説明

撮影装置、撮影方法および撮影プログラム

【課題】電子シャッターの制御負荷を軽減する。
【解決手段】露光時間が所定の閾値よりも短いか否かを判定し、露光時間が閾値よりも短い場合に、機械シャッターが複数の光電変換素子の露光を終了させる露光終了タイミングに追従する第1露光開始タイミングで、電子シャッターに複数の光電変換素子における露光を開始させ、露光時間が閾値以上である場合に、第1露光開始タイミングよりも露光終了タイミングに対する追従度が低い第2露光開始タイミングで、電子シャッターに複数の光電変換素子における露光を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光時間を電子シャッターと機械シャッターとにより制御して画像を撮影する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光電変換素子における露光を開始させるタイミングを電子シャッターにより制御し、露光を終了させるタイミングを機械シャッターにより制御する撮影装置が提案されている(特許文献1〜3、参照)。このような撮影装置においては、機械シャッターが露光を終了させるタイミングに追従するように、電子シャッターが露光を開始させるタイミングを制御することにより、各光電変換素子についての露光時間の均一化を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−41523号公報
【特許文献2】特開2006−101492号公報
【特許文献3】特開2008−147979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機械シャッターが露光を終了させるタイミングは遮光幕の運動に依存し、非線形特性を有するため、機械シャッターが露光を終了させるタイミングに追従するように、電子シャッターが露光を開始させるタイミングを制御することは困難となる。すなわち、非線形特性を有するタイミングで電子シャッターを動作させなければならず、高速で動作する電子シャッターの制御回路の処理負荷が大きくなるという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、電子シャッターの制御負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明において、撮影装置は、電子シャッターと機械シャッターとにより露光時間を制御する。電子シャッターは、複数の光電変換素子にて電荷の蓄積を開始させることにより、複数の光電変換素子における露光を開始させる。機械シャッターは、遮光部を移動させることによって、複数の光電変換素子が配列する素子面を機械的に遮光することにより、複数の光電変換素子における露光を終了させる。判定部は、露光時間が所定の閾値よりも短いか否かを判定する。露光時間が閾値よりも短い場合に、機械シャッターが複数の光電変換素子の露光を終了させる露光終了タイミングに追従する第1露光開始タイミングで、電子シャッターによって複数の光電変換素子に露光を開始させる。一方、露光時間が閾値以上である場合に、第1露光開始タイミングよりも機械シャッターの露光終了タイミングに対する追従度が低い第2露光開始タイミングで、電子シャッターによって複数の光電変換素子に露光を開始させる。なお、本明細書において露光とは、光電変換素子に撮影光が到達し、かつ、当該撮影光の光量に応じて光電変換素子が電荷を蓄積する状態を意味する。
【0006】
第2露光開始タイミングの方が第1露光開始タイミングよりも露光終了タイミングに対する追従度が低いため、第2露光開始タイミングで露光を開始させる方が第1露光開始タイミングで露光を開始させるよりも、各光電変換素子における露光時間の誤差が大きくなる。なお、露光開始タイミングは電子シャッターにより制御され、露光終了タイミングは機械シャッターにより制御されるため、露光開始タイミングと露光終了タイミングとは基本的に追従せず、光電変換素子間で露光時間の誤差が生じ得る。機械シャッターによる露光の終了は遮光部を物理的に運動させることにより実現されるため、機械シャッターによる露光終了のタイミングの特性は遮光部の加速運動特性に依存するのに対して、電子シャッターによる露光開始のタイミングは遮光部の加速運動特性に依存しないからである。ここで、露光時間に誤差が生じた場合でも、露光時間が長いほど、露光時間全体に対する露光時間の誤差の寄与度は小さくなる。従って、露光時間が閾値以上である場合には、露光終了タイミングに対する追従度が低い第2露光開始タイミングで露光を開始させても、露光時間の誤差に起因した露光量のばらつきは光量むらとして感じられにくくなる。従って、露光時間が閾値以上である場合に第2露光開始タイミングで露光を開始させることにより、撮影した画像の光量むらが問題とならないように、露光を開始させるタイミングの制御負荷を軽減することができる。一方、露光時間が閾値よりも短い場合には、第1露光開始タイミングで露光を開始させることにより、露光時間の誤差を抑えることができるため、露光量のばらつきが抑えられる。
【0007】
第2露光開始タイミングの好適な一例として、電子シャッターに素子面上のすべての複数の光電変換素子における露光を同時に開始させるようにしてもよい。このようにすることにより、露光時間が閾値以上である場合における電子シャッターの制御負荷を大きく軽減できる。
【0008】
上述のように機械シャッターによる露光終了のタイミングの特性は遮光部の加速運動特性に依存し、電子シャッターによる露光開始のタイミングは遮光部の運動特性に依存しないため、電子シャッターによる第1露光開始タイミングを完全に機械シャッターによる露光終了タイミングに追従させるのは困難であり、第1露光開始タイミングで露光を開始させても各光電変換素子における露光時間の誤差を完全になくすことは困難となる。従って、複数の光電変換素子における第1露光開始タイミングと露光終了タイミングとの差に起因する露光量のばらつきを抑制する補正を行うのが望ましい。これにより、第1露光開始タイミングの露光終了タイミングに対する追従度、すなわち第1露光開始タイミングで露光を開始させる際の電子シャッターの制御負荷を抑制しつつ、露光量のばらつきを抑制した画像を得ることができる。むろん、露光量のばらつきを抑制する補正は、第2露光開始タイミングで露光を開始させる場合にも行ってもよい。
