーリエ展開すると、次の式(1)のようになる。
【0016】
したがって、各次数nでの係数b(n)は次の式(2)で表される。
【0017】
式(2)のVdはフルブリッジ回路に供給される直流電源50からの電圧値である。
式(2)の基本波(n=1)において、パルス幅すなわちPW/T[%]を変化させた時のパルス幅と電圧振幅の関係は図7に示すようになる。
【0018】
図7から分かるように、電圧振幅の変化は、パルス幅の変化量が同じであってもパルス幅が大きくなるに従って小さくなる。
このことから、振幅指令信号6に相当する振幅の電圧を振動型アクチュエータ1に印加するためには、振幅指令信号6の増加に応じて、パルス幅指令信号7およびパルス幅指令信号7の変化率を単調に増加させることが必要となる。
そこで、振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3では、パルス幅指令信号7を振幅指令信号6に対して逆正弦関数状に変化させるための振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルを記憶している。
また、振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルは振幅指令信号6が最大値(本実施例では最大値を1として規格化)まで増加するときに、その増加に応じてパルス幅指令信号7およびパルス幅指令信号7の変化率が単調に50%増加するように設定されている。
【0019】
図8(a)は、振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルに設定されている振幅指令信号6とパルス幅指令信号7の関係である。
なお、振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルは、図8(b)、(c)に示すように、振幅指令信号6に対してパルス幅指令信号7がステップ状に変化する値や線形近似した値、もしくはこれらを組み合わせて設定しても良い。
このように、振幅指令信号の増加に応じて、パルス幅指令信号およびパルス幅指令信号の変化率を逆正弦関数状に単調増加させることで、振幅指令信号どおりの振幅の駆動電圧を振動型アクチュエータに印加することができる。
よって、駆動電圧の振幅を変調させる際に、指令値どおりの変調波を発生させることや、駆動電圧の振幅で振動型アクチュエータの状態量を制御する際に、高精度な制御を行うことが可能となる。
【0020】
本実施例では、図6(a)のように、波高値が+Vdと−Vdのパルス信号で駆動させた場合を例として示した。
一方、波高値が+Vdまたは−Vdのみのパルス信号で駆動する場合でも、基本波の電圧振幅とパルス信号のパルス幅の関係は図7に示す逆正弦関数の関係になるため、+Vdまたは−Vdのみのパルス信号で駆動させても良い。
本実施例によれば、前記交流電圧と同じ周波数で且つ前記交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号の基本周波数(前記交流電圧の周波数)成分の振幅を電圧振幅指令に比例した振幅値とすることができる。
これによって、振動型アクチュエータに任意の振幅の交流電圧を印加する回路を効率の良い安価な回路で構成することが可能となる。
【0021】
[実施例2]
実施例2として、目標速度と実際の駆動速度の差に応じて決定する駆動電圧の振幅を、パルス信号のパルス幅で速度制御を行う振動型アクチュエータの速度制御装置の構成例について説明する。
但し、振動型アクチュエータの回転速度を制御する以外の基本的な構成は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図9は振動型アクチュエータの速度制御装置を示したブロック図である。
図9において、13は速度指令部であり、振動型アクチュエータ1の目標速度である速度指令信号18を発生させ、後述する振幅指令演算部15に送る。
14は速度センサ(アクチュエータの回転速度の検出手段)であり、これにより振動型アクチュエータ1の状態量(実際の駆動速度)である回転速度16を検出し、速度検出信号17を振幅指令演算部15に与える。
振幅指令演算部15は、速度センサ14により検出された前記状態量と、所定の状態量との差に応じて交流電圧の電圧振幅指令を出力する制御手段である。
具体的には、この振幅指令演算部15では、速度指令信号18が大きい程、駆動電圧の振幅が大きくなるように、速度検出信号17と速度指令信号18を用いて比例積分演算を行い、演算結果である振幅指令信号6を振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3に送る。
【0022】
振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3では、振幅指令信号6を、本実施例で示した振幅指令信号−パルス幅指令変換テーブルをもとにパルス幅指令信号7に変換している。
そのため、振動型アクチュエータ1に印加する駆動電圧の振幅を、振幅指令信号6の変化に対して線形に変化させることができる。
仮に、パルス幅指令信号7を振幅指令信号6の変化に対して線形に変化させると、振幅指令信号6の変化量が同じでも駆動電圧の振幅の変化量はパルス幅指令信号7の値により異なるため、制御が不安定になる可能性がある。
