説明

操作表示装置、表示制御プログラム、操作表示装置を含む画像形成装置。

【課題】ユーザが画面に一部表示されているオブジェクトを操作した際に、その不本意な実行処理を回避することができる、操作表示装置、表示制御プログラム、操作表示装置を備えた画像処理装置を提供する。
【解決手段】
全体が表示されたオブジェクトが操作されたときは、その操作をそのオブジェクトに割り当てられている機能の実行指示として認識し、その情報を出力する。前記オブジェクトがその一部のみ表示された状態で操作されたときは、前記機能の実行指示とは認識せずに、そのオブジェクト全体が前記画面に表示されるようにスクロールさせる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール操作を行う操作表示装置、表示制御プログラム及び、操作表示装置を含む画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合機等の操作表示部で用いられるGUI(Graphical User Interface)の画面上には、アイコンや、ボタンなどの操作ボタンが複数存在し、それら全てが表示画面上に収まりきらない場合がある。その際、一部または全体の操作ボタンの形状を変更したり、縮小することで、表示画面上に全ての操作ボタンを表示する方法もあるが、操作ボタンの数が多ければ多いほど、一つあたりの操作ボタンの表示は小さくなってしまうので、操作ボタンの識別、操作が難しくなってしまう。
【0003】
そこで、操作ボタンの大きさや形状を変化させなくとも、フリックによる操作やスクロールバー等を使用し、表示領域を移動させることによって表示画面上に収まりきらなかった操作ボタンを確認するような方法が採用されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−085451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、表示領域を移動させた際に、ある操作ボタンの一部分が表示画面からはみ出してしまい、その操作ボタンの機能が識別不可能な状態で表示画面のスクロールが停止する可能性があり、そのとき、ユーザがその操作ボタンの機能が何かわからないまま選択、操作すると、その操作ボタンに割り当てられた機能がわからないまま実行されてしまい、その結果ユーザが意図した機能とは異なる機能が実行されてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、一部分しか表示されていないボタンを操作した際の不本意な処理の実行を回避することができる操作表示装置、表示制御プログラム、操作表示装置を含む画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0008】
[1]それぞれに所定の処理が割り当てられた複数のオブジェクトを表示する表示部と、前記表示部の画面に表示されたオブジェクトへの操作を受け付ける操作部とを備える操作表示装置であって、
前記表示部に表示されたオブジェクトが操作されたとき、当該操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されているか否かを判断する判断手段と、
前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されている場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御を行い、前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されていない場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御は行わずに、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されるようにスクロールさせる制御を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする操作表示装置。
【0009】
上記[1]および下記[6]に係る発明では、表示部に表示されているオブジェクトが表示部の画面(表示領域)からはみ出してしまい、一部しか表示されない場合がある。この一部が表示されているオブジェクトに対して操作が行われたとき、そのオブジェクトに割り当てられている処理は実行せずに、そのオブジェクトの全体が表示されるようにスクロール処理をする。これにより、一部が表示されているオブジェクトを操作した際の不本意な実行処理を回避することができる。不本意な実行処理とは、例えば、一部が表示されているオブジェクトの機能内容が識別不可能な場合に、誤ってそのオブジェクトを操作してしまった時の実行処理等である。オブジェクトは表示部の表示領域の上下左右、どの方向にはみ出してもよい。
【0010】
[2]前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域とは、当該操作されたオブジェクトの全領域であり、
前記判断手段は、前記表示部の画面に表示されたオブジェクトが操作されたとき、当該操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されているか否かを判断し、
