搬送据付装置及びコンクリート製品の据付方法
【課題】周辺環境への負荷を低減しつつ、現場での施工性を有効に向上させたコンクリート製品の搬送据付装置を提供する。
【解決手段】搬送据付装置は、先端補助輪2と、前輪3、補助輪4とを選択使用して障害物であるボックスカルバートの底版を好適に乗り越えさせる乗り越え手段を構成することにより、荷役装置70とともに、正確且つ迅速なボックスカルバートの搬送を実現しているものである。その乗り越え手段として、前輪3を昇降させるための前輪昇降機構30と、前記補助輪4を昇降させるための補助輪昇降機構40とを備えた。
【解決手段】搬送据付装置は、先端補助輪2と、前輪3、補助輪4とを選択使用して障害物であるボックスカルバートの底版を好適に乗り越えさせる乗り越え手段を構成することにより、荷役装置70とともに、正確且つ迅速なボックスカルバートの搬送を実現しているものである。その乗り越え手段として、前輪3を昇降させるための前輪昇降機構30と、前記補助輪4を昇降させるための補助輪昇降機構40とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品を所定の位置まで搬送し、据付けるのに好適に利用される搬送据付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水道、水路に及び地下道等を構築するコンクリート製品の施工方法において、橋梁下、高架下で交通量が多い等開削工法を行うことができない場合、高圧線など上空に制約がある場合、道路幅員が狭く重機設置場所が限定されている場合、両側の矢板との間隔が狭い場合及び老朽化した下水道を更正するため管路内に施工する場合など、移動式クレーン(重機)により直接吊り降ろして据付けることができない場合に、ボックスカルバートなどのコンクリート製品を所定の位置まで搬送し、据付ける搬送据付装置を利用することが知られている。
【0003】
上記のような施工条件の場合、次の3つの態様をなす搬送据付装置を利用した施工方法がこれまで知られている。
【0004】
まず挙げられるのは搬送据付装置として圧縮空気を噴射する台、すなわちエアーキャスターを用いる施工方法である(例えば、特許文献1参照)。具体的に説明すると、斯かる施工方法は、予め幅方向中央部に切込み等の凹部を設けておいた基礎コンクリートにコンクリート製品を荷下ろし、当該コンクリート製品の下に位置する凹部にエアーキャスターを設置して、空気圧縮機からエアホースを接続して送られてきた空気を台から噴出させてコンクリート製品を持ち上げ搬送し、吹き出し量を調整しながら所定の位置に据付けた後、エアーキャスターを凹部から抜き取るという方法である。
【0005】
次に挙げられるのは搬送据付装置としてコンクリート製品を油圧ジャッキで昇降させる昇降機構並びに水平方向へのスライド機構を有するモータ付き台車を用いる施工方法である(例えば、特許文献2参照)。具体的に説明すると、斯かる施工方法は、まず基礎コンクリートに予めレールを埋め込み、別体であるエンジン発電機からキャップタイヤケーブルで接続した前記レール上を走行する前記モータ付き台車にコンクリート製品を積載し、モータ付き台車を走らせて所定の位置までコンクリート製品を搬送し、スライド機構及び昇降機構を作動させてコンクリート製品を据付け、しかる後、モータ付き台車を元の位置までレール上を走行させることにより後退させるという方法である。
【0006】
さらに挙げられるのは、搬送据付装置としてコンクリート製品を吊り上げ可能なシャーシに後輪、前輪及び前輪を補助する補助輪を設けた搬送台車を用いる施工方法である(例えば、特許文献3参照)。具体的には、斯かる施工方法は次のようなものである。別体であるエンジン発電機からキャップタイヤケーブルで搬送台車に接続した状態で搬送台車を、その前端部がコンクリート製品の間際になるまで前進させる。その位置で前輪と補助輪とを動作させることによって補助輪をコンクリート製品の底版に乗せて前輪を持ち上げる。今度は前輪に代わって補助輪と後輪で搬送台車を前進させ、前輪が製品の底版上になった時点で再びシーソー動作により前輪を底版上に乗せ補助輪を持ち上げる。そして、前輪と後輪とによって前輪が製品の前方の間際になるまで前進させ、補助輪を製品の前方の基礎コンクリート上に下ろして前輪を持ち上げ、補助輪と後輪で前輪が製品の前方の基礎コンクリート上になるまで前進させた時点で、前輪を降ろす。そしてコンクリート製品の内部すなわち底版上部にシャーシを位置付けた状態で、コンクリート製品の底版に埋め込んだインサート又は吊り具を、シャーシ側に設けた昇降及びスライド機構を有する吊り治具に接続して製品を吊り上げる。この状態で前輪と後輪で前輪が既設の製品の間際になるまでコンクリート製品を前進させる。その後、補助輪を既設のコンクリート製品の底版に乗せて前輪を持ち上げ、前輪に代わって補助輪と後輪でさらに前進させる。しかる後、所定の位置にまでコンクリート製品を搬送すれば、シャーシ側に設けた昇降及びスライド機構によりコンクリート製品を据付ける。次にコンクリート製品に設けたインサートまたは吊り具をシャーシ側の吊り治具から取り外す。そしてその後は後輪と補助輪で搬送台車を後退させ、前輪がコンクリート製品の外側まで後退した時点で前輪を基礎コンクリート上に降ろし、今度は前輪と後輪で元の位置まで戻る。斯かる施工方法は以上の工程を繰り返すことにより、コンクリート製品を順次施工していくものである。
【0007】
しかしながら、上述した施工方法のうち、エアーキャスターを用いる施工方法では、幅方向中央に切込み等の凹部を入れた基礎コンクリートを予め打設しなければならない。またモータ付き台車を用いる施工方法では基礎コンクリートの所定の位置にレールを埋設またはインサートなどでレールを固定するなど基礎コンクリートに対する格別の加工が必要であった。
【0008】
一方、エアーキャスターを用いる施工方法は製品の搬送中はエアホースが接続されていないと搬送装置は作動しない。加えて、モータ付き台車を用いる施工方法及び補助輪を設けた搬送台車を用いる施工方法ではキャップタイヤケーブルが接続されていないと搬送装置は作動しない。
【0009】
つまり、上述したような搬送据付装置及び当該搬送据付装置を用いたコンクリート製品の施工方法では、基礎コンクリートを施工する際の自由度、並びに、基礎コンクリート上での搬送据付装置の動作の自由度が、自ずと制限されたものとなっているのが現状である。
【0010】
他方、単に基礎コンクリート上での搬送据付装置の動作の自由度を向上させるべく、エンジン発電機を搬送据付装置自体に搭載し、自走させるという方法も考えられるが、そのようなものであると、エンジンからの温室効果ガス(CO2)等の排ガスが施工現場内に充満することになり、当該施工現場のみならず、エンジンの騒音も含め、周辺環境への負荷が増大してしまうという不具合を起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−228881号公報
【特許文献2】特開2000−328636号公報
【特許文献3】特開2003−182987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、温室効果ガス(CO2)を削減する等、周辺環境への負荷を低減しつつ、現場での施工性を有効に向上させたコンクリート製品の搬送据付装置並びにコンクリート製品の据付方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0014】
すなわち本発明に係る搬送据付装置は、台車と、この台車に設置され所定箇所に据付けるべきコンクリート製品を荷役するための荷役装置と、この荷役装置により担持された前記コンクリート製品を据付けるべき箇所にまで搬送すべく前記台車を自走させる搬送装置と、前記台車に搭載され前記荷役装置及び搬送装置を作動させるための電力を供給するバッテリとを具備してなることを特徴とする。
【0015】
また本発明に係るコンクリート製品の据付方法は、台車に搭載されたバッテリから電力が供給された前記台車に設置された搬送装置により前記台車をコンクリート製品が載置された位置まで自走させる工程と、前記バッテリから電力が供給された前記台車に設置された荷役装置により前記コンクリート製品を荷役する工程と、荷役装置により前記コンクリート製品を担持した状態で前記台車を前記搬送装置により自走させることにより前記コンクリート製品を据え付けるべき箇所まで搬送する工程と、前記荷役装置により前記コンクリート製品を据え付けるべき箇所に据え付ける工程とを有することを特徴とする。
【0016】
このようなものであれば、上述の施工方法とは異なり、エアホースやキャップタイヤケーブル等をつなぐこと無く基礎コンクリート上を自走することができるので、基礎コンクリートに対する格別の加工を有効に回避するとともに、基礎コンクリート上の動作の自由度を有効に向上させることができる。加えて、バッテリによる電力で作動するため、施工現場での温室効果ガス(CO2)の排出量の削減に寄与し得るとともに、エンジン発電機による騒音の発生も有効に回避することができる。その結果、周辺環境への負荷を低減しつつ、現場での施工性を有効に向上させることができる。