しかし、本実施例の速度制御装置で振動型アクチュエータ1を駆動すると、振幅指令信号6の変化に応じた駆動電圧の振幅の変化を、常に一定にすることができるため、より安定した速度制御を行うことが可能となる。
本実施例によれば、振動型アクチュエータを制御する際に、状態量と目標とする状態量との差に応じて振動型アクチュエータに印加する交流電圧の振幅の変化量を、パルス幅の値によらず常に一定にすることができ、より安定した制御を行うことが可能となる。
また、本実施例では、状態量として速度を用いたが、速度以外にもトルクや振動子の振動振幅を状態量として用いてもよい。
【0023】
[実施例3]
実施例3として、振幅および位相差が周期的に変化する2相の交流信号を振動型アクチュエータに印加して、振動型アクチュエータを低速で駆動する振動型アクチュエータの駆動装置の構成例について説明する。
本実施例では、振動型アクチュエータを低速で安定して駆動させるために、振動子に振動振幅が所定の周期で変調された(周期的変調パターンによる)振幅変調進行性振動波を発生させる。
本実施例で述べる振幅変調進行性振動波は、図11に示すような位相の異なる2相(A相とB相)の加振信号の合成によって形成される。
【0024】
図12に、振動子に励起される振幅変調進行性振動波の振動軌跡を実線で示す。なお、図12における太線で示す楕円は、上記振動軌跡のある1周期分の振動軌跡(以下楕円軌跡と呼ぶ)を表したものである。細線で示す複数の楕円軌跡は楕円軌跡の回転の様子を示しており、矢印は楕円軌跡の回転方向を示している。また、A相変位は図3に示した電極10a(+)と電極10a(−)の中心を結ぶ方向の振動変位を示しており、B相変位は電極10b(+)と電極10b(−)の中心を結ぶ方向の振動変位を示している。
このような楕円軌跡で振動する振幅変調進行性振動波で振動型アクチュエータを駆動すると、楕円軌跡の長軸方向の振動でロータを振動体から十分浮かせつつ、短軸方向の振動振幅に比例してロータの回転速度を制御できるので、低速で安定して駆動可能となる。
また、上記楕円軌跡の長軸方向を一定周期で回転させることで、ロータと移動体間の面圧むらによる速度変化を低減している。
【0025】
次に、図10に示す本実施例の駆動装置の動作について説明する。
図10は、振動型アクチュエータの駆動装置のブロック図を示したものであり、周期タイミング発生部19は、後述する振幅変調指令部20、21から振幅指令信号28、29を発生させるための周期タイミング信号27を発生させるものである。
振幅変調指令部20、21は、周期タイミング信号27を受けると、図11に示す変調波が振動型アクチュエータ1に印加されるように、あらかじめ記憶している振幅指令信号28、29を発生させて振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部22、23に送る。
振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部22、23は、実施例1および実施例2記載の振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3と同じものである。
振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部22、23では、振幅指令信号28、29を、振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルをもとにパルス幅指令信号30、31に変換し、パルス発生部25、26にそれぞれ送る。
位相差変調指令部24は周期タイミング信号27を受けると、パルス発生部25、26で生成するパルス信号の時間的位相に相当する位相差信号32を、パルス発生部25、26に与える。
パルス発生部25、26では、パルス幅指令信号30、31に相当するパルス幅のパルス信号33(図5のp81〜p84)、34(図5のp85〜p88)を、位相差信号32に相当する時間的位相でそれぞれ発生させる。
そして、パルス信号33、34によりドライバ5でA相とB相の駆動電圧Φ10a+、Φ10a−、Φ10b+、Φ10b−を生成して、振動型アクチュエータ1に印加する。
【0026】
以上のような動作を行う駆動装置を構成することで、図12に示すような楕円軌跡の長軸成分の大きさが、楕円軌跡の長軸方向の回転変化によらず一定である振動を形成することができる。
これに対して、パルス幅指令信号30、31を振幅指令信号28、29の変化に応じて線形に変化させて振幅変調進行性振動波を発生させた場合、楕円軌跡の長軸方向の回転変化によって楕円軌跡の形状が変化し、回転むらが発生してしまう。
従って、本方式で振動型アクチュエータを駆動すれば、パルス幅指令信号を振幅指令信号の変化に応じて線形に変化させて駆動する方式と比較して、回転むらが低減し、より安定して振動型アクチュエータを駆動することが可能となる。
本実施例では、振幅変調指令部と振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部を2つに分けた。
