説明

接続部受口構造及びそれを備えた管継手、ます、パイプ

【課題】管体の着脱作業を容易に行えるようにすると共に、その接続状態を良好に維持できるようにする。
【解決手段】管体Xが挿入される接続部本体5と、該接続部本体5に装着される固定リング13と、該固定リング13及び前記接続部本体5のうち少なくとも何れか一方の内側且つ前記管体Xの外側に設けられ、前記固定リング13が前記接続部本体5に装着される際に該固定リング13から管軸方向の力を受ける押圧体23と、該固定リング13及び前記接続部本体5のうち少なくとも何れか一方の内側且つ前記管体Xの外側に設けられ、該押圧体23により管軸方向の力を受けて圧縮され、前記管体Xの径方向の内方に膨出して前記管体Xの外周面に圧接するシール体30とを備え、前記シール体30が前記管体Xの外周面に圧接した状態に於いて、該シール体30、押圧体23及び管体Xが一体となって前記接続部本体5に対して回転し得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水配管及び排水・下水配管等に幅広く使用されている管継手、ます、及びパイプの接続部受口構造及びそれを備えた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管継手、ます、パイプ等を用いて給水配管、排水・下水配管がなされるが、その接続部は、主として、接着タイプ、ゴム輪タイプ、球形自在タイプ等が知られている。これらは一方の接続部受口に、他方の接続部差口、例えば管継手の差口、ますの差口、あるいはパイプの差口などが接続されて配管がなされている。接着タイプの場合は接着剤を塗布して接合し、ゴム輪受口タイプの場合は滑剤を塗布してこれらの差口を受口に挿入して接合している。以下、管継手の差口、ますの差口、あるいはパイプの差口を総称して「管体」という。また、接着剤や滑剤を塗布しないで接合できるメカニカル式管継手を使用して配管されることもある。
【0003】
従来、接続部受口構造としては、例えば次のようなものが存在する。即ち、この従来のものは、分岐継手の側面に排水横引き管が接続される枝管部を設けると共に、分岐継手の内周面に所定間隔を有して二条の環状溝を形成し、且つ該環状溝にゴム輪を装着したものである。排水管は、分岐継手に挿通して配管され、軸線を中心として回動可能な状態で連結されている。
【0004】
このように、分岐継手は排水管に対して回動可能な状態であるために、分岐継手を適宜回転させることにより、例えば配管施工後に於けるレイアウトの変更やリニューアル等により排水機器等の設置場所が変更された場合にも柔軟に対応することが可能である。
【特許文献1】特開2003−253717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の接続部受口構造では、排水管と受口との接続時に排水管の外周面とゴム輪とが圧接状態となるように、ゴム輪の内径寸法は排水管の外径寸法よりも小さく設定されている。このため、排水管の分岐継手への挿着作業が非常に厄介なものとなっていた。特に、十分な配管スペースのない状況下で行われる床下等の屋内での配管作業は、極めて煩雑であり、作業者にかかる負担も大きかった。
【0006】
また、上記従来のものにあっては、排水管とゴム輪との間で摩擦力が生じるために、排水管を受口に挿入する際に生じる挿入力を低減させて装着作業を容易にすると、ゴム輪と排水管の外周面とのシール性を十分に確保できない。また、排水管が分岐継手から離脱するのを防止する手段は特に有してはいないために、ゴム輪の排水管に対する圧接力のみでは、排水管が分岐継手から不用意に離脱してしまうという問題点もあった。これに対して、シール性を高めて離脱を防止するために、ゴム輪の内径を更に小さく設定して、排水管とゴム輪との摩擦力を高めることも可能ではある。しかるに、これによると排水管を受口に挿入する際の挿入力が大きくなるために、装着作業が厄介なものとなる。特に、床下等での装着作業は困難である。
【0007】
更に、配管のレイアウト変更時に於ける分岐継手の回転操作により、ゴム輪と排水管の外周面との良好なシール状態が損なわれ易いという欠点があり、継手部分から流通流体が漏洩するという難点も有していた。このように、保守、管理面に於ける不都合もあった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、管体の着脱作業を容易に行えるようにすると共に、その接続状態を良好に維持できるようにし、また配管のレイアウトの変更という事態への迅速且つ柔軟な対応を可能にならしめることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、管体が挿入される接続部本体と、該接続部本体に装着される固定リングと、該固定リング及び前記接続部本体のうち少なくとも何れか一方の内側且つ前記管体の外側に設けられ、前記固定リングが前記接続部本体に装着される際に該固定リングから管軸方向の力を受ける押圧体と、該固定リング及び前記接続部本体のうち少なくとも何れか一方の内側且つ前記管体の外側に設けられ、該押圧体により管軸方向の力を受けて圧縮され、前記管体の径方向の内方に膨出して前記管体の外周面に圧接するシール体とを備え、前記シール体が前記管体の外周面に圧接した状態に於いて、該シール体、押圧体及び管体が一体となって前記接続部本体に対して回転し得るように構成されたものである。