前記制御部は、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されている場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御を行い、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されていない場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御は行わずに、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されるようにスクロールさせる制御を行う
ことを特徴とする[1]に記載の操作表示装置。
【0011】
上記[2]および下記[7]に係る発明では、表示部の画面(表示領域)上からオブジェクトが一部でもはみ出していれば、この一部はみ出しているオブジェクトに対して操作が行われたとき、このオブジェクトに割り当てられている処理を実行せずに、そのオブジェクトの全体が表示されるようにスクロール処理をする。
【0012】
[3]前記オブジェクトは、当該オブジェクトに割り当てられた前記所定の処理に対応する識別情報を含み、
前記所定の割合は、前記オブジェクトを表示したときに前記識別情報をユーザが認識できる割合である
ことを特徴とする[1]または[2]のいずれか1つに記載の操作表示装置。
【0013】
上記[3]および下記[8]に係る発明では、オブジェクトが表示部の画面(表示領域)から一部はみ出してしまっていても、そのはみ出している量が少なければ、オブジェクト全体が表示されているときと同じ処理を行う。これにより無駄な操作回数を軽減することができる。識別情報をユーザが認識できる割合とは、例えばテキストの端から2文字だけ目視できればユーザが残りの文字を推定することが可能ならば、2文字が識別可能な割合に設定すればよい。識別情報が色であるなら、その色を識別できるだけの範囲が確保される割合である。識別情報は、テキスト、イラスト、その他様々な形式で表示される。
【0014】
[4]前記操作表示装置は、前記複数のオブジェクトの一部を前記表示部に表示させる第1の表示モードと、前記複数のオブジェクトの全てを前記表示部に表示する第2の表示モードとを備え、前記第1の表示モードと前記第2の表示モードとを切り替え可能である
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の操作表示装置。
【0015】
上記[4]および下記[9]に係る発明では、表示制御部は、同時に表示されるべきオブジェクトを、表示部の画面(表示領域)上に全て表示することで、スクロール処理と、オブジェクトが所定の割合以上表示されているか否かを判断する処理を行わないモードと、スクロールしなくては全てのオブジェクトの機能内容は識別できないように表示し、オブジェクトが所定の割合以上表示されているか否かを判断するモードの切り替えができる。これにより前者のモードでは、スクロールと前記判断の処理の負担を軽減できる。
【0016】
[5][1]乃至[4]のいずれか1つに記載の操作表示装置を備え、
前記操作表示装置からの実行指示に基づいて動作する
ことを特徴とする画像形成装置。
【0017】
[6]それぞれに所定の処理が割り当てられた複数のオブジェクトを表示する表示部と、前記表示部の画面に表示されたオブジェクトへの操作を受け付ける操作部と、
を備える操作表示装置に、
前記表示部に表示されたオブジェクトが操作されたとき、当該操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されているか否かを判断する判断ステップと、
前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されている場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御を行い、前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されていない場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御は行わずに、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されるようにスクロールさせる制御を行う制御ステップとを実行させる
ことを特徴とする表示制御プログラム。
【0018】
[7]前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域とは、当該操作されたオブジェクトの全領域であり、
前記判断ステップにおいては、前記表示部の画面に表示されたオブジェクトが操作されたとき、当該操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されているか否かを判断し、
前記制御ステップにおいては、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されている場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御を行い、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されていない場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御は行わずに、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されるようにスクロールさせる制御を行う