【0009】
本発明の撮影装置は単独の装置として実現されるものに限らず、本発明の撮影装置が備える各手段が他の装置に備えられてもよい。また、請求項に記載された各手段の機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、またはそれらの組み合わせにより実現される。また、これら各手段の機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。さらに、本発明は撮影プログラムの記録媒体としても成立する。むろん、そのコンピュータープログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】デジタルカメラを示すブロック図である。
【図2】エリアイメージセンサーの模式図である。
【図3】非追従動作における露光のタイミングを示すグラフである。
【図4】追従動作における露光のタイミングを示すグラフである。
【図5】エリアイメージセンサーの模式図および露光のタイミングを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。なお、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
(1)撮影装置の構成:
(2)電子シャッターの制御:
(2−1)非追従動作(グローバルシャッター動作):
(2−2)追従動作(ローリングシャッター動作):
(3)変形例1:
(4)変形例2:
(5)変形例3:
【0012】
(1)撮影装置の構成:
図1は本発明の一実施形態にかかる撮影装置1のブロック図である。本実施形態にかかる撮影装置1は、EVF(Electronic View Finder)を備えたミラーレスデジタルカメラである。撮影装置1は、光学系10とエリアイメージセンサー15とASIC200とタイミングジェネレーター30と表示部40とCPU50とSD−RAM52とROM53とRAM54と操作部55とリムーバルメモリー56とを備えている。CPU50は、SD−RAM52とRAM54を適宜利用してROM53に記録されたプログラムを実行する。当該プログラムの機能によりCPU50は、操作部55に対する操作に応じてエリアイメージセンサー15にて撮影された被写体を示す画像データを生成する機能を実行する。なお、操作部55はシャッターボタンと、露光時間(シャッター速度)や絞り12の開放値や露出値を設定するためのダイヤルスイッチとを備えている。
【0013】
光学系10は、レンズ11と絞り12と機械シャッター13とローパスフィルター14とを備える。レンズ11は撮影光を集光してエリアイメージセンサー15に被写体の画像を結像させる。レンズ11と絞り12とは交換式レンズユニットに備えられ、当該交換式レンズユニットは撮影装置1の筐体に交換可能に取り付けられる。ローパスフィルター14は、撮影光のエリアイメージセンサー15における空間的高周波数成分を遮断することにより、撮影した画像におけるモアレを防止する。絞り12は、撮影光の光束を絞り込む。
【0014】
図2Aは、エリアイメージセンサー15の素子面の一部を正面から見て示す模式図である。エリアイメージセンサー15は、例えばベイヤー配列されたカラーフィルターと、露光量に応じた電荷を蓄積する複数の光電変換素子とが所定の素子面に配列したCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー等の固体撮像素子である。本実施形態では、CMOSイメージセンサーを使用した場合を例にして、以下説明する。図2Aにおいて各光電変換素子を正方形で示し、正方形の内側には各光電変換素子に対応して備えられるカラーフィルターの色(3チャネル:R(赤),G(緑),B(青))を示す。エリアイメージセンサー15の素子面上における複数の光電変換素子の配列位置は直交座標で規定され、一方の座標軸に平行な方向に並ぶ複数の光電変換素子によってラインが構成され、複数のラインが他方の座標軸に平行な方向に並ぶように配列されている。本明細書では、ラインに平行な方向を水平方向、ラインに垂直な方向を垂直方向と呼ぶ。
【0015】
本実施例におけるエリアイメージセンサー15においては、ライン単位で光電変換素子に蓄積された電荷のリセット(放電)ができる。すなわち、同一のラインに属する複数の光電変換素子においては互いに同時に電荷がリセットされ、互いに同時に電荷の蓄積が開始する。光電変換素子における電荷の蓄積の開始は、光電変換素子における露光の開始を意味する。例えば、各光電変換素子はソース−ドレイン間の導通により電荷を放電させるリセット用電界効果トランジスターを備えるとともに、同一のラインに属する各光電変換素子においてはリセット用電界効果トランジスターのゲートに電圧を印加するための配線が共通する。エリアイメージセンサー15は、光電変換素子に蓄積された電荷をライン単位で読み出す。なお、エリアイメージセンサー15は、必要な画質や速度に応じて、全ラインから読み出すことをせずに、間欠読み出しを行うことができる。そして、光電変換素子では、電荷の読み出しが行われた場合にも電荷がリセットされる。エリアイメージセンサー15は、読み出した電荷に対応する露光量の階調値をA/D変換器等によりA/D変換して各画素に対応付けた撮像データを生成する。この撮像データは、本発明の画像に相当する。撮像データの画素は光電変換素子に一意に対応する。エリアイメージセンサー15から読み出された撮像データは、SD−RAM52にバッファーされ、後述のASIC200によって撮像データに対する各種画像処理が実行される。