【0017】
また、基礎コンクリートへの格別の加工が不要な好ましいものとして、前記台車が、前輪と後輪と補助輪とを備えたものであり、前記搬送装置が前輪及び後輪の少なくとも一方を回転駆動する自走手段と、前記前輪と補助輪とを選択使用して障害物を乗り越えさせる乗り越え手段とを備えたものを挙げることができる。
【0018】
そして、搬送するコンクリート製品の具体的な態様として、当該コンクリート製品が暗きょ製品または開きょ製品であり、前記障害物が、前記暗きょ製品または開きょ製品の底版である態様を挙げることができる。
【0019】
前記底版を、より乗り越えやすいものとするためには、乗り越え手段を、前記前輪を昇降させるための前輪昇降機構と、前記補助輪を昇降させるための補助輪昇降機構とを備えたものとすることが望ましい。
【0020】
そして補助輪昇降機構の具体的なものとして、前記台車を、前記前輪の前後に位置させて二つの補助輪を設けており、前記補助輪昇降機構が前記前輪よりも後の補助輪を昇降させるものを挙げることができる。
【0021】
前輪が底版を乗り越えた状態で小さな半径の曲線に対応できる換向性を実現するためには、自走手段を、前記後輪を回転駆動するためのモータと、前記後輪の向き変更するためのステアリング機構を備えたものとすることが望ましい。
【0022】
また、コンクリート製品が曲線部を構成するものであっても、コンクリート製品に干渉することなく容易に据付を行うためには、前記台車が、その先端のコーナーを切り落とすことにより形成した尖端部を備えていることが好ましい。
【0023】
そして、暗きょ製品を効率良く搬送するためには、前記コンクリート製品が暗きょ製品であり、前記荷役装置が前記暗きょ製品における頂版の内面に添接する当接体とこの当接体を昇降させて前記暗きょ製品を荷役する荷役用昇降機構とを備えたものであることが望ましい。
【0024】
そして、据付時の微妙な左右方向のズレを解消して正確な据付を行うためには、前記荷役装置を、前記当接体を左右方向に移動させるための荷役用スライド機構をさらに備えたものとすることが望ましい。
【0025】
さらに、据付時のコンクリート製品の角度すなわち方向のズレをも容易に修正し、さらなる据付の正確性を担保するための構成として、前記荷役装置を、前後方向に間隔を開けて二組設けられており、一方の荷役装置の荷役用スライド機構と他方の荷役装置の荷役用スライド機構とを相互に独立して作動させ得るように構成することが望ましい。
【0026】
そして、台車が前記コンクリート製品を検出し得る検出手段を更に有するとともに、前記搬送装置が前記検出手段が前記コンクリート製品を検出した際に前記台車の自走を停止させる停止手段を更に有するものであれば、台車がコンクリート製品に衝突したり、コンクリート製品上にある台車がコンクリート製品から脱落したりするという不具合を未然に防止できるものとなる。すなわち、安全で正確な搬送及び走行が可能となり、作業の省力化、省人化により施工性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、基礎コンクリートに対する格別の加工を有効に回避するとともに、基礎コンクリート上の動作の自由度を有効に向上させることができる。加えて、バッテリによる電力で作動するため、施工現場での温室効果ガス(CO2)の排出量の削減に寄与し得るとともに、エンジン発電機による騒音の発生も有効に回避することができる。その結果、周辺環境への負荷を低減しつつ、現場での施工性を有効に向上させたコンクリート製品の搬送据付装置並びにコンクリート製品の据付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る側面図。
【図2】同平面図。
【図3】同実施形態に係る機能ブロック図。
【図4】同実施形態に係る前輪昇降機構の説明図
【図5】同実施形態に係る荷役装置の説明図。
【図6】同荷役装置の分解斜視図。
【図7】同実施形態に係る補助輪昇降機構の説明図。
【図8】同実施形態に係る動作説明図。
【図9】同上。
【図10】同上。
【図11】同上。
【図12】同上。
【図13】同上。
【図14】同上。
【図15】同上。
【図16】同上。
【図17】同上。
【図18】同上。
【図19】同上。
【図20】同上。
【図21】同上。
【図22】同上。
【図23】同上。
【図24】同上。
【図25】同実施形態に係る作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
本実施形態に係る搬送据付装置は、現場において移動式クレーン(重機)により直接降ろして据付けることができない場合等に用いられ、例えばコンクリート製品であるボックスカルバートBを所定の位置まで搬送し、据付けるためのものである。
【0031】
<構成説明>
ここで、本実施形態に係る搬送据付装置は、台車1と、この台車1に設置され所定箇所に据付けるべきコンクリート製品のひとつである暗きょ製品としてのボックスカルバートBを主に荷役するための荷役装置70と、この荷役装置70により担持されたボックスカルバートBを据付けるべき箇所にまで搬送すべく前記台車1を自走させる搬送装置たるモータ50と、台車1に搭載され荷役装置70及びモータ50を作動させるための電力を供給するバッテリ8とを具備してなることを特徴とするものである。
【0032】
以下、斯かる搬送据付装置の構成について、図1ないし図7を用いて説明する。この搬送据付装置は、上述の台車1、この台車1に搭載した荷役装置70、モータ50、バッテリ8の他、後述する前輪昇降機構30及び補助輪昇降機構40をも併せて台車1に搭載したものである。
【0033】
台車1は、図1及び図2に示すように、前後方向に連結されたシャーシ前半部1a及びシャーシ後半部1bとを主に有しているものである。
【0034】
シャーシ前半部1aは、その先端のコーナーを切り落とすことにより前端部を平面視凸状に形成した尖端部1cを形成するとともに、この尖端部1cに位置付けた先端補助輪2から後方に順に、ボックスカルバートBを検出する為の本発明の検出手段である底版センサS、前輪3、荷役装置70を搭載するための前側荷役部7a、補助輪4、後側荷役部7b、及びバッテリ8を載置するためのバッテリ載置部8aを配している。先端補助輪2は、ボックスカルバートBの底版B1の上面B12に略等しい高さ位置に設定されて配されている。底版センサSは、ボックスカルバートBの底版B1が近接した際にこれを検出するとともに、シャーシ後半部1b側に配された電磁ブレーキ(図3)を作動させて台車1を停止させることによりボックスカルバートBと台車1との衝突を回避することで、後述の通りボックスカルバートBの正確な搬送・据付に供するためのものである。
【0035】
シャーシ後半部1bは、本発明の自走手段にあたるモータ50と、このモータ50により回転駆動される後輪5と、この後輪5に換向性を付与するためのステアリング機構STと、これらモータ50、ステアリング機構STのみならず、搬送据付装置全体を操作するための操作パネルを備えた運転台6と、前記底版センサSがボックスカルバートBを検出した際に後輪5の駆動を停止させる本発明の停止手段である電磁ブレーキ(図3)とを具備するものである。
【0036】
そして図3に示すようにこの搬送据付装置は、シャーシ前半部1aに備えたバッテリ8の電力により、シャーシ後半部1bのモータ50、及び油圧により動作するステアリング機構STを作動させるための別のモータ、そして上述の電磁ブレーキを作動させるための電力を供給している。また当該バッテリ8は、シャーシ前半部1aには、後述する荷役装置70、前輪昇降機構30及び補助輪昇降機構40を作動させるための、後述する前輪昇降用シリンダ31、補助輪昇降用シリンダ41、荷役装置70のスライドシリンダ73並びに昇降シリンダ76を作動するための油圧ポンプを作動させるためのモータに電力を供給しているものである。
【0037】
しかして本実施形態に係る搬送据付装置は、先端補助輪2と、前輪3、補助輪4とを選択使用して障害物であるボックスカルバートBの底版B1を好適に乗り越えさせる乗り越え手段を構成することにより、上述の荷役装置70とともに、正確且つ迅速なボックスカルバートBの搬送を実現しているものである。特に本実施形態ではその乗り越え手段として、前輪3を昇降させるための前輪昇降機構30と、前記補助輪4を昇降させるための補助輪昇降機構40とを備えたものとしている。
【0038】
以下、この乗り越え手段と荷役装置70について、換言すれば、台車1の前方に位置する前輪昇降機構30、荷役装置70そして補助輪昇降機構40の順に図4ないし図7を用いて説明していく。
【0039】
前輪昇降機構30は、図4に示すように、対をなす前輪3と、前輪3を昇降させるための前輪昇降用シリンダ31と、前輪3をシャーシ前半部1aに対して支持するとともに、シャーシ前半部1aに対してスライダ33を介して前輪3を昇降可能に支持するための前輪保持部材32と、シャーシ前半部1aに取り付けられて前輪保持部材32を摺動可能に支持するための前輪保持レール34と、前輪昇降用シリンダ31をシャーシ前半部1aに確実に取り付けておくためのシリンダ保持部35とを有している。そして前輪昇降用シリンダ31は、シリンダ保持部35に保持されたシリンダ本体31aと、このシリンダ本体31aから下方に突没するシャフト31bと、このシャフト31bの先端部において前輪3の車軸3aを支持する接続部31cとを有している。
