説明

撮像光学系およびカメラ装置および携帯情報端末装置

【課題】大口径で小さいFナンバを有し、撮影性能が良好で、NDフィルタの使用によるゴーストの発生を有効に軽減できる撮像光学系を実現する。
【解決手段】開口絞りSと、開口絞りSの物体側に配置される第1レンズ群G1と、像側に配置される第2レンズ群G2と、第1、第2レンズ群の光軸方向における開口絞りSの位置と略同位置に配置される平行平板状のNDフィルタNDとを有し、第2レンズ群G2は全体として正の屈折力を有し、NDフィルタNDは光軸から退避可能であって、光量を減衰可能であり、光の波長領域:400nm〜700nm内における平均反射率を、物体側からの入射光につきR1、像側からの入射光につきR2とするとき、これらR1、R2が条件:(1)R1/R2>2.0 を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮像光学系およびカメラ装置および携帯情報端末装置に関する。
【0002】
この発明の撮像光学系は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラの撮影用レンズ系として好適に用いることができるほか、銀塩写真カメラの撮影用レンズ系として用いることができる。
【0003】
従ってこの発明のカメラ装置は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、銀塩写真カメラとして実施できる。そして、このデジタルカメラやデジタルビデオカメラを撮影機能部として通信等の情報処理を可能とした携帯情報端末装置を実現できる。
【背景技術】
【0004】
デジタルカメラが広く普及し、性能も高くなってきており、カメラのタイプも多様化してきている。その中で「高性能な単焦点レンズを搭載した小型で高画質のコンパクトカメラ」を求めるユーザも多く、高性能であることに加えFナンバが小さい「大口径」のものの実現に対する期待が大きい。
【0005】
Fナンバが小さいカメラ装置を、例えば「晴天の日中」など、明るい環境で使用するには「高速シャッタの切れるシャッタユニット」の搭載が必要となる。
一般的なレンズ一体型デジタルカメラでは、シャッタを「絞り羽根付近」に備えることが多く、Fナンバが小さくなって開口絞りが大きくなるほど、シャッタの高速化が必要となり、これを実現するためにシャッタユニットが大型化したり、消費電力が大きくなったりし易い。
【0006】
この問題を回避する方策として、光量減衰用のNDフィルタ(ニュートラル・デンシティ・フィルタ)を使用することが、特許文献1〜4等に提案されている。
シャッタユニットにNDフィルタを内蔵し、結像レンズ系の光軸位置に対して挿入・退避を可能とし、通常は光軸から退避させておき、必要に応じて光軸上に挿入して開口絞り全体を覆い、撮影光量を減衰させた状態でシャッタを動作させる。
【0007】
このようにすれば、シャッタ速度をさほど高速化しなくても、明るい環境で適正な撮影が可能になる。
【0008】
また、開口径を小さくせずに撮影光量を減衰させることで、光の回折による光学性能の劣化を抑制することができ、また、被写界深度の浅い撮影も可能となる。
【0009】
さらに、NDフィルタを開口絞り近傍に配設すると、NDフィルタの「光軸上への挿入・退避時の駆動源や電源」をシャッタと共通化でき、撮影光束全体を覆うのに大面積を必要としないという利点がある。
【0010】
しかしながら反面、NDフィルタの開口絞り近傍への配置は、撮像素子側からの反射光によるゴーストを発生させ得るという問題を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、大口径で小さいFナンバを有し、撮影性能が良好で、NDフィルタの使用による明るいゴーストの発生を有効に軽減もしくは防止できる撮像光学系およびこれを用いるカメラ装置・携帯情報端末装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の撮像光学系は、開口絞りと、第1および第2レンズ群と、NDフィルタを有する。
【0013】
「第1レンズ群」は、開口絞りの物体側に配置される。
「第2レンズ群」は、開口絞りの像側に配置される。第2レンズ群は全体として「正の屈折力」を有する。
【0014】
