説明

撮像装置

【課題】通常の撮影位置から、ハイアングル・ローアングル撮影を行おうとする場合に、撮影アングルを予測し、撮影時のファインダ切り替え操作の煩雑さを無くした撮像装置を提供する。
【解決手段】被写体を、光学系を介して撮像手段に被写体像として結像させて撮影を行う撮像装置において、被写体像を接眼観察する第1の被写体像モニタ手段と、被写体像を接眼せずに観察可能な第2の被写体像モニタ手段と、当該撮像装置に加わる加速度を検出する第1の加速度センサと、当該撮像装置に加わる加速度の開始時点を検出する第1の検出手段と、第1の検出手段が検出した加速度開始時点における第1の加速度センサからの出力に基づき、当該撮像装置の加速度方向および加速度量を判別する第1の加速度判別手段と、撮影時に、第1の加速度判別手段の判別結果に応じて被写体像の出力先を、第1または第2の何れかの被写体像モニタ手段に決定する制御手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に、通常の撮影位置から、ハイアングル撮影やローアングル撮影を行おうとする場合に、撮影アングルを予測し、撮影時のファインダ切り替え操作の煩雑さを自動化、簡略化した撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影レンズにより被写体像を光学像に変換し、光学像を撮像素子により光電変換させ、被写体像に対応する電気信号を得られるようにした撮像装置は、一般的に知られている。
近年、前記撮像装置において撮影時に被写体像を観察するファインダとして使用する、光学ファインダ、電子ビューファインダ、LCDや有機ELモニタ等の、いわゆる被写体像モニタ手段が複数系統設けられている撮像装置が増えてきている。
例えば、接眼して使用する光学ファインダと、撮像装置の外面に設けたLCD、有機ELモニタなどの電子的表示手段を設けた一眼レフと呼ばれるタイプの撮像装置が最もよく知られている。また、前記光学ファインダの代わりに接眼式電子ビューファインダを設けた方式のものもある。
更に、これら複数の被写体像モニタ手段を設けた撮像装置においては、撮影者の顔の位置より高い位置での撮影(ハイアングル撮影、)や、低い位置での撮影(ローアングル撮影)の場合の利便性を高めるために、前記複数の被写体像モニタ手段の何れかを可動式にして観察角度や接眼角度を変えられる構成としたものがある。
【0003】
一方、近年のセンサ技術の発達により、撮像装置に角速度や加速度を検出するセンサを組み込むことで、撮影時の撮像装置のぶれ量を検出し、ぶれがある場合には、撮像レンズの一部や撮像素子を、ぶれを打ち消す方向に動かすことでぶれを補正したり、撮像時の撮像装置の装置方向(縦位置での撮影か横位置での撮影か)を検出しておき、撮影時の装置方向(縦横)に合わせて再生時の縦横表示を変更する技術も一般的に用いられるようになって来た。
【0004】
下記特許文献1には、前記電子ビューファインダに対する接眼動作と撮影準備動作とを検出し、電子ビューファインダの動作を自動的に立ち上げる装置が開示されている。
また、下記特許文献2には、加速度センサにより撮像装置の移動加速度を検出し、検出結果により撮像装置が撮影状態であるか非撮影状態であるかを判別し、判別結果により電子ビューファインダをON、OFF制御するものである。
これらの従来技術(特許文献1,2)の主目的は、無駄な電力供給を防止することによる省電力化にあり、副次的目的として操作の簡略化を達成している。
更に、下記特許文献3、4も知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平2−179076号公報
【特許文献2】特開平5−292359号公報
【特許文献3】特開平2007−248539号公報
【特許文献4】特開平2001−186384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の従来技術のうち特許文献1は、あくまでも接眼による動作の切り替え、即ち、撮影時に接眼ファインダを使うか使わないか(または撮像を行う準備が整っているか否か)の検出が先にあって、その決定後の操作結果として、電子ビューファインダのON、OFFや接眼ファインダへの切り替えを行うものである。
一方、特許文献2は、加速度センサの搭載目的がカメラの撮影状態、非撮影状態を判断することにあり、その判断結果により電子ビューファインダをON、OFFして無駄なエネルギーの消費を防止するものである。何れも、撮影前の装置加速度検出により撮影者の撮影意図を予測してカメラの機能をより使いやすいものに切り替えるという発想ではない。
【0007】
即ち、従来技術(特許文献1、2)には、2系統のファインダ手段を持つ撮像装置において、通常の撮影位置から、ハイアングル撮影、ローアングル撮影を行おうとする場合に、使用するそれぞれの撮影に適したファインダはどれかを撮影者が事前に決定し、決定したファインダに撮像データが出力されるように、手動で切り替えてから、撮影を行わなければなければならなかったという、操作の煩雑さがあった。
