説明

搬送設備

【課題】車体を昇降自在に支持するモーター駆動の被搬送物支持台を備えた、自動車組立てラインにおける車体搬送手段として活用することが出来る搬送設備を提供する。
【解決手段】走行経路上を走行する搬送台車1に被搬送物支持台2とそのモーター駆動の昇降駆動手段9が搭載され、この昇降駆動手段9を走行経路中の設定地点通過時に作動させるように構成された搬送設備において、昇降駆動手段9の駆動用モーター12を、当該モーター12に連動するパルスエンコーダーからの検出信号に基づいて制御する制御手段16が、搬送台車1上ではなくその走行経路側に設けられ、前記設定地点には、制御手段16から駆動用モーター12への電力の供給と前記パルスエンコーダーから前記制御手段16への検出信号の伝送を搬送台車1の走行状態で行う電力及び信号の伝達手段18が設けられた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路上を走行する搬送用走行体にモーター駆動の被制御装置が搭載され、この被制御装置を前記走行経路中の設定地点通過時に作動させるように構成された搬送設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送設備は、例えば自動車組立てラインにおいて車体を搬送する搬送手段として利用されている。即ち、床面上に敷設されたガイドレールで構成された走行経路上を走行する搬送台車上に、被制御装置として、車体を支持する昇降自在な被搬送物支持台と当該被搬送物支持台の昇降駆動手段を設け、前記走行経路中の区間ごとに、前記被搬送物支持台の高さを割り当てられた作業に適応するように変えるために、各区間の出入り口で前記昇降駆動手段を作動させるように構成された搬送設備が知られている。而して、前記被搬送物支持台の昇降駆動手段として、特許文献1に記載されるようにモーター駆動のものが知られているが、当該昇降駆動手段の駆動用モーターには、昇降駆動される被搬送物支持台の現在高さ情報に基づいて速度制御や停止制御が必要であり、この制御を行なう制御手段が搬送台車上に搭載されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−306162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
即ち、搬送用走行体(特許文献1では搬送台車)に搭載されたモーター駆動の被制御装置(特許文献1では被搬送物支持台とこれを昇降駆動する昇降駆動手段)の駆動用モーターに対する給電は、一般的に走行経路に沿って架設された給電線と搬送用走行体側の集電子を介して地上側から行うことが知られているが、当該駆動用モーターを被制御装置の作動量(駆動によって移動する距離、角度、時間など)に基づいて制御するのに必要な制御手段(モーターコントローラーと当該モーターコントローラーに速度制御信号や停止信号を送るための制御装置)が各搬送用走行体に搭載されていたので、当該制御手段が搬送用走行体の台数だけ必要になり、多数台の搬送用走行体が使用される自動車組立てラインでは、設備コストや電気系統の保守点検コストが非常に高くつくことになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる搬送設備を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る搬送設備は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、走行経路上を走行する搬送用走行体(搬送台車(1))にモーター駆動の被制御装置(被搬送物支持台(2)とその昇降駆動手段(9))が搭載され、この被制御装置を前記走行経路中の設定地点(作業エリア(A)の入り口側設定地点(B)及び出口側設定地点(C))通過時に作動させるように構成された搬送設備において、前記被制御装置の駆動用モーター(12)を当該被制御装置に併設された作動量検出手段(パルスエンコーダー(20))からの検出信号に基づいて制御する制御手段(16)が、前記搬送用走行体(搬送台車(1))上ではなく前記走行経路側に設けられ、前記設定地点には、前記制御手段(16)から前記駆動用モーター(12)