説明

携帯トイレ装置

【課題】 屋外や乗車中の車内あるいは避難場所等において、とくに、女性あるいは高齢者、病人等が違和感なくしかも他人にその動作を気付かれることなく、簡便かつ手軽に用いられる携帯トイレ装置を提供する。
【解決手段】 ベルト部3とスカート部4からなる腰周りを被覆する柔軟性を有する適宜幅のシート状の腰カバー材1と吸水シートを備えた携帯トイレ具とより構成されるもので、スカート部4の適宜位置に、手を挿入できる程度の挿通孔部6を穿設し、この挿通孔部6に連通する差込部7を裏面に形成したポケット部8を取付けてなるもので、着座または腰掛けた状態で、腰回りから足部にかけての下半身を卷回して着装され、携帯トイレ具の設置を始めとする種々なる操作を腰回りから下方の必要部分を着衣の上から被覆して遮蔽することにより行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外や乗車中の車内あるいは避難場所等において、とくに、女性あるいは高齢者、病人等が違和感なくしかも他人にその動作を気付かれることなく、簡便かつ手軽に用いられる携帯トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドライブ中に渋滞で足止めされたとき、あるいは観光地等の人が集まりやすい場所等の待ち時間が掛かる公衆トイレの長い行列に立たされたとき等、とくに女性にとっては、肉体的、精神的な苦痛が伴い、また地震や水害等の災害に見舞われて一時的とはいえ避難場所で多くの見知らぬ人々と寝起きしたときには、周囲が気になってトイレに行きづらく、例え簡易トイレが設置されても使用頻度が高く汚染されやすく、しかも野外の人目に触れやすい場所に設置されることが多く、女性の避難者のストレスの要因となっていた。さらに、高齢者が夜中に薄い寝巻きや素足でトイレに行き思わぬ事故になる場合が多々見られた。
【0003】
これらを考慮して持ち運びを可能とする様々の携帯用トイレが出回っているが、その多くはトイレ、すなわち便器に重点がおかれ、使用者が男性の場合は適用されても女性には使用できないものが多く、このため人体を覆って使用するものも見られる。
【0004】
この種の乗車中の車内や屋外等で女性でも使用することができる簡便なフードつきの携帯用トイレとしては、吸収材が備えられた袋状の液体非透過性容器と、上面に開口部が設けられた前記容器を挿入可能な中空の便座体と、頭部にかぶる帽子体とこの帽子体の縁から垂下された不透明なカバーとから構成される遮蔽体からなるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、形状記憶処理等により組立を要することなく、周縁部と前縁部とが直立可能に形成され、ポケットやバックに収納できるように気密性を有する軟質シート材からなるホルダと、ホルダの内部に固着される吸収材からなる吸水体と、不透明材からなり人体の下半身の全体を覆う部分から形成されているカバーとを備えて、カバーを人体の下からはいて、人体の下半身の全体を覆った状態で小用を済ませる携帯トイレの使用方法もある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】 登録実用新案代3001081号公報
【特許文献2】 特許第3624397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この種の従来のカバーつき携帯トイレは、前者においては、不透明なカバーを頭から下まで全身を被って、外部から遮蔽することによって使用に供するものであるが、被るという動作によって使用者本人及びその前後の動作を遮蔽されるが、特に走行中あるいは停車中の車内においては、カバーを被ることにより周囲に違和感が生じ、その行為を第三者に知られたり、他の車から目視されたりすることになりかねず、さらに、様々の動作を被った状態の限られたスペースの中で行わなければならないという不便さがみられ、また、視界を確かめることができないため使用者本人に不安感が生じる恐れがあった。
【0008】
さらに、後者の携帯トイレにおけるカバーは、下から穿いて下半身を隠蔽する場合においても直接的な動作を隠蔽することは可能であるが、中腰やしゃがむという動作が加わるため、周囲に人の目があるときは、全体の動作が知られてしまう恐れがあり、また、狭い車の中での成人の使用には限度があった。さらに、下から穿くという動作はその動きが大きくまた煩雑さを伴い、かつ、時間を要するというという欠点がみられた。