【0008】
本発明は上記の問題を解決すべくなされたものであり、通常の撮影位置から、ハイアングル撮影、ローアングル撮影を行おうとする場合に、撮影アングルを予測し、撮影時のファインダ切り替え操作の煩雑さを自動化、簡略化した撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために請求項1記載の発明は、被写体を、光学系を介して撮像手段に被写体像として結像させて撮影を行う撮像装置において、
前記被写体像を接眼して観察する第1の被写体像モニタ手段と、
前記被写体像を接眼せずに観察可能な第2の被写体像モニタ手段と、
当該撮像装置に加わる加速度を検出する第1の加速度センサと、
当該撮像装置に加わる加速度の開始時点を検出する第1の加速度開始時点検出手段と、
該第1の加速度開始時点検出手段が検出した加速度開始時点における前記第1の加速度センサからの出力に基づき、当該撮像装置の加速度方向および加速度量を判別する第1の加速度判別手段と、
撮影時に、前記第1の加速度判別手段の判別結果に応じて前記被写体像の出力先を、前記第1または第2の何れかの被写体像モニタ手段に決定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の撮像装置において、
前記第1の加速度判別手段が、当該撮像装置が重力加速度と略反対の方向に所定値以上の加速度を受けたと判別した場合に、前記第2の被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする。
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の撮像装置において、
前記第1の加速度判別手段が、当該撮像装置が略重力加速度方向に所定値以上の加速度を受けたと判別した場合に、前記第2の被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項2または請求項3記載の撮像装置において、
前記第1の加速度判別手段が、当該撮像装置が重力加速度と略反対の方向に所定値以上の加速度を受けた後で所定値以下の加速度となったと判別した場合に、前記第2の被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする。
また、請求項5記載の発明は、請求項2または請求項3記載の撮像装置において、
前記第1の加速度判別手段が、当該撮像装置が略重力加速度方向に所定値以上の加速度を受けた後で所定値以下の加速度となったと判別した場合に、前記第2の被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、被写体像を、光学系を介して撮像手段に結像させて撮影を行う撮像装置において、
前記被写体像を観察する固定式被写体像モニタ手段と、
前記被写体像を観察する可動式被写体像モニタ手段と、
当該撮像装置の加速度を検出する第2の加速度センサと、
当該撮像装置に加わる加速度の開始時点を検出する第2の加速度開始時点検出手段と、
該第2の加速度開始時点検出手段が検出した加速度開始時点における前記第2の加速度センサからの出力に基づき、当該撮像装置の加速度方向および加速度量を判別する第2の加速度判別手段と、
撮影時に、前記第2の加速度判別手段の判別結果に応じて前記被写体像の出力先を、前記固定式または可動式の何れかの被写体像モニタ手段に決定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載の撮像装置において、前記第2の加速度判別手段が、当該撮像装置が重力加速度と略反対の方向に所定値以上の加速度を受けたと判別した場合に、前記可動式被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする。
また、請求項8記載の発明は、請求項6記載の撮像装置において、
前記第2の加速度判別手段が、当該撮像装置が略重力加速度方向に所定値以上の加速度を受けたと判別した場合に、前記可動式被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする。
【0014】
また、請求項9記載の発明は、請求項7または請求項8記載の撮像装置において、
前記第2の加速度判別手段が、当該撮像装置が重力加速度と略反対の方向に所定値以上の加速度を受けた後で所定値以下の加速度となったと判別した場合に、前記可動式被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする。
また、請求項10記載の発明は、請求項7または請求項8記載の撮像装置において、
