説明

撮像装置及びシャッタ動作選択方法

【課題】ボケ像欠けを回避することができる撮像装置およびシャッタ動作選択方法を提供する。
【解決手段】
複数の画素から成る撮像素子と、前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、前記第1の幕と前記第2の幕により形成されるスリット幅、又は前記第1の幕と前記リセット部によるリセット走査により形成されるスリット幅に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択する動作選択部と、を備える、撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びシャッタ動作選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、普及している一眼レフタイプのデジタルカメラでは、電子先幕とメカ後幕を併用した電子シャッタが用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
このような電子シャッタでは、メカニカルシャッタにより後幕が構成され、後幕の走行に先行して、撮像素子の画素の蓄積電荷量をゼロにするリセット走査が画素のライン毎に行われる。その後、リセット走査を行った画素のライン毎に、所定の時間を経過してから信号を読み出す走査を行うことで、電子シャッタによる撮像動作が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−41510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような電子シャッタを用いたデジタルカメラにおいて、シャッタ速度(シャッタスピード;SS)を速くして撮像した場合にボケ像が欠けるという問題があった。このようなボケ像の欠けは撮影画像の品質を下げる要因となる。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ボケ像欠けを回避することが可能な、新規かつ改良された撮像装置およびシャッタ動作選択方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の画素から成る撮像素子と、前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、前記第1の幕と前記第2の幕により形成されるスリット幅、又は前記第1の幕と前記リセット部によるリセット走査により形成されるスリット幅に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択する動作選択部と、を備える撮像装置が提供される。
【0008】
また、前記動作選択部は、前記スリット幅が第1の閾値より狭い場合に前記メカシャッタ動作を選択してもよい。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の画素から成る撮像素子と、前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、シャッタ速度に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択する動作選択部と、を備える撮像装置が提供される。
【0010】
また、前記動作選択部は、前記シャッタ速度が第2の閾値より速い場合は、前記メカシャッタ動作を選択してもよい。
【0011】
また、前記動作選択部は、前記シャッタ速度が第2の閾値より速く、かつ、被写体のボケ量が第4の閾値より大きい場合は、前記メカシャッタ動作を選択してもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の画素から成る撮像素子と、前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、撮像レンズのF値に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択する動作選択部と、を備える撮像装置が提供される。
【0013】
また、前記動作選択部は、前記F値が第3の閾値より小さい場合は、前記メカシャッタ動作を選択してもよい。
【0014】
また、前記動作選択部は、シャッタ速度が第2の閾値より速く、かつ、前記F値が第3の閾値より小さい場合は、前記メカシャッタ動作を選択してもよい。
【0015】
また、前記動作選択部は、シャッタ速度が第2の閾値より速く、かつ、前記F値が第3の閾値より小さく、さらに、被写体のボケ量が第4の閾値より大きい場合は、前記メカシャッタ動作を選択してもよい。
【0016】
また、前記動作選択部は、前記F値が第3の閾値より小さく、かつ、被写体のボケ量が第4の閾値より大きい場合は、前記メカシャッタ動作を選択してもよい。
【0017】
また、前記撮像装置は、着脱可能なレンズユニットを備え、前記動作選択部は、前記レンズユニットから前記F値を取得してもよい。
【0018】
また、前記撮像装置は、被写体画像のコントラスト成分又は前記被写体との距離の少なくともいずれかに基づいて前記ボケ量を算出する算出部をさらに備えてもよい。
【0019】
また、前記撮像装置は、前記動作選択部により選択されたシャッタ動作により撮影した複数の画像を合成する画像合成部をさらに備えてもよい。
【0020】
また、前記撮像装置は、前記動作選択部により選択されたシャッタ動作の種別をユーザに確認させるために前記シャッタ動作の種別を示す表示部をさらに備えてもよい。
【0021】
また、前記撮像装置の撮影モードが所定の撮影モードの場合は、前記動作選択部によるシャッタ動作の選択を禁止してもよい。
【0022】
また、前記動作選択部は、前記第1の幕の走行開始時の前記スリット幅が所定の値より狭い場合に前記メカシャッタ動作を選択してもよい。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の画素から成る撮像素子と、前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、を備える撮像装置のシャッタ動作選択方法であって、前記第1の幕と前記第2の幕により形成されるスリット幅、又は前記第1の幕と前記リセット部によるリセット走査により形成されるスリット幅の長さを判断するステップと、前記スリット幅の長さに応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択するステップと、を含むシャッタ動作選択方法が提供される。
