説明

排気浄化用触媒の燃料添加制御装置

【課題】燃料添加弁のデポジット除去機能を維持しつつ、燃費の改善を図ることのできる排気浄化用触媒の燃料添加装置を提供する。
【解決手段】燃料添加制御装置は、ディーゼル機関10の排気管12内に設けられた排気浄化用触媒20に燃料を添加する燃料添加弁42による燃料添加間隔をディーゼル機関10の運転状態に応じて制御する。具体的には、燃料添加制御装置は、燃料添加弁42が設けられた排気通路12a内の圧力値に応じた2つのモードのいずれか一方のモードにて燃料添加弁42の駆動を制御する。これら2つのモードのうち、一方のモードは、圧力値が例えば50kPaよりも高ければ、圧力測定値が低いほど燃料添加弁42による燃料添加間隔を長くするように補正するモードであり、他方のモードは、圧力値が例えば50kPa以下であれば、燃料添加弁42による燃料添加を禁止するように設定するモードである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化用触媒に燃料を添加する燃料添加弁の噴射タイミングを制御する排気浄化用触媒の燃料添加制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の排気浄化用触媒の燃料添加制御装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この装置では、ディーゼル機関の排気管に燃料を噴射する燃料添加弁を設け、同燃料添加弁から排気管内の排気浄化用触媒へ燃料を添加することで、同排気浄化用触媒の還元等を行うようにしている。この際、燃料添加弁の噴射ノズルの噴射孔周りには、燃料の後だれや排気中の煤を主成分とする微粒子(パティキュレート)等の固化により、例えば図8の領域Aを拡大した図に示すような態様でデポジットが形成され、このデポジットが噴射ノズル132Nの噴射孔132Hを詰まらせることがある。そのため、このようなデポジットの除去を目的として、上記排気浄化用触媒の還元等を目的とした燃料噴射とは別に、強制的に燃料添加弁132の駆動(燃料噴射)を行うようにしている。
【0003】
一方、このようなデポジットの形成は、前記噴射孔132H付近の温度が高いほど促進されることが知られている。そこで特許文献1に記載の装置では、前記噴射孔132H付近の温度の高低、すなわちディーゼル機関の運転状態を示すパラメータである機関回転数及び機関負荷、吸入空気量、並びに冷却水温等々に応じて上記強制的な燃料噴射を行うまでの時間を補正することによって、上記デポジットの形成を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−106047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の装置では、上記パラメータが燃料添加弁132の噴射孔132H付近の温度を高くする側に変化するときデポジットの除去を目的として、上記強制的な燃料噴射までの時間が短くなるように補正される。しかしこのことは、ディーゼル機関の気筒内に噴射されない燃料の量が増加することをも同時に意味することから、結果として燃費の悪化を招くことにもなる。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料添加弁のデポジット除去機能を維持しつつ、燃費の改善を図ることのできる排気浄化用触媒の燃料添加制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、排気浄化用触媒に燃料を添加する燃料添加弁を排気通路に備え、機関運転状態に基づいて設定される第1の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第1燃料噴射と、機関運転状態に基づいて設定される第2の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第2燃料噴射とを実行する排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、前記排気通路内の圧力が低いときほど、前記第2の所定の燃料添加間隔を長くすることをその要旨とする。
【0008】
排気通路内の圧力が高いときには、排気の密度が高くその熱容量が大きい。このため、排気通路内の圧力が高いときには、燃料添加弁のノズルに付着している燃料の揮発成分が気化して、デポジットが生じ易い。一方、排気通路内の圧力が低いときには、排気の密度が低くその熱容量が小さい。そのため、燃料添加弁のノズルに燃料が付着していたとしても、燃料の揮発成分が気化せず、デポジットが生じ難い。
【0009】
その点、上記構成では、排気通路内の圧力が低いときほど、第2の所定の燃料添加間隔を長くしたため、燃料添加弁にデポジットが生じ難いときに、燃料添加弁による第2燃料噴射の実行頻度を低下させることができる。また、排気通路内の圧力が高く、燃料添加弁にデポジットが生じ易いときには、排気通路内の圧力が低いときよりも短い燃料添加間隔で燃料を噴射してデポジットの形成を抑制することができる。したがって、こうした構成によれば、燃料添加弁のデポジット除去機能を維持するとともに、燃費の改善を図ることができる。
【0010】
ここで、排気通路内の圧力が低く、燃料添加弁におけるデポジットの形成がほとんど無視できるときには、第2の所定の燃料添加間隔を無限大にまで長くする、すなわち請求項2に記載の発明によるように、排気通路内の圧力が所定値以下であることを条件として燃料噴射の実行そのものを禁止するといった構成を採用することができる。こうした構成によれば、不要な燃料噴射が実行されることを回避できるため、より効果的に燃費の改善を図ることができるようになる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、内燃機関の排気管内に設けられた排気浄化用触媒に燃料を添加する燃料添加弁により機関運転状態に基づいて設定される第1の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第1燃料噴射と、機関運転状態に基づいて設定される第2の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第2燃料噴射とを実行する排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、前記燃料添加弁が設けられた排気通路内の圧力を測定もしくは推測し、