ことを特徴とする[6]に記載の表示制御プログラム。
【0019】
[8]前記オブジェクトは、当該オブジェクトに割り当てられた前記所定の処理に対応する識別情報を含み、
前記所定の割合は、前記オブジェクトを表示したときに前記識別情報をユーザが認識できる割合である
ことを特徴とする[6]または[7]のいずれか1つに記載の表示制御プログラム。
【0020】
[9]前記操作表示装置は、前記複数のオブジェクトの一部を前記表示部に表示させる第1の表示モードと、前記複数のオブジェクトの全てを前記表示部に表示する第2の表示モードとを備え、前記操作表示装置に、前記第1の表示モードと前記第2の表示モードとを切り替えるステップを更に実行させる
ことを特徴とする[6]乃至[8]のいずれか1つに記載の表示制御プログラム。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る操作表示装置、画像形成装置、表示制御プログラムによれば、画面の端に一部分しか表示されていないボタンを操作した際の不本意な処理の実行を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る操作表示装置としての操作表示部を備えた画像形成装置の概観側面と、操作表示部の拡大正面とを示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る操作表示部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】スクロールを示す説明図である。
【図5】図4のボタンの一部を平面空間上に、グリッド状に配置した説明図である。
【図6】画面表示領域が斜めにスクロールすることを示す説明図である。
【図7】ボタン内に存在するテキスト描画領域を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る操作表示装置の中の動作の流れを示す流れ図である。
【図9】スライドバーコントロールの場合について示す説明図である。
【図10】通常表示モードを示す説明図である。
【図11】拡大表示モードを示す説明図である。
【図12】アイコンと、表を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る操作表示装置としての操作表示部50を備えた画像形成装置10の概観側面と、操作表示部50の拡大正面とを示している。
【0025】
画像形成装置10は、原稿を光学的に読み取ってその複製画像を記録紙に印刷するコピージョブ、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したり外部端末へネットワークを通じて送信したりするスキャンジョブ、パーソナルコンピュータなどの端末装置から受信した印刷データに係る画像を記録紙に印刷して出力するプリントジョブ、ファクシミリ送受信を行うFAXジョブなどのジョブを実行する機能を備えた、所謂、複合機(MFP)である。操作表示部50の詳細は後述する。
【0026】
図2は、画像形成装置10の概略構成を示すブロック図である。画像形成装置10は、当該画像形成装置10の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)11とこのCPU11に接続されたROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、不揮発メモリ14と、プリンタ部15と、画像処理部16と、スキャナ部17と、自動原稿搬送部18と、ファクシミリ通信部19と、ネットワークI/F部(Interface)20と、本発明の操作表示装置としての操作表示部50とを備えている。
【0027】
CPU11はOS(Operating System)プログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどが実行される。ROM12には各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU11が処理を実行することでジョブの実行など画像形成装置10の各機能が実現される。RAM13はCPU11がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像データを格納する画像メモリなどとして使用される。
【0028】
不揮発メモリ14は、電源がオフにされても記憶が保持できる書き換え可能なメモリ(フラッシュメモリ)である。不揮発メモリ14には、装置固有の情報や各種の設定情報、OSプログラムや各種アプリケーションプログラムなどが保存される。
【0029】
プリンタ部15は、画像データに応じた画像を記録紙上に画像形成する機能を果たす。ここでは、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、レーザーユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置等とを有し、電子写真プロセスによって画像形成を行う、所謂、レーザープリンタとして構成されている。画像形成は、インクジェット方式や、他の方式でもかまわない。