【0010】
かかる接続部受口構造に於いては、先ず接続すべき管体を接続部本体(例えば、接続部受口)に挿入する。その際、管体とシール体とは圧接前の状態にあり、該シール体に接触させることなく管体を接続部本体内に挿入することができる。この状態で、固定リングを前記接続部本体に装着する。かかる固定リングの装着時には、押圧体が固定リングから管軸方向の力を受ける。更に、押圧体からシール体が管軸方向の力を受けて圧縮され、該シール体は前記管体の径方向の内方に膨出する。これにより、シール体は管体の外周面に圧接し、この両者間のシールが図られることになる。また、かかる接続状態に於いて、前記接続部本体に対してシール体、押圧体及び管体とを一体で回転させることができる。
【0011】
従って、例えば継手本体の側部に分岐部を有する場合に於いて、配管施工後にレイアウトの変更等により、給排水機器の設置場所が変更された場合は、継手本体を所望位置に回転させることにより、その分岐部に新たな管体を接続することができる。即ち、配管の施工後に於けるレイアウトの変更等にも迅速且つ柔軟に対応することができる。
【0012】
一方、管体を接続部本体から離脱する場合は、固定リングを接続部本体の受口から離脱させればよい。これにより、固定リングから押圧体に作用する管軸方向の力が解除されると共に、該押圧体からシール体に作用する管軸方向の力が解除される。その結果、シール体の内径が拡径して管体との圧接状態は解除されるため、管体を接続部本体から離脱することができる。
【0013】
このように、固定リングの着脱という簡易な操作により、管体と接続部本体とを接続、又は、離脱させることができる。このため、作業者に負担をかけることなく、一連の接続及び離脱作業を容易に行うことができる。
【0014】
また、前記接続部本体からの固定リングの離脱を防止するストッパーを備えさせることも可能である。
【0015】
これによると、ストッパーにより接続部本体と固定リングとが強固に固定されるために、固定リングの不用意な離脱を確実に防止することができる。その結果接続部本体と管体との良好な接続状態を維持できることとなる。
【0016】
更に、前記押圧体は、シール体を管軸方向の両側から挟む一対の環状体で構成してもよい。
【0017】
これによれば、前記接続部本体への固定リングの装着により、環状体からなる一対の押圧体に管軸方向の力が作用する。更に、シール体がかかる押圧体により両側から管軸方向の力を受けて、前記管体の径方向の内方に膨出する。これにより、シール体が管体の外周面に圧接される。
【0018】
また、前記固定リングを接続部本体に取付けるべく、該接続部本体の外周面又は前記固定リングの内周面の何れか一方に係合溝を形成し、且つ該係合溝に係合可能な係合凸部を前記接続部本体の外周面又は固定リングの内周面の何れか他方に形成してもよい。
【0019】
これによると、接続部本体又は固定リングの何れか一方に形成した係合溝に、接続部本体又は固定リングの何れか他方に形成した係合凸部が係合して、固定リングが接続部本体に取付けられる。かかる係合溝と係合凸部との係脱操作は非常に簡易なものであるため、現場に於ける作業の効率アップに貢献することになる。
【0020】
更に、前記シール体の外周面に環状の凹状部を周方向に形成し、該凹状部の深さ以下になるように前記押圧体の押圧面の径方向の高さを設定することもできる。
【0021】
これによると、押圧体の押圧面の径方向の高さをシール体の凹状部の深さ以下の寸法となるように設定しているために、かかる凹状部の側方に位置する側端面部分のみに押圧体からの力が作用することになる。かかる力を受けて、シール体はその凹状部が閉じるように変形すると共に、径方向の内方に膨出して管体の外周面に圧接される。
【0022】
この場合、固定リングにさほどの力を作用させることなく、管体を接続部本体に接続することが可能となって、作業者にかかる負担は軽減される。
【0023】
また、本発明に係る管継手は、前記接続部受口構造を少なくとも一つ備えたものである。
【0024】
また、本発明に係るますは、前記接続部受口構造を少なくとも一つ備えたものである。
【0025】
