説明

掘削装置

【課題】 回転刃付き下回転体間に石が詰まったり、掘残しが生じたりすることなく、比較的大きな石を確実に破砕しながら簡単且つ正確に平面視四角形の掘削孔を掘削できる。
【解決手段】 地上から線状材1により吊り下げられて地盤2中に挿入されて地盤2中を下降又は上昇する装置本体3の下部に回転軸4が横向きとなった複数の回転刃付き下回転体5を第1隙間6を介して並設する。第1隙間6の上方位置に回転軸7が横向きとなった回転刃付き中間回転体8を配置する。回転刃付き下回転体5と回転刃付き中間回転体8との間に第2隙間9を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に山止め壁、止水壁、基礎杭を形成したり、あるいは地盤改良を行うために地盤を掘削する掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から地盤に山止め壁、止水壁、基礎杭を形成したり、あるいは地盤改良を行うために地盤に掘削土砂と固結材とを混合してソイル固結体を形成することが知られている。そして、従来のソイル固結体を形成するための装置としては、地上に設置したクローラクレーンのリーダに沿って複数の掘削軸を上下移動自在に取付け、各掘削軸の先端にビットを設けると共に掘削軸の上下方向に部分的に攪拌羽根や攪拌翼等の攪拌手段を設け、更に、ビット又は掘削軸にセメントミルク等の固結材を噴出する噴出部を設けたものである。
【0003】
ところが、上記の従来の装置は、地上に設置したクローラクレーンのリーダに沿って掘削軸を上下移動自在に取付けたものであるから、地上において上下長さの長いリーダが必要であると共に、リーダに沿って上下に長い掘削軸が移動するため、安定性が悪く、転倒の危険がある。また、トンネル内や上方に障害物があるような現場においては、上記上下長さの長いリーダ、掘削軸を配置することができず、このような場所においては使用できないという問題があり、また、挿入される掘削軸の体積分の掘削土が地上に溢れるので、掘削軸の挿入深度が深くなると地中に挿入される掘削軸の体積が比例的に増えて掘削土の地上に溢れる量が多くなるという問題がある。
【0004】
また、上記従来例にあっては、上下に長い複数の掘削軸の先端にビットを設けたものにおいて、隣合う掘削軸の下端のビットの位置を上下にずらして位置させ、平面視で隣合うビットの描く回転軌跡が一部重複するようになっていて、隣合うビット間に掘残し部分が発生しないようにしているが、この従来例にあっては、平面視で隣合うビットの描く回転軌跡が一部重複する部分は平面視で円と円とが一部重複している部分であるため掘削巾狭く、掘削巾が一定巾となった平面視長方形状に掘削することができないという問題がある。したがって、形成する山止め壁、止水壁、基礎杭等の平面視における各部の巾を一定にできず、強度や止水性等が一定にならないという問題がある。
【0005】
また、下に位置するビットで砕けなかった比較的大きい石などは、下に位置するビット間を通過して該下のビットと、下のビット間の上方に位置する中間のビットとの間の隙間を通過しようとする。ところで、上下に長い掘削軸の下端に設けたビットは、通常下側の土砂を掘削するような刃の構造となっているため、ビットの下にある土砂に対しては破砕作用があるが、ビットの上に位置する土砂に対しては破砕作用がない。したがって、下のビットと中間のビットとの間を通過しようとする比較的大きい石に対しては、該石に対して上に位置する中間のビットのみが破砕作用を行い、該通過しようとする石に対して下のビットは破砕作用を行わない。このため、下のビットと中間のビットとの間を通過しようとする比較的大きい石は破砕されることなく通過するか、あるいは、下のビットと中間のビットとの間に詰まってビットが回転できなくなるといった問題が生じる。
【0006】
また、上下に長い掘削軸を使用することなく、地上から線状材により吊り下げられて地盤中に挿入されて地盤中を下降又は上昇する装置本体の下部に回転軸が横向きとなった2つの回転刃付き回転体を隙間を介して左右に並設した掘削装置が、特許文献1、特許文献2により提案されている。
【0007】