上記開口絞りと第1および第2レンズ群は「結像光学系」を構成する。
「NDフィルタ」は、撮影光束の光量を減衰させるものであって平行平板状であり、第1、第2レンズ群の光軸方向における「開口絞りの位置と略同位置」に配置され、光軸から退避可能である。
【0015】
NDフィルタは、その平均屈折率:R1、R2が、条件:
(1) R1/R2 > 2.0
を満足する。
【0016】
条件(1)における平均反射率:R1、R2は、以下のように定義される。
即ち、光の波長領域:400nm〜700nmを、略等間隔にn(≧5)分した各波長:λi(i=1〜n)とする。
波長:λiは、400nmを含むことができ、700nmを含むこともできる。
例えば、n=5とする場合、波長:λi(i=1〜5)を、400nm、475nm、550nm、625nm、700nmのように選ぶことができる。あるいは、n=7として、400nm、460nm、520nm、580nm、640nm、700nmとすることもできる。
【0017】
平均反射率:R1は、NDフィルタに対し、波長:λiの光を入射光量:I1iで物体側から入射させたとき、NDフィルタの物体側面による反射光量:R11iおよび、NDフィルタの像側面により反射されて物体側に射出する反射光量:R12iにより、次式:
R1=[Σ{(R11i+R12i)/I1i}]/n (i=1〜n)
で定義される。
【0018】
平均反射率:R2は、NDフィルタに対し、波長:λiの光を入射光量:I2iで像側から入射させたとき、NDフィルタの物体側面により反射されて像側へ射出する反射光量:R21iおよび、NDフィルタの像側面による反射光量:R22iにより、次式:
R2=[Σ{(R21i+R22i)/I2i}]/n (i=1〜n)
で定義される。
【0019】
上記nの上限については特に制限はなく、nが無限大となるとき、上記R1、R2は、連続的に変化する波長:λの光の強度をI1(λ)、I2(λ)、上記反射光量を、R11(λ)、R12(λ)、R21(λ)、R22(λ)として、
R1=∫[{R11(λ)/I1(λ)}+∫{R12(λ)/I1(λ)}]dλ
/(λU−λL7)
R2=∫[{R21(λ)/I2(λ)}+∫{R22(λ)/I2(λ)}]dλ
/(λU−λL7)
(λU、λLはそれぞれ、積分の上限波長(700nm)、加減波長(400nm)
となる。
【0020】
なお、R11i、R12i、R21i、R22iは、上記波長領域:400nm〜700nmの範囲内のn点に対し、最大・最小の幅が、最大値に対して85%以内、好ましくは50%以内であるのが良い。
【0021】
上記平均反射率:R1、R2を、図1を参照して説明する。
【0022】
図1(a)、(b)において、符号NDは「NDフィルタ」を示している。これらの図において、NDフィルタNDの左側が物体側、右側画像側である。
図1(a)において、入射光:I1とあるのは、上の説明で入射光量:I1iとしたものである。また、反射光:R11、R12は、上の説明で反射光量:R11i、R12iとしたものである。
【0023】
図1(b)において、入射光:I2とあるのは、上の説明で入射光量:I2iとしたものである。また、反射光:R21、R22は、上の説明で反射光量:R21i、R22iとしたものである。
【0024】
図1(c)は、波長領域:400〜700nmの範囲における反射率の分光特性の例を示している。例えば、この分光特性が、物体側からの入射光に対するものであるならば、図1(c)の分光特性を波長領域:400〜700nmの範囲について平均したものが、平均反射率:R1に対応する。
【0025】
また、図1(c)の分光特性が、像側からの入射光に対するものならば、図1(c)の分光特性を波長領域:400〜700nmの範囲について平均したものが、平均反射率:R2に対応する。
【0026】
従来から一般に知られているNDフィルタは「光を吸収する有機色素または顔料を混ぜ練り込んだ材料によって作られる練りこみタイプ」のものと、「ベースとなる透明材料の表面に光学薄膜(多層膜)を蒸着して作られる蒸着タイプ」のものとが知られている。
蒸着タイプのNDフィルタは、形成する光学薄膜の分光反射特性を予め設計できるので、ベースとなる平行平面板状の透明材料の表裏にそれぞれ異なる分光反射特性の多層膜を形成することが可能であるので、透明材料表裏の光学薄膜の分光反射率特性を調整することにより、表面側から入射する光に対する平均反射率:R1と、裏面側から入射する光に対する平均反射質:R2を、上記条件(1)を満足するように調整するのが容易である。