【0016】
図2Bは、エリアイメージセンサー15の素子面の全体を正面から見て示す模式図である。各ラインには垂直方向の上方になるにつれて1ずつ増加するライン番号L(1〜Lmax)が付され、ラインに直交する垂直方向の列には水平方向右側になるにつれて1ずつ増加する列番号C(1〜Cmax)が付される。また、垂直方向中央のラインのライン番号LをLmidとし、水平方向中央の列を列番号CをCmidと表す。機械シャッター13は、複数の光電変換素子が配列されたエリアイメージセンサー15の素子面に対してほぼ平行な平面板状の遮光部としての遮光幕(図1においてハッチングで図示。)を備える。この遮光幕により、複数の光電変換素子が配列されたエリアイメージセンサー15の素子面上に露光領域R1と遮光領域R2とを形成する。すなわち、エリアイメージセンサー15の素子面上における遮光幕の陰影が遮光領域R2をなす。機械シャッター13は、以下のようにして遮光幕を動作させる。
【0017】
本実施形態の機械シャッター13は、ノーマルオープン型であり、撮影装置1の電源OFFの状態において、遮光幕は係止レバーにより係止されるとともに永久磁石により吸着保持される。遮光幕は、撮影光の全体を遮光する位置に遮光幕を引きつけるばねのばね力に抗し、係止レバーの係止および永久磁石の吸着により撮影光の光路の外側に係止される。そして、撮影装置1の電源ONの状態において、係止レバーによる遮光幕の係止を解除する。係止レバーによる遮光幕の係止が解除されても、永久磁石により遮光幕が吸着保持され、ばね力に抗する遮光幕の保持が継続する。そして、シャッターボタンが押下されると、電子シャッター制御部30a1により各光電変換素子における露光を開始させ、さらに露光の開始から露光時間に対応する期間が経過すると、遮光幕を吸着する永久磁石の磁力を打ち消す磁力を生じさせる電磁石へ電流を供給し、永久磁石による遮光幕の吸着保持を解除する。これにより、遮光幕はばね力により移動させられ、遮光幕が撮影光の全体を遮光する位置に移動する。
【0018】
図2Bにおいては、機械シャッター13がばね力により遮光幕を移動させることにより、エリアイメージセンサー15の素子面上において露光領域R1と遮光領域R2との境界Bが移動する様子を模式的に示している。本実施形態では、電磁石が遮光幕を下方に引きつけ、ばねが遮光幕を上方に引きつけることにより、シャッターが閉じる際に露光領域R1と遮光領域R2との境界Bが下方から上方に向かって(破線矢印の方向に)移動することとする。また、遮光幕は下方から上方に向かって平行移動し、露光領域R1と遮光領域R2との境界Bは各ラインの方向と平行のまま移動することとする。遮光幕の移動によって光電変換素子に境界Bが到達することにより、当該光電変換素子の露光が終了する。露光領域R1と遮光領域R2との境界Bと各ラインの方向と平行となるため、同一のラインに属する各光電変換素子の露光は同時に終了する。
【0019】
タイミングジェネレーター30はセンサー制御部30aと表示制御部30bとを備え、センサー制御部30aは電子シャッター制御部30a1を備える。センサー制御部30aは、液晶パネル42における各光電変換素子の各種動作タイミングを制御するための信号を生成し、エリアイメージセンサー15に出力する。また、表示制御部30bは、液晶パネル42の各表示画素の表示タイミングを制御するための信号を生成し、液晶パネルドライバー41に出力する。
【0020】
電子シャッター制御部30a1は、操作部55にてシャッターボタンが押下されると電子シャッターを開放させる。なお、電子シャッターを開放するとは、エリアイメージセンサー15のすべての光電変換素子における電荷を一旦リセットし、電荷の蓄積を再開させて、露光を開始させることを意味する。上述のように本実施形態ではライン単位で複数の光電変換素子に蓄積された電荷のリセットが可能であり、電荷のリセットと電荷の蓄積の開始をすべてのラインについて順に行っていく動作(ローリングシャッター動作)を行うことにより、すべての光電変換素子の蓄積を開始する。なお、電子シャッター制御部30a1は、電荷のリセットをすべてのラインについて同時に行わせ、その後、電荷の蓄積の開始をライン単位で順次行わせることによりローリングシャッター動作を実現してもよい。いずれの場合でも、ローリングシャッター動作では光電変換素子の露光が開始するタイミングはラインごとに異なることとなる。
【0021】
表示部40はEVFであり、エリアイメージセンサー15の各光電変換素子にて検知された露光量のデータを間欠ライン読出しにより読み出すことにより生成した、いわゆるライブビュー動画を表示し、また、撮影した被写体の静止画像を表示する。表示部40は、図示しないインターフェース回路と液晶パネルドライバー41と液晶パネル42と図示しない接眼レンズ等を備えている。液晶パネルドライバー41は、各サブピクセルに電圧を印加して液晶を駆動するための信号を液晶パネル42に対して出力する。
【0022】
ASIC200は、画像データ生成部20を備える。この画像データ生成部20は、SD−RAM52に予め確保されたラインバッファーやフレームバッファーを利用し、エリアイメージセンサー15にて撮影された撮像データに対してパイプライン処理によって各種画像処理を実行する。なお、ASIC200は、画像処理用DSP(Digital Signal Processor)であってもよい。画像データ生成部20は、画素補間部20aと色再現処理部20bとフィルター処理部20cとガンマ補正部20dとリサイズ処理部20eとを備えている。
【0023】