これら特許文献1、2に示す従来例は、地上から線状材により吊り下げた装置本体を地盤中に挿入して、回転刃付き回転体で掘削するので、上下に長い掘削軸を使用する必要がなくて、転倒のおそれがなく、また、掘削深度が深くても、上下に長い掘削軸を使用するもののように、掘削土の地上に溢れる比例的に増えるというようなことがないため、地上に溢れる掘削土の量が少なく、また、平面視で四角形の掘削孔が形成できるという特徴を有している。
【0008】
しかしながら、回転軸が横向きとなった2つの左右の回転刃付き回転体を回転して地盤を掘削する場合、左右の回転刃付き回転体間の隙間が小さいと、回転刃付き回転体に設けた回転刃で掘削されなかった比較的大きい石等が左右の回転刃付き回転体に咬みこんで詰まり、回転刃付き回転体が回転できなくなってしまうという問題がある。一方、左右の回転刃付き回転体に咬み込むことなく通過させようとすれば、左右の回転刃付き回転体間の隙間を大きくする必要があるが、この場合は、左右の回転刃付き回転体間の隙間が掘削されず、掘り残しが発生してしまうという問題があり、また、回転刃付き回転体で掘削されなかった比較的大きい石等が、そのまま、砕かれることなく通過してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07−158055号公報
【特許文献1】特開2006−57446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて発明したものであって、回転刃付き下回転体間に石が詰まったり、掘残しが生じたりすることなく、比較的大きな石を確実に破砕しながら簡単且つ正確に平面視四角形の掘削孔を掘削できる掘削装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成になっている。
【0012】
本発明の掘削装置は、地上から線状材1により吊り下げられて地盤2中に挿入されて地盤2中を下降又は上昇する装置本体3の下部に回転軸4が横向きとなった複数の回転刃付き下回転体5を第1隙間6を介して並設し、上記第1隙間6の上方位置に回転軸7が横向きとなった回転刃付き中間回転体8を配置し、上記回転刃付き下回転体5と回転刃付き中間回転体8との間に第2隙間9を形成して成ることを特徴とするものである。
【0013】
このような構成とすることで、地上からワイヤ、チェーン、鎖等の線状材1により吊り下げた装置本体3を地盤2中に挿入して、回転刃付き下回転体5により掘削すると共に、回転刃付き下回転体5間の部分を回転刃付き下回転体5により掘削することで、上記掘削と装置本体3との自重とにより地盤2中を下降しながら、掘残しなく平面視四角形状に掘削することができる。上記回転刃付き下回転体5を回転して掘削する際、回転刃付き下回転体5で小さく破砕することができなかった比較的大きな石は、回転刃付き下回転体5間の第1隙間6を通過するのであるが、この際に、左右の回転刃付き下回転体5に備えた回転刃5a間を通過することになるので、通過時に左右に対向する両側の回転刃5a、5aにより左右両側から破砕作用が行われる。ここである程度破砕された石は、続いて回転刃付き下回転体5と回転刃付き中間回転体8とが斜め上下に対向する第2隙間9を通過するが、この際に、斜め上下に対向する回転刃付き下回転体5に備えた回転刃5aと回転刃付き中間回転体8に備えた回転刃8a間を通過することになるので、通過時に斜め上下に対向する回転刃5a、8aにより斜め上下方向の両側から破砕作用が行われる。このように、第1隙間6における対向する両側の回転刃5a、5aによる左右両側からの破砕作用で、十分破砕されなかった比較的大きい石、あるいは、第1隙間6を破砕されることなく通過した比較的大きい石を、第2隙間9を通過する際に、斜め上下に対向する回転刃5a、8aで両側から破砕することができる。したがって、第1隙間6の隙間巾を極端に狭くしなくても、回転刃付き下回転体5の掘削時に小さい破砕することが出来なかった比較的大きい石を後段で確実に破砕できるので、第1隙間6に比較的大きい石が詰まらないような隙間巾とすることが可能となる。
【0014】
また、第2隙間9の隙間巾が第1隙間6の隙間巾とほぼ同じまたは狭いことが好ましい。
【0015】
このような構成とすることで、回転刃付き下回転体5で小さく破砕することができなかった比較的大きな石は、まず第1段階として第1隙間6を通過する際に、左右両側から回転刃5aで破砕され、次に、第2段階として第2隙間9を通過する際に斜め上下方向の両側から回転刃5a、8aでさらに細かく破砕されることになる。
