説明

撮像装置、電子機器及び撮像装置におけるピント調整方法

【課題】 光軸ずれを生じさせることなく、ピントを調節することができる撮像装置、電子機器および撮像装置におけるピント調整方法を提供する。
【解決手段】 撮像装置1は、レンズ2、3と、レンズ2、3を保持するレンズ鏡筒4と、レンズ鏡筒4を保持するホルダ5と、撮像素子6と、レンズ2、3と撮像素子6との間に設けられ光軸上のプリズムの厚さを変更することができる複数のプリズム11、12と、複数のプリズム11、12に対して光軸の方向に沿った力を加える付勢部材9、10とを備える。複数のプリズム11、12を光軸に対して垂直方向に移動するアクチュエータ14とを備え、第2のプリズム12は、第1のプリズム11の傾斜面11aに沿って移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、電子機器及び撮像装置におけるピント調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカメラ等では、レンズを移動させることによって、ピントを調節する方法が提案されている。このような従来技術として以下のようなものが提案されている。
【0003】
特許文献1記載の機器は、ステッピングモータによって、レンズを移動することでピントを調整するというものである。
【0004】
特許文献2記載の機器は、複数のプリズムを接合して構成されたプリズム同士の相対的な位置を接合した面に沿って移動させて、各画像形成手段とプリズムを通過する光の光路長を調整後、これらのプリズムを接着剤によって取り付けるというものである。
【0005】
【特許文献1】特開平8−15598号公報
【特許文献2】特開平9−211209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のピント調整方法では、レンズ移動中に光軸ずれが生じるという問題がある。また、特許文献2記載の機器では、光学部品の取り付け誤差、衝撃が加わった場合や温度が変化した場合等の、各構成部品の一部に位置誤差による画像の乱れ等の問題を解決するものであり、レンズを移動させてピントを調整した場合、レンズの移動による光軸ずれが生じてしまうという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、レンズの移動による光軸ずれを生じさせることなく、ピントを調節できる撮像装置、電子機器及び撮像装置におけるピント調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、レンズと撮像素子との間に設けられ、光軸上のプリズムの厚さを変更することができる複数のプリズムと、前記複数のプリズムのうちの少なくとも一つに対して前記光軸と垂直方向の力を加えることよって前記光軸上のプリズムの厚さを変更するアクチュエータとを備える撮像装置である。本発明によれば、プリズムに対して、光軸と垂直方向の力を加えて、光軸上のプリズムの厚さを変更することで、レンズの移動による光軸ずれを生じさせることなく、ピント調節を行うことができる。
【0009】
本発明の撮像装置は、前記複数のプリズムのうちの少なくとも一つに対して前記光軸の方向に沿った力を加える付勢部材を更に備える。本発明によれば、プリズムに対して光軸の方向に沿った力を加えることで、光軸上のプリズムの厚さを変更することができる。
【0010】
本発明の撮像装置は、前記複数のプリズムのうちの少なくとも一つに付けられた光学フィルタを更に備える。本発明によれば、光学フィルタを別個設ける必要がなくなる。
【0011】
本発明の撮像装置は、前記撮像素子が変換した電気信号に基づいて、前記アクチュエータを制御する制御部を更に備える。本発明によれば、撮像素子が変換した電気信号に基づいて、アクチュエータを制御することで、ピントを自動的に調節することができる。
【0012】
前記複数のプリズムは、前記光軸に対して傾斜する傾斜面を持つ第1のプリズムと、前記第1のプリズムの前記傾斜面に沿って移動する第2のプリズムとを有する。本発明によれば、第1のプリズムの傾斜面に沿って第2のプリズムを移動させることで、光軸上のプリズムの厚さを変更することができる。
【0013】
本発明の撮像装置は、前記レンズを保持するレンズ鏡筒と、前記複数のプリズムを収容すると共に、前記レンズ鏡筒を保持するホルダとを更に備える。
【0014】
本発明は、前記撮像装置を備えた電子機器である。本発明によれば、光軸上のプリズムの厚さを変更することで、光軸ずれを生じることなく、ピントを調節できる携帯端末等の電子機器を提供することができる。
【0015】