画像データ生成部20は、エリアイメージセンサー15が撮影した撮像データを取得する。画素補間部20aは、周辺画素の階調値を用いた補間処理を行うことにより、各画素に対応する光電変換素子に備えられたカラーフィルターの色とは異なる2チャネルの色の階調値を算出する。この結果、各画素について3チャネルの階調値が対応付けられた撮像データが生成される。色再現処理部20bは、画素補間が完了した撮像データの各画素の階調値に対して3×3の行列演算を行うことによってカラーマッチングのための色変換処理を行う。フィルター処理部20cは、撮像データに対してシャープネス調整やノイズ除去処理などをフィルター処理によって実行する。ガンマ補正部20dはエリアイメージセンサー15の撮影データの階調値が示す色と、表示部40等で扱う画像データの階調値が示す色との特性差を補償するガンマ補正を実行する。リサイズ処理部20eは当該ラインバッファーに記録されていくデータを逐次参照して補間演算処理を行い、画素の間の位置における各チャネルの階調値を特定することによって、例えば記録サイズへとリサイズを行う。リサイズ処理部20eにてリサイズが完了すると、画像データ生成部20における各画像処理が完了された画像データが生成できる。この画像データはSD−RAM52にバッファーされ、表示部40に表示されるとともに、リムーバルメモリー56に記録される。
【0024】
(2)電子シャッターの制御:
CPU50は、モードダイヤル等によって設定された露光時間TEを取得し、当該露光時間が所定の閾値THよりも短いか否かを判定する。なお、CPU50は、判定部を構成する。電子シャッター制御部30a1は、設定された露光時間TEが閾値THよりも短い場合に追従動作(ローリングシャッター動作)を行い、設定された露光時間TEが閾値TH以上である場合に非追従動作(グローバルシャッター動作)を行う。以下、追従動作と非追従動作の詳細について説明する。
【0025】
(2−1)非追従動作(グローバルシャッター動作):
図3の左グラフは、非追従動作を行う場合の露光のタイミングを示すグラフである。図3の左グラフにおいて、横軸は時刻を示し、縦軸はライン番号Lを示している。図3の左グラフにおける左側の直線はエリアイメージセンサー15の各ラインの光電変換素子の露光が開始するタイミング示し、当該タイミング(時刻)はライン番号Lの関数X(L)によって与えられる。非追従動作において、このタイミングX(L)はライン番号Lに依存しない定数となる。図3の左グラフにおける右側の曲線は露光が終了するタイミングを示し、当該タイミング(時刻)は各光電変換素子のライン番号Lの関数Y(L)で与えられる。以下、特定のライン番号Lを指す必要がない場合等には、各関数における変数(L)の表記を省略する場合がある。
【0026】
最下方のラインに属する光電変換素子の露光が終了するタイミングY(1)から、最上方のラインに属する光電変換素子の露光が終了するタイミングY(Lmax)までの期間{Y(Lmax)−Y(1)}を最大誤差期間TFとする。図3の右グラフは各光電変換素子における現実の露光時間TA(L)を示す。図3の右グラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はライン番号Lを示している。ここで、各光電変換素子における現実の露光時間TA(L)は電子シャッターによる露光の開始から機械シャッター13による露光の終了までの期間であり、図3の左グラフの横軸方向におけるタイミングXとタイミングYとの差分{Y(L)−X(L)}が、図3の右グラフに示す光電変換素子の現実の露光時間TA(L)に相当する。
【0027】
ここで、機械シャッター13の遮光幕は、ばね力や摩擦力等の影響を受けて動作するが、説明を簡単にするために、ばね力による等加速度運動を行うとして以下説明する。この場合、露光領域R1と遮光領域R2との境界Bの垂直方向の位置は徐々に傾きを増す放物線状に推移する。従って、タイミングYが示すように、光電変換素子の露光が終了するライン番号は、時間の経過とともに放物線状に増加する。すなわち、タイミングYは二次関数の逆関数となる。
【0028】
非追従動作では、図3の左グラフに示すようにすべてのラインに属するすべての光電変換素子における電荷のリセットおよび電荷の蓄積の開始を同時に行い、すべての光電変換素子における露光を同時に開始させる。すなわち、図3の左グラフに示すように、露光開始のタイミングXは、直線状となるため、放物線状の露光終了のタイミングYに対する追従度が低くなる。なお、非追従動作を行う場合のタイミングXは、第2露光開始タイミングに相当する。ここでは、すべての光電変換素子における露光を同時に開始させてから、設定された露光時間TEから最大誤差期間TFを減算した期間だけ待機した後に最下方のラインについての露光を終了させるように機械シャッター13を動作させる。これにより、図3の右グラフに示すように、最上方のライン(ライン番号Lmax)の光電変換素子における現実の露光時間TA(Lmax)と、設定された露光時間TEとが一致する。一方、最上方のラインよりも露光の終了が早期に到来する下方のラインついては、現実の露光時間TA(L)が設定された露光時間TEよりも短く、現実の露光時間TA(L)と設定された露光時間TEとの間に誤差(ハッチングで図示。)が生じる。そして、最下方のライン(ライン番号1)の光電変換素子における現実の露光時間TA(1)と設定された露光時間TEとの誤差が最大となり、当該誤差の大きさは機械シャッター13が最下方のラインの露光を終了させてから、最上方のラインの露光を終了させるまでの最大誤差期間TFと等しくなる。なお、設定された露光時間TEが変化しても遮光幕はばね力により同様の運動をするため、現実の露光時間TAの最大の誤差である最大誤差期間TFは設定された露光時間TEには依存せず一定である。
【0029】