しかし、変調波のように出力する駆動電圧の振幅が既知の場合には、振幅変調指令部に振幅指令信号−パルス幅指令変換テーブルをもとに計算したパルス幅を記憶させ、直接パルス幅指令信号を発生させても良い。
また、本実施例では周期タイミング信号27を時間に同期して発生させたが、ロータの回転位置情報に同期して発生させても良い。
さらに、不図示の状態量検出手段により状態量を検出し、状態量に応じて振幅変調指令部20、21および位相差変調指令部24の変調度を変化させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0027】
1:振動型アクチュエータ
2:振幅指令発生部
3:振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部
4:パルス発生部
5:ドライバ
6:振幅指令信号
7:パルス幅指令信号
8:パルス信号
9:振動体
10:圧電素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータ駆動装置に関する。特に、電気−機械エネルギー変換素子に印加する交流電圧を生成する手段がパルス生成手段であって、そのパルス幅を操作して上記交流電圧の振幅を変化させる振動型アクチュエータの駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動型アクチュエータの一形態として、極性が交互に反転している複数の圧電素子と、この圧電素子に接着された振動体と、振動体に圧接された移動体からなる振動型アクチュエータが知られている。
この振動型アクチュエータでは、各圧電素子に、互いに90°の位相差を持つ2相の交流信号が印加される。これによって振動体上に進行波が発生し、移動体は摩擦力により駆動力を得ることができる。
振動型アクチュエータでは、電磁力を用いたアクチュエータと比較して低速での駆動トルクが大きく、応答性が良いという有利な点を有している。
【0003】
一般に、振動型アクチュエータの回転速度あるいは位置を制御する方法として、交流電圧の周波数、電圧振幅および位相差のいずれか、またはそれを組み合わせて制御する方法が知られている。
その中でも、ダイナミックレンジが広く速度制御が容易である周波数による制御が最も一般的な制御手法であるが、電圧振幅、位相差による制御もそれぞれの特徴を生かした制御手法が提案されている。
電圧振幅による速度制御は、周波数で制御する場合に比べ、特に低速で制御する際に、制御特性が安定しており高精度な位置制御には有効な制御方法である。
しかし、電圧振幅を変化させるには、電源電圧を制御してパルス幅の波高値を変化させる方法や増幅器のゲインを変化させる方法等が必要で、回路が複雑になるという問題があった。
【0004】
このような問題に対処する方法として、パルス信号のパルス幅を変化させ、振動型アクチュエータに印加する交流電圧の振幅を変化させる方式がいくつか提案されており、特許文献1では、つぎのような振動型アクチュエータが提案されている。
すなわち、特許文献1では、公知の三角波比較方式PWM変調でパルス信号を作成しており、所望の電圧振幅に相当する電圧と駆動周波数より高周波の三角波を比較することで、所望の電圧振幅の信号を出力するように構成されている。
また、特許文献2では、移動体を速度制御する際に、振動型アクチュエータの状態量と状態量の指令値に基づいて電圧指令値を決定し、電圧指令値の変化に対してパルス信号のパルス幅を線形に変化させて速度制御を行う提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−305771号公報
【特許文献2】特開2007−189823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、電圧振幅の指令値の変化に対して印加電圧の振幅を線形に変化させるために、パルス信号を駆動周波数より高い周波数で発生させている。そのため、パルス信号を発生させる際のスイッチングによる損失が大きく、また、駆動回路が複雑になるという課題を有している。
また、特許文献2では、パルス幅の変化に対して駆動電圧の振幅が線形に変化しないため、指令値どおりの振幅の交流電圧を振動型アクチュエータに印加できないという課題を有している。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、電圧振幅で駆動制御をするに当たり、パルス信号を発生させる際のスイッチングによる損失の増大や駆動回路が複雑になることを抑制でき、
指令値どおりの振幅の交流電圧の印加が可能となる振動型アクチュエータの駆動装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の振動型アクチュエータの駆動装置は、
電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加して振動体に振動を励起し、前記振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させ、
前記移動体を前記振動体に対して相対移動させる振動型アクチュエータの駆動装置であって、
前記交流電圧の振幅を指令する電圧振幅指令手段と、