【0030】
画像処理部16は、画像の拡大縮小、回転などの処理のほか、印刷データをイメージデータに変換するラスタライズ処理、画像データの圧縮、伸張処理を行っている。
【0031】
スキャナ部17は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。スキャナ部17は、たとえば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動手段と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学経路、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0032】
自動原稿搬送部18(ADF)は、原稿給紙トレイにセットされた原稿を、1枚ずつスキャナ部17の読取位置まで運搬し、読み取りが完了した原稿を原稿排出トレイに排出する。
【0033】
ファクシミリ通信部19は、ファクシミリ送信および受信に係る動作を制御する。
【0034】
ネットワークI/F部20は、LAN(Local Area Network)などのネットワークを通じて接続されている他の外部装置などと通信を行う。
【0035】
図3は、操作表示部50の概略構成を示すブロック図である。
【0036】
操作表示部50は当該操作表示部50の動作を統括するサブCPU(Sub Central Processing Unit)51と、このサブCPU51に接続されたROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53と、不揮発メモリ54と、操作部55と、表示処理部56と、表示部57で構成される。操作表示部50は、ユーザから受けた操作に応じて実行指示を認識し、その情報をCPU11に送る。
【0037】
ROM52には操作表示部50の動作に関わるプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってサブCPU51が処理を実行することで操作表示部50の各機能が実現される。RAM53はサブCPU51がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや表示データを格納する表示用メモリなどとして使用される。
【0038】
不揮発メモリ54は電源がオフされても記憶内容が破壊されないメモリ(フラッシュメモリ)であり、サブCPU51が処理に用いる設定値などが記憶されている。
【0039】
表示部57は液晶ディスプレイ(LCD…Liquid Crystal Display)などで構成され、各種の操作画面、設定画面などを表示する機能を果たす。操作部55は、押下された座標位置を検出したり、表示部57の表示領域(画面)73上に触れた指やペンをスライドすることで行うフリック等の操作を行うことができるタッチパネルを有し、そのほかテンキーや文字入力キー、スタートキーなどの操作キー72を備えており、ユーザからジョブの投入や設定など各種の操作を受け付ける機能を果たす。図1では、表示部57の表示領域73に、所定の処理が割り当てられたオブジェクトとしてのボタンと、今現在表示しているページが何ページ目かを表示するページインジケータ71が表示される。所定の処理とは、例えば印刷に関わる画面からFAXに関わる画面に移行するような画面変移であったり、用紙サイズの設定など、設定を変更する処理であったり、印刷指示などの実行指示を送るような処理である。
【0040】
表示処理部56は、表示部57の表示領域73にボタンをスクロール可能に表示する。図4の(A)のように平面空間上に9列2行に配置されたボタンを表示する場合を例に説明する。この9行2列のボタン全体は表示領域73に一度に収まらない。図4においては表示領域73を破線の枠で示している。実際には、9行2列のボタンのうち表示領域73に表示される部分がスクロールして移動するが、図4では便宜上、9行2列のボタンを固定し、表示領域73が移動するものとして説明する。図4(A)は、左右にスクロールすることで表示領域73に表示される範囲が移動することを示している。この例では表示領域73に一度に完全に表示可能なボタンの数は3列2行である。図4(B)は実際に表示領域73に表示されている部分のボタンだけを図示し、表示されない部分はグレー色でマスクしてある。
【0041】
本実施の形態ではページという概念を用い、表示領域に一度に完全に表示可能な3列2行分のボタンのひとまとまりを1ページという。図4(A)では9列2行18個分のボタンが存在するので合計3ページのページが作れる。また図4(A)では2ページ目のボタンに相当する(D,E,F,4,5,6)のボタンが表示領域73に表示されている。図4(A)の状態で画面を左方向にスクロール移動させたときは、図4(C)のように(G,H,I,7,8,9)のボタンが表示領域73内に完全に表示されることになる。なお、本実施の形態はページという概念を用いた例であるが、ページという概念はなくても良い。
【0042】
図4(B)を参照して、表示領域73の左右の端部に隣り合っているボタンの一部分を表示している。これは現在表示中のボタン以外に更にボタンが存在し、スクロール可能であることを示唆するためのものである。本例の図4(B)では2ページ目の左に1ページ目、右に3ページ目が存在することを示唆するために、隣にある(C,G,3,7)のボタンの一部を故意に表示している。