【0016】
また、第2隙間9の隙間巾が可変自在となっていることが好ましい。
【0017】
このような構成とすることで、掘削しようとする地盤2の状態に応じて、第2隙間9の隙間巾が可変して、地盤2に対応した隙間巾とすることができる。
【0018】
また、第2隙間9が最小巾となる位置から第2隙間9巾が広くなる方向に、回転刃付き中間回転体8が移動自在となり、回転刃付き中間回転体8に、第2隙間9巾が最小巾となる方向に移動させる力が付与されていることが好ましい。
【0019】
このような構成とすることで、比較的大きい石が第2隙間9を通過する際、斜め上下方向の両側から回転刃5a、8aで十分に破砕されなくて、第2隙間9に詰まるような場合は、回転刃付き中間回転体8が移動して第2隙間9の隙間巾が広くなって比較的大きい石を強制的に通過させることができる。これにより、両側の回転刃付き下回転体5に比較的大きい石が咬み込んで第2隙間9に詰まって、回転刃付き下回転体5、回転刃付き中間回転体8が回転できなくなるという事態を回避できる。
【0020】
また、第2隙間9が最小巾となる位置から第2隙間2の巾が広くなる方向に、回転刃付き中間回転体8が移動自在となり、回転刃付き中間回転体8の移動位置を調整する移動位置調整手段10を設け、回転刃付き中間回転体8の移動調整により第2隙間9巾が調整自在となっていることが好ましい。
【0021】
このような構成とすることで、掘削しようとする地盤2の状態に応じて、移動位置調整手段10により第2隙間9の隙間巾を調整し、地盤2に対応した最適の隙間巾とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記のように構成したので、回転刃付き下回転体間の地盤を回転刃付き中間回転体で掘削できるので、平面視四角形の掘削孔を掘残しなく正確に形成できる。しかも、回転刃付き下回転体間の地盤を掘り残し無く回転刃付き中間回転体で掘削できるので、第1隙間の隙間巾を、回転刃付き下回転体で地盤を掘削する際に十分に破砕できなかった比較的大きい石が咬みこんで詰まらないような隙間巾にすることが可能となる。しかも、回転刃付き下回転体で地盤を掘削する際に、十分に破砕できなかった比較的大きい石を、第1隙間、第2隙間を通過させる際にそれぞれ両側から回転刃により細かく砕くことができる。このように、本発明は、回転刃付き下回転体間に石が詰まったり、掘残しが生じたりすることなく、比較的大きな石を確実に破砕しながら簡単且つ正確に平面視四角形の掘削孔を掘削できる
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態の概略正面図である。
【図2】同上の概略側面図である。
【図3】同上の地盤を掘削している状態を示す概略断面図である。
【図4】同上の他の実施形態の概略正面図である。
【図5】同上の更に他の実施形態の概略正面図である。
【図6】同上の更に他の実施形態の概略正面図である。
【図7】同上の更に他の実施形態の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0025】
図1、図2には本発明に用いる装置の一例が示してある。
【0026】
装置本体3の最下端には回転軸4が横向きとなった複数の回転刃付き下回転体5が第1隙間6を介して並設してある。
【0027】
添付図面に示す実施形態では、装置本体3の最下端の左右両側に回転軸4が横向きとなった回転刃付き下回転体5が第1隙間6を介して並設してある。
【0028】
回転刃付き下回転体5には外周部に複数の回転刃5aを突設している。該回転刃5aは周方向及び軸方向にそれぞれ複数突設している。
【0029】
装置本体3には更に上記回転刃付き下回転体5間の形成される第1隙間6の上方位置に、回転軸7が横向きとなった回転刃付き中間回転体8が設けてある。
【0030】
この回転刃付き中間回転体8には外周部に複数の回転刃8aを突設している。該回転刃8aは周方向及び軸方向にそれぞれ複数突設している。
【0031】
上記のように、第1隙間6の上方位置に回転刃付き中間回転体8を設けることで、左右両側の回転刃付き下回転体5と、回転刃付き中間回転体8との間に第2隙間9を形成してある。つまり、第2隙間9を介して左右両側の回転刃付き下回転体5と、回転刃付き中間回転体8はそれぞれ斜め上下方向に対向している。つまり、左右の回転刃付き下回転体5の各回転軸4の中心と、回転刃付き中間回転体8の回転軸7の中心が三角形の頂点に位置している。