a.前記測定もしくは推測した圧力値が、前記燃料添加弁による1回あたりの燃料噴射量が低下しない圧力よりも高ければ、前記圧力値が低いほど前記燃料添加弁による前記第2燃料噴射の燃料添加間隔を長くするように補正するモード、及び
b.前記測定もしくは推測した圧力値が、前記燃料添加弁による1回あたりの燃料噴射量が低下しない圧力以下であれば、前記燃料添加弁による前記第2燃料噴射を禁止するように設定するモード、のいずれか一方のモードにて前記燃料添加弁の駆動を制御することを要旨とする。
【0012】
ここで、上記a.のモードとは、排気通路内の圧力状態に応じて燃料添加弁による第2燃料噴射の燃料添加間隔を極力長くしつつも、デポジットを除去する上で有効なモードであり、また上記b.のモードとは、内燃機関の運転状態に拘らず、燃料添加弁による第2燃料噴射を禁止するモードである。このため、このような排気浄化用触媒の燃料添加制御装置によれば、上記燃料添加弁が設けられている排気通路内の圧力値に応じて決定したいずれか一方のモードにて燃料添加弁の駆動を制御することにより、排気浄化用触媒の還元、並びにデポジット除去を行いつつ、燃料添加弁から噴射される燃料の総量を削減することができるようになる。すなわち、内燃機関の燃費の改善が図られるようにもなる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、排気浄化用触媒に燃料を添加する燃料添加弁を排気通路に備え、機関運転状態に基づいて設定される第1の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第1燃料噴射と、機関運転状態に基づいて設定される第2の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第2燃料噴射とを実行する排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、前記第2燃料噴射における前記燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれるときには、前記閉弁時期を前記圧力の高揚期間に含まれない期間に設定することをその要旨とする。
【0014】
燃料添加弁から燃料を噴射する際には、ノズル内部から排気通路に向かって燃料が排出されるため、燃料添加弁の閉弁時には、ノズル内部の圧力が低下して、同ノズルの内部に排気が流入し易い状態となる。このとき、排気の圧力が高い状態になっていると、ノズルの内部に流入する排気の熱容量が大きいため、ノズルの内部において燃料に含まれる揮発成分の気化が促進され、デポジットが生じ易くなる。したがって、こうした場合には、デポジットを除去するための燃料噴射を実行したにもかかわらず、この噴射によってノズル内のデポジットの形成を助長してしまい、燃料噴射の前後においてデポジットの量を減少させることができなくなってしまうおそれがある。
【0015】
その点、上記構成によれば、第2燃料噴射における燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれている場合には、同閉弁時期を同圧力の高揚期間に含まれない期間、すなわち圧力の低い期間になるよう設定している。そのため、例えば、排気の圧力の平均値が高く、デポジットが形成され易いときにおいて、圧力脈動における圧力の低い期間、すなわち、相対的に圧力が低くなっている期間に燃料添加弁の閉弁時期が含まれるよう燃料噴射が実行されることとなる。そのため、燃料噴射を実行することによってノズル内に形成されるデポジットの量をできる限り減少させて、燃料添加弁のデポジットの除去を効率よく行うことができるようになる。したがって、上記構成によれば、デポジットの除去機能を維持するとともに、デポジットの形成を助長する不要な燃料噴射を抑制して燃費の改善を図ることができるようになる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記第2燃料噴射における前記燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれるときには、前記閉弁時期を前記圧力の高揚期間に含まれない期間に設定することをその要旨とする。
【0017】
こうした構成によれば、請求項4に記載の発明と同様に、デポジットの除去機能を維持するとともに、デポジットの形成を助長する不要な燃料噴射を抑制して燃費の改善を図ることができるようになる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、前記閉弁時期の前記圧力の高揚期間に含まれない期間への設定が、前記第2の所定の燃料添加間隔の変更であることをその要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、第2燃料噴射における燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれている場合でも、第2の所定の燃料添加間隔を変更して閉弁時期を圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれない期間に設定することにより、燃料噴射により助長されるデポジットの形成を抑制しつつ、燃料噴射を実行することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の発明において、前記閉弁時期の前記圧力の高揚期間に含まれない期間への設定が、前記燃料添加弁の燃料噴射時間の変更であることをその要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、第2燃料噴射における燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれている場合でも、燃料噴射時間を変更して閉弁時期を圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれない期間に設定することにより、燃料噴射により助長されるデポジットの形成を抑制しつつ、燃料噴射を実行することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、排気浄化用触媒に燃料を添加する燃料添加弁を排気通路に備え、機関運転状態に基づいて設定される第1の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第1燃料噴射と、機関運転状態に基づいて設定される第2の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第2燃料噴射とを実行する排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、前記第2燃料噴射における前記燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれるときには、前記燃料添加弁からの燃料噴射を禁止することをその要旨とする。