【0043】
このように故意に隣にあるボタンの一部を表示している状態で、ユーザが部分的に見えている[G]や[7],[C],[3]のボタンをタッチして押してしまった場合、その各々のボタンに割り当てられた機能(例えば画面遷移)を実行するのが通常である。しかし、部分的に見えているボタンをユーザがどのような機能のボタンなのか認識していない状態でタッチして勝手にそれに割り当てられた機能が実行されても困る。そこで、部分的に表示しているボタンが押下されたときは、本来割り当てられている機能は実行せずに、押下されたボタンの全体を表示するようにスクロール制御を行う。この例では図4(A)で[G]のボタンを押下した時は、図4の(C)の位置にスクロールする。
【0044】
表示領域73の端にボタンの一部が表示されていれば、現在表示中のボタン以外に更にボタンが存在し、スクロール可能であることがわかるが、表示されていないとスクロール可能な方向にまだボタンが存在するかがわからない。そこで、現在表示しているボタンが、配列されているボタンの中の先頭や末尾でない場合(隣のボタンが存在する場合)には、必ず、表示領域73の端に隣のボタンの一部が表示されるように一定の間隔でボタンを配置することが好ましい。
【0045】
図5は、一定間隔の基準となる格子状のグリッド線75に合わせてボタンをグリッド状に配置したときの例である。この場合[C]や[3],[G],[7]のボタンは表示領域73の端に部分的に表示されている。この状態に対して、スクロールの各停止位置にて表示領域73がグリッド線75の格子単位に移動するようにする。こうすれば、一部表示されたボタンが表示領域73の端にあれば、その一部表示されたボタンのある方向へスクロール可能なことが保障され、表示領域73の端に一部表示されたボタンがなければ、その方向へスクロールできないことの判別がつく。なお座標位置76は、ボタンの基準座標位置を示している。
【0046】
スクロール方向は左右だけに限定せず、上下、斜め方向でもよい。例えば図6に示すように9列4行で仮想的に平面空間にボタンを配置している画面を考える。図6の破線で示す矩形領域60内の部分は、現時点で表示部57の表示領域73に表示されている部分である。この状態では、ユーザがたとえば表示領域73(図中の矩形部分60)の左下の隅に部分的に表示されている[3]のボタンを押したとすると、[3]の本来の機能(例えば画面遷移)は実行せずに、画面をスクロールさせ、[3]のボタン全体が表示されるように制御する。図中の矩形領域61は、[3]のボタン全体が表示されるようにスクロールした後に表示部分を示している。
【0047】
また、表示処理部56はボタンの表示割合によって制御を変えてもよい。すなわち、ボタンが部分的に表示されていても、そのボタンに表示されている機能の識別情報をユーザが認識できるくらい表示されている場合は本来の機能を実行するように制御する。このように制御する動作モードを割合表示実行モードと呼ぶものとする。図7は表示領域73の右端に一部分表示されているボタンについて、ボタンのテキスト(識別情報)が見えないくらい画面外81に出てしまったボタンの例(A)と、部分的に表示されているが、ボタンのテキストが読めるボタンの例(B)を図示している。例えば図7(B)に図示したようにテキスト描画領域80という領域があるとする。テキスト描画領域80はボタンの識別情報が表示されている領域である。本例では、テキスト描画領域80はボタンの中央に設定されている。図7(B)では、ボタンの幅82(横方向長さ)に対してテキスト描画領域80と設定されている部分の幅84はボタンの幅82の60%の長さである。
【0048】
図7(A)ではボタンの幅82(横方向長さ)に対してボタンの表示されている部分の幅の割合83aは20%である。この場合、前記のようにボタン中央部分の60%の幅がテキスト領域として設定されているので、ボタンの端から20%の幅の部分が表示されていても、ボタンの識別情報は確認できない。この表示状態だと、このボタンをユーザが押下したとき、表示処理部56はこのボタンに割り当てられている機能の実行指示と認識せず、このボタンの全体が見えるようにスクロール処理させる。また本例では、ボタンの表示されている部分の幅の割合が全体の20%以上であっても80%未満の場合は全てのテキストが表示されている保証はないので、幅の割合が20%の場合と同じく、ボタンの識別情報が確認できない場合として扱う。
【0049】
図7(B)ではボタンの幅82に対して表示されている部分の幅83bの割合は80%である。この場合、前述したテキスト描画領域80の設定なら、必ずテキスト全体が表示されることが保証されるので、この状態でユーザがボタンを押下したときは、本来このボタンに割り当てられた機能の実行指示として処理してもよい。割合表示実行モードではテキスト描画領域80の表示割合で前記のどちらの処理をするかを判断する。この表示割合は、機能ボタンの縦横方向それぞれに対してのものであってもよい。またテキストが全て見える割合でもよいし、ユーザが設定できる任意の割合であって、例えばテキスト描画領域80内のテキストの端から2文字だけ目視できればユーザが残りの文字を推定することが可能ならば、テキスト描画領域80内のテキストの端から2文字が識別可能な割合に設定すればよい。上記の処理を行う割合表示実行モードは環境設定等の設定やスイッチで切り替えるようにしてもよい。
