説明

接着性向上剤及びそれを用いてなる接着剤

【課題】室温のみならず加熱条件下においても優れた接着力を有する接着剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される接着性向上剤(S)。


[一般式(1)中、Xはm価の活性水素含有化合物からc個の活性水素を除いた残基を表し、;cは1≦c≦mを満たす整数を表し;mは1〜20の整数を表し;Xは活性水素含有化合物から1個の活性水素を除いた残基を表し;Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基を表し;aは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤に関する。更に詳しくは、プラスチックや金属の接着に用いられる接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム又はシート等の貼り合わせに用いられる接着剤として、ポリオール又はポリウレタンポリオールと芳香族系ポリイソシアネートとを用いたポリウレタンポリイソシアネートとからなる2液無溶剤型接着剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、上記接着剤は、加熱条件下においては、接着剤の凝集力が低下し接着力が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−182584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、室温のみならず加熱条件下においても優れた接着力を有する接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、一般式(1)で表される接着性向上剤(S);活性水素成分(A)を含有する主剤とイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とからなり、以下の(1)〜(4)の内の少なくとも1つを満たすことを特徴とする2液硬化型ウレタン接着剤;
(1)一般式(1)で表されかつ少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)を、前記活性水素成分(A)が含有する。
(2)一般式(1)で表されかつ少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)及び必要によりその他の活性水素成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーを前記活性水素成分(A)が含有する。
(3)一般式(1)で表されかつ少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)及び必要によりその他の活性水素成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを前記イソシアネート成分(B)が含有する。
(4)一般式(1)で表されかつ活性水素を有しない接着性向上剤(S2)を前記主剤及び/又は硬化剤が含有する。
;下記(1)又は(2)を満たすことを特徴とする1液硬化型ウレタン接着剤;
(1)一般式(1)で表されかつかつ少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)を含有する活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)を含有する;
(2)一般式(1)で表されかつかつ活性水素を有しない接着性向上剤(S2)の存在下で活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)とを反応させて得られる、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C2)と接着性向上剤(S2)とを含有するウレタンプレポリマー組成物を含有する。
;前記接着性向上剤(S)を含有することを特徴とするポリアミド樹脂接着剤;である。
【0006】
【化1】

【0007】
[一般式(1)中、X1はm価の活性水素含有化合物からc個の活性水素を除いた残基を表し;cは1≦c≦mを満たす整数を表し;mは1〜20の整数を表し;X2は活性水素含有化合物から1個の活性水素を除いた残基を表し、複数のX2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X2とX1はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基を表し、Yの芳香環は炭素原子から構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよいが少なくとも1つの炭素原子は置換基が結合しておらず;aは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表し、かつ、2≦a+b≦d−2を満たし;dは前記芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基を含む全ての置換基を水素原子に置換した場合の芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子の数、即ち芳香環上で置換可能な部位の数を表す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の接着性向上剤(S)は、特にウレタン基、ウレア基又はアミド基を有する樹脂を含有する接着剤(ウレア基を含んでいてもよいウレタン樹脂接着剤及びポリアミド樹脂接着剤等)に使用することにより、樹脂の分子間相互作用が強くなることにより、室温のみならず加熱条件下での接着力に優れ、また湿熱条件下において接着剤の経時劣化が少ないため、長期に渡って性能低下が少ない接着剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の接着性向上剤(S)は、一般式(1)で表され、少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)と活性水素を有しない接着性向上剤(S2)とからなる。接着性向上剤(S1)が有する活性水素を用いて特にウレタン基、ウレア基又はアミド基を有する、接着剤を構成する樹脂の分子骨格に(S1)を組み込むことで本発明の所定の効果を奏する。また、活性水素を有しない接着性向上剤(S2)を含め、接着性向上剤(S)を、特にウレタン基、ウレア基又はアミド基を有する樹脂を含有する接着剤に添加することによっても同様の効果を奏し得る。接着性向上剤(S)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0010】
以下、一般式(1)で表される接着性向上剤(S)について説明するが、接着性向上剤(S)として好ましい範囲として記載している組成及び数値等は、樹脂に組み込まれる少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)の場合も、樹脂に添加する場合も、特に規定しない限り同じである。
【0011】
【化2】

【0012】
一般式(1)におけるX1は、m価の活性水素含有化合物からc個の活性水素を除いた残基を表す。
【0013】
活性水素含有化合物としては、水酸基含有化合物、アンモニア、アミノ基含有化合物及びチオール基含有化合物等が挙げられる。活性水素含有化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
水酸基含有化合物としては、炭素数1〜20の1価のアルコール、炭素数2〜20の多価アルコール、フェノール類及びこれらのアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物等が挙げられる。
【0015】
炭素数1〜20の1価アルコールとしては、炭素数1〜20のアルカノール(メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数2〜20のアルケノール(オレイルアルコール及びリノリルアルコール等)及び炭素数7〜20の芳香脂肪族アルコール(ベンジルアルコール及びナフチルエタノール等)等が挙げられる。
【0016】
炭素数2〜20の多価アルコールとしては、炭素数2〜20の2価アルコール[脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−又は1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,10−デカンジオール等)、脂環式ジオール(シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノール等)及び芳香脂肪族ジオール[1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等]等]、炭素数3〜20の3価アルコール[脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等]及び炭素数5〜20の4〜8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等)及び糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)]等が挙げられる。
【0017】
フェノール類としては、例えば1価のフェノール(フェノール、1−ヒドロキシナフタレン、アントロール及び1−ヒドロキシピレン等)及び多価フェノール[フロログルシン、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)及び米国特許3265641号明細書に記載のポリフェノール等]が挙げられる。
【0018】
アミノ基含有化合物としては、炭素数1〜20のモノハイドロカルビルアミン[アルキルアミン(ブチルアミン等)、ベンジルアミン及びアニリン等]、炭素数2〜20の脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジエチレントリアミン等)、炭素数6〜20の脂環式ポリアミン(ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数2〜20の芳香族ポリアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン及びジフェニルメタンジアミン等)、炭素数2〜20の複素環式ポリアミン(ピペラジン及びN−アミノエチルピペラジン等)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)、ジカルボン酸と過剰のポリアミンとの縮合により得られるポリアミドポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ヒドラジン(ヒドラジン及びモノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド(コハク酸ジヒドラジッド及びテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン(ブチルグアニジン及び1−シアノグアニジン等)及びジシアンジアミド等が挙げられる。
【0019】
チオール基含有化合物としては、炭素数1〜20の1価のチオール化合物(エタンチオール等のアルカンチオール、ベンゼンチオール及びフェニルメタンチオール)及び多価のチオール化合物(1,2−エタンジチオール及び1,6−ヘキサンジチオール等)等が挙げられる。
【0020】