への電力の供給と前記作動量検出手段から前記制御手段(16)への検出信号の伝送を前記搬送用走行体の走行状態で行う電力及び信号の伝達手段(18)が設けられた構成になっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、電力及び信号の伝達手段(18)を、前記設定地点(作業エリア(A)の入り口側設定地点(B)及び出口側設定地点(C))を通過する前記搬送用走行体(搬送台車(1))の前進走行と同期して前進走行する同期台車(14)と、この同期台車(14)と前記搬送用走行体との間に設けられた電力及び信号の伝達用コネクタ(17)とを備えた構成とし、前記コネクタ(17)を構成する互いに接離自在なコネクタ単体(22a〜23b)の内、前記同期台車(14)側のコネクタ単体(22b,23b)を前記搬送用走行体側のコネクタ単体(22a,23a)に対して接続離脱操作するコネクタ操作手段(38)を前記同期台車(14)に設けることが出来る。この場合、請求項3に記載のように、前記同期台車(14)は、前記搬送用走行体の走行経路と平行な同期台車走行経路に往復移動自在に支持すると共に、前記搬送用走行体に対する連結手段(15)と、この連結手段(15)の連結離脱操作手段(31)と、前記同期台車走行経路の終端から始端位置へ戻るための後退走行用駆動手段(26a〜28)を備えた構成とすることが出来る。
【0007】
又、請求項4に記載のように、前記搬送用走行体は、床面上に敷設されたガイドレール(3a,3b)上を走行する台車(1)とし、前記モーター駆動の被制御装置は、前記搬送用走行体上に昇降自在に支持された被搬送物支持台(2)の昇降駆動手段(9)とし、この昇降駆動手段(9)の駆動用モーター(12)の伝動系には、前記被搬送物支持台(2)が重力で降下するのを阻止するセルフロック機能を有する減速機を介装し、前記設定地点として、前記被搬送物支持台(2)を所定高さまで昇降させる地点(作業エリア(A)の入り口側設定地点(B)及び出口側設定地点(C))を設定することが出来る。
【0008】
更に、請求項5に記載のように、前記作動量検出手段は前記駆動用モーター(12)に連動するパルスエンコーダー(20)とし、前記駆動用モーター(12)は周波数により速度制御可能な交流モーターとし、前記制御手段(16)は、前記駆動用モーター(12)を速度制御するインバーターを備えると共に、前記駆動用モーター(12)の起動後の前記パルスエンコーダー(20)の発信パルスの計数値に基づいて前記インバーターを制御して前記駆動用モーター(12)の速度制御と停止を行うように構成することが出来る。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、搬送用走行体上に搭載された被制御装置の駆動用モーターを、前記被制御装置を作動させる設定地点を搬送用走行体が通過するとき、当該搬送用走行体の走行経路側(地上側)からの電力で作動させるのであるが、このときに必要な被制御装置制御のための情報、即ち、作動量検出手段で得られる前記被制御装置の作動量(駆動によって移動する距離、角度、時間など)を搬送用走行体側から走行経路側(地上側)に設けられた制御手段に伝送し、当該被制御装置の作動量に基づいて前記駆動用モーターへの給電を制御して、必要な速度制御や停止制御を行なうものであるから、搬送用走行体側に前記制御手段が搭載される従来の構成と比較して、搬送用走行体上の被制御装置に対する制御は従来同様に行えるものでありながら、制御手段は前記被制御装置を作動させる設定地点の数だけで済み、設備コスト及び電気系統の保守点検コストを大幅に低減出来る。
【0010】
本発明では、搬送用走行体側の被制御装置駆動用モーターへの給電を、前記被制御装置を作動させる走行経路側の各設定地点に設けられた制御手段を経由して、当該各設定地点に架設された給電線と搬送用走行体側に設けた集電子とを介して行うことが可能であるが、請求項2に記載の構成によれば、特に搬送用走行体側の被制御装置の作動量検出手段から走行経路側の制御手段に伝送する情報量が多い場合でも、接点数の多いコネクタを利用して容易且つ安価に実施することが出来る。この場合、請求項3に記載の構成によれば、走行経路側の各設定地点に配設される同期台車を搬送用走行体に機械的に連結して同期走行させることが出来るので、コネクタによる搬送用走行体と同期台車との間の電力及び信号の伝送を、当該コネクタに無理な外力を作用させることなく確実に行わせることが出来る。