【0050】
次に、操作表示装置に表示されたボタンが押下されたときの動作について詳細を説明する。ここでは、割合表示実行モードを有効にするか否かを管理者などが予め設定しているものとする。
【0051】
図8は操作表示部50の制御フローチャートである。サブCPU51は、ROM52に記憶されたプログラムに基づいて図8のフローチャートに示す処理を実行する。表示部57の表示領域73に表示されているボタンが押下された時に、操作表示部50は動作を開始する(ステップS201)。
【0052】
まず、管理者等により割合表示実行モードが「有効」に設定されているか否かを判断し(ステップS202)、割合表示実行モードが有効になっていなければ(ステップS202;No)、ステップS201で押下されたボタンの一部が表示部57の表示領域73からはみ出しているか否かを調べる(ステップS207)。はみ出していれば、つまり押下されたボタンのうちで表示領域73に表示されている部分の割合(表示割合)Rが「R<1」ならば(ステップS207;Yes)、押下されたボタン全体を表示するようにスクロール制御する(ステップS208)。これにより機能内容が識別不可能なボタンの不本意な実行処理を回避することができる。ボタン全体が表示されていれば、つまりボタンの表示割合Rが「R=1」ならば(ステップS207;No)、その割り当てられた機能の実行指示と認識し、その情報をCPU11に送る(ステップS209)。
【0053】
割合表示実行モードになっていれば(ステップS202;Yes)、まず、実行割合Pの値を取得する(ステップS203)。実行割合Pとはその割合以上ボタンが表示されているときに通常の機能を実行するように設定された割合である。実行割合Pは、いわゆるユーザが部分的に見えているボタンがどのような機能のボタンなのかを認識することが可能な表示割合であって、環境設定などで設定できるようにしてもよい。その後、ステップS201で押下されたボタンの表示割合Rが実行割合P以上か否かを判断し(ステップS204)、少なければ、つまり「R≧P」でなければ(ステップS204;No)、押下されたボタン全体を表示するようにスクロール制御する(ステップS205)。これにより機能内容が識別不可能なボタンの不本意な実行処理を回避することができる。S204で、ボタンの表示割合Rが実行割合P以上ならば、つまり「R≧P」ならば(ステップS204;Yes)、そのボタンに割り当てられた機能を実行する(ステップS206)。これにより、ボタンが一部はみ出してしまっていても、その機能を認識できるものについては、無駄な操作回数を軽減することができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
本発明の実施の形態では、機能が識別不能なボタンの不本意な実行処理を回避していたが、これはボタン以外のコントロールにも適用できる。例えばスライダーバーコントロールだと、ゲージ部分が形態を変えた1つのボタンとして応用できる。図9(A)を参照して、スライダーバーコントロールは、連続的な数値(1から100までの)についての設定を受け付けるゲージ90部分に対してタッチやクリックなどの操作を行うとその位置につまみが移動し、つまみが移動した先(タッチされた数値)の数値が設定されるものである。図9(A)には表示部57の表示領域73内にボタン93、94、95とスライダーバーコントロールが表示されている。同図(A)では、スライダーバーコントロールは一部が表示されている。スライダーバーコントロールのゲージ部分90上の位置91をクリックすると、通常の動作通りであればスライダーバーのつまみ92がクリックした位置91に移動する。ユーザが本当はスライダーバーのつまみ92の位置を知りたかったとすると、勝手につまみ92が移動されても困るので、一部が表示されている状態の時にスライダーバーをタッチしたときは図9(B)のようにスライダーバー全体を表示するようにスクロール制御する。
【0056】
表示部57の表示領域にボタンを表示する際の表示モードを、図10のように、同時に表示されるべき複数のボタンを、スクロールする必要がないように画面上に全て表示するモードと、図11のようにスクロールなしでは全ての機能ボタンの機能内容は識別できないように表示するモードとで切り替えができてもよい。前者のモードでは、ボタンの一部がはみ出す場合があり得ないので、スクロール処理と、ボタンが全体を表示しているか否かを判断する処理を行わない。後者のモードでは、スクロール処理と操作ボタンが全体を表示しているか否かを判断する処理を行う。
【0057】
例えば図10の表示モードを通常表示モード、図11の表示モードを拡大表示モードとし、通常表示モードから拡大表示モードに切り替えると、表示されているボタンや、文字列は通常表示モードに比べて大きく表示される。このとき、通常表示モードで表示領域73内に表示していたボタンが、拡大表示モードでは表示領域73内に収まりきらず、一部がはみ出してしまう。これらのはみ出して表示領域73に表示できなくなったボタンはスクロール操作(例えばフリック等)でスクロールして表示可能である。しかし、スクロールさせた際に、ある操作ボタンの一部分が表示領域73からはみ出してしまい、そのボタンの機能が識別不可能な状態でスクロールが停止する場合がある。
【0058】