【0024】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の画素から成る撮像素子と、前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、を備える撮像装置のシャッタ動作選択方法であって、シャッタ速度を判断するステップと、前記シャッタ速度に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択するステップと、を含むシャッタ動作選択方法が提供される。
【0025】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の画素から成る撮像素子と、前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、を備える撮像装置のシャッタ動作選択方法であって、撮像レンズのF値を判断するステップと、前記F値に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択するステップと、を含む、シャッタ動作選択方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明によれば、ボケ像欠けを回避することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態による撮像装置10の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態によるカメラ制御部130の機能ブロックを示す図である。
【図3】本発明の実施形態によるメカシャッタ機構において、撮像素子、メカ先幕およびメカ後幕をレンズ側から光軸方向に沿って観察した様子を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態による電子シャッタ機構において、撮像素子、メカ先幕およびメカ後幕をレンズ側から光軸方向に沿って観察した様子を示す正面図である。
【図5】電子シャッタ機構による撮影動作において高速SS時に発生するボケ像欠けを説明するための図である。
【図6】メカシャッタ機構による撮影動作において高速SS時にボケ像欠けが発生しないことを説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施形態によるシャッタ動作選択の処理を示すフローチャートである。
【図8】電子シャッタ機構による撮影動作においてシャッタスピードを低速にすることでボケ像欠けを防止することを説明するための図である。
【図9】メカシャッタ機構による撮影動作において図8と同じシャッタスピードでボケ像欠けが発生しないことを説明するための図である。
【図10】電子シャッタ機構による高速SSの撮影動作においてF値が暗いためボケ像欠けが発生しないことを説明するための図である。
【図11】メカシャッタ機構による撮影動作において図10と同じシャッタスピードでボケ像欠けが発生しないことを説明するための図である。
【図12】本発明の第2の実施形態によるシャッタ動作選択の処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3の実施形態によるシャッタ動作選択の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.本発明の実施形態による撮像装置の基本構成
2.第1の実施形態
(2−1)撮像装置の主要構成
(2−2)撮像装置の動作
3.第2の実施形態
4.第3の実施形態
5.まとめ
【0030】
<1.本発明の実施形態による撮像装置の基本構成>
本発明は、一例として「2.第1の実施形態」〜「4.第3の実施形態」において詳細に説明するように、多様な形態で実施され得る。
【0031】
なお、本明細書において、撮像装置の一例として撮像装置10(レンズ交換式デジタルカメラ)を示しているが、撮像装置はかかる例に限定されない。例えば、撮像装置は、レンズ一体型のデジタルカメラ、銀塩カメラ、ビデオカメラ、その他静止画を撮影できる装置であってもよい。
【0032】
以下では、まず、このような各実施形態において共通する基本構成について図1〜図4を参照して説明する。
【0033】
(構成)
図1は、本発明の実施形態による撮像装置10の基本構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態にかかる撮像装置は、カメラ本体100と、カメラ本体100に装着される、撮影光学系としての交換可能なレンズユニット101とを有している。
【0034】
まず、レンズユニット101内の構成について説明する。レンズユニット101は、撮影レンズ114、レンズ制御部115、レンズ駆動部116、絞り駆動部117、絞り117a、ズーム駆動機構118、ズーム位置検出部119および通信部120を有する。
【0035】
撮影レンズ114は、光軸方向に移動可能である。なお、図1では、撮影レンズ114を1つのレンズとして表しているが、実際にはフォーカスレンズやズームレンズ等、複数のレンズから構成されている。レンズ制御部115は、レンズ駆動部116を介して撮影レンズ114の駆動を制御すると共に、絞り駆動部117を介して絞り117aを駆動し、撮影動作時の被写体輝度に応じた絞りの制御を行う。また、ズーム駆動機構118を操作(本実施形態では手動操作)することによりズームレンズの位置を動かすことができる。動かされたズームレンズの位置(焦点距離)はズーム位置検出部119により検出され、レンズ制御部115に送られる。レンズ制御部115は、レンズユニット101側の通信部120及びカメラ本体100側の通信部121を介して、後述するカメラ本体100内のカメラ制御部130と通信することができる。レンズ制御部115は、この通信部120及び121を介して、レンズユニット101の種類や、焦点距離、射出瞳距離、焦点位置(フォーカス位置)等に関するレンズ情報をカメラ制御部130に通知する。
【0036】
