説明

排気ガス処理担体保持用マット及び排気ガス処理装置

【課題】排気ガス処理装置としての組み立て性や歩留まりを維持しつつ、担体のずれを抑え、シール性を高めることのできる排気ガス処理担体保持用マットを提供する。
【解決手段】この排気ガス処理担体保持用マット10は、排気ガス処理装置の容器である筒状のシェルの内周面とそのシェルに内包される柱状の排気ガス処理担体の外周面との間に狭持される。ここでは、筒状のシェルの内周面との対抗面となる表面10aに、凸部を分布形成する態様で部分埋設された熱溶融性材料からなる粒体15を担持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス処理装置の内部において、排気ガス処理担体を保持するために用いられる排気ガス処理担体保持用マット、及び該マットを用いて組み立てられた排気ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の排気ガス処理担体保持用マットとしては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。図6(a)に、こうした排気ガス処理担体保持用マットの模式的な斜視構成を、また図6(b)に、図6(a)のE−E線に沿った断面構造をそれぞれ示す。
【0003】
図6(a)に示されるように、短冊状からなる排気ガス処理担体保持用マット100には、その厚み方向に対する垂直な一対の平面である表面100a及び裏面100bが設けられている。なお、このマット100自体は、無機繊維を積層させることにより形成されている。また、図6(b)に示されるように、同マット100の表面100aには、均一な密度で取り付けられた複数のニードルを繰り返し突き刺すニードリング処理が施されることによって、均一な凹凸構造が形成されている。
【0004】
また、図7は、こうした排気ガス処理担体保持用マット100が巻装された排気ガス処理担体が排気ガス処理装置の容器である金属シェルに嵌入される過程を模式的に示したものである。
【0005】
図7に示されるように、円筒状の金属シェル300の開口300eから嵌入される円柱状の排気ガス処理担体200には、その外周面に、排気ガス処理担体保持用マット100がその表面100aが表となるように、巻装されている。また、こうしてマット100が巻装された排気ガス処理担体200の最大外径DGは、金属シェル300の内径DMよりも若干径大となるように寸法設定されている。そして、マット100が巻装された排気ガス処理担体200は、その外周面が金属シェル300の内周面300bに対して押し付けられながら金属シェル300に矢印AREの方向に向けて嵌入される。なおこのとき、上記巻装されている排気ガス処理担体保持用マット100の表面100aには、上述のように均一な凹凸構造が形成されているために、金属シェル300の内周面300bとの接触面積が抑えられ、ひいてはそれらの間で矢印ARFの方向に発生する摩擦力も抑制されるようになる。すなわち、排気ガス処理担体保持用マット100が排気ガス処理担体200から捲れることを抑制しつつ、同排気ガス処理担体200を金属シェル300に容易に嵌入することができ、その組み立て性が高められるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−268514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記マット100が巻装された排気ガス処理担体200が金属シェル300に嵌入された構造となる排気ガス処理装置は通常、車載内燃機関の排気管に接続されるが、同装置がこうして排気管に接続された場合には、排気ガス処理担体200に対して排気ガスよる押圧力がかかることになる。特に近年は、排気ガス規制の強化に伴って、触媒コンバータやDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)等の排気ガス処理装置も大型化されるとともに、排気ガス圧も昇圧される傾向にある。そのため、排気ガス処理装置内での排気ガス処理担体200のずれを抑え、かつシール性を確保するためには、金属シェル300に対する排気ガス処理担体200の嵌合強度、すなわち同排気ガス処理担体200の上記排気ガス処理担体保持用マット100を含めた金属シェル300との結合強度を高める必要がある。しかし、金属シェル300との間でこうして結合強度を高めるようにすれば、自ずと上記マット100の圧入抵抗等も高めざるをえず、結局のところ、排気ガス処理装置としての上述した組み立て性の低下や歩留まりの低下が無視できなくなる。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気ガス処理装置としての組み立て性や歩留まりを維持しつつ、担体のずれを抑え、シール性を高めることのできる排気ガス処理担体保持用マット、及び該マットを用いて組み立てられた排気ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、排気ガス処理装置の容器である筒状のシェルの内周面と同シェルに内包される柱状の排気ガス処理担体の外周面との間に狭持される排気ガス処理担体保持用マットであって、前記シェルの内周面との対向面となる面に、凸部を分布形成する態様で部分埋設された熱溶融性材料からなる粒体が担持されてなることを要旨とする。