本発明は、撮像装置におけるピント調節方法であって、レンズと撮像素子との間に設けられた複数のプリズムのうちの少なくとも一つに対して、光軸と垂直方向の力を加えることによって、該光軸上のプリズムの厚さを変更するステップを有する。本発明によれば、プリズムに対して、光軸と垂直方向の力を加えて、光軸上のプリズムの厚さを変更することで、光軸ずれを生じさせることなく、ピント調節を行うことができる。
【0016】
前記ステップは、前記複数のプリズムのうちの第1のプリズムの前記光軸に対して傾斜する傾斜面に沿って該第1のプリズムとは異なる第2のプリズムを移動することで前記光軸上のプリズムの厚さを変更するのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レンズの移動による光軸ずれを生じさせることなく、ピントを調節できる撮像装置、電子機器および撮像装置におけるピント調整方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。図1は、本発明の撮像装置の構成を示す図である。図1に示すように、撮像装置1は、レンズ2、3、レンズ鏡筒4、ホルダ5、撮像素子6、台座7、8、付勢部材9、10、第1のプリズム11、第2のプリズム12、移動部材13及びアクチュエータ14を備える。撮像装置1は、例えば携帯端末等の電子機器内に設けられている。
【0019】
レンズ鏡筒4は、レンズ2及び3を保持するものであり、ネジ部4aを介してホルダ5に取り付けられている。ホルダ5は、レンズ鏡筒4のネジ部4aと嵌合するネジ部5aを有し、レンズ鏡筒4を保持すると共に、第1のプリズム11や第2のプリズム12等を収容する。このホルダ5の内部には、ホルダ5以外に、撮像素子6、台座7、8、付勢部材9、10、第1のプリズム11及び第2のプリズム12が配置されている。ホルダ5の下部には、図示は省略するが、基板が存在する。
【0020】
撮像素子6は、基板に実装されている。台座7、8は、第1のプリズム11及び第2のプリズム12を支持するためのものである。付勢部材9、10は、例えば板バネで構成され、第2のプリズム12に対して光軸Sの方向に沿った上向きの力を与える。
【0021】
第1のプリズム11及び第2のプリズム12は、例えばガラスで形成されており、ここでは三角形の形状をしている。第1のプリズム11及び第2のプリズム12は、レンズ2及び3と撮像素子6との間に設けられ、位置関係によって光軸S上のプリズムの厚さを変更することができる。ここでは第1のプリズム11は、光軸Sに対して傾斜する傾斜面11aを持つと共に、ホルダ5に固定されている。第2のプリズム12は、第1のプリズム11の傾斜面11aに沿って移動する。さらに、第1のプリズム11には、例えばIRカットフィルタ等の光学フィルタを付けるのが好ましい。これにより、光学フィルタを別個設ける必要がなくなる。
【0022】
移動部材13は、アクチュエータ14により駆動され、第2のプリズム12を左右に移動させる。アクチュエータ14は、例えば圧電素子やソレノイドにより構成され、第2のプリズム12に対して、光軸Sと垂直方向の力を加えるものである。このアクチュエータ14は、移動部材13を図中、左右方向に移動することによって、第2のプリズム12に対して、光軸Sと垂直方向の力を加える。
【0023】
図2は、本発明の光学機器におけるプリズムの移動後の状態を示す図である。ここで、屈折率nの媒質の厚みをΔLだけ厚くすると、焦点位置は撮像素子6側へΔL(1−1/n)だけ移動する。これは、レンズをΔL(1−1/n)だけ撮像素子6側へ移動させたものと同じことになる。図2に示すように、アクチュエータ14によって、移動部材13が図中、左方向に移動すると、移動部材13の移動に伴って第2のプリズム12が図中、左方向に移動される。このとき、付勢部材9及び10によって第2のプリズム12は図中、上方に力が働くため、第2のプリズム12は、第1のプリズム11の傾斜面11aに沿って図中、左斜めに移動する。これにより、図2に示すように、図1と図2に示すようにΔLの分だけ、光軸上のプリズムの厚さを変化させることができる。
【0024】
これにより、第1のプリズム11及び第2のプリズム12によって光軸S上のプリズムの厚さを変えることによって、レンズ2、3を移動させることなく、ピント調節をすることができる。
【0025】
図3は、本発明の撮像装置のピント調整方法を説明するための図である。図3に示すように、撮像装置1は、さらに制御部15を備える。制御部15は、撮像素子6が受光した光を変換した電気信号に基づいて、焦点が合っているかどうかを調べ、必要に応じてアクチュエータ14を制御する。
