撹拌式精米機および該精米機で製造される搗精米
【課題】最適な状態に精米するための条件設定を行った精米機を提供すること。
【解決手段】筒状の内周面の少なくとも一部に摩擦面を有する処理槽12と、前記処理槽内に配置され、精米ブラシ27を筒状の外周面に突出している精米部材13と、前記精米ブラシの先端における周速度が9.5〜13.5m/sとなるように前記精米部材を回転させる駆動装置14とを備えている。前記処理槽の前記摩擦面と前記精米ブラシの先端間に幅3〜10mmの垂直方向に延在する空間29bを設け、該空間を玄米の循環空間とし、垂直方向の回転主軸15を中心として水平方向に回転される前記精米ブラシに対して玄米を前記循環空間に垂直方向に循環させて玄米にスピン回転を発生させ、該スピン回転により玄米粒表面の維管束を除去できる構成としている。
【解決手段】筒状の内周面の少なくとも一部に摩擦面を有する処理槽12と、前記処理槽内に配置され、精米ブラシ27を筒状の外周面に突出している精米部材13と、前記精米ブラシの先端における周速度が9.5〜13.5m/sとなるように前記精米部材を回転させる駆動装置14とを備えている。前記処理槽の前記摩擦面と前記精米ブラシの先端間に幅3〜10mmの垂直方向に延在する空間29bを設け、該空間を玄米の循環空間とし、垂直方向の回転主軸15を中心として水平方向に回転される前記精米ブラシに対して玄米を前記循環空間に垂直方向に循環させて玄米にスピン回転を発生させ、該スピン回転により玄米粒表面の維管束を除去できる構成としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌式精米機および該精米機で製造される搗精米に関し、詳しくは、玄米を撹拌することにより糊粉層及び胚芽を残存させた状態で表面から維管束や果皮を分離除去できる撹拌式精米機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より玄米を精白米に搗精する精米機等が種々提供されている。
例えば、特開2002−320865号公報に開示された精穀機(精米機)は、図13に示すように、側壁に多数の小孔が形成された除糠部を有する除糠ホッパー1と、外周にブラシ5を有し除糠ホッパー1内で回転する筒状の精米部材2と、除糠ホッパー1の底面を覆う回転円板3とを備え、精米部材2の内壁近傍にその内壁面を覆う筒状の内壁カバー4を固定配置している。精米部材2および回転円板3が回転すると、ホッパー1内に投入された米は図中矢印のように循環し、ブラシ5と除糠ホッパー1との間で精米している。
【0003】
ところで、精米機で精穀する時間、精米部材の回転数、一度に精穀する米の量などの種々の精米条件は機器毎に任意に決定されているのが現状である。例えば、精米部材の回転数を上げると早く精米でき効率が良いが、米粒が割れたり精米時の騒音が大きくなったりするため、回転数を低く抑えることが望まれる。一方、精米部材の回転数を下げると、精米時間が長くかかり効率が悪くなる。また、一度に多くの量の米を精米して効率を上げる場合には、精米部材を駆動するモータに高トルクが要求され、かつ、精米時間も長くなるため、この方法にも限界がある。
また、従来の精米機では、玄米に含まれる栄養価の高い胚芽や糊粉層が脱落したり、米粒の糠の除去が不均一となる場合も多い。
【0004】
また、近年、玄米の糊粉層には豊富な栄養成分が含まれていることが解明されてきている。この栄養成分を100%摂取するには玄米のまま食べる必要があるが、玄米表面には維管束を含む固い層があり、炊飯するにしても、圧力鍋を使用しなければならないなど、大変手間がかかる問題がある。また、この固い層は食味・食感を非常に悪くするものであり、いやな臭いもあり、人間の体が拒絶する物質も含まれているため、玄米のまま食べられることは非常に少ない。
【0005】
そこで、この維管束を含む固い層をある程度除去して分搗き米にすることで、精白米より多くの栄養成分を確保しつつ、食べやすくする方法をとる場合がある。しかしながら、この分搗き技術は難しく、現状の精米機では均一な分搗き米を作ることは困難となっている。よって、精白米に近い搗精度のものから玄米に近いものまでの混合物となっている。また、各玄米粒についても表面を均一に削ったものではなく、部分的にえぐり取ったような削り方しかできず、削られやすい部分だけ削られて、表皮の特に固い部分はなかなか除去できていない。
食味・食感を良くするために、固い部分を除去しようと、搗精度を上げる必要があるが、当然、栄養成分が豊富な糊粉層まで削り取られてしまい、栄養成分を多く残そうとすれば食味・食感を犠牲にしなければならない問題がある。
即ち、精白米になるまで玄米の表面を削る場合は、維管束について注目されることは少なく、糊粉層及び胚芽を残存させた状態で玄米表面から果皮が、所謂、糠として分離除去されてただけで、食味・食感と栄養価のバランスの良好な精米を得ることは容易ではない。
【0006】
本発明者らは、食味・食感と栄養価のバランスの良好な搗精米を得るべく、米の糊粉層を残しつつ表面にある維管束を含む固い層のみを除去する研究を進めた。
維管束は米の長手方向に走っている栄養分を運ぶ血管のようなもので、稜と側面の縦溝にあるため、食味・食感を悪くする部分であるにもかかわらず最も除去し難いものである。
よって、従来の圧力式撹拌式の精米機で分搗きを行った場合、側面の縦溝の維管束は比較的よく除去されたものであっても、完全除去率は50%程度となっている。
前記圧力式精米機は、筒状の金網の中で回転する金属製ロールで玄米を送り込み、圧力をかけて玄米同士および金網との擦り合いにより、玄米表面の糠層を削るタイプの精米機である。この玄米表面の糠層を削るタイプとしても維管束が除去しにくい理由は、玄米は図9に示すように断面略楕円形をしているため、カーブが大きい広い面は玄米同士および金網と接触しやすく削られやすいが、カーブが小さい稜の部分は米の流動が小さいことも作用して接触の機会が少ないため削られにくいことによる。さらに、維管束自体が固くて除去されにくいため、分搗きにすると、維管束がほとんど残ることとなる。
【0007】
前記特許文献1の精穀機とは異なるタイプの撹拌式精米機では、金網カゴの中で研削翼を回転させ、玄米同士および玄米と金網との擦り合い、また、玄米と研削翼との接触により、玄米表面の糠層を削っている。この撹拌式精米機は前記圧力式精米機に比べて米の流動が大きく、稜の部分に接触する機会も増えるので、前記圧力式精米機よりは維管束は除去されやすい。しかしながら、玄米表面の維管束をを均一に除去することは困難で、改良の余地がある。
【0008】
【特許文献1】特開2002−320865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、まず、玄米の糠層の除去率を最適範囲とすることができる精米機を提供することを主たる課題としている。さらに、玄米表面に糊粉層は残しながら維管束を含む硬い層を除去して搗精米を製造できる精米機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、筒状の内周面の少なくとも一部に摩擦面を有する処理槽と、
前記処理槽内に垂直方向に配置される筒状体からなり、該筒状体の外周面に精米ブラシを突出している精米部材と、
前記精米部材の駆動装置を備え、該駆動装置で前記精米ブラシの先端における周速度を9.5〜13.5m/sの範囲で回転させる設定としていることを特徴とする撹拌式精米機を提供している。
【0011】
前記構成のように、米粒に対して相対的に回転動作して接触研磨する精米ブラシの周速度を9.5〜13.5m/sにすることで、発芽玄米に最も適した米の状態、即ち、後述するように糠除去率が1.5〜3.5%、好ましくは2〜3%の状態にすることが可能となる。周速度を9.5m/s未満とすると、糠除去率が非常に小さくなり十分に精米できないからであり、周速度が13.5m/sを超えると、米粒への負荷が大きくなり割れ等が発生して搗精度合いが不均一となるからである。前記精米ブラシの先端における周速度は10.5〜12.0m/sとするとより好ましい。
【0012】
また、前記駆動装置を動作させる精米時間は1合あたり15〜35秒間に制御する制御装置を備えていることが好ましい。前記処理槽は円筒状とし、該処理槽内に配置する精米部材は、円筒状でもよいし、断面多角形の筒状でもよい。