【0011】
尚、本発明における搬送用走行体は、頭上走行型の搬送用走行体(自走電車タイプのもの、コンベヤチエンや摩擦駆動手段で推進される従動タイプのものなど)であっても良いし、当該搬送用走行体に設けられる被制御装置は、搬送用走行体に昇降自在に吊り下げられた被搬送物支持用ハンガーとその昇降駆動手段から成るもの、フロアー台車上に傾動自在に設けられた被搬送物支持台とその傾動手段から成るものなど、如何なるものであっても良い。更に、被制御装置が備える駆動用モーター(電動モーター)は、そのモーター自体が被制御装置の被駆動部を直接駆動するものに限らず、当該被制御装置の被駆動部を駆動する流体圧シリンダーユニットや流体圧モーターに流体圧を供給する圧力源を駆動する電動モーターであっても良い。
【0012】
しかしながら特に請求項4及び5に記載の構成によれば、自動車組立てラインにおいて車体を支持搬送するフロアー台車形式の搬送設備に好適な搬送設備が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、自動車組立てラインに採用された本発明搬送設備における搬送経路の一部分を示す概略平面図である。
【図2】図2は、図1に示す搬送台車の側面図である。
【図3】図3は、同上搬送台車と同期台車を示す平面図である。
【図4】図4は、同上搬送台車と同期台車の電力及び信号伝送系を説明するブロック線図である。
【図5】図5は、同期台車の詳細を示す平面図である。
【図6】図6は、同上同期台車の側面図である。
【図7】図7は、同上同期台車のコネクタ操作手段を示す縦断正面図である。
【図8】図8は、同上同期台車の連結手段を示す縦断背面図である。
【図9】図9は、同期台車と搬送台車との間で電力及び信号の伝送が行わる状態での要部の平面図である。
【図10】図10は、コネクタ操作手段で操作される同期台車側のコネクタ単体の正面図と、搬送台車側の位置固定のコネクタ単体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、1は搬送台車であって、自動車組立てラインを形成する一定走行経路上を互いに突き合い連続状態で走行する。各搬送台車1には、昇降自在な被搬送物支持台2が設けられ、この被搬送物支持台2上に、組み立てられる自動車の車体Wが積載される。而して、前記一定走行経路中には複数の作業エリアが設定されており、各作業エリアには、支持搬送される車体Wの高さとして、その各作業エリアでの作業に好適な高さが設定されている。即ち、図1に示す作業エリアAの入り口側設定地点Bを各搬送台車1が通過するとき、各搬送台車1上の被搬送物支持台2が当該作業エリアAに設定された高さまで昇降せしめられ、作業エリアAの出口側設定地点Cを各搬送台車1が通過するとき、各搬送台車1上の被搬送物支持台2が次の作業エリアに設定された高さまで昇降せしめられる。
【0015】
各搬送台車1は、図2及び図3に示すように、床面上に敷設された左右一対のガイドレール3a,3b上を転動する車輪4を備えた左右一対前後二組の車輪ユニット5a〜5dを備え、片側前後一対の車輪ユニット5a,5cには、当該ガイドレール3aを左右両側から挟む位置決め用垂直軸ローラー6が設けられている。そしてこの搬送台車1上に設けられた被搬送物支持台2は、図2及び図3に示すように、左右一対のパンタグラフリンク機構7a,7bによって平行昇降自在に支持された左右一対の支持台単体8a,8bから構成され、各支持台単体8a,8bは、昇降駆動手段9によって互いに同一レベルを保って昇降駆動される。図示の昇降駆動手段9は、各支持台単体8a,8bを各別に支持する左右一対の突上げ引き下し自在なチエン10a,10bと、各チエン10a,10bを突上げ引き下し操作する左右一対のチエン駆動手段11a,11b、及び両チエン駆動手段11a,11bを駆動する1つの減速機付きモーター12から構成されている。前記チエン10a,10bは、互いに対接して垂直起立姿勢にあるときに屈曲不能な棒状体となる一対のチエン単体13a,13bから構成された従来周知のものである。又、減速機付きモーター12は、周波数変換により速度制御される交流モーターであって、この減速機付きモーター12が備える減速機は、当該モーター12が通電駆動されていないときに被搬送物支持台2が重力で降下するのを阻止できるセルフロック機能を備えたものである。
