説明

排水ますおよび排水ます用内副管

【課題】汚水の飛散や排水ますの磨耗を防ぐという内副管本来の目的を達成するとともに、インバート部を流れる排水の流れを阻害することがない排水ますの提供。
【解決手段】排水ます1は、対向する壁面にそれぞれ排水本管13,13を連結したインバート部3と、このインバート部3に上方に向けて一体的に形成された立上り部15に連結される立上り管4と、この立上り管4に連結され、排水枝管14を接続するための接続部8が設けられた円筒状のアジャスタ5と、このアジャスタ5の上端部に装着される蓋受枠部6と、この蓋受枠部6に開閉自在に装着される蓋7とから構成されたもので塩ビ樹脂などの合成樹脂で形成されており、この排水ます1の内部には、内副管2が取付けられ、排水枝管14から排水が流入してくると、その流量及び/又は流力に応じ膨張して排水を通過させ、排水の流れる方向を、排水本管13を流れる排水の流れ方向に一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水道などの配管に設けられる排水ます、および排水ます内に配置される副管、すなわち内副管に関するもので、下水配管敷設技術に属するものである。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅の下水道などの排水配管には、配管内の点検のためと、排水枝管から排水本管への合流のために排水ますが広く用いられている。かかる排水枝管から排水本管への合流のための排水ますには、通常、排水枝管から流入する排水の流路を制御するために、副管と称される管体が、排水ますの内部または外部に設けられている。
【0003】
しかしながら、排水本管と排水枝管との埋設レベルが一致していることは極めて稀であって、ほとんどの箇所では排水枝管が排水本管よりも高い位置にあり、排水枝管と排水本管との合流部に落差がある。この落差が大きいと、排水枝管から流入した排水が飛散するとともに、排水ますの内壁を侵食し、磨耗させるため、それら汚水の飛散や排水ますの磨耗を防ぐために副管が設けられている。
【0004】
たとえば、特開平8−109647号公報(特許文献1)には、インバート部の上部に形成される立上り管を分割し、その中間に、分岐接続口を突設された接続枠体を有する小型マンホールにおいて、下端開口部をインバート部に臨ませ、上端部を前記分岐接続口の流出口に接続するた副管が開示され、その副管は、マンホールの内部または外部に設けられることが示されている。
【0005】
また、特開2004−278095号公報(特許文献2)には、点検筒とインバート部とからなる排水ますにおいて、前記排水ますの上部に流入口を設け、この流入口と前記インバート部の流出口とを、Uターン状の流れにするような案内部材を内蔵した宅内設置の排水ますが開示されている。なお、前記案内部材とは、内副管そのもののことである。
【特許文献1】特開平 8−109647号公報(特許請求の範囲、図1、図7)
【特許文献2】特開2004−278095号公報(特許請求の範囲、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記内副管は、排水ます等の排水枝管の流入口に、その上端開口部が取付けられ、内副管の下端開口部を排水本管に向けることにより、排水枝管からの排水を排水本管に誘導するものであるが、内副管の下端開口部を排水本管流路よりも高い位置にすると、この下端開口部と、排水ます内壁の立上り部位とが干渉し、内副管からの排水流路を阻害することがある。
【0007】
したがって、内副管の下端開口部を、排水本管の内径の1/2以内を限度に、排水本管流路へ突出させて、内副管の下端開口部を排水本管流路に対して開放しているが、内副管の下端開口部を、排水本管流路へ突出させるということは、本質的に、内副管の下端開口部が、排水本管の流路の障害となる。
【0008】
また、内副管の下端開口部が、排水本管の流路の障害となるものだとしても、上記した排水の流入により生じる、汚水の飛散や排水ますの磨耗を防ぐためであれば、その欠点は甘受することができるが、排水枝管からの排水の流入していない場合、すなわち、汚水の飛散や排水ますの磨耗がない場合にも、内副管を設けたことによる、上記欠点が存在するということは、利点がなく欠点のみ存在するということで、その解決が求められている。
【0009】
この発明はかかる現状に鑑み、排水が流れないときは、排水流出部が変形して、インバート部を流れる排水の流れを阻害することがなく、排水が流れるときは、その流量及び/又は流力に応じて、排水流出部が膨張して、排水流出部から流出する排水を、排水ますのインバート部を流れる排水の流れ方向に合わせることができる排水ますと、この排水ますに適用する排水ます用内副管を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