【0013】
さらに、本発明の精米機においては、搗精米の製造に好適に用いられるように、処理槽の摩擦面と前記精米ブラシの先端間に幅3〜10mmの垂直方向に延在する空間を設け、該空間を玄米の循環空間とし、垂直方向の回転主軸を中心として水平方向に回転される前記精米ブラシに対して玄米を前記循環空間に垂直方向に循環させて、玄米にスピン回転を発生させ、該スピン回転により玄米粒表面の維管束を除去できる構成としている。
【0014】
前記のように、ブラシの移動方向と略直交方向から玄米を送り込むことで、玄米粒にスピン回転運動を発生させることができ、玄米がスピン回転しながら処理槽の摩擦面と回転する精米ブラシとの3〜10mmの隙間を通過させることで、玄米の表面に糊粉層を残して、維管束を略完全に効率良く除去できる。
前記処理槽の摩擦面と精米ブラシ先端間の距離を3〜10mmの範囲としているのは、3mm未満とすると、糊粉層も除去することなる一方、10mmよりも大きくすると維管束の完全除去率が低下するからである。この処理槽の摩擦面と精米ブラシ先端間の距離は好ましくは4〜6mm、特に5mmが好適である。
【0015】
本発明の精米機では、前記処理槽内に投入されて搗精される玄米のうち、維管束が完全に除去されていると共に糊粉層は残存している搗精米が70%以上とすることができるものとしている。
このように、本発明の精米機によれば、除去しにくい維管束を確実に除去できることより、維管束が完全に除去された搗精米を精米する玄米の内の70%以上とすることができ、更には、維管束の完全除去率は80〜90%とすることも可能である。
【0016】
さらに、本発明の精米機では、前記精米部材の内周面に摺接する掻き落とし部材を備えていることが好ましい。
前記構成とすると、一部の米が遠心力で精米部材の内周面に貼り付いたとしても、掻き落とし部材が即座にその米粒を取り去って落下させることが可能となる。したがって、一部の米粒が精米部材に貼り付いて一緒に回転し、米粒ごとに撹拌度合いが不均一になることがなく、個々の米粒ごとに糠除去率が変動するのを防止できる。なお、前記掻き落とし部材は着脱自在としていることがメンテナンス性の観点から好ましい。また、掻き落とし部材は垂直方向に対して傾斜していると、米粒が落下し易くなり好適である。
【0017】
また、前記精米部材の外径は前記精米部材の高さの2倍〜3倍としていると好ましい。
2倍以上としているのは、2倍未満であると遠心力に比べて精米部材の壁が高く、米粒が精米部材を乗り越えることができずに円滑に循環されないからである。また、3倍以下としているのは、3倍を超えると精米部材の側壁面積の割合が減少し、米粒との摩擦面積が少なくなると共に、装置の小型化が図れないからである。
【0018】
前記精米ブラシは樹脂製とし、線径が0.1〜0.3mmで、突出量が1mm〜6mmとしていると好ましい。
前記構成とすると、精米ブラシに腰があり且つ柔軟であるため、米粒の表面に適度な摩擦力を付与することができるので、糊粉層および胚芽を残存させた状態で果皮を取り除き、米粒に割れを発生させることもない。なお、精米ブラシの突出量は2〜5mmとするとより好ましい。また、精米ブラシはナイロン製とするとより好ましい。
【0019】
本発明では、さらに、前記構成の精米機で製造される、玄米から維管束が完全に除去されていると共に、糊粉層は残されていることを特徴とする搗精米を提供している。
さらに、前記精米機による製造に限定されず、玄米から維管束が完全に除去されていると共に糊粉層は残されていることを特徴とす搗精米を提供している。
さらにまた、前記搗精米からなる米飯を提供している。
【0020】
前記維管束が完全に除去されていると共に糊粉層は残されている搗精米は、栄養が豊富な糊粉層が残っていると共に、食味・食感を悪くする維管束が完全に除去されているため、食しやすい栄養化の高い米飯となる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、精米部材の精米ブラシの先端における周速度を9.5〜13.5m/sとすることで、発芽玄米に最も適した米の状態である糠除去率1.5〜3.5%の状態にすることできる。
【0022】
さらに、処理槽の摩擦面と精米ブラシの先端間の距離を3〜10mmに設定し、かつ、精米ブラシの回転方向(水平方向)と略直交方向の垂直方向の循環空間に玄米を送り込んでいるため、玄米粒はスピン回転され、玄米と精米ブラシとの接触の機会が増加すると共に小さいカーブの稜線も精米ブラシと接触し、該稜線に位置する維管束も確実に削ることができる。よって、糊粉層を残しながら、玄米表面の食味・食感を悪くする維管束の完全除去率を70%以上の状態にすることができる。よって、食感・食味と栄養価に優れた米を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5は第1実施形態の撹拌式精米機10を示す。
撹拌式精米機10は、図1に示すように、筐体11と、筐体11の上面側の凹部22に内嵌される処理槽12と、処理槽12内に回転自在に配置される精米部材13と、精米部材13を所定の速度で回転駆動する駆動装置(モータ)14と、駆動装置14の駆動時間を制御する制御装置21と、凹部22の開口を閉じる蓋30と、凹部22に連通した通気フィルターからなる糠収集袋18を設けた糠収容室17と、糠収容室17に連通する糠吸引装置19と、搗精された米を回収する米収容器20とを備えている。
【0024】
筐体11の凹部22は、図1および図3に示すように、円筒状の側壁22aと、底壁22bとを備え、側壁22aの一部には外方に膨出して糠収集袋18に連通する糠排出部23を形成していると共に、側壁22aの対向する他部には米収容器20へ導く米排出路25に連通する開口部22dを穿設している。開口部22dには閉鎖する扉26を開閉自在に取り付けている。側壁22aの上端には処理槽12を載置するための段差部22cを設けている。また、糠排出部23の所要位置には通気孔23aを穿設している。
【0025】
処理槽12は、図4に示すように、円筒状の側壁12aと、底壁12bとを備えている。側壁12aは、凹部22の糠排出部23と対向する一部に形成された糠排出孔12dと、開口部22dの扉26と接する他部に形成された米排出穴12eと、糠排出孔12dおよび米排出穴12e以外の内面側に形成された凹凸である摩擦面12cと、上端縁で外方に突出した鍔部12gとを備えている。
底壁12bは、図1および図3に示すように、糠排出部23と連通する部位に糠排出孔12fを備えている。糠排出孔12dの大きさは、糠が通過して米が通過しない大きさに設定している。側壁12aは糠排出部23以外の凹部22の内周面にほぼ密着している。
【0026】
精米部材13は、図1および図2に示すように、断面十六角形の筒状で外周面に精米ブラシ27を植毛した筒部13aと、筒部13aの下端縁より放射方向に対して傾斜した状態で間欠的に突出した支持脚部13cと、支持脚部13cを介して筒部13aに固定された円板座部13bと、円板座部13bの中心より上方に突出して内部に軸穴33を有する軸取付部13dと、円板座部13bの下面に放射方向に対して傾斜した状態で線状に植毛され処理槽12の底壁12bに接する(あるいは米粒が通過しない隙間をあけた)掃出ブラシ28とを備えている。なお、精米ブラシ27は筒部13aの外周面において角部以外の平面部分に植毛している。これは植毛作業を平面に対して行わせることで精米部材13の製造を容易にするためである。
【0027】
筒部13aと円板座部13bとの間に形成された空隙は米の空間29aとしている。
精米ブラシ27は、66ナイロン製とし、線径が0.1〜0.3mmで突出量Dが1〜6mmとしている。筒部13aの外径は、筒部13aの高さの2倍〜3倍としている。円板座部13bの外径は筒部13aの外径よりも大としている。円板座部13bの外径は処理槽12の内径よりやや小さく設定され(米が噛み込まない程度の微小隙間がある)、米は常に円板座部13bの上で撹拌される。なお、掃出ブラシ28の代わりにゴム板のような可撓性材料を設けてもよい。
【0028】