前記電圧振幅指令手段から出力された前記電圧振幅指令の増加に応じて、パルス幅指令およびパルス幅指令の変化率を単調に増加させてパルス幅指令を出力するパルス幅指令手段と、
前記交流電圧と同じ周波数で且つ前記交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号を生成して電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加する際に、
前記パルス幅指令手段から出力された前記パルス幅指令に基づいて、該パルス幅指令に相当するパルス幅のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
を有することを特徴とする。
また、本発明の振動型アクチュエータの駆動装置は、
電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加して振動体に振動を励起し、前記振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させ、
前記移動体を前記振動体に対して相対移動させる振動型アクチュエータの駆動装置であって、
前記振動型アクチュエータの状態量を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記状態量と、所定の状態量との差に応じて前記交流電圧の電圧振幅指令を出力する制御手段と、
前記制御手段から出力された前記電圧振幅指令の増加に応じて、パルス幅指令およびパルス幅指令の変化率を単調に増加させてパルス幅指令を出力するパルス幅指令手段と、
前記交流電圧と同じ周波数で且つ前記交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号を生成して電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加する際に、
前記パルス幅指令手段から出力された前記パルス幅指令に基づいて、該パルス幅指令に相当するパルス幅のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電圧振幅で駆動制御をするに当たり、パルス信号を発生させる際のスイッチングによる損失の増大や駆動回路が複雑になることを抑制でき、
指令値どおりの振幅の交流電圧の印加が可能となる振動型アクチュエータの駆動装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの駆動装置の構成例を説明する図。
【図2】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの構成例を示す図。
【図3】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの圧電素子上に形成された給電用の電極パターンを示す図。
【図4】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの振動子の振動の時間的変化を示す図。
【図5】本発明の実施例1における振動型アクチュエータのドライバの回路を示す図。
【図6】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの圧電素子に印加される電圧の時間変化を示す図。
【図7】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの駆動装置のパルス幅と電圧振幅の関係を示す図。
【図8】本発明の実施例1における振動型アクチュエータの駆動装置の振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルの設定値を示す図。
【図9】本発明の実施例2における振動型アクチュエータの駆動装置の構成例を説明する図。
【図10】本発明の実施例3における振動型アクチュエータの駆動装置の構成例を説明する図。
【図11】本発明の実施例3における振動型アクチュエータの駆動装置の振幅変調進行性振動波を発生させるための加振信号を示す図。
【図12】本発明の実施例3における振動型アクチュエータの駆動装置の振幅変調進行性振動波の振動軌跡を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0012】
[実施例1]
実施例1として、本発明を適用した振動型アクチュエータの駆動装置の構成例について説明する。
本実施例の振動型アクチュエータの駆動装置は、電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加して振動体に振動を励起し、振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させ、移動体を前記振動体に対して相対移動させる構成を備える。
図1は、上記振動型アクチュエータの駆動装置のブロック図である。
図1において、1は後述する圧電素子10aおよび10bを含む振動型アクチュエータである。
2は振幅指令発生部(電圧振幅指令手段)であり、振動型アクチュエータ1に印加する駆動電圧の振幅の目標値である振幅指令信号6を振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部(パルス幅指令手段)3に与える。