更に、本発明に係るパイプは、前記接続部受口構造を少なくとも一つ備えたものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、管体の着脱作業を容易に行えるばかりではなく、その接続状態を良好に維持することができ、また配管のレイアウトの変更という事態に迅速且つ柔軟に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<第一実施形態>
以下、本発明に係る接続部受口構造を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る管継手を示す一部断面を含む正面図である。図中の符号1は、直管部2の側面に分岐部3を設けた透明の継手本体で、直管部2及び分岐部3の先端部側には鍔部4を有する透明の接続部本体5が夫々設けられている。尚、接続部本体5は継手本体1に別体で構成してもよく、また継手本体1等は必ずしも透明にする必要はない。
【0029】
前記鍔部4には、図2に示すように所定間隔を有して三個の切欠6が形成されている。また、接続部本体5の外周面には、同図に示すように所定間隔を有して三個の係合溝7が設けられている。かかる係合溝7は、管軸方向に形成した挿入部8と、該挿入部8に直交して周方向に連設した第一直線部9と、後述する固定リング13を前記接続部本体5側に接近させるべく、該第一直線部9に連設した所定の角度を有する傾斜部10と、該傾斜部10に連設した周方向の第二直線部11とからなっている。該第二直線部11の奥には、逆回転防止手段としての曲面状の凸部12が膨出形成されている。符号40は、図3及び図4に示すように、テーパ面41を有する凸状部である。このテーパ面41は、前記係合溝7の挿入部8の挿入側(図2及び図4の下側、図3の右側)に向かって下るように傾斜している。
【0030】
図5に示すように、符号13は、継手本体1の接続部本体5に取付ける固定リングである。かかる固定リング13は、その回転動作により後述するシール体30を管体Xの外周面に圧接せしめて、該管体Xを接続部本体5に接続するためのものである。固定リング13の、その一端側内周面には、前記接続部本体5の係合溝7(図3参照)にスライド自在に係合する三個の係合凸部14が所定間隔を有して設けられている。尚、固定リング13を接続部本体5に取付ける場合は、固定リング13の係合凸部14を接続部本体5の係合溝7の挿入部8に設けたテーパ面41及び凸状部40を乗り越えるようにして挿入部8内に挿入する。これにより、固定リング13と接続部本体5との一体性が保たれる。このため、工場等に於いて、予めこの状態にまで製作しておけば、現場への搬送作業や現場に於ける接続作業の簡略化が図れて、作業効率が大幅に向上することになる。また、固定リング13等の各構成部品を紛失するという事態も良好に回避できる。尚、固定リング13は、上述したように必ずしも接続部本体5から離脱しないように設ける必要はなく、取り外せるように構成してもよい。
【0031】
また、前記挿入部8は管軸方向に形成されているので、かかる挿入部8への係合凸部14の挿入は容易に行える。このため、係合凸部14を第一直線部9に適切に誘導することができて、固定リング13の回転動作が良好に行えることになる。更に、係合凸部14の挿入部8内の移動により、固定リング13の接続部本体5側への移動距離を確保することができる。このために、傾斜部10を急角度に設定したり、その長さを必要以上に確保するようなことは必要なくなり、よって接続部本体5のコンパクト化が図れる利点がある。
【0032】
尚、前記係合溝7の第一直線部9、傾斜部10及び第二直線部11を固定リング13の係合凸部14が移動する際には、固定リング13は図4に示すように、夫々10°、40°及び10°回転するように設定している。この場合、傾斜部10の傾斜角度を大きく設定すれば、少ない回転動作で固定リング13を接続部本体5(継手本体1)に固定することができる。一方、傾斜部10の傾斜角度を小さく設定すれば、固定リング13は無理なくスムーズに回転することになる。従って、傾斜部10の傾斜角度はこのような点を考慮して決定される。本実施形態では、前記係合凸部14が傾斜部10をスライド移動することにより、固定リング13が接続部本体5(継手本体1)に2.5mm接近するように設定している。傾斜部10の周方向に対する傾斜角度αは約4°である。尚、固定リング13の係合凸部14を係合溝7の凸部12に係合せしめて、該固定リング13を継手本体1の接続部本体5に固定すると、接続部本体5の鍔部4と固定リング13の端面とが略隙間なく当接するように構成されている(12、13図参照)。このように構成すると、接続した管体に曲げの力が加わった場合であっても、接続部受口の強度を確保することができる。
【0033】