【0040】
そして、斯かる前輪昇降機構30は前輪昇降用シリンダ31が操作されると、シャフト31bの昇降に応じて接続部31c、車軸3aを介して前輪3及び前輪保持部材32が昇降する。その際、前輪保持部材32に設けたスライダ33が前輪保持レール34内を正確に上下に摺動することにより、正確な前輪3の昇降が実現される。
【0041】
荷役装置70は、図1及び図2に示すように、シャーシ前半部1aにおける前側荷役部7aと後側荷役部7bとの2箇所に前後対象にそれぞれ配置されているものである。そしてこの荷役装置70は、図5及び図6に示すように、当接体たる荷役台7をボックスカルバートBの頂版B2の下面B22に接しさせてボックスカルバートBを持ち上げるための荷役用昇降機構70bと、当接体を左右方向に移動させるための荷役用スライド機構70aとを主に備えている。そして本実施形態では、前方の荷役装置70の荷役用スライド機構70aと後方の荷役装置70の荷役用スライド機構70aとを相互に独立して作動させ得るように構成している。
【0042】
荷役用スライド機構70aは、荷役台7と、荷役台7を直接下方から支持する基台部71と、基台部71に設けられたスライドレール72と、基台部71の下方に取り付けられたスライドシリンダ73とを主に有している。そしてスライドシリンダ73は、基台部71の下側に取り付けられたシリンダ本体73aと、このシリンダ本体73aから左右に延びるとともに左右に動作するシャフト73bと、このシャフト73bの先端に位置付けられ、基台部71の開口を介して荷役台7に取り付けられる取付部73cとを有している。そしてこのスライドシリンダ73が操作されると、シャフト73bの動作とともに取付部73cが荷役台7を左右に動作させ得るものとなっている。
【0043】
荷役用昇降機構70bは、上述した荷役用スライド機構70aごと上下に昇降させるものである。そしてこの荷役用昇降機構70bは、基台部71を支持するとともにシャーシ前半部1aに対してスライダ75を介して図示しないレールに対して昇降可能に動作し得る保持部材74と、この保持部材74を昇降させる為の昇降シリンダ76と、この昇降シリンダ76によって直接昇降動作される昇降部材77と、この昇降部材77の両側に取り付けられた対をなす昇降プーリ78と、基端側をシャーシ前半部1aに固定されるとともに昇降プーリ78に架け渡され、先端が保持部材74の吊り下げ部74aに固定されたチェーン79とを有している。そして昇降シリンダ76は、シャーシ前半部1aに固定されたシリンダ本体76aと、昇降部材77を持ち上げるためのシャフト76bとを有している。
【0044】
そして昇降シリンダ76が操作されることにより昇降部材77が昇降プーリとともに一定寸法上昇すると、昇降プーリ78から掛け回されたチェーン79に吊り下げ部74aで吊り下げられた保持部材74は前記一定寸法の2倍の寸法上昇だけ、チェーン79に引っ張られて上昇することになる。すなわち本実施形態では、荷役用昇降機構70bにおいて昇降プーリ78及びチェーン79による動滑車の原理を適用することにより、昇降シリンダ76の2倍のストロークで荷役台7を昇降させることで、シャーシ前半部1aのスペースの有効利用を成し得たものとなっている。
【0045】
補助輪昇降機構40は、図7に示すように、車軸4aにより接続された対をなす補助輪4と、シャーシ前半部1aに強固に保持されながら補助輪4を昇降させるための補助輪昇降用シリンダ41と、シャーシ前半部1aに対して補助輪4をスライダ43を介して昇降可能に支持するとともに、補助輪昇降用シリンダ41に接続支持されている被支持板45を有する補助輪保持部材42と、シャーシ前半部1aに取り付けられて補助輪保持部材42を摺動可能に支持するための補助輪保持レール44とを有している。そして補助輪昇降用シリンダ41は、シャーシ前半部1aに強固に保持されたシリンダ本体41aと、このシリンダ本体から下方に突没して被支持板45に例えば剛結されるシャフト41bとを有している。
【0046】
そして、斯かる補助輪昇降機構40は補助輪昇降用シリンダ41が操作されると、シャフト41bの昇降に応じて被支持板45を介して補助輪4及び補助輪保持部材42が昇降する。その際、補助輪保持部材42に設けたスライダ43が補助輪保持レール44内を正確に上下に摺動することにより、正確な補助輪4の昇降が実現される。
【0047】
<作動説明>
続いて、上述した構成をなす搬送据付装置によって実際の施工現場である基礎コンクリートK上でボックスカルバートBを据付ける据付方法について、図8ないし図24を用いて説明する。
【0048】
しかして本実施形態に係るコンクリート製品たるボックスカルバートBの据付方法は、台車1に搭載されたバッテリ8から電力が供給された搬送装置すなわちモータ50により台車1をボックスカルバートBが載置された位置まで自走させる工程と、バッテリ8から電力が供給された荷役装置70によりボックスカルバートBを荷役する工程と、荷役装置70により担持されたボックスカルバートBを据え付けるべき箇所まで搬送すべく台車1をモータ50により自走させる工程と、荷役装置70によりボックスカルバートBを据え付けるべき箇所に据え付ける工程とを有することを特徴とする。
【0049】
まず図8は、搬送目的であるボックスカルバートBを図示しないクレーン等により所要の据付位置とは離れた箇所に載置された状態である。そして同図に示す状態からモータ50を駆動させてボックスカルバートBに近接するまでは、時速約3.6kmの「通常走行モード」で走行する。そしてカルバート検出センサが前輪3付近に底版B1の端面B11が位置することを検出すると、自動的に電磁ブレーキが作動して前輪3と端面B11との衝突を回避するとともに、図示しない操作パネルに設けた表示灯が点灯することにより運転者に端面B11が近接している旨を伝えるものとなっている。そしてその後の動作は全て前記「通常走行モード」から、時速約0.4kmで走行する「微速走行モード」へと切り換えて運転される。続いて図9に示すように先端補助輪2が底版B1の上面B12上に位置していることを確認すると、図10に示すように、先端補助輪2をボックスカルバートBの底版B1に乗せて前輪昇降機構30によって前輪3を上面B12よりも上に位置するまで上昇させる。
【0050】
その後、図11に示すように、底版B1上にある先端補助輪2と基礎コンクリートK上の後輪5によってさらに前進させる。しかる後、図12に示すように、補助輪4が製品の底版B1上になった時点で、補助輪昇降機構40を作動させることによって、補助輪4を底版B1上に設置させ先端補助輪2を浮上させる。そして図13に示すように、補助輪4と後輪5とで前輪3が底版B1を越える位置まで台車1を前進させる。
【0051】
そして図14に示すように、前輪昇降機構30を再び作動させることにより、前輪3をボックスカルバートBの前方の基礎コンクリートK上に降ろして補助輪4を底版B1の上面B12から浮上させる。この図15に示す状態で前輪3は底版B1を乗り越えたことになり、ボックスカルバートBの内部にシャーシ前半部1aを侵入させた状態となる。そして次は図16に示すように、前後の荷役装置70をそれぞれ作動させることによってボックスカルバートBの頂版B2の内面を持ち上げ荷役する。
【0052】
次は図17に示すように、ボックスカルバートBを持ち上げた状態すなわち担持した状態を維持しながら前輪3と後輪5で前輪3が既設のボックスカルバートBの間際になるまで前進させる。このとき、底版センサSが既設のボックスカルバートBへの近接を上述同様に検知することにより、前輪3が既設のボックスカルバートBの底版B1に衝突することを有効に回避し得るものとなっている。そして図18に示すように、先端補助輪2を既設製品の底版B1に乗せて前輪3を持ち上げ、図19に示すように前輪3に代わって先端補助輪2と後輪5で前進させる。この図19に示す状態では、運転者は前後の荷役装置70における荷役用スライド機構70aを運転者が適宜動作することにより、ボックスカルバートBの横方向のズレ及び当接角度のズレを解消することができる。
【0053】
そして図20に示すように、所定の位置にボックスカルバートBを位置付けた後、荷役装置70を操作することによりボックスカルバートBを降下させると図21に示すように、正確な位置にボックスカルバートBを据付けることができる。その後は図22に示すように、後輪5と先端補助輪2で後退する。
【0054】
図23に示すように前輪3がボックスカルバートBの外に出た時点で再び底版センサSが検知することにより台車1が電磁ブレーキにより停止すると、図24に示すように、運転者は前輪3を基礎コンクリートK上に降ろし前輪3と後輪5で元の位置まで戻る。このように、底版センサSは前輪3の底版B1への衝突のみならず、先端補助輪2の底版B1からの脱落を回避するためにも、有効に供される。
【0055】
以上の一連の工程を繰り返すことにより、ボックスカルバートBを順次据付ける作業を進めていく。
