説明

撮像装置、画像処理方法、及びプログラム記憶媒体

【課題】移動する被写体を追尾しながら流し撮りを行ったときに、鮮明な流し撮り画像を得る。
【解決手段】フレーム画像に基づき流し撮りの際の撮影対象画像としての被写体画像を含む画像領域を撮影対象画像存在領域として設定し、撮影対象画像存在領域内に存在する被写体画像を追尾対象画像とみなして撮影対象画像存在領域に対応する対比対象画像領域を時系列的に後続するフレーム画像に対して設定しかつ撮影対象画像存在領域の画像の特徴量を対比対象画像領域の画像の特徴量と比較して対比対象が増量域が追尾対象画像を含む追尾対象画像存在領域であるか否かを判定して時系列的に前後する追尾対象画像存在領域を取得し、前回の追尾対象画像存在領域の座標位置と今回の追尾対象画像存在領域の座標位置との差をフレーム画像の取得時間差に基づいて除算して追尾対象画像の移動速度を計測し、その移動速度に対応する速度表示マークをモニタ画面G上に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する被写体を追尾しながら撮影(いわゆる流し撮り)を行うことができる撮像装置、画像処理方法、及びプログラム記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、移動する被写体を追尾しながら撮影を行うに際し、撮像装置のモニタ画面から被写体が外れて見えなくならないようにそのモニタ画面の表示を制御する方法として、被写体の移動方向の後方に比べて移動方向の前方の撮影領域が大きくなるようにモニター画面の表示を制御する方法(例えば、特許文献1参照。)、被写体のモニタ画面からはみ出さないように被写体を追尾しながらモニタの画面の表示を制御する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0003】
ところで、流し撮り撮影では、図1に模式的に示すように、高速で動いている被写体を撮影するに際し、モニタ画面G上で、被写体画像Oの移動速度と同速度で撮像装置(カメラ)を被写体の移動方向(例えば、矢印A方向)に追従させながら撮影すると、被写体が鮮明に撮影されかつ背景に存在する静止物体の静止物体画像Bが流れることによりぼけて撮影されるという流し撮り写真が撮れる。この流し撮り写真は被写体の高速移動をより一層強調して表現できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、流し撮り撮影に際し、カメラの追従速度を被写体の移動速度に一致させるには高度なテクニックが必要であり、一般ユーザにとってはこのような撮影は困難であって、流し撮り写真を撮影するときには失敗する場合が多い。
【0005】
特許文献1、特許文献2には被写体を追尾しながら、モニタ画面から被写体が消失しないようにモニタ画面Gの表示を制御する制御方法が提案されているが、被写体はモニタ画面Gから消失しなくても、被写体の画面上での移動速度とカメラの追従速度との間に速度差が存在すると、流し撮り撮影の際にモニタ画面G上で被写体画像Oが相対的に動き、被写体画像Oがぼけてしまって、鮮明な流し撮り画像を撮影できないという課題がある。
【0006】
本発明は、移動する被写体を追尾しながら、被写体の流し撮りを行ったときに、鮮明な流し撮り画像を得るのに貢献する撮像装置、画像処理方法、及びプログラム記憶媒体を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、更に言うならば、流し撮りの際の撮影対象画像としての被写体画像を含む画像領域を撮影対象画像存在領域に設定し、この撮影対象画像存在領域内に存在する被写体画像を追尾対象画像とみなして、この追尾対象画像のモニタ画面上の移動速度を計測し、この移動速度に対応する速度表示マークをモニタ画面に表示可能な撮像装置、画像処理方法、及びプログラム記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る撮像装置は、撮影光学系を介して取得されかつモニタ画面上に表示されるフレーム画像に基づき流し撮りの際の撮影対象画像としての被写体画像を含む画像領域を撮影対象画像存在領域として設定する設定処理部と、前記撮影対象画像存在領域内に存在する被写体画像を追尾対象画像とみなして前記撮影対象画像存在領域に対応する対比対象