説明

支持部材傾動機構

【課題】撮影環境の影響を受けずに自由にカメラでの撮影を行うことができるカメラ位置調整装置を提供する。
【解決手段】カメラ位置調整装置1は、上下方向に傾動自在にベース10に配置された第1支持板12と、前後方向に傾動自在に第1支持板12に配置された第2支持板11と、前後方向に傾動自在に第2支持板11に配置されてカメラを支持する第3支持板13とを備えている。支持板11〜13の傾動機構は、ベース10に回転自在に支持されて操作部22,32,42を回転操作されると回転する回転軸21と、回転軸21,31,41に螺着されて支持板11〜13に支持され、回転軸21の回転に伴い雄ネジ部24と螺合して支持板11〜13を押圧し、ベース10に対して支持板11〜13を傾動させるスライドコマ25,35,45とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラを支持した支持部材をベースに対して傾動させてカメラの位置調整を行うカメラ位置調整装置に備えられ、ベースに対して支持部材を傾動させる支持部材傾動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に示すカメラのビルドアップ装置は、ベースに取り付けられたカメラ支持台でカメラを保持する。カメラ支持台は、前後、左右、及び上下方向にカメラを位置調整する移動機構を備えており、移動機構での位置調整により、大型レンズに対するカメラの光軸が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−261934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の移動機構では、カメラ支持台をベースに対して傾動させることで、カメラの位置調整が行われるが、カメラ支持台と一体となってベースに対して傾動する移動機構の移動スペースも周囲に確保しながら撮影を行う必要があり、撮影する環境の影響を受けやすかった。このため、環境の影響を受けずに自由に撮影を行えるカメラ位置調整装置が望まれている。
【0005】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決できる支持部材傾動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明の支持部材傾動機構は、カメラを支持した支持部材をベースに対して傾動させて前記カメラの位置調整を行うカメラ位置調整装置に備えられ、前記ベースに対して前記支持部材を傾動させる支持部材傾動機構であって、前記ベースに回転自在に支持され、操作部を回転操作されて回転する回転操作軸と、前記回転操作軸が備えるネジ部に螺着されて前記支持部材を支持し、前記回転操作軸の回転に伴い、前記支持部材を前記回転操作軸の延伸方向に押圧し、前記ベースに対して前記支持部材を傾動させるネジ部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ベースへの回転操作軸の支持位置を固定したまま、支持部材を傾動させてカメラを位置調整できることから、環境の影響を受けずに自由に撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態のカメラ位置調整装置を示す斜視図である。
【図2】カメラ位置調整装置が備える回転操作部材を示す斜視図である。
【図3】回転操作部材が備える押圧部を示す斜視図である。
【図4】カメラ位置調整装置がカメラの前後方向の位置調整を行う動作を示す図であり、(a)は後方の回動限,(b)は前方の回動限まで第2支持板を回動させた状態を示している。
【図5】従来のカメラ位置調整装置がカメラの前後方向の位置調整を行う動作を示す図であり、(a)は後方の回動限,(b)は前方の回動限まで第2支持板を回動させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の最良の形態について説明する。
図1は、本実施形態のカメラ位置調整装置1を示す斜視図である。図2は、カメラ位置調整装置1が備える回転操作部材2〜4を示す斜視図である。図3は、回転操作部材2〜4が備えるスライドコマ25,35,45を示す斜視図である。なお、以下の説明で用いる上下,前後,及び左右の各方向は説明に用いる各図に示している。この上下,前後,及び左右は説明のために記載したもので、実際の配置と異なってよいことはもちろんである。
【0010】