振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3は、振幅指令発生部2からの振幅指令信号6をもとに、後述するパルス発生部(パルス信号生成手段)4が出力するパルス信号8のパルス幅に相当するパルス幅指令信号7を出力する。
パルス発生部4では、パルス幅指令信号7に相当するパルス幅のパルス信号8を発生させ、ドライバ5に送る。
そして、パルス信号8により、後述するドライバ5の駆動回路のスイッチング素子がONし、圧電素子10aおよび10bに交流信号Φ10a+、Φ10a−、Φ10b+、Φ10b−がそれぞれ印加される。
【0013】
次に、振動型アクチュエータ1の具体的構成について説明する。
図2は振動型アクチュエータ1の構成図であり、9は後述する圧電素子10によって加振される振動体、10は振動体9に挟持される積層の圧電素子、11は圧電素子10に給電するためのフレキシブル基板である。
12は振動体9の上面に形成される楕円振動との間に生ずる摩擦力によって回転するロータである。
図3は圧電素子10上に形成された給電用の電極パターンであり、電極10a(+)と10b(+)には、互いに90°位相のずれた交流信号Φ10a+、Φ10b+が印加される。
また、それぞれの(−)の電極には、(+)の電極と位相が180°ずれた交流信号Φ10a−、Φ10b−が印加される。このような位相関係の駆動電圧を各電極に印加すると、棒状の振動子に直交する2つの曲げ振動が形成される。これにより、図4に示すようにくびれを持つ振動体9の上部が振れ回るように回転振動する。
この回転振動によって、振動体9と加圧接触されるロータ12に駆動力を伝達している。
図1の振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3では、パルス幅指令信号7を振幅指令信号6の増加に応じて逆正弦関数状に変化させる。以下にその理由を説明する。
図5は、図1のドライバ5の駆動回路を示しており、スイッチング素子51〜58を含む2つのフルブリッジ回路で構成されている。
この2つのフルブリッジ回路の出力には、インダクタンス59および60をそれぞれ直列に接続した圧電素子10aおよび10bが接続されている。
スイッチング素子51〜58の各ゲートには、図1のパルス信号8に相当するp81〜p88がそれぞれ送られる。
【0014】
次に、駆動回路の各点における電圧の時間変化について説明する。
図6は、図5に示すパルス信号p81〜p88の周期をT、ON時間をPWとして振動型アクチュエータ1を駆動させた時のタイミングチャートである。
図6(a)はA1−A2間の電圧波形、図6(b)はA1における電圧波形、図6(c)はA2における電圧波形、図6(d)は圧電素子10aの両端に印加される電圧波形をそれぞれ示したものである。
【0015】
図6の(a)の電圧波形をフーリエ展開すると、次の式(1)のようになる。
【0016】
したがって、各次数nでの係数b(n)は次の式(2)で表される。
【0017】
式(2)のVdはフルブリッジ回路に供給される直流電源50からの電圧値である。
式(2)の基本波(n=1)において、パルス幅すなわちPW/T[%]を変化させた時のパルス幅と電圧振幅の関係は図7に示すようになる。
【0018】
図7から分かるように、電圧振幅の変化は、パルス幅の変化量が同じであってもパルス幅が大きくなるに従って小さくなる。
このことから、振幅指令信号6に相当する振幅の電圧を振動型アクチュエータ1に印加するためには、振幅指令信号6の増加に応じて、パルス幅指令信号7およびパルス幅指令信号7の変化率を単調に増加させることが必要となる。
そこで、振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3では、パルス幅指令信号7を振幅指令信号6に対して逆正弦関数状に変化させるための振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルを記憶している。
また、振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルは振幅指令信号6が最大値(本実施例では最大値を1として規格化)まで増加するときに、その増加に応じてパルス幅指令信号7およびパルス幅指令信号7の変化率が単調に50%増加するように設定されている。
【0019】
図8(a)は、振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルに設定されている振幅指令信号6とパルス幅指令信号7の関係である。
なお、振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルは、図8(b)、(c)に示すように、振幅指令信号6に対してパルス幅指令信号7がステップ状に変化する値や線形近似した値、もしくはこれらを組み合わせて設定しても良い。
このように、振幅指令信号の増加に応じて、パルス幅指令信号およびパルス幅指令信号の変化率を逆正弦関数状に単調増加させることで、振幅指令信号どおりの振幅の駆動電圧を振動型アクチュエータに印加することができる。
