説明

接着組成物および硬化性接着シートの製造方法

【課題】接着加工の際に、再度の加熱や紫外線を照射することにより完全硬化および固化して金属被着体に接着性を発揮する、仮止め初期粘着性の半硬化接着層を有する硬化性接着シートが得られる接着組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも、一般式(1)で表されるポリマー(A)と、式(2)で表されるポリマー(B)とをA/B=30/70〜70/30(質量比)の割合で含有することを特徴とする接着組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性接着シートが得られる接着組成物(以下、単に「接着組成物」という場合がある)に関し、さらに詳しくは、使用の際に再度の加熱や紫外線照射により完全硬化して接着性を発揮する、仮止め初期粘着性の半硬化接着層を有する硬化性接着シートが得られる接着組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンなどの電子モバイルは、小型化、および軽量化が進み、マグネシウム合金のような軽量かつ剛性の高い素材が使用されつつある。上記素材からなる三次元形状のモバイル製品も、その表面を装飾したものが標準化してきている。その装飾方法としては、着色塗装が一般に行われている。しかしながら、塗装は、揮発性有機化合物(VOC)による環境問題がある。また、印刷されたプラスチックフィルムを二液型のエポキシ系の接着剤を用いて被着体に張り合わせることも行われている。この施工は、接着直前に硬化剤を配合して、液状の状態でウエット貼りするために接着剤のはみ出しによる汚れが発生したり、作業時間がかかるなどの問題がある。
【0003】
その他、プラスチックフィルムにアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などの粘着剤を塗布した粘着シートを用いて貼り合わせる粘着貼りも検討されるが、マグネシウム合金のような剛性の高い素材に対する強度の接着力や、粘着性を有しているために耐熱性が充分ではない。また、上記粘着シートは、接着力を維持するためにその粘着力が強いために、例えば、立体物に貼り合わせる場合に、位置合わせをするために一度被着体に貼ると、位置違いを修正するために再度修正貼りをするのが困難であり、また、貼り面に空気溜を生ずるなどの問題がある。
【0004】
上記粘着シートとして、ある種の粘着シート(特許文献1、および特許文献2)が開示されている。特許文献1に開示の粘着シートは、アクリル系粘着剤に架橋剤を配合して得られた反応生成物の粘着層を有し、被着体の貼り直しを容易としているとともに、加工後、加熱により被着体から容易に剥離できる構成になっているために、被着体に対する強固な接着性および耐熱性が得られない。また、特許文献2に開示の粘着シートは、ブチルアクリレート単位を主体とする樹脂成分と架橋剤を含むアクリル系粘着剤をプラスチックフィルム基材に塗布し、乾燥させた粘着層を有し、三次元形状の金属からなる被着体に貼付した場合に、その強度の粘着性にもかかわらず、従来の粘着シートに比べて浮きや剥れの少ない金属化粧板用の構成になっているが、粘着性が強すぎて再度修正貼りをするのが困難であり、また、粘着層により被着体と結合されているために耐熱性が劣る。
【0005】
上述のことから、液状接着剤を使用したウエット貼り、あるいは粘着フィルムを用いた粘着貼りに代わる、接着加工の際に、一度貼っても、位置違いを修正できる再度修正貼りが可能である仮止め初期粘着性を有し、仮止め後、容易に短時間で完全硬化および固化して金属被着体に対して耐熱性のある接着性を発揮する接着シートが得られる接着組成物が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−239684号公報
【特許文献2】特開2008−201920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、接着加工の際に、再度の加熱や紫外線を照射することにより完全硬化および固化して金属被着体に接着性を発揮する、仮止め初期粘着性の半硬化接着層を有する硬化性接着シートが得られる接着組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の一般式(1)で表されるポリマー(A)と、下記式(2)で表されるポリマー(B)とを適宜の割合で含有する接着組成物が、該組成物をフィルム基材に塗布し加熱あるいは紫外線を照射することにより、仮止めの位置修正が自由にできる仮止め初期粘着性の半硬化状態の接着層を有する硬化性接着シートが得られ、上記硬化性接着シートをマグネシウム合金などの金属被着体などと仮止めした後、再度、加熱、あるいは紫外線を照射することにより上記接着層が完全硬化および固化して接着性を発揮することを見出した。上記硬化性接着シートは、フィルム基材を着色または印刷することにより上記金属被着体に加飾性を付与することができる。
【0009】
上記の目的は、以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、少なくとも、下記一般式(1)で表されるポリマー(A)と、下記式(2)で表されるポリマー(B)とをA/B=30/70〜70/30(質量比)の割合で含有することを特徴とする接着組成物を提供する。