前記精米ブラシ27の先端と処理槽12の側壁12aの内周側の摩擦面12cとの間で垂直方向に延在する米の循環空間29bを設け、この空間29bの幅を3〜10mmとしている。前記垂直方向に延在する循環空間29bの下端は前記空間29aと連通すると共に上端は蓋30と精米部材13の筒部13aの上端との空間29cと連通し、前記上下空間29aと29cとが筒部13aの内部空間29dで連通し、前記空間29a、29b、29c、29dで米の循環空間29を形成している。
【0029】
蓋30の下面には、精米部材13の筒部13aの内周面に摺接する一対の掻き落とし部材24を下方に向けて垂直方向に対して傾斜した状態で突出している。掻き落とし部材24は、蓋30と接続される棒部31と、棒部31の外面より外方に突出する摺接ブラシ32とを備えている。また、蓋30は通気孔30aを有している。
筐体11の凹部22の底壁22bおよび処理槽12の底壁12bの中心には軸受16を介して回転軸15を貫通しており、該回転軸15を精米部材13の軸穴33に内嵌固定している。
【0030】
駆動装置14は、精米部材13の精米ブラシ27の先端における周速度が9.5〜13.5m/sとなるように回転軸15の回転速度を設定している。
制御装置21は、ユーザが開始ボタン(図示せず)を操作すると、駆動装置14を1合当たり15〜35秒間動作させて停止するようにタイマー制御する。
【0031】
次に、撹拌式精米機10の動作について説明する。
ユーザは、精米部材13内の空間に玄米を入れた状態で蓋30をして開始ボタン(図示せず)を操作すると、駆動手段14により精米部材13が周速度9.5〜13.5m/sで回転して玄米が撹拌されると共に糠吸引装置19が作動する。
この精米部材13の回転による撹拌で、主に精米部材13の精米ブラシ27と処理槽12の摩擦面12cとの間の循環空間29bにおいて玄米の表面に摩擦力が付与され、玄米から糠が剥離される。
【0032】
詳しくは、図5に示すように、精米部材13を回転させると、円板座部13b上の米は遠心力で循環空間29aを通過して外周方向へ移動し、処理槽12の側壁12aに達した米は次々に押しやられてくる米の圧力で、摩擦面12cと精米ブラシ27の隙間の循環空間29bを通って精米されながら上昇し、上端に達した米は循環空間29cを通って精米部材12の内側の循環空間29dへ落下して循環を繰り返す。
【0033】
前記循環空間29bで玄米から糠が剥離されると共に、垂直方向の循環空間29bに下方から垂直方向に上昇してくる玄米に対して精米ブラシ27が直交する水平方向に回転して摺接するため、玄米にはスピン回転することとなり、玄米の表面全体が内周側の精米ブラシ27と外周側の摩擦面12cと接触する。即ち、玄米の小さいカーブの稜線も精米ブラシ27および摩擦面12cと接触し、該稜線に位置する維管束も削ることとなる。
かつ、循環空間29bの幅を3〜10mmとしているため、玄米の表面がかなり強く精米ブラス27と摩擦面12cと接触することで、玄米の表面全体の維管束を含む固い層が削られることとなり、その結果、維管束を玄米の表面から略均一に除去することができる。
【0034】
この際、掻き落とし部材24の摺接ブラシ32が、回転する精米部材13の側壁13aの内周面に摺接するので、循環する一部の米が遠心力で精米部材13の側壁13aの内周面に貼り付いても即座に掻き落とすことができ、米粒ごとに循環度合いが不均一になるのを防止している。
【0035】
除去された糠(果皮)は、糠吸引装置19による空気の流れと精米部材13の回転による遠心力とで、糠排出孔12dを通過して糠排出部23に排出され、糠収集袋18に溜められる。また、除去された糠が処理槽12の底壁12b上に落ちたとしても、その糠は、精米部材13の回転に伴って円板座部13bの下面で線状に突出した掃出ブラシ28により外周方向に掃き出され、糠排出孔12fから糠収集袋18へと排出される。
最終的には、設定された精米時間(20〜35秒)が経過すると扉26が開き、処理槽12内の米は撹拌の遠心力で米排出穴12e→開口部22d→米排出路25の順に通過して米収容器20へ落下する。
【0036】
図6および図7は第2実施形態を示す。
第1実施形態との相違点は、精米部材46に円板座部を設けずに真下から米を取り出し可能な構造としている点である。
【0037】
本実施形態の撹拌式精米機40は、筐体41と、筐体41の中央の略円筒部42に内嵌設置され、内周面に摩擦面43aを有するドラム43と、ドラム43の下面開口を閉鎖する傘状の昇降閉鎖板44と、昇降閉鎖板44に固定された昇降棒57を上下させる昇降装置58と、ドラム43内に回転自在に配置される精米部材46と、略円筒部42に連通し通気フィルターからなる糠収集袋55を設けた糠収容室54と、糠収容室54に連通する糠吸引装置19と、ドラム43の下方に配置され米を回収する米収容器59とを備えている。
【0038】
なお、ドラム43の下面開口を昇降閉鎖板44で閉鎖して形成される凹部を処理槽45としている。筐体41の略円筒部42は、底壁がないこと以外は第1実施形態の凹部22の形状と同様である。また、ドラム43も、底壁および米排出穴がないこと以外は第1実施形態の処理槽12の形状と同様である。
【0039】
精米部材46は、図6および図7に示すように、外周面に精米ブラシ51を植毛した筒部46aと、筒部46aの下端縁より放射方向に対して傾斜した状態で突出した撹拌翼46bと、筒部46aの内周面に対して支持バー46cを介して固定されて内部に軸穴52を有する軸取付部46dとを備えている。精米ブラシ51は、66ナイロン製とし、線径が0.1〜0.3mmで突出量が1〜6mmとしている。筒部46aの外径は、筒部46aの高さの2倍〜3倍としている。また、第1実施形態と同様に、ドラム43の内周面の摩擦面43aと精米ブラシ先端との間に距離dが3〜10mmの米の循環空間を設けている。
【0040】
筐体41の略円筒部42の上面開口は閉鎖板47で閉鎖されており、閉鎖板47の下面には、精米部材46の円筒部46aの内周面に摺接する一対の掻き落とし部材24を下方に向けて垂直方向に対して傾斜した状態で突出している。また、駆動装置14と連繋された回転軸61は、閉鎖板47の中央を軸受63を介して貫通し、精米部材46の軸穴52に内嵌固定している。
【0041】
閉鎖板47の所要位置には、処理槽45と連通する開口47aを穿設しており、開口47aの上方には玄米タンク65を連続して設けている。玄米タンク65の下方の流路は駆動本体67により進退可能なシャッター66で閉鎖している。また、玄米タンク65の上面開口は蓋68で閉鎖している。
なお、他の構成は第1実施形態と同様であるため同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
次に、撹拌式精米機40の動作について説明する。
予め玄米タンク65に玄米を貯留しておく。ユーザが開始ボタン(図示せず)を操作すると、シャッター66が所要時間だけ開いて、設定量の玄米が処理槽45に投下される。
そして、駆動手段14により精米部材46が回転して玄米が撹拌されると共に、糠吸引装置19が作動する。
この精米部材46の回転による撹拌で、主に精米部材46の精米ブラシ51とドラム43の内周面(摩擦面43a)との間において玄米の表面に摩擦力が付与され、玄米から糠が剥離され、かつ、維管束を含む固い表面が程度に削られる。
詳しくは、精米部材46を回転させると撹拌翼46bの旋回に伴って、昇降閉鎖板44上の米が外周方向へ移動し、ドラム43に達した米は次々に押しやられてくる米の圧力で、ドラム43と精米ブラシ51の隙間の循環空間29bを通って精米されながら上昇し、上端に達した米は精米部材46の内側へ落下して循環を繰り返す。この際、掻き落とし部材24の摺接ブラシ32が、回転する精米部材46の側壁46aの内周面に摺接して米の貼り付きを防止している。
【0043】
詳細には、図6、図7において、外周面に精米ブラシ51を植毛した精米部材46の筒部46aの内側に、掻き落とし部材24の棒部31が、筐体41の略円筒部42の上面開口42aを閉鎖する閉鎖板47に固定された状態で設けられており、この棒部31は精米ブラシ51の回転に伴って筒部46a内でスピン回転運動の状態で流動する玄米を下方へ送る作用を有している。よって、精米部材46の内側精米部材46の下方に達した玄米は外周方向へ移動し、精米ブラシ51と筒部46a内周の摩擦面43aとの隙間の循環空間29bを、削られながら上方へ送られる。その際、循環空間29b内で玄米粒のスピン回転運動が発生し、玄米表面が均一に削られる。
【0044】