【0056】
また本実施形態に係る荷役据付装置は、図25に示すような曲線部を構成するボックスカルバートBであっても好適に据付けることができる。すなわち同図に示すように、シャーシ前半部1aに尖端部1cを設けることによって、ボックスカルバートB据付時にシャーシ前半部1aの先端が、ボックスカルバートBの側板B3の内面B32に干渉することなく安全且つスムーズな据付が可能なものとなっている。
【0057】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る搬送据付装置及びボックスカルバートBの据付方法は、バッテリ8を搭載した自走式とすることにより、従来のエアホースやキャップタイヤケーブル等をつなぐこと無く基礎コンクリートK上を自走することができるので、基礎コンクリートKに対する格別の加工を有効に回避して、基礎コンクリートK上の動作の自由度が格段に向上したものとなっている。加えて、バッテリ8による電力で作動するため、施工現場での温室効果ガス(CO2)の排出量の削減に寄与し得るとともに、エンジン発電機による騒音の発生も有効に回避し得たものとなっている。その結果、周辺環境への負荷を低減しつつ、現場での施工性を有効に向上させている。
【0058】
そして本実施形態では底版B1を、より乗り越えやすいものとするために、乗り越え手段を、前記前輪3を昇降させるための前輪昇降機構30と、前輪3よりも後側に補助輪4を設け、この補助輪4を昇降させる補助輪昇降機構40を備えることにより、特に前輪3が底版B1を乗り越える際の操作を、上記特許文献3に記載のものに比べて格段に簡便且つ安全なものとしている。
【0059】
また特に本実施形態では、前輪昇降機構30及び補助輪昇降機構40ともに、鉛直方向の動作としているので、特に特許文献3に開示されているものと比較しても、シャーシ前半部1aの長さを短くすることによって、基礎コンクリートK上の機動性すなわち、小回り性をより向上させたものとなっている。
【0060】
さらに本実施形態では、運転席に近い後輪5の向きを変更するためのステアリング機構STを備えることにより、運転者による運転をより好適に行えるとともに、ボックスカルバートBを移動させる際に前輪3に近付けて配置したボックスカルバートBの回転半径をより小さくすることができるので、精密な据付をより容易なものとしている。
【0061】
加えて本実施形態では、ボックスカルバートBが接続部に角度をなす曲線部を構成するものであっても、既設のボックスカルバートBの側版に干渉することなく容易に据付を行うために、シャーシ前半部1aの先端のコーナーを切り落とすことにより尖端部1cを形成したものとしている。
【0062】
また、本実施形態では、荷役装置70が、荷役台7をボックスカルバートBの頂版B2の下面B22を持ち上げる態様とすることで、運搬の際にボックスカルバートBにインサート、吊金具などの施工を要することなく、簡単且つ迅速な搬送・据付を行い得るものとなっている。
【0063】
そしてこの荷役装置70は荷役用スライド機構70aを備えているので、据付時の微妙な左右方向のズレを解消して正確な据付を行い得るものとなっている。さらに、この荷役装置70は前後方向に複数すなわち2つ設けられ、そして前述の荷役用スライド機構70aもそれぞれ独立して動作するので、ボックスカルバートBの単なる左右のズレのみならず、ボックスカルバートBの水平方向の向きすなわち角度をも、荷役装置70の操作のみで有効に解消し、より正確な据付に供し得るものとなっている。
【0064】
加えて本実施形態では、ボックスカルバートBの底版B1を検知する底版センサSと、底版センサSがボックスカルバートBの底版B1を検知した際に台車1を停止させる電磁ブレーキ(図3)を設けているので、前進時の前輪3の底版B1への衝突を確実に回避し得るとともに、後退時には先端補助輪2の底版B1からの脱落を未然に防止している。このような構成により本実施形態に係る搬送据付装置は、安全で正確な走行並びにボックスカルバートBの搬送を可能なものとし、ひいては省力化、省人化を実現して、施工性の向上を実現したものとなっている。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態ではコンクリート製品として暗きょ製品である筒状のボックスカルバートを搬送する態様のみを開示したが、勿論、開きょ製品に適用しても良い。開きょ製品に適用する場合は予め底版に埋め込んだインサートまたは吊り具と、荷役台側の図示しない吊り治具とを接続して製品を吊り上げる態様を挙げることができる。さらに上下分割型のボックスカルバートの上側部分を搬送する場合であっても、本発明の搬送据付装置は好適な据付を可能とするものである。また荷役装置やバッテリ、前輪や補助輪の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0067】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は下水道、水路に及び地下道等を構築するコンクリート製品の施工方法において、橋梁下、高架下で交通量が多い等開削工法を行うことができない場合、高圧線など上空に制約がある場合、道路幅員が狭く重機設置場所が限定されている場合、両側の矢板との間隔が狭い場合及び老朽化した下水道を更正するため管路内に施工する場合など移動式クレーン(重機)により直接吊り降ろして据付けることができない場合に、コンクリート製品を所定の位置まで搬送し、据付ける搬送据付装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…台車
1c…尖端部
30…前輪昇降機構
40…補助輪昇降機構
50…搬送装置、自走手段(モータ)
70…荷役装置
8…バッテリ
B…コンクリート製品(ボックスカルバート)
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品を所定の位置まで搬送し、据付けるのに好適に利用される搬送据付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水道、水路に及び地下道等を構築するコンクリート製品の施工方法において、橋梁下、高架下で交通量が多い等開削工法を行うことができない場合、高圧線など上空に制約がある場合、道路幅員が狭く重機設置場所が限定されている場合、両側の矢板との間隔が狭い場合及び老朽化した下水道を更正するため管路内に施工する場合など、移動式クレーン(重機)により直接吊り降ろして据付けることができない場合に、ボックスカルバートなどのコンクリート製品を所定の位置まで搬送し、据付ける搬送据付装置を利用することが知られている。
【0003】
上記のような施工条件の場合、次の3つの態様をなす搬送据付装置を利用した施工方法がこれまで知られている。
【0004】
まず挙げられるのは搬送据付装置として圧縮空気を噴射する台、すなわちエアーキャスターを用いる施工方法である(例えば、特許文献1参照)。具体的に説明すると、斯かる施工方法は、予め幅方向中央部に切込み等の凹部を設けておいた基礎コンクリートにコンクリート製品を荷下ろし、当該コンクリート製品の下に位置する凹部にエアーキャスターを設置して、空気圧縮機からエアホースを接続して送られてきた空気を台から噴出させてコンクリート製品を持ち上げ搬送し、吹き出し量を調整しながら所定の位置に据付けた後、エアーキャスターを凹部から抜き取るという方法である。
【0005】
次に挙げられるのは搬送据付装置としてコンクリート製品を油圧ジャッキで昇降させる昇降機構並びに水平方向へのスライド機構を有するモータ付き台車を用いる施工方法である(例えば、特許文献2参照)。具体的に説明すると、斯かる施工方法は、まず基礎コンクリートに予めレールを埋め込み、別体であるエンジン発電機からキャップタイヤケーブルで接続した前記レール上を走行する前記モータ付き台車にコンクリート製品を積載し、モータ付き台車を走らせて所定の位置までコンクリート製品を搬送し、スライド機構及び昇降機構を作動させてコンクリート製品を据付け、しかる後、モータ付き台車を元の位置までレール上を走行させることにより後退させるという方法である。
【0006】