画像領域を前記フレーム画像に時系列的に後続するフレーム画像に対して設定しかつ前記撮影対象画像存在領域の画像の特徴量を前記対比対象画像領域の画像の特徴量と比較することにより対比対象画像領域が前記追尾対象画像を含む追尾対象画像存在領域であるか否かを判定して時系列的に相前後する追尾対象画像存在領域を取得する探索処理部と、前記モニタ画面上での前回得られた追尾対象画像存在領域の座標位置と今回得られた追尾対象画像存在領域の座標位置との差を相前後するフレーム画像の取得時間差に基づいて除算して前記モニタ画面上での前記追尾対象画像の移動速度を計測する計測処理部と、前記追尾対象画像の移動速度に対応する速度表示マークを前記モニタ画面上に表示させる表示処理部とを有することを特徴とする。
【0009】
計測処理部により得られた追尾対象画像の移動速度が所定の閾値以下のときに自動的に撮影を実行する構成とすれば、流し撮り撮影をより一層確実に行うことができて望ましい。
この場合に、複数枚の流し撮り写真を連写して取得する構成とすれば、流し撮り写真のうちの好みのものを選択できる。
更に、撮影露光時間を長く設定して撮影を実行する構成とすれば、流し撮り写真の撮影効果を強調できる。
【0010】
また、撮影露光時間を変更しながら複数枚の流し撮り写真を連写して取得する構成とすれば、撮影効果の異なる複数枚の流し撮り写真を得ることができることになって望ましい。
なお、画像の特徴量として、各領域内の各画素により得られる輝度ヒストグラム分布を用いることにすれば、既存の画像処理技術が利用可能である。
【0011】
本発明に係る流し撮り撮影は、撮影光学系を介して取得されかつモニタ画面上に表示されるフレーム画像に基づき流し撮りの際の撮影対象画像としての被写体画像を含む画像領域を撮影対象画像存在領域として設定する設定処理ステップと、前記撮影対象画像存在領域内に存在する被写体画像を追尾対象画像とみなして前記撮影対象画像存在領域に対応する対比対象画像領域を前記フレーム画像に時系列的に後続するフレーム画像に対して設定しかつ前記撮影対象画像存在領域の画像の特徴量を前記対比対象画像領域の画像の特徴量と比較することにより対比対象画像領域が前記追尾対象画像を含む追尾対象画像存在領域であるか否かを判定して時系列的に相前後する追尾対象画像存在領域を取得する探索処理ステップと、前記モニタ画面上での前回得られた追尾対象画像存在領域の座標位置と今回得られた追尾対象画像存在領域の座標位置との差を相前後するフレーム画像の取得時間差に基づいて除算して前記モニタ画面上での前記追尾対象画像の移動速度を計測する計測処理ステップと、前記追尾対象画像の移動速度に対応する速度表示マークを前記モニタ画面上に表示させる表示処理ステップとが実行可能なプログラムが記録されているコンピュータが読み取り可能な記録媒体からこのプログラムをコンピュータに読み出して実行させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高度の撮影テクニックを有するプロフェッショナルのカメラマンでなくとも、流し撮り写真撮影を簡単確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は流し撮り写真撮影の行う場合の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は本発明に係る流し撮り撮影に用いるカメラの外観図である。
【図3】図3は本発明の流し撮り撮影の各処理部の要部構成を示すブロック図である。
【図4】図4はN枚のフレーム画像の一例を示す模式図である。
【図5】図5は撮影対象画像存在領域の設定の説明に用いたフレーム画像である。
【図6】図6は撮影対象画像存在領域と対比対象画像領域と追尾対象画像存在領域との関係を示すフレーム画像の模式図であって、(a)は撮影対象画像存在領域が設定されたフレーム画像を示し、(b)は対比対象画像領域を用いて追尾対象画像存在領域を探索中の状態を示すフレーム画像を示している。
【図7】図7はモニター画面に表示された速度表示マークを示す図である。
【図8】図8は図2に示すカメラのブロック回路図である。
【図9】図9は本発明に係る画像処理の処理ステップを示すフローチャートである。
【図10】図10は流し撮り撮影により取得されたフレーム画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