【0027】
即ち、NDフィルタとして所望の透過率を得ながら、一方の面側の反射率の上昇を許容することで、他方の面方向への反射率を低減させることが可能である。
請求項1における「NDフィルタ」は、ガラス板等の透明材料を用いる上記蒸着タイプのものや、練りこみタイプのものの少なくとも片面に、前記の如き光学薄膜を形成して、条件(1)を満足させるようにしたものを用いることができる。
【0028】
請求項1記載の撮像光学系は、第1レンズ群の焦点距離:f1、全系の焦点距離:fが、条件:
(2) |f1|/f > 10.0
を満足することが好ましい(請求項2)。
請求項1または2記載の撮像光学系はまた、像高:YI、像面よりも物体側を負方向とする射出瞳距離:APが、条件:
(3) 0.27 > YI/AP > −0.27
を満足することが好ましい(請求項3)。
【0029】
請求項1〜3の任意の1に記載の撮像光学系は「第2レンズ群と像面との間に、平行平板状のフィルタを1以上有する」ことができる(請求項4)。
【0030】
請求項1〜4の任意の1に記載の撮像光学系は、NDフィルタが、開口絞り近傍に配設されるシャッタユニットに内蔵されて「光軸上への配置」と「光軸からの退避」が可能であることができる(請求項5)。
【0031】
この発明のカメラ装置は、請求項1〜5の任意の1に記載の撮像光学系を有するカメラ装置である(請求項6)。
【0032】
このカメラ装置は、銀塩写真カメラとして実施することもできるが、「撮影画像をデジタル情報とする機能」を有することが好ましく(請求項8)、従ってデジタルカメラやデジタルビデオカメラとして好適に実施できる。
【0033】
このカメラ装置は、持ち歩き時等の非撮影時に「結像光学系を沈胴式に収納」するように構成でき、この沈胴式の収納時に結像光学系を構成する一部のレンズ」が光軸上から退避するようにできる。
【0034】
この発明の携帯情報端末装置は「請求項8記載のカメラ装置を撮影機能部として有」する(請求項9)。
【0035】
説明を補足する。
【0036】
この発明の撮像光学系のような構成では、開口絞り径の拡大を防ぎ、且つ、開口絞りの両側に位置する第1、第2レンズ群間の過大な収差のやり取りを抑制する必要がある。
即ち、「第1レンズ群と第2レンズ群のパワーバランス」を考慮する必要がある。
しかし、第1、第2レンズ群のパワーバランスを適正化して結像光学系の性能を良好にすると、開口絞り近傍における軸上マージナル光線が「光軸と平行に近い角度」となりやすい。
そのため、軸上マージナル光線が、反射率の高い撮像素子の像面や、一般的には反射防止膜を形成できない撮像素子封止ガラス(撮像素子としてのCCDやCMOSのシールガラス)からの反射光が、開口絞り近傍位置に配設されるNDフィルタ面で再度像面方向に反射すると「像面付近で焦点を結ぶような非常に明るいゴースト」を発生させてしまう。
【0037】
また、デジタルカメラにおいては、各画素に色フィルタやマイクロレンズを有するエリアセンサの構造から「射出瞳位置を像面から遠ざけ、周辺光束がセンサ表面に対し垂直に近い角度で入射する」ことが好ましい。
【0038】
周辺光束が垂直に近い角度で「反射率の比較的高い撮像素子やフィルタ類」に入射すると、撮像素子表面やフィルタ類で反射された周辺光も、開口絞り近傍位置に配設されるNDフィルタのフィルタ面で再度像面側に反射すると「像面付近で焦点を結ぶような非常に明るいゴースト」を発生させてしまう。
条件(1)は、このようなゴーストの発生を有効に抑制する条件である。
【0039】
条件(1)の下限値を超えると、NDフィルタの平均反射率:R1、R2において、像側からNDフィルタに入射して像側へ反射される反射光の平均反射率:R2が、物体側からNDフィルタに入射して物体側へ反射される反射光の平均反射率:R1に対して相対的に大きくなり、像側への反射光量が増大して「像面付近で焦点を結ぶ非常に明るいゴースト」を発生させ易くなる。
【0040】