前記第2の加速度判別手段が、当該撮像装置が略重力加速度方向に所定値以上の加速度を受けた後で所定値以下の加速度となったと判別した場合に、前記可動式被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、第1の加速度センサの測定開始時点からの、撮像装置に加わる加速度方向と加速度量の検出・判別が可能となるので、例えば、撮影準備状態から撮像装置を上方向(重力加速度と略反対の方向)に持ち上げた場合は、加速度方向が上向きで加速度量が所定量を越えたと判別された場合には、撮影者の撮影意図は、通常撮影位置から上方向に手を伸ばして撮影するハイアングル撮影であると予測することが可能となる。その場合は、接眼式の第1の被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、接眼せずに被写体像を観察することが可能な第2の被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ハイアングル撮影を行い易くすることが可能になる。
【0016】
また、例えば、加速度方向が上述と逆の方向(重力加速度の方向)と判別した場合は、撮影者の撮影意図が通常撮影位置から下方向に撮像装置を下げたローアングル撮影であると判別し、接眼式の第1の被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、接眼せずに被写体像を観察可能な第2の被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ローアングル撮影を行い易くすることが可能となる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、撮影者の撮影意図は、通常撮影位置から上方向に手を伸ばして撮影するハイアングル撮影であると予測することが可能となり、接眼式の第1の被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、接眼せずに被写体像を観察することが可能な第2の被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ハイアングル撮影を行い易くすることが可能になる。
請求項3記載の発明によれば、撮影者の撮影意図が通常撮影位置から下方向に撮像装置を下げたローアングル撮影であると予測することが可能となり、接眼式の第1の被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、接眼せずに被写体像を観察可能な第2の被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ローアングル撮影を行い易くすることが可能となる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、引き続き撮影者の撮影意図は、通常撮影位置から上方向に手を伸ばして撮影するハイアングル撮影であると予測することが可能となり、接眼式の第1の被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、接眼せずに被写体像を観察することが可能な第2の被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ハイアングル撮影を行い易くすることが可能になる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、引き続き撮影者の撮影意図が通常撮影位置から下方向に撮像装置を下げたローアングル撮影であると予測することが可能となり、接眼式の第1の被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、接眼せずに被写体像を観察可能な第2の被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ローアングル撮影を行い易くすることが可能となる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、第2の加速度センサの測定開始時点からの、撮像装置に加わる加速度方向と加速度量の検出・判別が可能となるので、例えば、撮影準備状態から撮像装置を上方向(重力加速度と略反対の方向)に持ち上げた場合は、加速度方向が上向きで加速度量が所定量を越えたと判別された場合には、撮影者の撮影意図は、通常撮影位置から上方向に手を伸ばして撮影するハイアングル撮影であると予測することが可能となる。その場合は、固定式被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、可動式被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ハイアングル撮影を行い易くすることが可能になる。
