説明

改修用屋根板取付け金具

【課題】折板屋根を改修するときに、断熱作用と、音鳴り防止のためのスライド作用を付加できるようにする。
【解決手段】既設屋根21の上に固定される固定部材41の上に、新設屋根31を取付ける剣先ボルト61が設けられた改修用屋根板取付け金具11であって、固定部材41と、これの上方に保持される断熱部材51とからなる。固定部材41は、左右一対の脚部42,42と、これら脚部42,42の間に、架設されて既設屋根21の上面に載置される載置板44とを有し、載置板44には、既設屋根21上の固定具24の存在を許容するバカ孔44aが設けられる。断熱部材51内には、屋根の長さ方向に沿って長く、剣先ボルトを立てた状態でスライド可能に保持する長孔溝55が設けられて剣先ボルト61が保持されるとともに、剣先ボルト61には、外周方向に張り出して剣先ボルトを断熱部内で安定に支持する支持板部材63が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、折板からなる屋根板を改修するときに用いられる改修用屋根板取付け金具に関し、より詳しくは、単に改修するのみではなく、改修に際して付加価値をつけることができるような改修用屋根板取付け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
折板からなる屋根の改修には、既設屋根を固定している金具と同じように、下地としての既設屋根の上に固定する部分と折板固定用の剣先ボルトとを備えた構造の改修用金具を用いる(たとえば下記特許文献1参照)。つまり、改修は、既設屋根の上に改修用金具を固定し、その上に、新しい屋根、すなわち新設屋根を固定して行う。
【0003】
しかし、このような改修用金具において、改修後の屋根に断熱機能やスライド機能を付与するものはなかった。
【0004】
なお、改修用ではないが、屋根の上からの熱伝導を断ち、屋根板の伸縮を許容する金具が提案されていた。たとえば、下記特許文献2などがある。
【0005】
この断熱支持具は、断面U字形の固定体と、略門形状の上部支持体と、断熱体とからなる。そして、固定体の両立ち上がり側部と上部支持体の両垂下状側部との間に断熱体をそれぞれ設けて固定体と上部支持体とを離間し、上記断熱体を有する部分をボルトからなる固定用軸杆を用いて連結して、固定体と上部支持体とが非接触になるようにする。この固定用軸杆は、固定体に設けられた長孔からなるガイド孔内を摺動可能である。また、屋根板を固定するための固定手段として剣先ボルトかなる螺子杆が上部支持体の上面に立設されている。
【0006】
この構成により、上部支持体に固定された屋根板からの熱伝導は、断熱体によって遮断され、断熱が図られる。また、上部支持体に固定された屋根板が伸縮した時には、その伸縮に伴って上部支持体が固定体の上をスライドし、屋根板にたまるひずみを吸収するので、屋根板の伸縮に伴う音鳴り防止が図られる。
【0007】
しかし、この断熱支持具は、大型建物の屋根に用いられるもので、中小型の建物で好適に使用されている、いわゆる「88(ハチハチ)」と称される折板(以下、「88折板」という。)を取付ける取付け金具では、上記のような断熱とスライドを可能にするものは存在しなかった。
【0008】
88折板は剣先ボルトによって固定されるため、取付け金具の下側部分には下葺の88折板を固定したときの剣先ボルトが存在する一方、取付け金具の上側部分には、上葺の88折板を固定するときの剣先ボルトが必要であって、取付け金具の固定に際して下の剣先ボルトを利用しようとすれば、上の剣先ボルトを取付けるための部分が邪魔になる。そのうえ、断熱のための部材の配置や88折板の高さ(88mm)の関係上、構造や取付け作業が複雑になってしまうからであると考えられる。たとえば上述した特許文献2の構成では、固定体を固定するときに被連結用内螺子を螺合しなければならないが、被連結用内螺子の螺合は上部支持体の下で行われなければならず、螺合作業に上部支持体が邪魔である。しかし、上部支持体を外そうとすると、断熱体をはじめとする複数の部材がばらばらになるので、固定体の固定作業は容易ではない。
【0009】
88折板をスライド可能に固定する取付け金具としては、下記特許文献3のような取付け金具がある。しかし、この取付け金具では、取付け金具の上面に長孔が形成されており、この長孔内を移動可能なようにすべく、屋根板を取付けるためのボルトを、ワッシャとナットとで固定するというものであって、ボルトに取付けられた屋根板は屋根板の長さ方向に伸縮可能であるものの、取付け金具自体に断熱のための構造がないので、断熱機能は、その他の部分に持たせなければならない。つまり、屋根板にたまった熱は取付け金具を介して、取付け金具が固定されている部分にも伝達してしまう。このため、断熱性能はよくない。