次に、カメラ本体100の構成について説明する。カメラ本体100は、撮像素子104、メカシャッタ105、シャッタ駆動部106、パルス発生部107、垂直駆動変調部108、信号処理部109、画像表示部110、画像記録部111、スイッチユニット112、通信部121、カメラ制御部130、走査パターン保持部150および表示装置151を有する。
【0037】
撮像装置10が非撮影状態にある場合、レンズユニット101の撮影レンズ114及び絞り117aを通過した被写体光束は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサやCCD(Charge Coupled Device)などにより構成される撮像素子104に向かう。撮像素子104の各画素は、露光されている間、レンズユニット101により結像された被写体光学像を光量に応じて光電変換し、得られた電荷を蓄積する。蓄積された電荷は信号処理部109に送られ、信号処理部109によりリアルタイムに生成された画像データが、画像表示部110を介して表示装置151に出力されてリアルタイムの画像として表示される。これにより、撮影者は、表示装置151を介して被写体像を観察することができる。
【0038】
後述する不図示のレリーズ釦が押されて非撮影状態から撮影状態に移行すると、撮像素子104には、パルス発生部107から走査クロック(水平駆動パルス)や所定の制御パルスが供給される。パルス発生部107で発生した走査クロックのうち、垂直走査用のクロックは垂直駆動変調部108によって所定のクロック周波数に変調されて、撮像素子104に入力される。この垂直駆動変調部108によって、撮像素子104のライン毎に行われるリセット走査の走査パターンが決定される。この撮像素子104のライン毎のリセット走査により、電子先幕としての機能が達成される。また、パルス発生部107は、後述する信号処理部109にもクロック信号を出力する。
【0039】
撮像素子104に対して物体側(レンズ側)には、メカニカルシャッタであるフォーカルプレンシャッタ(以下、「メカニカルシャッタ」と呼ぶ。)105が配置されている。メカニカルシャッタ105は、複数の遮光羽根で構成された先幕(以下、「メカ先幕」と呼ぶ。)と、複数の遮光羽根で構成された後幕(以下、「メカ後幕」と呼ぶ。)を有する。
【0040】
ここで、本実施形態に係る撮像装置は、メカニカルシャッタ105が有するメカ先幕およびメカ後幕を用いて撮影動作を行うメカシャッタ機構と、上述した撮像素子104で行われる電子先幕としてのリセット走査およびメカニカルシャッタ105が有するメカ後幕を用いて撮影動作を行う電子シャッタ機構との双方の機構を有する。以下、撮像素子104の露光制御を行う各シャッタ機構の概要を説明する。
【0041】
メカシャッタ機構では、メカニカルシャッタ105により先幕と後幕が構成され、撮像素子104を覆うメカ先幕を走行させることで撮像素子104への光の入射を開放し、次いでメカ後幕を走行させることで撮像素子104への光の入射を遮断する。これにより、メカシャッタによる撮像動作(メカシャッタ動作)が実現される。ここで、撮像素子104への光の入射を遮断するメカ後幕が、特許請求の範囲に記載の「第1の幕」に相当し、メカ後幕に先行して走行するメカ先幕が、特許請求の範囲に記載の「第2の幕」に相当する。
【0042】
また、電子シャッタ機構は、撮像素子104で行われるライン毎のリセット走査により電子先幕が、メカニカルシャッタ105により後幕(メカ後幕)が構成される。このような電子シャッタ機構では、先ず、撮像素子104の複数画素からなるライン毎に、画素の蓄電電荷量をゼロにするリセット走査が行われる。その後、所定時間経過後に、メカ後幕によって撮像素子を順次遮光した後、各画素に蓄積された電荷を順次読み出す読み出し走査を行うことで、電子シャッタによる撮像動作(電子シャッタ動作)が実現される。
【0043】
以上、各シャッタ機構の概要について説明したが、詳細については図3〜6を参照して後述する。なお、各図では、各シャッタ機構を説明するために必要な構成を示しただけであって、本実施形態に係る撮像装置10がメカシャッタ機構と電子シャッタ機構との双方の機構を有することは上述の通りである。
【0044】
続いて、カメラ本体100の他の構成について説明する。シャッタ駆動部106は、メカシャッタ105のメカ先幕およびメカ後幕の走行を制御する。また、シャッタ駆動部106は、メカ後幕3の走行を開始させるタイミングを調整することでスリット幅Lを調整し、露光時間(シャッタースピードSS)を制御することができる。
【0045】
信号処理部109は、撮像素子104から読み出された信号に対して二重相関サンプリング処理(CDS)やゲイン(AG)処理、及び所定の処理(色処理やガンマ補正等)を施すことにより画像データを生成する。生成された画像データは、画像表示部110を介して表示装置151に出力されて撮影画像として表示されたり、画像記録部111に記録されたりする。また、信号処理部109は、生成した画像データと、画像記録部111に記録された画像データ等、複数の画像データを合成する画像合成部としても機能する。
【0046】
スイッチユニット112は、主電源のON/OFFを制御するスイッチや、撮影条件等を設定するために操作されるスイッチや、撮影準備動作および撮影動作を開始させるために操作されるスイッチ(レリーズ釦)を含む。レリーズ釦の半押し操作で撮影準備動作(測光動作や焦点調節動作等)が開始される。更に、全押し操作で撮影動作(撮像素子104の露光及び電荷信号の読み出し、及び電荷信号を処理して得られた画像データの記録媒体への記録)が開始される。
【0047】
カメラ制御部130は、演算処理装置および制御装置として機能するCPU(Central Processing Unit)であり、各種プログラムに従って撮像装置全体の動作を制御する。また、カメラ制御部130は、スイッチユニット112の操作に応じた動作を行う。
【0048】
走査パターン保持部150は、後述するような電子先幕の走査パターンを複数種類保持する。走査パターンとは、電子先幕としての撮像素子104のライン毎に行われるリセット走査のタイミングをパターン化したものである。
【0049】
次に、図2を参照してカメラ制御部130について説明する。図2に示すように、カメラ制御部130は、リセット部131、動作選択部132および算出部133を有する。
【0050】
リセット部131は、所定のタイミングで撮像素子104の画素をライン毎に順次リセット走査することで電子先幕の機能を実現する。具体的には、リセット部131は、垂直駆動変調部108を制御し、垂直駆動変調部108からリセット走査用のクロックを撮像素子104に入力させる。
