説明

改修用サッシ窓枠装置

【課題】施工時間の短縮化を図れると共に、既存窓枠6aと新規窓枠10aとの間の気密性及び水密性を十分に保持できる、改修用サッシ窓枠装置を実現する。
【解決手段】それぞれが乾式のシール材である、1対の縦方向帯状気密片34と、横方向帯状気密片35と、1対の上隅角部気密片36と、1対の上部気密片37と、1対の下隅角部気密片38と、横方向シールリップ39とを、上記既存窓枠6aと上記新規窓枠10aとの間に形成される矩形環状の空間31内に全周に亙り隙間なく連続させる。そして、乾式のシールライン32を形成する。これら各部材34〜39により構成されるシールライン32は、上記新規窓枠10aを構成する各枠を上記既存窓枠6aを構成する各枠に対して固定するのと同時に、これら各枠同士の間で圧縮且つ挟持されて、これら各枠同士の間を塞ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般家屋や集合住宅等の建造物の開口部に設けた窓装置を新規構造のものに改修する際、この開口部の内周に固定されている既存の窓枠の内側に新規の窓枠を組み付ける、改修用サッシ窓枠装置の改良に関する。具体的には、施工時間の短縮化を図れると共に、前記既存の窓枠と前記新規の窓枠との間の気密性及び水密性を十分に保持できる、改修用サッシ窓枠装置を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金製の押し出し型材を組み合わせて成る窓装置が、従来から広く使用されている。図22は、この様な窓装置の1例を示している。図示の例の構造の場合、窓枠1の内側に1対のガラス障子2a、2bを、引き違い式に建て込んでいる。このうちの窓枠1は、上辺を構成する上枠3と、下辺を構成する下枠4と、左右の縦辺を構成するたて枠5、5とにより、矩形に構成している。これら各枠3、4、5は、それぞれアルミニウム合金の押し出し型材製である。又、前記両ガラス障子2a、2bは、それぞれの下辺部に設けた各戸車を、前記下枠4の上面に設けた下部案内レールに係合させると共に、上端部に設けたガイドブロックと前記上枠3に設けた上部案内レールとを係合させる事により、前記窓枠1の内側に、水平移動自在に建て込んでいる。
【0003】
例えば上述の様な窓装置が古くなったり、或いは、防音性能や気密性能等に問題を生じる事により、新規の窓装置に交換する場合、工期の短縮、工事費等の低減等を目的として、古い(既存の)窓枠1を利用して、新規窓枠を組み付ける構造が、従来から数多く提案されている。例えば特許文献1〜3には、既存の窓枠の内側に、新規の窓枠を構成する各枠をそれぞれ個別に固定する構造が記載されている。図23〜25は、このうちの特許文献1に記載された、従来構造の1例を示している。
【0004】
図示の例の場合、既存窓枠6は、既存上枠7と既存下枠8と左右の既存たて枠9、9とを矩形枠状に組み合わせて成り、建造物の開口部の内周縁に予め(建造物の建設時に)固定されている。一方、前記新規窓枠10は、新規上枠11と新規下枠12と左右の新規たて枠13、13とから成り、これら各枠11〜13は、互いに連結する事なく(予め矩形枠状には組み合わせずに)、前記既存窓枠6の内側にそれぞれ個別に固定されている。
【0005】
具体的には、前記新規上枠11を前記既存上枠7の下面に、前記新規下枠12を前記既存下枠8の上面に、前記各新規たて枠13、13を前記各既存たて枠9、9の内側面に、それぞれ複数のタッピングねじにより結合固定している。特に、前記従来構造の場合には、前記新規窓枠10の開口面積を大きく確保するべく、前記新規窓枠10を構成する各枠11〜13を、前記既存窓枠6を構成する各枠7〜9に対してそれぞれ固定する以前に、これら各枠7〜9から上部案内レールや下部案内レール等を、施工現場にて切削除去している。
【0006】
又、前記従来構造の場合には、前記既存窓枠6の内側に前記新規窓枠10を組み付けた後、前記新規上枠11の長さ方向両端部と前記各新規たて枠13、13の上端部との突き合わせ部、及び、前記新規下枠12の長さ方向両端部とこれら各新規たて枠13、13の下端部との突き合わせ部に、それぞれ湿式のシール材(シーリング材、コーキング材)を充填している。これにより、前記各突き合わせ部を通じて、前記既存窓枠6と前記新規窓枠10との間に、外気や雨水等の水分が侵入する事を防止し、これら既存窓枠6と新規窓枠10との間の気密性及び水密性を保持している。
【0007】
ところで、既存窓枠と新規窓枠との間の気密性及び水密性を保持する為のシール手段としては、上述した従来構造の場合の様に、新規窓枠10を構成する各枠11〜13同士の突き合わせ部に湿式のシール材を充填する構造の他、既存窓枠と新規窓枠との間に湿式のシール材を充填する構造も従来から考えられている。但し、これら既存窓枠と新規窓枠との間の気密性及び水密性を保持する為に、湿式のシール材を用いる場合には、長時間の乾燥時間が必要になる等、施工時間が長くなる事が避けられない。更に、湿式のシール材を用いたシーリング作業には熟練を要する為、作業者の熟練度によっては、施工時間が著しく長くなったり、気密性及び水密性を十分に保持できなくなる可能性もある。
【0008】
これに対して、近年、改修工事の対象となる建造物の住民の時間的負担を軽減する等の理由から、施工時間の短縮に関する要求は高まりつつある。この為、短時間で施工できると共に、既存窓枠と新規窓枠との間の気密性及び水密性を十分に保持できる、改修用サッシ窓枠装置の実現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−30377号公報
【特許文献2】特開2001−193359号公報