除去された糠は、糠吸引装置19による空気の流れと精米部材46の回転による遠心力とで、ドラム43の糠排出孔43aを通過して糠排出部53に排出され、糠収集袋55に溜められる。
設定された精米時間が経過すると、駆動装置14が停止した後、昇降装置58により昇降棒57を介して昇降閉鎖板44が下降し、搗精された米が米収容部59に落下する。
【0045】
図8(A)(B)は第2実施形態の変形例を示す。
本変形例は、掻き落とし部材24を着脱自在としている。
閉鎖板47には軸受63を介して回転軸61が貫通しており、回転軸61に対して回転自在に外嵌した状態で固定部材70を閉鎖板47の下面に固定している。固定部材70の筒部70aの外周面にはネジを刻設している。
一対の掻き落とし部材24は、中心に開口71aを有する連結材71で互いに連結して一体化している。この連結材71の開口71aを回転軸61に挿通し、ナット72を筒部70aに締結して固定している。
【0046】
次に、前記した精米機で精米される玄米の構造について説明する。
玄米100は、図9に示すように、下端に胚芽104があり、最外層から順に、果皮101(外果皮101a、中果皮101b、横細胞層101c、管細胞層101d)、種皮102、胚乳103(糊粉層103a、亜糊粉層103b、澱粉貯蔵組織103c)で構成されている。
【0047】
本発明者らの研究によれば、玄米100を栄養価が高く発芽玄米に最も適した状態に精米するには、γ−アミノ酪酸(通称ギャバ)のほか各種アミノ酸、ミネラル等の栄養価に富む胚芽104や糊粉層103a、亜糊粉層103bを残存させながらも、渋みや食感を損なう果皮101を取り除いて吸水性を高めた状態、即ち、糠除去率(=(排出された精米の重量)/(投入された玄米の重量))が約1.5〜3.5%、好ましくは2〜3%の状態にすることが良いことが分かった。
しかし、糊粉層103aと澱粉貯蔵組織103cの間の亜糊粉層103bは軟弱で剥がれ易いので、従来の精米機だと、亜糊粉層103bの一部とその外側(糊粉層103a、種皮102、果皮101)および胚芽104が剥ぎ取られ、栄養価が高い糊粉層103aや胚芽104が脱落し、亜糊粉層103bの一部も脱落する。また、前記好適な糠除去率とすべく3%減量となった時点で精米処理を停止したとしても、従来の精米機では、米粒の果皮101の除去が各々の米粒ごとに不均一であったり、胚芽104の脱落や米粒の割れ等が発生する。
そこで、本発明の撹拌式精米機10を使用すると、精米ブラシ27により玄米100の表面を柔軟に研磨するので、胚芽104が脱落することがなく、玄米100の表面は外層側から順に研磨され、亜糊粉層103bにおいて剥がれることなく安定的に搗精される。
【0048】
次に、前記第1実施形態の撹拌式精米機10を使用した実験例について説明する。
図10は、1合の玄米を処理槽12に投入し、精米部材13が回転する精米時間が30秒となるように制御装置21を設定し、精米部材13の回転時における精米ブラシ27の先端の周速度を変化させて実験を行った結果を示している。
図10より、周速度を9.5〜13.5m/s、好ましくは10.5〜12.0m/sすれば、糠除去率を1.5〜3.5%、好ましくは2〜3%にすることが出来ることが分かった。また、精米された後の米を観察すると、全粒がほぼ均一に搗精され、果皮層101は全て除去され、糊粉層103aはほぼ全てが残存し、胚芽104は約85%が残存していた。
【0049】
また、図11は、1合の玄米を処理槽12に投入し、精米部材13の回転時における精米ブラシ27の先端の周速度を12m/sに設定し、精米時間を変化させて実験を行った結果を示している。
図11より、精米時間を20〜35秒にすれば、糠除去率を1.5〜3.5%、好ましくは2〜3%にすることができることが分かった。
【0050】
次に、前記第2実施形態の撹拌式精米機40を使用した実験例について説明する。
下記表1は撹拌式精米機40を用いたときの維管束残量別比率%を示す。
下記表2は従来の撹拌式精米機を用いたときの維管束残量別比率%を示す。
下記表3は圧力式精米機を用いたときの維管束残量別比率%を示す。
用いた試験米(銘柄)は、(1)岡山コシヒカリ、(2)秋田あきたこまち、(3)岡山アケボノである。
図12(A)および(B)はそれぞれ玄米の側面図、および、維管束残量の測定目安を示す背面図である。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
前記表1〜3から、従来の撹拌式精米機、圧力式精米機を用いた場合よりも撹拌式精米機40を用いた場合の方が維管束残量別比率は向上していることが確認できた。
【0055】
また、下記表4は、撹拌式精米機40を用いたときの各銘柄ごとのとぎ率(%)、白度、胚芽残存率(%)、維管束残量別比率%を示す。
【表4】
【0056】
表4から何れの銘柄においても撹拌式精米機40が有効であり、食感・食味と栄養価のバランスが良好な米を提供できることが確認出来た。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態の撹拌式精米機の垂直断面図である。
【図2】精米部材の斜視図である。
【図3】撹拌式精米機の水平断面図である。
【図4】処理槽の斜視図である。
【図5】精米状況を説明する要部断面図である。
【図6】第2実施形態の撹拌式精米機の垂直断面図である。
【図7】精米部材の斜視図である。
【図8】(A)(B)は第2実施形態の変形例の要部断面図である。
【図9】米の断面構造を示す図面である。
【図10】糠除去率と周速度の関係を表すグラフである。
【図11】糠除去率と精米時間の関係を表すグラフである。
【図12】(A)(B)は玄米の側面図、および、維管束残量の測定目安を示す背面図である。
【図13】従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0058】
10、40 撹拌式精米機
11、41 筐体
12、45 処理槽
12c 摩擦面
13、46 精米部材
14 駆動装置
15、61 回転軸
17、54 糠収容室
18、55 糠収集袋
19 糠吸引装置
20、59 米収容器
21 制御装置
23 糠排出部
24 掻き落とし部材
25 米排出路
26 扉
27、51 精米ブラシ
29 循環空間
30 蓋
32 摺接ブラシ
43 ドラム
44 昇降閉鎖板
58 昇降装置
65 玄米タンク
66 シャッター
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌式精米機および該精米機で製造される搗精米に関し、詳しくは、玄米を撹拌することにより糊粉層及び胚芽を残存させた状態で表面から維管束や果皮を分離除去できる撹拌式精米機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より玄米を精白米に搗精する精米機等が種々提供されている。
例えば、特開2002−320865号公報に開示された精穀機(精米機)は、図13に示すように、側壁に多数の小孔が形成された除糠部を有する除糠ホッパー1と、外周にブラシ5を有し除糠ホッパー1内で回転する筒状の精米部材2と、除糠ホッパー1の底面を覆う回転円板3とを備え、精米部材2の内壁近傍にその内壁面を覆う筒状の内壁カバー4を固定配置している。精米部材2および回転円板3が回転すると、ホッパー1内に投入された米は図中矢印のように循環し、ブラシ5と除糠ホッパー1との間で精米している。
【0003】
ところで、精米機で精穀する時間、精米部材の回転数、一度に精穀する米の量などの種々の精米条件は機器毎に任意に決定されているのが現状である。例えば、精米部材の回転数を上げると早く精米でき効率が良いが、米粒が割れたり精米時の騒音が大きくなったりするため、回転数を低く抑えることが望まれる。一方、精米部材の回転数を下げると、精米時間が長くかかり効率が悪くなる。また、一度に多くの量の米を精米して効率を上げる場合には、精米部材を駆動するモータに高トルクが要求され、かつ、精米時間も長くなるため、この方法にも限界がある。
また、従来の精米機では、玄米に含まれる栄養価の高い胚芽や糊粉層が脱落したり、米粒の糠の除去が不均一となる場合も多い。
【0004】