上部に設けられた排水流入部から流入してくる排水の流れを、インバート部を流れる排水の流れ方向に合わせるための内副管を有し、
前記内副管の少なくとも下部が、自重もしくはインバート部を流れる排水の流量及び/又は流力に応じて変形可能な材質で形成されていること
を特徴とする排水ますである。
【0011】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記内副管が、
軟質の樹脂製または布製の筒状体であること
を特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記内副管が、

排水流入口を形成するエルボ状の硬質管体と、この管体に取付けられる軟質の樹脂製または布製の筒状体からなるものであること
を特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項2または請求項3に記載の排水ますにおいて、
前記筒状体は、
その下端部の一端が、インバート部の排水流出口上部に設けられた止め具に係止され、固定されていること
を特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記内副管が、
前記排水ます内の取付具に、脱着自在の状態で取付けられていること
を特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項5に記載の排水ますにおいて、
前記取付具が、
排水枝管の流入口に設けられ、布製の筒状体からなる内副管の開口部を固定するものであること
を特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項5に記載の排水ますにおいて、
前記取付具が、
前記排水ます内壁に設けられ、エルボ状の硬質管体からなる内副管上部を載置し、保持するものであること
を特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記排水ますが、
排水本管と連通する底部のインバート部と、このインバート部材の上部に連接される点検筒としての立上り管と、この立上り管の上部開口に装着される蓋部とからなり、前記インバート部の立上り部もしくは前記立上り管の上下端の、いずれかの内側面または外側面に、それら部材の埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とするものである。
【0018】
また、この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項8に記載の排水ますにおいて、
前記立上り管は、
前記インバート部材の上部と連接する立上り管主体と、この立上り管主体に連接されるアジャスタとで構成されたもので、前記アジャスタの上下端の、いずれかの内側面または外側面に、埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とするものである。
【0019】
また、この発明の請求項10に記載の発明は、
請求項8に記載の排水ますにおいて、
前記蓋部材は、
前記立上り管の上部開口に装着される蓋受枠部と、この蓋受枠部に開閉自在に設けられる蓋とから構成されたもので、前記蓋受枠部の上下端の、いずれかの内側面または外側面に、埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とするものである。
【0020】
また、この発明の請求項11に記載の発明は、
請求項8〜10のいずれかに記載の排水ますにおいて、
前記外側面に螺子を有するインバート部材、立上り管、アジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれか一つ、もしくは複数が、その外周部に、前記調節用螺子と噛み合う螺子が設けられているリング体を有すること
を特徴とするものである。
【0021】
また、この発明の請求項12に記載の発明は、
請求項8〜10のいずれかに記載の排水ますにおいて、
前記外側面に螺子を有するインバート部材、立上り管、アジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれか一つ、もしくは複数が、その内側面に、前記螺子に噛み合う螺子が設けられていること
を特徴とするものである。
【0022】
さらに、この発明の請求項13に記載の発明は、
請求項8〜10のいずれかに記載の排水ますにおいて、