以下に、本発明に係る撮像装置の実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
まず、本発明が適用される撮像装置の画像処理について、図2、図3を参照しつつ説明する。
その図2は、本発明が適用される撮像装置の斜視図であって、この図2において、1はカメラ本体、2は撮影光学系を有するレンズ鏡胴である。
流し撮り撮影を行う際には、例えば、カメラ本体1の背面に設けられているモニタ画面Gにメニュ画面を表示させて、流し撮り撮影モード、N枚連写モードを設定する。
【0015】
図3はその流し撮り撮影モードにおける画像処理の各処理部を示すブロック図である。
その図3において、3は設定処理部、4は探索処理部、5は計測処理部、6は表示処理部、7は自動撮影実行処理部、Gはモニタ画面である。
【0016】
撮影光学系を介して取得されたフレーム画像データは、表示処理部6によりモニタ画面Gにフレーム画像として表示されると共に、設定処理部3に入力される。
ここでは、設定処理部3には、流し撮り撮影モードの場合、図4に示すように、N枚のフレーム画像F0〜FNに対応するフレーム画像データが入力される。なお、図4には、フレーム画像F0の画像B、Oが視覚化して表示されている。
【0017】
その設定処理部3は、図5に示すように、撮影光学系を介して取得されたフレーム画像F0に対応するフレーム画像データに基づき、流し撮りの際の撮影対象画像としての被写体画像Oを含む画像領域を撮影対象画像存在領域Qとして設定する設定処理を実行する機能を有する。
【0018】
カメラを被写体に向けると、移動する被写体に対応する被写体画像Oは、モニタ画面G上で移動しつつ表示される。この移動する被写体を流し撮りの撮影対象とする場合、モニタ画面G上で流し撮りの撮影対象画像としての被写体画像Oを追尾対象画像O’として追尾することになる。
【0019】
設定処理部3には、撮影光学系を介して順次取得された図4に示すフレーム画像F0〜FNに対応するフレーム画像データが連続的に入力され、同時に、図2、図3に示すモニタ画面Gにフレーム画像F0〜FNに対応する被写体画像Oがモニタ用として連続的に表示される。
【0020】
以下の説明では、フレーム画像F0〜FNを用いて説明するが、このフレーム画像F0〜FNは同時にモニタ画面Gに表示されている画像を意味するものとする。
ユーザーは、そのモニタ画面G上に表示されているフレーム画像F0の画像B、Oの中から流し撮りの際の撮影対象画像としての被写体画像Oを含む画像領域を撮影対象画像存在領域Qとして設定する。
【0021】
例えば、ユーザーが、図5に示すフレーム画像F0(モニタ画面Gに表示されている画像)について、モニタ画面G上で、各点A、B、C、D(四点)をそれぞれタッチすることにより、設定処理部3によりその指定された各点A、B、C、Dにより囲まれた矩形枠を被写体画像Oを含む撮影対象画像存在領域Qに設定する。
【0022】
また、図5に示すモニター画面G上で、例えば、被写体画像Oの点Pを指定することにより、設定処理部3は所定の大きさの矩形枠(この点Pを対角線の交点とする矩形枠)を設定し、この矩形枠内を被写体画像Oを含む撮影対象画像存在領域Qに設定する構成としても良い。
更に、この場合、設定処理部3は自動的にコントラストの差が大きい画像領域を撮影対象画像存在領域Qとして設定しても良い。
【0023】
探索処理部4は、図6(a)に示す撮影対象画像存在領域Q内に存在する被写体画像Oを追尾対象画像O’とみなして、図6(b)に示すように、撮影対象画像存在領域Qに対応する対比対象画像領域Q”をフレーム画像F0に時系列的に後続するフレーム画像F1〜FNに対して設定しかつ撮影対象画像存在領域Q内の画像の特徴量を後続のフレーム画像F1〜FN内の対比対象画像領域Q”の画像の特徴量と比較することにより対比対象画像領域Q”が追尾対象画像O’を含む追尾対象画像存在領域Q’であるか否かを判定する。
これにより、探索処理部4は、時系列的に相前後する追尾対象画像存在領域Q’を取得する。
【0024】