例えば図11は表示領域73の下部に、ボタンが一部表示される位置でスクロールが停止した状態を示している。この時、これらの下部に一部表示されたいずれかのボタンを押下すると、押下したボタンに割り当てられている機能は実行せずに、そのボタンの全体を表示するようスクロール制御を行う。このように、表示モードの切り替えを行うことで、通常表示モード時には、ボタンの全体が表示されているか否かの判断や、スクロールによる処理の負担を軽減することができる。
【0059】
なお、本発明で言うオブジェクトとは、操作を受け付ける任意の表示物である。オブジェクトには、所定の処理が割り当てられている。割り当てる処理は任意でよいが、たとえば、画面変移や設定の変更、ジョブ実行指示等を行う処理が割り当てられる。本実施の形態で示したボタンは、オブジェクトの一種である。例えば図12には、PC(パーソナルコンピュータ)で表示されるようなアイコン96と表97があるが、これらもオブジェクトの一種である。アイコン96はイラストとその下のテキストで構成され、実際には表示されていないが、周りを囲んでいる破線内の範囲で操作を受け付ける。アイコン96の場合、割合表示実行モードの処理判断基準となるテキスト描画領域に該当する部分は、イラストとテキストの両方を含めた領域であってもよいし、イラストが機能を識別する機能を果たしていないときは(汎用性の高いイラストなど)テキスト部分のみであってもよい。表97では、その各マス目の全てに操作を受け付けるようにしてもよいし、斜線部分を持つマス目だけが操作を受け付けるようにしてもよい。
【0060】
本発明の実施の形態では、ボタンの機能の識別情報を、テキスト形式で表示していたが、テキスト描画領域に表示されるボタンの識別情報は、テキストに限らず、色彩、イラスト等、他の形式であってもかまわない。
【0061】
本発明の実施の形態では、ボタンの操作方法は、表示領域上のボタンをタッチすることだったが、操作方法はこれに限定しない。例えば、テンキーなどの操作キーや、マウスなどを利用したポインターによって選択、操作してもよい。
【0062】
実施の形態では、画像形成装置10として複合機を例に説明したが、複写機やプリンタなどの、他の装置であってもかまわないし、操作表示装置単体であってもよい。また、操作表示装置に同様の機能を果たさせる表示制御プログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…画像形成装置(MFP)
11…CPU
12…ROM
13…RAM
14…不揮発メモリ
15…プリンタ部
16…画像処理部
17…スキャナ部
18…自動原稿搬送部
19…ファクシミリ通信部
20…ネットワークI/F部
50…操作表示部
51…サブCPU
52…操作表示部50のROM
53…操作表示部50のRAM
54…操作表示部50の不揮発メモリ
55…操作部
56…表示処理部
57…表示部
60…移動前の表示部分
61…移動後の表示部分
71…ページインジケータ
72…操作キー
73…表示部の表示領域
74…ボタン
75…グリッド線
76…座標位置
80…テキスト描画領域
81…画面外
82…ボタンの幅
83a…図7(A)で表示している部分のボタンの幅
83b…図7(B)で表示している部分のボタンの幅
84…テキスト描画領域の幅
90…スライダーバーコントロールのゲージ部分
91…タッチした位置
92…つまみ
93、94、95…ボタン
96…アイコン
97…表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに所定の処理が割り当てられた複数のオブジェクトを表示する表示部と、前記表示部の画面に表示されたオブジェクトへの操作を受け付ける操作部とを備える操作表示装置であって、
前記表示部に表示されたオブジェクトが操作されたとき、当該操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されているか否かを判断する判断手段と、
前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されている場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御を行い、前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されていない場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御は行わずに、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されるようにスクロールさせる制御を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする操作表示装置。
【請求項2】
前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域とは、当該操作されたオブジェクトの全領域であり、
前記判断手段は、前記表示部の画面に表示されたオブジェクトが操作されたとき、当該操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されているか否かを判断し