【0023】
上述したように、燃料添加弁から燃料を噴射したときに、その閉弁時の排気の圧力が高い場合には、ノズル内におけるデポジットの形成が助長されてしまうおそれがある。
その点、上記構成では、第2燃料噴射における燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれるときには、燃料添加弁による第2燃料噴射を禁止しているため、デポジットの形成を助長してしまう不要な燃料噴射が実行されることを回避して、燃費の改善を図ることができるようになる。また、第2燃料噴射における燃料添加弁の閉弁時期が圧力脈動の高い期間に含まれないときには、第2燃料噴射を実行して、デポジットを除去することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記第2燃料噴射における前記燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれるときには、前記燃料添加弁からの燃料噴射を禁止することをその要旨とする。
【0025】
こうした構成によれば、請求項8に記載の発明と同様に、デポジットの形成を助長してしまう不要な燃料噴射が実行されることを回避して、燃費の改善を図ることができるようになるとともに、燃料添加弁の閉弁時期が圧力脈動の高い期間に含まれないときには、燃料噴射を実行して、デポジットを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる排気浄化用触媒の燃料添加装置の第一実施形態について、その内燃機関及び吸排気系並びに燃料供給系の概略構成を模式的に示す略図。
【図2】排気通路内の圧力測定値と燃料添加弁の燃料噴射(添加)量低下率との相関関係の一例を示すグラフ。
【図3】同実施の形態において実行される燃料添加弁の駆動を制御する手順を示すフローチャート。
【図4】(a)、(b)は本発明にかかる排気浄化用触媒の燃料添加装置の第二実施形態において排気の圧力脈動と燃料添加弁の燃料添加期間との関係を示すタイムチャート。
【図5】燃料添加弁の閉弁時における排気通路内の圧力と燃料添加弁の燃料噴射量変化率との相関関係の一例を示すグラフ。
【図6】同実施形態において実行される燃料添加弁の駆動を制御する手順を示すフローチャート。
【図7】本発明にかかる排気浄化用触媒の燃料添加装置のその他の実施形態において実行される燃料添加弁の駆動を制御する手順を示すフローチャート。
【図8】燃料添加弁の側面図とともに、その噴射ノズルの噴射孔周りにデポジットが形成された状態の一例を示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第一実施形態)
以下、本発明にかかる排気浄化用触媒の燃料添加制御装置の第一実施形態について、図1〜図3を参照して詳細に説明する。
【0028】
まず、図1を参照して、本実施の形態の燃料添加制御装置が適用されたディーゼル機関及びその吸排気系の構成について説明する。
図1に示すように、ここで適用対象となるディーゼル機関10の燃焼室10Bには、外気導入口(図示略)から吸入した外気(吸気)が流通する吸気管11が接続されている。該吸気管11と燃焼室10Bとの接続部分である吸気ポートは吸気バルブV1によって開閉され、この吸気バルブV1が開閉されることによって、燃焼室10Bと排気管12とが連通、遮断される。なお、この吸気管11内には、吸気の絞り量を調整する吸気絞り弁SVが設けられている。また、燃焼室10Bには、該燃焼室10B内で生じた排気ガスが流通する排気管12が接続されている。該排気管12と燃焼室10Bとの接続部分である排気ポートは排気バルブV2によって開閉され、この排気バルブV2の開閉によって燃焼室10Bと吸気管11とが連通、遮断される。また、この排気管12には、排気ガスを浄化する排気浄化用触媒20が設けられている。さらに、前記排気管12の排気浄化用触媒20より上流側と吸気管11との間には、排気の力を利用して吸気の過給を行う過給機(ターボチャージャ)13が設けられている。
【0029】
そして、排気管12において、この過給機13および排気浄化用触媒20よりも上流側の排気通路12aには、排気管12内に燃料を噴射して排気浄化用触媒20に燃料を添加する燃料添加弁42が、その噴射ノズルの噴射孔が排気通路12a内に突出する態様で設けられている。この燃料添加弁42から排気浄化用触媒20の浄化機能の還元等を目的として実行される燃料噴射が第1燃料噴射に相当する。燃料添加弁42には、燃料タンク(図示略)から燃料供給管FPによって燃料が供給されている。なお、図1において、ディーゼル機関10には気筒が複数備えられているが、便宜上1気筒のみを図示し、残りの気筒についてはこれらの図示を割愛している。また、ディーゼル機関10の燃焼室10Bには、該燃焼室10B内に燃料を噴射する燃料噴射弁41が設けられており、この燃料噴射弁41にも上記燃料タンクから燃料供給管FPによって燃料が供給されている。
【0030】
一方、吸気管11の前記吸気絞り弁SVの上流側近傍には、吸入空気量を測定する吸気量センサ31が設けられており、前記排気管12の燃料添加弁42が設けられている排気通路12aには、排気バルブV2と燃料添加弁42との間に、排気通路12a内の圧力を測定する圧力センサ32が設けられている。また、ディーゼル機関10の出力軸STの近傍には、機関回転数を測定する回転数センサ33が設けられている。そして、排気管12に設けられた前記燃料添加弁42は、アクセル開度センサ(図示略)、水温センサ34による測定値や、吸気量センサ31、回転数センサ33による測定値等からなるディーゼル機関10の運転状況を示す情報、並びに圧力センサ32による圧力測定値に基づき、電子制御装置30によってその駆動が制御される。
【0031】