【0010】
【特許文献1】特開平9−72048号公報
【特許文献2】実用新案登録第2580538号公報
【特許文献3】実公昭63−11229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、この発明は、特に中小型の建物の屋根に好適に使用でき、老朽化した屋根の改修に際して新たに断熱機能やスライド機能を付加できるようにすることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、既設屋根の上に固定される固定部の上に、新設屋根を取付ける剣先ボルトが設けられた改修用屋根板取付け金具であって、上記固定部が、既設屋根の上部の傾斜に対応して傾斜する左右一対の脚部と、これら脚部の間に、既設屋根の上面から突出している固定具の存在を許容する許容空間と、許容空間の上方に固定されて固定部を新設屋根と非接触にする合成樹脂製の断熱部とを有し、断熱部内には、屋根の長さ方向に沿って長く、剣先ボルトを立てた状態でスライド可能に保持する長孔溝が設けられて前記剣先ボルトが保持されるとともに、剣先ボルトには、外周方向に張り出して剣先ボルトを断熱部内で安定に支持する支持部が形成され、断熱部内に、上記支持部をスライド可能に収容する収容溝が形成された改修用屋根板取付け金具である。
【0013】
上記「固定具の存在を許容する許容空間」とは、固定具があっても固定部を上から載せられるようにする穴や開放された空間の意味である。
【0014】
改修は、既設屋根の上に飛び出ている固定具を、許容空間を備えた固定部で覆うようにして、固定部を既設屋根の上部に上から載せる。そして、固定部の脚部を既設屋根の上に固定してから、固定部の上部に固定した断熱部に保持された剣先ボルトに対して新たな屋根板を固定して新設屋根を葺成する。剣先ボルトは、断熱部の長孔溝内をスライド可能である。このスライドに際しては、支持部が剣先ボルトの立設状態を安定的に支える。
【0015】
このため、新設屋根が熱により伸縮しようとする場合には、剣先ボルトが、屋根の伸縮力にしたがって、屋根の長さ方向に移動し、屋根にひずみがたまるのを回避する。また、断熱部の存在により、新設屋根を固定している剣先ボルトと固定部、また新設屋根と固定部は非接触であるので、断熱性機能も得られる。
【0016】
さらに、このような改修用屋根板取付け金具は、固定部の上に、合成樹脂からなる断熱部を固定し、断熱部内に剣先ボルトをスライド可能に保持した構造であるので、簡素な構造であって、そのうえ上記のように施工に際しての工数も少なく、作業性がよい。また、簡素な構造ゆえに、小型化を図ることもでき、特に中小型の建物の屋根に対して使用するのに好適である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、この発明によれば、特に88折板を用いた屋根ような中小の屋根の改修において、単なる改修ではなく、断熱機能やスライド機能を付加した、付加価値を有する改修が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、改修用屋根板取付け金具11(以下、「改修金具」という。)の斜視図であり、図2は、その使用状態を示す正面図である。
【0019】
これらの図に示すように改修金具11は、老朽化した折板屋根(既設屋根21)の上に固定されて新たな折板(88折板)31aを取付け、新たな折板屋根(新設屋根31)により既設屋根21の改修を行うためのものである。
【0020】
なお、老朽化した折板屋根(既設屋根21)は、下地材22の上に固定されたタイトフレーム23に対して固定されている。固定は、山部と谷部を交互に有するタイトフレーム23の山部に立設された剣先ボルト23aに対して行われる。すなわち、折板21aを剣先ボルト23aの先に載せて、上から叩いて折板21aに孔を開けて剣先ボルト23aに通す。この後で、防水パッキンとナットとからなる固定具24を剣先ボルト23aに取付ける。
【0021】
上記のような改修金具11は、金属板からなる固定部材41と、この固定部材41の上端部に保持される断熱部材51とを有し、断熱部材51には、新たな折板31aを取付けるための剣先ボルト61が屋根の長さ方向に沿ってスライド可能に保持される。
【0022】