前記内側面に螺子を有するインバート部材、立上り管、アジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれか、もしくは複数が、その外側面に、前記螺子に噛み合う螺子が設けられていること
を特徴とするものである。
【0023】
さらに、この発明の請求項14に記載の発明は、
請求項8〜13のいずれかに記載の排水ますにおいて、
前記インバート部材、立上り管、アジャスタあるいは蓋受枠部は、
形成された螺子の末端部にシールリングが設けられていること
を特徴とするものである。
【0024】
さらにまた、この発明の請求項15に記載の発明は、
排水ます内に設置され、排水流入部から流入してくる排水の流れを排水ますのインバート部を流れる排水の流れ方向に合わせるための排水流出部が、
自重もしくはインバート部を流れる排水の流量及び/又は流力に応じて変形可能な材質で形成されていること
を特徴とする排水ます用内副管である。
【0025】
また、この発明の請求項16に記載の発明は、
請求項15に記載の排水ます用内副管において、
前記排水流出部が、
軟質の樹脂製または布製の筒状体で構成されていること
を特徴とするものである。
【0026】
また、この発明の請求項17に記載の発明が、
請求項15に記載の排水ます用内副管において、
前記排水流出部が、
排水流入口を形成するエルボ状の硬質管体と、この管体に取付けられる軟質の樹脂製または布製の筒状体で構成されていること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
この発明の排水ます用内副管および排水ますは、排水ますの枝管取付け部に取付けられた排水流入部から流入してくる排水の流れを、排水ますのインバート部を流れる排水の流れ方向に合わせるための排水流出部を、自重もしくはインバート部を流れる排水の流量及び/又は流力に応じて変形可能な材質で形成しているので、内副管内を排水が流れないときは、排水流出部自体が変形して、インバート部を流れる排水の流れを阻害することがなく、内副管内を排水が流れるときは、流量及び/又は流力に応じて、排水流出部が膨張して、排水流出部から流出する排水を、排水ますのインバート部を流れる排水の流れ方向に合わせることができるという優れた効果を奏するものである。
【0028】
また、この発明においては、嵌合により、また必要により接着剤を用いて接合されていたインバート部、立上り管あるいはアジャスタについて、それらの組立てにおいて螺合手段を併用すること、特にリング体を用いることにより、組立ての作業性を著しく向上させることができる。したがって、インバート部の排水管接続部とそれに接続する排水管との心合わせや蓋部表面を地表面(GL)に面合わせ、特にアジャスタに設けられた枝管接続部と排水枝管との心合わせも、きわめて簡単に行なえるので、埋設現場における排水ますの埋設位置の調整作業を、熟練を要しない、きわめて容易なものにするのである。
【0029】
さらに、この発明において、内副管の排水ますへの取付けを脱着自在に行なえることにすれば、排水ますの点検、掃除を容易にすることができ、また、組立も容易にするものである。
【0030】
さらにまた、内副管を軟質の樹脂製または布製の筒状体とし、外筒状体の下端部の一端を、インバート部の排水流出口上部に設けられた止め具により、排水流出口上部に係止させると、内副管の排水流出部を、常に、排水ますのインバート部を流れる排水の流れ方向に向けることができるのである。しかも、内副管の排水流入部の位置、すなわち、排水ますの枝管取付け部、さらには、排水枝管の位置に関係なく行なうことができ、排水ますの設置における制約の一つを消失させるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明の排水ますと、排水ます用内副管について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一部位は同一符号で示す。
【0032】
図1に示される排水ます1は、対向する壁面にそれぞれ排水本管13,13を連結したインバート部3と、このインバート部3に上方に向けて一体的に形成された立上り部15に連結される立上り管4と、この立上り管4に連結され、排水枝管14を接続するための接続部8が設けられた円筒状のアジャスタ5と、このアジャスタ5の上端部に装着される蓋受枠部6と、この蓋受枠部6に開閉自在に装着される蓋7とから構成されたもので塩ビ樹脂などの合成樹脂で形成されており、この排水ます1の内部には、内副管2が取付けられている。
【0033】
前記内副管2は軟質樹脂製の筒状体で構成されたもので、この筒状体の上部は、前記アジャスタ5内に突出させて排水枝管14の先端部に、リング状の取付具11によって脱着自在に取付けられるとともに、その下部は、前記排水ます1を構成するインバート部2内の上部、具体的には、前記立上り部15の内壁面下部に、止め具12によって脱着自在に係止されたものである。