【0016】
上記構成の搬送台車1の走行経路中に設定された各作業エリアAの入口側設定地点Bと出口側設定地点Cには、同期台車14が並設されている。この同期台車14は、図3及び図4に示すように、前記各設定地点B,Cを通過する各搬送台車1と同期走行するための連結手段15と、連結された搬送台車1上の昇降駆動手段9における減速機付きモーター12に対する給電及び制御のための制御手段16を備えており、連結された搬送台車1との間で電力及び信号の伝送を行う接離自在なコネクタ17と共に、搬送台車1との間の電力及び信号伝達手段18を構成している。前記制御手段16は、減速機付きモーター12を速度制御するインバーターを備えたモーターコントローラー19と、減速機付きモーター12に連動連結されたパルスエンコーダー20の発信パルスの計数値と設定値との比較に基づいて前記モーターコントローラー19のインバーターを制御して、減速機付きモーター12の速度制御と停止を行う制御装置21から構成されている。又、前記コネクタ17は、搬送台車1に固定された電力用コネクタ単体22a及び信号用コネクタ単体23aと、各コネクタ単体22a,23aに対して接離自在に同期台車14に設けられた電力用コネクタ単体22b及び信号用コネクタ単体23bから構成されている。
【0017】
以下、同期台車14の詳細構造について、図5〜図10に基づいて説明すると、同期台車14は、床面上に敷設された左右一対のガイドレール24a,24bに左右一対前後二組の鍔付き車輪25a〜26bによって搬送台車1の走行経路と平行に往復移動自在に支持されたもので、搬送台車1の前進方向に対して後ろ側左右一対の車輪26a,26bは、減速機付きモーター27によって回転駆動される1本の回転軸28の両端に取り付けられている。尚、この減速機付きモーター27の減速機はセルフロック機能を持たないものであって、当該減速機付きモーター27が通電駆動されていないとき、同期台車14は自由に前後移動出来るものである。
【0018】
同期台車14を搬送台車1と同期走行させるための連結手段15は、同期台車14の走行経路に隣接する側の搬送台車1の側辺下側から垂直下向きに突設された軸体によって構成された被挟持部29を、台車走行方向の前後両側から挟持する開閉自在な挟持具30a,30bと、同期台車14に設けられて挟持具30a,30bを、被挟持部29の移動経路の外側に退避した退避状態と被挟持部29を挟持する挟持状態とに切換える連結離脱操作手段31から構成されている。挟持具30a,30bの内、搬送台車1側の被挟持部29を受ける側の挟持具30aは、同期台車14上に位置固定されたスライドガイド32によって出退移動自在に支持された巾広の帯状体で構成されている。而して、当該挟持具30aは、その出退移動方向(挟持具30aの長さ方向)が搬送台車1の走行経路に対して直角水平向きではなく、当該挟持具30aの先端が搬送台車1の前進方向とは逆方向に後退するように傾斜しており、この挟持具30aの先端近傍の左右両側の内、搬送台車1の前進側とは逆側には、当該挟持具30aに固着された軸受け板33に垂直支軸34によって回転自在に軸支された可動板35が設けられ、この可動板35に他方の挟持具30bが固着されている。
【0019】
連結離脱操作手段31は、挟持具30aを出退駆動するシリンダーユニット36と、前記可動板35と挟持具30aとの間に介装されて当該可動板35(挟持具30b)を開閉駆動するシリンダーユニット37から構成されている。従って、作業エリアAの出入り口の設定地点B,Cにおいて待機している同期台車14において、図5に実線で示すように、挟持具30aに対して挟持具30bが開いている状態で、挟持具30aをシリンダーユニット36により進出限位置まで進出させておくと、定速で前進走行して来る搬送台車1の被挟持部29が、開いている挟持具30bの前を通過した後に挟持具30aの先端部に当接する。この結果、走行に関してロックされていない同期台車14が、被挟持部29と挟持具30aとを介して搬送台車1側の推力を受け、当該搬送台車1と同一方向に前進走行を開始するので、この直後に、シリンダーユニット37により可動板35を介して挟持具30bを垂直支軸34の周りに閉動させて、図9に示すように挟持具30a,30b間で搬送台車1側の被挟持部29を挟持することが出来る。この結果、同期台車14は搬送台車1に連結された状態になり、搬送台車1の推力を受けて当該搬送台車1と一体に前進走行することになる。