尚、活性水素含有化合物として、分子内に2種以上の活性水素含有官能基(水酸基、アミノ基及びチオール基等)を有する化合物も使用できる。
【0021】
また、活性水素含有化合物としては、上記活性水素含有化合物のアルキレンオキサイドAO付加物を使用することもできる。
【0022】
活性水素含有化合物に付加させるAOとしては、炭素数2〜4のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−又は2,3−ブチレンオキサイド及びテトラヒドロフラン(以下、THFと略記)等が挙げられる。これらの内、接着剤との相溶性の観点からEO、PO及びTHFが好ましい。AOは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、AOを2種以上併用する場合の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0023】
AOの付加モル数は接着剤との相溶性の観点から、8〜100が好ましく、更に好ましくは10〜80である。また、AO付加物の水酸基価は18〜360mgKOH/gであることが好ましい。
尚、本発明において、水酸基価はJIS K 1557−1に準拠して測定される。
【0024】
接着性向上剤(S)にX1を導入するための活性水素含有化合物として、接着剤との相溶性の観点から好ましいのは、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物及びこれらのAO付加物であり、更に好ましいのは、炭素数2〜20の多価アルコール及び炭素数2〜20の多価アルコールにAOを付加したポリエーテルポリオール、炭素数2〜20の脂肪族ポリアミン及び多価のチオール化合物、特に好ましいのは炭素数2〜20の多価アルコール及び炭素数2〜20の多価アルコールにAOを付加したポリエーテルポリオール、最も好ましいのは炭素数2〜20の多価アルコールにAOを付加したポリエーテルポリオールである。
【0025】
活性水素含有化合物の価数mは、接着剤の凝集力の観点から、通常1〜20であり、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは2である。
【0026】
一般式(1)におけるcは、1〜20でかつ1≦c≦mを満たす整数を表し、接着剤の凝集力の観点から、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは2である。
【0027】
一般式(1)におけるX2は、1〜20価の活性水素含有化合物から1個の活性水素を除いた残基を表し、複数のX2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
2を構成するために用いられる活性水素含有化合物としては、上述のX1で示した活性水素含有化合物と同様の物が挙げられ、X2とX1はそれぞれ同一でも異なっていてもいが、接着剤の凝集力の観点から、X1と少なくとも1つのX2とは異なる基であることが好ましい。
また、X2の価数は接着剤の凝集力の観点から、通常1〜20であり、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2、最も好ましくは2である。
【0028】
尚、後述のYを構成するために用いる3価以上のポリカルボン酸に前記活性水素含有化合物を反応させることによりX1及びX2を接着性向上剤(S)に導入することができるが、X1及びX2が特に炭素数2〜4のジオール又は繰り返し単位の炭素数が2〜4のポリエーテルポリオールの場合、ポリカルボン酸のカルボキシル基に前記炭素数2〜4のAOを付加することによっても同等の化合物を得ることができる。
【0029】
一般式(1)におけるYは、3価以上の芳香族ポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いた残基を表す。Yの芳香環は炭素原子から構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよいが、少なくとも1つの炭素原子は置換基が結合しておらず水素原子と結合している必要がある。
【0030】
カルボキシル基以外の置換基とは、アルキル基、ビニル基、アリル基、シクロアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、チオール基、アリール基及びシアノ基等が挙げられる。
【0031】
Yを構成するために用いられる3価以上の芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜30の芳香族ポリカルボン酸、例えばトリメリット酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸、ヘミリット酸、1,2,4−、1,3,6−又は2,3,6−ナフタレントリカルボン酸及び2,3,6−アントラセントリカルボン酸等のトリカルボン酸;ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−オキシビスフタル酸、ジフェニルメタンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフタル酸等のテトラカルボン酸;等が挙げられる。芳香族ポリカルボン酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、接着性向上剤(S)の製造に当たっては、これらのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)及び酸ハライド(酸のクロライド等)]を用いることもできる。
【0032】
これらの芳香族ポリカルボン酸の内、接着剤の凝集力の観点から好ましいのは、前記芳香環を構成し置換基が結合していない炭素原子に隣接しかつ芳香環を形成する2個の炭素原子それぞれにカルボキシル基が結合した構造を有するものが好ましく、更に好ましいのは、前記カルボキシル基が結合した炭素原子に隣接する炭素原子の少なくとも一方に更に1個のカルボキシル基が結合した構造を有するものである。
【0033】
例えば、芳香族ポリカルボン酸の芳香環がベンゼン環の場合、1位と3位にカルボキシル基が結合した構造を有するものが好ましく、更に好ましいのは前記カルボキシル基が結合したベンゼン環の4位及び/又は6位に更にカルボキシル基が結合した構造を有するものである。
【0034】
接着剤の凝集力の観点から、Yを構成するために用いる芳香族ポリカルボン酸として特に好ましいのは単環式化合物であり、最も好ましいのはトリメリット酸及びピロメリット酸である。
【0035】
一般式(1)におけるaは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表し、かつ、2≦a+b≦d−2を満たし、dは前記芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基を含む全ての置換基を水素原子に置換した場合の芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子の数、即ち芳香環上で置換可能な部位の数を表す。例えば、芳香環が炭素原子6個から構成されるベンゼン環の場合、dは6であり、a+bは2〜4の値を取り得、芳香環が炭素原子10個から構成されるナフタレン環の場合、dは8であり、a+bは2〜6の値を取り得る。芳香環が単環の芳香環の場合、接着剤の凝集力の観点から、a+bは2又は3が好ましい。また、接着剤の凝集力の観点から、bはaの1/2以下であることが好ましく、特に好ましいのは0である。
【0036】
本発明における接着性向上剤(S)の水酸基価は、接着剤の凝集力の観点から、好ましくは0又は70〜500mgKOH/g、(S)が水酸基を有する場合、更に好ましくは75〜350mgKOH/gである。
尚、接着性向上剤(S)の水酸基価が0とは、一般式(1)におけるX1、X2及びYが全て水酸基を有しないことを意味する。
【0037】
接着性向上剤(S)におけるYの濃度は、接着性向上剤(S)1g中の残基Yのミリモル数を意味し、接着剤の破断伸び及び破断強度の観点から、好ましくは1.0〜3.5mmol/g、更に好ましくは1.1〜3.4mmol/g、特に好ましくは1.2〜3.3mmol/gである。Yの濃度が1.0mmol/g未満では接着剤の破断強度が低下する傾向にあり、3.5mmol/gを超えると接着剤の破断伸びが低下する傾向にある。
【0038】
接着性向上剤(S)のカルボニル基濃度は、接着剤の破断伸び及び破断強度の観点から、好ましくは3.0〜10.0mmol/g、更に好ましくは3.5〜9.7mmol/g、特に好ましくは4.0〜9.5mmol/gである。カルボニル基濃度が3.0mmol/g未満では接着剤の破断強度が低下する傾向にあり、カルボニル基濃度が10.0mmol/gを超えると破断伸びが悪化する傾向にある。本発明におけるカルボニル基濃度におけるカルボニル基とは、一般式(1)におけるYに結合するカルボニル基、即ちYを導入するために用いられる3価以上の芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基並びにこれから誘導されるエステル基、チオエステル基及びアミド基等の官能基中のカルボニル基を意味する。
【0039】
接着性向上剤(S)のモル平均官能基数は、接着力の観点から、2〜8が好ましく、更に好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4ある。
本発明におけるモル平均官能基数は、組成物中の各成分の活性水素を有する官能基の数に各成分のモル数を乗じた値の総和を各成分のモル数の総和で除した値であり、各成分のモル数は各成分の重量を各成分の分子量で除した値である。計算に用いる分子量としては、低分子化合物の様に分子量に分布がない場合は化学式量を、分子量に分布がある場合は数平均分子量(以下、Mnと略記)を用いる。本発明における接着性向上剤(S)及びポリオールのMnは、THFを溶剤として用い、ポリ(オキシプロピレン)グリコールを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される。
【0040】
少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)は、一般式(1)におけるX1、X2及びYの内の少なくとも1種が活性水素を有する化合物である。更に詳しくは、少なくとも、X1の価数mとcがm>cを満たすか、Yがアミノ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアミノ基及びチオール基等の活性水素を有する置換基で置換されているか、X2を構成する活性水素含有化合物が2価以上であるか、bが1以上であることにより接着性向上剤(S1)は少なくとも1つの活性水素を有する。
【0041】
本発明の2液硬化型ウレタン接着剤及び1液硬化型ウレタン接着剤は、ウレタン基及び原料にアミンを用いた場合等にはウレア基を有し、ポリアミド樹脂接着剤はアミド基を有することから、本発明の接着性向上剤(S)を用いることにより、上述の通り加熱条件下での接着力に優れ、また、湿熱条件下において接着剤の経時劣化が少なく、長期に渡って性能低下が少ない。
【0042】
本発明の2液硬化型ウレタン接着剤は、活性水素成分(A)を含有する主剤とイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とからなり、以下の(1)〜(4)の方法により接着剤に本発明の接着性向上剤(S)を用いることにより、本発明の効果を奏する。
(1)少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)を前記活性水素成分(A)が含有する;