【特許文献3】特開2008−308957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、施工時間の短縮化を図れると共に、既存窓枠と新規窓枠との間の気密性及び水密性を十分に保持できる、改修用サッシ窓枠装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の改修用サッシ窓装置は、前述した従来構造の改修用サッシ窓枠装置と同様に、既存窓枠と、新規窓枠と、シール手段とを備える。
このうちの既存窓枠は、建造物の開口部の内周縁に固定されており、既存上枠と、既存下枠と、左右の既存たて枠とから成る。
又、前記新規窓枠は、前記既存窓枠の内側に組み付けられており、新規上枠と、新規下枠と、左右の新規たて枠とから成る。
更に、前記シール手段は、前記新規窓枠と前記既存窓枠との間の気密性及び水密性を保持する。
【0012】
特に、本発明の改修用サッシ窓枠装置に於いては、前記新規窓枠を構成する、前記新規上枠と前記新規下枠と前記各新規たて枠とを、前記既存窓枠を構成する、前記既存上枠と前記既存下枠と前記各既存たて枠とに対し、それぞれ個別に固定している。
又、前記シール手段を、弾性を有する1乃至複数の乾式のシール材を、前記既存窓枠と前記新規窓枠との間に形成される矩形環状の空間内に、全周に亙り実質的に連続させて配置する事により構成している。更に、前記シール材を、前記新規窓枠を構成する各枠を前記既存窓枠を構成する各枠に対して固定するのと同時に、これら各枠同士の間で圧縮されて、これら各枠同士の間を塞ぐ機能を発揮するものとしている。
【0013】
上述した様な本発明の改修用サッシ窓枠装置を実施する場合には、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記シール材を、CRスポンジ等のスポンジ状の弾性体と、エラストマー等の弾性材製のシールリップとの何れかとする(部分的に使い分ける場合を含む)。
【0014】
又、本発明を実施する場合に、例えば請求項3に記載した様に、前記新規上枠の長さ方向両端部と前記左右の新規たて枠の上端部、及び、前記新規下枠の長さ方向両端部とこれら各新規たて枠の下端部とを、それぞれ互いに突き合わせる事なく、それぞれの端部同士の間に隙間を設ける。
【0015】
更に、本発明を実施する場合に、例えば請求項4に記載した様に、前記新規上枠を構成する屋外側壁と屋内側壁との外側面(互いに反対側の面)同士の幅寸法(見込み寸法)を、前記既存上枠を構成する屋外側壁と屋内側壁との内側面(互いに対向する面)同士の幅寸法(内々寸法)、及び、前記各既存たて枠を構成する屋外側壁と屋内側壁との内側面同士の幅寸法(内々寸法)よりも、それぞれ僅かに小さくする。そして、前記新規上枠の長さ方向両端部を、前記各既存たて枠の内側にそれぞれ入り込ませる。
【発明の効果】
【0016】
上述の様に構成する本発明によれば、施工時間の短縮化を図れると共に、既存窓枠と新規窓枠との間の気密性及び水密性を十分に保持できる、改修用サッシ窓枠装置を実現できる。
先ず、本発明の場合には、前記既存窓枠と前記新規窓枠との間の気密性及び水密性を保持する為のシール手段として、湿式のシール材を使用せず、乾式のシール材を使用する為、シールの乾燥時間が不要になり、施工時間の短縮化を図れる。
又、本発明の場合には、前記既存窓枠を構成する各枠に対して前記新規窓枠を構成する各枠を固定する作業と、これら各枠同士の間を塞ぐ作業とを同時に行える。この為、前記新規窓枠を組み付けた後にシーリング作業を行う必要のある、湿式のシール材を用いた場合に比べて、施工時間を大幅に短縮できる。
尚、本発明の場合には、前記乾式のシール材を、前記既存窓枠を構成する各枠と前記新規窓枠を構成する各枠との間で圧縮且つ挟持した状態で、この新規窓枠を構成する各枠を前記既存窓枠を構成する各枠に対して固定する必要がある。但し、この様な作業は、例えば両面テープ等の接着手段を利用して、前記乾式のシール材を前記既存窓枠を構成する各枠に対して予め貼着しておく事を考慮したとしても、湿式のシール材を用いたシーリング作業に比べて十分に短時間で行える。
【0017】
更に、本発明の場合には、乾式のシール材を使用する為、湿式のシール材を使用した場合の様に、作業に熟練を要しない。特に、本発明の場合には、上述した様に、前記乾式のシール材を、前記既存窓枠を構成する各枠と前記新規窓枠を構成する各枠との間で圧縮且つ挟持した状態で、これら新規窓枠を構成する各枠を前記既存窓枠を構成する各枠に対して固定する必要があるが、この様な作業は、上述した様な両面テープ等の接着手段を利用する事により、作業者の熟練度を問わず容易に行える。従って、本発明の場合には、作業者の熟練度に左右される事なく、前記既存窓枠と前記新規窓枠との間の気密性及び水密性を十分に保持する事ができる。
【0018】
更に、請求項3に記載した発明の場合には、前記新規窓枠の組み付け作業の作業性の向上を図れる。即ち、この新規窓枠を構成する各枠の端部同士を突き合わせる構成を採用した場合には、前記既存窓枠に歪み等の変形を生じていた場合に、前記新規窓枠を構成する各枠を組み込みにくくなり、作業性が低下する。これに対して、前記請求項3に記載した発明の場合には、この様な不都合を解消できる。従って、この請求項3に記載した発明によれば、前記新規窓枠の組み付け作業の作業性を向上する事ができて、施工時間の更なる短縮化を図れる。又、雨水等の水分を、新規下枠の長さ方向両端部と左右の新規たて枠の下端部との間部分に設けた隙間を通じて、既存下枠の上面に導く事ができる為、この既存下枠に設けられた排水構造をそのまま利用できる。