すなわち、探索処理部4は、フレーム画像F0において設定された撮影対象画像存在領域Qをテンプレートとして、例えば、図6(a)に示すフレーム画像F0の次のフレーム画像F1の探索領域S内で、対比対象画像領域Q”を右方向、下方向に所定の順番に設定して両画像領域に含まれる画像の対比を繰り返すことにより、図6(b)に示すように、撮影対象画像存在領域Q内に存在する画像と最も類似度の高い対比対象画像領域Q”を追尾対象画像O’を含む追尾対象画像存在領域Q’に決定する。
【0025】
なお、その図6には、撮影対象画像存在領域Qを囲む矩形枠の各点A、B、C、Dに対応する対比対象画像領域Q”を囲む矩形枠の各点に符号A”、B”、C”、D”が付され、追尾対象画像存在領域Q’を囲む矩形枠の各点に符号A’、B’、C’、D’が付されている。
また、探索領域Sは、この実施例では、フレーム画像F1の全領域であるが、これに限るものではない。
【0026】
フレーム画像データF0〜FNは、Δtの時間間隔をおいて順次取得され、この順次取得されるフレーム画像データF1〜FNについて追尾対象画像存在領域Q’が決定される。
【0027】
計測処理部5は、モニタ画面G上での前回得られた追尾対象画像存在領域Q’の座標位置と今回得られた追尾対象画像存在領域Q’の座標位置との差を時間的に相前後して得られるフレーム画像の時間差Δtにより除算して、モニタ画面G上での追尾対象画像O’の移動速度を計測する。
【0028】
表示処理部6は、計測により得られた追尾対象画像O’の移動速度に対応する速度表示マークVMとしての矢印を図7に示すモニター画面G上に表示させる表示処理を行う。
【0029】
フレーム画像F0の撮影対象画像存在領域Q内に存在する被写体画像Oとフレーム画像F1の対比対象画像領域Q”内に存在する画像との類似度の計算には、例えば、撮影対象画像存在領域Q内に存在する各画素により得られた輝度ヒストグラム分布と対比対象画像領域Q”内に存在する各画素により得られた輝度ヒストグラム分布とを用いる。
【0030】
例えば、撮影対象画像存在領域Q内の各画素により得られた輝度ヒストグラムをq=[q1, q2, …, qn]とする。符号q1, q2, …, qnは、それぞれ、輝度レベル「1」から輝度レベル「n」までの画素数である。
一方、対比対象画像領域Q”内の各画素により得られた輝度ヒストグラムをp=[ p1, p2, …, pn]とする。符号p1, p2, …, pnも、それぞれ輝度レベル「1」から輝度レベル「n」までの画素数である。
【0031】
その各輝度ヒストグラム分布を求める時、面積変化の影響を最小にするため、撮影対象画像存在領域Q、対比対象画像領域Q”の各領域内の全画素について正規化を行う。
撮影対象画像存在領域Qと対比対象画像領域Q”の類似度Simは下記の式(1)により計算する。
【数1】

類似度Simが最大の対比対象画像領域Q”がフレーム画像F1において最終的に得られた追尾対象画像存在領域Q’である。
探索処理部4は、探索処理中、この輝度ヒストグラム分布を求める処理を、Δtの時間間隔で、各フレーム画像F1〜FNについて実行する。
【0032】
計測処理部5は、追尾対象画像存在領域Q’が得られる都度、各フレーム画像毎に得られる追尾対象画像存在領域Q’について、前回のフレーム画像データにより得られた追尾対象画像存在領域Q’のモニタ画面G上における座標位置と今回のフレーム画像により得られた追尾対象画像存在領域Q’のモニタ画面G上における座標位置との相対的な座標位置の差から追尾対象画像存在領域Q’内に存在する追尾対象画像O’の画面G上での移動速度を求めるために、以下の計算を行う。
その計算式には、例えば、以下の式(2)、(3)を用いる。
【数2】

【数3】

【0033】
ここで、Vxはモニタ画面G上での水平方向の速度、Vyはモニター画面G上での垂直方向の速度である。符号(x’, y’)、符号 (x, y)はフレーム画像F0とフレーム画像F1のそれぞれの対応する点の座標である。Δtはフレーム画像間の時間差である。
【0034】
一般的に、モニタ画面G上での追尾対象画像O’の移動速度は、今回取得されたフレーム画像Fiにおける追尾対象画像存在領域Q’のモニター画面Gの座標位置に対して前回取得されたフレーム画像Fi−1における追尾対象画像存在領域Q’のモニター画面Gの座標位置の差を取得時間差Δtで除した値である。
【0035】
表示処理部6は、その計測処理部5によって得られた移動速度に基づき図7に示すようにモニタ画面Gに速度表示マークVMとして矢印を表示させる。この速度表示マークVMは、矢印の長さが大きいほど、モニタ画面G上での追尾対象画像O’の移動速度が大きいことを意味している。すなわち、流し撮りの撮影対象としての被写体の移動速度が大きいことを意味する。