カメラ位置調整装置1は、被写体に対するカメラ(光軸)の向きを調整する装置であり、図1に示すように、雲台等に取り付けられるベース10上に構成されている。カメラ位置調整装置1は、左右に延びてベース10上に配置された第1支持板12と、第1支持板12を上側から覆うように左右に延びて第1支持板12上に配置された第2支持板11と、第2支持板11上に左右に延びて配置されカメラが固定される第3支持板13とを備えている。
【0011】
ベース10の左端部には、第1支持板12をベース10に支持するための一対の支持部10aが設けられている。支持部10aは、ベース10の前端部及び後端部に向き合って配置されている。支持部10aには、第1支持板12の左端部が上下方向に回転自在に支持される。ベース10の右端部には、第1支持板12の右端部を上下方向に移動させるための昇降用枠体10bが設けられている。
【0012】
昇降用枠体10bは、ベース10に固定された前後の側板間に右板及び天板を掛け渡して構成されており、左端側を開放させている。昇降用枠体10bには、第1支持板12の右端部が左端側の開口から収容される。昇降用枠体10bの前後の側板には、それぞれ上下方向に延びるガイド孔10b1が設けられている。ガイド孔10b1は、前板及び後板の互いに対向する位置に配置されている。昇降用枠体10bの天板からは、第1支持板12の右端部を上下動させるための回転操作部材3が上方に延びている。
【0013】
第1支持板12は、右端部から前方及び後方に向けてそれぞれスライド軸12bを突出させており、スライド軸12bをガイド孔10b1に挿通させると共に、左端部を前後の側方から一対の支持部10aで回転自在に支持されている。ガイド孔10b1に挿通されたスライド軸12bは、ガイド孔10b1の延設方向に向けてスライド自在となっている。第1支持板12の右端部には、第1支持板12の右端部を略矩形に切り欠いた形状の切欠部12cが設けられている。切欠部12cには、後述する回転操作部材3の回転軸31が挿通される。切欠部12cよりも左側に位置する第1支持板12の右端部には、一対のガイド軸12aが設けられている。ガイド軸12aは、第1支持板12の前端部及び後端部の上面から上方に延びており、後述するガイド孔11aに挿通される。ガイド軸12aの左側に位置する第1支持板12の前後方向の中央部には、第1支持板12を上下方向に貫通する貫通孔12d(図4参照)が設けられている。貫通孔12dは、前後方向に延びる長孔から形成されており、後述する回転操作部材2がスライドコマ25に備える押圧部253が挿通される。
【0014】
第2支持板11は、天板の前後の縁部から下方に向けて側板を延出させた概略形状を有しており、第1支持板12の左端部の上面に突設された支軸12e(図4参照)で前後方向に回転自在に左端部を第1支持板12に支持されている。第2支持板11の天板の右縁部には、一対のガイド孔11aが前後に並んで設けられている。ガイド孔11aは、第2支持板11の天板の前端部及び後端部に配置されている。
【0015】
第2支持板11が備える天板のガイド孔11aよりも左側には、ガイド孔11aに代えてガイド軸12aを挿通される長孔11bが設けられている。長孔11bは、天板の前後方向の中央部に位置して前後方向に延びている。長孔11bの左側に位置する天板の右端部には、左右方向に延びる支持孔11cが設けられている(図4参照)。第2支持板11は、天板の前後方向の中央部に位置して、天板を上下方向に貫通している。支持孔11cの前方に位置する第2支持板11の前板には切欠部が設けられており、この切欠部からは第2支持板11の右端部を前後動させるための回転操作部材2が前方に延びている。
【0016】
第3支持板13は、その上面にカメラを載置されて固定される。第3支持板13の左端部には、支持孔13aが設けられている。支持孔13aは、第2支持板13の前後方向の中央部に位置しており、第3支持板13を上下方向に貫通している。支持孔13aには、後述する回転操作部材4がスライドコマ45に備える押圧部453が挿通される。第3支持板13の左端部の下側からは、第3支持板13の左端部を前後動させるための回転操作部材4が前方に延びている。
【0017】
図2に示すように、第2支持板11の右端部を前後動させるための回転操作部材2は、円盤状の操作部22を一端に備えた棒状の回転軸21と、回転軸21の雄ネジ部24に螺着されたスライドコマ25とを備えている。回転軸21は、長さ方向の中央部に拡径した雄ネジ部24を備え、雄ネジ部24の両側に位置する縮径部分に軸受23を取り付けられている。
【0018】