ここで、設定した露光時間TEにて、静止した一様な被写体を一定の環境下で撮影した場合において、単位時間あたりに光電変換素子が受光する単位光量をΔEとする。この場合、すべての光電変換素子にて受光されるべき基準露光量ESはΔE×TEとなる。上述のように最上方のライン(ライン番号Lmax)の光電変換素子における現実の露光時間TA(Lmax)は設定された露光時間TEと等しいため、最上方のラインの光電変換素子が受光する露光量EE(Lmax)は基準露光量ESと等しい。一方、最下方のライン(ライン番号1)の光電変換素子における現実の露光時間TA(1)は設定された露光時間TEから最大誤差期間TFを減算した時間(TE−TF)となる。従って、最下方のラインの光電変換素子が受光する露光量EE(1)は、ΔE×(TE−TF)で表され、基準露光量ESよりも誤差ΔE×TFだけ小さくなる。この誤差ΔE×TFの基準露光量ESに対する比率である誤差比率ERは、(ΔE×TF)/(ΔE×TE)=TF/TEとなる。この誤差比率ERが小さいほど、最下方のラインの光電変換素子の現実の露光時間TA(1)に最大誤差期間TFが生じた場合でも、当該最大誤差期間TFに起因する露光量の誤差ΔE×TFの基準露光量ESに対する寄与が小さく、当該誤差ΔE×TFに起因した画像の光量むらが観察者に感じられにくくなる。本実施形態では、誤差比率ERに所定の閾値thを設定し、th=TF/TEを満足する露光時間TE=TF/thを露光時間TEの閾値THとして設定する。例えば、閾値thを3%と設定し、露光時間TEが閾値TH以上である場合に限りグローバルシャッター動作を行わせることにより、一様な被写体を一定の環境下でグローバルシャッター動作により撮影した場合の画像における光量の面内誤差を3%以下となることが保証できる。なお、光量むらの感じ方は観察者によって異なるため、閾値th(TH)は操作部55に対する操作によって設定されてもよい。また、撮影した画像の用途や被写体によっても光量むらに対する許容度が異なるため、閾値th(TH)は撮影モードや撮影シーン等に応じて設定されてもよい。
【0030】
一方、露光時間TEが閾値THよりも短い場合にグローバルシャッター動作を行わせると、画像における光量の面内誤差が3%よりも大きくなり得る。そこで、設定された露光時間TEが閾値THよりも短い場合には、追従動作を行うこととする。この追従動作では、各ラインに属する光電変換素子における現実の露光時間TA(L)の均一化を図るために、電子シャッターのタイミングXを、機械シャッター13のタイミングYに追従した折れ線形状とする。
【0031】
(2−2)追従動作(ローリングシャッター動作):
図4の左グラフは、追従動作を行う場合の露光のタイミングを示すグラフである。図4の左グラフにおいて、横軸は時刻を示し、縦軸はライン番号Lを示している。追従動作における電子シャッターのタイミングXは以下のようにして設定される。まず、各ラインに境界Bが到達するタイミングY(L)を遮光幕の運動方程式に基づいて特定する。そして、タイミングY(L)を、設定された露光時間TEだけ時刻の早い側にオフセットしたオフセット曲線Z(破線で図示。)を作成する。次に、このオフセット曲線Zに対してライン番号L1,L2,Lmaxにてそれぞれ接する接線を作成する。なお、1<L1<L2<Lmaxとする。そして、ライン番号L1,L2にてそれぞれオフセット曲線Zに接する2つの接線の交点、および、ライン番号L2,Lmaxにてそれぞれオフセット曲線に接する2つの接線の交点を屈曲点とした3段折れ線を作成し、当該3段折れ線を電子シャッターのタイミングXとする。電子シャッターのタイミングXは徐々に傾きを増す放物線に追従するため、下方から数えて1段目の折れ線の傾きは2段目の折れ線よりも小さく、2段目の折れ線の傾きは3段目の折れ線よりも小さくなる。なお、折れ線の段数は3段に限られない。
【0032】
電子シャッター制御部30a1は、ライン番号の昇順に光電変換素子に露光を開始させていくローリングシャッター動作を行うとともに、隣接するライン間における露光開始タイミングの間隔を3段折れ線のタイミングXの傾きに対応した長さとする。すなわち、n(nは3以下の自然数。)段目の折れ線に対応するライン番号の隣接ライン間における露光開始タイミングの間隔は、一定、かつ、(n+1)段目の折れ線に対応する隣接ライン番号のライン間における露光開始タイミングの間隔よりも長く確保される。なお、シャッターボタンが押下されると、まず電子シャッター制御部30a1が最も下方のラインから光電変換素子の電荷の蓄積を開始し、当該開始のタイミングから所定期間だけ待機した後に、機械シャッター13が電磁石へ電流を供給して永久磁石による遮光幕の吸着を解除させ、ばね力により遮光幕を移動させる。前記所定期間とは、設定された露光時間TEとほぼ等しく、ライン番号L1,L2,Lmaxのラインの光電変換素子のうち、水平方向中央の列(列番号Cmid,)に属する光電変換素子の現実の露光時間TA(L,Cmid)が設定された露光時間TEと等しくなる期間とする。
【0033】
以上のようにして、電子シャッター制御部30a1が機械シャッター13のタイミングY(L,Cmid)に追従するように各ラインに属する光電変換素子に露光を開始させるタイミングを制御することにより、各光電変換素子における現実の露光時間TA(L)を、設定された露光時間TEに近似させることができる。図4の右グラフは各光電変換素子における現実の露光時間TA(L)を示す。図4の右グラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はライン番号Lを示している。図4の右グラフに示すように、ローリングシャッター動作を行うことにより、各光電変換素子における現実の露光時間TA(L)={Y(L)−X(L)}を、設定された露光時間TEに近似させることができる。従って、図4の右グラフにおいてハッチングで示すように、現実の露光時間TA(L)と設定された露光時間TEとの誤差を非追従動作の場合よりも小さくすることができ、当該誤差に起因する露光量の誤差を小さくすることができる。なお、追従動作を行う場合のタイミングX(L)は、第1露光開始タイミングに相当する。また、電子シャッターに非追従動作を行わせる場合の直線状のタイミングX(L)である第2露光開始タイミングは、電子シャッターに追従動作を行わせる場合の折れ線状のタイミングX(L)よりも、機械シャッター13の放物線状のタイミングY(L)に対する追従度が低い。本実施形態において追従度とは、現実の露光時間TA(L)と設定された露光時間TEとの間に誤差によって把握でき、例えば図3と図4の右グラフのハッチングの面積の逆数等によって定量化できる。すなわち、図3と図4の右グラフのハッチングの面積が小さいほど、露光開始タイミングの露光終了タイミング(タイミングY)に対する追従度が高い。