【0036】
ユーザは、この矢印の長さが短くなるように、カメラを被写体の移動に対応させて移動させることにより、流し撮りの被写体に対する同期を取ることができ、鮮明な流し撮り撮影を行うことができることになる。
【0037】
自動撮影実行処理部7は、計測処理部5の計測結果を判定し、モニタ画面G上での追尾対象画像存在領域Q’の移動速度、すなわち、追尾対象画像O’の移動速度が所定の閾値以下になると、撮影を自動的に実行し、これにより、流し撮り画像が得られる。
【0038】
以下に、この画像処理部を有する撮像装置の一例としてのデジタルカメラのハードウェアの構成を説明する。
図8はそのデジタルカメラのハードウェアの構成を示すブロック回路図である。そのデジタルカメラは、撮影光学系11、メカニカルシャッタ12、CCD13、CDS回路14、A/D変換器15、画像処理部(画像処理回路)16、モニタ画面Gを備えた液晶ディスプレイ(LCD)17、CPU18、RAM19、ROM20、SDRAM21、圧縮伸長部22、メモリカード23、操作部24、タイミング信号発生器25、モータ26を備えている。
【0039】
その撮影光学系11とそのCCD13との間には、メカニカルシャッタ12が配置され、このメカニカルシャッタ12はCCD13に入射する被写体光の遮断に用いられる。その撮影光学系11のフォーカスレンズ等とメカニカルシャッタ12とは、モータ26により駆動される。
【0040】
デジタルカメラを被写体に向けると、被写体からの光が、撮影光学系11を通してCCD(Charge Coupled Device)13に入射される。
CCD13は、その撮像面に結像された光学像を電気信号に変換して、アナログの画像データとして出力する。CCD13から出力された画像情報は、CDS(Correlated Double Sampling:相関2重サンプリング)回路14によりノイズ成分を除去され、A/D変換器15によりデジタル値に変換された後、画像処理部16に向けて出力される。
【0041】
画像処理部16は、フレーム画像データを一時的に格納するSDRAM(SynchronousDRAM)21を用いて、YCrCb変換処理や、ホワイトバランス制御処理、コントラスト補正処理、エッジ強調処理、色変換処理などの各種画像処理を行う。
【0042】
なお、ホワイトバランス処理は、画像情報の色濃さを調整し、コントラスト補正処理は、画像情報のコントラストを調整する画像処理である。エッジ強調処理は、画像情報のシャープネスを調整し、色変換処理は、画像情報の色合いを調整する画像処理である。また、画像処理部16は、信号処理や画像処理が施された画像情報を液晶ディスプレイ17のモニタ画面Gに表示する。
【0043】
また、信号処理、画像処理が施された画像データは、圧縮伸張部22を介して、メモリカード23に記録される。圧縮伸張部22は、操作部24から取得した指示によって、画像処理部16から出力される画像データを圧縮してメモリカード23に出力すると共に、メモリカード23から読み出した画像データを伸張して画像処理部16に出力する回路である。
【0044】
なお、CCD13、CDS回路14、A/D変換器15は、タイミング信号を発生するタイミング信号発生器25を介してCPU(Central Processing Unit)18によって、そのタイミングが制御される。画像処理部16、圧縮伸張部22、メモリカード23は、CPU18によって統括制御される。
【0045】
CPU18はプログラムに従って各種演算処理を行い、そのプログラム等を格納した読み出し専用メモリであるROM(Read Only Memory)20、各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM(Random Access Memory)19等を内蔵し、これらがバスラインによって相互接続されている。
【0046】
このデジタルカメラで実行される画像処理プログラムは、被写体を追尾し、追尾対象画像存在領域Q’の移動速度を計測する機能を含むモジュール構成となっている。