また、近年、玄米の糊粉層には豊富な栄養成分が含まれていることが解明されてきている。この栄養成分を100%摂取するには玄米のまま食べる必要があるが、玄米表面には維管束を含む固い層があり、炊飯するにしても、圧力鍋を使用しなければならないなど、大変手間がかかる問題がある。また、この固い層は食味・食感を非常に悪くするものであり、いやな臭いもあり、人間の体が拒絶する物質も含まれているため、玄米のまま食べられることは非常に少ない。
【0005】
そこで、この維管束を含む固い層をある程度除去して分搗き米にすることで、精白米より多くの栄養成分を確保しつつ、食べやすくする方法をとる場合がある。しかしながら、この分搗き技術は難しく、現状の精米機では均一な分搗き米を作ることは困難となっている。よって、精白米に近い搗精度のものから玄米に近いものまでの混合物となっている。また、各玄米粒についても表面を均一に削ったものではなく、部分的にえぐり取ったような削り方しかできず、削られやすい部分だけ削られて、表皮の特に固い部分はなかなか除去できていない。
食味・食感を良くするために、固い部分を除去しようと、搗精度を上げる必要があるが、当然、栄養成分が豊富な糊粉層まで削り取られてしまい、栄養成分を多く残そうとすれば食味・食感を犠牲にしなければならない問題がある。
即ち、精白米になるまで玄米の表面を削る場合は、維管束について注目されることは少なく、糊粉層及び胚芽を残存させた状態で玄米表面から果皮が、所謂、糠として分離除去されてただけで、食味・食感と栄養価のバランスの良好な精米を得ることは容易ではない。
【0006】
本発明者らは、食味・食感と栄養価のバランスの良好な搗精米を得るべく、米の糊粉層を残しつつ表面にある維管束を含む固い層のみを除去する研究を進めた。
維管束は米の長手方向に走っている栄養分を運ぶ血管のようなもので、稜と側面の縦溝にあるため、食味・食感を悪くする部分であるにもかかわらず最も除去し難いものである。
よって、従来の圧力式撹拌式の精米機で分搗きを行った場合、側面の縦溝の維管束は比較的よく除去されたものであっても、完全除去率は50%程度となっている。
前記圧力式精米機は、筒状の金網の中で回転する金属製ロールで玄米を送り込み、圧力をかけて玄米同士および金網との擦り合いにより、玄米表面の糠層を削るタイプの精米機である。この玄米表面の糠層を削るタイプとしても維管束が除去しにくい理由は、玄米は図9に示すように断面略楕円形をしているため、カーブが大きい広い面は玄米同士および金網と接触しやすく削られやすいが、カーブが小さい稜の部分は米の流動が小さいことも作用して接触の機会が少ないため削られにくいことによる。さらに、維管束自体が固くて除去されにくいため、分搗きにすると、維管束がほとんど残ることとなる。
【0007】
前記特許文献1の精穀機とは異なるタイプの撹拌式精米機では、金網カゴの中で研削翼を回転させ、玄米同士および玄米と金網との擦り合い、また、玄米と研削翼との接触により、玄米表面の糠層を削っている。この撹拌式精米機は前記圧力式精米機に比べて米の流動が大きく、稜の部分に接触する機会も増えるので、前記圧力式精米機よりは維管束は除去されやすい。しかしながら、玄米表面の維管束をを均一に除去することは困難で、改良の余地がある。
【0008】
【特許文献1】特開2002−320865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、まず、玄米の糠層の除去率を最適範囲とすることができる精米機を提供することを主たる課題としている。さらに、玄米表面に糊粉層は残しながら維管束を含む硬い層を除去して搗精米を製造できる精米機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、筒状の内周面の少なくとも一部に摩擦面を有する処理槽と、
前記処理槽内に垂直方向に配置される筒状体からなり、該筒状体の外周面に精米ブラシを突出している精米部材と、
前記精米部材の駆動装置を備え、該駆動装置で前記精米ブラシの先端における周速度を9.5〜13.5m/sの範囲で回転させる設定としていることを特徴とする撹拌式精米機を提供している。
【0011】
前記構成のように、米粒に対して相対的に回転動作して接触研磨する精米ブラシの周速度を9.5〜13.5m/sにすることで、発芽玄米に最も適した米の状態、即ち、後述するように糠除去率が1.5〜3.5%、好ましくは2〜3%の状態にすることが可能となる。周速度を9.5m/s未満とすると、糠除去率が非常に小さくなり十分に精米できないからであり、周速度が13.5m/sを超えると、米粒への負荷が大きくなり割れ等が発生して搗精度合いが不均一となるからである。前記精米ブラシの先端における周速度は10.5〜12.0m/sとするとより好ましい。
【0012】
また、前記駆動装置を動作させる精米時間は1合あたり15〜35秒間に制御する制御装置を備えていることが好ましい。前記処理槽は円筒状とし、該処理槽内に配置する精米部材は、円筒状でもよいし、断面多角形の筒状でもよい。
【0013】
さらに、本発明の精米機においては、搗精米の製造に好適に用いられるように、処理槽の摩擦面と前記精米ブラシの先端間に幅3〜10mmの垂直方向に延在する空間を設け、該空間を玄米の循環空間とし、垂直方向の回転主軸を中心として水平方向に回転される前記精米ブラシに対して玄米を前記循環空間に垂直方向に循環させて、玄米にスピン回転を発生させ、該スピン回転により玄米粒表面の維管束を除去できる構成としている。
【0014】
前記のように、ブラシの移動方向と略直交方向から玄米を送り込むことで、玄米粒にスピン回転運動を発生させることができ、玄米がスピン回転しながら処理槽の摩擦面と回転する精米ブラシとの3〜10mmの隙間を通過させることで、玄米の表面に糊粉層を残して、維管束を略完全に効率良く除去できる。
前記処理槽の摩擦面と精米ブラシ先端間の距離を3〜10mmの範囲としているのは、3mm未満とすると、糊粉層も除去することなる一方、10mmよりも大きくすると維管束の完全除去率が低下するからである。この処理槽の摩擦面と精米ブラシ先端間の距離は好ましくは4〜6mm、特に5mmが好適である。
【0015】
本発明の精米機では、前記処理槽内に投入されて搗精される玄米のうち、維管束が完全に除去されていると共に糊粉層は残存している搗精米が70%以上とすることができるものとしている。
このように、本発明の精米機によれば、除去しにくい維管束を確実に除去できることより、維管束が完全に除去された搗精米を精米する玄米の内の70%以上とすることができ、更には、維管束の完全除去率は80〜90%とすることも可能である。
【0016】
さらに、本発明の精米機では、前記精米部材の内周面に摺接する掻き落とし部材を備えていることが好ましい。
前記構成とすると、一部の米が遠心力で精米部材の内周面に貼り付いたとしても、掻き落とし部材が即座にその米粒を取り去って落下させることが可能となる。したがって、一部の米粒が精米部材に貼り付いて一緒に回転し、米粒ごとに撹拌度合いが不均一になることがなく、個々の米粒ごとに糠除去率が変動するのを防止できる。なお、前記掻き落とし部材は着脱自在としていることがメンテナンス性の観点から好ましい。また、掻き落とし部材は垂直方向に対して傾斜していると、米粒が落下し易くなり好適である。
【0017】
また、前記精米部材の外径は前記精米部材の高さの2倍〜3倍としていると好ましい。
2倍以上としているのは、2倍未満であると遠心力に比べて精米部材の壁が高く、米粒が精米部材を乗り越えることができずに円滑に循環されないからである。また、3倍以下としているのは、3倍を超えると精米部材の側壁面積の割合が減少し、米粒との摩擦面積が少なくなると共に、装置の小型化が図れないからである。
【0018】
前記精米ブラシは樹脂製とし、線径が0.1〜0.3mmで、突出量が1mm〜6mmとしていると好ましい。
前記構成とすると、精米ブラシに腰があり且つ柔軟であるため、米粒の表面に適度な摩擦力を付与することができるので、糊粉層および胚芽を残存させた状態で果皮を取り除き、米粒に割れを発生させることもない。なお、精米ブラシの突出量は2〜5mmとするとより好ましい。また、精米ブラシはナイロン製とするとより好ましい。
【0019】
本発明では、さらに、前記構成の精米機で製造される、玄米から維管束が完全に除去されていると共に、糊粉層は残されていることを特徴とする搗精米を提供している。