【0034】
(3)変形例1:
図4の右グラフに示したように、電子シャッターが追従動作を行う場合であっても、ハッチングで示す誤差を完全になくすことは困難である。電子シャッターによる露光開始のタイミングX(折れ線)を、機械シャッター13のタイミングY(L)(放物線)に完全に追従させるにはタイミングXを複雑に制御しなければならず、電子シャッターの制御負荷が大きくなるからである。さらに、前記実施形態では露光領域R1と遮光領域R2との境界Bが各ラインの方向と平行のまま移動することとしたが、境界Bが各ラインに交差する場合には、各ラインにおける光電変換素子間で露光時間のばらつきが生じることとなる。従って、電子シャッターが追従動作を行う場合であっても、露光時間のばらつきに起因する露光量のばらつきを抑制する補正を行うことが望ましい。
【0035】
図5Aは、本変形例におけるエリアイメージセンサー15の素子面の全体を正面から見て示す模式図である。本実施形態の機械シャッター13では、エリアイメージセンサー15の素子面の右側に設けられた図示しない回転軸を中心として遮光幕が回転移動可能に支持されている。本実施形態では、垂直方向中央のラインに境界Bが到達したとき境界Bとラインとが平行となる。垂直方向中央のラインに境界Bが到達するまでは、境界Bは右肩上がりに傾斜し、徐々にラインと平行に近づいていく。垂直方向中央のラインに境界Bが到達すると、境界Bは徐々に右肩下がりの傾斜角を増していく。すなわち、エリアイメージセンサー15の素子面上における境界Bの方向は一定とはならず、基本的にラインに対して境界Bが交差する。なお、遮光幕の回転軸をエリアイメージセンサー15の素子面から十分に遠い位置に設ければ各ラインと境界Bとが平行であると見なせるが、本変形例では撮影装置1の小型化や機械シャッター13の動作高速化等の要請により境界Bがラインに交差し得る位置に遮光幕の回転軸が設けられる。
【0036】
図5Bは、エリアイメージセンサー15の各列に属する光電変換素子における露光のタイミングを示すグラフである。同図においては、水平方向中央の列に属する各光電変換素子の露光が終了するタイミングY(L,Cmid)を実線で示し、左端および右端の列に属する各光電変換素子の露光が終了するタイミングY(L,C1),Y(L,Cmax)をそれぞれ一点鎖線と二点鎖線で示す。本変形例では、各光電変換素子の露光が終了するタイミングYは、列番号Cにも依存するため、タイミングYはライン番号Lおよび列番号Cの関数となる。追従動作を行う場合の電子シャッターのタイミングX(L)は、露光が終了するタイミングの平均的な傾向を示す水平方向中央の列についてのタイミングY(L,Cmid)に追従する3段折れ線とされている。光電変換素子の電荷のリセットはライン単位で同時行われるため、本変形例でも電子シャッターのタイミングXはライン番号Lのみの関数となる。図5Aにて示したように露光領域R1と遮光領域R2との境界Bは方向を変えながら移動するため、列番号CごとにタイミングY(L,C)が異なる。すなわち、境界Bが垂直方向中央のライン(ライン番号Lmid)に到達するまでは、境界Bが右肩上がりとなるため、右端に近い光電変換素子であるほど早く露光が終了する。従って、境界Bが垂直方向中央のラインに到達するまでは、タイミングY(L,Cmax)がタイミングY(L,Cmid)に先行し、タイミングY(L,Cmid)がタイミングY(L,C1)に先行する。一方、境界Bが垂直方向中央のラインに到達した後では、境界Bが右肩下がりとなるため、左端に近い光電変換素子であるほど早く露光が終了する。従って、境界Bが垂直方向中央のラインに到達した後では、タイミングY(L,C1)がタイミングY(L,Cmid)に先行し、タイミングY(L,Cmid)がタイミングY(L,Cmax)に先行する。また、垂直方向中央のライン(ライン番号Lmid)に属する光電変換素子の露光はすべて同時に終了し、ライン番号LmidについてのタイミングY(Lmid,C1),Y(Lmid,Cmid),Y(Lmid,Cmax)が一致する。
【0037】
このように、光電変換素子の水平方向の位置に応じて露光が終了するタイミングY(L,C1),Y(L,Cmid),Y(L,Cmax)が互いに異なることとなる。これに対して、光水平方向中央の列の光電変換素子についてのタイミングY(L,Cmid)に追従するタイミングX(L)によって、すべての列に属する光電変換素子の露光が開始させられるため、水平方向中央の列以外の列に属する光電変換素子についての現実の露光時間TA(L,C1),AE(L,Cmax)は、水平方向中央の列に属する光電変換素子についての現実の露光時間TA(L,Cmid)よりも大きくばらつくこととなる。なお、電荷をリセットするための配線の制約により、露光を開始させるタイミングXは光電変換素子の列ごとに制御できない。すなわち、境界Bがラインに交差する以上、電子シャッターの追従動作によって露光を開始するタイミングXをいかに調整したとして、光電変換素子の水平方向の位置に依存した露光時間のばらつきは防止できない。
【0038】