【0020】
搬送台車1に対する同期台車14の同期走行を解除するときは、シリンダーユニット37により可動板35を介して挟持具30bを垂直支軸34の周りに開動させて、搬送台車1側の被挟持部29の挟持作用を解除した後、進出限位置にある挟持具30aをシリンダーユニット36により後退限位置まで後退させ、図5に示すように、挟持具30a,30bを搬送台車1側の被挟持部29の移動経路から外側へ退避させれば良い。この状態では、減速機付きモーター27で鍔付き車輪26a,26bを強制駆動して同期台車14を元の待機位置まで後進復帰させることが出来る。
【0021】
一方、コネクタ17を構成する同期台車14側の電力用コネクタ単体22b及び信号用コネクタ単体23bは、上記のように連結手段15により同期台車14と搬送台車1とを連結一体化したとき、搬送台車1側の電力用コネクタ単体22a及び信号用コネクタ単体23aとほぼ同心状に対向するように構成されているが、この同期台車14側の電力用コネクタ単体22b及び信号用コネクタ単体23bを搬送台車1側の電力用コネクタ単体22a及び信号用コネクタ単体23aに対して接続離脱操作するコネクタ操作手段38が同期台車14に設けられている。搬送台車1側の電力用コネクタ単体22a及び信号用コネクタ単体23aは、搬送台車1の側辺下側に設けられた台車走行方向と平行で垂直な支持板39に搬送台車1の走行方向に並列するように取り付けられている。
【0022】
即ち、前記コネクタ操作手段38は、同期台車14上に設けられた可動体40、この可動体40を往復移動させるためのシリンダーユニット41、及びコネクタ位置合わせ手段42から構成されている。即ち、同期台車14上には支持フレーム43が設けられ、この支持フレーム43に取り付けられている上下二段のスライドガイド44a,44bによって、搬送台車1(同期台車14)の走行方向に対して直角の左右水平向きに往復移動自在に上下二段のスライドロッド45a,45bが支持され、これら両スライドロッド45a,45bの先端に前記可動体40が取り付けられている。前記シリンダーユニット41は、上下二段のスライドガイド44a,44bの中間位置で当該スライドガイド44a,44bと平行に前記支持フレーム43に取り付けられ、そのピストンロッド41aの先端が前記可動体40に連結されている。そして可動体40の搬送台車1の走行経路側に面する正面側に、前記電力用コネクタ単体22b及び信号用コネクタ単体23bが搬送台車1(同期台車14)の走行方向に並列するように取り付けられた支持板46が、中間連結部材46aや取付け用基板46bなどを介して取り付けられている。
【0023】
前記コネクタ位置合わせ手段41は、搬送台車1側の電力用コネクタ単体22a及び信号用コネクタ単体23aを取り付けている支持板39の対角方向の両角部に取り付けられた、夫々位置決め用孔47a,47bを有する2つの位置決め部材48a,48bと、同期台車14側の電力用コネクタ単体22b及び信号用コネクタ単体23bを取り付けている支持板46の対角方向の両角部に取り付けられた2本の位置決めピン49a,49bから構成されている。位置決め部材48a,48bの位置決め用孔47a,47bは、その入り口側が座ぐりされ、位置決めピン49a,49bは、その先端が円錐形の尖端に形成されて、これら位置決めピン49a,49bが確実に位置決め用孔47a,47b内に導入されるように構成されている。
【0024】