さらに、前記精米機による製造に限定されず、玄米から維管束が完全に除去されていると共に糊粉層は残されていることを特徴とす搗精米を提供している。
さらにまた、前記搗精米からなる米飯を提供している。
【0020】
前記維管束が完全に除去されていると共に糊粉層は残されている搗精米は、栄養が豊富な糊粉層が残っていると共に、食味・食感を悪くする維管束が完全に除去されているため、食しやすい栄養化の高い米飯となる。
【発明の効果】
【0021】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、精米部材の精米ブラシの先端における周速度を9.5〜13.5m/sとすることで、発芽玄米に最も適した米の状態である糠除去率1.5〜3.5%の状態にすることできる。
【0022】
さらに、処理槽の摩擦面と精米ブラシの先端間の距離を3〜10mmに設定し、かつ、精米ブラシの回転方向(水平方向)と略直交方向の垂直方向の循環空間に玄米を送り込んでいるため、玄米粒はスピン回転され、玄米と精米ブラシとの接触の機会が増加すると共に小さいカーブの稜線も精米ブラシと接触し、該稜線に位置する維管束も確実に削ることができる。よって、糊粉層を残しながら、玄米表面の食味・食感を悪くする維管束の完全除去率を70%以上の状態にすることができる。よって、食感・食味と栄養価に優れた米を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5は第1実施形態の撹拌式精米機10を示す。
撹拌式精米機10は、図1に示すように、筐体11と、筐体11の上面側の凹部22に内嵌される処理槽12と、処理槽12内に回転自在に配置される精米部材13と、精米部材13を所定の速度で回転駆動する駆動装置(モータ)14と、駆動装置14の駆動時間を制御する制御装置21と、凹部22の開口を閉じる蓋30と、凹部22に連通した通気フィルターからなる糠収集袋18を設けた糠収容室17と、糠収容室17に連通する糠吸引装置19と、搗精された米を回収する米収容器20とを備えている。
【0024】
筐体11の凹部22は、図1および図3に示すように、円筒状の側壁22aと、底壁22bとを備え、側壁22aの一部には外方に膨出して糠収集袋18に連通する糠排出部23を形成していると共に、側壁22aの対向する他部には米収容器20へ導く米排出路25に連通する開口部22dを穿設している。開口部22dには閉鎖する扉26を開閉自在に取り付けている。側壁22aの上端には処理槽12を載置するための段差部22cを設けている。また、糠排出部23の所要位置には通気孔23aを穿設している。
【0025】
処理槽12は、図4に示すように、円筒状の側壁12aと、底壁12bとを備えている。側壁12aは、凹部22の糠排出部23と対向する一部に形成された糠排出孔12dと、開口部22dの扉26と接する他部に形成された米排出穴12eと、糠排出孔12dおよび米排出穴12e以外の内面側に形成された凹凸である摩擦面12cと、上端縁で外方に突出した鍔部12gとを備えている。
底壁12bは、図1および図3に示すように、糠排出部23と連通する部位に糠排出孔12fを備えている。糠排出孔12dの大きさは、糠が通過して米が通過しない大きさに設定している。側壁12aは糠排出部23以外の凹部22の内周面にほぼ密着している。
【0026】
精米部材13は、図1および図2に示すように、断面十六角形の筒状で外周面に精米ブラシ27を植毛した筒部13aと、筒部13aの下端縁より放射方向に対して傾斜した状態で間欠的に突出した支持脚部13cと、支持脚部13cを介して筒部13aに固定された円板座部13bと、円板座部13bの中心より上方に突出して内部に軸穴33を有する軸取付部13dと、円板座部13bの下面に放射方向に対して傾斜した状態で線状に植毛され処理槽12の底壁12bに接する(あるいは米粒が通過しない隙間をあけた)掃出ブラシ28とを備えている。なお、精米ブラシ27は筒部13aの外周面において角部以外の平面部分に植毛している。これは植毛作業を平面に対して行わせることで精米部材13の製造を容易にするためである。
【0027】
筒部13aと円板座部13bとの間に形成された空隙は米の空間29aとしている。
精米ブラシ27は、66ナイロン製とし、線径が0.1〜0.3mmで突出量Dが1〜6mmとしている。筒部13aの外径は、筒部13aの高さの2倍〜3倍としている。円板座部13bの外径は筒部13aの外径よりも大としている。円板座部13bの外径は処理槽12の内径よりやや小さく設定され(米が噛み込まない程度の微小隙間がある)、米は常に円板座部13bの上で撹拌される。なお、掃出ブラシ28の代わりにゴム板のような可撓性材料を設けてもよい。
【0028】
前記精米ブラシ27の先端と処理槽12の側壁12aの内周側の摩擦面12cとの間で垂直方向に延在する米の循環空間29bを設け、この空間29bの幅を3〜10mmとしている。前記垂直方向に延在する循環空間29bの下端は前記空間29aと連通すると共に上端は蓋30と精米部材13の筒部13aの上端との空間29cと連通し、前記上下空間29aと29cとが筒部13aの内部空間29dで連通し、前記空間29a、29b、29c、29dで米の循環空間29を形成している。
【0029】
蓋30の下面には、精米部材13の筒部13aの内周面に摺接する一対の掻き落とし部材24を下方に向けて垂直方向に対して傾斜した状態で突出している。掻き落とし部材24は、蓋30と接続される棒部31と、棒部31の外面より外方に突出する摺接ブラシ32とを備えている。また、蓋30は通気孔30aを有している。
筐体11の凹部22の底壁22bおよび処理槽12の底壁12bの中心には軸受16を介して回転軸15を貫通しており、該回転軸15を精米部材13の軸穴33に内嵌固定している。
【0030】
駆動装置14は、精米部材13の精米ブラシ27の先端における周速度が9.5〜13.5m/sとなるように回転軸15の回転速度を設定している。
制御装置21は、ユーザが開始ボタン(図示せず)を操作すると、駆動装置14を1合当たり15〜35秒間動作させて停止するようにタイマー制御する。
【0031】
次に、撹拌式精米機10の動作について説明する。
ユーザは、精米部材13内の空間に玄米を入れた状態で蓋30をして開始ボタン(図示せず)を操作すると、駆動手段14により精米部材13が周速度9.5〜13.5m/sで回転して玄米が撹拌されると共に糠吸引装置19が作動する。
この精米部材13の回転による撹拌で、主に精米部材13の精米ブラシ27と処理槽12の摩擦面12cとの間の循環空間29bにおいて玄米の表面に摩擦力が付与され、玄米から糠が剥離される。
【0032】
詳しくは、図5に示すように、精米部材13を回転させると、円板座部13b上の米は遠心力で循環空間29aを通過して外周方向へ移動し、処理槽12の側壁12aに達した米は次々に押しやられてくる米の圧力で、摩擦面12cと精米ブラシ27の隙間の循環空間29bを通って精米されながら上昇し、上端に達した米は循環空間29cを通って精米部材12の内側の循環空間29dへ落下して循環を繰り返す。
【0033】
前記循環空間29bで玄米から糠が剥離されると共に、垂直方向の循環空間29bに下方から垂直方向に上昇してくる玄米に対して精米ブラシ27が直交する水平方向に回転して摺接するため、玄米にはスピン回転することとなり、玄米の表面全体が内周側の精米ブラシ27と外周側の摩擦面12cと接触する。即ち、玄米の小さいカーブの稜線も精米ブラシ27および摩擦面12cと接触し、該稜線に位置する維管束も削ることとなる。
かつ、循環空間29bの幅を3〜10mmとしているため、玄米の表面がかなり強く精米ブラス27と摩擦面12cと接触することで、玄米の表面全体の維管束を含む固い層が削られることとなり、その結果、維管束を玄米の表面から略均一に除去することができる。
【0034】
この際、掻き落とし部材24の摺接ブラシ32が、回転する精米部材13の側壁13aの内周面に摺接するので、循環する一部の米が遠心力で精米部材13の側壁13aの内周面に貼り付いても即座に掻き落とすことができ、米粒ごとに循環度合いが不均一になるのを防止している。
【0035】
除去された糠(果皮)は、糠吸引装置19による空気の流れと精米部材13の回転による遠心力とで、糠排出孔12dを通過して糠排出部23に排出され、糠収集袋18に溜められる。また、除去された糠が処理槽12の底壁12b上に落ちたとしても、その糠は、精米部材13の回転に伴って円板座部13bの下面で線状に突出した掃出ブラシ28により外周方向に掃き出され、糠排出孔12fから糠収集袋18へと排出される。