更に、請求項4に記載した発明の場合には、新規上枠の長さ方向両端部と左右の既存たて枠との間に、目立つ程の隙間が形成される事を防止できる。この為、改修用サッシ窓枠装置の意匠性の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す、図22のA−A断面に相当する図。
【図2】同じく図1のC−C断面図。
【図3】同じく図1のD−D断面図。
【図4】同じく各気密片を省略して示す図1と同様の図。
【図5】同じく各気密片を省略して示す図2と同様の図。
【図6】同じく各気密片を省略して示す図3と同様の図。
【図7】同じく既存上枠及び既存たて枠と新規上枠とを取り出して示す、(A)は図1の上端部に、(B)は図2の右端部に、それぞれ相当する図。
【図8】同じく比較例として示す図7と同様の図。
【図9】同じく縦方向帯状気密片の取付工程を説明する為に要部を取り出して示す、(A)は図1の上端部に、(B)は図2の右端部に、それぞれ相当する図。
【図10】同じく横方向帯状気密片の取付工程を説明する為に示す、図9と同様の図。
【図11】同じく上隅角部気密片の取付工程を説明する為に示す、図9と同様の図。
【図12】同じく新規上枠の取付工程を説明する為に示す、図9と同様の図。
【図13】同じく上部気密片の取付工程を説明する為に示す、図9と同様の図。
【図14】同じく新規上枠を省略して既存窓枠の上隅角部を屋内側から見た略斜視図。
【図15】同じく下隅角部気密片の取付工程を説明する為に要部を取り出して示す、(A)は図1の下端部に、(B)は図3の右端部に、それぞれ相当する図。
【図16】同じく既存窓枠の下隅角部を屋内側から見た略斜視図。
【図17】同じく新規たて枠の取付工程を説明する為に示す、図9と同様の図。
【図18】同じく新規下枠の取付工程を説明する為に示す、図15と同様の図。
【図19】新規上枠の別例を示す、図2の右端部に相当する図。
【図20】新規上枠の別の3例を示す、図1の上端部に相当する図。
【図21】既存上枠の別例を示す、図1の上端部に相当する図。
【図22】一般的な窓装置を屋内側から見た状態で示す略正面図。
【図23】従来から知られている改修用サッシ窓枠装置の1例を示す、図22のA−A断面に相当する図。
【図24】同じくB−B断面に相当する図。
【図25】同じく新規窓枠を構成する各枠の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施の形態の1例]
図1〜18は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の改修用サッシ窓枠装置の特徴は、各図に鎖線で示した既存窓枠6aと、各図に実線で示した新規窓枠10aとの間に形成される矩形環状の空間31内に、乾式のシールライン32を全周に亙り実質的に(外気や雨水の吹き込みを実用上問題ない程僅少に抑えられる程度に)連続させて形成した点にある。その他の部分の基本的な構成及び作用・効果に就いては、前記図23〜25に示した従来構造の場合とほぼ同じである。この為、重複する説明は簡略若しくは省略する。以下、先に説明しなかった部分、並びに、前記従来構造と相違する部分を中心に、本例の改修用サッシ窓枠装置を構成する前記既存窓枠6aと前記新規窓枠10aとの構成を、図4〜8を参照しつつ、それぞれ説明した後、残りの図面を参照して、本例の特徴部分を説明する。
【0021】
本例の改修用サッシ窓枠装置は、前記既存窓枠6aの内側に前記新規窓枠10aを組み付けて成る。このうちの既存窓枠6aは、それぞれがアルミニウム合金の押し出し型材製である、既存上枠7aと、既存下枠8aと、左右の既存たて枠9a、9aとを、周知のタッピングねじによる結合構造により、矩形枠状に組み合わせて成る。この様な既存窓枠6aは、建造物の開口部の内周縁に、予め(建造物の建設時に)固定されている。本例の場合には、この様な既存窓枠6aから上部案内レール(既存上部案内レール42a、42b)や下部案内レール(既存下部案内レール19a、19b)等を切削除去する事なく、前記既存窓枠6aを既存状態のまま用いている。
【0022】
又、前記新規窓枠10aは、それぞれがアルミニウム合金の押し出し型材製である、新規上枠11aと、新規下枠12aと、左右の新規たて枠13a、13aとから成る。この様な新規窓枠10aは、前記新規上枠11aを前記既存上枠7aの下面に、前記新規下枠12aを前記既存下枠8aの上面に、前記各新規たて枠13a、13aを前記各既存たて枠9a、9aの内側面に、それぞれ個別に結合固定する事により、前記既存窓枠6aの内側に組み付けられている。
【0023】
具体的には、前記新規上枠11aの上面に設けられた1対の上部突き当て突条14、14を、前記既存上枠7aの下面にそれぞれ突き当てた状態で、複数の上部タッピングねじ15、15を用いて、前記新規上枠11aを前記既存上枠7aに直接結合固定している。同様に、前記各新規たて枠13a、13aの外側面に設けられた1対の側部突き当て突条16、16を、前記各既存たて枠9a、9aの内側面にそれぞれ突き当てた状態で、複数の側部タッピングねじ17、17を用いて、前記各新規たて枠13a、13aを前記各既存たて枠9a、9aに直接結合固定している。
【0024】
これに対して、前記新規下枠12aは、断面略コ字形の下部アタッチメント18を介して、前記既存下枠8aに結合固定している。この為に、この下部アタッチメント18を、この既存下枠8aの上面に設けられた1対の既存下部案内レール19a、19bのうちの屋内側の既存下部案内レール19bに、第一下部タッピングねじ20を用いて固定している。そして、前記新規下枠12aを、前記下部アタッチメント18の上面及び屋外側の既存下部案内レール19a上に載置した状態で、第二、第三下部タッピングねじ20a、20bを用いて、前記下部アタッチメント18及び前記屋外側の既存下部案内レール19aに、それぞれ固定している。