(上記式中のnは、0、または0.1〜18の数である)

【0010】
また、本発明の好ましい実施形態では、前記ポリマー(A)の重量平均分子量が、350〜1300であり、さらに、下記式(3)、(4)、および(5)から選ばれる少なくとも1種の化合物(x)を含有しており、前記化合物(x)が、1−ナフチルメチルメチルP−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナートであり、前記化合物(x)の配合が、ポリマー(A)とポリマー(B)の混合物に対して、x/A+B=1/100〜4/100であり、さらに、フッ素系界面活性剤を含有することが好ましい。



【0011】
また、本発明は、上記の接着組成物をフィルム基材に塗布し、形成された接着層を熱または紫外線により半硬化させ、接着層に初期粘着性を与えることを特徴とする硬化性接着シートの製造方法を提供する。
【0012】
また、上記接着層を、剥離性を有するフィルムで被覆すること、および、前記フィルム基材が、印刷されたプラスチックフィルムであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記の硬化性接着シートを被着体に圧着し、熱または紫外線により完全硬化させることを特徴とする接着方法を提供する。上記被着体が、マグネシウム合金であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の接着組成物は、接着加工の際に、再度の加熱や紫外線照射により容易に短時間で完全硬化して金属被着体に接着性を発揮する仮止め初期粘着性の半硬化状態の硬化性接着シートを製造するのに有効であり、さらに、上記硬化性接着シートのフィルム基材を着色または印刷しておくことにより上記被着体に加飾性を付与する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の接着組成物は、少なくとも、前記のポリマー(A)と、ポリマー(B)とをA/B=30/70〜70/30(質量比)の割合で必須成分として含有しており、さらに、好ましくは前記化合物(x)からなる硬化剤を配合することにより、フィルム基材に塗布し、その塗膜を加熱あるいは紫外線照射により半硬化させることで、貼り合わせ位置修正が自由にできる仮止め程度の初期粘着性を有する接着層を形成し、接着加工の際に、仮止め後、再度、加熱あるいは紫外線照射により完全硬化および固化して被着体に対して接着性を発揮する半硬化状態の硬化性接着シートが得られる。
【0016】
本発明における半硬化とは、前記ポリマー(A)および(B)の混合物に前記化合物(x)を配合し、得られる接着組成物の接着層に適度の加熱あるいは紫外線を照射することにより、上記接着層を仮止め初期粘着性を有する完全硬化していない半硬化を含む仮硬化した状態とし、接着加工の際に、上記接着層が、再度の加熱または紫外線を照射されることにより完全硬化および固化することを意味する。なお、上記の半硬化は、そのポットライフが安定的に長期間維持されるものである。
【0017】
また、上記初期粘着性とは、上記半硬化の接着組成物の接着層を、低荷重下で被着体へ瞬時接触させて生じる粘着性が、仮り止めの位置修正が自由にできる程度の極度のベタツキがない粘着力を有するものである。通常の粘着接着剤の粘着性であると粘着力が強いために、被着体にタッチすると付着してしまい、貼り合わせ位置修正が自由にできない。
【0018】
前記のポリマー(A)は、下記一般式(1)で表されるビスフェノールA型エポキシ系レジンである。上記のポリマー(A)は、重合度が約0〜18、好ましくは重合度が約0〜3である。また、上記ポリマー(A)の重量平均分子量は、好ましくは350〜1300、より好ましくは370〜500である。上記ポリマー(A)は、単独でも、2種以上を混合して使用することができ、好ましくは液状のものが使用される。