【0051】
動作選択部132は、上述したメカシャッタ動作と、電子シャッタ動作とのいずれかを選択する処理を行う。また、動作選択部132は、シャッタ速度、F値および被写体のボケ量の少なくともいずれかに応じて、上記いずれかのシャッタ動作を選択する。なお、動作選択部132が行う選択処理の詳細については、図7に示すフローを参照して後述する。
【0052】
算出部133は、被写体画像のコントラスト成分又は被写体との距離の少なくともいずれかに基づいて、ボケ量を算出する処理を行う。なお、算出部133が行う算出処理の詳細については後述する。
【0053】
上述したカメラ制御部130が有する各部の処理は、撮像装置に内蔵されるCPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのハードウェア(図示せず)で実現される。ここで、ROMは、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAMは、CPUの実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバスにより相互に接続されている。
【0054】
以上、本発明の実施形態による撮像装置10の基本構成について説明した。続いて、各シャッタ機構による撮影動作について図を参照して詳細に説明する。
【0055】
(メカシャッタ機構による撮影動作)
まず、メカシャッタ機構による撮影動作について図3を参照して説明する。図3は、撮像素子104、メカ先幕2およびメカ後幕3をレンズ側から光軸方向に沿って観察した様子を示す正面図であり、レリーズ釦の押下により撮影が開始された後の、メカ先幕の走行およびメカ後幕の走行が途中にあるときの状態を示している。矢印1は、メカ先幕2の走行方向と、メカ後幕3の走行方向を示す。
【0056】
図3において、メカニカルシャッタ105のメカ先幕2とメカ後幕3が、撮像素子104の一部の領域を遮光している状態が示されている。
【0057】
メカ先幕2の端部4とメカ後幕3の端部5との間のスリットによって形成される領域6は、メカ先幕2およびメカ後幕3により遮光されておらず、撮像素子104において露光による電荷蓄積が行われている領域(電荷蓄積領域)である。電荷蓄積領域6はメカ先幕2とメカ後幕3の走行に従って、矢印1の方向へ移動していくことになる。メカ先幕2の端部4が通過してから、つまり撮像素子104への光の入射が開放されてから、メカ後幕3によって遮光状態となるまでの時間が、画素の露光による電荷蓄積時間となる。したがって、スリット幅Lを調整することで、電荷蓄積領域6を変化し、露光時間を調整することができる。
【0058】
このように、メカ先幕2の端部4が矢印1の方向へ走行して各ラインの電荷蓄積が開始されるので、電荷蓄積の開始タイミングは撮像素子104のライン毎に異なる。図3に示す例では、撮像素子104の最も下に位置するラインにおいて電荷蓄積動作が最も早いタイミングで行われ、最も上に位置するラインで電荷蓄積動作が最も遅いタイミングで行われる。
【0059】
撮像素子104の下部から上部へ向かうメカ先幕2およびメカ後幕3の移動は、シャッタ駆動部106により制御される。シャッタ駆動部106は、メカ後幕3の走行を開始させるタイミングを調整することでスリット幅Lを調整し、露光時間(シャッタースピードSS)を制御することができる。
【0060】
(電子シャッタ機構による撮影動作)
次に、電子シャッタ機構による撮影動作について図4を参照して説明する。図4は、撮像素子104およびメカ後幕3をレンズ側から光軸方向に沿って観察した様子を示す正面図であり、レリーズ釦の押下により撮影が開始された後の、撮像素子104で行われるリセット走査およびメカ後幕3の走行が途中にあるときの状態を示している。矢印1は、リセット走査の走査方向(電子先幕7の走行方向)と、メカ後幕3の走行方向を示す。
【0061】
図4において、メカニカルシャッタ105のメカ後幕3が、撮像素子104の一部の領域を遮光している状態が示されている。さらに、撮像素子104で行われるリセット走査のライン(リセットライン)8を図4に示す。リセットライン8は、画素の蓄積電荷量がゼロにされるラインであり、電子先幕7の端部に相当する。
【0062】
リセットライン8とメカ後幕3の端部5との間のスリットによって形成される領域6は、撮像素子104において露光による電荷蓄積が行われている領域(電荷蓄積領域)である。電荷蓄積領域6は電子先幕7とメカ後幕3の走行に従って、矢印1の方向へ移動していくことになる。リセットライン8が通過してから、つまり画素が矢印1の方向へライン毎に順次リセットされてから、メカ後幕3によって遮光状態となるまでの時間が、画素の露光による電荷蓄積時間となる。このように、リセットライン8が矢印1の方向へ走行してライン毎の電荷蓄積が開始されるので、電荷蓄積の開始タイミングは撮像素子104のライン毎に異なる。図4に示す例では、撮像素子104の最も下に位置するラインで電荷蓄積動作が最も早いタイミングで行われ、最も上に位置するラインで電荷蓄積動作が最も遅いタイミングで行われる。
【0063】
撮像素子104の下部から上部へ向かうリセットライン8の移動(リセット走査)は、垂直駆動変調部108により制御される。このリセットライン8の移動パターンを「走査パターン」と称する。この走査パターンは、前述のように撮像素子104のライン毎にリセット走査が行われるタイミングを示したものということができる。走査パターン保持部150には、例えば、焦点距離や射出瞳距離などに応じて異なる走査パターンが複数保持されている。カメラ制御部130は、装着されたレンズの焦点距離や射出瞳距離などに応じてこれらのうちの一つを選択し、選択した走査パターンに従ってリセットライン8が移動するように垂直駆動変調部108を制御する。
【0064】
(本発明の各実施形態に至る経緯)
上述した電子シャッタ機構は、メカシャッタ機構に比べて、レリーズタイムラグ短縮、レリーズ静音化、シャッタ振動による像ぶれ軽減の性能向上が見込める。しかしながら、電子シャッタ機構では、シャッタスピードが高速で(高速SS)、スリット幅が狭い場合に、被写体のボケ像が欠ける現象が生じるという問題があった。
【0065】