【0010】
排気ガス処理担体保持用マットとしてのこのような構成によれば、凸部として分布形成された粒体により、排気ガス処理担体をシェルに嵌入させるときには、排気ガス処理担体保持用マットとシェルの内周面との接触面積が抑えられ、ひいてはそれらの間で発生する摩擦力も抑制されるようになる。このため、排気ガス処理担体保持用マットの捲れ等を抑制しつつ、排気ガス処理装置の組み立て性を高めることができるようになる。また、粒体は上記面に部分埋設、すなわち一部が上気凸部として突出した状態でその他の部分が埋設された状態に保持されているために、該粒体の担持も安定して実現されるようになる。しかも、上記粒体は熱溶融性の材料からなることから、排気ガス処理装置の組み立ての際、これを加熱することで排気ガス処理担体保持用マットとシェルの内周面との接触面積が広げられ、ひいてはそれらの間で発生する摩擦力を高めることができるようにもなる。すなわち、シェル内における排気ガス処理担体のずれを抑え、ひいてはシール性を高めることができるようにもなる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排気ガス担体処理保持用マットにおいて、前記粒体は、同一方向に転動可能に部分埋設されてなることを要旨とする。
このような構成によれば、上記転動の方向を排気ガス処理担体の嵌入方向に一致させることで、上記担持された粒体がいわゆるころの働きを担うようになり、排気ガス処理担体の上記シェルへの嵌入もより容易となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の排気ガス担体処理保持用マットにおいて、前記粒体は球状の形状からなることを要旨とする。
このような構成によれば、上記粒体の転動方向を常に排気ガス処理担体の嵌入方向に一致させることができるとともに、当該マットに対する粒体の担持も容易となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気ガス担体処理保持用マットにおいて、前記粒体は、車載内燃機関の車両走行時における排気ガス温度によって溶融する樹脂からなることを要旨とする。
【0014】
このような構成によれば、当該排気ガス処理担体保持用マットを内蔵する排気ガス処理装置では、これを車両に組み込むだけで上述した粒体の加熱効果を得ることができるようになる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス処理担体保持用マットにおいて、当該マットが繊維集合体からなり、前記粒体は、前記繊維集合体と同粒体との結合材であるエマルションの乾燥痕を含む層に部分埋設されてなることを要旨とする。
【0016】
このような構成によれば、粒体とエマルションとを分散させた液体を排気ガス処理担体保持用マットの上記対向面となる面から吹き付けて、粒体を上記対向面となる面に残置させつつエマルションを繊維集合体に含侵させることができる。また、その後乾燥させつつ、粒体を部分埋設させることができるようにもなり、粒体の安定した担持が容易に実現されるようになる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、柱状の排気ガス処理担体がその外周面を排気ガス処理担体保持用マットにより包まれた状態で筒状のシェルに内包されてなる排気ガス処理装置において、前記排気ガス処理担体保持用マットとして、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気ガス処理担体保持用マットを備えることを要旨とする。
【0018】
排気ガス処理装置としてのこのような構成によれば、排気ガス処理担体保持用マットとしての上述の作用効果に基づき、当該排気ガス処理装置の組み立て性や歩留まりを高めつつ、排気ガス処理担体のずれの抑制や、シール性の向上を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、本発明にかかる排気ガス処理担体保持用マットの一実施の形態についてその斜視構造を模式的に示す斜視図。(b)は、(a)のA−A断面を拡大して示す拡大断面図。