(上記式中のnは、0、または0.1〜18の数である)
【0019】
上記のポリマー(A)は、単独では、得られる硬化性接着シートの仮止め初期粘着性が強過ぎ、また、得られる硬化性接着シートと被着体を貼り合わせ完全硬化した接着層が固いために可撓性を有する接着性が得られない。このために、前記のポリマー(B)と併用することにより、適度の仮止め粘着性と、完全硬化した場合に可撓性の接着性を有する接着層を有する半硬化の硬化性接着シートが得られる。
【0020】
上記のポリマー(A)は、公知の合成方法により製造されたものを使用することができ、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合反応生成物、あるいは、低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールAの付加重合によるオリゴマーなどが挙げられる。
【0021】
また、上記のポリマー(A)と併用するポリマー(B)は、下記式(2)で表されるものであり、エポキシ当量が600〜700(g/eq)である。上記ポリマー(B)は、ポリマー(A)のベタツキのある粘着性を抑え、得られる硬化性接着シートに仮止め初期粘着性を付与する。また、上記ポリマー(B)は、得られる硬化性接着シートの接着層に可撓性を付与する。なお、本発明におけるエポキシ当量は、JIS K 7236に準じた値である。

【0022】
前記のポリマー(A)とポリマー(B)との配合割合は、A/B=30/70〜70/30(質量比)であり、好ましくは60/40〜50/50である。上記配合において、ポリマー(A)の配合割合が上記上限を超えると、得られる硬化性接着シートの仮止め初期粘着性のベタツキが増大して、被着体への貼り合わせの際に、位置修正移動が自由にできない。一方、上記配合割合が、上記下限未満であると、充分な接着性が得られない。
【0023】
また、ポリマー(B)の配合割合が上記上限を超えると、得られる硬化性接着シートの仮止め初期粘着性が減少して仮止め適性、および接着性が劣る。一方、ポリマー(B)の配合割合が上記下限未満であると、得られる硬化性接着シートに貼り合わせ位置修正が自由にできる仮止め初期粘着性のベタツキが増大して、被着体への仮止め適性が低下し、また、得られる硬化性接着シートの接着層が固くなり可撓性が低下する。
【0024】
本発明の接着組成物は、前記のポリマー(A)とポリマー(B)とを前記数値内に混合したものを必須成分として、好ましくは、さらに、下記式(3)、(4)、および(5)から選ばれる少なくとも1種の化合物(x)を含有する。



