説明

排水路切替え装置

【解決手段】往復駆動部16のロッド18が可動部19とともに後退すると、索受け15に巻掛けられた一定長さの索14を介して、一方の蓋9がその重量で下方へ回動して一方の排水口7を閉じると同時に、他方の蓋10がその重量に抗して上方へ回動して他方の排水口8を開く。往復駆動部16のロッド18が可動部19とともに前進すると、この索14を介して、一方の蓋9がその重量に抗して上方へ回動して一方の排水口7を開くと同時に、他方の蓋10がその重量で下方へ回動して他方の排水口8を閉じる。
【効果】排水槽1において各排水流出管5,6の排水口7,8を蓋9,10により開閉させるだけの簡単な排出構造を採用することができるばかりでなく、電磁弁に代えて機械的な切替え手段を採用したので、滞留水に晒され易い場所に設置されても故障が少なく、また、大径の排水流出管5,6にも容易に設置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地下構造物などに流入して溜まった雨水などの滞留水を排出する際に利用する排水路を滞留水の水質に応じて変更することができる排水路切替え装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示された雨水排水制御装置では、滞留水の水質に応じた電磁弁制御により排水路を切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−42903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された雨水排水制御装置で採用された電磁弁は、滞留水の水質を検知してその検知結果に基づいて排水路を切り替える場合に必要であるが、滞留水に晒され易い場所に設置すると故障し易い問題があった。そのため、滞留水の水質に応じた電磁弁制御を行う必要のない場合には電磁弁に代えて機械的な切替え手段を採用することが望ましい。機械的な切替え手段としてはコックなどの開閉弁を採用することができるが、大径の排水路には大型の電磁弁や大型のコックなどを必要とする問題もあった。また、電磁弁やコックなどは、泥などが混ざって水質の悪い雨水などにより詰まった場合に、その泥などを排水路から除去したりして、十分なメンテナンスを行う必要があった。
【0005】
この発明は、既存の電磁弁やコックなどの開閉弁に代えて、メンテナンスを行い易く大径の排水路にも容易に設置することができる機械的な切替え手段を採用した排水路切替え装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態(図1〜2に示す第1実施形態、図3に示す第2実施形態)の図面の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる排水路切替え装置は、第1〜2施形態に対応し、下記のように構成されている。
【0007】
排水が流入する排水槽(1)に複数の排水路(5,6)を接続して各排水路(5,6)に設けた排水口(7,8)と排水槽(1)とを連通するとともに、この各排水路(5,6)の排水口(7,8)を開閉し得る蓋(9,10)を設け、この各蓋(9,10)を開閉動させる可動機構(13)を備えている。請求項1の発明では、排水槽(1)において可動機構(13)により作動する蓋(9,10)により各排水路(5,6)の排水口(7,8)を開閉させるだけの簡単な排出構造でメンテナンスを行い易く大径の排水路(5,6)にも容易に設置することができる排水路切替え装置を採用することができる。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明(第1〜2実施形態に対応)において、前記蓋(9,10)は、可動機構(13)により、排水口(7,8)の外周端面(7a,8a)に対し摺動して排水口(7,8)を開閉し得る。請求項2の発明では、排水口(7,8)の外周端面(7a,8a)に蓋(9,10)を摺動させて開閉するだけの簡単な排出構造を採用することができる。
【0009】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明(第1〜2実施形態に対応)において、前記蓋(9,10)は、回動可能に支持され、可動機構(13)により回動して排水口(7,8)を開閉し得る。請求項3の発明では、蓋(9,10)の回動により排水口(7,8)の開閉を簡単に行うことができる。
【0010】