最終的には、設定された精米時間(20〜35秒)が経過すると扉26が開き、処理槽12内の米は撹拌の遠心力で米排出穴12e→開口部22d→米排出路25の順に通過して米収容器20へ落下する。
【0036】
図6および図7は第2実施形態を示す。
第1実施形態との相違点は、精米部材46に円板座部を設けずに真下から米を取り出し可能な構造としている点である。
【0037】
本実施形態の撹拌式精米機40は、筐体41と、筐体41の中央の略円筒部42に内嵌設置され、内周面に摩擦面43aを有するドラム43と、ドラム43の下面開口を閉鎖する傘状の昇降閉鎖板44と、昇降閉鎖板44に固定された昇降棒57を上下させる昇降装置58と、ドラム43内に回転自在に配置される精米部材46と、略円筒部42に連通し通気フィルターからなる糠収集袋55を設けた糠収容室54と、糠収容室54に連通する糠吸引装置19と、ドラム43の下方に配置され米を回収する米収容器59とを備えている。
【0038】
なお、ドラム43の下面開口を昇降閉鎖板44で閉鎖して形成される凹部を処理槽45としている。筐体41の略円筒部42は、底壁がないこと以外は第1実施形態の凹部22の形状と同様である。また、ドラム43も、底壁および米排出穴がないこと以外は第1実施形態の処理槽12の形状と同様である。
【0039】
精米部材46は、図6および図7に示すように、外周面に精米ブラシ51を植毛した筒部46aと、筒部46aの下端縁より放射方向に対して傾斜した状態で突出した撹拌翼46bと、筒部46aの内周面に対して支持バー46cを介して固定されて内部に軸穴52を有する軸取付部46dとを備えている。精米ブラシ51は、66ナイロン製とし、線径が0.1〜0.3mmで突出量が1〜6mmとしている。筒部46aの外径は、筒部46aの高さの2倍〜3倍としている。また、第1実施形態と同様に、ドラム43の内周面の摩擦面43aと精米ブラシ先端との間に距離dが3〜10mmの米の循環空間を設けている。
【0040】
筐体41の略円筒部42の上面開口は閉鎖板47で閉鎖されており、閉鎖板47の下面には、精米部材46の円筒部46aの内周面に摺接する一対の掻き落とし部材24を下方に向けて垂直方向に対して傾斜した状態で突出している。また、駆動装置14と連繋された回転軸61は、閉鎖板47の中央を軸受63を介して貫通し、精米部材46の軸穴52に内嵌固定している。
【0041】
閉鎖板47の所要位置には、処理槽45と連通する開口47aを穿設しており、開口47aの上方には玄米タンク65を連続して設けている。玄米タンク65の下方の流路は駆動本体67により進退可能なシャッター66で閉鎖している。また、玄米タンク65の上面開口は蓋68で閉鎖している。
なお、他の構成は第1実施形態と同様であるため同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
次に、撹拌式精米機40の動作について説明する。
予め玄米タンク65に玄米を貯留しておく。ユーザが開始ボタン(図示せず)を操作すると、シャッター66が所要時間だけ開いて、設定量の玄米が処理槽45に投下される。
そして、駆動手段14により精米部材46が回転して玄米が撹拌されると共に、糠吸引装置19が作動する。
この精米部材46の回転による撹拌で、主に精米部材46の精米ブラシ51とドラム43の内周面(摩擦面43a)との間において玄米の表面に摩擦力が付与され、玄米から糠が剥離され、かつ、維管束を含む固い表面が程度に削られる。
詳しくは、精米部材46を回転させると撹拌翼46bの旋回に伴って、昇降閉鎖板44上の米が外周方向へ移動し、ドラム43に達した米は次々に押しやられてくる米の圧力で、ドラム43と精米ブラシ51の隙間の循環空間29bを通って精米されながら上昇し、上端に達した米は精米部材46の内側へ落下して循環を繰り返す。この際、掻き落とし部材24の摺接ブラシ32が、回転する精米部材46の側壁46aの内周面に摺接して米の貼り付きを防止している。
【0043】
詳細には、図6、図7において、外周面に精米ブラシ51を植毛した精米部材46の筒部46aの内側に、掻き落とし部材24の棒部31が、筐体41の略円筒部42の上面開口42aを閉鎖する閉鎖板47に固定された状態で設けられており、この棒部31は精米ブラシ51の回転に伴って筒部46a内でスピン回転運動の状態で流動する玄米を下方へ送る作用を有している。よって、精米部材46の内側精米部材46の下方に達した玄米は外周方向へ移動し、精米ブラシ51と筒部46a内周の摩擦面43aとの隙間の循環空間29bを、削られながら上方へ送られる。その際、循環空間29b内で玄米粒のスピン回転運動が発生し、玄米表面が均一に削られる。
【0044】
除去された糠は、糠吸引装置19による空気の流れと精米部材46の回転による遠心力とで、ドラム43の糠排出孔43aを通過して糠排出部53に排出され、糠収集袋55に溜められる。
設定された精米時間が経過すると、駆動装置14が停止した後、昇降装置58により昇降棒57を介して昇降閉鎖板44が下降し、搗精された米が米収容部59に落下する。
【0045】
図8(A)(B)は第2実施形態の変形例を示す。
本変形例は、掻き落とし部材24を着脱自在としている。
閉鎖板47には軸受63を介して回転軸61が貫通しており、回転軸61に対して回転自在に外嵌した状態で固定部材70を閉鎖板47の下面に固定している。固定部材70の筒部70aの外周面にはネジを刻設している。
一対の掻き落とし部材24は、中心に開口71aを有する連結材71で互いに連結して一体化している。この連結材71の開口71aを回転軸61に挿通し、ナット72を筒部70aに締結して固定している。
【0046】
次に、前記した精米機で精米される玄米の構造について説明する。
玄米100は、図9に示すように、下端に胚芽104があり、最外層から順に、果皮101(外果皮101a、中果皮101b、横細胞層101c、管細胞層101d)、種皮102、胚乳103(糊粉層103a、亜糊粉層103b、澱粉貯蔵組織103c)で構成されている。
【0047】
本発明者らの研究によれば、玄米100を栄養価が高く発芽玄米に最も適した状態に精米するには、γ−アミノ酪酸(通称ギャバ)のほか各種アミノ酸、ミネラル等の栄養価に富む胚芽104や糊粉層103a、亜糊粉層103bを残存させながらも、渋みや食感を損なう果皮101を取り除いて吸水性を高めた状態、即ち、糠除去率(=(排出された精米の重量)/(投入された玄米の重量))が約1.5〜3.5%、好ましくは2〜3%の状態にすることが良いことが分かった。
しかし、糊粉層103aと澱粉貯蔵組織103cの間の亜糊粉層103bは軟弱で剥がれ易いので、従来の精米機だと、亜糊粉層103bの一部とその外側(糊粉層103a、種皮102、果皮101)および胚芽104が剥ぎ取られ、栄養価が高い糊粉層103aや胚芽104が脱落し、亜糊粉層103bの一部も脱落する。また、前記好適な糠除去率とすべく3%減量となった時点で精米処理を停止したとしても、従来の精米機では、米粒の果皮101の除去が各々の米粒ごとに不均一であったり、胚芽104の脱落や米粒の割れ等が発生する。
そこで、本発明の撹拌式精米機10を使用すると、精米ブラシ27により玄米100の表面を柔軟に研磨するので、胚芽104が脱落することがなく、玄米100の表面は外層側から順に研磨され、亜糊粉層103bにおいて剥がれることなく安定的に搗精される。
【0048】
次に、前記第1実施形態の撹拌式精米機10を使用した実験例について説明する。
図10は、1合の玄米を処理槽12に投入し、精米部材13が回転する精米時間が30秒となるように制御装置21を設定し、精米部材13の回転時における精米ブラシ27の先端の周速度を変化させて実験を行った結果を示している。
図10より、周速度を9.5〜13.5m/s、好ましくは10.5〜12.0m/sすれば、糠除去率を1.5〜3.5%、好ましくは2〜3%にすることが出来ることが分かった。また、精米された後の米を観察すると、全粒がほぼ均一に搗精され、果皮層101は全て除去され、糊粉層103aはほぼ全てが残存し、胚芽104は約85%が残存していた。
【0049】