よって、駆動電圧の振幅を変調させる際に、指令値どおりの変調波を発生させることや、駆動電圧の振幅で振動型アクチュエータの状態量を制御する際に、高精度な制御を行うことが可能となる。
【0020】
本実施例では、図6(a)のように、波高値が+Vdと−Vdのパルス信号で駆動させた場合を例として示した。
一方、波高値が+Vdまたは−Vdのみのパルス信号で駆動する場合でも、基本波の電圧振幅とパルス信号のパルス幅の関係は図7に示す逆正弦関数の関係になるため、+Vdまたは−Vdのみのパルス信号で駆動させても良い。
本実施例によれば、前記交流電圧と同じ周波数で且つ前記交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号の基本周波数(前記交流電圧の周波数)成分の振幅を電圧振幅指令に比例した振幅値とすることができる。
これによって、振動型アクチュエータに任意の振幅の交流電圧を印加する回路を効率の良い安価な回路で構成することが可能となる。
【0021】
[実施例2]
実施例2として、目標速度と実際の駆動速度の差に応じて決定する駆動電圧の振幅を、パルス信号のパルス幅で速度制御を行う振動型アクチュエータの速度制御装置の構成例について説明する。
但し、振動型アクチュエータの回転速度を制御する以外の基本的な構成は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図9は振動型アクチュエータの速度制御装置を示したブロック図である。
図9において、13は速度指令部であり、振動型アクチュエータ1の目標速度である速度指令信号18を発生させ、後述する振幅指令演算部15に送る。
14は速度センサ(アクチュエータの回転速度の検出手段)であり、これにより振動型アクチュエータ1の状態量(実際の駆動速度)である回転速度16を検出し、速度検出信号17を振幅指令演算部15に与える。
振幅指令演算部15は、速度センサ14により検出された前記状態量と、所定の状態量との差に応じて交流電圧の電圧振幅指令を出力する制御手段である。
具体的には、この振幅指令演算部15では、速度指令信号18が大きい程、駆動電圧の振幅が大きくなるように、速度検出信号17と速度指令信号18を用いて比例積分演算を行い、演算結果である振幅指令信号6を振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3に送る。
【0022】
振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3では、振幅指令信号6を、本実施例で示した振幅指令信号−パルス幅指令変換テーブルをもとにパルス幅指令信号7に変換している。
そのため、振動型アクチュエータ1に印加する駆動電圧の振幅を、振幅指令信号6の変化に対して線形に変化させることができる。
仮に、パルス幅指令信号7を振幅指令信号6の変化に対して線形に変化させると、振幅指令信号6の変化量が同じでも駆動電圧の振幅の変化量はパルス幅指令信号7の値により異なるため、制御が不安定になる可能性がある。
しかし、本実施例の速度制御装置で振動型アクチュエータ1を駆動すると、振幅指令信号6の変化に応じた駆動電圧の振幅の変化を、常に一定にすることができるため、より安定した速度制御を行うことが可能となる。
本実施例によれば、振動型アクチュエータを制御する際に、状態量と目標とする状態量との差に応じて振動型アクチュエータに印加する交流電圧の振幅の変化量を、パルス幅の値によらず常に一定にすることができ、より安定した制御を行うことが可能となる。
また、本実施例では、状態量として速度を用いたが、速度以外にもトルクや振動子の振動振幅を状態量として用いてもよい。
【0023】
[実施例3]
実施例3として、振幅および位相差が周期的に変化する2相の交流信号を振動型アクチュエータに印加して、振動型アクチュエータを低速で駆動する振動型アクチュエータの駆動装置の構成例について説明する。
本実施例では、振動型アクチュエータを低速で安定して駆動させるために、振動子に振動振幅が所定の周期で変調された(周期的変調パターンによる)振幅変調進行性振動波を発生させる。
本実施例で述べる振幅変調進行性振動波は、図11に示すような位相の異なる2相(A相とB相)の加振信号の合成によって形成される。
【0024】
図12に、振動子に励起される振幅変調進行性振動波の振動軌跡を実線で示す。なお、図12における太線で示す楕円は、上記振動軌跡のある1周期分の振動軌跡(以下楕円軌跡と呼ぶ)を表したものである。細線で示す複数の楕円軌跡は楕円軌跡の回転の様子を示しており、矢印は楕円軌跡の回転方向を示している。また、A相変位は図3に示した電極10a(+)と電極10a(−)の中心を結ぶ方向の振動変位を示しており、B相変位は電極10b(+)と電極10b(−)の中心を結ぶ方向の振動変位を示している。
このような楕円軌跡で振動する振幅変調進行性振動波で振動型アクチュエータを駆動すると、楕円軌跡の長軸方向の振動でロータを振動体から十分浮かせつつ、短軸方向の振動振幅に比例してロータの回転速度を制御できるので、低速で安定して駆動可能となる。
また、上記楕円軌跡の長軸方向を一定周期で回転させることで、ロータと移動体間の面圧むらによる速度変化を低減している。