【0032】
回転刃付き下回転体5、回転刃付き中間回転体8はいずれも回転駆動手段により駆動される。該回転駆動手段は、回転刃付き下回転体5、回転刃付き中間回転体8に内装したり、あるいは、装置本体3に設けられる。
【0033】
上記左右の回転刃付き下回転体5及び中間の回転刃付き中間回転体8を回転しながら地盤2を掘削することで、平面視で四角形の掘削孔14を掘削するようになっている。
【0034】
装置本体3はワイヤ、チェーン、鎖等の線状材1により吊り下げられており、また、装置本体3には固結材を噴射するための固結材噴射部15が設けてある。また、固結材噴射部15には固結材を供給するための固結材供給ホース(図示せず)が接続してあり、地上に設置される固結材供給装置(図示せず)に接続してある。固結材供給ホースは線状材1に沿って取付けられる。線状材1は地上に設置した施工機により地上から吊り下げられており、施工機に設けたドラムに線状材1が巻いてある。
【0035】
上記のような装置を用いて地盤2を掘削して地中にソイル固結体が充填された掘削孔14を形成するには下記のようにして行う。
【0036】
装置本体3を地上に設置した施工機から線状材1で吊り下げた状態で、図3に示すように、両回転刃付き下回転体5と、回転刃付き中間回転体8を回転して地盤を掘削しながら該掘削及び装置本体3の自重により装置本体3を地中に挿入していく。
【0037】
この場合、セメントミルク、セメントミルクを主材とする混合物、合成樹脂液、あるいは合成樹脂液と他の材料との混合物等の固結材を固結材噴射部15から噴射しながら上記掘削を行う。したがって、掘削すると同時に掘削土砂と固結剤との攪拌混合をおこなう。
【0038】
地盤2の掘削に当たっては、まず、最下端に位置する左右両側の回転刃付き下回転体5で地盤2を掘削し、続いて、左右の回転刃付き下回転体5間の地盤2を回転刃付き中間回転体8で掘削する。これにより、左右両側の回転刃付き下回転体5と、回転刃付き中間回転体8とで、平面視四角形状の掘削孔14を掘り残しなく掘削することができる。
【0039】
また、地盤2は上記のようにまず最下端の左右両側の回転刃付き下回転体5で掘削され、この掘削時に地盤2中に含まれる石などが回転刃付き下回転体5で破砕される。
【0040】
しかし、回転刃付き下回転体5による地盤2の掘削時に十分に破砕できなかった石は、回転刃付き下回転体5間の第1隙間6を通過しようとする。
【0041】
ここで、回転刃付き下回転体5の第1隙間6の隙間巾が狭すぎると、掘り残しの心配は無いが、隙間巾が狭すぎるため、回転刃付き下回転体5で十分に破砕できなかった石が、左右の回転刃付き下回転体5に咬み込んでしまう。
【0042】
そこで、本発明においては、回転刃付き下回転体5で小さく破砕できなかった比較的大きい両回転刃付き下回転体5に咬み込んで第1の隙間6に詰まらないように、第1隙間6間の隙間寸法をある程度大きく確保し、左右の回転刃付き下回転体5間に掘り残しが生じても回転刃付き中間回転体8で掘削して掘り残しが生じないように構成している。
【0043】
このように第1隙間6間の隙間寸法をある程度大きく確保しているので、回転刃付き下回転体5で十分に破砕できなかった石は、両回転刃付き下回転体5に咬み込んで第1の隙間6に詰まることなく、両回転刃付き下回転体5間の第1隙間6を通過するか、又は、通過時に左右両側から両回転刃5a、回転刃5aにより破砕作用が加えられて小さく破砕される。
【0044】
上記のようにして両回転刃付き下回転体5間の第1隙間6を通過するか、又は、通過時に左右両側から両回転刃5a、回転刃5aにより破砕された石は、続いて、第2隙間9に至る。
【0045】
この第2隙間9において、斜め上下に対向する回転刃付き下回転体5に備えた回転刃5aと回転刃付き中間回転体8に備えた回転刃8a間を通過することになるので、通過時に斜め上下に対向する回転刃5a、8aにより斜め上下方向の両側から破砕作用が行われ、更に、小さく破砕される。
【0046】
上記第2隙間9の隙間巾は第1隙間6の隙間巾とほぼ同じまたは狭く設定するのがよい。これにより、回転刃付き下回転体5で小さく破砕することができなかった比較的大きな石は、まず第1段階として第1隙間6を通過する際に、左右両側から回転刃5aで破砕され、次に、第2段階として第2隙間9を通過する際に斜め上下方向の両側から回転刃5a、8aでさらに効果的に細かく破砕されることになる。