【図2】(a)〜(d)は、同実施の形態の排気ガス処理担体保持用マットの製造過程を模式的に示す断面図。
【図3】(a)は、同実施の形態の排気ガス処理担体保持用マットが巻装された排気ガス処理担体の斜視構造を模式的に示す斜視図。(b)は、(a)の領域Bにおける断面を拡大して示す拡大断面図。
【図4】(a),(b)は、上記実施の形態の排気ガス処理担体保持用マットを用いた本発明にかかる排気ガス処理装置の一実施の形態についてその組み立て工程を模式的に示す断面図。(c)は、(b)の領域Cにおける断面を拡大して示す拡大断面図。
【図5】(a),(b)は、同実施の形態の排気ガス処理装置の内燃機関への組み付け後の態様を模式的に示す断面図。(c)は、(b)の領域Dにおける断面を拡大して示す拡大断面図。
【図6】(a)は、従来の排気ガス処理担体保持用マットについてその斜視構造を模式的に示した斜視図。(b)は、(a)のE−E断面を拡大して示す拡大断面図。
【図7】従来の排気ガス処理担体保持用マットが巻装された被覆排気ガス処理担体が金属シェルに嵌入される過程を模式的に示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる排気ガス処理担体保持用マットの一実施形態について、図1,図2を参照して詳細に説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態の排気ガス処理担体保持用マットの構造について説明する。
【0021】
本実施の形態の排気ガス処理担体保持用マットは、排気ガス処理担体に巻装されるものであり、無機繊維を積層させることにより形成されている。そして、図1(a)に示すように、短冊状の排気ガス処理担体保持用マット10には、その厚み方向に対する垂直な一対の平面として表面10a及び裏面10bが設けられている。
【0022】
ここで、図1のA−A線に沿った拡大断面構造に基づいて、排気ガス処理担体保持用マット10の構造を更に詳述する。
図1(b)に示すように、排気ガス処理担体保持用マット10の表面10aには、凸部を分布形成する態様で部分埋設された球状の粒体15が担持されている。具体的には、例えば直径0.05mm〜0.2mmの粒体15が1平方センチメートル当たり30個〜70個担持されるように、凸部が分布形成されている。なお、この粒体15は、運転状態にある内燃機関の排気ガスの熱によって溶融し得る熱溶融性材料によって形成されている。また、排気ガス処理担体保持用マット10は、通常円柱状からなる排気ガス処理担体の外周面と上記裏面10bとが互いに密着するように巻装される。
【0023】
次に、排気ガス処理担体保持用マット10の製造方法の一例について、図2を参照して詳細に説明する。
まず、図2(a)に示すように、マット材10Mを用意する。なお、このマット材10Mは、周知の無機繊維の集合体からなり、その内部は乾燥領域10Dによって占められている。
【0024】
次に、図2(b)に示すように、粒体15とエマルションEMとが分散した液体をマット材10Mの表面10aに吹き付けていく。ちなみに、上記液体は攪拌器SBによって攪拌されつつタンクTKに貯留されており、該タンクTKから引き出されたパイプPの先端から噴射されることによって上記吹き付けが行われる。その結果、上記液体が吹き付けられた領域の表面10a上に粒体15が均一に分布するように残置されるとともに、エマルションEMは浸透してマット材10Mの内部に含侵される。そして、このようにエマルションEMの含侵された領域が含侵領域10Wとなる。
【0025】
次に、図2(c)に示すように、上記液体を表面10aの全域に吹き付けられたマット材10Mの表面10a及び裏面10bを、互いに近づくように加熱しながらプレスすると同時に送風乾燥する。詳述すると、周知のプレス機によって表面10aに分散残置された粒体15がマット材10Mに部分埋設されるように加熱されながら押し込まれるとともに、矢線で示す表面10aから裏面10bの方向への送風によって含侵領域10WからエマルションEMの水分が除去される。なおこの際、粒体15が溶融しない程度の温度に加熱を制限することに留意する。
【0026】
これにより、図2(d)に示すように、粒体15が部分埋設、すなわち各々表面10aから突出する凸部が分布形成された状態でその他の部分がマット材10Mに埋設された状態に保持されるようになる。また、排気ガス処理担体保持用マット10の無機繊維積層部分(マット材10M)は、エマルションEMから水分が除去された乾燥領域10Dとなる。こうして、粒体15が無機繊維積層部分(無機繊維集合体)と同粒体15との結合材であるエマルションEMの乾燥痕を含む層に部分埋設された排気ガス処理担体保持用マット10が得られる。