条件(1)は、上記の如くゴーストの発生を有効に抑制する条件であり、明るいゴーストの発生は主として、NDフィルタの像側面に像側から入射して像側へ反射される光により生じるものであるから、平均反射率:R2は「0」であることが理想であり、平均反射率:R1も条件(1)を満足する範囲内で小さいことがこのましく、これら平均反射率:R1は、せいぜい10%以下程度、R2は、せいぜい2%以下程度であることが好ましく、条件(1)の下限値は、5以上であることが好ましい。
【0041】
条件(2)は、結像光学系としての性能を確保する条件である。
【0042】
第2レンズ群は全体として正の屈折力を有するが、第1レンズ群は全体として「正の屈折力」を持つこともできるし、「負の屈折力」を持つこともできる。
【0043】
第1レンズ群の屈折力が全体として正のときに、条件(2)の下限値を超えると「全系の焦点距離:fに対する第1レンズ群の焦点距離:f1が長くなりすぎ、第1レンズ群の正の屈折力が相対的に低くなり、第1レンズ群の収差補正能力が減少し、歪曲収差を始めとする各種収差の補正が困難となり易い。
また、第1レンズ群の屈折力が全体として負のときに、条件(2)の下限値を超えると、第1レンズ群の負の屈折力が弱くなるため、開口絞り径が過大となり易く、コンパクトな撮像光学系を構成することが困難になる。
さらに、第1、第2レンズ群間で「やり取りされる収差」が過大となり、開口絞りを挟んだ群同士の偏心感度が上昇し過ぎる恐れもある。
さらにまた、第2レンズ群の屈折力を相対的に強くしなければならず、像面の曲がりが大きくなったり、負の歪曲収差が大きく発生しやすくなったりし易い。
【0044】
第1レンズ群の屈折力の正負に関わらず、条件(2)の下限値を超えると、第1レンズ群内における「球面収差をはじめとする諸収差のやり取り」が過大となって、第1レンズ群のレンズ間の偏心や空気間隔に対する要求精度が高くなりすぎる恐れがある。
【0045】
条件(3)の上限値、下限値のどちらを超えても、周辺光束が「像面に対してある程度の角度を持って入射」することとなり、「各画素に色フィルタやマイクロレンズを有するエリアセンサの表面に対し、周辺光束が垂直に近い角度で入射する」という好ましい状況を実現できない。
【0046】
また、このように、周辺光束が「像面に対してある程度の角度を持って入射」すると、条件(1)を満足するNDフィルタを用いてゴーストを軽減する効果が薄れてしまう。
【0047】
条件(3)を満足すると、周辺光束においても、像面に対して垂直に近い角度で光線が入射することとなり、上記条件(1)を満足するNDフィルタを開口絞りと略同位置に用いてゴーストの発生を有効に軽減させることができる。
【0048】
CCDやCMOSなどの固体撮像素子は、赤外側の感度が高く、また周期的な離散構造であるため、撮像光学系中に、赤外カットフィルタやローパスフィルタを用いられることが多い。
像面近傍に平行平板状の前記のような各種フィルタ類を配設することで、各種フィルタからの反射光が、像面からの反射光とほぼ同様の光路を辿ってゴースト発生の原因となるが、これら各種フィルタからの反射光に起因するゴーストも条件(1)を満足し、開口絞りと略同一位置に設けられるNDフィルタにより有効に軽減させることができる。
【0049】
また、請求項5のように、NDフィルタを「開口絞り近傍に配設されるシャッタユニットに内蔵」することにより、光軸位置に対する挿入・退避を行なう機構や電源をシャッタユニット内にシャッタと共有して構成でき、撮像光学装置をコンパクトに構成することが可能となる。
【0050】
上記の如く、この発明の撮像光学系は、開口絞りと、この開口絞りの物体側に配置される第1レンズ群と、上記開口絞りの像側に配置され正のパワーを有する第2レンズ群とで構成されるものであり、具体的なレンズ構成としては種々の構成が可能である。
撮像光学系の好ましいレンズ構成としては、後述する実施例のように、以下のものが考えられる。
【0051】
「第1レンズ群」は、物体側から順に、負のパワーを有する第1Fレンズ群と、正のパワーを有する第1Rレンズ群とを、上記第1レンズ群中で最も広い空気間隔を隔して配置してなるのが好ましい。
【0052】
即ち、この場合、第1レンズ群中に配置されたレンズ間隔(空気間隔)は、第1Fレンズ群の最も像側のレンズ面と第1Rレンズ群の最も物体側のレンズ面との間の間隔が、第1レンズ群中で最も大きい。
【0053】
「第1Fレンズ群」は、少なくとも2枚の負レンズを有するのが良い。