実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)18が記憶媒体としてのROM20からこの画像処理プログラムを読み出して実行することにより、図3に示す各処理部の処理を実行する処理ステップが主記憶装置上にロードされ、追尾対象画像O’の速度計算を実行し、デジタルカメラのモニタ画面Gの表示制御を実行すると共に、画像撮影、画像処理、画像を圧縮して、メモリカード23に流し撮り画像データを生成するようになっている。
【0047】
以下に、流し撮りの実行について、図9に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
移動する被写体画像Oを含む画像が画像処理部16に入力され、液晶ディスプレイ17のモニタ画面Gに表示される。
ユーザーは、モニタ画面Gを見ながら、例えば、モニタ画面G上をタッチすることによりモニタ画面G上の座標を入力して、流し撮りの撮影対象とする被写体画像Oを含む撮影対象画像存在領域Qを設定する(S.1)。
【0048】
CPU18は、最初に設定処理部3として機能し、追尾プログラムに従って撮影対象画像存在領域Qのコントラストの高い領域を抽出し、設定された撮影対象画像存在領域Qを追尾対象画像O’を含む追尾対象画像存在領域Q’に設定する。
ついで、この撮影対象画像存在領域Q内の画像の特徴量を算出する(S.2)。
【0049】
CPU18は、同時に、モニタ画面Gに表示されている動画像としてのフレーム画像に対応する表示用動画像のフレーム画像FiをΔtの時間間隔で取得し、2個のフレーム画像をSDRAM21に保存する。前回のフレーム画像データと今回のフレーム画像データとからなる動画像フレームが追尾処理に用いられる。
【0050】
CPU18は、ついで探索処理部4として機能し、フレーム画像F0に後続して得られるフレーム画像F1〜FNに対して対比対象画像領域Q”を設定し、探索領域S内で対比対象画像領域Q”の位置を変更しながら、追尾対象画像存在領域Q’の探索を実行する(S.3)。
【0051】
CPU18は、対比対象画像領域Q”の位置を変更する都度、対比対象画像領域Q”内に存在する画像の特徴量を算出し(S.4)、この対比対象画像領域Q”内の画像の特徴量を撮影対象画像存在領域Q内の画像の特徴量との類似度計算を実行することにより(S.5)、対比対象画像領域Q”の画像と撮影対象画像存在領域Qの画像とを比較し(S.6)、探索領域S内での探索が終了するまで(S.7)、S.3〜S.7の探索処理を行い、類似度の最も高い対比対象画像領域Q”があれば、それを追尾対象画像存在領域Q’に決定する(S.8)。
【0052】
続いて、CPU8は、今回探索を行っているフレーム画像について、追尾対象画像存在領域Q’が得られたか否かを判断し(S.9)、今回のフレーム画像について追尾対象画像存在領域Q’が得られなかったときには、今回のフレーム画像がN番目のフレーム画像であるか否かを判断し(S.10)、N番目のフレーム画像でない場合には、S.3に戻って、次回の取得したフレーム画像に基づいて探索処理を実行する。
【0053】
S.10において、N番目のフレーム画像である場合には、流し撮り撮影モードの実行を中止し、通常の撮影モードに戻る。
現在探索を行っているフレーム画像について、追尾対象画像存在領域Q’が得られた場合には、CPU18は、速度計測処理部として機能し、前回得られた追尾対象画像存在領域Q’と今回得られた追尾対象画像存在領域Q’とからなる動画像フレームデータに基づいて、モニタ画面G上での追尾対象画像O’の移動速度を計算する(S.11)。
【0054】
CPU18は、この移動速度の結果に基づく表示データを液晶ディスプレイ(LCD)17に出力し、これにより、モニタ画面Gに、追尾対象画像存在領域Q’と共に、その追尾対象画像O’のモニタ画面G上における移動速度に対応する速度表示マークVMが表示される(S.12)。
【0055】
ユーザは、速度表示マークVMの矢印の長さに合わせて、矢印のガイドに従ってカメラ1を矢印が示す方向に動かす。速度表示マークVMの長さが短くなると、カメラ本体1の移動速度が追尾対象画像O’の移動速度に近づき、これにより、ユーザは被写体の移動速度にカメラ本体1の移動速度が近づいたことを認識できる。
【0056】
CPU18は、モニタ画面G上での追尾対象画像存在領域Q’内の追尾対象画像O’の移動速度が所定の閾値以下になると(S.13)、自動的に撮影を実行する(S.14)。これにより、鮮明な流し撮り画像が得られる。その後、通常撮影モードに戻る。