(2)少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)及び必要によりその他の活性水素成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーを前記活性水素成分(A)が含有する;
(3)少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)及び必要によりその他の活性水素成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを前記イソシアネート成分(B)が含有する;
(4)活性水素を有しない接着性向上剤(S2)を前記主剤及び/又は硬化剤が含有する。
【0043】
上記(1)〜(3)においては接着性向上剤(S1)がウレタン樹脂骨格に組み込まれることにより、上記(4)においては2液硬化により形成されたウレタン樹脂と接着性向上剤(S2)を含有するウレタン樹脂組成物が形成されることにより、本発明の効果を奏する。
【0044】
活性水素成分(A)としては、例えば、少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)、数平均分子量(以下、Mnと略記)が300未満の低分子ポリオール(a1)、Mnが300以上の高分子ポリオール(a2)、並びにこれらと後述のイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)、(b4)及び/又はイソシアネート変性体(b5)とを反応させて得られる末端に水酸基を有するプレポリマー(a3)等が挙げられる。活性水素成分(A)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明におけるMnは、THFを溶媒として用いポリ(オキシエチレン)グリコールを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される。
【0046】
Mnが300未満の低分子ポリオール(a1)には、化学式量が300未満のポリオールも含まれ、具体的には、炭素数2〜20の2価アルコール、炭素数3〜20の3価〜8価又はそれ以上の多価アルコール及び水酸基以外の官能基を有する炭素数5〜20のポリオール等が挙げられる。
【0047】
炭素数2〜20の2価アルコールとしては、例えば炭素数2〜12の脂肪族2価アルコール(エチレングリコール、 ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1 ,2−、2,3−、1,3−又は1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール3−メチルペンタンジオール、ドデカンジオール等のモノ又はポリアルキレングリコール);炭素数6〜10の脂環含有2価アルコール(1,4−シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノール等);炭素数8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[キシリレングリコール及びビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等]等が挙げられる。
【0048】
炭素数3〜20の3価〜8価又はそれ以上の多価アルコールとしては、例えば(シクロ)アルカンポリオール及びそれらの分子内又は分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、1,2 ,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類及びその誘導体[蔗糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース及びグリコシド(メチルグルコシド等)]、並びにN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のアルキレンジアミンのAO付加物等が挙げられる。
【0049】
水酸基以外の官能基を有する炭素数5〜20のポリオールとしては、例えばカルボキシル基、スルホ基又はこれらの塩等を有するポリオールが挙げられる。
【0050】
カルボキシル基を有するポリオールとしては、例えば炭素数5〜20のヒドロキシカルボン酸[例えば3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミド]が挙げられる。
【0051】
スルホ基を有するポリオールとしては、例えば炭素数3〜20のスルホ基を含有するジカルボン酸とポリオールの1種以上とを反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。スルホ基を含有するジカルボン酸としては、例えば5−スルホイソフタル酸及び2−スルホテレフタル酸等が挙げられ、好ましいのは5−スルホイソフタル酸である。ポリオールとしては、炭素数2〜12のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等)等が挙げられる。エステル化の際のポリオールの水酸基とスルホ基を含有するジカルボン酸のカルボキシル基の当量比(OH/COOH)は、通常1.1/1〜5/1、好ましくは1.5/1〜3/1である。
【0052】
上記カルボキシル基又はスルホ基が塩を形成する際の対イオンは特に限定されず、塩としては例えばアルカリ金属(ナトリウム及びカリウム)塩、アンモニウム塩、1級アミン(メチルアミン、エチルアミン及びブチルアミン等のアルキルアミン並びにモノエタノールアミン等のモノアルカノールアミン等)塩、2級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミン等のジアルキルアミン並びにジエタノールアミン等のジアルカノールアミン等)塩、3級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミン等のトリアルキルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン並びにN−メチルジエタノールアミン等のアルキルジアルカノールアミン)塩及び第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム等)塩である。
【0053】
これらの内、反応性の観点から好ましいのは炭素数3〜20の3価〜8価又はそれ以上の多価アルコールであり、更に好ましいのはグリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールである。
また、接着性の観点から好ましいのは、水酸基以外の官能基を有する炭素数5〜20のポリオールであり、更に好ましいのはカルボキシル基を含有する2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸である。
【0054】
Mnが300以上の高分子ポリオール(a2)としては、ポリエーテルポリオール(a21)、ポリエステルポリオール(a22)及びその他のポリオール(a23)等が挙げられる。
【0055】
ポリエーテルポリオール(a21)としては、例えばポリ(オキシアルキレン)グリコール[ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール及びポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシ−3−メチルテトラメチレン)グリコール等]、共重合ポリ(オキシアルキレン)ジオール[EO/PO共重合ジオール、THF/EO共重合ジオール及びTHF/3−メチルテトラヒドロフラン共重合ジオール等(重量比は例えば1/9〜9/1)]及びビスフェノール系化合物のAO付加物;3官能以上のポリエーテルポリオール、例えば3価以上の多価アルコールのAO付加物[グリセリンのAO付加物及びトリメチロールプロパンのAO付加物等];並びにこれらの1種以上をメチレンジクロライドでカップリングしたものが挙げられる。
【0056】
上記におけるビスフェノール系化合物としては例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールE及びビスフェノールF等、詳しくは特開2008−126108等に記載されたものが挙げられる。
上記におけるAO付加モル数は、接着力の観点から好ましくは2〜100モル、更に好ましくは2〜50モル、特に好ましくは2〜30モルである。
尚、ビスフェノール系化合物のAO付加物の場合、AO付加モル数は凝集力の観点から好ましくは2〜10モル、更に好ましくは2〜6モル、特に好ましくは2〜4モルである。
【0057】
ポリエステルポリオール(a22)としては、例えば縮合ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ヒマシ油系ポリオール及びポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0058】
縮合ポリエステルポリオールとしては、Mnが300未満の低分子ポリオール(a1)又はポリエーテルポリオール(a21)と、ポリカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体(酸無水物及び炭素数1〜4のアルキルエステル等)との重縮合物等が挙げられる。
【0059】
ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸及び3価〜4価又はそれ以上のポリカルボン酸が挙げられ、具体的には、炭素数2〜30又はそれ以上(好ましくは炭素数2〜12)の飽和又は不飽和の脂肪族ポリカルボン酸[炭素数2〜15ジカルボン酸(シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸等)及び炭素数6〜20トリカルボン酸(トリカルバリル酸及びヘキサントリカルボン酸)];炭素数8〜15の芳香族ポリカルボン酸[テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等のジカルボン酸並びにトリメリット酸及びピロメリット酸等のトリ又はテトラカルボン酸等);炭素数6〜40の脂環式ポリカルボン酸(ダイマー酸等);及びスルホ基含有ポリカルボン酸[上記ポリカルボン酸にスルホ基を導入してなるもの、例えばスルホコハク酸、スルホマロン酸、スルホグルタル酸、スルホアジピン酸及びスルホイソフタル酸及びそれらの塩(例えば金属塩、アンモニウム塩、アミン塩及び4級アンモニウム塩);並びに末端にカルボキシル基を有するポリマーが挙げられる。
【0060】
末端にカルボキシル基を有するポリマーとしては、ポリエーテルポリカルボン酸[例えばMnが300未満の低分子ポリオール(a1)又はポリエーテルポリオール(a21)等のポリオールのカルボキシメチルエーテル(アルカリの存在下にモノクロル酢酸を反応させて得られるもの等)];ポリアミド及び/又はポリエステルポリカルボン酸[例えば上記ポリカルボン酸を開始剤として炭素数4〜15のラクタム(カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム及びウンデカノラクタム等)又は炭素数4〜15のラクトン(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びε−カプロラクトン等)を開環重合させてなるポリラクタムポリカルボン酸及びポリラクトンポリカルボン酸]等が挙げられる。
【0061】