【0025】
上記の化合物(x)は、前記のポリマー(A)およびポリマー(B)に配合し、熱または紫外線を活性源としてカチオン種を発生して、ポリマー(A)および(B)の重合を開始させ仮止め初期粘着性を有する半硬化状態の硬化性接着シートを形成する。上記硬化性接着シートは、接着加工の段階で、再度、上記活性源により完全硬化させる。前記化合物(x)の内で、好ましくは1−ナフチルメチルメチルP−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナートが、安定した仮止め初期粘着性を有する半硬化状態の硬化性接着シートを形成するのに効果がある。
【0026】
前記化合物(x)の、前記のポリマー(A)とポリマー(B)の混合物に対する好ましい配合割合は、x/A+B=1/100〜4/100(質量比)である。上記化合物(x)の配合割合が多すぎても、それ以上の効果がなく接着を阻害する。一方、上記化合物(x)の配合割合が少なすぎると、得られる硬化性接着シートの接着層を半硬化状態にすることができず、仮止め初期粘着性にベタツキを生じ、さらに、接着加工の段階で、完全硬化せず被着体に対する接着性が低下する。
【0027】
また、本発明の接着組成物は、好ましくは、さらにフッ素系界面活性剤を含有することができる。上記のフッ素系界面活性剤は、上記接着組成物の基材への塗布性と、得られる硬化性接着シートを用いて加熱硬化させ接着加工した場合に被着体に対する密着性などの性能を向上させる。その添加量は、接着組成物総量中に0.2〜0.5質量%である。上記添加量が多すぎると、被着体に対する密着性を阻害するので好ましくない。上記のフッ素系界面活性剤としては、上記の性能を有する公知のフッ素系界面活性剤を使用することができ、例えば、DIC(株)製、メガファックF−477の商品名で入手して本発明で使用することができる。
【0028】
本発明の接着組成物は、前記ポリマー(A)およびポリマー(B)と、前記化合物(x)と、前記フッ素系界面活性剤とを前記の配合数値内になるように配合し、均一に混合撹拌して無溶剤接着組成物に、あるいは、必要に応じて有機溶媒を希釈剤として使用した接着組成物として調製することができる。なお、前記化合物(x)は、好ましくは硬化性接着シートを製造する段階の直前に、前記ポリマー(A)およびポリマー(B)に配合する。
【0029】
上記の有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、3−ヘプタノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチルなどのエステル類;エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、3−メトキシブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類など、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
(硬化性接着シートの製造方法)
次に、本発明により調製された接着組成物を用いて、硬化性接着シートの製造方法について説明する。上記の製造方法としては、得られる硬化性接着シートの接着層を熱により半硬化させる製造方法1、および紫外線を照射することにより半硬化させる製造方法2が挙げられる。
【0031】
上記製造方法1としては、例えば、フィルム基材に本発明の接着組成物を用いて、必要に応じて前記の有機溶媒を用いて適宜の濃度に希釈し、グラビアコート、フレキソコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ダイコート、ナイフコート、ブレードコート、カーテンコート、スロットオリフィス、ロールナイフコート、バーコートなどの公知の塗布方法により20μm〜40μm(塗膜厚み)に塗布し、120℃のオーブンにて2分〜3分間加熱して上記接着組成物の接着層を半硬化し、仮止め初期粘着性を有する硬化性接着シートを得る。
【0032】
上記のフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオキサベンザゾールフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、アクリル樹脂フィルムなどのプラスチックフィルムや、これらの材質からなる不織布、反物などが挙げられる。上記のプラスチックフィルムは、延伸または未延伸フィルムで、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤や基材の表面をコロナ処理、プラズマ処理、あるいはプライマー処理したものなどを使用することができる。上記のフィルム基材は、前記接着組成物を塗布する反対面に非接着処理することもできる。
【0033】
また、前記製造方法2としては、例えば、前記製造方法1において、フィルム基材に塗布された本発明の接着組成物の接着層を、UV照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製、MODELDRS−10/12QN)を用いて、露光量300mJ/cm2(波長365nm)で露光し、上記接着層を半硬化し、仮止め初期粘着性を有する硬化性接着シートを得る。なお、上記接着組成物が希釈有機溶媒を含有する場合は、接着層を予備乾燥後UV照射する。
【0034】
前記製造方法1および2では、好ましくは得られる硬化性接着シートの接着層を剥離性を有するフィルムで被覆するのがよい。上記の剥離性を有するフィルムとは、上記接着組成物の半硬化した接着層に接するフィルム面が非接着処理されたものである。上記フィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、離型紙用の紙などの片面がシリコーン、脂肪酸、ワックス、フッ素樹脂などの離型剤により処理されたものである。上記の剥離性を有するフィルムの被覆は、前記硬化性接着シートを製造する工程で連続してラミネートしてもよい。
【0035】
本発明の前記硬化性接着シートの製造に使用される前記フィルム基材は、無地のままでも使用することができるが、好ましくは前記フィルム基材を前もって、着色、あるいはグラビア印刷、平版印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷方法により印刷されたものが使用され、貼り合わせ後、被着体を装飾するのに有効に使用される。
【0036】
(接着方法)
次に、本発明の硬化性接着シートを用いた被着体への接着方法について説明する。上記接着方法としては、被着体に本発明の硬化性接着シートを位置合わせしながら仮止めし、圧着させた後、加熱により完全硬化させる接着方法1、および紫外線の照射により完全硬化させる接着方法2が挙げられる。必要に応じて、上記の接着方法1または2を併用してもよい。
【0037】
上記接着方法1としては、例えば、被着体に本発明の硬化性接着シートを位置合わせしながら前記の初期粘着性を利用して仮止めし、次に、ラミネーター、プレス機を使用して圧着させ、圧着後、120℃のオーブンにて3分間加熱硬化させる。なお、硬化性接着シートの接着層面が前記剥離性を有するフィルムで被覆されている場合は、該フィルムを仮貼り後、または、加熱硬化終了後、取り除いてもよいし、あるいはキズ防止のために接着後、使用するまでそのまま被覆しておいてもよい。
【0038】
また、上記接着方法2としては、例えば、接着方法1において、硬化性接着シートに使用されているフィルム基材が、紫外線が透過できる透明の場合に(印刷物を含め)、仮貼り圧着後、フィルム基材面側から前記UV照射装置などの公知のUV照射装置を用いて露光量300mJ/cm2(波長365nm)の紫外線を照射して完全硬化させる。
【0039】
上記被着体としては、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、ステナイト系ステンレス、オーステナイト−フェライト系ステンレスなどのステンレス鋼;Mg−Al−Zn−Mn系合金;Mg−Zn−Zr系合金;Mg−ミッシュメタル系、Mg−Ce系、Mg−La系などのMg−希土類元素系合金;Mg−Li系合金などのマグネシウム合金などの金属材質、好ましくはマグネシウム合金が挙げられる。上記被着体は、ダイカスト、シェルモードなどで鋳造されたもの、鍛造、押し出しなどにより成形された電子モバイル、電気部品、自動車部品、航空機部品などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明の接着組成物U1〜U5と比較例の接着組成物V1〜V5を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中の「部」または「%」とあるのは質量基準である。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1〜5](接着組成物U1〜U5)
ポリマー(A)と、ポリマー(B)と、化合物(x)と、フッ素系界面活性剤と、必要に応じて有機溶媒とを使用し、各々の成分を表1のように配合し、メカニカルスターラーにて充分に均一に混合撹拌を行い接着組成物U1〜U5を調製した。なお、接着組成物U2〜U5は無溶剤の接着組成物である。
【0042】
上記ポリマー(A)、ポリマー(B)、化合物(x)、およびフッ素系界面活性剤は下記のとおりである。
・ポリマー(A):前記一般式(1)のポリマー(重合度n=0.1、エポキシ当量184〜194(g/eq)、重量平均分子量370、ジャパンエポキシレジン(株)製、jER828)
・ポリマー(B):前記式(2)のポリマー(エポキシ当量600〜700(g/eq)、ジャパンエポキシレジン(株)製、jER872)
・化合物(x):
x1:前記式(3)の化合物(三新化学(株)製、サンエイドSI−60L)
x2:前記式(4)の化合物(三新化学(株)製、サンエイドSI−80L)
・フッ素系界面活性剤:DIC(株)製、メガファックF−477
【0043】