さらに挙げられるのは、搬送据付装置としてコンクリート製品を吊り上げ可能なシャーシに後輪、前輪及び前輪を補助する補助輪を設けた搬送台車を用いる施工方法である(例えば、特許文献3参照)。具体的には、斯かる施工方法は次のようなものである。別体であるエンジン発電機からキャップタイヤケーブルで搬送台車に接続した状態で搬送台車を、その前端部がコンクリート製品の間際になるまで前進させる。その位置で前輪と補助輪とを動作させることによって補助輪をコンクリート製品の底版に乗せて前輪を持ち上げる。今度は前輪に代わって補助輪と後輪で搬送台車を前進させ、前輪が製品の底版上になった時点で再びシーソー動作により前輪を底版上に乗せ補助輪を持ち上げる。そして、前輪と後輪とによって前輪が製品の前方の間際になるまで前進させ、補助輪を製品の前方の基礎コンクリート上に下ろして前輪を持ち上げ、補助輪と後輪で前輪が製品の前方の基礎コンクリート上になるまで前進させた時点で、前輪を降ろす。そしてコンクリート製品の内部すなわち底版上部にシャーシを位置付けた状態で、コンクリート製品の底版に埋め込んだインサート又は吊り具を、シャーシ側に設けた昇降及びスライド機構を有する吊り治具に接続して製品を吊り上げる。この状態で前輪と後輪で前輪が既設の製品の間際になるまでコンクリート製品を前進させる。その後、補助輪を既設のコンクリート製品の底版に乗せて前輪を持ち上げ、前輪に代わって補助輪と後輪でさらに前進させる。しかる後、所定の位置にまでコンクリート製品を搬送すれば、シャーシ側に設けた昇降及びスライド機構によりコンクリート製品を据付ける。次にコンクリート製品に設けたインサートまたは吊り具をシャーシ側の吊り治具から取り外す。そしてその後は後輪と補助輪で搬送台車を後退させ、前輪がコンクリート製品の外側まで後退した時点で前輪を基礎コンクリート上に降ろし、今度は前輪と後輪で元の位置まで戻る。斯かる施工方法は以上の工程を繰り返すことにより、コンクリート製品を順次施工していくものである。
【0007】
しかしながら、上述した施工方法のうち、エアーキャスターを用いる施工方法では、幅方向中央に切込み等の凹部を入れた基礎コンクリートを予め打設しなければならない。またモータ付き台車を用いる施工方法では基礎コンクリートの所定の位置にレールを埋設またはインサートなどでレールを固定するなど基礎コンクリートに対する格別の加工が必要であった。
【0008】
一方、エアーキャスターを用いる施工方法は製品の搬送中はエアホースが接続されていないと搬送装置は作動しない。加えて、モータ付き台車を用いる施工方法及び補助輪を設けた搬送台車を用いる施工方法ではキャップタイヤケーブルが接続されていないと搬送装置は作動しない。
【0009】
つまり、上述したような搬送据付装置及び当該搬送据付装置を用いたコンクリート製品の施工方法では、基礎コンクリートを施工する際の自由度、並びに、基礎コンクリート上での搬送据付装置の動作の自由度が、自ずと制限されたものとなっているのが現状である。
【0010】
他方、単に基礎コンクリート上での搬送据付装置の動作の自由度を向上させるべく、エンジン発電機を搬送据付装置自体に搭載し、自走させるという方法も考えられるが、そのようなものであると、エンジンからの温室効果ガス(CO2)等の排ガスが施工現場内に充満することになり、当該施工現場のみならず、エンジンの騒音も含め、周辺環境への負荷が増大してしまうという不具合を起こし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−228881号公報
【特許文献2】特開2000−328636号公報
【特許文献3】特開2003−182987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、温室効果ガス(CO2)を削減する等、周辺環境への負荷を低減しつつ、現場での施工性を有効に向上させたコンクリート製品の搬送据付装置並びにコンクリート製品の据付方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0014】
すなわち本発明に係る搬送据付装置は、台車と、この台車に設置され所定箇所に据付けるべきコンクリート製品を荷役するための荷役装置と、この荷役装置により担持された前記コンクリート製品を据付けるべき箇所にまで搬送すべく前記台車を自走させる搬送装置と、前記台車に搭載され前記荷役装置及び搬送装置を作動させるための電力を供給するバッテリとを具備してなることを特徴とする。
【0015】
また本発明に係るコンクリート製品の据付方法は、台車に搭載されたバッテリから電力が供給された前記台車に設置された搬送装置により前記台車をコンクリート製品が載置された位置まで自走させる工程と、前記バッテリから電力が供給された前記台車に設置された荷役装置により前記コンクリート製品を荷役する工程と、荷役装置により前記コンクリート製品を担持した状態で前記台車を前記搬送装置により自走させることにより前記コンクリート製品を据え付けるべき箇所まで搬送する工程と、前記荷役装置により前記コンクリート製品を据え付けるべき箇所に据え付ける工程とを有することを特徴とする。
【0016】
このようなものであれば、上述の施工方法とは異なり、エアホースやキャップタイヤケーブル等をつなぐこと無く基礎コンクリート上を自走することができるので、基礎コンクリートに対する格別の加工を有効に回避するとともに、基礎コンクリート上の動作の自由度を有効に向上させることができる。加えて、バッテリによる電力で作動するため、施工現場での温室効果ガス(CO2)の排出量の削減に寄与し得るとともに、エンジン発電機による騒音の発生も有効に回避することができる。その結果、周辺環境への負荷を低減しつつ、現場での施工性を有効に向上させることができる。
【0017】
また、基礎コンクリートへの格別の加工が不要な好ましいものとして、前記台車が、前輪と後輪と補助輪とを備えたものであり、前記搬送装置が前輪及び後輪の少なくとも一方を回転駆動する自走手段と、前記前輪と補助輪とを選択使用して障害物を乗り越えさせる乗り越え手段とを備えたものを挙げることができる。
【0018】
そして、搬送するコンクリート製品の具体的な態様として、当該コンクリート製品が暗きょ製品または開きょ製品であり、前記障害物が、前記暗きょ製品または開きょ製品の底版である態様を挙げることができる。
【0019】
前記底版を、より乗り越えやすいものとするためには、乗り越え手段を、前記前輪を昇降させるための前輪昇降機構と、前記補助輪を昇降させるための補助輪昇降機構とを備えたものとすることが望ましい。
【0020】
そして補助輪昇降機構の具体的なものとして、前記台車を、前記前輪の前後に位置させて二つの補助輪を設けており、前記補助輪昇降機構が前記前輪よりも後の補助輪を昇降させるものを挙げることができる。
【0021】
前輪が底版を乗り越えた状態で小さな半径の曲線に対応できる換向性を実現するためには、自走手段を、前記後輪を回転駆動するためのモータと、前記後輪の向き変更するためのステアリング機構を備えたものとすることが望ましい。
【0022】
また、コンクリート製品が曲線部を構成するものであっても、コンクリート製品に干渉することなく容易に据付を行うためには、前記台車が、その先端のコーナーを切り落とすことにより形成した尖端部を備えていることが好ましい。
【0023】
そして、暗きょ製品を効率良く搬送するためには、前記コンクリート製品が暗きょ製品であり、前記荷役装置が前記暗きょ製品における頂版の内面に添接する当接体とこの当接体を昇降させて前記暗きょ製品を荷役する荷役用昇降機構とを備えたものであることが望ましい。
【0024】
そして、据付時の微妙な左右方向のズレを解消して正確な据付を行うためには、前記荷役装置を、前記当接体を左右方向に移動させるための荷役用スライド機構をさらに備えたものとすることが望ましい。
【0025】
さらに、据付時のコンクリート製品の角度すなわち方向のズレをも容易に修正し、さらなる据付の正確性を担保するための構成として、前記荷役装置を、前後方向に間隔を開けて二組設けられており、一方の荷役装置の荷役用スライド機構と他方の荷役装置の荷役用スライド機構とを相互に独立して作動させ得るように構成することが望ましい。
【0026】
そして、台車が前記コンクリート製品を検出し得る検出手段を更に有するとともに、前記搬送装置が前記検出手段が前記コンクリート製品を検出した際に前記台車の自走を停止させる停止手段を更に有するものであれば、台車がコンクリート製品に衝突したり、コンクリート製品上にある台車がコンクリート製品から脱落したりするという不具合を未然に防止できるものとなる。すなわち、安全で正確な搬送及び走行が可能となり、作業の省力化、省人化により施工性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、基礎コンクリートに対する格別の加工を有効に回避するとともに、基礎コンクリート上の動作の自由度を有効に向上させることができる。加えて、バッテリによる電力で作動するため、施工現場での温室効果ガス(CO2)の排出量の削減に寄与し得るとともに、エンジン発電機による騒音の発生も有効に回避することができる。その結果、周辺環境への負荷を低減しつつ、現場での施工性を有効に向上させたコンクリート製品の搬送据付装置並びにコンクリート製品の据付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る側面図。
【図2】同平面図。
【図3】同実施形態に係る機能ブロック図。
【図4】同実施形態に係る前輪昇降機構の説明図
【図5】同実施形態に係る荷役装置の説明図。
【図6】同荷役装置の分解斜視図。
【図7】同実施形態に係る補助輪昇降機構の説明図。
【図8】同実施形態に係る動作説明図。
【図9】同上。
【図10】同上。
【図11】同上。
【図12】同上。
【図13】同上。
【図14】同上。
【図15】同上。
【図16】同上。
【図17】同上。
【図18】同上。
【図19】同上。
【図20】同上。
【図21】同上。
【図22】同上。
【図23】同上。
【図24】同上。