「第1Rレンズ群」は、少なくとも1枚の正レンズを有するのが良い。
【0054】
「第2レンズ群」は、開口絞りの像側に配置され、物体側から順に、第2Fレンズ群と、第2Rレンズ群とを配してなるのが好ましい。
【0055】
「第2Fレンズ群」は、この場合、物体側から順に、第1正レンズ、第1負レンズ、第2負レンズ、第2正レンズが、この順序に配置されて、第2Fレンズ群全体としては正のパワーを持つのが良い。
この場合、第1正レンズと第1負レンズとは「正または負の合成焦点距離」を有し、第2負レンズと第2正レンズとが「正の接合レンズ」として接合されてなる。
【0056】
即ち、第2Fレンズ群は「第1正レンズと第1負レンズとによる正または負の合成パワー」と、第2負レンズと第2正レンズが接合された「正の接合レンズ」による正の合成パワーとにより、第2Fレンズ群全体として「正のパワー」を持つ。
「第2Rレンズ群」は、少なくとも1枚のレンズを有するのが良い。
【発明の効果】
【0057】
以上に説明したように、この発明によれば、後述の実施例に示すように撮影性能が良好で、NDフィルタの使用により「大口径で小さいFナンバ」を有するにも拘わらず、明るい環境での撮影が可能であり、なお且つNDフィルタの使用に起因するゴーストの発生を有効に軽減できる撮像光学系およびこれを用いるカメラ装置・携帯情報端末装置の実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】請求項1記載の条件(1)の、平均反射率:R1、R2を説明する図である。
【図2】撮像光学系の実施の1形態を示す図である。
【図3】撮像光学系の実施の別形態を示す図である。
【図4】携帯情報端末の実施形態を示す図で、(A)は正面側斜視図、(B)は裏面側斜視図である。
【図5】携帯情報端末装置のシステム構造例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、実施の形態を説明する。
【0060】
図2および図3に、撮像光学系の実施の形態を2例示す。これらの実施の形態は、具体的には、それぞれ後述する実施例1、2に関するものである。混同の恐れは無いと思われるので、これら図2、図3を通じて同一の符合を用いる。
図2、図3に示す撮像光学系は、単焦点の撮像光学系であって、開口絞りSと、この開口絞りSの物体側(図2、図3の左方)に配置される第1レンズ群G1と、開口絞りSの像側(図2、図3の右方)に配置される第2レンズ群G2とで構成される。
【0061】
これらの実施の形態において、第1レンズ群G1は、物体側から順に、負のパワーを有する第1Fレンズ群と、正のパワーを有する第1Rレンズ群とを、第1レンズ群G1中で「最も広い空気間隔」を隔して配置してなる。
【0062】
第1Fレンズ群は、2枚の負レンズ(像側に凹面を向けたメニスカスレンズ)により構成され、第1Rレンズ群は、1枚の正レンズにより構成されている。
【0063】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、第2Fレンズ群と、第2Rレンズ群とを配してなる。
【0064】
第2Fレンズ群は、物体側から順に、第1正レンズ、第1負レンズ、第2負レンズ、第2正レンズが、この順序に配置されて正のパワーを持ち、第1正レンズと第1負レンズとが正または負の合成焦点距離を有し、第2負レンズと第2正レンズとは「正の接合レンズとして接合され」てなる。
【0065】
第2Rレンズ群G2Rは、1枚のレンズを有する。後述の実施例1、2の何れにおいても第2Rレンズ群を構成する1枚のレンズは正レンズである。
【0066】
実施例1、2の撮像光学系において、全系の焦点距離:f、第1レンズ群の焦点距離:f1、像高:YI、像面よりも物体側を負方向とする射出瞳距離:APは、条件(2)および(3)を満足する。
【0067】
さて、図2、図3に実施の形態を示す撮像光学系は、NDフィルタNDを有する。
NDフィルタNDは、図2、図3の如く、開口絞りSの直前の位置に設けられている。
【0068】
NDフィルタNDは、図示されないシャッタユニットに内蔵され、このシャッタユニットに設けられた駆動系により、光軸上への挿入・退避が可能である。