図5に示すように、符号15は、固定リング13の一端部に設けた鍔部である。該鍔部15には、三個の切欠16が所定間隔を有して形成されている。これら三個の切欠16は、固定リング13の係合凸部14を接続部本体5の係合溝7の第二直線部11の終端に移動せしめた際に、該接続部本体5の鍔部4の切欠6と一致するような位置に形成されている。符号17は、固定リング13の他端部内周面に内向きに設けた環状凸部である。固定リング13の他端部側外周面は、多角形状に形成されている。
【0034】
図1に於いて、符号18は固定リング13にスライド自在に外嵌したストッパーである。図6のように、環状のストッパー本体19には、所定間隔を有して三個の係止片20が図面上で上向きに突設されている。かかる係止片20の個数は変更が可能であり、例えば図7に示すように1個の係止片20で構成してもよく、これに合わせて前記接続部本体5の鍔部4及び固定リング13の鍔部15に設けた各切欠6、16の個数も適宜変更するのが望ましい。係止片20の先端部内周面には、係合部21が設けられている。尚、係止片20は固定リング13の切欠16を介して鍔部4の切欠6に係入され、その鍔部4に係合部21が係合して、固定リング13の逆回転を防止する。図5(b)に示すように、符号22は、固定リング13の外周面に接着した目印としてのテープである。この目印22が外部に露出しているか否かに基づいて、前記ストッパー18の係合部21が継手本体1(接続部本体5の鍔部4)に係合しているか否かを外部から目視で確認することができる。この場合、テープ22に代えて、例えばリングを外嵌したり、塗料等を塗布してもよい。また、ストッパー18の係合部21が接続部本体5に係合している場合にテープ22等がストッパー本体19により隠蔽されるように構成してもよい。尚、ストッパー本体19は図8に示すように、一部を切断して略Cの字状に形成することも可能である。
【0035】
図9、図10に示すように、符号23は、固定リング13の内側に回転自在に嵌合される一対の押圧体である。押圧体23の一端側内周面には、図9に示すように、外側の段部24、内側の段部25が設けられている。外側の段部24は、周面部26とテーパ部27と内壁部28とからなっている。また、押圧体23の外周面には、二条の環状凸部29が管軸方向に所定間隔を有して設けられている。尚、この環状凸部29の外径寸法は、固定リング13の内径寸法よりも若干小さく設定されている。このため、押圧体23は固定リング13の内側に回転自在に嵌合することになる。また、押圧体23の厚みや硬さ等は問うものではなく、例えばシート状に形成することも可能である。更に、一部に切欠を有する正面略Cの字状や、複数に分割した割リングで押圧体23を構成してもよい。
【0036】
符号30は、図10に示すように対向配置した一対の押圧体23間に配すべく、外側の段部24に嵌合させたゴム製のシール体である。この状態では、押圧体23間に間隙42が形成される。符号31はシール体30の外周面略中央部に形成した断面略Vの字状の凹状部である。本実施形態では、以上に説明した一対の押圧体23とシール体30とで、環状シール構造Kを構成している。
【0037】
尚、図11に示すように、シール体30の凹状部31の深さAは、押圧体23のテーパ部27と内壁部28とを合わせた高さBに対して、A>Bとなるように設定している。この場合、A=Bとなるように設定しても構わない。また、各押圧体23のテーパ部27の管軸方向に対する角度Θは同角度の45°としている。一対の押圧体23にシール体30を装着した状態で、対向する押圧体23の端面間の間隙幅Cは、シール体30の凹状部31の幅Dよりも小さくなっている。更に、シール体30の端面とこれに対向する押圧体23の内側の段部25とが形成する間隙幅Eは、極力小となるべく設定している。
【0038】
また、同図の如くシール体30の内径Fは、押圧体23の内径Gよりも若干大きく設定され、該押圧体23の内径Gは、接続すべき管体の外径よりも若干大きく設定されている。また、押圧体23はジュラコン等の合成樹脂からなり、接続部本体5及び固定リング13等は塩化ビニル等の合成樹脂で構成している。
【0039】
符号32は、図3に示すように、接続部本体5の端面に環状に形成された溝33に装着したOリングである。接続部本体5に固定リング13を取付けた際に、内側に位置する押圧体23の背面が前記接続部本体5の端面に当接してOリング32によりシールが図られることになる。尚、Oリング32の表面には、潤滑剤が塗布されている。
【0040】
本実施形態は以上のような構成からなる。次に、かかる管継手を使用して給水管や排水管等を配管する場合について説明する。
【0041】
先ず、接続部受口に接続すべき管体Xを挿入する。本実施形態では、シール体30の内径Fを押圧体23の内径Gよりも若干大きく設定すると共に、押圧体23の内径Gを接続すべき管体Xの外径よりも大きく設定しており、しかもシール体30の端面とこれに対向する押圧体23の内側の段部25とが形成する間隙幅Eを極力小さく設定しているために、管体Xをスムーズに挿入することができる。