ここで、シャッタ速度の調整について説明する。一般的に、先幕および後幕の走行速度の基本速は幕速と称され、幕速より低速のシャッタ速度の場合は、先幕が走行した後、後幕を走行させるのを遅らせてスリット幅Lを広げて全開状態を維持することで、幕の走行速度を変化させることなく実質的にシャッタ速度を遅く(露光量をより多く)できる。一方、シャッタ速度を幕速より高速にする場合には、先幕走行後に後幕が走行するまでの時間を短くし、先幕と後幕とでスリット幅Lを短く形成して露光することで(図3および図4参照)、走行速度を変化させることなく実質的にシャッタ速度を早く(露光量を少なく)できる。従って、先幕走行後に後幕を走行させる時間を調整することでスリット幅Lを調整でき、これによりシャッタ速度SSを低速SSから高速SSまで変化させることができる。
【0066】
次に、電子シャッタ機構におけるボケ像欠けの現象について図5を参照して説明する。図5は撮像面の露光中央位置での撮影光束の状況を示す図である。図5において、上側に示す図は焦点より近い側に撮像素子104の撮像面が位置する所謂「後ピン」状態を示し、下側に示す図はそのときの撮影画像のボケの見え方を示す。
【0067】
図5の上側に示す図において、絞り117aは撮影レンズ114と同位置に示され、撮影レンズ114の光束の上側51および撮影レンズ114の光束の下側52が交差する箇所が焦点53であり、撮像素子104の撮像面は焦点53より撮影レンズ114に近い位置にある。撮像素子104の撮像面ではリセット走査のライン(リセットライン8)が電子先幕7の端部に相当している。また、撮像素子104から幕間Rだけ離れた位置にメカ後幕3が位置する。なお、図5の下側に示す図は、撮像素子104の撮像面50を正面から見た様子を表す。
【0068】
ここで、撮影レンズ114の絞り開口が円形であるものとする。撮像素子104の中央領域の露光時には、電子先幕のリセットライン8とメカ後幕3の端部5で形成されるスリット幅Lが1/4000秒〜1/2000秒の短時間露光秒時(高速SS)の場合に、撮像素子104とメカ後幕3との距離差(幕間R)の影響で、メカ後幕3の端部5で光束の下側52がけられ、リセットライン8(電子先幕の端部)では光束の上側51はけられない状態が生じる。これにより、円形になるべき後ピンのボケ像55の下側がカットされるボケ像欠けの現象が生じる。
【0069】
上述したボケ像欠けは画像の品質に大きく影響する。また、複数の画像データを合成して画像データを生成する場合においても、合成前の画像データにボケ像欠けの画像が含まれる場合、生成した画像データの品質を著しく劣化させる。
【0070】
このようなボケ像欠けの発生を防止するには、撮像素子104とメカ後幕3との間(幕間R)を狭くすることや、メカ後幕3の走行速度を早くしてスリット幅Lを出来るだけ広くすることが考え得る。しかしながら、幕間Rを狭くすることは、設計上の限界があり、メカ後幕3の走行速度を早くすることにも制御の困難性があり、最善の解決方法とは言えない。
【0071】
一方、高速SS時であっても、メカシャッタ機構による撮影動作ではボケ像欠けが発生しないことに注目し、状況に応じて電子シャッタ機構とメカシャッタ機構とのいずれかを選択することでボケ像欠けの発生を防止し、画像データの品質を向上させる本実施形態に係る撮像装置に至った。メカシャッタ機構による撮影動作でボケ像欠けが発生しない点については、以下の「2.第1の実施形態」で詳述する。
【0072】
<2.第1の実施形態>
(2−1)撮像装置の主要構成
第1の実施形態に係る撮像装置は、図2のカメラ制御部130が有する動作選択部132により、メカシャッタ機構による撮影動作と、電子シャッタ機構による撮影動作とのいずれかを選択する。具体的には、動作選択部132は、シャッタ速度(SS)、F値、ボケ量の少なくともいずれかに基づいて、シャッタ機構の選択を行う。動作選択部132の処理については、「(2−2)撮像装置の動作選択処理」で詳述する。
【0073】
ここで、高速SS時であっても、メカシャッタ機構による撮影動作ではボケ像欠けが発生しないことについて図6を参照して説明する。
【0074】
図6は撮像面の露光中央位置での撮影光束の状況を示す図である。図6において、上側に示す図は焦点53より近い側に撮像素子104の撮像面が位置する所謂「後ピン」状態を示し、下側に示す図はそのときの撮影画像のボケの見え方を示す。
【0075】
図6の上側に示す図において、絞り117aは撮影レンズ114と同位置に示され、撮影レンズ114の光束の上側51および撮影レンズ114の光束の下側52が交差する箇所が焦点53であり、撮像素子104の撮像面は焦点53より撮影レンズ114に近い位置にある。また、撮像素子104から幕間Rだけ離れた位置にメカ先幕2およびメカ後幕3が位置する。なお、図6の下側に示す図は、撮像素子104の撮像面50を正面から見た様子を表す。
【0076】
ここで、撮影レンズ114の絞り開口が円形であるものとする。撮像素子104の中央領域の露光時には、メカ先幕2の端部4とメカ後幕3の端部5で形成されるスリット幅Lが1/4000秒〜1/2000秒の短時間露光秒時(高速SS)の場合に、図6の下側に示すように、ボケ像56の欠けは発生しない。これは、メカ先幕2とメカ後幕3とが同位置にあることから、メカ先幕2の端部4で光束の上側51がけられ、メカ後幕3の端部5で光束の下側52がけられ、ボケ像の上側と下側が同じようにカットされる状態が生じる。これにより、後ピンのボケ像55が円形になる。
【0077】
以上、高速SS時(スリット幅Lが狭い場合)であってもメカシャッタ機構による撮影動作においてボケ像欠けが発生しないことについて説明した。続いて、動作選択部132によるシャッタ動作の選択処理について詳述する。
【0078】
(2−2)撮像装置の動作選択処理
本実施形態に係る動作選択部132の処理について図7のフローチャートを参照して説明する。
【0079】
まず、図7に示すように、動作選択部132は、撮影動作の制御値の一つであるシャッタ速度が閾値aよりも速い速度(高速SS)に設定されているか否か判断する(ステップS11)。閾値aは、電子シャッタ機構による撮影動作を行った場合にボケ像欠けが発生する恐れのないスリット幅Lで先幕と後幕が走行される際のシャッタ速度とする。例えば、シャッタ速度1/2000秒又はそれ以上を閾値aとしてもよい。
【0080】
ここで、電子シャッタ機構による撮影動作を行った場合にボケ像欠けが発生する恐れのないスリット幅Lで先幕と後幕が走行される場合について図8を参照して説明する。