NDフィルタNDは、波長:400nmから700nmまでの平均透過率が「25%」となるように構成された蒸着タイプのもので、厚み:0.07mmの平行平板状の透明PET材を基材として、第1面(物体側面)と第2面(像側面)に異なる多層膜を形成されている。
第2レンズ群G2と像面の間には、赤外・紫外カットコート面と、ローパスフィルタを含むフィルタFが配置されている。
【0069】
図4および図5を参照して、携帯情報端末装置の実施の1形態を説明する。
図4(A)は携帯情報端末装置の「正面側と上部面」とを示し、同図(B)は「背面側と上部面」を示す。
携帯情報端末装置は「撮像光学系」である撮影レンズ1として、上に説明した請求項1〜5の任意の1に記載の撮像光学系(具体的には後述の実施例1、2の適宜のもの)が用いられる。
【0070】
図4において、符号2はファインダ、符号3はフラッシュ、符号4はシャッタボタン、符号5はボディケース、符号6は電源スイッチ、符号7は液晶モニタ、符号8は操作ボタン、符号9はメモリーカードスロットを示している。
【0071】
図5は「携帯情報端末装置」のシステム構成を示す図である。
図5に示すように、携帯情報端末装置は「撮像光学系」である撮影レンズ1と受光素子13を有し、撮影レンズ1によって形成される「撮影対象物の像」を受光素子13によって読取るように構成されている。
受光素子13の出力は、中央演算装置11の制御を受ける信号処理装置14によって処理されてデジタル情報に変換される。即ち、携帯情報端末装置は「撮影画像をデジタル情報とする機能(請求項7)」を有している。
デジタル情報化された撮影画像は、中央演算装置11による制御を受ける画像処理装置12により画像処理される。画像処理された画像は、液晶モニタ7に表示することも、半導体メモリ15に記憶させることもできる。撮影の操作は操作ボタンにより行なわれる。
また、通信カード等16を介して外部に送信することもできる。通信カード16等は、図4(B)に示すスロット9内に収納される。
【0072】
撮像レンズ1は非撮影時にはボディケース5内に沈胴式に収納され、撮影時に電源スイッチ6により電源がオンとなると繰り出されて、図3あるいは図4の配置を取る。
【0073】
「通信カード等16による通信機能」を除いた部分は、携帯情報端末装置における撮影機能部である「カメラ装置」を構成する。
【実施例1】
【0074】
以下に、図2、図3に実施の形態を示した撮像光学系の具体的な実施例を示す。
【0075】
実施例における各記号の意味は以下の通りである。
f:全系の焦点距離
F:Fナンバ
ω:半画角
R:曲率半径
D:面間隔
Nd:屈折率
νd:アッベ数
K:非球面の円錐定数
A4:4次の非球面係数
A6:6次の非球面係数
A8:8次の非球面係数
A10:10次の非球面係数
「非球面」は、近軸曲率半径の逆数(近軸曲率):C、光軸からの高さ:H、円錐乗数:k、上記各非球面係数を用いて、周知の次式で表現される。
【0076】
X=CH2/[1+√(1-(1+K)C2H2)]
+A4・H4+A6・H6+A8・H8+A10・H10+A12・H12+A14・H14+A16・H16+A18・H18
【0077】
また、硝種は、株式会社オハラ、株式会社住田光学ガラスの光学硝種名である。
【0078】
「実施例1」
実施例1のデータを表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
「非球面」
非球面のデータを表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
上記非球面の標記において、例えば「2.3075E-09」は「2.3075×10-9」を意味する。以下の例においても同様である。
【0083】
「条件式のパラメータの値」
条件(1)〜(3)のパラメータの値を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
「実施例2」
実施例のデータを表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
「非球面」
非球面のデータを表5に示す。
【0088】
【表5】

【0089】
「条件式のパラメータの値」
条件(1)〜(3)のパラメータの値を表6に示す。
【0090】
【表6】

【0091】
開口絞りの最大開口径は、実施例1においては3.52mm、実施例2においては3.49mmであり、開口径はそれぞれ可変である。