軸受23は、円筒状を呈した本体231の一端にフランジ部232を設けて構成されており、本体231を雄ネジ部24側に向けて回転軸21に取り付けられ、回転軸21を回転自在に支持する。回転操作部材2は、軸受23をベース10に取り付けられ、ベース10に回転自在に回転軸21を支持される。
【0019】
図3に示すように、スライドコマ25は、円柱状を呈した本体251の一端面に本体251より小さな円柱状の押圧部253を備えた概略形状を有している。本体251には、その軸心と交叉して延びて本体251を貫通したネジ孔252が設けられている。スライドコマ25は、ネジ孔252を雄ネジ部24に螺着させて回転軸21に取り付けられ、押圧部253を支持孔11c内に挿入される。
【0020】
スライドコマ25は、回転軸21の周方向への押圧部253の移動を支持孔11cの左右の内側面で規制されることで、回転軸21の回転に伴い回転軸21の延伸方向にスライド動作して支持孔11cの前後の内側面を押圧部253で押圧する。第2支持板11は、スライドコマ25の押圧部253によりスライドコマ25のスライド方向に押圧されて、右端部を前後動させる。
【0021】
図2及び図3に示すように、第1支持板12の右端部を上下動させるための回転操作部材3は、回転操作部材2と同様の構成を有しており、回転軸31を回転自在に支持した軸受33がベース10に取り付けられ、スライドコマ35の押圧部353が第1支持板12に支持されている。回転操作部材3は、操作部32が回転操作されると、スライドコマ35の押圧部353で第1支持板12を雄ネジ部34との螺合に伴うスライドコマ35のスライド方向に押し出し、第1支持板12の右端部を上下動させる。
【0022】
図2及び図3に示すように、第3支持板13の左端部を前後動させるための回転操作部材4は、回転操作部材2と同様の構成を有しており、回転軸41を回転自在に支持した軸受43がベース10に取り付けられ、スライドコマ45の押圧部453が第3支持板13に支持されている。図示しないが、ベース10には、第1支持板12及び第2支持板11を貫通して、第2支持板11と第3支持板13との間で軸受43を支持する支持部が設けられている。回転操作部材4は、操作部42が回転操作されると、スライドコマ45の押圧部453で第3支持板13を雄ネジ部44との螺合に伴うスライドコマ45のスライド方向に押し出し、第3支持板13の左端部を前後動させる。
【0023】
このようにして構成されるカメラ位置調整装置1により、第3支持板13に固定されたカメラの位置調整を行う動作について説明する。図4は、カメラ位置調整装置1がカメラの前後方向の位置調整を行う動作を示す図であり、(a)は後方の回動限,(b)は前方の回動限まで第2支持板11を回動させた状態を示している。
【0024】
回転操作部材2の操作部22が一方向に回転操作されると、回転軸21が操作方向に回転し、雄ネジ部24に螺着されたスライドコマ25が支持孔11cの後側内面を押圧部253で押圧する。この押圧力を受けた第2支持板11は、支軸12eを支点として右端側を後方に回動させる。第2支持板11上に配置された第3支持板13は、第2支持板11と一体となって右端側を後方に回動させる。これにより、第3支持板13に支持されたカメラは、右端側を後方に移動させて、光軸を右方に傾ける。
【0025】
操作部22が逆方向に回転操作されて回転軸21が操作方向に回転すると、雄ネジ部24に螺着されたスライドコマ25が支持孔11cの前側内面を押圧部253で押圧し、第2支持板11の右端側を支軸12eを支点として前方に回動させる。これにより、第3支持板13が第2支持板11と一体となって右端側を前方に回動させて、カメラの右端側を前方に移動させ、カメラの光軸を左方に傾ける。
【0026】
同様に、回転操作部材3の操作部32,回転操作部材4の操作部42が一方向に回転操作されると、スライドコマ35,45の押圧部353,453で支持板11,13を回動させて、カメラの光軸を上下又は左右方向に傾ける。回転操作部材3〜5の操作量を調節することで、被写体に対するカメラの位置が調整される。
【0027】
本実施形態によれば、操作部22の操作で回転軸21を回転させると、ベース10,第2支持板11,又は第1支持板12に支持されたスライドコマ25,35,45が雄ネジ部24,34,44と螺合して支持板11〜13を押圧し、支持板11〜13をベース10に対して傾動させる。このため、回転操作部材2〜4のベース10への支持位置を固定したまま、ベース10に対する支持板11〜13の傾動を行わせることができる。従って、回転操作部材2〜4の移動スペースを考慮することなく支持板11〜13の傾動機構を構成できる。この結果、撮影環境の影響を受けずに自由にカメラでの撮影を行うことができる。