ポリラクトンポリオールとしては、水又はMnが300未満の低分子ポリオール(a1)を開始剤とする炭素数4〜15のラクトン(γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びε−カプロラクトン等)の開環付加物等が挙げられる。
【0062】
ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油(リシノール酸トリグリセリド)、部分脱水ヒマシ油、部分アシル化ヒマシ油、水添ヒマシ油及びこれらの変性物[ポリエーテルポリオール(a21)若しくはMnが300未満の低分子ポリオール(a1)とヒマシ油、部分脱水ヒマシ油若しくは水添ヒマシ油とのエステル交換反応により得られるエステルポリオール、及びポリエーテルポリオール(a21)若しくはMnが300未満の低分子ポリオール(a1)とヒマシ油脂肪酸若しくは水添ヒマシ油脂肪酸とのエステル化反応により得られるエステル等]等が挙げられる。
【0063】
ポリカーボネートポリオールとしては、Mnが300未満の低分子ポリオール(a1)を開始剤とするアルキレンカーボネートの開環付加/重縮合物及び(a1)とジフェニル又はジアルキルカーボネートの重縮合(エステル交換)物等が挙げられる。
【0064】
その他のポリオール(a23)としては、ポリマーポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアルカジエンポリオール、アクリルポリオール及びアミノ基含有ポリオール等が挙げられる。
【0065】
ポリマーポリオールとしては、1種以上のポリオール中で炭素数3〜24のビニル単量体(例えばスチレン、アクリロニトリル)をラジカル重合開始剤の存在下で重合させた重合体粒子を分散安定化させてなるポリオール(重合体含量は例えば5〜30重量%)が挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、ポリイソブテンポリオール等が挙げられる。
ポリアルカジエンポリオールとしては、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添化ポリイソプレンポリオール及び水添化ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
【0066】
アクリルポリオールとしては、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜30)エステル[ブチル(メタ)アクリレート等]と水酸基含有アクリルモノマー[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等]との共重合体等が挙げられる。
アミノ基含有ポリオールとしては、例えばポリ(n=2〜6)アルキレン(炭素数2〜6)ポリ(n=3〜7)アミンのAO付加物[N,N,N’,N’,N”−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)−ジエチレントリアミン等]が挙げられる。
【0067】
末端に水酸基を有するプレポリマー(a3)を製造する際の後述のイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)、(b4)及び/又はイソシアネート変性体(b5)と、(S1)、(a1)及び(a2)との当量比(NCO/活性水素比)は、通常0.25/1〜0.99/1、好ましくは0.5/1〜0.95/1、更に好ましくは0.6/1〜0.9/1、特に好ましくは0.7/1〜0.85/1である。
【0068】
接着性の観点からは、活性水素成分(A)として、少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)、ポリエーテルポリオール(a21)、ポリエステルポリオール(a22)並びに(a21)及び/又は(a22)と後述のイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)、(b4)及び/又はイソシアネート変性体(b5)とを反応させて得られる末端に水酸基を有するプレポリマー(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールを含有することが好ましい。
【0069】
また、活性水素成分(A)のモル平均官能基数は、硬化性の観点から、2〜6又はそれ以上が好ましく、更に好ましくは2〜5、特に好ましくは2〜4、最も好ましくは2〜3である。
【0070】
本発明におけるイソシアネート成分(B)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族イソシアネート(b1)、炭素数4〜15の脂環式イソシアネート(b2)、炭素数8〜15の芳香脂肪族イソシアネート(b3)、炭素数6〜20の芳香族イソシアネート(b4)、これらのイソシアヌレート基、ウレトイミン基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトイミン基、カルボジイミド基及び/又はウレトジオン基を有するイソシアネート変性体(b5)、並びにこれらと少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)、低分子ポリオール(a1)及び/又は高分子ポリオール(a2)とから得られる末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(b6)等が挙げられる。イソシアネート成分(B)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0071】
炭素数2〜18の脂肪族イソシアネート(b1)としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート及びビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0072】
炭素数4〜15の脂環式イソシアネート(b2)としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2, 6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
炭素数8〜15の芳香脂肪族イソシアネート(b3)としては、m−又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジエチルベンゼンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0074】
炭素数6〜20の芳香族イソシアネート(b4)としては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン及び1,5−ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0075】
イソシアヌレート基、ウレトイミン基、アロファネート基、ビウレット基、ウレトイミン基、カルボジイミド基及び/又はウレトジオン基を有するイソシアネート変性体(b5)としては、MDIのウレトイミン基を有する変成体、HDIのビウレット基を有する変性体及びHDIのイソシアヌレート基を有する変性体等が挙げられる。
【0076】
末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(b6)は、少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)、低分子ポリオール(a1)及び/又は高分子ポリオール(a2)と、過剰のイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)、(b4)及び/又はイソシアネート変性体(b5)とを反応させることにより得られる。この場合、接着剤の凝集力等の観点から、1,000以下特に30〜500の水酸基当量(水酸基1つ当りの分子量、以下同じ)を有するポリオールを用いることが好ましい。
【0077】
末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(b6)の具体例としては、例えばグリセリンモノ(メタ)アクリレート(1モル)の水添MDI(2モル)付加体、ペンタエリスリトール(1モル)のTDI(4モル)付加体、トリメチロールプロパン(1モル)のHDI(3モル)又はTDI(3モル)付加体、ビスフェノールAのAO2モル付加物(1モル)の水添MDI(2モル)付加体及びポリ(オキシプロピレン)グリコール(1モル)のMDI(2モル)付加体等が挙げられる。
【0078】
イソシアネート成分(B)として、凝集力の観点から、3〜8価の多価アルコールとイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)及び/又は(b4)との反応物を含有することが好ましい。
【0079】
硬化性の観点からは、イソシアネート成分(B)の平均官能基数は2〜6又はそれ以上であることが好ましく、更に好ましくは2〜5、特に好ましくは3〜4である。
【0080】
イソシアネート成分(B)のNCO当量(NCO基1つ当りの分子量、以下同じ)は1000以下が好ましく、更に好ましくは500以下、特に好ましくは300以下である。
また、イソシアネート成分(B)のイソシアネート基含量は通常0.5〜50重量%、好ましくは1〜35重量%、更に好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは4〜25、最も好ましくは12〜24重量%である。
【0081】
2液硬化型接着剤として使用する場合のイソシアネート成分(B)と活性水素成分(A)との当量比(NCO/活性水素比)は、好ましくは0.7/1〜2/1、更に好ましくは0.8/1〜1.5/1、特に好ましくは0.9/1〜1.3/1、最も好ましくは1/1〜1.2/1である。
【0082】
2液硬化型ウレタン接着剤における本発明の接着性向上剤(S)の含有量は、活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)の重量の合計値を基準として、好ましくは0.1〜50重量%、更に好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。
【0083】
本発明の1液硬化型ウレタン接着剤は、下記(1)又は(2)の方法により接着剤に本発明の接着性向上剤(S)を用いることにより、本発明の効果を奏する。
(1)少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)を含有する活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)を含有する;
(2)活性水素を有しない接着性向上剤(S2)の存在下で活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)とを反応させて得られる、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C2)と接着性向上剤(S2)とを含有するウレタンプレポリマー組成物を含有する。
【0084】
上記(1)においては接着性向上剤(S1)が末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)の骨格に組み込まれることにより、また、上記(2)においては(A)と(B)の反応により形成された末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C2)と接着性向上剤(S2)とを含有する末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー組成物が形成されることにより、本発明の効果を奏する。ウレタンプレポリマー(C2)は、その分子骨格に接着性向上剤(S1)が組み込まれていてもよいし、組み込まれてなくてもよい。