【0092】
同一露光量の条件下、例えば、晴天の日中、屋外で撮影を行なった場合、この発明を適用していない一般的なNDフィルタ(R1≒R2≒0.02と仮定した。)を用いた結果に対して、EV値換算で、実施例1、2ともにEV1以上のゴースト抑制効果が得られることになる。
【符号の説明】
【0093】
1 撮影レンズ
2 ファインダ
3 フラッシュ
4 シャッタボタン
5 筐体
6 電源スイッチ
7 液晶モニタ
8 操作ボタン
9 メモリーカードスロット
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
S 絞り
F フィルタ
ND 光量を減衰可能な光学フィルタ(NDフィルタ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【特許文献1】特開2006−301473号公報
【特許文献2】特開2000−305018号公報
【特許文献3】特開2007−114283号公報
【特許文献4】特開2008−028963号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口絞りと、この開口絞りの物体側に配置される第1レンズ群と、上記開口絞りの像側に配置される第2レンズ群と、これら第1、第2レンズ群の光軸方向における上記開口絞りの位置と略同位置に配置される平行平板状のNDフィルタとを有し、
上記第2レンズ群は全体として正の屈折力を有し、
上記NDフィルタは上記光軸から退避可能であって、光量を減衰可能であり、
光の波長領域:400nm〜700nmを、略等間隔にn(≧5)分した各波長:λi(i=1〜n)とするとき、
上記NDフィルタに対し、波長:λiの光を入射光量:I1iで物体側から入射させたとき、上記NDフィルタの物体側面による反射光量:R11iおよび、上記NDフィルタの像側面により反射されて物体側に射出する反射光量:R12iにより、
[Σ{(R11i+R12i)/I1i}]/n (i=1〜n)
で定義される平均反射率:R1、
上記NDフィルタに対し、波長:λiの光を入射光量:I2iで像側から入射させたとき、上記NDフィルタの物体側面により反射されて像側へ射出する反射光量:R21iおよび、上記NDフィルタの像側面による反射光量:R22iにより、
[Σ{(R21i+R22i)/I2i}]/n (i=1〜n)
で定義される平均反射率:R2が、条件:
(1) R1/R2 > 2.0
を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項2】
請求項1記載の撮像光学系において、
第1レンズ群の焦点距離:f1、全系の焦点距離:fが、条件:
(2) |f1|/f > 10.0
を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項3】
請求項1または2記載の撮像光学系において、
像高:YI、像面よりも物体側を負方向とする射出瞳距離:APが、条件:
(3) 0.27 > YI/AP > −0.27
を満足することを特徴とする撮像光学系。
【請求項4】
請求項1〜3の任意の1に記載の撮像光学系において、
第2レンズ群と像面との間に、平行平板状のフィルタを1以上有することを特徴とする撮像光学系。
【請求項5】
請求項1〜4の任意の1に記載の撮像光学系において、
NDフィルタが、開口絞り近傍に配設されるシャッタユニットに内蔵されて光軸上への配置と上記光軸からの退避が可能であることを特徴とする撮像光学系。
【請求項6】
請求項1〜5の任意の1に記載の撮像光学系を有するカメラ装置。
【請求項7】
請求項6記載のカメラ装置において、
撮影画像をデジタル情報とする機能を有することを特徴とするカメラ装置。
【請求項8】
請求項7記載のカメラ装置を撮影機能部として有する携帯情報端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−48026(P2011−48026A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194668(P2009−194668)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】