ただし前述のように、燃料添加弁42による第1燃料噴射は、ディーゼル機関10の燃焼室10Bには燃料を噴射せず、専ら排気浄化用触媒20の浄化機能の還元や再生のためだけに用いられることから、この燃料添加弁42が開弁状態となる頻度は高くない。そのため、燃料添加弁42の噴射ノズルの噴射孔周りには、燃料の後だれや排気中の煤を主成分とする微粒子(パティキュレート)等の固化によりデポジットが形成されやすい。そしてその結果、このデポジットが前記噴射孔を詰まらせることとなり、ひいては排気浄化用触媒20の浄化機能の還元や再生に支障をきたすことにもなりかねない。そこで、電子制御装置30は、こうしたデポジットの形成を抑制することを目的として、機関運転状態に基づいて設定される第2の所定の燃料添加間隔で燃料添加弁42から燃料を噴射させる制御を行っている。すなわち、燃料添加弁42からデポジットの除去を目的として実行される燃料噴射が第2燃料噴射に相当する。しかし、デポジットの除去には第2燃料噴射によって燃料添加弁42から燃料を強制的に噴射させることが有効であるものの、このような強制的な噴射はディーゼル機関10の燃焼室10Bで燃焼されない燃料の量を増やすことになるため、燃費の観点からは好ましくない。
【0032】
そこで、本発明者らは、燃料添加弁42の駆動制御の際に電子制御装置30に入力される各測定値のうち、どの測定値が上記デポジットの形成に最も寄与しているのかについて鋭意研究した。その結果、本発明者らは、燃料添加弁42の燃料の1回あたりの噴射量の低下率、すなわち上記デポジットの形成度合いに対する寄与率は、圧力センサ32による圧力測定値が最も高いことを見出した。具体的には、圧力センサ32による圧力測定値が50kPa以下であれば、該圧力測定値以外の測定値に拘らず前記噴射量低下率はほぼ0%であること、すなわち上記デポジットが形成されないことを見出した。また、前記圧力測定値が50kPaよりも高ければ、燃料添加弁42の先端温度が高くなるほど前記噴射量低下率の上昇度合いは大きくなるものの、圧力測定値の増大に比例して噴射量低下率が上昇すること、すなわち、上記デポジットの形成量は、圧力センサ32による圧力測定値に比例することを見出した。
【0033】
図2は、このような圧力センサ32による圧力測定値と燃料添加弁42の燃料の噴射量低下率との相関関係の一例を示すグラフである。図2にラインL1,L2として示すように、前記圧力測定値が50kPaよりも高ければ、圧力測定値の増大に比例して噴射量低下率が上昇する。すなわち、上記デポジットの形成量は、圧力センサ32による圧力測定値に比例する。また、燃料添加弁42の先端温度が約100℃のとき(ラインL2)の方が、同じく燃料添加弁42の先端温度が約90℃のとき(ラインL1)よりも上記デポジットの形成がより促進される。そして、図2に示すように、燃料添加弁42の先端温度が、約90℃(通常運転中の温度)であっても、また約100℃(想定される最高温度)であっても、圧力センサ32による圧力測定値が50kPa以下であれば、前記噴射量低下率はほぼ0%である。すなわち、上記デポジットは形成されない。
【0034】
そこで、こうした知見に基づき、本実施の形態では、a.燃料添加弁42による1回あたりの燃料噴射量が低下しない圧力、すなわちここでの例では、圧力センサ32による圧力測定値が50kPaよりも高ければ、該圧力測定値が低いほど燃料添加弁42による第2燃料噴射の燃料添加間隔を長くするように補正するモード、及び
b.燃料添加弁42による1回あたりの燃料噴射量が低下しない圧力以下、すなわちここでの例では、圧力センサ32による圧力測定値が50kPa以下であれば、燃料添加弁42による第2燃料噴射を禁止するように設定するモード、のいずれか一方のモードにて燃料添加弁42の駆動を制御するようにしている。
【0035】
次に、このように構成される本実施の形態の燃料添加制御装置の動作を、図3に示すフローチャートを参照して説明する。なお、この図3に示す処理は燃料添加弁42の噴射孔に形成されるデポジットを除去するためのもの(デポジット除去ルーチン)であり、電子制御装置30を通じて所定の時間ごとに繰り返し実行される。
【0036】
図3に示すように、電子制御装置30はまず、デポジット除去を行う必要かあるか否かを判断する(ステップS1)。この判断は、ディーゼル機関10の運転状態に基づいて行われる。例えば、ディーゼル機関10の機関回転数が低く、低負荷で運転されているような場合には、燃料添加によるデポジット除去を行わずとも燃料添加弁42の燃料の噴射量は低下しない。したがって、ディーゼル機関10がこのような運転領域にあると判断される場合には、燃料添加のための以降の処理を行わない。一方、ステップS1における判定結果が肯定判定(S1=YES)であれば、その処理をステップS2に移行する。
【0037】
ステップS2の処理では、アクセル開度センサ、吸気量センサ31、回転数センサ33並びに水温センサ34による測定値、すなわちディーゼル機関10の運転状況を示す情報に基づいて、排気浄化用触媒20への燃料添加終了後、次に燃料添加弁42を駆動させるまでの駆動間隔(ベース噴射間隔T1)を算出する。これにより、排気浄化用触媒20への燃料添加終了からデポジット除去を目的として強制的に駆動(第2燃料噴射)を行うまでの燃料添加弁42の基準となる駆動間隔、すなわち、デポジット形成に対する排気通路12a内の圧力値の寄与を何ら考慮していない状態での駆動間隔が決定される。なお、このベース噴射間隔T1が、第2の所定の燃料添加間隔に相当する。
【0038】
次に、電子制御装置30は、圧力センサ32から入力される排気通路12a内の圧力測定値が、50kPaよりも高いか否かを判断する(ステップS3)。その判定結果が否定判定(S3=NO)である場合、すなわち、前記圧力測定値が50kPa以下であれば、電子制御装置30は、その処理をステップS4に移行する。そして、該ステップS4の処理において、電子制御装置30は、燃料添加弁42による燃料添加(噴射)を禁止し、そのまま処理を終了する。これにより、デポジットが形成されない状態でのディーゼル機関10の燃焼室10B以外に噴射される燃料の量が削減されるため、燃費の改善を図ることができるようになる。
【0039】
そして、上記ステップS3の判定結果が肯定判定(S3=YES)、すなわち、排気通路12a内の圧力測定値が50kPaよりも高ければ、電子制御装置30は、その処理をステップS5に移行する。
【0040】