【0034】
上記構成の内副管2は、排水枝管14から排水が流入してくると、その流量及び/又は流力に応じて、図1に示すように膨張して排水を通過させるもので、下部開口部の一端が排水本管13の流入口の上部に係止されているため、排水の流れる方向を、排水本管13を流れる排水の流れ方向に一致させ、それらを合流させることができるものである。
【0035】
前記内副管2への、排水枝管14からの排水の流入が停止すると、内副管2は、図2に示すように、自重により変形し、縮小する。かくして縮小した内副管2の下部、すなわち排水流出部がインバート部3に残存していても、材質的にインバート部3内を流れる排水に逆らうものではなく、排水の流れを阻害するものではない。
【0036】
また、排水ます2の点検や清掃に際しては、排水枝管14からの排水の流入を停止させると、図2に示すように、内副管2が縮小するので、従来のものと異なり、点検や清掃のために一々内副管を取外す必要がなく、上部から排水ます2の内部の点検を簡単に行なうことができ、清掃も容易に行なうことができる。なお、この内副管2は必要に応じて、取外すことも可能なもので、取外しての点検、清掃も当然行なうことができる。
【0037】
かかる構成の排水ます1において、前記アジャスタ5は立上り管4に内嵌する形態を有するもので、アジャスタ5の下端部外側面には螺子が設けられ、この螺子に螺合するリング体10がアジャスタ5の外周部に設けられている。
【0038】
したがって、アジャスタ5およびリング体10の螺子同士を噛合させながら、リング体10を回転させると、リング体10がアジャスタ5に形成された螺子に沿って上下動し、アジャスタ5と立上り管4の嵌合部の増減、すなわち、アジャスタ5の位置(高さ)を任意に決定することができるとともに、地表面(GL)との面合わせ、さらには排水枝管との心合わせなどの埋設位置の調整が、煩雑な作業を伴わずに、簡単に行なうことができ、かつ微調整も容易に行なうことができる。
【0039】
また、従来行なわれてきた埋設位置の調整、すなわち、立上り管4、アジャスタ5さらには蓋受枠部6などの切断により概略調整したのち、微調整を上記リング体10を利用することにより実施することによって、部材の種類を少なくすることができ、より効率的な作業が可能とすることができる。
【0040】
なお、前記アジャスタ5とリング体10に設けられる螺子については、大きさや形状に格別の制限はなく、多条螺子や角螺子などの螺子も用いられる。また、図1においては、アジャスタ5を立上り管4に内嵌させ、アジャスタ5の下端部の外側面に螺子を設けてあるが、その嵌合状態を逆にして、立上り管4の上端部の外側面に螺子を設け、それに螺合するリング体10を設ける形態とすることもできる。
【0041】
さらに、前記蓋受枠部6の下端部とアジャスタ5の上端部、立上り管4の下端部とインバート部2の立上り部15の嵌合面にも同様な措置を取ることができ、蓋7と地表面(GL)との面合わせを容易に行なうことができる。
【0042】
各部材に設けられる螺子については、大きさや形状に格別の制限はなく、多条螺子や角螺子などの螺子も用いられる。
【0043】
なお、螺子を用いて、上記部材を嵌合させる際には、嵌合面にシール性を付与するために、シールリング16を用いることが望ましい。このシールリング16により嵌合部の液密性が維持され、排水の漏洩が防止され、さらに、それら部材を螺子によって嵌合させた際も、従来の嵌合でも採用されている、接着剤を併用し、液密をより完全なものにすることもできる。
【0044】
図1においては、リング体10を使用して嵌合部の調整、ひいては、排水枝管との心合わせや地表面(GL)との面合わせなどの埋設位置の調整を行っているが、より簡便な方法としては、インバート部3の立上り部15と立上り管4にそれぞれ互いに螺合が可能な螺子を設け、それら螺子を螺合させる構造を採用し、しかも、螺子を十分な長さで設け、螺子の噛み合わせで、立上り管4を上下に余裕をもって、移動させて、埋設位置の調整を行なうこともできる。
【0045】
また、前記立上り管4をインバート部3の立上り部15に外嵌させ、立上り管4の内側面と立上がり部15の外側面に螺子を設ける形態とすることもできる。さらに、蓋受枠部6とアジャスタ5、アジャスタ5と立上り管4などの嵌合面についても、同様に螺子を設けることができ、それらにより、地表面(GL)との面合わせ、更には排水枝管との心合わせなどを、容易にすることができる。
【0046】