【0025】
尚、本例の場合には、前記下部アタッチメント18を、前記屋内側の既存下部案内レール19bに固定する際に、前記屋外側の既存下部案内レール19aの存在が作業性を低下させる原因になる。この為、この屋外側の既存下部案内レール19aには、前記第一下部タッピングねじ20の締結作業を行う為の工具を挿入自在な、屋内外方向に貫通する複数の通孔(図示省略)を形成している。又、本例の場合には、前記新規下枠12aと、網戸用下部案内レール21とを別体として、この網戸用下部案内レール21を前記屋外側の既存下部案内レール19aに対して、前記第二下部タッピングねじ20bを用いて固定している。これに対して網戸用上部案内レール22は、前記新規上枠11aに一体に設けられている。
【0026】
又、本例の場合には、前記既存窓枠6aの内側に前記新規窓枠10aを組み付けた状態で、前記新規上枠11aの長さ方向両端部と前記各新規たて枠13a、13aの上端部とを互いに突き合わせずに、これら両端部同士の間に、それぞれ上部隙間23を設けている。同様に、前記新規下枠12aの長さ方向両端部と前記各新規たて枠13a、13aの下端部とに関しても、互いに突き合わせる事なく、これら両端部同士の間に、それぞれ下部隙間24、24を設けている。この様な隙間23、24を設ける事によって、本例の場合には、前記新規窓枠10aの組み付け作業(各枠11a〜13aの固定作業)の作業性の向上を図っている。例えば前記図23〜25に示した従来構造の場合の様に、新規窓枠10を構成する各枠11〜13の端部同士を突き合わせる場合、既存窓枠6に歪み変形等が生じていた場合には、これら各枠11〜13を組み込みにくくなり、作業性が低下する。これに対して、本例の場合には、この様な不都合を解消できる為、前記新規窓枠10aの組み付け作業の作業性を向上する事ができて、施工時間の短縮化を図れる。更に、雨水等の水分を、前記各下部隙間24、24を通じて、前記既存下枠8aの上面に導く事ができる為、この既存下枠8aに設けられた排水構造をそのまま利用できる。
【0027】
更に、本例の場合には、図7に示す様に、前記新規上枠11aを構成する屋外側壁25と屋内側壁26との外側面同士の幅寸法(見込み寸法)H11a を、前記既存上枠7aを構成する屋外側壁27と屋内側壁28との内側面同士の幅寸法(内々寸法)h7a、及び、前記各既存たて枠9aを構成する屋外側壁29と屋内側壁30との内側面同士の幅寸法(内々寸法)h9aよりも僅かに小さくしている(H11a <h7a、h9a)。そして、前記新規上枠11aの長さ寸法(L11a )を、前記既存窓枠6aの内法開口幅(W6a)よりも少しだけ大きくして(L11a >W6a)、前記新規上枠11aの長さ方向両端部を前記各既存たて枠9aの内側に、それぞれ入り込ませている。この様な構成により、前記新規上枠11aの長さ方向両端部と前記各既存たて枠9aとの間に、外観を悪くする程に目立つ隙間が形成される事を防止して、改修用サッシ窓枠装置の意匠性の向上を図っている。
【0028】
例えば図8に比較例を示す様に、前記新規上枠11aの見込み寸法H11a´が、前記既存上枠7a及び前記各既存たて枠9aの内々寸法h7a´、h9a´よりも大きいか同じ(図示の例では、新規上枠11aの見込み寸法H11a´と、既存上枠7a及び各既存たて枠9aの見込み寸法H7a、H9aとが同じ)場合、前記新規上枠11aを前記既存上枠7aに対して固定する為には、この新規上枠11aの長さ方向両端縁と前記各既存たて枠9aの内側縁との間に、屋内外方向から見える様な、目立つ隙間を設ける必要がある。そして、この様な隙間を残したままにすれば、改修用サッシ窓枠装置の意匠性が低下する恐れがある。又、気密及び水密保持の為に前記隙間を塞ぐ必要上、前記新規上枠11aを前記既存上枠7aに固定した後、この隙間をシール材等により塞ぐ必要があり、施工時間が長くなる原因になる。これに対して、本例の場合には、この様な不都合が生じる事を防止できる。
【0029】
特に本例の場合には、以上の様な構成を有する前記既存窓枠6aと前記新規窓枠10aとの間の気密性及び水密性を保持する為に、これら両窓枠6a、10a同士の間に形成される矩形環状の空間31内に乾式のシールライン32を、全周に亙り実質的に連続させた状態で形成している。本例の場合には、この様なシールライン32を、屋内外方向に関して、前記新規窓枠10aの内側に建て込まれる、1対の引戸障子33a、33b同士の間部分に形成している。
【0030】
前記シールライン32は、それぞれが特許請求の範囲に記載した乾式のシール材に相当する、1対の縦方向帯状気密片34、34と、横方向帯状気密片35と、1対の上隅角部気密片36と、1対の上部気密片37(屋外側上部気密片45及び屋内側上部気密片46)と、1対の下隅角部気密片38、38と、横方向シールリップ39とから成る。このうちの各気密片34〜38は何れも、CRスポンジ等の独立気泡体であり、前記横方向シールリップ39は、エラストマー等の弾性材製である。尚、これら弾性材製のシールリップとスポンジ状の気密片とは、使用部分によって、適宜使い分ける事ができる。尚、各図には、前記各気密片34〜38の自由状態での形状を示しており、このうちの図2の右端部には前記上部気密片37を、同じく左端部には前記上隅角部気密片36を、それぞれ省略して示している。
【0031】