【0044】
[比較例1〜4](接着組成物V1〜V4)
実施例において、ポリマー(B)の代わりに下記式(6)で表されるポリマー(C)を用いて、表2のように各々の成分を配合し、メカニカルスターラーにて充分に混合撹拌を行い接着組成物V1〜V4を調製した。なお、接着組成物V2〜V4は無溶剤の接着組成物である。
・ポリマー(C):下記式(6)で表されるエポキシ樹脂(エポキシ当量390〜470(g/eq)、ジャパンエポキシレジン(株)製、jER871)

【0045】
[比較例5](接着組成物V5)
実施例において、ポリマー(B)の代わりにポリマー(D)を用いて、また、化合物x1あるいはx2の代わりにジシアンジアミド硬化剤を用いて、表2のように各々の成分を配合し、均一に混合分散して無溶剤の接着組成物V5を調製した。
・ポリマー(D):前記一般(1)のポリマー(重合度n=2、重量平均分子量900、エポキシ当量460〜500(g/eq)、ジャパンエポキシレジン(株)製、jER1001)
【0046】

【0047】
[実施例6、8〜10](硬化性接着シートW1、W3〜W5)、および[比較例6、8〜10](硬化性接着シートX1、X3〜X5)
前記実施例および比較例で得られた各々の接着組成物を使用して、前記硬化性接着シートの製造方法の製造方法1により、フィルム基材(25μmのポリエステルフィルム)にアプリケーターにて塗布し、形成された被膜形成層(塗膜厚み30μm)を120℃で2分間加熱して半硬化させ、硬化性接着シートW1およびW3〜W5、および硬化性接着シートX1、およびX3〜X5を得た。さらに、上記硬化性接着シートの半硬化した被膜形成層を離型性を有するポリプロピレンフィルムにて被覆した。
【0048】
[実施例7](硬化性接着シートW2)、および[比較例7](硬化性接着シートX2)
また、接着組成物U2および接着組成物V2を使用して、前記硬化性接着シートの製造方法の製造方法2により、フィルム基材(25μmのポリエステルフィルム)にアプリケーターにて塗布し、形成された被膜形成層(塗膜厚み30μm)にUV照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製、MODELDRS−10/12QN)を用いて、露光量300mJ/cm2(波長365nm)で照射して半硬化させ、硬化性接着シートW2およびX2を得た。さらに、上記硬化性接着シートの半硬化した被膜形成層を離型性を有するポリプロピレンフィルムにて被覆した。
【0049】
上記で得られた各々の硬化性接着シートの初期粘着性、初期粘着性の経時安定性、および接着性について下記の測定方法により評価した。評価結果を表3および表4に示す。
(初期粘着性)
前記の半硬化した各々の硬化性接着シートの被着体への貼り合わせの際における接着面のタックの状態を下記の評価により判定した。
○:強いベタツキがなく、位置合わせができる仮止め程度の粘着性を有する。
△:ややベタツキがあり、位置合わせができる仮止めがやや劣る粘着性を有する。
×:ベタツキが強く、位置合わせができる仮止めが困難な粘着性を有する。
【0050】
(経時安定性)
前記の半硬化した各々の硬化性接着シートの経時安定性を下記の促進方法により評価した。
経時安定性1:硬化性接着シートを120℃で5分間加熱する。
経時安定性2:硬化性接着シートを120℃で10分間加熱する。
加熱・放冷後、上記初期粘着性のタック状態を下記の評価により判定した。
○:タックがあり、初期粘着性は維持されている。
△:タックがややあり、初期粘着性はやや劣る。
×:タックが全くなく、初期粘着性は維持されていない。
【0051】
(接着性)
上記で得られた各々の硬化性接着シートを長さ100mm、幅10mmの試料片に調整し、離型性を有するポリプロピレンフィルムを剥離除去した後、被着体であるSUSおよびMg合金のプレートに長さ方向50mm分だけ圧着し貼り付けた後、120℃のオーブンで3分間加熱して接着させ、その後24時間放冷して試料を作成した。上記試料をJIS K6850に準拠して、その引張剪断力(荷重3kg/cm2、180℃、1h)および剥離強度(120℃、2分間加熱)を測定する。上記の剥離強度は、試験機(速度300mm/min)にて、貼り付けシートを180°の方向へ引張り、その時の強度の最大点を剥離強度とした。
【0052】