固定部材41は、既設屋根21の上部の傾斜に対応して傾斜する左右一対の脚部42,42と、これら脚部42,42の上端位置から上へ延びる左右一対の側板部43,43とを有し、脚部42,42間には、既設屋根21の上面から突出している固定具24の存在を許容する許容空間を有し、側板部43,43間に断熱部材51が着脱可能に固定されている。
【0023】
脚部42,42と側板部43,43は、同一幅であり、1枚の金属板で構成される。すなわち、所定長さの長方形状をなす金属板の長さ方向の両側部分に側板部43,43が形成され、これら側板部43,43の内側に脚部42,42が連設され、脚部42,42の間に、既設屋根21の上端面に載る載置板44が形成されるように、上記の各部を1枚の板で形成する。このため、脚部42,42部分では、板が2重に重合された構造となる(図3参照)。
【0024】
各脚部42,42には、既設屋根21に対して固定するため、ドリルねじ71を螺合するための挿入孔42aが、2個ずつ形成されている。2個の挿入孔42a,42aは、脚部42の長さ方向に沿って配設される。
【0025】
各側板部43,43の中央部分には角孔43aが形成され、上端には、内側に向けてL字型に折曲された係止爪43bが設けられている。
【0026】
そして、上記載置板44の中央部には、上記の許容空間としてのバカ孔44aが形成されている。
【0027】
断熱部材51は、上記固定部材41の係止爪43bより上に出る頭部52と、それより下の胴部53とを有する一つのブロック状の塊で形成されている。そして、固定部材41に対して前後方向(屋根の長さ方向に対応する方向)から嵌められるように、固定部材41の係止爪43bが入る凹溝54,54が左右両側面に形成されている。これらの凹溝54より上が上記の頭部52で、下が上記の胴部53である。
【0028】
頭部52は、両側面が上側ほど幅狭になる傾斜面52aで形成される。
【0029】
胴部53は、固定部材41の側板部43,43間に嵌め込まれたときに不必要用にガタつかない寸法に設定され、固定部材41の角孔43aに対応する部位には、左右方向に貫通する貫通孔53aが設けられている。断熱部材41を固定部材41に対して嵌めてから、角孔43aと貫通孔53aにボルト72を挿通してナット73で締めることにより、断熱部材51と固定部材41が一体化される。
【0030】
なお、胴部の前後方向における一方の端部には、左右方向に張り出すストッパ53bが形成され、他方の端面53cにおける凹溝54以下の部分は、嵌め込みをしやすくするために曲面で形成されている。また、胴部53の底面には、前後方向に長い凹部53dが設けられ、既設屋根21の剣先ボルト23aが万が一にも当たることを回避している。
【0031】
断熱部材51に対する上記の剣先ボルト61の保持は、長孔溝55と収容溝56により行われる。すなわち、図4にも示したように、断熱部材51の上面から下に向けて、前後方向に長い平面視長円形状の長孔溝55が形成されている。この長孔溝55の幅は、剣先ボルト61を立てた状態でスライド可能にする幅である。長孔溝55は、剣先ボルトのスライド範囲を規制する役目もあるため、スライドに必要な長さに設定される。また、凹溝54よりも下の位置で長孔溝55の下端位置に、前後方向に貫通する収容溝56が形成される。収容溝56は、長孔溝55よりも幅広である。
【0032】
剣先ボルト61は、外周方向に張り出して剣先ボルト61を断熱部材51内で安定に支持する支持部を下端部に有するもので、ボルト本体62と、これの下端部に固定される支持板部材63とで構成される。
【0033】
ボルト本体62は、上端の剣先部62aと、この下の、剣先部62aよりも大経でねじの無い無ねじ部62bと、雄ねじ部62cとを有する。この雄ねじ部62cを支持板部材63のねじ孔63aに螺合することで、ボルト本体62が支持板部材63に一体化される。支持板部材63は、所定長さの長方形板状で、中央に上記のねじ孔63aが形成されている。また、両端部が下側に折曲され、ストッパ片63b,63bが設けられている。ストッパ片63bの一方は予め形成されているが、他方は、断熱部材51に対する組み付け後に形成される。剣先ボルト61の保持は、支持板部材63を断熱部材51の収容溝56に差し込んでからボルト本体62の雄ねじ部62cを螺合して行う。
【0034】
ボルト本体62における下側部分と支持板部材63は、左右方向において断熱部材51の内側に位置しており、固定部材41とは非接触である。また断熱部材51から突出するボルト本体62の上側部分は固定部材41と反対方向に位置しており、固定部材41は非接触である。このため、新たな折板31aを取付ける剣先ボルト61は、固定部材41とは非接触になる。