ステップS5の処理において、電子制御装置30は、圧力センサ32による圧力測定値(排気通路12a内の圧力)に基づく補正値により上記ベース噴射間隔T1を補正する(最終噴射間隔T2の算出)。具体的には、前記圧力測定値が低いほど前記最終噴射間隔T2が長くなるようにベース噴射間隔T1を補正する。これにより、排気浄化用触媒20への燃料添加終了からデポジット除去を目的として強制的に駆動(第2燃料噴射)を行うまでの燃料添加弁42の駆動間隔、すなわち、デポジット形成に対する排気通路12a内の圧力値の寄与を考慮した状態での駆動間隔が決定される。
【0041】
次いで、電子制御装置30は、前回の燃料添加弁42の駆動終了時、すなわち、排気浄化用触媒20への燃料添加終了時からの経過時間が、前記最終噴射間隔T2に達しているか否かを判断する(ステップS6)。その判定結果が否定判定(S6=NO)である場合であれば、電子制御装置30は、強制的に燃料添加弁42の駆動(第2燃料噴射)を行うことなく、そのまま処理を終了する。すなわち、デポジットが形成される場合であっても、ディーゼル機関10の燃焼室10B以外に噴射される燃料の量を抑制することができるため、これによっても燃費の改善が図られるようになる。
【0042】
他方、上記ステップS6の判定結果が肯定判定(S6=YES)、すなわち、排気浄化用触媒20への燃料添加終了時からの経過時間が前記最終噴射間隔T2に達していれば、電子制御装置30は、その処理をステップS7に移行し、強制的に燃料添加弁42の駆動(第2燃料噴射)を行い、その後処理を終了する。これにより、燃料添加弁42の噴射孔に形成されるデポジットを除去することができるようになる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態にかかる排気浄化用触媒の燃料添加制御装置によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)圧力センサ32による圧力測定値が50kPa以下であれば、燃料添加弁42による第2燃料噴射を禁止するように設定するモードを備えることとした。これにより、燃料添加弁42から噴射される燃料の総量を削減することができるようになる。すなわち、排気通路12a内の圧力が低くデポジットが形成され難いときに、不要な燃料噴射が実行されることを回避することができ、ディーゼル機関10の燃費が改善されるようになる。
【0044】
(2)圧力センサ32による圧力測定値が50kPaよりも高ければ、圧力測定値が低いほど燃料添加弁42による第2燃料噴射の燃料添加間隔を長くするように補正するモード、すなわち、圧力センサ32による圧力測定値に応じて燃料添加弁42による第2燃料噴射の燃料添加(噴射)間隔を極力長くしつつも、デポジットを除去する上で有効なモードを備えることとした。つまり、排気通路12a内の圧力が50kPaよりも高く、デポジットが形成される場合において、同圧力が低くなるほど、燃料添加弁42による第2燃料噴射の燃料添加間隔が長くなるようにした。これにより、排気浄化用触媒20の還元、並びにデポジット除去を行いつつ、燃料添加弁42にデポジットが生じ難いときに、燃料添加弁42による燃料噴射の実行頻度を低下させることができ、燃料添加弁42から噴射される燃料の総量を削減することができるようになる。すなわち、ディーゼル機関10の燃費が改善されるようになる。
【0045】
(3)排気通路12a内の圧力が50kPa以上である場合には、同圧力に応じて変更される第2の所定の燃料添加間隔で燃料噴射を実行するようにした。そのため、燃料添加弁42にデポジットが生じる可能性がある場合に、そのデポジットを除去することができる。
(第二実施形態)
次に、本発明にかかる排気浄化用触媒の燃料添加装置を具体化した第二実施形態について図1及び図4〜図6を参照して詳細に説明する。本実施形態では、第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期と排気の圧力脈動との関係を考慮して、デポジット除去制御の実行態様を変更する点で第一実施形態と異なっている。また、本実施形態において、第一実施形態と同様の構成については、共通の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0046】
図4に示すように、ディーゼル機関10の燃焼室10Bにおいて燃焼反応が行われると、各気筒に設けられた排気バルブV2が開弁され(タイミングVO)、高圧となった排気が排気管12内に排出される。そして、こうした高圧の排気が排気管12内を通過することにより、排気管12内の圧力が一時的に上昇する。一方、各気筒に設けられた排気バルブV2の全てが閉弁している期間、すなわち、排気バルブV2の閉弁タイミングVCから開弁タイミングVOまでの期間には、高圧の排気が排気管12内に排出されないため、排気管12内の圧力が低い状態となる。このように、排気バルブV2の開閉に伴って排気管12内には、例えば図4に示すような変動幅で圧力が変動する、いわゆる排気の圧力脈動が生じている。なお、本実施形態では、ディーゼル機関10は、4つの気筒(気筒♯1〜♯4)を有しており、気筒♯4、気筒♯2、気筒♯1、気筒♯3の順に排気バルブV2が開閉される。
【0047】
また、こうした圧力脈動の脈動波において、その波が立ち上がってから立ち下がるまでの期間、すなわち開弁タイミングVOから閉弁タイミングVCまでの期間が、排気の圧力脈動における圧力の高揚期間Porに相当する。そして、この高揚期間Por以外の期間、すなわち、閉弁タイミングVCから開弁タイミングVOまでの期間が許可期間Popとして設定されている。
【0048】
ここで、上述したように、燃料添加弁42から燃料を噴射する際には、ノズル内部から排気管12に向かって燃料が排出されるため、燃料添加弁42の閉弁時には、ノズル内部の圧力が低下して、同ノズルの内部に排気が流入し易い状態となる。このとき、排気の圧力が高い状態になっていると、ノズルの内部に流入する排気の熱容量が大きいため、ノズルの内部において燃料に含まれる揮発成分の気化が促進され、デポジットが生じ易くなる。
【0049】
図5には、燃料添加弁42の閉弁時期における排気管12内の圧力と同添加弁42の燃料の噴射量変化率との関係の一例を示している。
なお、燃料添加弁42のデポジットの形成度合いは、燃料添加弁42から燃料を噴射した際の燃料噴射量の変化率と相関するため、この噴射量変化率をデポジットの形成度合いを測る指標として用いている。
【0050】