【0053】

【0054】
上記の評価結果から、本発明の接着組成物は、経時変化のない初期粘着性と、SUSやMg合金などの被着体に対して優れた接着性を有する硬化性接着シートが得られる接着組成物であることが実証されている。また、上記硬化性接着シートにより、簡単に短時間で被着体に対して優れた接着性を発揮することが実証されている。一方、比較例の接着組成物は、半硬化させて得られた硬化性接着シートの初期粘着性に経時変化が認められ、上記被着体に対する接着性も劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の接着組成物は、接着加工の際に、再度の加熱や紫外線を照射することにより完全硬化および固化して接着性を発揮する、無地あるいは着色(印刷を含む)された仮止め初期粘着性を有する半硬化の硬化性接着シートが得られることから、ステンレス鋼やマグネシウム合金などの金属類からなるノートパソコンなどの電子モバイルなどの三次元成形品に上記硬化性接着シートを接着加工することにより、その表面を短時間で容易に加飾するのに有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(1)で表されるポリマー(A)と、下記式(2)で表されるポリマー(B)とをA/B=30/70〜70/30(質量比)の割合で含有することを特徴とする接着組成物。

(上記式中のnは、0、または0.1〜18の数である)

【請求項2】
前記ポリマー(A)の重量平均分子量が、350〜1300である請求項1に記載の接着組成物。
【請求項3】
さらに、下記式(3)、(4)、および(5)から選ばれる少なくとも1種の化合物(x)を含有する請求項1または2に記載の接着組成物。



【請求項4】
前記化合物(x)が、1−ナフチルメチルメチルP−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナートである請求項3に記載の接着組成物。
【請求項5】
前記化合物(x)の配合が、ポリマー(A)とポリマー(B)の混合物に対して、x/A+B=1/100〜4/100である請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着組成物。
【請求項6】
さらに、フッ素系界面活性剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着組成物。
【請求項7】
前記請求項3〜6のいずれか1項に記載の接着組成物をフィルム基材に塗布し、形成された接着層を熱または紫外線により半硬化させ、接着層に初期粘着性を与えることを特徴とする硬化性接着シートの製造方法。
【請求項8】
前記接着層を、剥離性を有するフィルムで被覆する請求項7に記載の硬化性接着シートの製造方法。
【請求項9】
前記フィルム基材が、印刷されたプラスチックフィルムである請求項8に記載の硬化性接着シートの製造方法。
【請求項10】
前記請求項7〜9のいずれか1項に記載の硬化性接着シートを被着体に圧着し、熱または紫外線により完全硬化させることを特徴とする接着方法。
【請求項11】
前記被着体が、マグネシウム合金である請求項10に記載の接着方法。

【公開番号】特開2011−127054(P2011−127054A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288729(P2009−288729)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】