モニタ画面G上での追尾対象画像存在領域Q’内の追尾対象画像O’の移動速度が所定の閾値以下でない場合には、S.3に戻って、S.3以降の処理が繰り返し実行され、N枚のフレーム画像について処理が終了すると、流し撮り撮影処理を中止し、通常の撮影モードへ移行する。
【0057】
流し撮り撮影は、単写モードとして一枚の流し撮りの写真を撮影する構成としてもよいし、連写モードとして、複数枚の流し撮り写真を撮影する構成としてもよい。
その流し撮り画像データは、信号処理、画像処理が施されて、圧縮伸張回路部22により所定の処理が行われた後、メモリカード23に記録される。
【0058】
例えば、連写モードでは、図10に示すように、速度表示マークVMの矢印の長さが所定の閾値以下になると、シャッターが切られ、連続撮影が実行される。また、速度表示マークVMが所定の閾値以上になると、連写が停止される。これにより、複数枚の一連の流し撮り写真が得られる。ユーザはこれらの一連の流し撮り写真の中から最適な流し撮り写真を選択することができる。これにより、確実に鮮明なユーザにとって好ましい流し撮り写真が得られる。
【0059】
また、追尾対象画像存在領域Q’の追尾対象画像O’の移動速度が所定の閾値以下になると、測光演算により得られた露光時間よりも長目に流し撮り写真撮影の際の露光時間を設定して、デジタルカメラのシャッターを切り、流し撮り写真の撮影を実行するようにしても良い。
このような構成とすれば、流し撮り写真の効果を強く強調できる。露光時間が長ければ長いほど、背景に存在する被写体画像が流れるというボケの効果を強調できる。
【0060】
更に、追尾対象像画像存在領域Q’の移動速度が所定の閾値以下になると、各フレーム画像データの露光時間を測光演算により得られた露光時間よりも短い露光時間から長い露光時間の間で変更しながら、流し撮りの連続撮影を実行させるようにしても良い。
【0061】
このような流し撮りの連続撮影を実行すれば、各フレーム画像F1〜FNについて露光時間を変更しながら、異なる効果を有する流し撮り写真が複数枚得られる。
連続撮影した一連の流し撮り写真の露光時間が長ければ長いほど背景が流れるというボケの効果が強調される。
【符号の説明】
【0062】
3…設定処理部
4…探索処理部
5…計測処理部
6…表示処理部
G…モニタ画面
VM…速度表示マーク
O’…追尾対象画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2006‐229322号公報
【特許文献2】特開2009‐100454号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系を介して取得されかつモニタ画面上に表示されるフレーム画像に基づき流し撮りの際の撮影対象画像としての被写体画像を含む画像領域を撮影対象画像存在領域として設定する設定処理部と、
前記撮影対象画像存在領域内に存在する被写体画像を追尾対象画像とみなして前記撮影対象画像存在領域に対応する対比対象画像領域を前記フレーム画像に時系列的に後続するフレーム画像に対して設定しかつ前記撮影対象画像存在領域の画像の特徴量を前記対比対象画像領域の画像の特徴量と比較することにより対比対象画像領域が前記追尾対象画像を含む追尾対象画像存在領域であるか否かを判定して時系列的に相前後する追尾対象画像存在領域を取得する探索処理部と、
前記モニタ画面上での前回得られた追尾対象画像存在領域の座標位置と今回得られた追尾対象画像存在領域の座標位置との差を相前後するフレーム画像の取得時間差に基づいて除算して前記モニタ画面上での前記追尾対象画像の移動速度を計測する計測処理部と、