【0025】
次に、図10に示す本実施例の駆動装置の動作について説明する。
図10は、振動型アクチュエータの駆動装置のブロック図を示したものであり、周期タイミング発生部19は、後述する振幅変調指令部20、21から振幅指令信号28、29を発生させるための周期タイミング信号27を発生させるものである。
振幅変調指令部20、21は、周期タイミング信号27を受けると、図11に示す変調波が振動型アクチュエータ1に印加されるように、あらかじめ記憶している振幅指令信号28、29を発生させて振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部22、23に送る。
振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部22、23は、実施例1および実施例2記載の振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部3と同じものである。
振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部22、23では、振幅指令信号28、29を、振幅指令信号−パルス幅指令信号変換テーブルをもとにパルス幅指令信号30、31に変換し、パルス発生部25、26にそれぞれ送る。
位相差変調指令部24は周期タイミング信号27を受けると、パルス発生部25、26で生成するパルス信号の時間的位相に相当する位相差信号32を、パルス発生部25、26に与える。
パルス発生部25、26では、パルス幅指令信号30、31に相当するパルス幅のパルス信号33(図5のp81〜p84)、34(図5のp85〜p88)を、位相差信号32に相当する時間的位相でそれぞれ発生させる。
そして、パルス信号33、34によりドライバ5でA相とB相の駆動電圧Φ10a+、Φ10a−、Φ10b+、Φ10b−を生成して、振動型アクチュエータ1に印加する。
【0026】
以上のような動作を行う駆動装置を構成することで、図12に示すような楕円軌跡の長軸成分の大きさが、楕円軌跡の長軸方向の回転変化によらず一定である振動を形成することができる。
これに対して、パルス幅指令信号30、31を振幅指令信号28、29の変化に応じて線形に変化させて振幅変調進行性振動波を発生させた場合、楕円軌跡の長軸方向の回転変化によって楕円軌跡の形状が変化し、回転むらが発生してしまう。
従って、本方式で振動型アクチュエータを駆動すれば、パルス幅指令信号を振幅指令信号の変化に応じて線形に変化させて駆動する方式と比較して、回転むらが低減し、より安定して振動型アクチュエータを駆動することが可能となる。
本実施例では、振幅変調指令部と振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部を2つに分けた。
しかし、変調波のように出力する駆動電圧の振幅が既知の場合には、振幅変調指令部に振幅指令信号−パルス幅指令変換テーブルをもとに計算したパルス幅を記憶させ、直接パルス幅指令信号を発生させても良い。
また、本実施例では周期タイミング信号27を時間に同期して発生させたが、ロータの回転位置情報に同期して発生させても良い。
さらに、不図示の状態量検出手段により状態量を検出し、状態量に応じて振幅変調指令部20、21および位相差変調指令部24の変調度を変化させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0027】
1:振動型アクチュエータ
2:振幅指令発生部
3:振幅指令信号−パルス幅指令信号変換部
4:パルス発生部
5:ドライバ
6:振幅指令信号
7:パルス幅指令信号
8:パルス信号
9:振動体
10:圧電素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加して振動体に振動を励起し、前記振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させ、
前記移動体を前記振動体に対して相対移動させる振動型アクチュエータの駆動装置であって、
前記交流電圧の振幅を指令する電圧振幅指令手段と、
前記電圧振幅指令手段から出力された前記電圧振幅指令の増加に応じて、パルス幅指令およびパルス幅指令の変化率を単調に増加させてパルス幅指令を出力するパルス幅指令手段と、
前記交流電圧と同じ周波数で且つ前記交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号を生成して電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加する際に、
前記パルス幅指令手段から出力された前記パルス幅指令に基づいて、該パルス幅指令に相当するパルス幅のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
を有することを特徴とする振動型アクチュエータの駆動装置。
【請求項2】
電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加して振動体に振動を励起し、前記振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させ、