請求項1または請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明(第1〜2実施形態に対応)において、前記蓋(9,10)は、その重量で排水口(7,8)に対し閉動するとともにその重量に抗して排水口(7,8)に対し開動するように、可動機構(13)により作動する。請求項4の発明では、蓋(9,10)の重量を利用して排水口(7,8)の開閉を簡単に行うことができる。
【0011】
請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項5の発明(第1〜2実施形態に対応)において、前記可動機構(13)は、一対の蓋(9,10)のうち一方の蓋(9または10)を一方の排水口(7または8)に対し開動向きへ作動させると同時に他方の蓋(10または9)を他方の排水口(8または7)に対し閉動向きへ作動させるように、一対の蓋(9,10)を互いに連動させる。請求項5の発明では、一方の排水口(7または8)を開動する機構と他方の排水口(8または7)を閉動する機構とを兼用した簡単な可動機構(13)を採用することができる。
【0012】
請求項5の発明を前提とする請求項6の発明(第1実施形態に対応)において、前記可動機構(13)は、索受け(15)に巻掛けられた一定長さの索(14)の両端部(14a,14b)うち索(14)の一端部(14a)を一対の蓋(9,10)のうち一方の蓋(9)に連結部(9b)で支持するとともに索(14)の他端部(14b)を他方の蓋(10)に連結部(10b)で支持し、この索(14)に連結した可動部(19)を移動させることにより、この索受け(15)と一方の蓋(9)の連結部(9b)との間における索(14)の長さと、この索受け(15)と他方の蓋(10)の連結部(10b)との間における索(14)の長さとを変更して、一対の蓋(9,10)を互いに連動させる。請求項6の発明では、索(14)を利用して排水口(7,8)の開閉を行う簡単な可動機構(13)を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる排水路切替え装置は、排水槽(1)において各排水路(5,6)の排水口(7,8)を蓋(9,10)により開閉させるだけの簡単な排出構造を採用することができるばかりでなく、既存の電磁弁やコックなどの開閉弁に代えて、メンテナンスを行い易く大径の排水路(5,6)にも容易に設置することができる機械的な切替え手段を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態にかかる排水路切替え装置を示す平面図であり、(b)は同じく正面図である。
【図2】(a)(b)はそれぞれ第1実施形態の排水路切替え装置において一方の蓋により排水口を開くと同時に他方の蓋により排水口を閉じた状態を示す側面図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれ第2実施形態において一方の蓋により排水口を開くと同時に他方の蓋により排水口を閉じた状態を概略的に示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明の第1実施形態にかかる排水路切替え装置について図1〜2を参照して説明する。
排水槽1の相対向する両側壁2,3のうち、一方の側壁2には一本の排水流入管4が接続されて排水槽1内の滞留室1aに連通され、他方の側壁3には複数(二本)の排水流出管5,6(排水路)が接続されているとともに、各排水流出管5,6の内端部に設けられた排水口7,8が排水槽1内の滞留室1aに連通されている。なお、排水流入管4と一方の排水流出管5と他方の排水流出管6とは、互いに略同一の内径を有するとともに、排水槽1内の滞留室1aの底部で略同一の高さに設置されている。
【0016】
一方の排水流出管5の排水口7の外周に設けられたフランジ7aには円板状の蓋9が回動中心部9aを中心に回動可能に支持され、蓋9の内面がフランジ7aの端面に対し摺動しながらフランジ7aの端面に合致して排水口7を閉じるとともにフランジ7aの外側へ突出して排水口7を開く。他方の排水流出管6の排水口8の外周に設けられたフランジ8aには円板状の蓋10が回動中心部10aを中心に回動可能に支持され、蓋10の内面がフランジ8aの端面に対し摺動しながらフランジ8aの端面に合致して排水口8を閉じるとともにフランジ8aの外側へ突出して排水口8を開く。各蓋9,10はその外周に錘11を有している。
【0017】