【0009】
本発明は、車内や室内等の常設のトイレ以外の人の目に触れる場所で行う排泄という直接的な行為を隠蔽するとともにその前後の様々の準備行為や後処理をできるだけ自然の姿勢・動作の中で行い、かつ、同乗者あるいは外部に対して違和感がなく、しかも簡便かつ容易に行うことができ、とくに女性または高齢者が安心して使用に供することができる携帯トイレ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る携帯トイレ装置は、ベルト部とスカート部からなる腰周りを被覆するシート状の腰カバー材と、筒状本体の上面を便座面とし、前記筒状本体の底面に吸水シートを着脱可能に敷設してなる携帯トイレ具とよりなり、前記腰カバー材は、柔軟性を有するスカート部の両側に偏して挿通孔部を穿設し、裏面側に差込部を形成するポケット部を前記挿通孔部に被冠して取付け、着用時正座または椅子に腰掛けた状態で腰カバー材のスカート部を巻き付けて、腰周りから下方および所定の位置に着設された携帯トイレ具を被覆し、外側から差込部に差込まれた手を、挿通孔部を通ってスカート部の内側に挿入して事前処理及び事後処理を行うことを特徴とするものである。
【0011】
さらに、腰カバー材のスカート部の適宜位置に取り付けられるポケット部には、その一方にテッシュを、他方に防臭収納袋を備えて事後の始末を速やかに行うものである。
【0012】
さらに、携帯トイレ具は、筒状本体の上面を便座面とし、前記筒状本体の底面に敷設される吸水シートの両側に便座を跨架する紐を備えてなるものである。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成を有する本発明に係る携帯トイレ装置によれば、野外、走行中または渋滞で停車中の車内、避難場所、あるいは、迅速な行動を起こしにくい高齢者や病人のベッド等の常設のトイレ以外の人の目に触れる場所で行う緊急時の羞恥が伴う排泄行為を隠蔽するのみならず、排泄に伴う事前準備や事後処理のための操作・動作を、通常もしくはそれに近い正座または椅子に腰掛けた状態で、外部の目に晒したり、近くの同乗者や同伴者等に迷惑をかけたりすることなく円滑に行うことができる。
【0014】
さらに、携帯トイレ具のセッティングや下着や着衣の類の移動等の様々の事前準備やテッシュの使用、着衣の直し、排泄物の始末といった事後処理を、排泄行為とともにできるだけ自然の姿勢・動作の中で行うことができる。
【0015】
さらに、被覆して隠蔽される部分を下半身とすることで、一連の動作・行為を使用者自身が回りの状況や他人の目を確かめながら行われ、同乗者あるいは外部に対して違和感や嫌悪感を与えることがなくしかも使用者自身の不安感を解消して、安心して用いることができる。
【0016】
しかも、一連の動作・行為は、スカート部に設けられているポケット部に穿設されている差込部および挿通孔部より手を挿入することにより簡便かつ容易に行うことができ、また、あたかもポケット部に手を入れたような自然の仕草で周囲の目を気にすることなく処理に当たるもので、とくに女性または高齢者が安心して使用に供することができる。
【0017】
さらに、腰カバー材を構成するスカート部の適宜位置にポケット部が取り付けられ、その一方にはテッシュを、他方に防臭収納袋を備えることにより、緊急かつ時間的余裕のない場合でも、確かめたり、人手を借りたりすることなく、しかも手を潜らせた状態でテッシュを取り出し、また、使用済みの携帯トイレ具の吸水シートを収納するための防臭収納袋が取り出され、事後の始末を速やかに行うことができる。また、ポケット部に予め収納される防臭収納袋の防臭作用により、周りに異臭等の不快な臭いを防ぐことができる。
【0018】
さらに、携帯トイレ具は筒状本体の底面に吸水シートを敷設することにより、飛散や漏洩を防ぎ、しかも吸水シートの両側に便座を跨架するように設けられている紐を引き上げて使用済みの吸水シートを防臭収納袋に容易に収納することができる。
【0019】