前記制御部は、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されている場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御を行い、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されていない場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御は行わずに、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されるようにスクロールさせる制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の操作表示装置。
【請求項3】
前記オブジェクトは、当該オブジェクトに割り当てられた前記所定の処理に対応する識別情報を含み、
前記所定の割合は、前記オブジェクトを表示したときに前記識別情報をユーザが認識できる割合である
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載の操作表示装置。
【請求項4】
前記操作表示装置は、前記複数のオブジェクトの一部を前記表示部に表示させる第1の表示モードと、前記複数のオブジェクトの全てを前記表示部に表示する第2の表示モードとを備え、前記第1の表示モードと前記第2の表示モードとを切り替え可能である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の操作表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の操作表示装置を備え、
前記操作表示装置からの実行指示に基づいて動作する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
それぞれに所定の処理が割り当てられた複数のオブジェクトを表示する表示部と、前記表示部の画面に表示されたオブジェクトへの操作を受け付ける操作部と、
を備える操作表示装置に、
前記表示部に表示されたオブジェクトが操作されたとき、当該操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されているか否かを判断する判断ステップと、
前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されている場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御を行い、前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域が前記表示部に表示されていない場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御は行わずに、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されるようにスクロールさせる制御を行う制御ステップとを実行させる
ことを特徴とする表示制御プログラム。
【請求項7】
前記操作されたオブジェクトの所定の割合以上の領域とは、当該操作されたオブジェクトの全領域であり、
前記判断ステップにおいては、前記表示部の画面に表示されたオブジェクトが操作されたとき、当該操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されているか否かを判断し、
前記制御ステップにおいては、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されている場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御を行い、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されていない場合は、前記操作されたオブジェクトに割り当てられた前記所定の処理を実行する制御は行わずに、前記操作されたオブジェクトの全領域が前記表示部に表示されるようにスクロールさせる制御を行う
ことを特徴とする請求項6に記載の表示制御プログラム。
【請求項8】
前記オブジェクトは、当該オブジェクトに割り当てられた前記所定の処理に対応する識別情報を含み、
前記所定の割合は、前記オブジェクトを表示したときに前記識別情報をユーザが認識できる割合である
ことを特徴とする請求項6または7のいずれか1つに記載の表示制御プログラム。
【請求項9】
前記操作表示装置は、前記複数のオブジェクトの一部を前記表示部に表示させる第1の表示モードと、前記複数のオブジェクトの全てを前記表示部に表示する第2の表示モードとを備え、前記操作表示装置に、前記第1の表示モードと前記第2の表示モードとを切り替えるステップを更に実行させる
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1つに記載の表示制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−226614(P2012−226614A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94428(P2011−94428)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】