【0027】
次に、このように製造された本実施の形態の排気ガス処理担体保持用マット10が巻装された排気ガス処理担体について、図3を参照して詳細に説明する。
この排気ガス処理担体は、例えば、車載ガソリン機関で使用される三元触媒や車載ディーゼル機関で用いられるDPF等のフィルターに相当するものである。図3(a)に示すように、この排気ガス処理担体20には、その外周面20aと排気ガス処理担体保持用マット10の裏面10bとが互いに密着するように排気ガス処理担体保持用マット10が巻装され、かつ緊結されている。その結果、排気ガス処理担体保持用マット10が巻装された排気ガス処理担体20の最大外径部分における外周面は、上述のように製造された排気ガス処理担体保持用マット10の表面10aとなる。すなわち、図3(b)に示されるように、排気ガス処理担体20の最大外径部分における外周面に、上述のように部分埋設された粒体15による凸部が分布形成されることになる。
【0028】
次に、上記構成を有する排気ガス処理担体保持用マット10の作用として、同マット10が巻装された排気ガス処理担体20を金属シェル30に嵌入する際にもたらされる作用について図4を参照して詳細に説明する。
【0029】
図4(a)に示すように、排気ガス処理担体保持用マット10が巻装された円柱状の排気ガス処理担体20の最大外径DGは、円筒状の金属シェル30の内径DMよりも若干拡径されるように寸法設定されている。そして、上記最大外径における外周面、すなわち排気ガス処理担体保持用マット10の表面10aが、金属シェル30の内周面30bに押し付けられながら、金属シェル30に矢印AR1の方向に向けて嵌入される。その際、排気ガス処理担体保持用マット10の表面10aと金属シェル30の内周面30bとの間には、矢印AR1と反対方向である矢印ARF1の方向に摩擦力(抵抗力)が発生する。またこのとき、上記表面10aの突端は、内径が徐々に絞られる形状の嵌入冶具40によって案内される。すなわち、表面10aの最大外径DGは嵌入冶具40の内径によって徐々に縮径化されるために、嵌入冶具40を用いない場合と比べて滑らかに上記嵌入を行うことができるようになる。
【0030】
そして、図4(b)に示すように、矢印AR1の方向に向けた上記嵌入を継続すると、排気ガス処理担体保持用マット10の全体が金属シェル30の径方向に均等に圧縮されるようになる。ここで、金属シェル30の内周面30bと接触する排気ガス処理担体保持用マット10の表面10aには上述のように、粒体15による凸部が分布形成されているため、内周面30bとの接触面積が抑えられ、ひいてはそれらの間で矢印ARF1の方向に発生する摩擦力も、凸部が分布形成されていない場合と比べて抑制されるようになる。
【0031】
また、上記嵌入の過程では、図4(c)に示すように、各粒体15は金属シェル30の内周面30bに押し付けられながら移動するために、矢印AR1と反対方向に各粒体15を転動させようとする矢印AR2の方向へのモーメントが発生する。その結果、このモーメントによって、各粒体15はそれまで部分埋設されていた担持跡を回転ガイドとする回転運動が許容されるようになる。すなわち、各粒体15が矢印AR2の方向に転動する、いわゆるころの働きを担うようになるために、矢印ARF1の方向に発生する上記摩擦力がさらに抑制されるようになる。
【0032】
このように、排気ガス処理担体保持用マット10としての上記構成によれば、排気ガス処理担体20から捲れたり無機繊維積層部分が折れたりすることをさらに抑制しつつ、排気ガス処理担体20を金属シェル30に容易に嵌入することができ、排気ガス処理装置としての組み立て性が大幅に高められるようになる。
【0033】
次に、上記構成を有する排気ガス処理担体保持用マット10の作用として、同マット10が巻装された排気ガス処理担体20を内蔵する車載排気ガス処理装置が使用される際にもたらされる作用について図5を参照して詳細に説明する。
【0034】
図5(a)に示すように、内燃機関を車両に搭載する工程として組み付けが行われた直後の排気ガス処理装置は、その排気管の一部を構成する円筒状の金属シェル30と、排気ガス処理担体20との間にあって、上記排気ガス処理担体保持用マット10の各粒体15が転動可能な状態にある。その後、車両の走行に伴って内燃機関が稼動すると、それら各粒体15は、同機関から矢印AR3の方向に排出される高温の排気ガスに曝されるようになる。そしてその結果、図5(b)に示すように、上記排気ガスの熱によって、熱溶融性材料からなる粒体15及びエマルションEMの乾燥痕を含む層に残留していたバインダー(図示略)が共に溶融されて、排気ガス処理担体保持用マット10の表面10aの全面が金属シェル30の内周面30bと密着するようになる。