図5に示すように、燃料添加弁42の閉弁時期が、許可期間Popに含まれる場合、すなわち排気管12内の圧力が相対的に低い圧力PCとなっている場合には、燃料添加弁42の噴射量変化率は低い値となる。一方、燃料添加弁42の閉弁時期が、圧力が相対的に高くなる高揚期間Porのうち最大圧力POとなっている時期と重なってしまった場合には、噴射量変化率が高い値となる。このように、燃料添加弁42の噴射量変化率は、同添加弁42の閉弁時期における圧力が高くなるほど上昇する。そのため、排気の圧力脈動により、燃料添加弁42の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間Porに含まれてしまうと、同閉弁時期が高揚期間Porに含まれない場合に比して燃料添加弁42へのデポジットの形成が助長されてしまう。
【0051】
したがって、こうした場合には、デポジットを除去するための燃料噴射を実行したにもかかわらず、この噴射によってノズル内のデポジットの形成を助長してしまい、燃料噴射の前後においてデポジットの量を減少させることができなくなってしまうおそれがある。
【0052】
そこで、本実施形態においては、図4(b)に実線で示すように、第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の低い期間、すなわち許可期間Popに含まれる場合に第2燃料噴射を実行するようにしている。また、図4(b)に一点鎖線で示すように、第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間Porに含まれてしまうときには、同図に二点鎖線で示すように、燃料添加弁42からの燃料添加間隔を変更して同閉弁時期を許可期間Popに含まれるように設定している。
【0053】
次に、このように構成される本実施形態の燃料添加制御装置の動作を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図6において、ステップS1〜ステップS6の処理については第一実施形態と同様の処理であるため、その詳細な説明は省略する。
【0054】
図6に示すように、ステップS6の判定結果が肯定判定(S6=YES)、すなわち、排気浄化用触媒20への燃料添加終了時からの経過時間が前記最終噴射間隔T2に達していると判定された場合には、電子制御装置30は、その処理をステップS8に移行する。
【0055】
ステップS8の処理において、電子制御装置30は、第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期を算出する。この閉弁時期は、例えば、電子制御装置30によって設定される燃料噴射時間等に基づいて算出することができる。
【0056】
次に、電子制御装置30は、ステップS8にて算出した閉弁時期が許可期間Popに含まれるか否かを判断する(ステップS9)。すなわち、この処理において、同閉弁時期が排気脈動における圧力の高揚期間Porに含まれる場合には否定判定される。なお、本実施形態では上述したように、排気バルブV2の開弁タイミングVOから閉弁タイミングVCまでの期間を排気脈動における圧力の高揚期間Porとして設定している。排気バルブV2の開弁タイミングVO、及び閉弁タイミングVCは、回転数センサ33によって検出されるクランク角等に基づいて算出することができる。
【0057】
そして、ステップS9における判定結果が否定判定(S9=NO)となった場合、すなわち、第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間Porに含まれると判断された場合には、この処理における判定結果が肯定判定となるまで繰り返しこの処理が実行される。
【0058】
その後、燃料添加弁42の閉弁時期が許可期間Popに含まれる、すなわち排気の圧力脈動における圧力の低い期間に含まれるようになり、ステップS9において、その判定結果が肯定判定(S9=YES)となると、電子制御装置30は処理をステップS7に移行して、強制的に燃料添加弁42の第2燃料噴射を行う。こうした処理により、燃料添加弁42からの燃料添加の添加間隔が変更され、第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期が圧力の低い期間に設定される。
【0059】
以上説明した第二実施形態によれば、上記(1)〜(3)に記載の効果に加え、更に以下の効果が得られるようになる。
(4)第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間Porに含まれている場合には、同閉弁時期を圧力の低い期間、すなわち許可期間Popに含まれるよう設定した。そのため、排気通路12a内の平均的な圧力が高く、デポジットが形成され易いときにおいて、圧力脈動によって相対的に圧力が低くなっている期間に燃料添加弁42の閉弁時期が含まれるよう第2燃料噴射が実行されることとなる。そのため、燃料噴射を実行することによってノズル内に形成されるデポジットの量をできる限り減少させて、燃料添加弁42のデポジットの除去を効率よく行うとともに、デポジットの形成を助長する不要な燃料噴射を抑制して燃費の改善を図ることができるようになる。
【0060】
(5)上記実施形態では、第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期が圧力の高い期間に含まれるときには、第2の所定の燃料添加間隔を変更して、同閉弁時期を圧力の低い期間に設定している。そのため、燃料噴射により助長されるデポジットの形成を抑制しつつ、燃料噴射を実行することができる。
(変形例)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
【0061】
・上記第一実施形態では、圧力センサ32による圧力測定値が50kPaよりも高ければ、圧力測定値が低いほど燃料添加弁42による第2燃料噴射の燃料添加間隔を長くするようにし、圧力センサ32による圧力測定値が50kPa以下であれば、燃料添加弁42による第2燃料噴射を禁止するようにした。これに代えて、圧力センサ32による圧力測定値が50kPa以上であれば、圧力測定値が低いほど燃料添加弁42による第2燃料噴射の燃料添加間隔を長くするようにし、圧力センサ32による圧力測定値が50kPa未満であれば、燃料添加弁42による第2燃料噴射を禁止するようにしてもよい。これによっても、適切にデポジットを除去することが可能となる。
【0062】
・上記第一実施形態では、2つのモードのうちのいずれかを選択するための判定値としての圧力を50kPaとしたが、内燃機関の種類等に合わせてこれを変更するようにしてもよい。要は、この2つのモードのうちのいずれかを選択するための判定値としての圧力は、燃料添加弁による1回あたりの燃料噴射量が低下しない圧力であればよい。