さらに、携帯トイレ具は、正座または椅子に腰掛けた状態で使用される程度の立ち上がり部を有して、その姿勢を自然の正座や腰掛け状態のまま使用に供されることができ、また筒状本体の上面に設けられる便座面は、円弧状面とすることにより着用した際痛痒等の違和感や隙間の発生がなく安心して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明に係る携帯トイレ装置につき、添付図面を用いて説明する。図1は本発明を構成する腰カバー材の正面状態を示す略示図、図2は同じく腰カバー材に取り付けられたポケット部付近を示す拡大図で(イ)は正面図(ロ)は断面図、図3はポケット部の他の例を示す断面図、図4は携帯トイレ具の斜視図、図5は携帯トイレ具に用いられる吸水シートを示す平面図、図6は使用状態の一例を示す略示図、図7は本発明に係る携帯トイレ装置の携帯収納バックの概略図である。
【0021】
本発明に係る携帯トイレ装置は、図1及び図4に示すように、腰周りを被覆するシート状の腰カバー材1と携帯トイレ具2とより構成されて、図6に示すように、正座または椅子に腰掛けた状態で使用に供されるものである。
【0022】
腰カバー材1は、図1に示すように、着衣に使用される布地等の柔軟性を有する材料を用いて製せられるベルト部3とスカート部4から幅広のシート状に形成され、使用する際には、腰回りから足部にかけての下半身を卷回して、ベルト部3の両端側に設けられている面ファスナー等の着脱操作が容易な止着手段5を用いて着装され、携帯トイレ具2の設置を始めとする種々なる操作を腰回りから下方の必要部分を着衣の上から被覆して遮蔽することにより行うものである。
【0023】
この腰カバー材1には、図2に示すように、スカート部4のやや両側の適宜位置、すなわち、その着装状態において大腿部付近に位置して、使用者20が外側から腰カバー材2の内部に手を挿入できる程度の空間を有する挿通孔部6を穿設し、この挿通孔部6を被冠して、その裏面側にスカート部4との間に上端を開口とする空隙からなる差込部7を形成したポケット部8が縫製その他の手段により一体的に取付けられている。
【0024】
このようにして、使用者20は、図6に示すように、着座または腰掛けた状態で腰カバー材1を腰回りから下の下半身に巻きつけて着装した状態において、外側からポケット部8の裏面側に形成されている差込部7に手を差し込んで、挿通孔部6を通ってスカート部4の内部に挿入されるもので、あたかもポケット部8に手を入れたような自然の仕草で周囲の目を気にすることなく処理に当たるものである。
【0025】
また、裏面側に差込部7を形成してスカート部4の両側に設けられるポケット部8は、その収納部分9には、テッシュ10また防臭収納袋11等の必要とされる用品類が収納され、このテッシュ10及び防臭収納袋11は、ポケット部8の裏面に設けられた取出口12を用いて、スカート部4の内部に手を潜らせた状態で取り出せるようになっている。
【0026】
なお、ポケット部8の裏面側に形成される差込部7を介して手をスカート部4の内側に挿入させ、取出口12はテッシュ10や防臭収納袋11等をスカート部4の内側から取りさす際に利用されるものとして説明したが、図3に示すように、ポケット部8とスカート部4との間に挿通孔部6と連通する上端を開口状とする差込部を形成せず、このポケット部8の収納部分12に手を差し込んで挿通孔部6を介して内部に挿入するものであってもよい。
【0027】
また、挿通孔部6は、腕が挿通でき比較的自由な動きができる程度の大きさをもった穴状とする以外スリット状のものであってもよい。
【0028】
携帯トイレ具2は、図4に示すように、正座または椅子に腰掛けた状態で使用される程度の立上がり部13を有し、上方を開口状とする筒状本体14の上面周縁には表面を円弧状とする便座面15が形成され、この筒状本体14の底面には、着脱可能な吸水シート16が予めまたは使用する際に敷設される。
【0029】
吸水シート16は、図5に示すように、筒状本体14の底面の全面に亘って略均一に敷設され、また、飛散防止のため筒状本体14の内壁面側に延設されるものでもよく、さらに、その周縁の対向位置には紐7が設けられて、その敷設状態において、図4に示すように、便座面15を跨架して筒状本体14より外部に延設されて、事後この紐17を持って筒状本体14より取り出すものである。また、便座面15は、内側すなわち筒状本体14側を傾斜面とすることにより、さらに使用時の飛散を防ぐことができる。