また、例えば、加速度方向が上述と逆の方向(重力加速度の方向)と判別した場合は、撮影者の撮影意図が通常撮影位置から下方向に撮像装置を下げたローアングル撮影であると判別し、固定式被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、可動式被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ローアングル撮影を行い易くすることが可能となる。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、撮影者の撮影意図は、通常撮影位置から上方向に手を伸ばして撮影するハイアングル撮影であると予測することが可能となり、固定式被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、可動式被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ハイアングル撮影を行い易くすることが可能になる。
請求項8記載の発明によれば、撮影者の撮影意図が通常撮影位置から下方向に撮像装置を下げたローアングル撮影であると予測することが可能となり、固定式被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、可動式被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ローアングル撮影を行い易くすることが可能となる。
【0022】
請求項9記載の発明によれば、引き続き撮影者の撮影意図は、通常撮影位置から上方向に手を伸ばして撮影するハイアングル撮影であると予測することが可能となり、固定式被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、可動式被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ハイアングル撮影を行い易くすることが可能になる。
請求項10記載の発明によれば、引き続き撮影者の撮影意図が通常撮影位置から下方向に撮像装置を下げたローアングル撮影であると予測することが可能となり、固定式被写体像モニタ手段への被写体像の供給を停止して、可動式被写体像モニタ手段に被写体像を出力して、ローアングル撮影を行い易くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を図示の実施形態に基いて説明するに先立ち、本発明の制御概念を説明する。
図1は、本発明の制御概念図である。本発明のポイントは、加速度センサにて撮像装置の受けた加速度状況を判別し、撮影時の撮像データファインダ出力先を決定することにある。
次に、後述する各実施例を適用する撮像装置(デジタルカメラ)の実施形態の制御系の全体構成と、デジタルカメラの外観構成について説明する。図2はデジタルカメラの実施形態の全体構成を示すブロック図であり、図3はデジタルカメラの実施形態の外観斜視図であって、(A)は前面図、(B)は後面図である。
【0024】
図2に示すように、被写体像は撮像光学系1で光学像に変換された後、撮像手段としてのCCD(固体撮像素子)2の受光面に結像される。
前記CCD2は受光された光学像を光電変換して画像信号を出力する。出力された画像信号は増幅回路3、プロセス回路4、信号処理回路5を介して、本発明の本質とは直接関係がないため図示していない記録回路に出力され、メモリカードなどの記録媒体に記録される。
【0025】
前記信号処理回路5の出力に基づいてCCD2の撮影画像を表示する電子ビューファインダ8と、LCDモニタ9が設けられている。CPU6はSW(スイッチ)入力や処理演算制御演算、一次記憶などを行うワンチップまたは複数チップ構成の制御装置である。
撮影者は、手動式のモニタ出力切り替え釦S6により撮影意図に応じてこれら表示手段(モニタ)の何れを使用するかを、切り替え指示する。切り替え指示を受けたCPU6がモニタ出力切り替えスイッチS5を切り替えることで、電子ビューファインダ8か、LCDモニタ9の何れか一方で撮影画像の観察や確認を行えるように構成されている。
【0026】
また、前記デジタルカメラには3次元加速度センサ10が備えられており、この3次元加速度センサ10によって検出される本カメラの受けたX、Y、Z軸方向の加速度が、CPU6に入力される。加速度センサ10のX方向をカメラの長手方向にセットしておけば(図3(A)参照)、Y方向はカメラの奥行き方向となり、Z方向はカメラの上下方向となり、それぞれの成分を検出することにより、受けた加速度の方向をCPU6にて判別することが可能となる。
【0027】
更に、CPU6には、撮影者によって操作されるレリーズ釦S1、S2、電源釦S3、加速度センサ測定スタート釦S4からの信号が入力される。レリーズ釦S1、S2は一体に構成され、半押しでレリーズ釦S1信号が発生し、本デジタルカメラに測光、自動焦点調節動作などを行わせ、全押しでレリーズ釦S2信号が発生し、本カメラに実際の撮影、記録動作を行わせる撮影指示釦である。