【0085】
以下、前記ウレタンプレポリマー(C1)及び(C2)を含めて、1液硬化型ウレタン接着剤に用いられる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーをウレタンプレポリマー(C)として説明する。
【0086】
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)は、前記2液硬化型ウレタン接着剤における活性水素成分(A)に、前記2液硬化型ウレタン接着剤におけるイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)、(b4)及び/又はイソシアネート変性体(b5)を反応させることにより得られる。活性水素成分及び(b1)〜(b5)は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0087】
接着性の観点からは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の製造において活性水素成分(A)中にポリエーテルポリオール(a21)及び/又はポリエステルポリオール(a22)を含有することが好ましい。
更に、硬化性の観点からは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の平均官能基数は2〜6又はそれ以上が好ましく、更に好ましくは2〜5、特に好ましくは2〜4である。
【0088】
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)を製造する際のイソシアネート(b1)、(b2)、(b3)、(b4)及び/又はイソシアネート変性体(b5)と活性水素成分(A)との当量比(NCO/活性水素比)は、好ましくは1.1/1〜5/1、更に好ましくは1.4/1〜3/1、特に好ましくは1.5/1〜2/1である。
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)のイソシアネート基含量は、好ましくは0.1〜8重量%、更に好ましくは0.5〜6重量%、特に好ましくは1〜4重量%である。
【0089】
1液硬化型ウレタン接着剤における本発明の接着性向上剤(S)の含有量は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の重量を基準として、好ましくは0.1〜50重量%、更に好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。
【0090】
末端に水酸基を有するプレポリマー(a3)、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(b6)及び末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の製造方法としては、既知のウレタンの方法が使用でき、例えば溶剤(トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン及びテトラヒドロフラン等)の存在下又は非存在下で、必要な活性水素成分とイソシアネート成分を反応させる方法が挙げられる。
【0091】
反応には、公知の反応装置(撹拌機を備えた混合槽、スタティックミキサー等)が使用でき、反応温度は、反応性及び熱劣化抑制の観点から好ましくは10〜160℃、更に好ましくは25〜120℃であり、安定性の観点から気相部を窒素で置換するのが好ましい。
【0092】
本発明のポリアミド樹脂接着剤は、本発明の接着性向上剤(S)及びポリアミド樹脂(D)を含有する。
【0093】
ポリアミド樹脂(D)としては、ラクタムの開環重合体、カルボキシル基とアミノ基を同一分子内に有する化合物の自己縮合物及びポリカルボン酸とポリアミンの重縮合体等が挙げられる。
【0094】
ラクタムとしては、炭素数3〜20(好ましくは4〜12)のラクタム、例えばβ−ラクタム(β−プロピオラクタム等)、γ−ラクタム(γ−ブチロラクタム等)、δ−ラクタム(δ−バレロラクタム等)、ε−ラクタム(ε−カプロラクタム等)、大環状ラクタム(エナントラクタム、ウンデカノラクタム及びラウロラクタム等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0095】
カルボキシル基とアミノ基を同一分子内に有する化合物の自己縮合物としては、カルボキシル基とアミノ基を同一分子内に有する炭素数2〜10の化合物、例えばグリシン、アラニン、グルタミン酸及びγ−アミノ酪酸等のアミノ酸の自己縮合物が挙げられる。
【0096】
ポリカルボン酸としては、炭素数4〜32のアルカンジカルボン酸(例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸及びオクタデカンジカルボン酸等);炭素数4〜32のアルケンジカルボン酸(例えばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸及びメサコン酸等);炭素数8〜40の分岐アルケンジカルボン酸[例えばダイマー酸及びアルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等)等];炭素数12〜40の分岐アルカンジカルボン酸[例えばアルキルコハク酸(デシルコハク酸、ドデシルコハク酸及びオクタデシルコハク酸等)];炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等);炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(例えばトリメリット酸及びピロメリット酸等);等が挙げられる。
これらの内、好ましいのは、炭素数4〜32のアルケンジカルボン酸及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸であり、更に好ましいのは炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。
【0097】
ポリアミンとしては、炭素数2〜18の脂肪族ポリアミン及び炭素数6〜20の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
炭素数2〜18の脂肪族ポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン、これらのアルキル(炭素数1〜4)又はヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)置換体、脂環式又は複素環含有脂肪族ポリアミン及び芳香環含有脂肪族アミン(炭素数8〜15)等が挙げられる。
【0098】
脂肪族ポリアミンとしては、炭素数2〜12のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等)及びポリアルキレン(炭素数2〜6)ポリアミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等]等が挙げられる。
【0099】
脂肪族ポリアミンのアルキル(炭素数1〜4)又はヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)置換体としては、ジアルキル(炭素数1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン及びメチルイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。
【0100】
脂環式又は複素環含有脂肪族ポリアミンとしては、炭素数4〜15の脂環式ポリアミン{1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)及び3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等}及び炭素数4〜15の複素環式ポリアミン[ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン及び1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等]等が挙げられる。
芳香環含有脂肪族アミン(炭素数8〜15)としては、キシリレンジアミン及びテトラクロル−p−キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0101】
炭素数6〜20の芳香族ポリアミンとしては、非置換芳香族ポリアミン、核置換アルキル基[メチル基、エチル基、n−又はi−プロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)を有する芳香族ポリアミン等が使用できる。
【0102】
非置換芳香族ポリアミンとしては、1,2−、1,3−又は1,4−フェニレンジアミン、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリアミン、ナフチレンジアミン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0103】
核置換アルキル基(メチル基、エチル基、n−又はイソプロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)を有する芳香族ポリアミンとしては、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジエチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジブチル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジブチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、3,3’,5,5’−テトライソプロピルベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジイソプロピル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−2,2’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0104】
これらポリアミンの内、好ましいものは脂肪族ポリアミンであり、さらに好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレンジアミン及びポリアルキレン(炭素数2〜6)ポリアミンである。
【0105】
本発明のポリアミド樹脂接着剤における本発明の接着性向上剤(S)の含有量は、ポリアミド樹脂(D)の重量を基準として、好ましくは0.1〜50重量%、更に好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。
【0106】
本発明の2液硬化型又は1液硬化型ウレタン接着剤及びポリアミド樹脂接着剤は、溶剤[例えば芳香族系溶剤(トルエン及びキシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル及び酢酸ブチル等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド等)、ケトン系溶剤(アセトン及びメチルエチルケトン等)及びエーテル系溶剤(テトラヒドロフラン等)]を含有することができる。