【0028】
例えば、回転操作部材2を第2支持板11に、回転操作部材3を第1支持板12に、回転操作部材4を第3支持板13にそれぞれ回転自在に支持したり、また、回転操作部材2をベース10の備えるネジ部に,回転操作部材3を第2支持板11の備えるネジ部に,回転操作部材4を第1支持板12の備えるネジ部にそれぞれ螺合させることで、回転操作部材2〜4の操作により支持板11〜13をベース10に対して傾動させる場合には、支持板11〜13の傾動に伴い回転操作部材2〜4もベース10に対して傾動することとなる。
【0029】
図5に示すカメラ位置調整装置10のように、回転操作部材2の回転軸21をベース10のネジ部に螺合させて、第2支持板11の右端部を前後動させる構成の場合には、図5(a)に示すように第2支持板11を後方に傾動させると回転操作部材2も後方に移動し、図5(b)に示すように第2支持板11を前方に傾動させると回転操作部材2も前方に移動することとなり、回転操作部材2の移動スペースを考慮して撮影する必要がある。これに対して、カメラ位置調整装置1では、回転操作部材2の移動スペースを考慮することなく撮影を行える。
【0030】
なお、上記実施形態では、カメラ位置調整装置1が第2支持板11,第1支持板12,第3支持板13を備えており、これら支持板11〜13がベース10に対して一端側を回動させることでカメラの位置調整を行う場合について説明した。しかしながら、カメラ位置調整装置1は、必ずしも3つの支持板11〜13を備えている必要はなく、例えば、第1支持板12のみを備える構成としてもよい。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施態様としては、以下のものを挙げることができる。
実施態様1の支持部材傾動機構は、カメラを支持した支持部材をベースに対して傾動させて前記カメラの位置調整を行うカメラ位置調整装置に備えられ、前記ベースに対して前記支持部材を傾動させる支持部材傾動機構であって、前記ベースに回転自在に支持され、操作部を回転操作されて回転する回転操作軸と、前記回転操作軸が備えるネジ部に螺着されて前記支持部材を支持し、前記回転操作軸の回転に伴い、前記支持部材を前記回転操作軸の延伸方向に押圧し、前記ベースに対して前記支持部材を傾動させるネジ部材とを備えることを特徴とする。
また、実施態様2のカメラ位置調整装置は、ベースに対して一方向に傾動自在に前記ベースに配置された第1の支持板と、前記ベースに対して前記一方向と交差する他方向に傾動自在に前記第1の支持板に配置された第2の支持板と、前記ベースに対して前記一方向又は前記他方向に傾動自在に前記第2の支持板に配置されてカメラを支持する第3の支持板とを備えたカメラ位置調整装置であって、前記1の支持板、前記第2の支持板、及び前記第3の支持板を、上記支持部材傾動機構を用いて傾動させることを特徴とする。
【符号の説明】
【0032】
1 カメラ位置調整装置
2〜4 回転操作部材
10 ベース
10b 昇降用枠体
10b1 ガイド孔
11 第2支持板
11a ガイド孔
11c 支持孔
12 第1支持板
12a ガイド軸
12b スライド軸
12d 貫通孔
12e 支軸
13 第3支持板
13a 支持孔
21 回転軸
22 操作部
23 軸受
24 雄ネジ部
25,35,45 スライドコマ
251 本体
252 ネジ孔
253 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを支持した支持部材をベースに対して傾動させて前記カメラの位置調整を行うカメラ位置調整装置に備えられ、前記ベースに対して前記支持部材を傾動させる支持部材傾動機構であって、前記ベースに回転自在に支持され、操作部を回転操作されて回転する回転操作軸と、前記回転操作軸が備えるネジ部に螺着されて前記支持部材を支持し、前記回転操作軸の回転に伴い、前記支持部材を前記回転操作軸の延伸方向に押圧し、前記ベースに対して前記支持部材を傾動させるネジ部材とを備えることを特徴とする支持部材傾動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−175034(P2010−175034A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20521(P2009−20521)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】