図3および図4は、この発明の排水ますと排水ます用内副管の他の例を示すもので、図示の排水ます20は、図1および図2で示したものと、構造的には略同一のもので、図1および図2で示したものと排水枝管14の位置が90°異なるものである。
【0047】
すなわち、図1および図2で示された排水ます1においては、排水枝管14は、内部を流れる排水の向きは全くの逆向きであるが、管そのものとしては排水本管13と平行しているが、図3および図4で示された排水ます20においては、排水枝管14そのものが、排水本管13と直交関係にあるものである。
【0048】
従来の内副管においては、内副管が硬質樹脂で調製されていたため、上記のような配管の構成に差異が存在すれば、それぞれ形状の異なる内副管を用意し、使用しなければならないため、多種多様な内副管を準備しなければならず、しかも、制限なしに、すべての構成に対応することは不可能であるため、別途、対応策を考慮しなければならないことが間々存在した。
【0049】
これに対して、この発明の内副管2は、自重もしくはインバート部3を流れる排水の流量及び/又は流力に応じて変形可能な材質で形成されているものであるから、排水枝管14の取付け位置に関係なく内副管2を設けることができる。また、インバート部3の排水流出口上部に設けられた止め具12に、内副管2の下端部の一端を、インバート部3の排水流出口に対応する一端に係止し、固定することにより、排水枝管14の位置がどのようであれ、排水枝管14に接続された排水流入部から流入してくる排水の流れを、インバート部3を流れる排水の流れ方向に合わせることができる。したがって、排水枝管14の位置に応じて多種類の内副管を用意する必要がないうえ、排水枝管14の位置に制限されることなく、幅広く適用可能なものである。
【0050】
また、この発明の内副管2は、上記のような材質のもので形成されているため、その長さの調整も、切断などにより容易に行なうことができるものである。さらに、排水流出口上部に設けられた止め具12への係止のための孔等も簡単に調整できるものである。なお、内副管2の下端部、すなわち、排水流出部にあらかじめ、係止用に適した複数の係止孔2aを設けておくことも可能で、係止孔2aの補強などもできるため好ましい方法である。
【0051】
図5および図6は、この発明の排水ますと排水ます用内副管の第三の実施例を示すもので、図1〜図4で示した内副管2とは、構造的に異なるものである。
【0052】
すなわち、図1〜図4で示した内副管2は、その全体が、自重もしくはインバート部を流れる排水の、流量及び/又は流力に応じて変形可能な材質、たとえば、軟質の樹脂製または布製の筒状体で形成されているが、図5および図6で示した排水ます30における内副管31は、上部の排水流入部を形成する部分は、エルボ状の硬質管体32で形成され、下部、すなわち排水流出部を形成する部分は、軟質の樹脂製または布製の筒状体33からなるもので、それらが繋ぎ合わされて形成されたものである。
【0053】
この内副管31は、上部がエルボ状の硬質管体17であるため、図1〜図4で示した内副管の場合のように、内副管31を取付けたまま、排水ます30内の点検、清掃を行なうことは難しいが、内副管31の取付け、取外しが、後述するように、自在かつ容易に行なえるものであるから、排水ます30内の点検、清掃を行なう際に、内副管31を取外すことになっても大きな問題にならない。
【0054】
図1〜図4で示した内副管2の場合には、全体が軟質の樹脂製または布製の筒状体などであるため、その排水枝管14又は排水枝管14の接続部8への取付けは、排水ます1内で行なわなければならず、若干煩雑である。これに対し、図5および図6で示した、内副管31の場合は、外部で、エルボ状の硬質管体32に軟質の樹脂製または布製などの筒状体33を取付け、下部に筒状体33を有する内副管31を、内副管31に設けてある把手34を用いて、排水ます30内に載置するだけでよく、軟質の樹脂製または布製の筒状体33の取付けがきわめて容易であるという特長を有している。
【0055】
また、この内副管31は、排水流出部を形成する部分が、軟質の樹脂製または布製の筒状体33であるから、図1〜図4で示した内副管の場合と同様に、排水枝管14の位置にかかわりなく取付けることができ、インバート部3の排水流出口上部に設けられた止め具12に、下端部の一端、インバート部3の排水流出口に対応する一端を係止し、固定することにより、排水枝管14の位置がどのようであれ、排水枝管14に接続された排水流入部から流入してくる排水の流れを、インバート部3を流れる排水の流れ方向に合わせることができるので、排水枝管14の位置に応じて多種類の内副管を用意する必要がない上、排水枝管14の位置に制限されることなく、幅広く適用可能なものである。
【0056】