【0107】
溶剤を含有することにより接着剤の塗工時のハンドリング性及びレベリング性が向上する。
溶剤の使用量は、2液硬化型ウレタン接着剤の場合は活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)の合計重量に基づいて、1液硬化型ウレタン接着剤の場合は末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の重量に基づいて、ポリアミド樹脂接着剤の場合はポリアミド樹脂(D)の重量に基づいて、ハンドリング性及びレベリング性の観点から好ましくは80重量%以下、更に好ましくは10〜50重量%である。
【0108】
本発明の2液硬化型又は1液硬化型ウレタン接着剤及びポリアミド樹脂接着剤は、接着力向上のために、更に粘着性付与剤(E)を含有することができる。
【0109】
粘着性付与剤(E)としては、例えばテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、合成石油樹脂(脂肪族、芳香族又は脂環式合成石油樹脂等)、クマロン−インデン樹脂、キシレン樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びこれらの内の水素添加可能な不飽和二重結合を有するものの水素添加物等が挙げられる。粘着性付与剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの内、接着力の観点から酸価及び/又は水酸基価を有するものが好ましく、ロジン樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、キシレン樹脂及びこれらの水素添加物が更に好ましく、テルペンフェノール樹脂及びその水素添加物が特に好ましい。
【0110】
粘着性付与剤(E)の酸価又は水酸基価(分子中に酸基と水酸基を共に有する場合は酸価と水酸基価の合計値)は、接着力と樹脂との相溶性の観点から好ましくは10〜400mgKOH/g、更に好ましくは20〜300mgKOH/g、特に好ましくは50〜250mgKOH/g、最も好ましくは100〜220mgKOH/gである。
【0111】
粘着性付与剤(E)の使用量は、2液硬化型ウレタン接着剤の場合は活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)の合計重量に基づいて、1液硬化型ウレタン接着剤の場合は末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の重量に基づいて、ポリアミド樹脂接着剤の場合はポリアミド樹脂(D)の重量に基づいて、接着剤の接着力及び耐熱性の観点から好ましくは100重量%以下、更に好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは3〜40重量%、とりわけ好ましくは5〜35重量%、最も好ましくは10〜30重量%である。
【0112】
本発明の2液硬化型又は1液硬化型ウレタン接着剤は、硬化反応促進のため必要により通常ポリウレタンに用いられる触媒を含有することができる。触媒の具体例としては、例えば有機金属化合物[ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレート、ビスマスカルボキシレート、ビスマスアルコキシド及びジカルボニル基を有する化合物とビスマスとのキレート化合物等]、無機金属化合物[酸化ビスマス、水酸化ビスマス、ハロゲン化ビスマス等];アミン[トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン等]及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。触媒の使用量は特に限定はないが、2液硬化型の場合は活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)の合計重量に基づいて、1液硬化型の場合は末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の重量に基づいて、好ましくは0.0001〜0.3重量%、更に好ましくは0.001〜0.2重量%、特に好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0113】
本発明の接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で更に酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、充填剤及び顔料等の添加剤を含有することができる。
【0114】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール化合物〔トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等〕及び亜リン酸エステル化合物[トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト等]が挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。酸化防止剤の使用量は、2液硬化型ウレタン接着剤の場合は活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)の合計重量に基づいて、1液硬化型ウレタン接着剤の場合は末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の重量に基づいて、ポリアミド樹脂接着剤の場合はポリアミド樹脂(D)の重量に基づいて、酸化防止効果及び接着剤の接着力の観点から好ましくは5重量%以下、更に好ましくは0.05〜1重量%である。
【0115】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体(サリチル酸フェニル、サリチル酸−P−オクチルフェニル、サリチル酸−P−第三ブチルフェニル等)、ベンゾフェノン化合物[2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン・トリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等]、ベンゾトリアゾール化合物{2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ―ル、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等}、シアノアクリレート化合物(2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等)等が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。紫外線吸収剤の使用量は、2液硬化型ウレタン接着剤の場合は活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)の合計重量に基づいて、1液硬化型ウレタン接着剤の場合は末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の重量に基づいて、ポリアミド樹脂接着剤の場合はポリアミド樹脂(D)の重量に基づいて、紫外線吸収効果及び接着剤の接着力の観点から好ましくは5重量%以下、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0116】
可塑剤としては、炭化水素[プロセスオイル、液状ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、液状ポリイソプレン、流動パラフィン、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、エチレンとα−オレフィン(炭素数3〜20)の共重合(重量比99.9/0.1〜0.1/99.9)オリゴマー(Mw5,000〜100,000)、プロピレンとエチレンを除くα−オレフィン(炭素数4〜20)の共重合オリゴマー(重量比99.9/0.1〜0.1/99.9)オリゴマー(Mw5,000〜100,000)];塩素化パラフィン;エステル〔フタル酸エステル[ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジイソノニルフタレート等]、アジピン酸エステル[ジ(2−エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジオクチルアジペート等]及びセバチン酸エステル(ジオクチルセバケート等)等〕;動植物油脂(リノール酸、リノレン酸等);及びこれらの内の水素添加可能な不飽和二重結合を有するものの水素添加物等が挙げられる。可塑剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。可塑剤の使用量は、2液硬化型ウレタン接着剤の場合は活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)の合計重量に基づいて、1液硬化型ウレタン接着剤の場合は末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の重量に基づいて、ポリアミド樹脂接着剤の場合はポリアミド樹脂(D)の重量に基づいて、接着剤の接着力と凝集力の観点から好ましくは100重量%以下、更に好ましくは0.5〜30重量%である。
【0117】
充填剤としては、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、硫酸塩(硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)、亜硫酸塩(亜硫酸カルシウム等)、二硫化モリブデン、けい酸塩(けい酸アルミニウム、けい酸カルシウム等)、珪藻土、珪石粉、タルク、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。上記充填剤は、体積平均粒径が好ましくは0.01〜5μm程度の微粒子であり、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。充填剤の使用量は、2液硬化型ウレタン接着剤の場合は活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)の合計重量に基づいて、1液硬化型ウレタン接着剤の場合は末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の重量に基づいて、ポリアミド樹脂接着剤の場合はポリアミド樹脂(D)の重量に基づいて、接着剤の凝集力の観点から好ましくは250重量%以下、更に好ましくは0.5〜100重量%である。
【0118】