【0081】
図8の上側の図に示したスリット幅Lは、図5に示すボケ像欠けが発生するスリット幅Lよりも広い。スリット幅Lが広い図8の状態では、図5の状態より撮像素子104への露光時間が長くなる。これは、図8に示す場合のシャッタ速度は図5に示す場合よりも低速であると言い換えることができる。この時、光束の下側52はメカ後幕3の端部5でけられることがなく、図8の下側に示す図のように、ボケ像57の欠けは発生しない。
【0082】
このように、シャッタ速度が閾値aより低速で、電子シャッタ機構による撮影動作においてもボケ像欠けが発生する恐れのない場合は(ステップS12/閾値aより低速)、動作選択部132は、電子シャッタ機構による撮影動作を選択する(ステップS13)。なお、シャッタ速度が閾値aより低速の場合は、メカシャッタ機構による撮影動作においても、図9の上側の図に示すように、光束の上側51および光束の下側52はメカ先幕2やメカ後幕3でけられず、図9の下側の図に示すように、ボケ像58に欠けは発生しない。しかしながら、電子シャッタ機構による撮影動作の方が、上述したようにレリーズタイムラグの短縮やシャッタ音の静音化といった点で性能が向上するため、本実施形態では電子シャッタ機構による撮影動作が選択される。
【0083】
一方、シャッタ速度が閾値aより高速と判断された場合は(ステップS11/閾値aより高速)、次いで動作選択部132は、F値が閾値bより大きいか小さいかを判断する(ステップS15)。F値は、図1に示すレンズユニット101のレンズ制御部115から通信部120および121を介して取得してもよい。また、閾値bは、電子シャッタ機構による撮影動作を行った場合にボケ像欠けが発生する恐れのない絞り値とする。例えば、F2.8を閾値bとしてもよい。
【0084】
ここで、F値が閾値bより大きく、すなわちF値が暗く、電子シャッタ機構による撮影動作を行った場合にボケ像欠けが発生する恐れのないことについて図10を参照して説明する。
【0085】
図10の上側の図に示すように、シャッタ速度が閾値aより高速(スリット幅Lが狭い)場合であっても、F値が閾値bより大きい場合は、絞り117aにより撮影レンズ114からの光束経がスリット幅Lより狭く、光束の下側52がメカ後幕3の端部5でけられることがない。したがって、図10の下側に示す図のように、ボケ像59に欠けが発生しない。このようなボケ像欠けの発生しないF値は、図5に示すボケ像欠けが発生するF値よりも大きい、すなわち暗いと言える。
【0086】
このように、F値が閾値bより大きく、電子シャッタ機構による撮影動作においてもボケ像欠けが発生する恐れのない場合は(ステップS15/閾値bより大きい)、動作選択部132は、電子シャッタ機構による撮影動作を選択する(ステップS13)。なお、F値が閾値bより大きい場合は、メカシャッタ機構による撮影動作においても、図11の上側の図に示すように、光束の上側51および光束の下側52はメカ先幕2やメカ後幕3でけられず、図11の下側の図に示すように、ボケ像60に欠けは発生しない。しかしながら、電子シャッタ機構による撮影動作の方が、上述したようにレリーズタイムラグの短縮やシャッタ音の静音化といった点で性能が向上するため、本実施形態では電子シャッタ機構による撮影動作が選択される。
【0087】
一方、シャッタ速度が閾値aより高速で(ステップS11/閾値aより高速)、F値が閾値bより小さいと判断された場合は(ステップS15/閾値bより小さい)、次いで動作選択部132は、ボケ量が閾値cより大きいか小さいかを判断する(ステップS17)。
【0088】
シャッタ速度が閾値aより高速で(ステップS11/閾値aより高速)、F値が閾値bより小さいと判断された場合は(ステップS15/閾値bより小さい)、図5に示すように、電子シャッタ機構においては撮影レンズ114からの光束の下側52がメカ後幕3の端部5でけられてボケ像55が欠ける現象が発生し得る。しかしながら、撮影しようとする被写体がボケていない場合は、ボケ像欠けを考慮する必要がないため、上記点でより性能の高い電子シャッタ機構による撮影動作を選択することが望ましい。そこで、ステップS17ではボケ量を基準として被写体のボケ具合を判断する。
【0089】
ボケ量が閾値cより大きい場合は(ステップS17/閾値cよりボケ大)、撮影しようとする被写体がボケた状態であると言える。この場合、ボケ像の欠けによる画像データの品質を劣化させる影響が大きいため、ボケ像欠けが発生しないメカシャッタ機構による撮影動作を選択する(ステップS19)。一方、ボケ量が閾値cより小さい場合は(ステップS17/閾値cよりボケ小)、撮影しようとする被写体がボケていない状態であるとする。この場合、ボケ像の欠けが発生しても画像データの品質への劣化の影響は小さいため、電子シャッタ機構による撮影動作を選択する(ステップS13)。
【0090】
このようなボケ量は、図2に示す算出部133により算出される。算出部133が行うボケ量の算出方法については特に限定せず、例えば、信号処理部109で生成された画像データ(被写体画像)のコントラスト成分からの算出や、撮像装置に赤外線センサを設けて、該赤外線の反射光から被写体までの距離を判断してボケ量を算出することや、レンズを繰り出した量(レンズ移動量)に基づいて被写体までの距離を判断してボケ量を算出することが可能である。ここで、ボケ量とは、被写界深度とボケ像の大きさとの少なくともいずれかであればよい。
【0091】
なお、図7に示すフローチャートでは、シャッタ速度、F値、ボケ量の各判断を順次行っているが、本実施形態による動作選択部132の選択処理はこれに限られず、シャッタ速度とF値、シャッタ速度とボケ量、F値とボケ量、を順次判断してもよい。なお、シャッタ速度とF値の各判断の順番は逆であってもよいが、シャッタ速度とボケ量およびF値とボケ量の各判断の順番は、いずれもボケ量を後に判断する方が好ましい。
【0092】
また、動作選択部132は、シャッタ速度のみ、F値のみ、ボケ量のみでシャッタ動作を選択してもよい。
【0093】
<3.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について図12に示すフローチャートを参照して説明する。図12のステップS21〜S29に示すように、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、動作選択部132が選択したシャッタ機構により撮影動作を行う。