【0035】
このように構成された改修金具11では、固定部材41と断熱部材51が一体化された状態で使用される。
【0036】
使用に当たってはまず、既設屋根21の固定具24の露出している部分に、改修金具11を載せる。つまり、改修金具11の脚部42,42を既設屋根21の上部の傾斜面に重ねるとともに、載置板44に形成されたバカ孔44a内に固定具24が位置するように固定する。そして、脚部42,42の挿入孔42aにドリルねじ71を螺合して、図5に示したように固定部材41を既設屋根21の上に固定する。固定後、又はその前段で、剣先ボルト61の剣先部62aの下端位置に座金部材64が保持される。
【0037】
つぎに、必要に応じて断熱材を敷き込んだ後、新しい折板31aを断熱部材51の剣先ボルト61に固定する。剣先ボルト61の先に折板31aを載せてから上から叩いて、折板31aに孔を開け、剣先ボルト61の剣先部62aに通す。所定の取付け状態を得てから、防水パッキンとナットとからなる固定具65を剣先ボルト61に取付ける。
【0038】
このようにして改修された折板屋根では、新たな折板屋根、すなわち新設屋根31と、既設屋根21との間に断熱部材51が介在しており、金属同士が接触しない構造であるので、断熱作用を得られる。また、新設屋根31を取付けている剣先ボルト61は屋根の長さ方向にスライド可能であるので、新設屋根31が熱によって伸縮した場合にはその伸縮に伴ってスライドし、折板31aにたまろうとする歪を解消する。この結果、音鳴り防止を図ることができる。
【0039】
また、固定部材41と断熱部材51は、ボルト72ナット73で固定されるほかに、凹溝54と係止爪43bでかみ合っているので、係止爪43bは上からの荷重にも、負圧による引き上げ力にも充分に耐えうる高い一体性、強度を得ることができる。この効果は、係止爪43bを有する一対の側板部43,43が1枚の金属板で構成されていることにより、一層高まる。
【0040】
さらに、断熱部材51内に保持される剣先ボルト61には、長方形板状の支持板部材63が設けられ、支持板部材63は、断熱部材51を貫通する長い構造であるので、ボルト本体62の支持が安定して行え、スライド時のスライド動作も滑らかに行える。
【0041】
そのうえ、脚部42,42間の載置板44にはバカ孔44aが形成されて、既設屋根21に対する載置が行われるようにしているので、載置板44が既設屋根21の上端面に接触し、安定して固定できる。また、三面で接触するので、老朽化した既設屋根21に対しても強固な固定が行える。
【0042】
更にまた、上記のように固定部材41と、剣先ボルト61を保持した断熱部材51とよりなり、簡素な構造であるので、組み立て工数、部品点数が少なく、コストを抑えることができる。施工に際しては、既設屋根21の上に載せて新たな折板31aを取付けるだけであるので、施工の作業性も良好である。しかも、簡素な構造ゆえに改修金具11の高さも低く抑えることができる。このため、小型化を図ることもでき、特に上記のような中小型の建物の屋根に対して使用するのに好適となる。
【0043】
そしてこのようにして改修された屋根では、単に改修されるだけではなく、上記のように断熱作用、スライド作用を得ることができ、付加価値を有する屋根となる。
【0044】
なお、剣先ボルト61が施工に際して前後方向の中間位置に存在するように規制するための位置規制手段81を備えるとよい。図6は、その一例であり、断熱部材の上端面に、力をかけると折れる位置規制突起82が形成されている。そして、施工に際して取付ける座金部材64には、上記の位置規制突起82に挿嵌する位置規制孔83が形成されている。位置規制孔83は、位置規制突起82と嵌合対応する大きさよりも若干大きめに設定される。このようにして若干の余裕をもたせることによって、図7に示したように、剣先ボルト61の若干のスライドを許容することができる。この結果、緩衝作用が図れ、施工前において位置規制突起82が不測に折れるのを防止できる。施工後は、新設屋根31が伸縮しようとするとその時の力によって位置規制突起82が折られ、剣先ボルト61のスライドが可能となる。
【0045】
また、図8、図9に示したように、固定部材41の側板部43,43の上部に、内側に向けて傾斜する傾斜片部43cを設け、この先に係止爪43bを形成すると、断熱部材51の頭部52の厚さを薄くすることができる。このようにして、頭部52を薄くすると、改修金具11の高さを低くすることができ、さらなるコンパクト化と軽量化を図ることができる。
【0046】