【0042】
次に、図12のように、固定リング13及びストッパー18が接続部本体5に装着され、固定リング13の内周面に押圧体23及びシール体30が嵌合され、管体Xが挿入されている状態で、固定リング13を継手本体1側(接続部本体5側)に押圧して、固定リング13の係合凸部14を係合溝7の挿入部8の終端にまで移動させる。その際、外側の押圧体23は固定リング13の環状凸部17により押圧されるので、一対の押圧体23及びシール体30は一体となって継手本体1側(接続部本体5側)へと移動し、内側の押圧体23の背面が接続部本体5の端面に当接することになる。
【0043】
更に、固定リング13を回転すると、図13のように、その係合凸部14は係合溝7の第一直線部9、傾斜部10を介して第二直線部11をスライド移動し、該第二直線部11に設けた凸部12を乗り越えてその終端にまで移動することになる。この場合、凸部12は曲面状に形成されてなるために、該凸部12と固定リング13の係合凸部14とを無理なくスムーズに係脱させることができる。また、この係脱状態は固定リング13の回転時の感触により作業者が認識できるので、作業の確実性が向上することになる。
【0044】
かかる係合凸部14が係合溝7の傾斜部10を移動する際には、固定リング13の環状凸部17により外側の押圧体23を介してシール体30が押圧される。その際、内側の押圧体23は継手本体1の接続部本体5によりその移動が規制されているので、シール体30は圧縮されて撓み、その内径Fが縮径するように内方に膨出して管体Xの外周面に圧接することになる。
【0045】
この場合に於いて、シール体30の圧縮は、押圧体23の外側の段部24のテーパ部27及び内壁部28(押圧面)により行われるのであるが、かかる押圧体23のテーパ部27と内壁部28とを合わせた押圧面の高さBは、シール体30の凹状部31の深さAよりも小さく設定されている。そのため、固定リング13を回転させると、同図のようにシール体30の凹状部31が閉じるように押圧力が加わって、シール体30が内方に膨出することなる。このため、固定リング13にさほど回転力をかけることなく、管体Xを簡易に接続することができる。
【0046】
また、各押圧体23のテーパ部27の管軸方向に対する角度Θは同角度の45°としているために、各押圧体23から略均等に圧縮力がシール体30に加わって、偏りが生じることなく内方に膨出することになる。よって、シール体30の管体Xに対する圧接面積を十分に確保できるという利点がある。
【0047】
更に、一対の押圧体23にシール体30を装着した状態で、対向する押圧体23の端面間の間隙幅Cはシール体30の凹状部31の幅Dよりも小さくなっているために、シール体30が押圧体23間から外方へ膨出して固定リング13の内周面に接触するようなことはない。それ故、固定リング13の回転トルクを増大せしめるようなこともない。また、シール体30が継手本体1の回転に支障を与えることもない。
【0048】
また、シール体30が管体Xに圧接された後は、かかる圧接によりシール体30と管体Xとが一体的となり回転せず、固定リング13と押圧体23との間で回転し得ることになる。固定リング13は各押圧体23の二条の環状凸部29でのみ接触しており、且つ押圧体23は滑り易いジュラコンで構成しているので、容易に回転させることができる。故に、継手本体1と管体Xとは相対的に回転する。従って、作業がし易くなる。
【0049】
その後、ストッパー18の係止片20を接続部本体5側にスライド移動させて、鍔部4の切欠6に係止片20を係入し、その係合部21を接続部本体5の鍔部4に係合させる。その結果、固定リング13に設けた目印22が露出し、ストッパー18が確実に機能していることを外部から目視で確認することができる。これにより、一連の管体Xの接続作業は完了する。かかる一連の接続作業は極めて簡易に行えるという利点があり、このため作業スペースが制限されるような状況下、例えば床下配管に於いても作業者に負担をかけることなく、効率良く一連の接続作業を行うことができる。また、継手本体1等は透明であるために、Oリング32の装着状態や管体Xの挿入状態等を外部から視覚で容易に確認できる。
【0050】
更に、このようにして接続された管体Xは、接続部本体5の係合溝7に設けた凸部12と固定リング13の係合凸部14との係止、及びストッパー18の鍔部4の切欠6への係入により逆回転が防止されて、管体Xの接続状態は強固に維持されることになる。従って、固定リング13が不用意に逆回転して流通流体が漏洩したり、管体Xが継手本体1から離脱するような事態を確実に阻止することができるのである。
【0051】