而して、上記のように連結手段15により同期台車14と搬送台車1とが連結一体化されたとき、搬送台車1側の電力用コネクタ単体22a及び信号用コネクタ単体23aと同期台車14側の電力用コネクタ単体22b及び信号用コネクタ単体23bとが互いにほぼ同心状に対向するが、同時に搬送台車1側の位置決め部材48a,48bの位置決め用孔47a,47bに対して同期台車14側の位置決めピン49a,49bがほぼ同心状に対向するように構成されている。係る状態で同期台車14側のコネクタ操作手段38のシリンダーユニット41を作動させて可動体40を搬送台車1側へ進出移動させたとき、当該可動体40と一体に進出移動する支持板46に取り付けられた電力用コネクタ単体22bと信号用コネクタ単体23bとが搬送台車1側の支持板39に取り付けられた電力用コネクタ単体22aと信号用コネクタ単体23aに嵌合接続される前に、前記支持板46に取り付けられた位置決めピン49a,49bの尖端が搬送台車1側の支持板39に取り付けられた位置決め部材48a,48bの位置決め用孔47a,47bに嵌合し始めるように構成されている。そして、位置決めピン49a,49bが位置決め用孔47a,47bに嵌合して、搬送台車1側の支持板39と同期台車14側の支持板46とが位置合わせされ、搬送台車1(同期台車14)の走行方向と平行な二次元垂直面上での相対移動が阻止された後の更なる支持板46の進出移動により、搬送台車1側の電力用コネクタ単体22aと信号用コネクタ単体23aに対し同期台車14側の電力用コネクタ単体22bと信号用コネクタ単体23bが嵌合接続されるように構成されている。
【0025】
従って、コネクタ操作手段38によって進出移動する可動体40に対して電力用コネクタ単体22a及び信号用コネクタ単体23aが取り付けられた支持板46は、搬送台車1(同期台車14)の走行方向と平行な二次元垂直面上での相対移動が一定範囲内(位置決め用孔47a,47bに対して位置決めピン49a,49bの尖端が入り込める範囲内)で可能なように連結しておくのが望ましい。
【0026】
以上のように構成された搬送設備において、図1に示す作業エリアAの入り口側設定地点Bと出口側設定地点Cに配置された各同期台車14は、その走行経路(ガイドレール24a,24b)の始端待機位置、即ち、搬送台車1の前進方向側とは反対側の端部の待機位置で待機している。そしてこの待機位置で待機している同期台車14の連結手段15は、図5に仮想線で示すように、その挟持具30a,30bがシリンダーユニット36により進出限位置に送り出されて、搬送台車1の被挟持部29を受ける側の挟持具30aは当該被挟持部29の移動経路内に入り込んでいるが、他方の挟持具30bは被挟持部29の移動経路の外側に位置する状態にある。この状況において、搬送台車1が図1に示す作業エリアAの入り口側設定地点Bを通過するとき、当該搬送台車1の被挟持部29が同期台車14側の挟持具30aに当接して、搬送台車1がその被挟持部29と挟持具30aを介して同期台車14を同一方向に押し移動させることになる。この同期台車14が搬送台車1に押されて前進移動を開始した時点で、連結手段15の挟持具30bをシリンダーユニット37により垂直支軸34の周りに閉動させ、搬送台車1側の被挟持部29を同期台車14側の一対の挟持具30a,30b間で挟持させることにより、同期台車14を搬送台車1に一体に連結して、搬送台車1と同期走行させる。
【0027】
上記のように同期台車14が搬送台車1に連結されて同期走行を開始したとき、搬送台車1と同期台車14との間のコネクタ17に併設されているコネクタ位置合わせ手段42の同期台車14側の位置決めピン49a,49bが搬送台車1側の位置決め部材48a,48bの位置決め用孔47a,47bに対してほぼ同心状に対向しているので、コネクタ操作手段38のシリンダーユニット41を作動させ、前記位置決めピン49a,49bを備えた支持板46を搬送台車1側に進出移動させると、当該位置決めピン49a,49bが搬送台車1側の位置決め部材48a,48bの位置決め用孔47a,47bに挿入され、当該支持板46に取り付けられている同期台車14側の電力用コネクタ単体22bと信号用コネクタ単体23bが、搬送台車1側の電力用コネクタ単体22aと信号用コネクタ単体23aに対して同心状に位置合わせされる。この状態で更に支持板46がシリンダーユニット41により進出限位置まで進出移動することにより、図9に示すように、同期台車14側の電力用コネクタ単体22bと信号用コネクタ単体23bが搬送台車1側の電力用コネクタ単体22aと信号用コネクタ単体23aに嵌合して接続状態に切り換わる。