前記各縦方向帯状気密片34、34は、帯状で、前記各既存たて枠9a、9aの内側面の屋内外方向中間部に設けられた側部平坦面部40、40に、両面テープ等の接着手段により、それぞれ貼着されている。この様な前記各縦方向帯状気密片34、34は、前記各新規たて枠13a、13aを前記各既存たて枠9a、9aに固定すると同時に、前記各側部平坦面部40、40と、前記各新規たて枠13a、13aの外側面の屋内外方向中間部に設けられた側部突条41、41の先端縁との間で、それぞれ圧縮且つ挟持される。これにより、前記各既存たて枠9a、9aの内側面と前記各新規たて枠13a、13aの外側面との間部分の空間を、屋内外方向中間部で塞いでいる。
【0032】
又、前記横方向帯状気密片35は、帯状で、その長さ方向両端部を前記各縦方向帯状気密片34、34の上端部にそれぞれ実質的に連続させた(近接対向若しくは突き当てた)状態で、前記既存上枠7aの下面に、両面テープ等の接着手段により貼着されている。より具体的には、前記横方向帯状気密片35は、前記既存上枠7aの下面のうちで、屋内外方向に離隔した状態で設けられた1対の既存上部案内レール42a、42b同士の間部分に存在する上部平坦面部43に貼着されている。この様な前記横方向帯状気密片35は、前記新規上枠11aを前記既存上枠7aに固定すると同時に、前記上部平坦面部43とこの新規上枠11aの上面の屋内外方向中間部に設けられた上部突条44の上端縁との間で圧縮且つ挟持される。これにより、前記既存上枠7aの下面と前記新規上枠11aの上面との間部分の空間を、屋内外方向の中間部で塞いでいる。尚、この為に、この新規上枠11aの上面からの前記上部突条44の突出量を、この上部突条44の両側に設けられた前記上部突き当て突条14、14の突出量よりも少しだけ(前記横方向帯状気密片35の自由状態での厚さ寸法よりも少ない分だけ)小さくしている。
【0033】
又、前記各上隅角部気密片36は、自由状態での形状が直方体状であり、前記各縦方向帯状気密片34、34の上端部及び前記横方向帯状気密片35の長さ方向端部をそれぞれ覆う状態で、前記既存窓枠6aの上隅角部(既存上枠7aと既存たて枠9a、9aとの連結部の内側)に、それぞれ設けられている。本例の場合、前記各上隅角部気密片36は、前記各既存たて枠9a、9aの上端部内側面に、両面テープ等の接着手段により、それぞれ貼着されている。この様な前記各上隅角部気密片36は、前記新規上枠11aを前記既存上枠7aに固定すると同時に、前記各既存たて枠9a、9aの上端部内側面と前記新規上枠11aの長さ方向両端縁部との間で圧縮且つ挟持される。これにより、前記既存窓枠6aの上隅角部と前記新規上枠11aの長さ方向両端部との間部分の空間を、屋内外方向中間部で塞いでいる。尚、本例の場合には、前記各縦方向帯状気密片34、34と前記横方向帯状気密片35とを、前記各上隅角部気密片36により覆っているが、これら各縦方向帯状気密片34、34を後述する上部気密片37に、前記横方向帯状気密片35を前記各上隅角部気密片36に実質的に連続させても良い。
【0034】
又、前記各上部気密片37は、それぞれが対となる屋外側上部気密片45と屋内側上部気密片46とから成る。これら屋外側、屋内側両上部気密片45、46は、前記各縦方向帯状気密片34、34の上端寄り部分を覆うと共に、それぞれの上端面を前記各上隅角部気密片36の下端面に実質的に連続させた(近接対向若しくは突き当てた)状態で、前記各既存たて枠9a、9aの上端寄り部分の内側面に、両面テープ等の接着手段により、それぞれ貼着されている。又、前記屋外側、屋内側両上部気密片45、46は、この様に貼着された状態で、前記新規上枠11aの下面の屋内外方向中央部に設けられた新規上部案内レール47を両側から挟持している。この様な前記屋外側、屋内側両上部気密片45、46は、前記各新規たて枠13a、13aを前記各既存たて枠9a、9aに固定すると同時に、これら各既存たて枠9a、9aの上端寄り部分の内側面と前記各新規たて枠13a、13aの上端部外側面との間で圧縮且つ挟持される。これにより、これら各新規たて枠13a、13aの上端部と前記新規上枠11aの長さ方向両端部との間部分に形成された前記各上部隙間23の、屋内外方向中間部を塞いでいる。
尚、前記各上隅角部気密片36、36と前記上部気密片37とは、新規上部案内レール47を挟持する間隔を設けた状態で、一体としても良い。
【0035】
又、前記各下隅角部気密片38、38は、自由状態での形状が直方体状であり、それぞれの側面を前記各縦方向帯状気密片34、34の下端部側面に実質的に連続させた(近接対向若しくは突き当てた)状態で、前記既存窓枠6aの下隅角部(既存下枠8aと既存たて枠9a、9aとの連結部の内側)に、それぞれ設けられている。本例の場合、前記各下隅角部気密片38、38は、前記既存下枠8aの長さ方向両端部上面のうち、前記両既存下部案内レール19a、19b同士の間部分に、両面テープ等の接着手段により、それぞれ貼着されている。この様な前記各下隅角部気密片38、38は、前記新規下枠12aを前記既存下枠8aに固定すると同時に、この既存下枠8aの長さ方向端部寄り部分の上面と前記新規下枠12aの長さ方向端部下面との間で圧縮且つ挟持されると共に、この新規下枠12aの下面に形成された垂下壁部48の長さ方向端部と前記各既存たて枠9a、9aの下端部内側面との間で圧縮且つ挟持される。更に、前記各下隅角部気密片38、38は、前記各新規たて枠13a、13aを前記各既存たて枠9a、9aに固定すると同時に、前記既存下枠8aの長さ方向端部上面と前記各新規たて枠13a、13aの下端面(側部突条41の下端面を含む部分)との間で圧縮且つ挟持される。これにより、前記既存窓枠6aの下隅角部と前記各新規たて枠13a、13aの下端部との間部分の空間を、屋内外方向中間部で塞ぐ共に、前記新規下枠12aの長さ方向両端部とこれら各新規たて枠13aの下端部との間部分に形成された、前記各下部隙間24、24の屋内外方向中間部を塞いでいる。