【0094】
このようにして撮影された画像データは、図1に示す信号処理部109から画像記録部111に一旦記録される。次いで、カメラ制御部130は、合成用の撮影が完了したか否か判断し(ステップS31)、完了していない場合は再度撮影を行う。
【0095】
合成用の撮影が完了すると(ステップS31/完了)、信号処理部109は、画像記録部111に一旦記録した画像データを取得し、撮影した画像データと合成して画像データを生成する処理を行う。
【0096】
複数の画像データを合成して画像データを生成する処理としては、例えば、露出などの撮影条件が異なる2以上の画像データを合成することで、明暗差を押さえるよう補完し合った画像データを生成するハイダイナミックレンジ(HDR)撮影が知られている。
【0097】
本実施形態に係る撮像装置10は、このような複数回撮影した画像データを合成する撮影方法の場合でも、動作選択部132により電子シャッタ機構とメカシャッタ機構のいずれかが選択され、ボケ像欠けのない(少なくともボケ像欠けによる画像品質への影響が低い)画像データを撮影できる。その結果、信号処理部109は、ボケ像欠けのない画像データに基づいて高画質の合成画像データを生成することができる。
【0098】
<4.第3の実施形態>
上述した各実施形態では、動作選択部132により自動的に選択されたシャッタ機構で撮影動作が行われていた。したがって、操作者は、撮影の際にシャッタ機構を選択することは出来なかった。ここで、電子シャッタ機構による撮影動作とメカシャッタ機構による撮影動作とではレリーズタイムラグの程度やシャッタ音の大きさが異なる。したがって、レリーズタイムラグの程度やシャッタ音の大きさが常に一定ではないために操作者のレベルによっては使い難いと感じることも想定される。
【0099】
そこで、本発明の第3の実施形態では、動作選択部132により選択されたシャッタ機構の種別を表示装置151に表示する。これにより、操作者は、シャッタ機構の種別を撮影前に選択することが出来る。
【0100】
本実施形態による動作処理について図13に示すフローチャートを参照して説明する。図13に示すように、シャッタ速度や、F値などの撮影制御値が確定した後(ステップS32)、動作選択部132は、ステップS33、S37、S39において、上記第1の実施形態と同様に、電子シャッタ機構とメカシャッタ機構とのいずれかを選択する。
【0101】
次いで、カメラ制御部130は、選択されたシャッタ機構の種別を画像表示部110を介して表示装置151に表示させる(ステップS35、S41)。
【0102】
これにより、撮像装置10は、撮影しようとする画像データにおいてボケ像欠け回避に有効なシャッタ機構がどちらであるかを、操作者(ユーザ)に確認させることが出来る。その上で、操作者は、どちらのシャッタ機構で撮影動作を行うかを任意に選択することが出来る。
【0103】
なお、操作者が撮影制御値を変化させた場合は(ステップS43/変化あり)、ステップS33〜S41に示すシャッタ機構の選択処理および表示処理が再度行われる。一方、変化がない場合は(ステップS43/変化なし)、表示処理が終了する。
【0104】
<5.まとめ>
以上説明したように、本発明の各実施形態にかかる撮像装置10によれば、シャッタ速度、F値、ボケ量の少なくともいずれかに応じて、電子シャッタ機構とメカシャッタ機構のいずれかを選択することで、ボケ像欠けを回避することができる。
【0105】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0106】
例えば、撮像装置10の撮影モードがマニュアルモードの場合に、動作選択部132によるシャッタ機構の選択処理を禁止し、操作者が任意に選択したシャッタ機構で撮影動作を行う。
【0107】
また、撮像装置10の撮影モードがシーン別のオートモードである場合に、カメラ制御部130は、設定されたオートモードに応じて、電子シャッタ機構とメカシャッタ機構のいずれかを強制的に選択してもよい。例えば、設定されたオートモードがスポーツモードの場合は、撮影対象である被写体の動きが速いことが想定されるため、ボケ像欠けが防止できるメカシャッタ機構よりも、レリーズタイムラグが短い電子シャッタ機構が優先される。また、設定されたオートモードがポートレートの場合は、ボケ像欠けが発生した場合の画像品質への影響が大きいため、動作選択部132によるシャッタ機構の選択処理を行ってもよいし、メカシャッタ機構を強制的に選択してもよい。
【0108】
また、撮像装置10は、メカシャッタ105のメカ後幕3は走行開始から徐々に加速するため、スリット幅Lを走行開始時から徐々に広げて撮像素子104の画素のライン毎の露光時間を調整する。したがって、スリット幅Lは走行開始時が最も小さい。そこで、動作選択部132は、走行開始時のスリット幅Lにおいてボケ像欠けが発生しないシャッタ速度、F値、ボケ量をそれぞれ各閾値としてもよい。
【0109】
また、撮像装置10に内蔵されるハードウェアを、上述した撮像装置10の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0110】
10 撮像装置
100 カメラ本体
101 レンズユニット
104 撮像素子
105 メカシャッタ
106 シャッタ駆動部
107 パルス発生部
108 垂直駆動変調部
109 信号処理部
110 画像表示部
111 画像記録部
112 スイッチユニット
114 撮影レンズ
115 レンズ制御部
116 レンズ駆動部
117 絞り駆動部
117a 絞り
118 ズーム駆動機構
119 ズーム位置検出部
120 通信部
121 通信部
130 カメラ制御部
150 走査パターン保持部
O 光軸
L スリット幅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素から成る撮像素子と、
前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、
前記第1の幕と前記第2の幕により形成されるスリット幅、又は前記第1の幕と前記リセット部によるリセット走査により形成されるスリット幅に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択する動作選択部と、
を備える、撮像装置。
【請求項2】