【0047】
このように、第1隙間6、第2隙間9を連続して通過させることで、左右両側から両回転刃5a、回転刃5aにより破砕作用が加え、引き続いて斜め上下から回転刃5a、回転刃8aにより破砕作用を加えて、2段階で連続して細かく破砕するに当たって、本発明では、左右に並設した両回転刃付き下回転体5と、回転刃付き中間回転体8との3つの回転刃付き回転体を上記のような位置関係に配置した構成となっているので、部材点数が少なくかつ構成が簡略化されることになる。
【0048】
上記のようにして比較的大きな石が第1隙間6、第2隙間9を連続して通過する際に、次第に小さく破砕されて、他の掘削土砂、固結材と混合された混合物が充填された掘削孔14を所定深さまで掘り進む。所定深さまで装置本体3が下降すると、線状材1を引き上げることで装置本体3を上昇させる。このようにして線状材1により装置本体3を引き上げることで、地中に断面正方形乃至長方形状の掘削土砂と固結用液との混合物18が充填された掘削孔14が形成されることになる。
【0049】
上記工程中、地上に溢れる掘削土砂と固結材との混合物18は、ほぼ、掘削土砂の土膨れの分と、固結材の噴射の分と、装置本体3の体積分との合計の分であり、従来の掘削軸を挿入するもののように挿入深さが深くなると挿入された掘削軸の体積分が比例的に増えていくというようなおそれがない。
【0050】
上記掘削孔14内に充填された掘削土砂と固結用液との混合物18が固化することで、地中にソイル固結体が形成され、この地中に形成されたソイル固結体により山止め壁、止水壁、基礎杭、あるいは改良地盤等が形成される。
【0051】
本発明において、上記第2隙間9の隙間巾を可変自在としてもよい。
【0052】
図4には第2隙間9を可変自在とする一実施形態の概略構成図が示してある。本実施形態においては、装置本体3に対して回転刃付き中間回転体8が上下方向に移動自在に取付けてある。具体的には、装置本体3に上下方向に長い縦長孔のような縦長ガイド16を形成し、この縦長ガイド16に対して回転刃付き中間回転体8に設けた被ガイド部17が上下方向に移動自在に取付けてある。回転刃付き中間回転体8にはばね材11によるばね力が下方に向けて付与してあり、通常は、ばね力により回転刃付き中間回転体8は縦長ガイド16の最下端に位置している。つまり、この状態が第2隙間9の隙間巾の最小巾である。
【0053】
そして、通常は、第2隙間9を掘削土や比較的大きな石が回転刃5a、8aにより両側から破砕されながら通過していくのであるが、負荷が大きすぎて破砕しきれず第2隙間9に詰まるような事態になると、回転刃付き中間回転体8がばね材11のばね力に抗して縦長ガイド16に沿って上方に移動し、第2隙間9の隙間巾が広くなることで、通過を容易にし、また、隙間巾が少し広くなることで回転刃5a、8aによる両側からの破砕も容易に行えることになる。負荷が小さくなると、再びばね材11のばね力により回転刃付き中間回転体8が縦長ガイド16に沿って下方に移動し、第2隙間9が狭くなる。
【0054】
これにより、第2隙間9に破砕しきれない石が詰まって回転刃付き下回転体5、回転刃付き中間回転体8が回転できなくなるという事態を回避できる。
【0055】
図5には第2隙間9を可変自在とする他の実施形態の概略構成図が示してある。本実施形態においては、第2隙間9の隙間巾が最小巾となる位置から隙間巾が広くなる方向に、回転刃付き中間回転体8が移動自在となっており、更に、この回転刃付き中間回転体8の移動位置を調整する移動位置調整手段10を設けてある。具体的には、装置本体3に上下方向に長い縦長孔のような縦長ガイド16を形成し、この縦長ガイド16に対して回転刃付き中間回転体8に設けた被ガイド部17が上下方向に移動自在となっている。このように回転刃付き中間回転体8は縦長ガイド16に沿って移動自在となっているが、回転刃付き中間回転体8は移動位置調整手段10となる例えば油圧シリンダ、エアシリンダ等を動力として移動し、移動位置を調整することで縦長ガイド16の任意の停止位置で移動しないように固定自在となっている。このように回転刃付き中間回転体8の移動位置を調整することで、第2隙間9の隙間巾を調整することができる。したがって、掘削しようとする地盤2の状態に応じて、移動位置調整手段10により第2隙間9の隙間巾を調整し、地盤2に対応した最適の隙間巾とすることが可能となる。