【0036】
更に、前記横方向シールリップ39は、前記新規下枠12aの下面に、この新規下枠12aの全長に亙り設けられている。具体的には、この新規下枠12aの下面に設けられた前記垂下壁部48の屋外側面に、その基端部を支持されている。この様な前記横方向シールリップ39は、前記新規下枠12aを前記既存下枠8aに固定すると同時に圧縮され、その先端縁をこの既存下枠8aの長さ方向中間部上面に弾性的に接触させた状態で、この既存下枠8aの上面と前記新規下枠12aの下面との間に配設される。又、前記横方向シールリップ39の長さ方向両端部は、前記各下隅角部気密片38、38の側面に、それぞれ実質的に連続する(近接対向若しくは突き当てられる)。これにより、前記既存下枠8aの上面と前記新規下枠12aの下面との間部分の空間を、屋内外方向の中間部で塞いでいる。
【0037】
又、本例の場合には、前記横方向シールリップ39の先端部を、先端側に向かう程屋外側に傾斜させている。この様な構成により、排水性の向上を図っている。即ち、屋外側から屋内側に向けて吹き付ける風によって、前記横方向シールリップ39が屋内側に捲れる事を防止すると共に、前記既存下枠8aの上面を屋内側から屋外側に向けて流れる排水を、前記横方向シールリップ39によって堰き止める事を防止している。
【0038】
以上の様な構成により、本例の場合には、前記既存窓枠6aと前記新規窓枠10aとの間に形成される矩形環状の空間31内に、前記各気密片34〜38と前記横方向シールリップ39とから成る乾式のシールライン32を、全周に亙り隙間なく形成している。従って、本例の場合には、この様なシールライン32によって、前記既存窓枠6aと前記新規窓枠10aとの間の気密性及び水密性を保持している。
以下、上述の様な構成を有する本例の改修用サッシ窓枠装置の組立手順に就いて、主に図9〜17を参照しつつ、順番に説明する。
【0039】
先ず、準備工程として、前記既存窓枠6aの内側から、図示しない1対の既存の引戸障子を取り外す。次いで、この既存窓枠6aを構成する既存上枠7aの下面、既存下枠8aの上面、及び、左右の既存たて枠9a、9aの内側面を、それぞれ脱脂洗浄する。この様な準備工程を終えた後は、先ず、図9に示す様に、1対の縦方向帯状気密片34を、前記各既存たて枠9aの内側面のうちの側部平坦面部40に対して、両面テープ等の接着手段により、それぞれ貼着する。次いで、図10に示す様に、横方向帯状気密片35を、その長さ方向両端部を前記各縦方向帯状気密片34の上端部にそれぞれ実質的に連続させた状態で、前記既存上枠7aの下面のうちの上部平坦面部43に対して、やはり両面テープ等の接着手段により貼着する。この様にして、前記各縦方向帯状気密片34及び前記横方向帯状気密片35を貼着した後に、図11に示す様に、1対の上隅角部気密片36を、前記各縦方向帯状気密片34の上端部及び前記横方向帯状気密片35の長さ方向端部をそれぞれ覆う状態で、前記既存窓枠6aの上隅角部に取り付ける。具体的には、前記各上隅角部気密片36を、両面テープ等の接着手段により、前記各既存たて枠9aの上端部内側面に貼着する。
【0040】
その後、図12に示す様に、新規上枠11aを前記既存上枠7aの下面に、複数の上部タッピングねじ15、15を用いて固定する。これにより、前記新規上枠11aの上面に設けられた上部突条44と、前記既存上枠7aの下面に設けられた上部平坦面部43との間で、前記横方向気密片35を圧縮且つ挟持すると共に、前記新規上枠11aの長さ方向両端部側面(上部突条44の端面を含む部分)と、前記各既存たて枠9aの上端部内側面との間で、前記各上隅角部気密片36を圧縮且つ挟持する。これにより、前記既存上枠7aの下面と前記新規上枠11aの上面との間部分の空間の屋内外方向中間部を塞ぐと共に、前記既存窓枠6aの上隅角部とこの新規上枠11aの長さ方向両端部との間部分の空間の屋内外方向中間部を塞ぐ。言い換えれば、前記既存窓枠6aと前記新規窓枠10aとの間に形成される矩形環状の空間31のうちの上辺を塞ぐ。
【0041】
特に本例の場合には、前記新規上枠11aの見込み寸法(H11a )を、前記各既存たて枠9aの内々寸法(h9a)よりも小さくしている為、前記新規上枠11aの固定作業は、次の様にして行える。先ず、この新規上枠11aを、上下方向に傾斜させた状態で、前記既存上枠7aに下方から近づけ、上方に位置する長さ方向一端部を、一方の既存たて枠9aの内側に比較的大きく進入させる。そして、前記新規上枠11aの長さ方向一端部側面を、一方の上隅角部気密片36の側面に押し付けて、この一方の上隅角部気密片36を大きく弾性変形させる。その後、前記新規上枠11aが水平になるまで長さ方向他端部を上方に持ち上げて、この長さ方向他端部側面を他方の上隅角部気密片36の側面に対向させる。次いで、前記新規上枠11aを、この他方の上隅角部気密片36側に移動させて(やりくりして)、この他方の上隅角部気密片36を弾性変形させる。そして、前記一方と他方の上隅角部気密片36の弾性変形量(つぶし量)をほぼ同じとした後、前記各上部タッピングねじ15、15を用いて、前記新規上枠11aを前記既存上枠7aに対して固定する。
【0042】
上述の様にして、前記新規上枠11aを前記既存上枠7aに固定した後は、図13、14に示す様に、1対の上部気密片37を構成する屋外側上部気密片45及び屋内側上部気密片46を、前記各縦方向帯状気密片34の上端寄り部分を覆うと共に、それぞれの上端面を前記各上隅角部気密片36の下端面に実質的に連続させた(近接対向若しくは突き当てた)状態で、前記各既存たて枠9aの上端寄り部分の内側面に、両面テープ等の接着手段によりそれぞれ貼着する。次いで、図15、16に示す様に、1対の下隅角部気密片38を、それぞれの側面を前記各縦方向帯状気密片34の下端部側面に実質的に連続させた(近接対向若しくは突き当てた)状態で、前記既存下枠8aの長さ方向両端部上面に、両面テープ等の接着手段により、それぞれ貼着する。