電源釦S3は、本カメラが電源OFF状態の時に操作されると電源をON状態に切り替え、電源ON状態の時に操作されると電源をOFF状態に切り替える、本デジタルカメラの電源制御を行わせる釦である。
【0028】
加速度センサ測定スタート釦S4は、本デジタルカメラの加速度センサの測定をスタートし、ON時点からの加速度の方向と加速度量の測定を開始するスイッチ(SW)である。このSWはレリーズ釦S1でスタートしたり、電源ON時に自動的にスタートするようにすることも可能であるが、本実施形態では、省エネルギーということも考慮して、一例として独立したSWを設ける方式をとっている。
図3(A),(B)に示すように、前記レリーズ釦S1、S2は、カメラ本体のグリップ部上面に備えられ、電子ビューファインダ8はカメラ本体後面の最上部に備えられ、LCDモニタ9は、本体後面に備えられている。また、モニタ出力切り替え釦S6はカメラ本体後面の電子ビューファインダ8の横に、電源釦S3と加速度センサ測定スタート釦S4は、その横に設置されている。
【0029】
一方、前記3次元加速度センサ10は、本デジタルカメラ内のCPU6などを搭載したメイン基板上に設置されている。図3におけるX、Y、Z軸は、加速度センサ10の加速度検出方向を示すものである。ここで、上(重力加速度と反対方向)、下方向(重力加速度方向)は、それぞれZ+、Z−の方向として検出される。
3次元加速度センサ10としては、静電容量型加速度センサ、圧電型加速度センサ、FET型加速度センサ、熱検知型加速度センサなど各種方式が知られているが、本実施形態では、ピエゾ抵抗式加速度センサを使用する。この方式は、センサチップ中にシリコンを母材にフレーム部、おもり、支持部を構成し、支持部上にピエゾ抵抗を配置したものである。ピエゾ抵抗とは、結晶に機械的外力が加わると結晶格子に歪が生じ、半導体中のキャリア数や移動度が変化して抵抗値が変化する素子である。この構成により、センサチップに加速度が加わるとチップ中のおもりが移動し、支持部に歪が発生して、支持部上に配置したピエゾ抵抗に応力が生じて抵抗値が変化する仕組みとなっている。
【0030】
前記ピエゾ抵抗は、X、Y、Z方向のそれぞれに4つずつ配置され、それぞれのピエゾ抵抗の変化をホイートストンブリッジ回路で電気信号として取り出し、増幅・補正して加速度に比例した電圧として出力する。以上の構成によりCPU6にて、図3(A)におけるX、Y、Z軸方向の加速度量を検出することができる。また、加速度センサ測定スタート釦S4の押された時を基準位置として定期的にセンシングし、加速度方向と加速度の継続した時間を測定することにより、基準位置からの移動方向と移動の測定も容易に行うことができる。
【0031】
<第1の実施例>
次に、3次元加速度センサ10を用いたCPU6による、第1の実施例の制御方法を図4のフローチャートに基づいて説明する。本実施例は、被写体像モニタ手段として、電子ビューファインダ8とLCDモニタ9を持つ場合である。
先ず、デジタルカメラに対して、電源釦S3が操作されて電源が投入されると、各種のイニシャライズ処理が行われる。本実施例では、ここで加速度センサ10の電源を入れてイニシャライズ動作、測定用メモリなどのイニシャライズ動作を実施する。その後、CCD2への仮露光が行われて、得られた被写体像を前回設定済みの被写体像モニタ手段(電子ビューファインダ8またはLCDモニタ9)にモニタリング表示する。
【0032】
この状態で、モニタ出力切り替え釦6を押すと、前記得られた画像の出力先が切り替わる。撮影者は、撮影スタイルの好みや撮影機会毎の撮影の行い易さにより、どちらで被写体像を観察、確認するかを選択する。
ここで、通常撮影では、何れを使用しても問題がないが、手を伸ばしカメラを上にかざして撮影するハイアングル撮影(人ごみでの撮影など)や、ローアングル撮影(しゃがんだり、地面すれすれの位置からの撮影)では通常の接眼式電子ビューファインダは使用できないため、予めモニタ出力切り替え釦S6でファインダをLCDモニタ9に切り替えてから、実際の撮影のためのフレーミング動作に移行する必要があり、簡単な操作手順ではあるものの、実際の撮影場面においては撮影チャンスに出会い、どちらのファインダがいいか判断し、ファインダを最適に切り替え(通常電子ビューファインダを使っている場合)、フレーミングするという手順が煩雑でシャッタチャンスを逃す可能性があった。
【0033】
本実施例では、通常撮影時に、カメラを構えた段階において、加速度センサ測定スタート釦S4を一旦押しておけば、その時点からの加速度方向と加速度量を加速度センサ10により略所定の間隔にてチェックし、ハイアングル撮影時にカメラを上に掲げた際には、ハイアングル撮影に適したファインダ出力に自動的に切り替わり、ローアンクル撮影にカメラを下方向に移動させれば、ローアングルに適したファインダ出力に自動的に切り替わる。
本実施例では、接眼式電子ビューファインダ8がハイアングル撮影やローアングル撮影には適しないことから、当該撮影時には、LCDモニタ9に出力先を変更する構成とすることで、操作性を向上させ課題を解決している。