図7および図8は、前記内副管31を排水ます30内への脱着自在に取付ける方法の一例を示すもので、図7に示されるように、内副管31を構成するエルボ状の硬質管体32には、突起からなる把手34と、その左右に排水ます30内に係止させるための係合突起35,35が設けられ、エルボ状の硬質管体32の下部には、軟質の樹脂製または布製の筒状体33が、エルボ状の硬質管体32の下部に設けられた係合突起36,36を利用して取付けられている。
【0057】
また、この排水ます30を構成するアジャスタ5の内壁には、図8に示すように、内副管31の外周部に設けられた係合突起35,35を載置し固定する、内壁から突出する取付具37が、係合突起35,35に相対するように設けられている。
【0058】
したがって、内副管31を排水ます30に取付ける際には、まず、エルボ状の硬質管体32と軟質の樹脂製または布製の筒状体33を組み合わせて、内副管31を調製する。ついで、硬質管体32と筒状体33を組み合わせて調製された内副管31は、外周部に設けられた把手3419を掴んで、排水ます30内部に装入する。その際、硬質管体32に設けられた係合突起35,35を、アジャスタ5の内壁から突出する取付具37に載置することにより固定するものである。なお、内副管31を排水ます30から取外すときは、端に内副管31に設けられた把手34を掴んで、外に引出すだけでよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
この発明の排水ますおよび排水ます用内副管は、汚水の飛散や排水ますの磨耗を防ぐという内副管本来の目的達成するに際し、インバート部を流れる排水の流れを阻害することがないという優れた効果、内副管の排水流入部の位置、すなわち、排水ますの枝管取付け部、さらには、排水枝管の位置に関係なく設置することができ、排水ますの設置における制約の一つを消失させるという効果、さらには、排水ますのインバート部の排水管接続部と、それに接続する排水管との心合わせや、蓋部表面を地表面(GL)への面合わせ、特に、アジャスタに設けられた枝管接続部と排水枝管との心合わせも、極めて簡単に行なえ、下水道敷設現場における排水ますの埋設位置の調整作業を、熟練を要しない、きわめて容易なものにすることのできるものであるから、土木建築関係の業界で広く利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明にかかる排水ますの一例を示す断面図で、内副管に排水枝管からの排水が流入している状態を示すものある。
【図2】図1における排水ますにおいて、内副管に排水枝管からの排水が流入していない状態を示す説明図である。
【図3】この発明にかかる排水ますの他の一例を示す断面図で、内副管に排水枝管からの排水が流入している状態を示すものある。
【図4】図3における排水ますにおいて、内副管に排水枝管からの排水が流入していない状態を示す説明図である。
【図5】この発明にかかる排水ますのさらに他の例を示す断面図で、内副管に排水枝管からの排水が流入している状態を示すものある。
【図6】図5における排水ますにおいて、内副管に排水枝管からの排水が流入していない状態を示す説明図である。
【図7】図5に示す内副管を示す斜視図である。
【図8】図5に示す排水ますにおけるアジャスタの要部の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1,20,30 排水ます
2,31 内副管
3 インバート部
4 立上り管
5 アジャスタ
6 蓋受枠部
7 蓋
8 排水枝管の接続部
11 取付具
12 止め具
13 排水本管
14 排水枝管
15 立上り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に設けられた排水流入部から流入してくる排水の流れを、インバート部を流れる排水の流れ方向に合わせるための内副管を有し、
前記内副管の少なくとも下部が、自重もしくはインバート部を流れる排水の流量及び/又は流力に応じて変形可能な材質で形成されていること
を特徴とする排水ます。
【請求項2】
前記内副管が、
軟質の樹脂製または布製の筒状体であること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項3】
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記内副管が、
排水流入口を形成するエルボ状の硬質管体と、この管体に取付けられる軟質の樹脂製または布製の筒状体からなるものであること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項4】
前記筒状体は、
その下端部の一端が、インバート部の排水流出口上部に設けられた止め具に係止され、固定されていること