【0043】
その後、図17に示す様に、前記各新規たて枠13aを複数の側部タッピングねじ17、17を用いて前記各既存たて枠9aの内側面に固定する。これにより、前記各既存たて枠9aの内側面に設けられた側部平坦面部40と、前記各新規たて枠13aの外側面に設けられた側部突条41の先端縁との間で、前記各縦方向帯状気密片34を圧縮且つ挟持すると共に、前記各既存たて枠9aの上端寄り部分の内側面と前記各新規たて枠13aの上端部外側面との間で、前記各上部気密片37(屋外側上部気密片45及び屋内側上部気密片46)を圧縮且つ挟持する。更に、図18に示す様に、前記既存下枠8aの長さ方向両端部上面と前記各新規たて枠13aの下端面との間で、前記各下隅角部気密片38を圧縮且つ挟持する。これにより、前記各既存たて枠9aの内側面と前記各新規たて枠13aの外側面との間部分の空間の屋内外方向中間部を塞ぐと共に、これら各新規たて枠13aの上端部と前記新規上枠11aの長さ方向両端部との間部分に形成された前記各上部隙間23、23の屋内外方向中間部を塞ぐ。更に、前記既存窓枠6aの下隅角部と前記各新規たて枠13aの下端部との間部分の空間を塞ぐ。言い換えれば、前記既存窓枠6aと前記新規窓枠10aとの間に形成される矩形環状の空間31のうちの両縦辺を塞ぐ。
【0044】
そして最後に、図18に示す様に、新規下枠12aを複数の下部タッピングねじ20、20a、20bを用いて前記既存下枠8aの上面に固定する。この様な作業を行う以前に、この新規下枠12aの下面に形成された垂下壁部48に、横方向シールリップ39の基端部を支持しておく事は勿論である。この様にして前記新規下枠12aを前記既存下枠8aに固定する事により、前記横方向シールリップ39を圧縮すると同時に、その先端縁をこの既存下枠8aの上面に弾性的に接触させた状態で、この既存下枠8aの上面と前記新規下枠12aの下面との間に配設する。更に、前記横方向シールリップ39の長さ方向両端部を、前記各下隅角部気密片38の側面にそれぞれ実質的に連続させる(近接対向若しくは突き当てる)。又、前記既存下枠8aの長さ方向両端寄り部分の上面と前記新規下枠12aの長さ方向両端部下面との間で、前記各下隅角部気密片38を圧縮且つ挟持する。これにより、前記既存下枠8aの上面と前記新規下枠12aの下面との間部分の空間の屋内外方向中間部を塞ぐと共に、この新規下枠12aの長さ方向両端部と前記各新規たて枠13aの下端部との間部分に形成された前記各下部隙間24、24の屋内外方向中間部を塞ぐ。言い換えれば、前記既存窓枠6aと前記新規窓枠10aとの間に形成される矩形環状の空間31のうちの下辺を塞ぐ。
以上の様な工程により本例の改修用サッシ窓枠装置の施工を完了し、その後、前記新規窓枠10aの内側に、新規の引戸障子33a、33bをそれぞれ建て込む。尚、各図には、これら各引戸障子33a、33bを構成するガラスパネルは省略して示している。
【0045】
前述した様な構成を有し、上述した様な工程を経て組み立てられる、本例の改修用サッシ窓枠装置の場合には、施工時間の短縮化を図れると共に、前記既存窓枠6aと前記新規窓枠10aとの間の気密性及び水密性を十分に保持できる。
先ず、本例の場合には、前記既存窓枠6aと前記新規窓枠10aとの間の気密性及び水密性を保持する為のシール手段として、前述した従来構造の場合の様な湿式のシール材を使用せず、それぞれが乾式のシール材である、前記各気密片34〜38と前記横方向シールリップ39とを使用する。この為、シールの乾燥時間が不要になり、施工時間の短縮化を図れる。
【0046】
又、本例の場合には、前記既存窓枠6aを構成する各枠7a〜9aに対して、前記新規窓枠10aを構成する各枠11a〜13aを固定する作業と、これら各枠7a〜9a、11a〜13a同士の間部分の空間を塞ぐ作業とを同時に行える。この為、前記新規窓枠10aを組み付けた後にシーリング作業を行う必要のある、湿式のシール材を用いた場合に比べて、施工時間を大幅に短縮できる。尚、本例の場合には、両面テープ等の接着手段により、前記各気密片34〜38を前記既存窓枠6aを構成する各枠7a〜9aに対して貼着しているが、この様な貼着作業は、湿式のシール材を用いたシーリング作業に比べて十分に短時間で行える。
【0047】
更に、本例の場合には、それぞれが乾式のシール材である、前記各気密片34〜38と前記横方向シールリップ39を使用する為、湿式のシール材を使用した場合の様に、作業に熟練を要しない。即ち、本例の場合には、前記各気密片34〜38と前記横方向シールリップ39とを、前記既存窓枠6aを構成する各枠7a〜9aと、前記新規窓枠10aを構成する各枠11a〜13aとの間で圧縮且つ挟持した状態で、これら新規窓枠10aを構成する各枠11a〜13aを前記既存窓枠6aを構成する各枠7a〜9aに対して固定する必要があるが、本例の場合には、両面テープ等の接着手段を利用して行う為、この作業は、作業者の熟練度を問わず容易に行える。従って、本例の場合には、作業者の熟練度に左右される事なく、前記既存窓枠6aと前記新規窓枠10aとの間の気密性及び水密性を十分に保持する事ができる。
【0048】
又、本例の場合には、前述した従来構造の場合の様に、前記既存窓枠6aから既存上部案内レール42a、42bや既存下部案内レール19a、19b等を切削除去せずに、前記既存窓枠6aをそのまま用いている。この為、切削除去する為の作業時間を省略する事ができて、この面からも施工時間の短縮を図れる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