なお、図4のフローチャートの中央下部の「加速度判別結果」で上方向あるいは下方向へ所定値以上の加速度を検出したら、LCDモニタに被写体像を出力しているが(「LCDモニタОN」)、LCDモニタに出力を切替えた後、切り替える前とは逆方向に所定値以上の加速度を検出したら、切り替える前に設定されていた出力先に出力を戻してもよい。
【0034】
加速度センサ10における出力での出力波形を、図9に示した。図9(A)は上方向(重力加速度と反対方向)にカメラを動かした時の加速度変化グラフ、図9(B)は下方向(重力加速度方向)にカメラを動かした時の加速度変化グラフである。
加速度方向は、加速度センサのZ成分を検出することで検出できる。「Z+」が上(重力加速度と反対の方向)、「Z−」方向が下(重力加速度方向)である。加速度量は、Z成分の出力そのもので測定でき、定常状態は重力加速度のみを受けているので1Gとなる。
加速度センサの出力値を仮に500とすると、上方向に動かすと、センサ出力は、550〜600程度(+10%〜20%程度)になるので、概略この間の数値を判別用のスレッシュ値に設定する。また、下方向に動かすと、センサ出力値は重力加速度の影響を受け、400〜350(「Z−」方向を上向きにしたグラフで+20%〜30%程度)程度になるので、概略この間の数値を判別用のスレッシュ(閾値)として使用する。
【0035】
<第2の実施例>
本実施例の制御方法を、図5に示したフローチャートに基づいて説明する。本実施例は、被写体像モニタ手段として、光学ファインダと固定式LCDモニタを持つ場合である。
先ず、デジタルカメラに対して、電源釦S3が操作されて電源が投入され、各種のイニシャライズ処理が行われる。前回の被写体像モニタ手段設定がLCDモニタ9だった場合にはCCD4への仮露光が行われて、得られた被写体像をLCDモニタ9に表示する。この状態で、モニタ出力切り替え釦S6を押すとLCDモニタ9への被写体像の出力は停止される。
【0036】
撮影者は、撮影スタイルの好みや撮影機会毎の撮影の行い易さにより、光学ファインダは、LCDモニタ9に被写体像が出力されなくても被写体像を光学的に観察できる。撮影者は必要に応じて、どちらで被写体像を観察、確認するかを選択する。
ここで、通常撮影では、何れを使用しても問題がないが、手を伸ばしカメラを上にかざして撮影するハイアングル撮影(人ごみでの撮影など)や、ローアングル撮影(しゃがんだり、地面すれすれの位置からの撮影)では、通常の接眼式光学ファインダは非常に使用しずらい。そのため予めモニタ出力切り替え釦S6で被写体を、目を離して観察できるLCDモニタ9に切り替えてから、実際の撮影のためのフレーミング動作に移行する必要があった。
【0037】
これは、簡単な操作手順ではあるものの、実際の撮影場面において撮影チャンスに出会い、どちらのファインダがいいか判断し、ファインダを最適に切り替える(通常光学ファインダを使っている場合)という手順が煩雑で、シャッタチャンスを逃す可能性があった。本実施例では通常撮影時に、カメラを構えた段階において、加速度センサ測定スタート釦S4を押しておけば、一連の撮影における加速度センサ測定スタート釦S4を押された時点からの加速度方向と加速度量を加速度センサ10によりモニタリングし、ハイアングル撮影を行う際にカメラを上に掲げた場合や、ローアンクル撮影を行う際にカメラを下方向に移動させた場合には、ファインダをLCDモニタ9に自動的に切り替えることができる。
【0038】
<第3の実施例>
本実施例の制御方法を、図6に示したフローチャートに基づいて説明する。本実施例は、被写体像モニタ手段として、光学ファインダと可動式LCDモニタを持つ場合である。
図6のフォローチャートは、図5と実質的に同じであるため説明は割愛するが、LCDモニタ9を可動式LCDモニタとした場合である。LCDモニタ9を可動式に構成することで、ハイアングル撮影ではLCDモニタ9を下向きに設定し、ローアングル撮影ではLCDモニタ9を上向きに設定することができるようになり、本発明の自動切り替え機構と合わせて、より使い勝手をよくすることが可能である。
【0039】
<第4の実施例>
本実施例の制御方法を、図7に示したフローチャートに基づいて説明する。本実施例は、被写体像モニタ手段として、可動式電子ビューファインダと可動式LCDモニタを持つ場合である。
先ず、デジタルカメラに対して、電源釦S3が操作されて電源が投入されると、各種のイニシャライズ処理が行われる。その後、CCD4への仮露光が行われて、得られた被写体像を前回設定済みの被写体像モニタ手段に表示する。この状態で、モニタ出力切り替え釦S6を押すと、前記得られた画像の出力先が切り替わる。撮影者は、撮影スタイルの好みや撮影機会毎の撮影の行い易さにより、どちらで被写体像を観察、確認するかを選択する。
【0040】