図10は、スライドを不可能にする部分に用いられる改修金具11の斜視図である。この改修金具11は、ストッパ部材85を備えていることを除けば、図1に示した改修金具11と基本的に同一の構造である。
【0047】
具体的には、固定部材41と断熱部材51については、上記のものと同一のものが使用される。剣先ボルト61は、支持板部材63の両端部が断熱部材51から突出しない長さに設定されている。また、断熱部材51の頭部52には、横コ字状をなす上記のストッパ部材85が、上記の座金部材64に代えて取付けられる。断熱部材51に上述の位置規制突起82(図6、図7参照)が設けられている場合には、ストッパ部材85の取付け前に位置規制突起を折って除去する。
【0048】
なお、上記のように支持板部材63の長さが図1に例示した場合よりも短くても、支持板部材63の両端部が角のない滑らかな形状であれば、ストッパ部材85を外したときに、剣先ボルト61がスライド可能な状態となる。このため、スライドを可能にする部分にも使用できる。
【0049】
図11は、他の例に係る改修金具の斜視図であり、図12はその使用状態の断面図、図13は改修金具の分解斜視図である。
【0050】
この改修金具11は、脚部42,42間における屋根の長さ方向両側に突出する位置に、既設屋根21の上端面に載る接地片45が設けられている。この接地片45は、上記の載置板44から一体に、又はそれとは別体に設けられるものであるもよいが、図13、図14に示したように、固定部材を、上部材46と下部材47との2個の部材で構成し、下部材47に一体に設けられている。
【0051】
すなわち、上部材46は、水平な底面部46aと、これらの両端から立設された側板部43,43と、側板部43,43の上端から内側に折曲された係止爪43bからなる。側板部43には、上記のように角孔43aが形成されている。また、底面部46aの中央には、厚さ方向に貫通する位置決め孔46bが形成され、この位置決め孔46bの前後両側には、同じく厚さ方向に貫通する挿通孔46c,46cが形成されている。これらの挿通孔46cにはリベット48が挿通される。
【0052】
下部材47は、上部材46の底面部46aの下に重合される方形板状の水平な上面部47aと、この上面部47aの4辺のうち、左右両側から垂設される脚部42と、前後両側から垂設される上記の接地片45とからなる。上面部47aには、上部材46の底面部46aと同様に、中央の位置決め孔47b、その前後両側の挿通孔47c,47cが設けられている。
【0053】
脚部42は、垂直な垂直片42bと、この下端から斜め下に向かって延びる傾斜片42cとかなり、傾斜片42cの中央部にはドリルねじ71を挿入する挿入孔42aが形成されている。
【0054】
接地片45は、側面視L字状に形成され、上面側に凸の補強用のリブ45aが設けられている。
【0055】
これら脚部42と接地片45とで囲まれた略直方体状の空間49が、既設屋根21の上面から突出している固定具24の存在を許容する許容空間である。
【0056】
上部材46と下部材47は、上記のリベット48によって固定される。なお、図12中、53eは、リベット48の頭部をぬすむ凹みである。
【0057】
このように構成された改修金具11では、上記のような工程で既設屋根21の上に固定され、新たな折板31aを固定するのに使用される。既設屋根21に対する固定時には、図15に示したように、前後に突出する接地片45,45が既設屋根21の上端面に接地し、新設屋根31が伸縮した時に改修金具11に前後方向に傾く力がかかった場合に、その力に対抗し、固定状態を保持することができる。また、固定部材41の位置決め孔46b,47bには、既設屋根21を取付けていた剣先ボルト23aの先端が侵入する(図12参照)。これによって改修金具11の固定時の位置決めがなされる。
【0058】
図16は、図6に示した改修金具11と同じように、施工に際して剣先ボルト61が、前後方向の中間位置に存在するようにするための位置規制手段81を備えた例である。この場合も同様に、断熱部材51の上端面に、力をかけると折れる位置規制突起82が形成されている。そして、施工に際して取付ける座金部材64には、上記の位置規制突起82に挿嵌する位置規制孔83が形成されている。位置規制孔83は、位置規制突起82と嵌合対応する大きさよりも若干大きめに設定される。このようにして若干の余裕をもたせることによって、剣先ボルト61の若干のスライドを許容することができる。この結果、緩衝作用が図れ、施工前において位置規制突起82が不測に折れるのを防止できる。施工後は、新設屋根82が伸縮しようとするとその時の力によって位置規制突起82が折られ、剣先ボルト61のスライドが可能となる。