【0056】
図6には本発明の他の実施形態の概略構成図を示している。
【0057】
本実施形態においては、装置本体3の下部に前述のように、回転軸4が横向きとなった複数の回転刃付き下回転体5を第1隙間6を介して並設し、第1隙間6の上方位置に回転軸7が横向きとなった回転刃付き中間回転体8を配置し、上記回転刃付き下回転体5と回転刃付き中間回転体8との間に第2隙間9を形成し、これに加えて、装置本体3の上部に回転軸23が横向きとなった複数の回転刃付き上回転体20を設けた例を示している。この例では装置本体3を下降させる際、上記のように第2隙間9を通過した土砂や細かく破砕された石と固結材との混合物が、装置本体3の上部において回転刃付き上回転体20により再度掘削、破砕、攪拌混合され、更に、回転刃付き上回転体20間の隙間である第3隙間19を通過する際に、左右両側の回転刃付き上回転体20に設けた回転刃20a、回転刃20aにより両側から上記混合物が一層小さく破砕されるとともに攪拌混合され、均質な混合物が形成されることになる。
【0058】
ここで、装置本体3の上部に左右に並設した回転刃付き上回転体20間の第3隙間19の下方位置又は上方位置に図7のように回転軸24が横向きとなった回転刃付き上中間回転体21を設けてもよい。このように回転刃付き上中間回転体21を設けることで、回転刃付き上回転体20と回転刃付き上中間回転体21との間に第4隙間22を形成することができる。
【0059】
したがって、第4隙間22を掘削土砂や石が通過する際、回転刃付き上回転体20に設けた回転刃20aと回転刃付き上中間回転体21に設けた回転刃21aとにより両側から破砕作用が行われる。
【0060】
もちろん、図6、図7に示す実施形態においても、図4や図5に示すように回転刃付き中間回転体8を上下方向に移動自在として第2隙間9の隙間巾が可変自在としてもよい。更に、これに加えて図7に示す実施形態では、回転刃付き上中間回転体21を上下方向に移動自在として第4隙間22の隙間巾を可変自在としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 線状材
2 地盤
3 装置本体
4 回転軸
5 回転刃付き下回転体
6 第1隙間
7 回転軸
8 回転刃付き中間回転体
9 第2隙間
10 移動位置調整手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上から線状材により吊り下げられて地盤中に挿入されて地盤中を下降又は上昇する装置本体の下部に回転軸が横向きとなった複数の回転刃付き下回転体を第1隙間を介して並設し、上記第1隙間の上方位置に回転軸が横向きとなった回転刃付き中間回転体を配置し、上記回転刃付き下回転体と回転刃付き中間回転体との間に第2隙間を形成して成ることを特徴とする掘削装置。
【請求項2】
第2隙間の隙間巾が第1隙間の隙間巾とほぼ同じまたは狭いことを特徴とする請求項1記載の掘削装置。
【請求項3】
第2隙間の隙間巾が可変自在となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の掘削装置。
【請求項4】
第2隙間が最小巾となる位置から第2隙間の巾が広くなる方向に、回転刃付き中間回転体が移動自在となり、回転刃付き中間回転体に、第2隙間巾が最小巾となる方向に移動させる力が付与されていることを特徴とする請求項3記載の掘削装置。
【請求項5】
第2隙間が最小巾となる位置から第2隙間巾が広くなる方向に、回転刃付き中間回転体が移動自在となり、回転刃付き中間回転体の移動位置を調整する移動位置調整手段を設け、回転刃付き中間回転体の移動調整により第2隙間巾が調整自在となっていることを特徴とする請求項3記載の掘削装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−6962(P2011−6962A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152640(P2009−152640)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(596134460)
【Fターム(参考)】