【0030】
このように構成される本発明に係る携帯トイレ装置は、使用時、図7に示すように、備え付けの専用の持ち運び可能な携帯収納バッグ18から吸水シート16を備えた携帯トイレ具2およびテッシュ9と防臭収納袋10をポケット部8に収納して折り畳んである腰カバー材1を取り出し、図6に示すように、周囲を確かめながら正座または椅子に腰掛けた状態で、腰カバー材1のシート状のスカート部4を腰周りに巻き付けて、ベルト部3の止着手段5で止めて下半身を被覆して、吸水シート16を敷設した携帯トイレ具2を所定の位置に着設し、周囲に気付かれぬように差込部7から差し込んだ手を、挿通孔部6を通ってスカート部4の内部に挿入して所定の動作を行って使用に供するものである。
【0031】
また、使用後は、使用時と同様使用者20自身が周囲の状況を目視して、確かめながら手をスカート部4の内部に挿入した状態で、ポケット部8の裏面の取出口12よりテッシュ10を取って始末し、さらに他方のポケット部8から防臭収納袋11を、テッシュ10と同様取出口12より取り出して、紐17を利用して携帯トイレ具2から抜去した使用済みの吸水シート16を収納し、着衣を直して事後処理が終った状態で、差込み時と反対の操作で手を抜き出して腰カバー材1を外し、また携帯トイレ具2を外して携帯収納バッグ18に収納し、使用済みのものを携帯収納バッグ18に設けた袋状のゴミ収納部19に収容してなるものである。
【0032】
なお、使用方法やその手順等は、必ずしも一様ではなく適宜その状態や状況に応じて対応することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 本発明に係る携帯トイレ装置を構成する腰カバー材の正面状態を示す略示図。
【図2】 腰カバー材のポケット部を拡大したもので(イ)は部分拡大図、(ロ)は拡大断面図。
【図3】 同じくポケット部の他の例を示す要部断面図。
【図4】 携帯トイレ具の一例を示す斜視図。
【図5】 吸水シートを示す平面図。
【図6】 本発明に係る携帯トイレ装置の使用状態の一例を示す略示図。
【図7】 本発明に係る携帯トイレ装置に用いる携帯収納カバンを示す概略図。
【符号の説明】
【0034】
1 腰カバー材
2 携帯トイレ具
3 ベルト部
4 スカート部
5 止着手段
6 挿通孔部
7 差込部
8 ポケット部
9 ポケット部8の収納部分
10 テッシュ
11 防臭収納袋
12 ポケット部8の取出口
13 携帯トイレ具2の立上り部
14 携帯トイレ具2筒状本体
15 携帯トイレ具2便座面
16 吸水シート
17 紐
18 携帯収納カバン
19 ゴミ収納部
20 使用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト部とスカート部からなる腰周りを被覆するシート状の腰カバー材と、筒状本体の上面を便座面とし、前記筒状本体の底面に吸水シートを着脱可能に敷設してなる携帯トイレ具とよりなり、前記腰カバー材は、柔軟性を有するスカート部の両側に偏して挿通孔部を穿設し、該挿通孔部を被冠し、かつその裏面に差込部を形成するポケット部を取付け、着用時正座または椅子に腰掛けた状態で腰カバー材のスカート部を巻き付けて、腰周りから下方および所定の位置に着設された携帯トイレ具を被覆し、外側から差込部に差込まれた手を挿通孔部を通ってスカート部の内側に挿入されることを特徴とする携帯トイレ装置。
【請求項2】
前記腰カバー材のスカート部に形成されるポケット部には、一方にテッシュを、他方に防臭収納袋を備えてなる請求項1記載の携帯トイレ装置。
【請求項3】
前記携帯トイレ具は、筒状本体の上面を便座とし、前記筒状本体の底面に敷設される吸水シートの両側に便座を跨架する紐を備えてなる請求項1及び2のいずれかに記載の携帯トイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−203025(P2007−203025A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56920(P2006−56920)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(506073063)
【Fターム(参考)】