排水槽1の上壁12の外側には可動機構13が設置されている。可動機構13は一定長さの索14(ワイヤー)と索受け15と往復駆動部16とを備えている。索受け15においては、一方の蓋9側に配設された両ガイドローラ15a,15bと他方の蓋10側に配設された両ガイドローラ15a,15bとが互いに離間して一定距離を保持し、各ガイドローラ15a,15bに索14が巻掛けられている。索14の両端部14a,14bのうち、一端部14aは一方の蓋9に連結部9bで支持されているとともに、他端部14bは他方の蓋10に連結部10bで支持されている。往復駆動部16においては、電動モータ17により雌雄ねじ機構(図示せず)を介して進退するロッド18の先端部に取着された可動部19が両ガイドローラ15a間の索14に連結されている。ロッド18が進退すると、索受け15の両ガイドローラ15a間で可動部19の位置が変更されて、索14の一端部14aまたは索14の他端部14bと索受け15のガイドローラ15bとの間における索の長さが変更されるため、蓋9,10が互いに連動して上下方向へ回動する。
【0018】
次に、各排水流出管5,6の排水口7,8に対する蓋9,10の開閉作用を述べる。
図2(a)に示す状態では、往復駆動部16のロッド18が可動部19とともに後退して、一方の蓋9により一方の排水口7が閉じられ、他方の蓋10により他方の排水口8が開かれている。図2(b)に示すように、往復駆動部16のロッド18が可動部19とともに前進すると、一方の蓋9がその重量に抗して上方へ回動して一方の排水口7を開くと同時に、他方の蓋10がその重量で下方へ回動して他方の排水口8を閉じる。図2(b)に示す状態から往復駆動部16のロッド18が可動部19とともに後退すると、図2(a)に示す状態に戻る。例えば、排水の水質に応じて、一方の排水口7から河川に排出され、他方の排水口8から水処理施設に排出される。なお、蓋9,10の開閉状態はリミットスイッチ(図示せず)により検知することができる。
【0019】
次に、本発明の第2実施形態にかかる排水路切替え装置について第1実施形態との相違点を中心に図3を参照して説明する。
第2実施形態では、第1実施形態の可動機構13が変更され、三本の腕部20b,20c,20dを一体化したリンク20が回動中心部20aで回動可能に支持され、腕部20bが往復駆動部16のロッド18に連結され、一方の蓋9が腕部20cに対し一体的に取着されているとともに、他方の蓋10が腕部20dに対し一体的に取着されている。ロッド18が進退すると、リンク20が各蓋9,10とともに回動する。図3(a)に示す状態では、ロッド18が後退して、一方の蓋9により一方の排水口7が閉じられ、他方の蓋10により他方の排水口8が開かれている。図3(b)に示すように、ロッド18が前進すると、一方の蓋9が上方へ回動して一方の排水口7を開くと同時に、他方の蓋10が下方へ回動して他方の排水口8を閉じる。図3(b)に示す状態からロッド18が後退すると、図3(a)に示す状態に戻る。
【0020】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 第1〜2実施形態では、排水槽1内の滞留室1aにおいて蓋9,10の回動に伴い各排水流出管5,6の排水口7,8のフランジ7a,8aに蓋9,10を摺動させて排水口7,8を蓋9,10により蓋9,10の重量を利用しつつ開閉させるだけの簡単な排出構造を既存の電磁弁やコックなどの開閉弁に代えて採用することができる。従って、例えば、泥などが混ざって水質の悪い雨水などにより排水口7,8が詰まった場合には、蓋9,10を開閉させるだけで、その泥などを排水口7,8から容易に除去してメンテナンスを行うことができる。また、大径の排水流出管5,6にも容易に設置することができる。
【0021】
(2) 第1〜2実施形態では、一方の蓋9または10を一方の排水口7または8に対し開くと同時に他方の蓋10または9を他方の排水口8または7に対し閉じるように各蓋9,10を互いに連動させたので、各排水口7,8のうちいずれか一つを確実に開くことができる。また、一方の排水口7または8を開動する機構と他方の排水口8または7を閉動する機構とを兼用した簡単な可動機構13を採用することができる。
【0022】
(3) 第1実施形態では、索受け15に巻掛けられた一定長さの索14を利用して排水口7,8の開閉を行う簡単な可動機構13を採用することができる。
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
【0023】