そこで、以上説明した露光時間のばらつきに起因した露光量のばらつきを抑制するために、本変形例の画像データ生成部20は露光量補正部を備える。露光量補正部は、ROM53に記録されたLUT(Look Up Table)を参照して、画素補間部20aが画素補間を行う前の撮像データにおける露光量の階調値を画素ごとに補正する。LUTは、エリアイメージセンサー15に備えられた複数の光電変換素子ごとに乗算すべき露光量のゲインGE(L,C)、すなわち補正量が規定されたデータであり、設定された露光時間TEごとに予め作成される。露光量補正部は、撮影時に設定された露光時間を取得し、当該露光時間に対応するLUTを参照する。撮像データの各画素とエリアイメージセンサー15の複数の光電変換素子とは一意に対応するため、露光量補正部は、各画素について乗算すべき露光量のゲインを特定できる。本変形例では、ゲインGE(L,C)を以下のようにして設定することにより、露光時間のばらつきに起因した露光量のばらつきを抑制する。
【0039】
本変形例では、LUTを作成するためのコンピューターが遮光幕の運動を予測し、さらに撮影光の光線予測により素子面における露光領域R1と遮光領域R2との境界Bの推移を予測することにより、すべての光電変換素子についての現実の露光時間TA(L,C)={Y(L,C)−Y(L)}を算出する。そして、設定された露光時間TEを現実の露光時間TA(L,C)で除算することによりゲインGE(L,C)を算出する。もしくは、一様な明るさの被写体を撮影することで、すべての光電変換素子について、現実の露光量に比例して蓄積した電荷量を取得する。そして、露光時間TA(L,C)が判明している光電変換素子の電荷量を露光時間TA(L,C)が不明な光電変換素子の電荷量で除算することによりゲインGE(L,C)を算出する。なお、図5Bでは、水平方向左端と中央と右端の列に属する光電変換素子についてのタイミングYを図示したが、すべての列に属する光電変換素子についてのタイミングYを予測し、ゲインGEを算出する。さらに、各光電変換素子にゲインGEを対応付けてLUTに格納する。
【0040】
ここで、現実の露光時間TA(L,C)が設定された露光時間TEよりも短い光電変換素子についてのゲインGE(L,C)は1よりも大きく、反対に現実の露光時間TA(L,C)が設定された露光時間TEよりも大きい光電変換素子についてのゲインGE(L,C)は1よりも小さくなる。ただし、ゲインGEの値は必ず1以上の値になるように設計することが望ましい。ゲインGEの値を1以上にすることで、補正後の露光量の最大飽和値が一定数値よりも下回ることで発生する画像の光量むらや色むらを抑制することができる。また、現実の露光時間TA(L,C)と、設定された露光時間TEとの誤差の絶対値が大きくなるほど、ゲインGE(L,C)は1から大きく相違する値となる。以上のように設定されたゲインGEを露光量の階調値に乗算することにより、現実の露光時間TA(L,C)が短い光電変換素子についての露光量を増加させ、現実の露光時間TA(L,C)が長い光電変換素子についての露光量を減少させることができ、露光時間のばらつきの露光量に対する影響を抑制できる。すなわち、ゲインGE(L,C)によれば画素単位、すなわち光電変換素子単位でゲインGEが規定できるため、光電変換素子の垂直方向の位置と水平方向の位置の双方に依存してばらつく露光時間のばらつきの影響を抑制できる。特に、露光領域R1と遮光領域R2との境界Bがラインと交差することによって生じる水平方向における露光時間のばらつきは、仮に電子シャッターのタイミングXを機械シャッター13のタイミングY(L,Cmid)に完全に追従させた場合でも解消できないが、ゲインGE(L,C)による補正を行うことにより水平方向における露光時間のばらつきの影響も抑制できる。なお、本変形例では露光時間と露光量とは比例関係にあると見なしてゲインGEを乗算して補正を行うこととしたが、露光時間と露光量との非線形性を考慮する場合にはゲインGEを非線形変換した上で露光量の補正を行ってもよい。なお、ゲインGE(L,C)に基づく補正は、非追従動作を行った場合にも行ってもよい。
【0041】
(4)変形例2:
第1露光開始タイミングの露光終了タイミングに対する追従度が高ければ高いほど露光時間の均一性に優れる反面、追従度が高ければ高いほど必要な処理能力が高くなる。この限度において第1露光開始タイミングと第2露光開始タイミングとを前記実施形態と異なる態様とすることができる。例えば、第1露光開始タイミングを機械シャッター13のタイミングY(L)を単にオフセットした曲線Zで規定し、第2露光開始タイミングを曲線Zに接する、もしくは、近似した3段折れ線で規定してもよい。第1露光開始タイミングを機械シャッター13のタイミングY(L)をオフセットした曲線Zに接するm(mは3以上の整数。)段で規定し、第2露光開始タイミングを曲線Zに接するk(kは2以上かつmより小さい整数。)段折れ線で規定してもよい。これらの場合、第1露光開始タイミングよりも第2露光開始タイミングの方が機械シャッター13のタイミングY(L)に対する追従度が低くなる。また折れ線を用いずに、第2露光開始タイミングを曲線Zに近似した曲線で規定してもよい。この曲線は例えば、nを大きくすることで追従度が高くなるn次曲線(nは1以上の整数)とすることができる。
(5)変形例3:
設定された露光時間TEが長ければ露光時間のばらつきは小さくなる。よって、複数の閾値TH(0<TH<TH2<・・・)をもち、設定された露光時間TEがTH≦TE<THi+1であれば、TEの場合の第2露光開始タイミングの折れ線の段数をTEi+1の場合の第2露光開始タイミングの折れ線の段数よりも多くするなど、機械シャッター13のタイミングY(L)に対する追従度がより高くなるように露光を開始しても良い。すなわち、露光時間TEが最大の閾値THmaxよりも短い場合において、露光時間TEが最大の閾値THmaxに近似するほど、第1露光タイミングの機械シャッター13のタイミングY(L)に対する追従度を低くしてもよい。また、設定された露光時間TEが最大の閾値THmax以上である場合に非追従動作(グローバルシャッター動作)ではなく、折れ線の段数が小さい追従動作(ローリングシャッター動作)を行うようにしても良い。ここで折れ線に代えて曲線としても良い。