前記移動体を前記振動体に対して相対移動させる振動型アクチュエータの駆動装置であって、
前記振動型アクチュエータの状態量を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記状態量と、所定の状態量との差に応じて前記交流電圧の電圧振幅指令を出力する制御手段と、
前記制御手段から出力された前記電圧振幅指令の増加に応じて、パルス幅指令およびパルス幅指令の変化率を単調に増加させてパルス幅指令を出力するパルス幅指令手段と、
前記交流電圧と同じ周波数で且つ前記交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号を生成して電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加する際に、
前記パルス幅指令手段から出力された前記パルス幅指令に基づいて、該パルス幅指令に相当するパルス幅のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
を有することを特徴とする振動型アクチュエータの駆動装置。
【請求項3】
前記パルス幅指令手段は、前記電圧振幅指令の逆正弦関数に応じて前記パルス幅指令を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型アクチュエータの駆動装置。
【請求項4】
前記電圧振幅指令手段は、所定の周期的変調パターンで前記電圧振幅指令を変化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータの駆動装置。
【請求項1】
電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加して振動体に振動を励起し、前記振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させ、
前記移動体を前記振動体に対して相対移動させる振動型アクチュエータの駆動装置であって、
前記交流電圧の振幅を指令する電圧振幅指令手段と、
前記電圧振幅指令手段から出力された前記電圧振幅指令の増加に応じて、パルス幅指令およびパルス幅指令の変化率を単調に増加させてパルス幅指令を出力するパルス幅指令手段と、
前記交流電圧と同じ周波数で且つ前記交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号を生成して電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加する際に、
前記パルス幅指令手段から出力された前記パルス幅指令に基づいて、該パルス幅指令に相当するパルス幅のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
を有することを特徴とする振動型アクチュエータの駆動装置。
【請求項2】
電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加して振動体に振動を励起し、前記振動体に対し相対移動可能とされている移動体との間に駆動力を発生させ、
前記移動体を前記振動体に対して相対移動させる振動型アクチュエータの駆動装置であって、
前記振動型アクチュエータの状態量を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記状態量と、所定の状態量との差に応じて前記交流電圧の電圧振幅指令を出力する制御手段と、
前記制御手段から出力された前記電圧振幅指令の増加に応じて、パルス幅指令およびパルス幅指令の変化率を単調に増加させてパルス幅指令を出力するパルス幅指令手段と、
前記交流電圧と同じ周波数で且つ前記交流電圧を直接又は間接的に生成するパルス信号を生成して電気−機械エネルギー変換素子に交流電圧を印加する際に、
前記パルス幅指令手段から出力された前記パルス幅指令に基づいて、該パルス幅指令に相当するパルス幅のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
を有することを特徴とする振動型アクチュエータの駆動装置。
【請求項3】
前記パルス幅指令手段は、前記電圧振幅指令の逆正弦関数に応じて前記パルス幅指令を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動型アクチュエータの駆動装置。
【請求項4】
前記電圧振幅指令手段は、所定の周期的変調パターンで前記電圧振幅指令を変化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータの駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−62938(P2013−62938A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199514(P2011−199514)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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