ここで、通常撮影では、何れを使用しても問題がないが、手を伸ばしカメラを上にかざして撮影するハイアングル撮影(人ごみでの撮影など)ではいくら可動式ではあっても、接眼レンズビューファインダは使えない。一方、ローアングル撮影(しゃがんだり、地面すれすれの位置からの撮影)では可動式LCDモニタと可動式ビューファインダの両方が使えるが、非常に低い位置などの撮影時の体勢から考えると、可動式ビューファインダ(通常、カメラの上方向から接眼し撮影する機能を備えている)の方が撮影しやすい。
このため、予めモニタ出力切り替え釦S6でファインダを適切なものに切り替えてから、実際の撮影のためのフレーミング動作に移行する必要がある。これは簡単な操作手順ではあるものの、実際の撮影においては撮影チャンスに出会い、どちらのファインダがいいか判断し、ファインダを最適に切り替え、フレーミングするという手順が煩雑でシャッタチャンスを逃す可能性があった。
【0041】
本実施例では、通常撮影時に、カメラを構えた状態にて、加速度センサ測定スタート釦S4を押しておけば、その時点からの加速度方向と加速度量を加速度センサ10によりモニタリングし、ハイアングル撮影時にカメラを上に掲げた際には、ハイアングル撮影に適した可動式LCDモニタ出力に自動的に切り替わり、ローアンクル撮影にカメラを下方向に移動させれば、ローアングル撮影に適した可動式ビューファインダ出力に自動的に切り替わる。
【0042】
<第5の実施例>
本実施例の制御方法を、図8に示したフローチャートに基づいて説明する。本実施例は、被写体像モニタ手段として、可動式電子ビューファインダと可動式LCDモニタを持つ場合であって、第4の実施例を更に進化させた場合である。
図8に示すように、ローアングル撮影の場合、或る程度の加速度量までは可動式LCDモニタ出力となり、それ以上の加速度量になった場合にローアングルの場合に、可動式ビューファインダに切り替わるような構成としてもよい。
また、加速度量を略定期的に計測し、加速度と持続時間とから移動量を計算で求めて、図4〜図8の各実施例における判定基準として使用してもよい。その場合は、加速度センサ測定スタート釦S4の役割が変化し、測定をスタートさせると共に、カメラ本体の基準位置設定の為の釦として当該釦が押されてからの移動方向と移動量を測定すると言うように、変更して使用すればよい。
【0043】
以上述べてきたとおり本発明はカメラに備えているファインダの種類とカメラタイプによりさまざまな応用実施が可能である。一眼レフタイプのカメラなど、接眼ファインダが光学式ファインダの場合は、ハイアングル撮影時、ローアングル撮影時にはファインダを切り替えるのではなく、いわゆるライブビューモード(LCD等の非接眼モニタ表示をみながら撮影を行うモード)に切り替えることになる。一眼レフタイプ以外のデジタルカメラの場合で、接眼ファインダが光学式ファインダの場合は、ハイアングル撮影時、ローアングル撮影時にはファインダを切り替えるのではなく、非接眼のLCDモニタなどを新たに点灯させる構成になる。
【0044】
前記第1〜第5の実施例では、加速度センサ測定スタート釦10を設けたが、必ずしもこれを設ける必要はなく、電源を入れた位置からイニシャライズ&測定スタートとしてもよいし、一度撮影した後や、レリーズ釦を半押しした時点などから加速度センサの測定をスタートとするように構成してもよい。
【0045】
さらに、前記第1〜第5の実施例では、3次元加速度センサ10をカメラのメイン基板上に設けたが、複数箇所に設けてより正確な検出を行ってもよいし、角速度センサなどの同様の機能が得られるセンサを用いてもよい。また、必ずしも3次元(3軸)のセンサを必要とするものではなく、2軸や、一方向(上下方向)のみのセンサを用いて構成してもよい。当然ながらセンサ方式も、熱検知式センサや、FET式など他の方式のセンサを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の制御概念図である。
【図2】本発明の各実施例を適用するデジタルカメラの全体構成を示すブロック図である。
【図3】前記デジタルカメラの外観斜視図であって、(A)は前面図、(B)は後面図である。
【図4】本発明の第1の実施例のフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施例のフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施例のフローチャートである。
【図7】本発明の第4の実施例のフローチャートである。
【図8】本発明の第5の実施例のフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態の加速度センサの出力波形を示す図であって、(A)は上方向(重力加速度と反対方向)にカメラを動かした時の加速度変化グラフ、(B)は下方向(重力加速度方向)にカメラを動かした時の加速度変化グラフである。
【符号の説明】
【0047】
1…撮像光学系
2…CCD(固体撮像素子)
3…増幅回路
4…プロセス回路