本発明の具体的態様は、上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、実施形態や変形例同士を組み合わせたものであってもよいし、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…撮影装置、10…光学系、11…レンズ、12…絞り、13…機械シャッター、14…ローパスフィルター、15…エリアイメージセンサー、20…画像データ生成部、20a…画素補間部、20b…色再現処理部、20c…フィルター処理部、20d…ガンマ補正部、20e…リサイズ処理部、30…タイミングジェネレーター、30a…センサー制御部、30a1…電子シャッター制御部、30b…表示制御部、40…表示部、41…液晶パネルドライバー、42…液晶パネル、55…操作部、56…リムーバルメモリー。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子シャッターによって、複数の光電変換素子における電荷の蓄積を開始させることにより前記複数の光電変換素子における露光を開始させ、
機械シャッターによって、遮光部を移動させて前記複数の光電変換素子が配列する素子面を遮光することにより、前記複数の光電変換素子における露光を終了させる撮影装置であって、
露光時間が所定の閾値よりも短いか否かを判定する判定部と、
前記露光時間が前記閾値よりも短い場合に、前記機械シャッターが前記複数の光電変換素子の露光を終了させる露光終了タイミングに追従する第1露光開始タイミングで、前記電子シャッターに前記複数の光電変換素子における露光を開始させ、
前記露光時間が前記閾値以上である場合に、前記第1露光開始タイミングよりも前記露光終了タイミングに対する追従度が低い第2露光開始タイミングで、前記電子シャッターに前記複数の光電変換素子における露光を開始させる電子シャッター制御部と、
を備える撮影装置。
【請求項2】
前記電子シャッター制御部は、前記露光時間が前記閾値以上である場合に、前記電子シャッターに前記素子面上のすべての前記複数の光電変換素子における露光を同時に開始させる、
請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記露光時間が前記閾値よりも短い場合に、前記複数の光電変換素子における露光開始タイミングと前記露光終了タイミングとの差に起因する露光量のばらつきを抑制する補正を行う、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項4】
前記判定部は、複数の前記閾値と前記露光時間とを比較して判定を行い、
前記電子シャッター制御部は、前記露光時間がより大きい前記閾値以上であるほど、より追従度が低い露光開始タイミングで、前記電子シャッターに前記複数の光電変換素子における露光を開始させる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記第1露光開始タイミングは、時刻と露光開始する前記複数の光電変換素子の位置とをグラフに表した場合に、折れ線で表されるタイミングである
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項6】
前記第1露光開始タイミングは、時刻と露光開始する前記複数の光電変換素子の位置とをグラフに表した場合に、n次曲線で表されるタイミングである
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項7】
電子シャッターによって、複数の光電変換素子における電荷の蓄積を開始させることにより前記複数の光電変換素子における露光を開始させ、機械シャッターによって、遮光部を移動させて前記複数の光電変換素子が配列する素子面を遮光することにより、前記複数の光電変換素子における露光を終了させる撮影装置にて画像の撮影を行う撮影方法であって、
露光時間が所定の閾値よりも短いか否かを判定し、
前記露光時間が前記閾値よりも短い場合に、前記機械シャッターが前記複数の光電変換素子の露光を終了させる露光終了タイミングに追従する第1露光開始タイミングで、前記電子シャッターに前記複数の光電変換素子における露光を開始させ、
前記露光時間が前記閾値以上である場合に、前記第1露光開始タイミングよりも前記露光終了タイミングに対する追従度が低い第2露光開始タイミングで、前記電子シャッターに前記複数の光電変換素子における露光を開始させる、
撮影方法。
【請求項8】
電子シャッターによって、複数の光電変換素子における電荷の蓄積を開始させることにより前記複数の光電変換素子における露光を開始させ、機械シャッターによって、遮光部を移動させて前記複数の光電変換素子が配列する素子面を遮光することにより、前記複数の光電変換素子における露光を終了させる撮影装置にて実行される撮影プログラムであって、
露光時間が所定の閾値よりも短いか否かを判定する判定機能と、
前記露光時間が前記閾値よりも短い場合に、前記機械シャッターが前記複数の光電変換素子の露光を終了させる露光終了タイミングに追従する第1露光開始タイミングで、前記電子シャッターに前記複数の光電変換素子における露光を開始させ、
前記露光時間が前記閾値以上である場合に、前記第1露光開始タイミングよりも前記露光終了タイミングに対する追従度が低い第2露光開始タイミングで、前記電子シャッターに前記複数の光電変換素子における露光を開始させる電子シャッター制御機能と、
を前記撮影装置に実行させる撮影プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−105240(P2012−105240A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254579(P2010−254579)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】