また、この状態に於いては、固定リング13と押圧体23とは回転自在に嵌合させているので、継手本体1は管体Xに対して回転させることが可能である。
【0052】
従って、配管の施工後にレイアウトの変更等により、給排水機器の設置場所が変更された場合、例えば継手本体1の分岐部3に配管すべき管体Xの配置に変更が生じた場合は、図14に示すように継手本体1の分岐部3を新たに接続すべき管体Xの位置に応じて適宜回転させた後、上述のように分岐部3に新たな管体Xを接続して配管を行えばよい。このようにして、配管の施工後に於けるレイアウトの変更等にも迅速且つ柔軟に対応することができる。尚、継手本体1の直管部2に配管すべき管体Xの配置に変更が生じた場合も同様にして対処することができる。
【0053】
一方、配管した管体Xを管継手から取り外す場合は、ストッパー18を管体X側、即ち接続部本体5から離脱する方向(図12の右方向)にスライドさせて、その係合部21と接続部本体5の鍔部4との係合状態を解除すると共に、ストッパー18の係止片20を前記鍔部4の切欠6から離脱させる。これが確実に行われたことは、目印22がストッパー18のストッパー本体19により隠蔽されていることで外部から確認できる。
【0054】
次に、固定リング13を先程とは逆方向に回転させるべく少し強めに回転力を加えると、接続部本体5の係合溝7に設けた凸部12は曲面状に形成されているために、該凸部12と固定リング13の係合凸部14との係合状態は解除される。更に、この係合凸部14が係合溝7の挿入部8に設けた凸状部40に相対する位置(元の位置)にまで、固定リング13を回転させる。
【0055】
尚、かかる係合凸部14が係合溝7の傾斜部10を逆方向に移動することにより、外側の押圧体23からの押圧力が除去されるために、シール体30の内径Fは拡径して元の状態に戻る。これにより、管体Xとの圧接状態が解除されるので、管体Xを管継手から容易に取り外すことができる。
【0056】
また、本実施形態に係る管継手は、全体が極めて簡易な構成からなるために、その製作も容易に且つ安価に行えるという利点も有している。
【0057】
<第二実施形態>
本発明に係る接続部受口構造は、次のようにますに適用することも可能である。以下、上記接続部受口Yを備えたますについて、図15及び図16を参照しつつ説明する。尚、第一実施形態と共通する部分については、同様の符号を付して、その説明は省略する。
【0058】
図15に示すますZは、前記継手本体1の直管部2や分岐部3に対応する、流入部50及び流出部51が形成されたます本体52と、該流入部50及び流出部51に設けられる接続部受口Yとからなっている。尚、ます本体52の上部には点検口53が開口形成されている。
【0059】
また、図16に示すますZは、ます本体52の側部に対向させて流入部50及び流出部51が形成されたものであり、これら流入部50及び流出部51には接続部受口Yが夫々設けられている。尚、ます本体52の上部には点検口53が開口形成されている。
【0060】
このように、接続部受口Yをますに適用した場合に於いても、上述したと同様の効果を得ることができる。
【0061】
この場合に於いて、ますの形状等の具体的な構成は、上記実施形態の如きものに限定されるものでない。
【0062】
<第三実施形態>
本発明に係る接続部受口構造は、パイプに適用することも可能である。図17及び図18に示すように接続部受口Yは上記実施形態と共通するので、その説明は省略する。図16に示す実施形態は接続部受口Yを別体で製作してパイプ本体60の端部に接着により一体化してものであり、図17に示す実施形態は接続部受口Yを有する別体のものをパイプ本体60の端部に挿入接着したものである。このようなパイプや前記管継手として使用する場合にあっては、モルタル等耐火剤を接続部受口やパイプ本体等の表面に塗布すれば、耐火性能をも備えることになるので、その適用範囲が広がるという利点がある。
【0063】
尚、上記実施形態に於いては、一対の押圧体23を固定リング13内に収容されるように配しているが、例えば図19に示すように継手本体1の接続部本体5内に配してもよい。主たる構成は上記各実施形態と略同様であるが、図20に示すように接続部本体5を管軸方向に延長して内部に押圧体23を収容可能な筒状部5aを延設した点が相違する。
【0064】
このように構成すると、管体Xを介して接続部本体5に作用する曲げの力に対する強度を確保できる。これにより、不用意にシール性が損なわれて、流通流体が漏洩するという事態を良好に回避できる。更に、押圧体23及びシール体30が、固定リング13及び前記筒状部5aとにより二重構造に保護されるという利点もある。
【0065】
また、この場合に於いて、筒状部5aを管軸方向に短く形成して、押圧体23が接続部本体5及び固定リング13の両方の内側に収容されるように構成することも可能である。
【0066】