5…信号処理回路
6…CPU
7…CCD駆動回路
8…電子ビューファインダ
9…LCDモニタ
10…3次元加速度センサ
S1、S2…レリーズ釦
S3…電源釦
S4…加速度センサ測定スタート釦
S5…モニタ出力切り替えスイッチ
S6…モニタ出力切り替え釦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を、光学系を介して撮像手段に被写体像として結像させて撮影を行う撮像装置において、
前記被写体像を接眼して観察する第1の被写体像モニタ手段と、
前記被写体像を接眼せずに観察可能な第2の被写体像モニタ手段と、
当該撮像装置に加わる加速度を検出する第1の加速度センサと、
当該撮像装置に加わる加速度の開始時点を検出する第1の加速度開始時点検出手段と、
該第1の加速度開始時点検出手段が検出した加速度開始時点における前記第1の加速度センサからの出力に基づき、当該撮像装置の加速度方向および加速度量を判別する第1の加速度判別手段と、
撮影時に、前記第1の加速度判別手段の判別結果に応じて前記被写体像の出力先を、前記第1または第2の何れかの被写体像モニタ手段に決定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の撮像装置において、
前記第1の加速度判別手段が、当該撮像装置が重力加速度と略反対の方向に所定値以上の加速度を受けたと判別した場合に、前記第2の被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1記載の撮像装置において、
前記第1の加速度判別手段が、当該撮像装置が略重力加速度方向に所定値以上の加速度を受けたと判別した場合に、前記第2の被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の撮像装置において、
前記第1の加速度判別手段が、当該撮像装置が重力加速度と略反対の方向に所定値以上の加速度を受けた後で所定値以下の加速度となったと判別した場合に、前記第2の被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3記載の撮像装置において、
前記第1の加速度判別手段が、当該撮像装置が略重力加速度方向に所定値以上の加速度を受けた後で所定値以下の加速度となったと判別した場合に、前記第2の被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
被写体を、光学系を介して撮像手段に被写体像として結像させて撮影を行う撮像装置において、
前記被写体像を観察する固定式被写体像モニタ手段と、
前記被写体像を観察する可動式被写体像モニタ手段と、
当該撮像装置の加速度を検出する第2の加速度センサと、
当該撮像装置に加わる加速度の開始時点を検出する第2の加速度開始時点検出手段と、
該第2の加速度開始時点検出手段が検出した加速度開始時点における前記第2の加速度センサからの出力に基づき、当該撮像装置の加速度方向および加速度量を判別する第2の加速度判別手段と、
撮影時に、前記第2の加速度判別手段の判別結果に応じて前記被写体像の出力先を、前記固定式または可動式の何れかの被写体像モニタ手段に決定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項6記載の撮像装置において、
前記第2の加速度判別手段が、当該撮像装置が重力加速度と略反対の方向に所定値以上の加速度を受けたと判別した場合に、前記可動式被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項6記載の撮像装置において、
前記第2の加速度判別手段が、当該撮像装置が略重力加速度方向に所定値以上の加速度を受けたと判別した場合に、前記可動式被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8記載の撮像装置において、
前記第2の加速度判別手段が、当該撮像装置が重力加速度と略反対の方向に所定値以上の加速度を受けた後で所定値以下の加速度となったと判別した場合に、前記可動式被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項7または請求項8記載の撮像装置において、
前記第2の加速度判別手段が、当該撮像装置が略重力加速度方向に所定値以上の加速度を受けた後で所定値以下の加速度となったと判別した場合に、前記可動式被写体像モニタ手段に前記被写体像を出力することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−4246(P2010−4246A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160435(P2008−160435)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】