【0063】
・上記第二実施形態では、第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期が圧力の高い期間に含まれるとき(ステップS9=NO)には、ステップS9の処理が繰り返し実行されることで第2の所定の燃料添加間隔を変更して閉弁時期を圧力の低い期間になるように設定していた。尤も、ステップS9における判定結果が否定判定(S9=NO)となった場合に、燃料添加弁42からの燃料噴射時間を変更することにより、第2燃料噴射における同燃料添加弁42の閉弁時期を圧力の低い期間に設定するようにしてもよい。こうした場合にも、上記(1)〜(5)に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0064】
・上記第二実施形態では、ステップS9における判定結果が否定判定(S9=NO)となった場合に、閉弁時期が圧力の低い期間になるまでその処理を繰り返すようにしていた。しかし、こうした処理に代えて、ステップS9にて否定判定された場合にデポジット除去ルーチンを終了するようにしてもよい。
【0065】
図7には、こうした制御を行う場合のデポジット除去ルーチンのフローチャートを示している。なお、このフローチャートでは、ステップS1〜S8の処理は第二実施形態と同様のものであり、その詳細な説明は省略する。
【0066】
図7に示すように、ステップS8の処理において、第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期を算出した後、電子制御装置30はその処理をステップS9に移行する。
次に、電子制御装置30は、ステップS8にて算出した閉弁時期が、排気脈動における圧力の高揚期間Porに含まれないか否か、すなわち許可期間Popに含まれるか否かを判断する(ステップS9)。このステップS9において、燃料添加弁42の閉弁時期が圧力の高揚期間Porに含まれると判定された場合(S9=NO)には、電子制御装置30は、その処理をステップS10に移行する。そして、ステップS10の処理において、電子制御装置30は、デポジット除去のための燃料添加弁42による第2燃料添加を禁止し、そのまま処理を終了する。
【0067】
一方、ステップS9の処理において、燃料添加弁42の閉弁時期が許可期間Popに含まれる、すなわち相対的に圧力の低い期間に含まれると判定された場合(S9=YES)には、電子制御装置30は処理をステップS7に移行して、強制的に燃料添加弁42の第2燃料噴射を行う。こうした処理により、第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期が圧力の低い期間にある場合に燃料噴射が実行されるようになる。
【0068】
上記構成によれば、上記(1)、(2)に記載の効果に加え、更に以下の効果が得られるようになる。
(6)第2燃料噴射における燃料添加弁42の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間Porに含まれるときには、燃料添加弁42による第2燃料噴射を禁止したため、デポジットの形成を助長してしまう不要な燃料噴射が実行されることを回避して、燃費の改善を図ることができるようになる。また、第2燃料噴射における燃料添加弁の閉弁時期が圧力脈動における圧力の高揚期間Porに含まれないときには、第2燃料噴射を実行して、デポジットを除去することができる。
【0069】
・上記第二実施形態では、排気バルブV2が開弁してから閉弁するまでの期間を排気脈動における圧力の高揚期間Porとして設定したが、同期間の設定態様はこれに限られるものではない。例えば、開弁時期前後の第1の所定時期を始期とし、閉弁時期前後の第2の所定時期を終期として同期間を設定してもよいし、圧力センサ32の測定値から圧力変動の推移を推定して同期間を設定するようにしてもよい。
【0070】
・上記各実施形態では、排気通路12a内の圧力が低いときほど最終噴射間隔T2が長くなるようにベース噴射間隔T1を補正する態様を示したが、最終噴射間隔T2の設定態様はこれに限られるものではない。例えば、図2に示したように、排気通路12a内の圧力が50kPaより高く80kPa以下である場合には、燃料添加弁42の先端温度が約90℃の場合も約100℃の場合も、燃料の噴射量低下率は設計上の許容範囲である−5%以内に収まっている。したがって、同圧力が50kPaより高く80kPa以下である場合には燃料添加弁42の噴射間隔をベース噴射間隔T1よりも長い所定の燃料噴射間隔に設定し、同圧力が80kPaより高い場合には燃料添加弁42の噴射間隔をベース噴射間隔T1に設定するといった2段階の噴射間隔に設定するようにしてもよい。また、排気通路12a内の圧力に応じて、3段階以上の噴射間隔に設定するようにしてもよい。なお、こうした場合には、排気通路12a内の圧力が低いときほど同噴射間隔(第2の所定の燃料添加間隔)が長くなるように設定すればよい。
【0071】
・上記各実施形態では、圧力における所定値を50kPaとし、排気通路12a内の圧力がこの所定値以下であるときに第2燃料噴射の実行を禁止するようにしたが、この所定値は各種の条件に合わせて適宜変更が可能である。要は、燃料添加弁42のデポジットの形成度合いが許容される範囲内に収まるときの圧力をこの所定値として設定すれば良い。
【0072】
・上記各実施形態では、圧力センサ32によって排気通路12a内の圧力値を測定することとしたが、圧力センサ32を設けずに排気通路12a内の圧力値を推定により求めるようにしてもよい。具体的には、機関回転数、燃料噴射弁41の燃料噴射量、吸入空気量等のパラメータから排気通路12a内の圧力値を推定する圧力値推定マップを電子制御装置30内のメモリに記憶しておき、この圧力値推定マップに基づいて排気通路12a内の圧力値を求めるようにしてもよい。また、このような推定は、上記圧力変動の推移の推定にも同様に適応することができる。
【0073】