【0026】
アクチュエータ14の駆動によって図1で示した移動部材13が移動すると、第2のプリズム12に対して、光軸Sと垂直方向の力が加えられる。また、第2のプリズム12は、付勢部材9、10によって、図中、上向きの力が加えられ、第1のプリズム11の傾斜面11aに沿って斜め上方に移動する。制御部15は、焦点が合った時点でアクチュエータ14の駆動を終了する。これにより、光軸上のプリズムの厚さを変えることで、焦点距離が変化するため、ピントを調整することができる。レンズ2及び3を移動する必要がないため、光軸ズレは生じない。また、レンズの駆動機構も必要ないため、撮像装置を小さくすることができ、また、組立て工数を削減することもできる。
【0027】
本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。なお、上記実施形態では二つのプリズムを用いた例について説明しているが、さらに多くのプリズムを用いて、光軸上のプリズムの厚さを変更するようにしてもよい。また、光学フィルタは複数のプリズムのうちのいずれかのプリズムに付けられていても良い。電子機器には、例えばカメラ、携帯端末等が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の撮像装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の撮像装置におけるプリズムの移動後の状態を示す図である。
【図3】本発明の撮像装置のピント調整方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0029】
1 撮像装置
2、3 レンズ
4 レンズ鏡筒
5 ホルダ
6 撮像素子
7、8 台座
9、10 付勢部材
11 第1のプリズム
12 第2のプリズム
13 移動部材
14 アクチュエータ
15 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと撮像素子との間に設けられ、光軸上のプリズムの厚さを変更することができる複数のプリズムと、
前記複数のプリズムのうちの少なくとも一つに対して、前記光軸と垂直方向の力を加えることによって、前記光軸上のプリズムの厚さを変更するアクチュエータとを備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記複数のプリズムのうちの少なくとも一つに対して前記光軸の方向に沿った力を加える付勢部材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記複数のプリズムのうちの少なくとも一つに付けられた光学フィルタを更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像素子が変換した電気信号に基づいて、前記アクチュエータを制御する制御部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記複数のプリズムは、前記光軸に対して傾斜する傾斜面を持つ第1のプリズムと、
前記第1のプリズムの前記傾斜面に沿って移動する第2のプリズムとを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記レンズを保持するレンズ鏡筒と、
前記複数のプリズムを収容すると共に、前記レンズ鏡筒を保持するホルダと、
撮像素子とを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の撮像装置を備えた電子機器。
【請求項8】
撮像装置におけるピント調節方法であって、
レンズと撮像素子との間に設けられた複数のプリズムのうちの少なくとも一つに対して光軸と垂直方向の力を加えることによって、該光軸上のプリズムの厚さを変更するステップを有することを特徴とするピント調節方法。
【請求項9】
前記ステップは、前記複数のプリズムのうちの第1のプリズムの前記光軸に対して傾斜する傾斜面に沿って該第1のプリズムとは異なる第2のプリズムを移動することで前記光軸上のプリズムの厚さを変更することを特徴とする請求項8に記載のピント調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−154573(P2006−154573A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347792(P2004−347792)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】