【0028】
以上のように同期台車14を搬送台車1と同期走行させた状態で搬送台車1と同期台車14との間のコネクタ17を接続状態に切り換えたならば、同期台車14上の制御手段16の制御装置21に設定されている制御手順に従って、モーターコントローラー19から電力用コネクタ単体22a,22bを経由して搬送台車1側の昇降駆動手段9の減速機付きモーター12を起動し、チエン駆動手段11a,11bを稼働させてチエン10a,10bを突き上げ又は引き下し駆動して、被搬送物支持台2を、当該作業エリアAに設定されている高さ、即ち、図2に仮想線で示す最低レベルと同図に実線で示す最高レベルとの間の範囲内で該作業エリアAに設定されている高さまで昇降させる。このとき、減速機付きモーター12と連動して作動する搬送台車1側のパルスエンコーダー20からの発信パルスを、信号用コネクタ単体23a,23bを介して同期台車14側の制御装置21に取り込むことが出来るので、当該制御装置21において前記パルスエンコーダー20からの発信パルスを被搬送物支持台2の昇降駆動開始時から計数した計数値(被搬送物支持台2の現在高さ値)と、当該制御装置21に設定された速度制御プログラム上の設定値(被搬送物支持台2の目標高さ値)との比較に基づいて、減速機付きモーター12の加速、減速、及び停止の速度制御を自動的に行わせ、被搬送物支持台2を作業エリアAに設定された高さまで安全(円滑)且つ効率良く昇降させることが出来る。
【0029】
上記のようにして、作業エリアAの入り口側設定地点Bを通過する搬送台車1の被搬送物支持台2を当該作業エリアAに設定された高さまで昇降させ、出口側設定地点Cを通過する搬送台車1の被搬送物支持台2を当該作業エリアAの下手側の作業エリアに設定された高さまで昇降させるのであるが、その被搬送物支持台2の高さ切換えが完了したならば、コネクタ操作手段38のシリンダーユニット41により支持板46を元の後退限位置まで後退移動させ、コネクタ17の同期台車14側の電力用コネクタ単体22bと信号用コネクタ単体23bを搬送台車1側の電力用コネクタ単体22aと信号用コネクタ単体23aから離脱させると共に、コネクタ位置合わせ手段42の同期台車14側の位置決めピン49a,49bを搬送台車1側の位置決め部材48a,48bの位置決め用孔47a,47bから離脱させ、この後、連結手段15のシリンダーユニット36,37により、挟持具30bを挟持具30aに対して開動させると共に両挟持具30a,30bを元の後退限位置まで後退させる。この結果、同期台車14は搬送台車1に対して完全に切り離されたことになるので、当該同期台車14の減速機付きモーター27を稼働させ、鍔付き車輪26a,26bを後進方向に回転駆動して同期台車14を元の待機位置、即ち、作業エリアAの入り口側設定地点B及び出口側設定地点Cに対する待機位置まで後進走行させ、当該待機位置で次の搬送台車1を待たせることが出来る。
【0030】
尚、自動車組立てライン上の搬送台車1は極低速で連続走行するものであるから、同期台車14を搬送台車1に連結して同期走行を開始させた後、被搬送物支持台2を所定レベルまで昇降させ終わるまでに要する同期台車14の走行距離は、1台の搬送台車1の全長より十分に短い。従って、上記の同期台車14から供給される電力で昇降駆動手段9を作動させて被搬送物支持台2を昇降駆動するときの昇降高さが最大であっても、次の搬送台車1が作業エリアAの入り口側設定地点B及び出口側設定地点Cを通過する前に、前記被搬送物支持台2に対する昇降駆動が完了した同期台車14を、当該作業エリアAの入り口側設定地点B及び出口側設定地点Cに対する待機位置まで戻すことが出来る。
【0031】
又、上記のように同期台車14の待機位置から搬送物支持台2に対する昇降駆動が完了するまでの同期走行距離は短いので、当該同期台車14に対する給電は、この同期台車14と地上側との間に介在させたケーブル支持手段で支持させた給電線により簡単に行うことが出来るが、勿論、給電レールと集電子により行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の搬送設備は、車体を昇降自在に支持するモーター駆動の被搬送物支持台を備えた、自動車組立てラインにおける車体搬送手段として活用することが出来る。