顔料としては、無機顔料(アルミナホワイト、グラファイト、酸化チタン、超微粒子酸化チタン、亜鉛華、黒色酸化鉄、雲母状酸化鉄、鉛白、ホワイトカーボン、モリブデンホワイト、カーボンブラック、リサージ、リトポン、バライト、カドミウム赤、カドミウム水銀赤、ベンガラ、モリブデン赤、鉛丹、黄鉛、カドミウム黄、バリウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、チタンブラック、酸化クロム緑、酸化コバルト、コバルト緑、コバルト・クロム緑、群青、紺青、コバルト青、セルリアン青、マンガン紫、コバルト紫等)、及び有機顔料(シェラック、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、フタロシアニンブルー、染色レーキ等)が挙げられる。上記顔料は、体積平均粒径が好ましくは0.01〜5μm程度の微粒子であり、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。顔料の使用量は、2液硬化型ウレタン接着剤の場合は活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)の合計重量に基づいて、1液硬化型ウレタン接着剤の場合は末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の重量に基づいて、ポリアミド樹脂接着剤の場合はポリアミド樹脂(D)の重量に基づいて、接着剤の凝集力の観点から好ましくは250重量%以下、更に好ましくは0.1〜50重量%である。
【0119】
上記溶剤、粘着性付与剤(E)、触媒並びに酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、充填剤及び顔料等の添加剤は、2液硬化型ウレタン接着剤の場合、主剤、硬化剤のいずれに添加しても、主剤と硬化剤の配合時に添加してもよいが、予め主剤に添加しておくことが好ましい。また、1液硬化型ウレタン接着剤及びポリアミド樹脂接着剤の場合は予め接着剤に添加しておいてもよいし、使用時に添加してもよい。
【0120】
本発明の2液硬化型又は1液硬化型ウレタン接着剤及びポリアミド樹脂接着剤は、各種プラスチックフィルム同士の接着、及びプラスチックフィルムと、金属蒸着フィルム、無機質板、プラスチック成形板又は金属板との接着に特に有用である。
【0121】
上記プラスチックフィルムとしては、例えばポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアクリルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロンフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、フッ素フィルム、エチレン酢酸ビニル重合体フィルム、これらのフィルム表面をアルミやシリカにより蒸着処理又はポリ塩化ビニリデンでコーティング処理したプラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムは、接着性の観点からコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をすることが好ましい。
【0122】
無機質板としては、例えばスレート板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、木毛セメント板及び発泡コンクリート板が挙げられる。
プラスチック成形板としては、例えばABS樹脂成形板、ポリスチレン樹脂成形板、ポリエステル樹脂成形板、アクリル樹脂成形板、ポリカーボネート樹脂成形板、ポリ塩化ビニル樹脂成形板及びメラミン樹脂成形板が挙げられる。
金属板としては、例えばステンレス版、亜鉛鋼板、化成処理鋼板、アルミ板が挙げられる。
【0123】
プラスチックフィルム同士の接着における接着剤のコーティングには、グラビアコーター、リバースロールコーター、コンマコーター、スピンコーター、カーテンコーター、スロットコーター又はバーコーター等を用いることができる。コーティング時の接着剤の塗布量(固形分)は好ましくは1〜50g/m2、更に好ましくは2〜40g/m2である。
また、プラスチックフィルムと無機質板、プラスチック成形板又は金属板との接着における接着剤のコーティングには、コンマコーター、ダイコーター又はナイフコーター等が用いられる。コーティング時の接着剤の塗布量(固形分)は、無機質板の場合は好ましくは2〜500g/m2、更に好ましくは3〜450g/m2、プラスチック成形板又は金属板の場合は、好ましくは1〜300g/m2、更に好ましくは2〜250g/m2である。
【0124】
支持体に適用するときの接着剤の塗工温度は、塗工性及び熱劣化抑制の観点から好ましくは10〜160℃、更に好ましくは25〜120℃であり、塗工温度における接着剤の粘度は成形性(厚塗りができ、硬化後に反り及びヒケ等の外観不良がないこと)及び塗工性の観点から好ましくは0.01〜100Pa・s、更に好ましくは0.02〜50Pa・s、特に好ましくは0.03〜10Pa・sである。
【実施例】
【0125】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中、特に断りのない限り、部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示す。
【0126】

製造例1 [活性水素成分(A−1)の製造]
冷却管を備えた反応容器中にポリエステルジオール[三洋化成工業(株)製「サンエスター4610」:Mn=1,000]412部及び酢酸エチル500部を仕込み、均一攪拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート[日本ポリウレタン(株)製「ミリオネートMT」]88部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して70〜80℃で6時間反応させ、固形分濃度50%の末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(A−1)の溶液を得た。
【0127】
製造例2 [活性水素成分(A−2)の製造]
ポリエステルジオールをポリ(オキシプロピレン)グリコール[三洋化成工業(株)製「サンニックスPP−1000」:Mn=1,000]に代える以外は製造例1と同様にして、固形分濃度50%の末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(A−2)の溶液を得た。
【0128】

製造例3 [末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の製造]
ポリエステルジオールの仕込み量を385部に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの仕込み量を115部に代える以外は製造例1と同様にして、固形分濃度50%の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C−1)の溶液を得た。
【0129】
実施例1 [接着性向上剤(S1−1)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物[三洋化成工業(株)製「サンニックスPL−910」:Mn=900、水酸基価=124.7]900部、無水トリメリット酸384部及びアルカリ触媒(N−エチルモルホリン)2.0部を仕込み、窒素雰囲気下、0.20MPa、130±10℃で5時間反応させ酸無水物基部分のハーフエステル化を行い、プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物1モルに無水トリメリット酸が2モル反応したエステル化合物を得た。続いてEO198部を100±10℃で、圧力が0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、100±10℃で1時間熟成して、前記エステル化合物のカルボキシル基にEOを付加させた接着性向上剤(S1−1)を得た。
【0130】
実施例2 [接着性向上剤(S1−2)の製造]
プロピレングリコールPO/EOブロック付加物900部をポリ(オキシテトラメチレン)グリコール[三菱化学(株)製「PTMG1000」:Mn=1000、水酸基価112.2]1000部に変更する以外は実施例1と同様にして接着性向上剤(S1−2)を得た。
【0131】
実施例3 [接着性向上剤(S1−3)の製造]
プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物900部をポリ(オキシプロピレン)トリオール[三洋化成工業(株)製「サンニックスGP−1500」:Mn=1500、水酸基価=112.2]1500部に、無水トリメリット酸の仕込量を576部に、EOの仕込み量を297部に変更する以外は実施例1と同様にして接着性向上剤(S1−3)を得た。
【0132】
実施例4 [接着性向上剤(S1−4)の製造]
プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物900部をポリ(オキシプロピレン)グリコール[三洋化成工業(株)製「サンニックスPP−1000」:Mn=1000、水酸基価=112.2]1000部に、EOの仕込み量を101.2部に変更する以外は実施例1と同様にして接着性向上剤(S1−4)を得た。
【0133】
実施例5 [接着性向上剤(S1−5)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ジエチレングリコールモノブチルエーテル324部、無水ピロメリット酸218部、溶媒としてのジメチルホルムアミド542.0部、及びアルカリ触媒(N−エチルモルホリン)2.0部を仕込み、窒素雰囲気下、0.20MPa、25±10℃で5時間反応させ酸無水物基部分のハーフエステル化を行い無水ピロメリット酸1モルにジエチレングリコールモノブチルエーテルが2モル反応したエステル化合物を得た。続いてEO198部を50±10℃で、圧力が0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、50±10℃で1時間熟成し、ジメチルホルムアミドを、100℃±10℃で、圧力が−0.1MPaとなるように制御しながら5時間かけて除去して、前記エステル化合物のカルボキシル基にEOを付加させた化合物(S1−5)を得た。
【0134】
実施例6 [接着性向上剤(S1−6)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、エチレンジアミン60、無水トリメリット酸384部、アルカリ触媒(N−エチルモルホリン)1.0部及び溶媒としてのTHF219部を仕込み、窒素雰囲気下、80±10℃で2時間反応させ酸無水物基部分のハーフアミド化を行い、エチレンジアミン1モルに無水トリメリット酸が2モル反応したアミド化合物を得た。続いてEO198部を80±10℃で、圧力が0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、80±10℃で1時間熟成し、80±10℃、10kPaで溶媒を留去することにより、前記アミド化合物のカルボキシル基にEOを付加させた接着性向上剤(S1−6)を得た。
【0135】
実施例7 [接着性向上剤(S2−1)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物[三洋化成工業(株)製「サンニックスPL−910」:Mn=900、水酸基価=124.7]900部、無水トリメリット酸384部、アルカリ触媒(N−エチルモルホリン)1.0部及びトルエン460部を仕込み、窒素雰囲気下、0.20MPa、130±10℃で5時間反応させ酸無水物基部分のハーフエステル化を行い、プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物1モルに無水トリメリット酸が2モル反応したエステル化合物を得た。続いてベンジルアルコール432部を加え、95±5℃、0.06MPa以下となるように制御し、揮発するトルエンと水を冷却器で凝縮させ、トラップで分離したトルエンを反応容器に連続的に戻しながら6時間反応させた。反応後、80±10℃、10kPaで溶媒を留去することにより、前記エステル化合物のカルボキシル基をベンジルオキシカルボニル基とした接着性向上剤(S2−1)を得た。