・上記各実施形態では、排気通路12a内の圧力が所定値(例えば、50kPa)以下であるときには燃料添加弁42による第2燃料噴射を禁止するといった構成を備えるとともに、同圧力が所定値(例えば、50kPa)よりも高いときには圧力が低くなるほど燃料添加弁42の噴射間隔を長くするといった構成を備えるようにしたが、どちらか一方のみを備えるようにしてもよい。また、第二実施形態においては、これらの構成を省略してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…ディーゼル機関、10B…燃焼室、11…吸気管、12…排気管、12a…排気通路、13…過給機、20…排気浄化用触媒、30…電子制御装置、31…吸気量センサ、32…圧力センサ、33…回転数センサ、34…水温センサ、41…燃料噴射弁、42、132…燃料添加弁、132N…ノズル、132H…噴射孔、FP…燃料供給管、ST…出力軸、SV…吸気絞り弁、T1…ベース噴射間隔、T2…最終噴射間隔、V1…吸気バルブ、V2…排気バルブ、VO…排気バルブの開弁タイミング、VC…排気バルブの閉弁タイミング、Por…高揚期間、Pop…許可期間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気浄化用触媒に燃料を添加する燃料添加弁を排気通路に備え、機関運転状態に基づいて設定される第1の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第1燃料噴射と、機関運転状態に基づいて設定される第2の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第2燃料噴射とを実行する排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、
前記排気通路内の圧力が低いときほど、前記第2の所定の燃料添加間隔を長くする
ことを特徴とする排気浄化用触媒の燃料添加制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、
前記排気通路内の圧力が所定値以下のときには、前記第2の所定の燃料添加間隔での燃料噴射の実行を禁止する
ことを特徴とする排気浄化用触媒の燃料添加制御装置。
【請求項3】
内燃機関の排気管内に設けられた排気浄化用触媒に燃料を添加する燃料添加弁により機関運転状態に基づいて設定される第1の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第1燃料噴射と、機関運転状態に基づいて設定される第2の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第2燃料噴射とを実行する排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、
前記燃料添加弁が設けられた排気通路内の圧力を測定もしくは推測し、
a.前記測定もしくは推測した圧力値が、前記燃料添加弁による1回あたりの燃料噴射量が低下しない圧力よりも高ければ、前記圧力値が低いほど前記燃料添加弁42による前記第2燃料噴射の燃料添加間隔を長くするように補正するモード、及び
b.前記測定もしくは推測した圧力値が、前記燃料添加弁による1回あたりの燃料噴射量が低下しない圧力以下であれば、前記燃料添加弁による前記第2燃料噴射を禁止するように設定するモード、
のいずれか一方のモードにて前記燃料添加弁の駆動を制御する
ことを特徴とする排気浄化用触媒の燃料添加制御装置。
【請求項4】
排気浄化用触媒に燃料を添加する燃料添加弁を排気通路に備え、機関運転状態に基づいて設定される第1の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第1燃料噴射と、機関運転状態に基づいて設定される第2の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第2燃料噴射とを実行する排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、
前記第2燃料噴射における前記燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれるときには、前記閉弁時期を前記圧力の高揚期間に含まれない期間に設定する
ことを特徴とする排気浄化用触媒の燃料添加制御装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、
前記第2燃料噴射における前記燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれるときには、前記閉弁時期を前記圧力の高揚期間に含まれない期間に設定する
ことを特徴とする排気浄化用触媒の燃料添加制御装置。
【請求項6】
前記閉弁時期の前記圧力の高揚期間に含まれない期間への設定が、前記第2の所定の燃料添加間隔の変更である
請求項4又は5に記載の排気浄化用触媒の燃料添加制御装置。
【請求項7】
前記閉弁時期の前記圧力の高揚期間に含まれない期間への設定が、前記燃料添加弁の燃料噴射時間の変更である
請求項4〜6のいずれか一項に記載の排気浄化用触媒の燃料添加制御装置。
【請求項8】
排気浄化用触媒に燃料を添加する燃料添加弁を排気通路に備え、機関運転状態に基づいて設定される第1の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第1燃料噴射と、機関運転状態に基づいて設定される第2の所定の燃料添加間隔で前記燃料添加弁から燃料を噴射する第2燃料噴射とを実行する排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、
前記第2燃料噴射における前記燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれるときには、前記燃料添加弁からの燃料噴射を禁止する
ことを特徴とする排気浄化用触媒の燃料添加制御装置。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気浄化用触媒の燃料添加制御装置において、
前記第2燃料噴射における前記燃料添加弁の閉弁時期が排気の圧力脈動における圧力の高揚期間に含まれるときには、前記燃料添加弁からの燃料噴射を禁止する
ことを特徴とする排気浄化用触媒の燃料添加制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50103(P2013−50103A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168678(P2012−168678)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】