【0059】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の固定部は、上記の固定部材に対応し、
以下同様に、
断熱部は、断熱部材51に対応し、
許容空間は、バカ孔44a、空間49に対応し、
支持部は、支持板部材63に対応するも、
この発明は上記の構成に限定されるものではなく、その他の形態を採用することができる。
【0060】
たとえば、断熱部材を左右に2分割して構成すれば、剣先ボルトの支持部は、ボルト本体と予め一体に形成されたものであっても、容易に組み立てが行える。その場合には、収容溝は断熱部材の前後方向に貫通した形態でなくともよい。
【0061】
また、固定部材と断熱部材は、分離不可能に一体化されたものであるもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】改修用屋根板取付け金具の斜視図。
【図2】改修用屋根板取付け金具の使用状態の正面図。
【図3】改修用屋根板取付け金具の分解斜視図。
【図4】断熱部材の分解斜視図。
【図5】改修用屋根板取付け金具の使用状態の断面図。
【図6】他の例に係る改修用屋根板取付け金具の斜視図。
【図7】図6の改修用屋根板取付け金具の平面図。
【図8】他の例に係る改修用屋根板取付け金具の断面図。
【図9】図8に示した改修用屋根板取付け金具の側面図。
【図10】他の例に係る改修用屋根板取付け金具の斜視図。
【図11】他の例に係る改修用屋根板取付け金具の斜視図。
【図12】図11に示した改修用屋根板取付け金具の使用状態の断面図。
【図13】図11の改修用屋根板取付け金具の分解斜視図。
【図14】固定部材の分解斜視図。
【図15】図11に示した改修用屋根板取付け金具の側面図。
【図16】他の例に係る改修用屋根板取付け金具の斜視図。
【符号の説明】
【0063】
11…改修用屋根板取付け金具
21…既設屋根
24…固定具
31…新設屋根
41…固定部材
42…脚部
43b…係止爪
44…載置板
44a…バカ孔
45…接地片
49…空間
51…断熱部材
54…凹溝
55…長孔溝
56…収容溝
61…剣先ボルト
63…支持板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設屋根の上に固定される固定部の上に、新設屋根を取付ける剣先ボルトが設けられた改修用屋根板取付け金具であって、
上記固定部が、既設屋根の上部の傾斜に対応して傾斜する左右一対の脚部と、
これら脚部の間に、既設屋根の上面から突出している固定具の存在を許容する許容空間と、
許容空間の上方に固定されて固定部を新設屋根と非接触にする合成樹脂製の断熱部とを有し、
断熱部内には、屋根の長さ方向に沿って長く、剣先ボルトを立てた状態でスライド可能に保持する長孔溝が設けられて前記剣先ボルトが保持されるとともに、
剣先ボルトには、外周方向に張り出して剣先ボルトを断熱部内で安定に支持する支持部が形成され、
断熱部内に、上記支持部をスライド可能に収容する収容溝が形成された
改修用屋根板取付け金具。
【請求項2】
前記断熱部の左右両側面に凹溝が形成され、
該凹溝に入る係止爪が、固定部の上端部に形成され、
これら一対の係止爪が、1枚の金属板で一体に形成された
請求項1に記載の改修用屋根板取付け金具。
【請求項3】
前記脚部間には、既設屋根の上端面に載る載置板が形成され、
前記許容空間が、載置板に設けられたバカ孔で構成された
請求項1または請求項2に記載の改修用屋根板取付け金具。
【請求項4】
前記脚部間における屋根の長さ方向両側に突出する位置には、既設屋根の上端面に載る接地片が設けられた
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の改修用屋根板取付け金具。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の改修用屋根板取付け金具を用いて改修された
屋根。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−62684(P2009−62684A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229076(P2007−229076)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(390035301)株式会社マルイチ (16)
【Fターム(参考)】