前記動作選択部は、前記スリット幅が第1の閾値より狭い場合に前記メカシャッタ動作を選択する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
複数の画素から成る撮像素子と、
前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、
シャッタ速度に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択する動作選択部と、
を備える、撮像装置。
【請求項4】
前記動作選択部は、前記シャッタ速度が第2の閾値より速い場合は、前記メカシャッタ動作を選択する、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記動作選択部は、前記シャッタ速度が第2の閾値より速く、かつ、被写体のボケ量が第4の閾値より大きい場合は、前記メカシャッタ動作を選択する、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
複数の画素から成る撮像素子と、
前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、
撮像レンズのF値に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択する動作選択部と、
を備える、撮像装置。
【請求項7】
前記動作選択部は、前記F値が第3の閾値より小さい場合は、前記メカシャッタ動作を選択する、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記動作選択部は、シャッタ速度が第2の閾値より速く、かつ、前記F値が第3の閾値より小さい場合は、前記メカシャッタ動作を選択する、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記動作選択部は、シャッタ速度が第2の閾値より速く、かつ、前記F値が第3の閾値より小さく、さらに、被写体のボケ量が第4の閾値より大きい場合は、前記メカシャッタ動作を選択する、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記動作選択部は、前記F値が第3の閾値より小さく、かつ、被写体のボケ量が第4の閾値より大きい場合は、前記メカシャッタ動作を選択する、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記撮像装置は、着脱可能なレンズユニットを備え、
前記動作選択部は、前記レンズユニットから前記F値を取得する、請求項6〜10のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記撮像装置は、被写体画像のコントラスト成分又は前記被写体との距離の少なくともいずれかに基づいて前記ボケ量を算出する算出部をさらに備える、請求項5又は10に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記撮像装置は、
前記動作選択部により選択されたシャッタ動作により撮影した複数の画像を合成する画像合成部をさらに備える、請求項1、3又は6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記撮像装置は、
前記動作選択部により選択されたシャッタ動作の種別をユーザに確認させるために前記シャッタ動作の種別を示す表示部をさらに備える、請求項1、3又は6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記撮像装置の撮影モードが所定の撮影モードの場合は、前記動作選択部によるシャッタ動作の選択を禁止する、請求項1、3又は6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記動作選択部は、前記第1の幕の走行開始時の前記スリット幅が所定の値より狭い場合に前記メカシャッタ動作を選択する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項17】
複数の画素から成る撮像素子と、
前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、
を備える撮像装置のシャッタ動作選択方法であって、
前記第1の幕と前記第2の幕により形成されるスリット幅、又は前記第1の幕と前記リセット部によるリセット走査により形成されるスリット幅の長さを判断するステップと、
前記スリット幅の長さに応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択するステップと、
を含む、シャッタ動作選択方法。
【請求項18】
複数の画素から成る撮像素子と、
前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、
を備える撮像装置のシャッタ動作選択方法であって、
シャッタ速度を判断するステップと、
前記シャッタ速度に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択するステップと、
を含む、シャッタ動作選択方法。
【請求項19】
複数の画素から成る撮像素子と、
前記撮像素子への光の入射を遮断するために走行する第1の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記撮像素子への光の入射を開放する第2の幕と、
前記第1の幕の走行に先行して前記画素をライン毎に順次リセット走査するリセット部と、
を備える撮像装置のシャッタ動作選択方法であって、
撮像レンズのF値を判断するステップと、
前記F値に応じて、前記第1の幕と前記第2の幕の走行によるメカシャッタ動作と、前記第1の幕と前記リセット部による電子シャッタ動作とのいずれかを選択するステップと、
を含む、シャッタ動作選択方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−129589(P2012−129589A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276630(P2010−276630)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】