詳述すると、図5(c)に示すように、表面10aと内周面30bとを離間させていた各粒体15とエマルションEMの乾燥痕を含む層を硬化させていた上記バインダーとの溶融によって、柔軟性を回復した排気ガス処理担体保持用マット10の表面10aは、各粒体15の担持跡も含めて矢印AR4の方向に膨張するようになる。これにより、排気ガス処理担体保持用マット10の表面10aの全面が金属シェル30の内周面30bと密着するようになるために、金属シェル30の内部にて排気ガス処理担体20を保持する大きな保持力(摩擦力)が、上記矢印AR3の方向と抗する方向に、すなわち矢印ARF2の方向に生じるようになる。そしてこれにより、金属シェル30内における排気ガス処理担体20のずれを抑え、ひいてはシール性を高めることができるようになる。
【0035】
換言すると、上記構成を有する排気ガス処理担体保持用マット10を内蔵した排気ガス処理装置では、同マット10の作用によって、排気ガス処理装置自らの組み立て性や歩留まりが高められるとともに、該排気ガス処理装置内における排気ガス処理担体20のずれが抑制され、かつシール性も高められるようになる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態にかかる排気ガス処理担体保持用マット、あるいは排気ガス処理装置によれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)排気ガス処理担体保持用マット10の金属シェル30の内周面30bとの対向面となる面である表面10aに、凸部を分布形成する態様で部分埋設された熱溶融性材料からなる粒体15を担持させるようにした。その結果、排気ガス処理担体20を金属シェル30に嵌入させるときには、表面10aと内周面30bとの接触面積が抑えられ、ひいてはそれらの間で発生する摩擦力も抑制することができるようになる。すなわち、排気ガス処理担体保持用マット10の捲れ等を抑制しつつ、排気ガス処理装置の組み立て性を高めることができるようになる。
【0037】
(2)排気ガス処理担体保持用マット10を内蔵する排気ガス処理装置では、粒体15を加熱することによって、同粒体15により分布形成されている凸部が溶融される。その結果、表面10aと内周面30bとの接触面積が広げられ、ひいてはそれらの間で発生する摩擦力を高めることができるようにもなる。
【0038】
(3)排気ガス処理担体20を金属シェル30に嵌入するときに発生するモーメントによって、各粒体15はそれまで部分埋設されていた担持跡を回転ガイドとする回転運動が許容されるようになる。すなわち、各粒体15が転動するいわゆるころの働きを担うようになるために、排気ガス処理担体20を金属シェル30にさらに容易に嵌入することができるようになる。
【0039】
(4)粒体15は、運転状態にある内燃機関の排気ガスの熱によって溶融する熱溶融性材料によって形成されている。そのため、排気ガス処理担体保持用マット10を内蔵する排気ガス処理装置では、同装置を車両に組み込むだけで上述した粒体の加熱効果を得ることができるようになる。
【0040】
(5)粒体15とエマルションEMとを分散させた液体を表面10aから吹き付けて、粒体15を表面10aに分散残置させつつエマルションEMを繊維集合体に含侵させることができる。また、その後乾燥させることによって、表面10aを含むように形成されたエマルションEMの乾燥痕(バインダー)を含む層に粒体15を均一に分布かつ部分埋設させることができるようにもなる。そして、粒体15及び上記バインダーの溶融後によって、柔軟性を回復した繊維集合体の復元力によって粒体15の担持跡を消去しつつ、排気ガス処理装置内において、表面10aと内周面30bとの接触面積をさらに広げることができるようにもなる。
【0041】
(6)排気ガス処理担体保持用マット10を内蔵する排気ガス処理装置では、同マット10の作用によって、排気ガス処理装置自らの組み立て性や歩留まりが高められるとともに、該排気ガス処理装置内における排気ガス処理担体20のずれが抑制され、かつシール性も高められるようになる。
(変形例)
なお、上記実施の形態は、以下のような態様をもって実施することもできる。
【0042】
・上記実施の形態において、粒体15は球状の形状からなるとしたが、真球に限らず、多少の凹凸があってもよい。また、球状の形状に限らず、例えば円柱状や樽状の中実形状であっても、円筒状の中空形状であってもよい。要は、表面10a上にて、転動しやすい形状の粒体15が、転動方向が排気ガス処理担体保持用マット10の嵌入方向に一致するように担持されていればよい。このようにしても、上記(1)〜(6)に準じた効果を得ることはできる。
【0043】