また、図11は、1合の玄米を処理槽12に投入し、精米部材13の回転時における精米ブラシ27の先端の周速度を12m/sに設定し、精米時間を変化させて実験を行った結果を示している。
図11より、精米時間を20〜35秒にすれば、糠除去率を1.5〜3.5%、好ましくは2〜3%にすることができることが分かった。
【0050】
次に、前記第2実施形態の撹拌式精米機40を使用した実験例について説明する。
下記表1は撹拌式精米機40を用いたときの維管束残量別比率%を示す。
下記表2は従来の撹拌式精米機を用いたときの維管束残量別比率%を示す。
下記表3は圧力式精米機を用いたときの維管束残量別比率%を示す。
用いた試験米(銘柄)は、(1)岡山コシヒカリ、(2)秋田あきたこまち、(3)岡山アケボノである。
図12(A)および(B)はそれぞれ玄米の側面図、および、維管束残量の測定目安を示す背面図である。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
前記表1〜3から、従来の撹拌式精米機、圧力式精米機を用いた場合よりも撹拌式精米機40を用いた場合の方が維管束残量別比率は向上していることが確認できた。
【0055】
また、下記表4は、撹拌式精米機40を用いたときの各銘柄ごとのとぎ率(%)、白度、胚芽残存率(%)、維管束残量別比率%を示す。
【表4】
【0056】
表4から何れの銘柄においても撹拌式精米機40が有効であり、食感・食味と栄養価のバランスが良好な米を提供できることが確認出来た。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態の撹拌式精米機の垂直断面図である。
【図2】精米部材の斜視図である。
【図3】撹拌式精米機の水平断面図である。
【図4】処理槽の斜視図である。
【図5】精米状況を説明する要部断面図である。
【図6】第2実施形態の撹拌式精米機の垂直断面図である。
【図7】精米部材の斜視図である。
【図8】(A)(B)は第2実施形態の変形例の要部断面図である。
【図9】米の断面構造を示す図面である。
【図10】糠除去率と周速度の関係を表すグラフである。
【図11】糠除去率と精米時間の関係を表すグラフである。
【図12】(A)(B)は玄米の側面図、および、維管束残量の測定目安を示す背面図である。
【図13】従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0058】
10、40 撹拌式精米機
11、41 筐体
12、45 処理槽
12c 摩擦面
13、46 精米部材
14 駆動装置
15、61 回転軸
17、54 糠収容室
18、55 糠収集袋
19 糠吸引装置
20、59 米収容器
21 制御装置
23 糠排出部
24 掻き落とし部材
25 米排出路
26 扉
27、51 精米ブラシ
29 循環空間
30 蓋
32 摺接ブラシ
43 ドラム
44 昇降閉鎖板
58 昇降装置
65 玄米タンク
66 シャッター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の内周面の少なくとも一部に摩擦面を有する処理槽と、
前記処理槽内に垂直方向に配置される筒状体からなり、該筒状体の外周面に精米ブラシを突出している精米部材と、
前記精米部材の駆動装置を備え、該駆動装置で前記精米ブラシの先端における周速度を9.5〜13.5m/sの範囲で回転させる設定としていることを特徴とする撹拌式精米機。
【請求項2】
前記処理槽の前記摩擦面と前記精米ブラシの先端間に幅3〜10mmの垂直方向に延在する空間を設け、該空間を玄米の循環空間とし、垂直方向の回転主軸を中心として水平方向に回転される前記精米ブラシに対して玄米を前記循環空間に垂直方向に循環させて玄米にスピン回転を発生させ、該スピン回転により玄米粒表面の維管束を除去できる構成としている請求項1に記載の撹拌式精米機。
【請求項3】
前記駆動装置を動作させる精米時間を1合当たり15〜35秒間に制御する制御装置を備えている請求項1または請求項2に記載の撹拌式精米機。
【請求項4】
前記精米部材の内周面に摺接する掻き落とし部材を備えている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の撹拌式精米機。
【請求項5】
前記精米部材の外径は、前記精米部材の高さの2倍〜3倍としている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の撹拌式精米機。
【請求項6】
前記精米ブラシは樹脂製とし、線径が0.1〜0.3mmで突出量が1mm〜6mmとしている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の撹拌式精米機。
【請求項7】
前記処理槽内に投入されて搗精される玄米のうち、維管束が完全に除去されていると共に糊粉層は残存している搗精米が70%以上とされる請求項2乃至請求項6に記載の撹拌式精米機。
【請求項8】
請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の撹拌式精米機で製造され、玄米から維管束が除去されていると共に糊粉層は残されていることを特徴とする搗精米。
【請求項9】
玄米から維管束が完全に除去されていると共に糊粉層は残されていることを特徴とする搗精米。
【請求項10】
請求項8または請求項9の搗精米を炊飯した米飯。
【請求項1】
筒状の内周面の少なくとも一部に摩擦面を有する処理槽と、
前記処理槽内に垂直方向に配置される筒状体からなり、該筒状体の外周面に精米ブラシを突出している精米部材と、
前記精米部材の駆動装置を備え、該駆動装置で前記精米ブラシの先端における周速度を9.5〜13.5m/sの範囲で回転させる設定としていることを特徴とする撹拌式精米機。
【請求項2】
前記処理槽の前記摩擦面と前記精米ブラシの先端間に幅3〜10mmの垂直方向に延在する空間を設け、該空間を玄米の循環空間とし、垂直方向の回転主軸を中心として水平方向に回転される前記精米ブラシに対して玄米を前記循環空間に垂直方向に循環させて玄米にスピン回転を発生させ、該スピン回転により玄米粒表面の維管束を除去できる構成としている請求項1に記載の撹拌式精米機。
【請求項3】
前記駆動装置を動作させる精米時間を1合当たり15〜35秒間に制御する制御装置を備えている請求項1または請求項2に記載の撹拌式精米機。
【請求項4】
前記精米部材の内周面に摺接する掻き落とし部材を備えている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の撹拌式精米機。
【請求項5】
前記精米部材の外径は、前記精米部材の高さの2倍〜3倍としている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の撹拌式精米機。
【請求項6】
前記精米ブラシは樹脂製とし、線径が0.1〜0.3mmで突出量が1mm〜6mmとしている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の撹拌式精米機。
【請求項7】
前記処理槽内に投入されて搗精される玄米のうち、維管束が完全に除去されていると共に糊粉層は残存している搗精米が70%以上とされる請求項2乃至請求項6に記載の撹拌式精米機。
【請求項8】
請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の撹拌式精米機で製造され、玄米から維管束が除去されていると共に糊粉層は残されていることを特徴とする搗精米。
【請求項9】
玄米から維管束が完全に除去されていると共に糊粉層は残されていることを特徴とする搗精米。
【請求項10】
請求項8または請求項9の搗精米を炊飯した米飯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−205150(P2006−205150A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279047(P2005−279047)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】
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