・ 前記第1〜2実施形態では一方の蓋9を一方の排水口7に対し開くと同時に他方の蓋10を他方の排水口8に対し閉じるように可動機構13により各蓋9,10を互いに連動させているが、このように各蓋9,10を互いに連動させることなくそれぞれ別々に排水口7,8を開閉させる可動機構を採用してもよい。
【0024】
・ 前記第1〜2実施形態の往復駆動部16以外に、エアシリンダなどの往復駆動部を採用してもよい。
・ 前記第1〜2実施形態では電動の往復駆動部16を採用したが、手動の往復駆動部を採用してもよい。
【0025】
・ 前記第1実施形態では各蓋9,10を回動させて排水口7,8を開閉させたが、各蓋9,10をレールに沿ってスライドさせて排水口7,8を開閉させてもよい。
・ 前記第1実施形態では索14としてワイヤーを採用したが、ベルトやチェーンなどの索を採用してもよい。
【0026】
・ 前記第1実施形態では各ガイドローラ15a,15bに索14を巻掛けた索受け15を採用したが、一つの巻掛けローラに索を巻掛けた索受けを採用してもよい。その場合、この索を巻掛けローラに可動部で連結し、巻掛けローラを可動部とともに回動させることにより、この巻掛けローラと一方の蓋の連結部との間における索の長さと、この巻掛けローラと他方の蓋の連結部との間における索の長さとを変更して、一対の蓋を互いに連動させるようにしてもよい。
【0027】
・ 前記第1実施形態では錘11を有する各蓋9,10の重量を利用して各蓋9,10による排水口7,8の開閉を円滑に行えるようにしたが、ばね力を利用してもよい。
・ 前記第1〜2実施形態では二本の排水流出管5,6を設置したが、排水流出管5,6を三本以上設置してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…排水槽、5,6…排水流出管(排水路)、7,8…排水口、7a,8a…排水口のフランジ(外周端面)、9,10…蓋、9a,10a…蓋の回動中心部、9b,10b…蓋の連結部、13…可動機構、14…索、14a,14b…索の端部、15…索受け、19…可動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が流入する排水槽に複数の排水路を接続して各排水路に設けた排水口と排水槽とを連通するとともに、この各排水路の排水口を開閉し得る蓋を設け、この各蓋を開閉動させる可動機構を備えたことを特徴とする排水路切替え装置。
【請求項2】
前記蓋は、可動機構により、排水口の外周端面に対し摺動して排水口を開閉し得ることを特徴とする請求項1に記載の排水路切替え装置。
【請求項3】
前記蓋は、回動可能に支持され、可動機構により回動して排水口を開閉し得ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排水路切替え装置。
【請求項4】
前記蓋は、その重量で排水口に対し閉動するとともにその重量に抗して排水口に対し開動するように、可動機構により作動することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の排水路切替え装置。
【請求項5】
前記可動機構は、一対の蓋のうち一方の蓋を一方の排水口に対し開動向きへ作動させると同時に他方の蓋を他方の排水口に対し閉動向きへ作動させるように、一対の蓋を互いに連動させることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項に記載の排水路切替え装置。
【請求項6】
前記可動機構は、索受けに巻掛けられた一定長さの索の両端部うち索の一端部を一対の蓋のうち一方の蓋に連結部で支持するとともに索の他端部を他方の蓋に連結部で支持し、この索に連結した可動部を移動させることにより、この索受けと一方の蓋の連結部との間における索の長さと、この索受けと他方の蓋の連結部との間における索の長さとを変更して、一対の蓋を互いに連動させることを特徴とする請求項5に記載の排水路切替え装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−132162(P2012−132162A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283099(P2010−283099)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(591004478)株式会社グラベル・クリーン (5)
【Fターム(参考)】