尚、上述した実施の形態の1例では、新規上枠11aとして、その長さ方向両端縁が直線状の構造を示したが、例えば図19に示す様に、新規上枠11aとして、その長さ方向両端部の屋内外方向中間部のみを、他の部分よりも上隅角部気密片36側に突出させたものを使用する事もできる。
【0050】
又、上述した実施の形態の1例では、新規上枠11aとして、その屋外側壁25の下端寄り部分に、網戸用上部案内レール22を一体に設けた構造を示したが、例えば図20の(A)に示す様に、この網戸用上部案内レール22を省略しても良い。又、前記新規上枠11aの下面に設けられる新規上部案内レール47に関しても、その数は限定されず、例えば同図の(B)に示した様に、屋内外方向に離隔した状態で1対の上部案内レール47a、47bを設けても良い。又、同図の(C)に示す様に、(A)と(B)とに示す構造を組み合わせても良い。
【0051】
更に、前記実施の形態の1例では、既存上枠7aとして、その下面に1対の既存上部案内レール42a、42bを設けた構造を示したが、例えば図21に示す様に、下面中央部に1本の既存下部案内レール42cを設けた構造に関しても、本発明の対象となる。この様な1本の既存下部案内レール42cを有する既存上枠7aを用いる場合には、新規上枠11aの上面に設けた2本の上部突き当て突条14a、14b同士の間に、前記既存上部案内レール42cを位置させる。更に、シールライン32(横方向帯状気密片35)に関しては、鎖線で示す様に、前記既存下部案内レール42cの先端縁と前記新規上枠11aの上面との間で圧縮且つ挟持しても良いし、この既存下部案内レール42cと屋内側壁28との間部分に形成された上部平坦面部43aと、前記新規上枠11aの屋内側の上部突き当て突条14bとの間で圧縮且つ挟持しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 窓枠
2a、2b ガラス障子
3 上枠
4 下枠
5 たて枠
6、6a 既存窓枠
7、7a 既存上枠
8、8a 既存下枠
9、9a 既存たて枠
10、10a 新規窓枠
11、11a 新規上枠
12、12a 新規下枠
13、13a 新規たて枠
14、14a、14b 上部突き当て突条
15 上部タッピングねじ
16 側部突き当て突条
17 側部タッピングねじ
18 下部アタッチメント
19a、19b、19c 既存下部案内レール
20、20a、20b 下部タッピングねじ
21 網戸用下部案内レール
22 網戸用上部案内レール
23 上部隙間
24 下部隙間
25 屋外側壁
26 屋内側壁
27 屋外側壁
28 屋内側壁
29 屋外側壁
30 屋内側壁
31 空間
32 シールライン
33a、33b 引戸障子
34 縦方向帯状気密片
35 横方向帯状気密片
36 上隅角部気密片
37 上部気密片
38 下隅角部気密片
39 横方向シールリップ
40 側部平坦面部
41 側部突条
42a、42b、42c 既存上部案内レール
43、43a 上部平坦面部
44 上部突条
45 屋外側上部気密片
46 屋内側上部気密片
47、47a、47b 新規上部案内レール
48 垂下壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の開口部の内周縁に固定された、既存上枠と既存下枠と左右の既存たて枠とから成る既存窓枠と、この既存窓枠の内側に組み付けられた、新規上枠と新規下枠と左右の新規たて枠とから成る新規窓枠と、この新規窓枠と前記既存窓枠との間の気密性及び水密性を保持する為のシール手段とを備えた改修用サッシ窓枠装置に於いて、
前記新規窓枠を構成する、前記新規上枠と前記新規下枠と前記各新規たて枠とが、前記既存窓枠を構成する、前記既存上枠と前記既存下枠と前記各既存たて枠とに対し、それぞれ個別に固定されており、
前記シール手段は、弾性を有する1乃至複数の乾式のシール材を前記既存窓枠と前記新規窓枠との間に形成される矩形環状の空間内に全周に亙り実質的に連続させて配置して成るもので、前記シール材が、前記新規窓枠を構成する各枠を前記既存窓枠を構成する各枠に対して固定するのと同時に、これら各枠同士の間で圧縮されて、これら各枠同士の間を塞ぐ機能を発揮するものである事を特徴とする改修用サッシ窓枠装置。
【請求項2】
シール材が、スポンジ状の弾性体と弾性材製のシールリップとの何れかである、請求項1に記載した改修用サッシ窓枠装置。
【請求項3】
新規上枠の長さ方向両端部と左右の新規たて枠の上端部、及び、新規下枠の長さ方向両端部とこれら各新規たて枠の下端部とが、それぞれ互いに突き合わされておらず、それぞれの端部同士の間に隙間が設けられている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した改修用サッシ窓枠装置。
【請求項4】
新規上枠を構成する屋外側壁と屋内側壁との外側面同士の幅寸法が、既存上枠を構成する屋外側壁と屋内側壁との内側面同士の幅寸法、及び、左右の既存たて枠を構成する屋外側壁と屋内側壁との内側面同士の幅寸法よりもそれぞれ僅かに小さく、前記新規上枠の長さ方向両端部が前記各既存たて枠の内側にそれぞれ入り込んでいる、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した改修用サッシ窓枠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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