【符号の説明】
【0033】
1 搬送台車
2 被搬送物支持台
7a,7b パンタグラフリンク機構
9 昇降駆動手段
10a,10b 突き上げ引き下し用チエン
11a,11b チエン駆動手段
12 減速機付きモーター
14 同期台車
15 連結手段
16 制御手段
17 コネクタ
18 電力及び信号伝達手段
19 モーターコントローラー
20 パルスエンコーダー
21 制御装置
22a,22b 電力用コネクタ単体
23a,23b 信号用コネクタ単体
24a,24b ガイドレール
25a〜26d 鍔付き車輪
27 減速機付きモーター
28 回転軸
29 被挟持部
30a,30b 挟持具
31 連結離脱操作手段
32,44a,44b スライドガイド
34 垂直支軸
35 可動板
36,37,41 シリンダーユニット
38 コネクタ操作手段
39,46 支持板
40 可動体
42 コネクタ位置合わせ手段
45a,45b スライドロッド
47a,47b 位置決め用孔
48a,48b 位置決め部材
49a,49b 位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路上を走行する搬送用走行体にモーター駆動の被制御装置が搭載され、この被制御装置を前記走行経路中の設定地点通過時に作動させるように構成された搬送設備において、前記被制御装置の駆動用モーターを当該被制御装置に併設された作動量検出手段からの検出信号に基づいて制御する制御手段が、前記搬送用走行体上ではなく前記走行経路側に設けられ、前記設定地点には、前記制御手段から前記駆動用モーターへの電力の供給と前記作動量検出手段から前記制御手段への検出信号の伝送を前記搬送用走行体の走行状態で行う電力及び信号の伝達手段が設けられている、搬送設備。
【請求項2】
前記電力及び信号の伝達手段が、前記設定地点を通過する前記搬送用走行体の前進走行と同期して前進走行する同期台車と、この同期台車と前記搬送用走行体との間に設けられた電力及び信号の伝達用コネクタとを備え、前記コネクタを構成する互いに接離自在なコネクタ単体の内、前記同期台車側のコネクタ単体を前記搬送用走行体側のコネクタ単体に対して接続離脱操作するコネクタ操作手段が前記同期台車に設けられている、請求項1に記載の搬送設備。
【請求項3】
前記同期台車は、前記搬送用走行体の走行経路と平行な同期台車走行経路に往復移動自在に支持されると共に、前記搬送用走行体に対する連結手段と、この連結手段の連結離脱操作手段と、前記同期台車走行経路の終端から始端位置へ戻るための後退走行用駆動手段を備えている、請求項2に記載の搬送設備。
【請求項4】
前記搬送用走行体は、床面上に敷設されたガイドレール上を走行する台車から成り、前記モーター駆動の被制御装置は、前記搬送用走行体上に昇降自在に支持された被搬送物支持台とその昇降駆動手段であり、この昇降駆動手段の駆動用モーターの伝動系には、前記被搬送物支持台が重力で降下するのを阻止するセルフロック機能を有する減速機が介装され、前記設定地点として、前記被搬送物支持台を所定高さまで昇降させる地点が設定されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送設備。
【請求項5】
前記作動量検出手段が前記駆動用モーターに連動するパルスエンコーダーであり、前記駆動用モーターは周波数により速度制御可能な交流モーターであり、前記制御手段は、前記駆動用モーターを速度制御するインバーターを備えると共に、前記駆動用モーターの起動後の前記パルスエンコーダーの発信パルスの計数値に基づいて前記インバーターを介して前記駆動用モーターの速度制御と停止を行う、請求項1〜4の何れか1項に記載の搬送設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−246127(P2012−246127A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121504(P2011−121504)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】