【図25】同実施形態に係る作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
本実施形態に係る搬送据付装置は、現場において移動式クレーン(重機)により直接降ろして据付けることができない場合等に用いられ、例えばコンクリート製品であるボックスカルバートBを所定の位置まで搬送し、据付けるためのものである。
【0031】
<構成説明>
ここで、本実施形態に係る搬送据付装置は、台車1と、この台車1に設置され所定箇所に据付けるべきコンクリート製品のひとつである暗きょ製品としてのボックスカルバートBを主に荷役するための荷役装置70と、この荷役装置70により担持されたボックスカルバートBを据付けるべき箇所にまで搬送すべく前記台車1を自走させる搬送装置たるモータ50と、台車1に搭載され荷役装置70及びモータ50を作動させるための電力を供給するバッテリ8とを具備してなることを特徴とするものである。
【0032】
以下、斯かる搬送据付装置の構成について、図1ないし図7を用いて説明する。この搬送据付装置は、上述の台車1、この台車1に搭載した荷役装置70、モータ50、バッテリ8の他、後述する前輪昇降機構30及び補助輪昇降機構40をも併せて台車1に搭載したものである。
【0033】
台車1は、図1及び図2に示すように、前後方向に連結されたシャーシ前半部1a及びシャーシ後半部1bとを主に有しているものである。
【0034】
シャーシ前半部1aは、その先端のコーナーを切り落とすことにより前端部を平面視凸状に形成した尖端部1cを形成するとともに、この尖端部1cに位置付けた先端補助輪2から後方に順に、ボックスカルバートBを検出する為の本発明の検出手段である底版センサS、前輪3、荷役装置70を搭載するための前側荷役部7a、補助輪4、後側荷役部7b、及びバッテリ8を載置するためのバッテリ載置部8aを配している。先端補助輪2は、ボックスカルバートBの底版B1の上面B12に略等しい高さ位置に設定されて配されている。底版センサSは、ボックスカルバートBの底版B1が近接した際にこれを検出するとともに、シャーシ後半部1b側に配された電磁ブレーキ(図3)を作動させて台車1を停止させることによりボックスカルバートBと台車1との衝突を回避することで、後述の通りボックスカルバートBの正確な搬送・据付に供するためのものである。
【0035】
シャーシ後半部1bは、本発明の自走手段にあたるモータ50と、このモータ50により回転駆動される後輪5と、この後輪5に換向性を付与するためのステアリング機構STと、これらモータ50、ステアリング機構STのみならず、搬送据付装置全体を操作するための操作パネルを備えた運転台6と、前記底版センサSがボックスカルバートBを検出した際に後輪5の駆動を停止させる本発明の停止手段である電磁ブレーキ(図3)とを具備するものである。
【0036】
そして図3に示すようにこの搬送据付装置は、シャーシ前半部1aに備えたバッテリ8の電力により、シャーシ後半部1bのモータ50、及び油圧により動作するステアリング機構STを作動させるための別のモータ、そして上述の電磁ブレーキを作動させるための電力を供給している。また当該バッテリ8は、シャーシ前半部1aには、後述する荷役装置70、前輪昇降機構30及び補助輪昇降機構40を作動させるための、後述する前輪昇降用シリンダ31、補助輪昇降用シリンダ41、荷役装置70のスライドシリンダ73並びに昇降シリンダ76を作動するための油圧ポンプを作動させるためのモータに電力を供給しているものである。
【0037】
しかして本実施形態に係る搬送据付装置は、先端補助輪2と、前輪3、補助輪4とを選択使用して障害物であるボックスカルバートBの底版B1を好適に乗り越えさせる乗り越え手段を構成することにより、上述の荷役装置70とともに、正確且つ迅速なボックスカルバートBの搬送を実現しているものである。特に本実施形態ではその乗り越え手段として、前輪3を昇降させるための前輪昇降機構30と、前記補助輪4を昇降させるための補助輪昇降機構40とを備えたものとしている。
【0038】
以下、この乗り越え手段と荷役装置70について、換言すれば、台車1の前方に位置する前輪昇降機構30、荷役装置70そして補助輪昇降機構40の順に図4ないし図7を用いて説明していく。
【0039】
前輪昇降機構30は、図4に示すように、対をなす前輪3と、前輪3を昇降させるための前輪昇降用シリンダ31と、前輪3をシャーシ前半部1aに対して支持するとともに、シャーシ前半部1aに対してスライダ33を介して前輪3を昇降可能に支持するための前輪保持部材32と、シャーシ前半部1aに取り付けられて前輪保持部材32を摺動可能に支持するための前輪保持レール34と、前輪昇降用シリンダ31をシャーシ前半部1aに確実に取り付けておくためのシリンダ保持部35とを有している。そして前輪昇降用シリンダ31は、シリンダ保持部35に保持されたシリンダ本体31aと、このシリンダ本体31aから下方に突没するシャフト31bと、このシャフト31bの先端部において前輪3の車軸3aを支持する接続部31cとを有している。
【0040】
そして、斯かる前輪昇降機構30は前輪昇降用シリンダ31が操作されると、シャフト31bの昇降に応じて接続部31c、車軸3aを介して前輪3及び前輪保持部材32が昇降する。その際、前輪保持部材32に設けたスライダ33が前輪保持レール34内を正確に上下に摺動することにより、正確な前輪3の昇降が実現される。
【0041】
荷役装置70は、図1及び図2に示すように、シャーシ前半部1aにおける前側荷役部7aと後側荷役部7bとの2箇所に前後対象にそれぞれ配置されているものである。そしてこの荷役装置70は、図5及び図6に示すように、当接体たる荷役台7をボックスカルバートBの頂版B2の下面B22に接しさせてボックスカルバートBを持ち上げるための荷役用昇降機構70bと、当接体を左右方向に移動させるための荷役用スライド機構70aとを主に備えている。そして本実施形態では、前方の荷役装置70の荷役用スライド機構70aと後方の荷役装置70の荷役用スライド機構70aとを相互に独立して作動させ得るように構成している。
【0042】
荷役用スライド機構70aは、荷役台7と、荷役台7を直接下方から支持する基台部71と、基台部71に設けられたスライドレール72と、基台部71の下方に取り付けられたスライドシリンダ73とを主に有している。そしてスライドシリンダ73は、基台部71の下側に取り付けられたシリンダ本体73aと、このシリンダ本体73aから左右に延びるとともに左右に動作するシャフト73bと、このシャフト73bの先端に位置付けられ、基台部71の開口を介して荷役台7に取り付けられる取付部73cとを有している。そしてこのスライドシリンダ73が操作されると、シャフト73bの動作とともに取付部73cが荷役台7を左右に動作させ得るものとなっている。
【0043】
荷役用昇降機構70bは、上述した荷役用スライド機構70aごと上下に昇降させるものである。そしてこの荷役用昇降機構70bは、基台部71を支持するとともにシャーシ前半部1aに対してスライダ75を介して図示しないレールに対して昇降可能に動作し得る保持部材74と、この保持部材74を昇降させる為の昇降シリンダ76と、この昇降シリンダ76によって直接昇降動作される昇降部材77と、この昇降部材77の両側に取り付けられた対をなす昇降プーリ78と、基端側をシャーシ前半部1aに固定されるとともに昇降プーリ78に架け渡され、先端が保持部材74の吊り下げ部74aに固定されたチェーン79とを有している。そして昇降シリンダ76は、シャーシ前半部1aに固定されたシリンダ本体76aと、昇降部材77を持ち上げるためのシャフト76bとを有している。
【0044】
そして昇降シリンダ76が操作されることにより昇降部材77が昇降プーリとともに一定寸法上昇すると、昇降プーリ78から掛け回されたチェーン79に吊り下げ部74aで吊り下げられた保持部材74は前記一定寸法の2倍の寸法上昇だけ、チェーン79に引っ張られて上昇することになる。すなわち本実施形態では、荷役用昇降機構70bにおいて昇降プーリ78及びチェーン79による動滑車の原理を適用することにより、昇降シリンダ76の2倍のストロークで荷役台7を昇降させることで、シャーシ前半部1aのスペースの有効利用を成し得たものとなっている。
【0045】
補助輪昇降機構40は、図7に示すように、車軸4aにより接続された対をなす補助輪4と、シャーシ前半部1aに強固に保持されながら補助輪4を昇降させるための補助輪昇降用シリンダ41と、シャーシ前半部1aに対して補助輪4をスライダ43を介して昇降可能に支持するとともに、補助輪昇降用シリンダ41に接続支持されている被支持板45を有する補助輪保持部材42と、シャーシ前半部1aに取り付けられて補助輪保持部材42を摺動可能に支持するための補助輪保持レール44とを有している。そして補助輪昇降用シリンダ41は、シャーシ前半部1aに強固に保持されたシリンダ本体41aと、このシリンダ本体から下方に突没して被支持板45に例えば剛結されるシャフト41bとを有している。
【0046】