・上記実施の形態において、粒体15は転動可能であるとしたが、これに限らず、転動しない構成であってもよい。すなわち、粒体15は、例えば円錐状や角錐状等の先細りした形状であって、先細りした部分が凸部を形成するものであってもよい。要は、上記マット10の表面10aと金属シェル30の内周面30bとの接触面積を縮小することのできる構造であればよい。加えて、排気ガス処理担体20の嵌入を滑らかにするためには、凸部の先端は曲面であることがより望ましい。
【0044】
・粒体15が溶融する温度は、150℃〜200℃であることが望ましい。この程度の溶融温度とすれば、内燃機関の暖機運転時の排気ガスであっても粒体15を溶融させることができるようになる。
【0045】
・粒体15は排気ガスの熱によって溶融するものだけでなく、焼失する有機物であってもよい。要は、上記マット10の表面10a上にて凸部を形成して排気ガス処理担体20の嵌入時に表面10aと金属シェル30の内周面30bとの接触面積を縮小するとともに、その後、排気ガスの熱等によって表面10aから除去されて、マット材10Mを形成する無機繊維集合体としての本来の性質を出現させ得るものであればよい。
【0046】
・マット材10Mは無機繊維集合体であるとしたが、具体的にはセラミック繊維やガラス繊維等の集合体とすることが望ましい。また、繊維集合体であるかないかに拘らず、柔軟性があって圧縮力が解除された場合には元の形状に復元する機能を有する材料であればよい。要は、粒体15が溶融したとしても、これに追随して溶融せず、かつ柔軟性のある材料によってマット材10Mが構成されていればよい。
【0047】
・エマルションEMの乾燥痕であるバインダーは、粒体15を表面10aに担持することができる接着力を有するとともに、上記乾燥痕を含む層の曲げ性を担保するためには、有機性であることが望ましい。中でも汎用性や扱い易さに優れ、粒体15と同等の150℃〜200℃の温度帯で溶融するラテックス樹脂であることが特に望ましい。
【0048】
・上記実施の形態において、排気ガス処理担体20を嵌入する容器は金属シェル30であるとしたが、これに限らず、例えば耐熱性を有する樹脂製のシェルであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
10,100…排気ガス処理担体保持用マット、10a,100a…表面、10b,100b…裏面、10M…マット材、10D…乾燥領域、10W…含侵領域、15…粒体、20,200…排気ガス処理担体、20a…外周面、30,300…金属シェル、30b,300b…内周面、40…嵌入冶具、300e…開口、DG…最大外径、DM…内径、EM…エマルション、P…パイプ、SB…攪拌器、TK…タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス処理装置の容器である筒状のシェルの内周面と同シェルに内包される柱状の排気ガス処理担体の外周面との間に狭持される排気ガス処理担体保持用マットにおいて、
前記シェルの内周面との対向面となる面に、凸部を分布形成する態様で部分埋設された熱溶融性材料からなる粒体が担持されてなる
ことを特徴とする排気ガス処理担体保持用マット。
【請求項2】
前記粒体は、同一方向に転動可能に部分埋設されてなる
請求項1に記載の排気ガス処理担体保持用マット。
【請求項3】
前記粒体は球状の形状からなる
請求項1または2に記載の排気ガス処理担体保持用マット。
【請求項4】
前記粒体は、車載内燃機関の車両走行時における排気ガス温度によって溶融する樹脂からなる
請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気ガス処理担体保持用マット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス処理担体保持用マットにおいて、
当該マットが繊維集合体からなり、前記粒体は、前記繊維集合体と同粒体との結合材であるエマルションの乾燥痕を含む層に部分埋設されてなる
ことを特徴とする排気ガス処理担体保持用マット。
【請求項6】
柱状の排気ガス処理担体がその外周面を排気ガス処理担体保持用マットにより包まれた状態で筒状のシェルに内包されてなる排気ガス処理装置において、
前記排気ガス処理担体保持用マットとして、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気ガス処理担体保持用マットを備える
ことを特徴とする排気ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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