また、上記各実施形態では、継手本体1から固定リング13の離脱を防止するためのストッパー18を採用している。しかるに、ストッパー18がなくても、継手本体1から固定リング13の離脱を防止する手段は別途有しているために、かかるストッパー18は必ずしも設ける必要はない。但し、ストッパー18を採用する場合は、例えば図21に示すように、係止片20を断面楕円形状からなる棒状に形成することも可能である。
【0067】
また、ストッパー18の有無に拘らず、固定リング13を継手本体1に固定する手段としては、例えば次のようなものが考えられる。即ち、図22(a)に示すように、接続部本体5の鍔部4と固定リング13の鍔部15とをボルト70及びナット71等からなる締結具72で固定するものがある。更に、同図(b)に示すように固定リング13の鍔部15に断面略Lの字状のストッパー片73を回動自在に設けると共に、該ストッパー片73の先端側に設けた凸部74が嵌合可能な凹部75を接続部本体5の鍔部4に設けて構成することも可能である。また、図23(a)に示すように接続部本体5の外周面に環状に凹凸部76を形成すると共に、これに凹凸嵌合する環状の凹凸部77を固定リング13の内周面に形成してもよい。この場合は、固定リング13を押圧して、その凹凸部77を接続部本体5の凹凸部76に嵌合せしめて装着する。更に、同図(b)に示すように固定リング13の鍔部15に回動自在に断面略コの字状の複数のストッパー片78を設け、これを回動することにより固定リング13の鍔部15と接続部本体5の鍔部4とが圧接状態で固定されるように構成してもよい。また、同図(C)に示すように、断面略コの字状のバネ片等からなるクリップ79を鍔部15と接続部本体5の鍔部4とに外嵌させて、圧接するように固定してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、ストッパー18を管体Xの挿入方向から装着するように構成しているが、図24に示すように、これとは逆方向Lから装着するように構成することも可能である。これは、例えば管体X側で作業スペースが確保できないような場合に有用である。
【0069】
また、押圧体23は上記実施形態の如く、必ずしも一対で構成する必要はない。
【0070】
更に、上記各実施形態とは異なり、図25(a)に示すように接続部本体5の外周面側に係合凸部14を形成し、同図(b)に示すように固定リング13の内周面側に係合溝7を形成して構成しても構わない。
【0071】
また、接続部本体5の係合溝7を図26に示すように、管軸方向の挿入部8のみで構成し、該係合溝7からの固定リング13の係合凸部14の離脱防止手段として、係合溝7の奥部に該係合凸部14に凹凸嵌合する凹部80を形成してもよい。この場合は、固定リング13を管軸方向に押圧して装着する。これによると、上記実施形態の場合と比較して装着作業が簡易に行えるという利点がある。尚、この場合も接続部本体5に係合凸部14を形成すると共に、固定リング13に係合溝7を設けて構成してもよいのは、上記実施形態と同様である。
【0072】
更に、上記実施形態にあっては、シール体30の外周面に凹状部31を形成し、且つその深さA以下となるように押圧体23の押圧面の径方向の高さBを設定している。しかるに、本発明は決してこれに限定されるものではない。例えば、シール体30は凹状部31を有しない一般的なOリングで構成したり、或いは前記凹状部31を有するシール体30の内周面に環状の凹凸部(図示せず)を周方向に形成等しても何ら構わない。
【0073】
尚、シール体30としてOリングで構成したものを図27に示す。この場合は、固定リング13と継手本体1の接続部本体5によりシール体30が圧縮されて、該シール体30が管体Xの外周面に圧接されることになる。
【0074】
更に、本発明に係る接続部受口構造は、上記実施形態のように継手本体1が分岐部3を有している場合に特に有用であるが、本発明は分岐部3を有しない直管部2のみで構成した継手本体1にも勿論適用可能である。更に、一般に呼称されているソケット、エルボ、チーズ、インクリーザー等の管継手の接続部に適用できるものである。尚、上記接続部受口を有する管継手を用いてますの流入側接続部にパイプを接続することを妨げるものではない。
【0075】
その他、継手本体1や固定リング13の形状等の具体的な構成も、本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、管体に配管接続される接続部受口構造として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】接続部受口構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】継手本体の一部を示す正面図である。
【図3】固定リングを接続部本体に取付けた状態を示す断面図である。