を特徴とする請求項2または請求項3に記載の排水ます。
【請求項5】
前記内副管が、
前記排水ます内の取付具に、脱着自在の状態で取付けられていること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項6】
前記取付具が、
排水枝管の流入口に設けられ、布製の筒状体からなる内副管の開口部を固定するものであること
を特徴とする請求項5に記載の排水ます。
【請求項7】
前記取付具が、
前記排水ます内壁に設けられ、エルボ状の硬質管体からなる内副管上部を載置し、保持するものであること
を特徴とする請求項5に記載の排水ます。
【請求項8】
前記排水ますが、
排水本管と連通する底部のインバート部と、このインバート部材の上部に連接される点検筒としての立上り管と、この立上り管の上部開口に装着される蓋部とからなり、前記インバート部の立上り部もしくは前記立上り管の上下端の、いずれかの内側面または外側面に、それら部材の埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項9】
前記立上り管は、
前記インバート部材の上部と連接する立上り管主体と、この立上り管主体に連接されるアジャスタとで構成されたもので、前記アジャスタの上下端の、いずれかの内側面または外側面に、埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とする請求項8に記載の排水ます。
【請求項10】
前記蓋部材は、
前記立上り管の上部開口に装着される蓋受枠部と、この蓋受枠部に開閉自在に設けられる蓋とから構成されたもので、前記蓋受枠部の上下端の、いずれかの内側面または外側面に、埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とする請求項8に記載の排水ます。
【請求項11】
前記外側面に螺子を有するインバート部材、立上り管、アジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれか一つ、もしくは複数が、その外周部に、前記調節用螺子と噛み合う螺子が設けられているリング体を有すること
を特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の排水ます。
【請求項12】
前記外側面に螺子を有するインバート部材、立上り管、アジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれか一つ、もしくは複数が、その内側面に、前記螺子に噛み合う螺子が設けられていること
を特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の排水ます。
【請求項13】
前記内側面に螺子を有するインバート部材、立上り管、アジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれか、もしくは複数が、その外側面に、前記螺子に噛み合う螺子が設けられていること
を特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の排水ます。
【請求項14】
前記インバート部材、立上り管、アジャスタあるいは蓋受枠部は、
形成された螺子の末端部にシールリングが設けられていること
を特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の排水ます。
【請求項15】
排水ます内に設置され、排水流入部から流入してくる排水の流れを排水ますのインバート部を流れる排水の流れ方向に合わせるための排水流出部が、
自重もしくはインバート部を流れる排水の流量及び/又は流力に応じて変形可能な材質で形成されていること
を特徴とする排水ます用内副管。
【請求項16】
前記排水流出部が、
軟質の樹脂製または布製の筒状体で構成されていること
を特徴とする請求項15に記載の排水ます用内副管。
【請求項17】
前記排水流出部が、
排水流入口を形成するエルボ状の硬質管体と、この管体に取付けられる軟質の樹脂製または布製の筒状体で構成されていること
を特徴とする請求項15に記載の排水ます用内副管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−249813(P2006−249813A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69007(P2005−69007)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】