【0136】
実施例8 [接着性向上剤(S2−2)の製造]
ベンジルアルコール432部を、ベンジルアミン428部に変更する以外は実施例7と同様にして接着性向上剤(S2−2)を得た。
【0137】
実施例9 [接着性向上剤(S2−3)の製造]
ベンジルアルコール432部を、ベンジルチオール496部に変更する以外は実施例7と同様にして接着性向上剤(S2−3)を得た。
【0138】
実施例10 [接着性向上剤(S2−4)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、エチレンジアミン60部、無水トリメリット酸384部、アルカリ触媒(N−エチルモルホリン)1.0部及び溶媒としてのトルエン460部を仕込み、窒素雰囲気下、80±10℃で2時間反応させ酸無水物基部分のハーフアミド化を行い、エチレンジアミン1モルに無水トリメリット酸が2モル反応したアミド化合物を得た。続いてベンジルアルコール432部を加え、95±5℃、0.06MPa以下となるように制御し、揮発するトルエンと水を冷却器で凝縮させ、トラップで分離したトルエンを反応容器に連続的に戻しながら6時間反応させた。反応後、80±10℃、10kPaで溶媒を留去することにより、前記アミド化合物のカルボキシル基にベンジルアルコールを付加させた接着性向上剤(S2−4)を得た。
【0139】
実施例1〜10で得られた接着性向上剤(S1−1)〜(S2−4)の分析結果を表1に示す。
【0140】
実施例11〜27及び比較例1〜2
表2に示す部数の接着性向上剤(S)、活性水素成分(A)の溶液及び有機溶剤を配合して主剤とし、表2に記載のイソシアネート成分(B)を硬化剤として、主剤と硬化剤からなる本発明の2液硬化型ウレタン接着剤(Y1)〜(Y17)及び比較用の2液硬化型ウレタン接着剤(Z1)〜(Z2)を得た。
【0141】
実施例28〜29
撹拌装置、温度制御装置付きの反応容器に表3に示す部数の接着性向上剤(S)、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の溶液及び有機溶剤を仕込み、70〜80℃で2時間反応させて、本発明の1液硬化型ウレタン接着剤(Y18)〜(Y19)を得た。
【0142】
実施例30〜34及び比較例3〜4
表3に示す部数の接着性向上剤(S)及び有機溶剤と、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C)の溶液又はポリアミド樹脂(D)を配合して、本発明の1液硬化型ウレタン接着剤(Y20)〜(Y22)及びポリアミド樹脂接着剤(Y23)〜(Y24)並びに比較用の1液硬化型ウレタン接着剤(Z3)及びポリアミド樹脂接着剤(Z4)を得た。
【0143】
尚、表2〜表3における各成分の詳細は以下の通りである。
・(S1−1)〜(S2−4):実施例1〜10で得られた接着性向上剤(S)。
・(A−1)〜(A−2)の溶液:製造例1〜2で得られた固形分濃度50%の末端に水酸基を
有するウレタンプレポリマーの溶液。
・(B−1)の溶液:TDI(3モル)とトリメチロールプロパン(1モル)との反応物(B−1)の75%酢酸エチル溶液[日本ポリウレタン(株)製「コロネートL」]。
・(C−1)の溶液:製造例3で得られた固形分濃度50%の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液。
・(D−1):ポリアミド樹脂[三洋化成工業(株)製「ポリマイド S−40E」]。
【0144】
得られた接着剤を、2液硬化型ウレタン接着剤の場合は表2に記載の部数(主剤の部数は主剤の欄の各成分の合計値)の主剤と硬化剤とを配合後、第1基材である表面をコロナ処理したPETフィルム(膜厚100μm)に溶剤型ドライラミネーターで固形分の塗布量が4.5〜5.5g/m2となるように塗布し、80〜100℃の熱風乾燥機で約1分乾燥して溶剤を揮散させた後、塗布面を第2基材である表面をコロナ処理したPETフィルム(膜厚100μm)と100℃で貼り合わせ、40℃で3日間養生し、ラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムを用いて、以下の方法によりフィルムの接着力及び耐熱水性を評価した結果を表5に示す。
【0145】
(1)接着力の測定方法
(1−1)23℃での接着力
ラミネートフィルムを200mm×25mmの大きさに裁断し、引張試験機を用い、23℃で引っ張り速度300mm/分の条件でT型剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。測定は5つの試料について行い、その平均値を表2に示した。T型剥離強度の数値が大きいほど接着力に優れる。
(1−2)60℃での接着力
ラミネートフィルムを200mm×25mmの大きさに裁断し、引張試験機を用い、60℃で引っ張り速度300mm/分の条件でT型剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。測定は5つの試料について行い、その平均値を表2に示した。T型剥離強度の数値が大きいほど接着力に優れる。
【0146】
(2)耐熱水性の評価方法
ラミネートフィルムを100mm×100mmの大きさに裁断し、100℃の熱水に4時間浸せきした後、浮き・剥がれの有無を目視で下記基準に基づいて評価した。
◎:浮き・剥がれ無し
○:端部にわずかに浮き・剥がれが見られる。(面積:5%以内)
×:浮き剥がれ有り
【0147】
【表1】

【0148】
【表2】

【0149】
【表3】

【0150】
【表4】

【0151】
表4から、本発明の接着剤は、比較例の接着剤に比べ、23℃及び60℃での接着力と耐熱水性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の接着剤は上述の効果を奏することから、フィルム材料[樹脂フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、セロファン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、エチレン酢酸ビニル共重樹脂及びポリエステル樹脂等)及び金属(アルミ及び銅等)蒸着フィルムや金属(アルミ及び銅等)箔等]等を貼り合わせる接着剤として好適に用いられ、また、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂及びメラミン樹脂等のプラスチック製材料並びに鉄及びアルミ等の金属製材料、木質性材料、紙類等に用いられる接着剤としても広く有用であり、接着強度および耐久性が必要な用途や、高温で使用される用途に用いられる接着剤として特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される接着性向上剤(S)。
【化1】

[一般式(1)中、X1はm価の活性水素含有化合物からc個の活性水素を除いた残基を表し;cは1≦c≦mを満たす整数を表し;mは1〜20の整数を表し;X2は活性水素含有化合物から1個の活性水素を除いた残基を表し、複数のX2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X2とX1はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基を表し、Yの芳香環は炭素原子から構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよいが少なくとも1つの炭素原子は置換基が結合しておらず;aは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表し、かつ、2≦a+b≦d−2を満たし;dは前記芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基を含む全ての置換基を水素原子に置換した場合の芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子の数、即ち芳香環上で置換可能な部位の数を表す。]
【請求項2】
水酸基価が0又は70〜500mgKOH/gである請求項1記載の接着性向上剤。
【請求項3】
一般式(1)におけるYの濃度が、1.0〜3.5mmol/gである請求項1又は2記載の接着性向上剤。
【請求項4】
カルボニル基濃度が3.0〜10.0mmol/gである請求項1〜3のいずれか記載の接着性向上剤。
【請求項5】
前記3価以上の芳香族ポリカルボン酸が、前記芳香環を構成し置換基が結合していない炭素原子に隣接する2個の炭素原子にカルボキシル基が結合した構造を有する請求項1〜4のいずれか記載の接着性向上剤。
【請求項6】
前記カルボキシル基が結合した炭素原子に隣接する炭素原子の少なくとも一方に更にカルボキシル基が結合した構造を有する請求項5記載の接着性向上剤。
【請求項7】
活性水素成分(A)を含有する主剤とイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とからなり、以下の(1)〜(4)の内の少なくとも1つを満たすことを特徴とする2液硬化型ウレタン接着剤;
(1)請求項1〜6のいずれか記載の接着性向上剤でかつ少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)を、前記活性水素成分(A)が含有する;
(2)請求項1〜6のいずれか記載の接着性向上剤でかつ少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)及び必要によりその他の活性水素成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端に水酸基を有するウレタンプレポリマーを前記活性水素成分(A)が含有する;
(3)請求項1〜6のいずれか記載の接着性向上剤でかつ少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)及び必要によりその他の活性水素成分とイソシアネート成分とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを前記イソシアネート成分(B)が含有する;
(4)請求項1〜6のいずれか記載の接着性向上剤でかつ活性水素を有しない接着性向上剤(S2)を前記主剤及び/又は硬化剤が含有する。
【請求項8】
下記(1)又は(2)を満たすことを特徴とする1液硬化型ウレタン接着剤。
(1)請求項1〜6のいずれか記載の接着性向上剤でかつ少なくとも1つの活性水素を有する接着性向上剤(S1)を含有する活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C1)を含有する;
(2)請求項1〜6のいずれか記載の接着性向上剤でかつ活性水素を有しない接着性向上剤(S2)の存在下で活性水素成分(A)とイソシアネート成分(B)とを反応させて得られる、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C2)と接着性向上剤(S2)とを含有するウレタンプレポリマー組成物を含有する。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか記載の接着性向上剤を含有することを特徴とするポリアミド樹脂接着剤。

【公開番号】特開2013−60583(P2013−60583A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176697(P2012−176697)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】