【図4】接続部本体の係合溝を示す正面図である。
【図5】(a)は固定リングの平面図であり、(b)はその断面図である。
【図6】(a)はストッパーの平面図であり、(b)はその正面図である。
【図7】ストッパーの他の実施形態を示し、(a)は平面図であり、(b)はその正面図である。
【図8】ストッパーの他の実施形態を示し、(a)は平面図であり、(b)はその正面図である。
【図9】(a)は押圧体の平面図であり、(b)はその断面図である。
【図10】押圧体にシール体を装着した状態を示す断面図である。
【図11】押圧体にシール体を装着した状態を示す断面図である。
【図12】管継手に管体を挿入した状態を示す断面図である。
【図13】管継手に管体を挿入して固定した状態を示す断面図である。
【図14】管継手の使用状態を示す正面図である。
【図15】ますの一実施形態を示す断面図である。
【図16】ますの他の実施形態を示す断面図である。
【図17】パイプの一実施形態を示す断面図である。
【図18】パイプの他の実施形態を示す断面図である。
【図19】他の実施形態に係る管継手と管体との固定状態を示す断面図である。
【図20】他の実施形態に係る接続部本体を示す正面図である。
【図21】ストッパーの他の実施形態を示し、(a)は平面図であり、(b)はその断面図である。
【図22】(a)及び(b)は接続部本体と固定リングの固定した状態を示す断面図である。
【図23】(a)、(b)及び(c)は接続部本体と固定リングの固定した状態を示す断面図である。
【図24】他の実施形態に係る管継手と管体との固定状態を示す断面図である。
【図25】(a)は他の実施形態に係る接続部本体の正面図、(b)は同固定リングの断面図である。
【図26】他の実施形態に係る接続部本体の正面図である。
【図27】他の実施形態に係る管継手と管体との固定状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 継手本体
5 接続部本体
7 係合溝
13 固定リング
14 係合凸部
18 ストッパー
23 押圧体
30 シール体
31 凹状部
X 管体
Y 接続部受口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体が挿入される接続部本体と、
該接続部本体に装着される固定リングと、
該固定リング及び前記接続部本体のうち少なくとも何れか一方の内側且つ前記管体の外側に設けられ、前記固定リングが前記接続部本体に装着される際に該固定リングから管軸方向の力を受ける押圧体と、
該固定リング及び前記接続部本体のうち少なくとも何れか一方の内側且つ前記管体の外側に設けられ、該押圧体により管軸方向の力を受けて圧縮され、前記管体の径方向の内方に膨出して前記管体の外周面に圧接するシール体と、を備え、
前記シール体が前記管体の外周面に圧接した状態に於いて、該シール体、押圧体及び管体が一体となって前記接続部本体に対して回転し得るように構成されてなることを特徴とする接続部受口構造。
【請求項2】
前記接続部本体に対する前記固定リングの離脱を防止するストッパーを備えた請求項1記載の接続部受口構造。
【請求項3】
前記押圧体が、前記シール体を管軸方向の両側から挟む一対の環状体からなっている請求項1又は2記載の接続部受口構造。
【請求項4】
前記固定リングを接続部本体に取付けるべく、該接続部本体の外周面又は前記固定リングの内周面の何れか一方に係合溝が形成され、且つ該係合溝に係合可能な係合凸部が前記接続部本体の外周面又は固定リングの内周面の何れか他方に形成された請求項1乃至3の何れか一つに記載の接続部受口構造。
【請求項5】
前記シール体の外周面に環状の凹状部が周方向に形成され、該凹状部の深さ以下になるように前記押圧体の押圧面の径方向の高さが設定された請求項1乃至4の何れか一つに記載の接続部受口構造。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つに記載の接続部受口構造を備えた管継手。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか一つに記載の接続部受口構造を備えたます。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか一つに記載の接続部受口構造を備えたパイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−59642(P2010−59642A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224684(P2008−224684)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】