前記追尾対象画像の移動速度に対応する速度表示マークを前記モニタ画面上に表示させる表示処理部とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記計測処理部により得られた前記追尾対象画像の移動速度が所定の閾値以下のときに自動的に撮影を実行する自動撮影実行手段を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記自動撮影実行手段は、複数枚の流し撮り写真を連写して取得することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記自動撮影実行手段は、前記所定の閾値以下になったときに、撮影露光時間を長く設定して撮影を実行することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記自動撮影実行手段は、撮影露光時間を変更しながら複数枚の流し撮り写真を連写して取得することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記画像の特徴量は、各領域内の各画素により得られる輝度ヒストグラム分布であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
撮影光学系を介して取得されかつモニタ画面上に表示されるフレーム画像に基づき流し撮りの際の撮影対象画像としての被写体画像を含む画像領域を撮影対象画像存在領域として設定する設定処理ステップと、
前記撮影対象画像存在領域内に存在する被写体画像を追尾対象画像とみなして前記撮影対象画像存在領域に対応する対比対象画像領域を前記フレーム画像に時系列的に後続するフレーム画像に対して設定しかつ前記撮影対象画像存在領域の画像の特徴量を前記対比対象画像領域の画像の特徴量と比較することにより対比対象画像領域が前記追尾対象画像を含む追尾対象画像存在領域であるか否かを判定して時系列的に相前後する追尾対象画像存在領域を取得する探索処理ステップと、
前記モニタ画面上での前回得られた追尾対象画像存在領域の座標位置と今回得られた追尾対象画像存在領域の座標位置との差を相前後するフレーム画像の取得時間差に基づいて除算して前記モニタ画面上での前記追尾対象画像の移動速度を計測する計測処理ステップと、
前記追尾対象画像の移動速度に対応するを前記モニタ画面上に表示させる表示処理ステップとを含む画像処理方法。
【請求項8】
前記計測処理ステップにより得られた前記追尾対象画像の移動速度が所定の閾値以下のときに自動的に撮影を実行する自動撮影実行処理ステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記自動撮影実行処理ステップは、複数枚の流し撮り写真を連写して取得することを特徴とする請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記自動撮影実行処理ステップは、前記所定の閾値以下になったときに、撮影露光時間を長く設定して撮影を実行することを特徴とする請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記自動撮影実行処理ステップは、撮影露光時間を変更しながら複数枚の流し撮り写真を連写して取得することを特徴とする請求項9に記載の画像処理方法。
【請求項12】
撮影光学系を介して取得されかつモニタ画面上に表示されるフレーム画像に基づき流し撮りの際の撮影対象画像としての被写体画像を含む画像領域を撮影対象画像存在領域として設定する設定処理ステップと、
前記撮影対象画像存在領域内に存在する被写体画像を追尾対象画像とみなして前記撮影対象画像存在領域に対応する対比対象画像領域を前記フレーム画像に時系列的に後続するフレーム画像に対して設定しかつ前記撮影対象画像存在領域の画像の特徴量を前記対比画像領域の画像の特徴量と比較することにより前記追尾対象画像を含む追尾対象画像存在領域であるか否かを探索して時系列的に相前後する追尾対象画像存在領域を取得する探索処理ステップと、
前記モニタ画面上での前回得られた追尾対象画像存在領域の座標位置と今回得られた追尾対象画像存在領域の座標位置との差を相前後するフレーム画像の取得時間差に基づいて除算して前記モニタ画面上での前記追尾対象画像の移動速度を計測する計測処理ステップと、
前記追尾対象画像の移動速度に対応する速度表示マークを前記モニタ画面上に表示させる表示処理ステップとが実行可能なプログラムが記録されているコンピュータが読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−244046(P2011−244046A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111748(P2010−111748)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】