そして、斯かる補助輪昇降機構40は補助輪昇降用シリンダ41が操作されると、シャフト41bの昇降に応じて被支持板45を介して補助輪4及び補助輪保持部材42が昇降する。その際、補助輪保持部材42に設けたスライダ43が補助輪保持レール44内を正確に上下に摺動することにより、正確な補助輪4の昇降が実現される。
【0047】
<作動説明>
続いて、上述した構成をなす搬送据付装置によって実際の施工現場である基礎コンクリートK上でボックスカルバートBを据付ける据付方法について、図8ないし図24を用いて説明する。
【0048】
しかして本実施形態に係るコンクリート製品たるボックスカルバートBの据付方法は、台車1に搭載されたバッテリ8から電力が供給された搬送装置すなわちモータ50により台車1をボックスカルバートBが載置された位置まで自走させる工程と、バッテリ8から電力が供給された荷役装置70によりボックスカルバートBを荷役する工程と、荷役装置70により担持されたボックスカルバートBを据え付けるべき箇所まで搬送すべく台車1をモータ50により自走させる工程と、荷役装置70によりボックスカルバートBを据え付けるべき箇所に据え付ける工程とを有することを特徴とする。
【0049】
まず図8は、搬送目的であるボックスカルバートBを図示しないクレーン等により所要の据付位置とは離れた箇所に載置された状態である。そして同図に示す状態からモータ50を駆動させてボックスカルバートBに近接するまでは、時速約3.6kmの「通常走行モード」で走行する。そしてカルバート検出センサが前輪3付近に底版B1の端面B11が位置することを検出すると、自動的に電磁ブレーキが作動して前輪3と端面B11との衝突を回避するとともに、図示しない操作パネルに設けた表示灯が点灯することにより運転者に端面B11が近接している旨を伝えるものとなっている。そしてその後の動作は全て前記「通常走行モード」から、時速約0.4kmで走行する「微速走行モード」へと切り換えて運転される。続いて図9に示すように先端補助輪2が底版B1の上面B12上に位置していることを確認すると、図10に示すように、先端補助輪2をボックスカルバートBの底版B1に乗せて前輪昇降機構30によって前輪3を上面B12よりも上に位置するまで上昇させる。
【0050】
その後、図11に示すように、底版B1上にある先端補助輪2と基礎コンクリートK上の後輪5によってさらに前進させる。しかる後、図12に示すように、補助輪4が製品の底版B1上になった時点で、補助輪昇降機構40を作動させることによって、補助輪4を底版B1上に設置させ先端補助輪2を浮上させる。そして図13に示すように、補助輪4と後輪5とで前輪3が底版B1を越える位置まで台車1を前進させる。
【0051】
そして図14に示すように、前輪昇降機構30を再び作動させることにより、前輪3をボックスカルバートBの前方の基礎コンクリートK上に降ろして補助輪4を底版B1の上面B12から浮上させる。この図15に示す状態で前輪3は底版B1を乗り越えたことになり、ボックスカルバートBの内部にシャーシ前半部1aを侵入させた状態となる。そして次は図16に示すように、前後の荷役装置70をそれぞれ作動させることによってボックスカルバートBの頂版B2の内面を持ち上げ荷役する。
【0052】
次は図17に示すように、ボックスカルバートBを持ち上げた状態すなわち担持した状態を維持しながら前輪3と後輪5で前輪3が既設のボックスカルバートBの間際になるまで前進させる。このとき、底版センサSが既設のボックスカルバートBへの近接を上述同様に検知することにより、前輪3が既設のボックスカルバートBの底版B1に衝突することを有効に回避し得るものとなっている。そして図18に示すように、先端補助輪2を既設製品の底版B1に乗せて前輪3を持ち上げ、図19に示すように前輪3に代わって先端補助輪2と後輪5で前進させる。この図19に示す状態では、運転者は前後の荷役装置70における荷役用スライド機構70aを運転者が適宜動作することにより、ボックスカルバートBの横方向のズレ及び当接角度のズレを解消することができる。
【0053】
そして図20に示すように、所定の位置にボックスカルバートBを位置付けた後、荷役装置70を操作することによりボックスカルバートBを降下させると図21に示すように、正確な位置にボックスカルバートBを据付けることができる。その後は図22に示すように、後輪5と先端補助輪2で後退する。
【0054】
図23に示すように前輪3がボックスカルバートBの外に出た時点で再び底版センサSが検知することにより台車1が電磁ブレーキにより停止すると、図24に示すように、運転者は前輪3を基礎コンクリートK上に降ろし前輪3と後輪5で元の位置まで戻る。このように、底版センサSは前輪3の底版B1への衝突のみならず、先端補助輪2の底版B1からの脱落を回避するためにも、有効に供される。
【0055】
以上の一連の工程を繰り返すことにより、ボックスカルバートBを順次据付ける作業を進めていく。
【0056】
また本実施形態に係る荷役据付装置は、図25に示すような曲線部を構成するボックスカルバートBであっても好適に据付けることができる。すなわち同図に示すように、シャーシ前半部1aに尖端部1cを設けることによって、ボックスカルバートB据付時にシャーシ前半部1aの先端が、ボックスカルバートBの側板B3の内面B32に干渉することなく安全且つスムーズな据付が可能なものとなっている。
【0057】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る搬送据付装置及びボックスカルバートBの据付方法は、バッテリ8を搭載した自走式とすることにより、従来のエアホースやキャップタイヤケーブル等をつなぐこと無く基礎コンクリートK上を自走することができるので、基礎コンクリートKに対する格別の加工を有効に回避して、基礎コンクリートK上の動作の自由度が格段に向上したものとなっている。加えて、バッテリ8による電力で作動するため、施工現場での温室効果ガス(CO2)の排出量の削減に寄与し得るとともに、エンジン発電機による騒音の発生も有効に回避し得たものとなっている。その結果、周辺環境への負荷を低減しつつ、現場での施工性を有効に向上させている。
【0058】
そして本実施形態では底版B1を、より乗り越えやすいものとするために、乗り越え手段を、前記前輪3を昇降させるための前輪昇降機構30と、前輪3よりも後側に補助輪4を設け、この補助輪4を昇降させる補助輪昇降機構40を備えることにより、特に前輪3が底版B1を乗り越える際の操作を、上記特許文献3に記載のものに比べて格段に簡便且つ安全なものとしている。
【0059】
また特に本実施形態では、前輪昇降機構30及び補助輪昇降機構40ともに、鉛直方向の動作としているので、特に特許文献3に開示されているものと比較しても、シャーシ前半部1aの長さを短くすることによって、基礎コンクリートK上の機動性すなわち、小回り性をより向上させたものとなっている。
【0060】
さらに本実施形態では、運転席に近い後輪5の向きを変更するためのステアリング機構STを備えることにより、運転者による運転をより好適に行えるとともに、ボックスカルバートBを移動させる際に前輪3に近付けて配置したボックスカルバートBの回転半径をより小さくすることができるので、精密な据付をより容易なものとしている。
【0061】
加えて本実施形態では、ボックスカルバートBが接続部に角度をなす曲線部を構成するものであっても、既設のボックスカルバートBの側版に干渉することなく容易に据付を行うために、シャーシ前半部1aの先端のコーナーを切り落とすことにより尖端部1cを形成したものとしている。
【0062】
また、本実施形態では、荷役装置70が、荷役台7をボックスカルバートBの頂版B2の下面B22を持ち上げる態様とすることで、運搬の際にボックスカルバートBにインサート、吊金具などの施工を要することなく、簡単且つ迅速な搬送・据付を行い得るものとなっている。
【0063】
そしてこの荷役装置70は荷役用スライド機構70aを備えているので、据付時の微妙な左右方向のズレを解消して正確な据付を行い得るものとなっている。さらに、この荷役装置70は前後方向に複数すなわち2つ設けられ、そして前述の荷役用スライド機構70aもそれぞれ独立して動作するので、ボックスカルバートBの単なる左右のズレのみならず、ボックスカルバートBの水平方向の向きすなわち角度をも、荷役装置70の操作のみで有効に解消し、より正確な据付に供し得るものとなっている。
【0064】
加えて本実施形態では、ボックスカルバートBの底版B1を検知する底版センサSと、底版センサSがボックスカルバートBの底版B1を検知した際に台車1を停止させる電磁ブレーキ(図3)を設けているので、前進時の前輪3の底版B1への衝突を確実に回避し得るとともに、後退時には先端補助輪2の底版B1からの脱落を未然に防止している。このような構成により本実施形態に係る搬送据付装置は、安全で正確な走行並びにボックスカルバートBの搬送を可能なものとし、ひいては省力化、省人化を実現して、施工性の向上を実現したものとなっている。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態ではコンクリート製品として暗きょ製品である筒状のボックスカルバートを搬送する態様のみを開示したが、勿論、開きょ製品に適用しても良い。開きょ製品に適用する場合は予め底版に埋め込んだインサートまたは吊り具と、荷役台側の図示しない吊り治具とを接続して製品を吊り上げる態様を挙げることができる。さらに上下分割型のボックスカルバートの上側部分を搬送する場合であっても、本発明の搬送据付装置は好適な据付を可能とするものである。また荷役装置やバッテリ、前輪や補助輪の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0067】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は下水道、水路に及び地下道等を構築するコンクリート製品の施工方法において、橋梁下、高架下で交通量が多い等開削工法を行うことができない場合、高圧線など上空に制約がある場合、道路幅員が狭く重機設置場所が限定されている場合、両側の矢板との間隔が狭い場合及び老朽化した下水道を更正するため管路内に施工する場合など移動式クレーン(重機)により直接吊り降ろして据付けることができない場合に、コンクリート製品を所定の位置まで搬送し、据付ける搬送据付装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…台車
1c…尖端部
30…前輪昇降機構
40…補助輪昇降機構
50…搬送装置、自走手段(モータ)
70…荷役装置
8…バッテリ
B…コンクリート製品(ボックスカルバート)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車と、この台車に設置され所定箇所に据付けるべきコンクリート製品を荷役するための荷役装置と、この荷役装置により担持された前記コンクリート製品を据付けるべき箇所にまで搬送すべく前記台車を自走させる搬送装置と、前記台車に搭載され前記荷役装置及び搬送装置を作動させるための電力を供給するバッテリとを具備してなることを特徴とする搬送据付装置。
【請求項2】
前記台車が、前輪と後輪と補助輪とを備えたものであり、前記搬送装置が前輪及び後輪の少なくとも一方を回転駆動する自走手段と、前記前輪と補助輪とを選択使用して障害物を乗り越えさせる乗り越え手段とを備えたものである請求項1記載の搬送据付装置。
【請求項3】
前記コンクリート製品が暗きょ製品または開きょ製品であり、前記障害物が、前記暗きょ製品または開きょ製品の底版である請求項2記載の搬送据付装置。
【請求項4】
前記乗り越え手段が、前記前輪を昇降させるための前輪昇降機構と、前記補助輪を昇降させるための補助輪昇降機構とを備えたものである請求項2または3記載の搬送据付装置。
【請求項5】
前記台車が、前記前輪の前後に位置させて二つの補助輪を設けており、前記補助輪昇降機構が前記前輪よりも後の補助輪を昇降させるものである請求項4記載の搬送据付装置。
【請求項6】
前記自走手段が、前記後輪を回転駆動するためのモータと、前記後輪の向き変更するためのステアリング機構を備えたものである請求項2、3、4または5記載の搬送据付装置。
【請求項7】
前記台車が、その先端のコーナーを切り落とすことにより形成した尖端部を備えている請求項1、2、3、4、5または6記載の搬送据付装置。
【請求項8】
前記コンクリート製品が暗きょ製品であり、前記荷役装置が前記暗きょ製品における頂版の内面に添接する当接体とこの当接体を昇降させて前記暗きょ製品を荷役する荷役用昇降機構とを備えたものである請求項1、2、3、4、5、6または7記載の搬送据付装置。
【請求項9】
前記荷役装置が、前記当接体を左右方向に移動させるための荷役用スライド機構をさらに備えたものである請求項8記載の搬送据付装置。
【請求項10】
前記荷役装置が、前後方向に間隔を開けて二組設けられており、一方の荷役装置の荷役用スライド機構と他方の荷役装置の荷役用スライド機構とを相互に独立して作動させ得るように構成している請求項9記載の搬送据付装置。
【請求項11】
前記台車が、前記コンクリート製品を検出し得る検出手段と、この検出手段が前記コンクリート製品を検出した際に前記台車の自走を停止させる停止手段とを更に有するものである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の搬送据付装置。
【請求項12】
台車に搭載されたバッテリから電力が供給された前記台車に設置された搬送装置により前記台車をコンクリート製品が載置された位置まで自走させる工程と、
前記バッテリから電力が供給された前記台車に設置された荷役装置により前記コンクリート製品を荷役する工程と、
前記荷役装置により前記コンクリート製品を担持した状態で前記台車を前記搬送装置により自走させることにより前記コンクリート製品を据え付けるべき箇所まで搬送する工程と、
前記荷役装置により前記コンクリート製品を据え付けるべき箇所に据え付ける工程とを有することを特徴とするコンクリート製品の据付方法。
【請求項1】
台車と、この台車に設置され所定箇所に据付けるべきコンクリート製品を荷役するための荷役装置と、この荷役装置により担持された前記コンクリート製品を据付けるべき箇所にまで搬送すべく前記台車を自走させる搬送装置と、前記台車に搭載され前記荷役装置及び搬送装置を作動させるための電力を供給するバッテリとを具備してなることを特徴とする搬送据付装置。
【請求項2】
前記台車が、前輪と後輪と補助輪とを備えたものであり、前記搬送装置が前輪及び後輪の少なくとも一方を回転駆動する自走手段と、前記前輪と補助輪とを選択使用して障害物を乗り越えさせる乗り越え手段とを備えたものである請求項1記載の搬送据付装置。
【請求項3】
前記コンクリート製品が暗きょ製品または開きょ製品であり、前記障害物が、前記暗きょ製品または開きょ製品の底版である請求項2記載の搬送据付装置。
【請求項4】
前記乗り越え手段が、前記前輪を昇降させるための前輪昇降機構と、前記補助輪を昇降させるための補助輪昇降機構とを備えたものである請求項2または3記載の搬送据付装置。
【請求項5】
前記台車が、前記前輪の前後に位置させて二つの補助輪を設けており、前記補助輪昇降機構が前記前輪よりも後の補助輪を昇降させるものである請求項4記載の搬送据付装置。
【請求項6】
前記自走手段が、前記後輪を回転駆動するためのモータと、前記後輪の向き変更するためのステアリング機構を備えたものである請求項2、3、4または5記載の搬送据付装置。
【請求項7】
前記台車が、その先端のコーナーを切り落とすことにより形成した尖端部を備えている請求項1、2、3、4、5または6記載の搬送据付装置。
【請求項8】
前記コンクリート製品が暗きょ製品であり、前記荷役装置が前記暗きょ製品における頂版の内面に添接する当接体とこの当接体を昇降させて前記暗きょ製品を荷役する荷役用昇降機構とを備えたものである請求項1、2、3、4、5、6または7記載の搬送据付装置。
【請求項9】
前記荷役装置が、前記当接体を左右方向に移動させるための荷役用スライド機構をさらに備えたものである請求項8記載の搬送据付装置。
【請求項10】
前記荷役装置が、前後方向に間隔を開けて二組設けられており、一方の荷役装置の荷役用スライド機構と他方の荷役装置の荷役用スライド機構とを相互に独立して作動させ得るように構成している請求項9記載の搬送据付装置。
【請求項11】
前記台車が、前記コンクリート製品を検出し得る検出手段と、この検出手段が前記コンクリート製品を検出した際に前記台車の自走を停止させる停止手段とを更に有するものである請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の搬送据付装置。
【請求項12】
台車に搭載されたバッテリから電力が供給された前記台車に設置された搬送装置により前記台車をコンクリート製品が載置された位置まで自走させる工程と、
前記バッテリから電力が供給された前記台車に設置された荷役装置により前記コンクリート製品を荷役する工程と、
前記荷役装置により前記コンクリート製品を担持した状態で前記台車を前記搬送装置により自走させることにより前記コンクリート製品を据え付けるべき箇所まで搬送する工程と、
前記荷役装置により前記コンクリート製品を据え付けるべき箇所に据え付ける工程とを有することを特徴とするコンクリート製品の据付方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−153473(P2011−153473A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16015(P2010−16015)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000116769)旭コンクリート工業株式会社 (30)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000116769)旭コンクリート工業株式会社 (30)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】
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