説明

放射線撮影システム

【課題】シンチレータの種類に応じた放射線画像を生成する。
【解決手段】放射線検出器10は、被写体を透過した放射線を受けて蛍光を発するシンチレータ14を有し、当該シンチレータ14から発された蛍光強度に基づき前記被写体の画像情報を生成する制御装置18とを、備えており、制御装置がシンチレータ14の種類を示すシンチレータ情報を前記画像情報に付加するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被写体の放射線撮影に際し適用される放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療診断を目的とする放射線撮影分野においては、被写体に放射線を照射してその被写体を透過した放射線の強度分布を検出することにより、当該被写体の放射線画像を得る放射線撮影システムが広く知られている。近年の放射線撮影システムでは、多数の光電変換素子をマトリクス状に配した薄型平板状の所謂「フラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector)」という放射線検出器が開発・使用され、その放射線検出器で被写体を透過した放射線を電気信号に光電変換して画像情報とし、その画像情報を画像処理することにより、容易かつ迅速に被写体の放射線画像を得ることができるようになっている。
【0003】
上記放射線検出器は、放射線をそのまま電気信号に変換する「直接変換型」と、放射線を蛍光に変換してその蛍光から電気信号に変換する「間接変換型」とに大別される。間接変換型の放射線検出器には、通常、放射線を受けてその放射線量に応じた強度で蛍光を発するシンチレータが配されており(例えば特許文献1参照)、その種類もいくつかある。特にこの放射線検出器を用いる場合には、シンチレータの種類で放射線に対する感度が異なるため、シンチレータの種類に応じた放射線撮影の条件を選定する必要があり、さらには取得した画像情報に対しシンチレータの種類に応じた画像処理をおこなうことが効果的である。
【特許文献1】特開平7−140255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シンチレータを具備した間接変換型の放射線検出器又はその放射線検出器を一部に組み込んだ放射線撮影システムにおいて、取得した画像情報には、シンチレータの種類を示すシンチレータ情報が含まれていないため、取得した画像情報の画像処理に際し、シンチレータの種類ごとに異なる特徴的な処理をおこなうことができず、シンチレータの種類に応じた放射線画像を生成することができない。
【0005】
本発明の目的は、シンチレータの種類に応じた放射線画像を生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明の放射線撮影システムは、
被写体を透過した放射線を受けて蛍光を発するシンチレータを有し、当該シンチレータから発された蛍光強度に基づき前記被写体の画像情報を生成する放射線検出器と、
前記シンチレータの種類を示すシンチレータ情報を前記画像情報に付加するシンチレータ情報付加手段と、
を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の放射線撮影システムにおいて、
前記シンチレータの種類に応じた画像処理方法を予め格納した画像処理装置を備え、
前記画像処理装置が、
前記シンチレータ情報を取得し、取得した前記シンチレータ情報に応じた画像処理方法に従いながら、前記画像情報を画像処理することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明では、シンチレータ情報付加手段を備えるため、画像情報にシンチレータ情報を付加することができる。そのため、画像情報の画像処理に際しては、付加されたシンチレータ情報に基づき当該画像情報を画像処理することができ、シンチレータの種類に応じた放射線画像を生成することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、画像処理装置がシンチレータ情報に応じた画像処理方法に従いながら画像情報を画像処理するため、画像情報にはシンチレータの種類に応じた画像処理が施され、シンチレータの種類に応じた放射線画像を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態に係る放射線撮影システム1の概略構成を示す図面である。
図1に示す通り、第1の実施形態に係る放射線撮影システム1は、被写体(被験者)Mに放射線を照射して被写体Mの放射線撮影をおこなう撮影装置2と、被写体Mの放射線画像を生成する画像処理装置3とを、備えている。
【0012】
撮影装置2は診療所・病院等の医療施設に設置され使用されるものである。撮影装置2は放射線源4を有しており、当該放射線源4に管電圧が印加されることによって放射線を放射するようになっている。放射線源4の放射線放射口には放射線照射野を調節する絞り装置5が開閉自在に設けられている。放射線源4の下方であって放射線照射範囲には被写体Mを載置させる寝台6が設けられている。寝台6には、被写体Mを透過した放射線を検出する放射線検出器10が配されている。放射線検出器10は寝台6に対し着脱自在に配された持ち運び自在のカセッテ型放射線検出器である。
【0013】
画像処理装置3は、汎用のコンピュータであって放射線検出器10の検出結果に基づき被写体Mの放射線画像を生成する制御装置30を有しており、その他に、放射線検出器10との通信をおこなうためのコネクタ31(図3参照)、被写体Mの放射線画像等を表示するディスプレイ32、制御装置30に各種情報を入力するためのキーボード・マウス33等を有している。
【0014】
図2は放射線検出器10の概略構成を示す斜視図である。
図2に示す通り、放射線検出器10は薄型で直方体状の筐体11を有しており、筐体11の天板の一部が放射線の散乱成分を吸収・除去するグリッド12となっている。筐体11の側部には把手13が配されており、放射線検出器10を容易に持ち運ぶことができるようになっている。
【0015】
筐体11の内部には、放射線の強度に応じた強度で蛍光を発する四角形状のシンチレータ14が配されている。シンチレータ14はGOS(Gd22S:Tb)やCsI等の蛍光体で構成されている。シンチレータ14の下部又は下方には蛍光を検出する平板状の蛍光検出パネル15が配されている。
【0016】
蛍光検出パネル15には、蛍光を受光してその受光量に応じた電荷を蓄積する多数の光電変換素子がマトリクス状(格子状)に配されている。蛍光検出パネル15の側部には、各光電変換素子にパルスを送って当該各光電変換素子を走査・駆動させる走査ドライバ16と、各光電変換素子に蓄積された電荷量を読み出す信号ドライバ17とが、配されている。
【0017】
筐体11の内部には、走査ドライバ16及び信号ドライバ17その他の部材の動作を制御する制御装置18と、電力供給源となるバッテリ19とが、配されている。バッテリ19は筐体11に対し着脱自在に配されており、充電に際し他のバッテリ19と容易に交換することができる。
【0018】
また、筐体11には、画像処理装置3との通信をおこなうためのコネクタ20、バッテリ19の充電残量等を表示する表示パネル21、放射線検出器10の電源のON/OFFを切り替える電源ボタン22等が配されている。
【0019】
図3は放射線撮影システム1の回路構成を示すブロック図である。
図3に示す通り、放射線検出器10においては、制御装置18は汎用のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成された制御部25を有している。制御部25は、ROMに記録された処理プログラムをRAMに展開し、CPUにより当該処理プログラムを実行するようになっている。
【0020】
制御部25には走査ドライバ16、信号ドライバ17、バッテリ19、コネクタ20、表示パネル21、電源ボタン22等の各部材が接続されており、制御部25は、走査ドライバ16、信号ドライバ17、バッテリ19、コネクタ20、表示パネル21、電源ボタン22等の各部材の動作状況等に基づいて各構成を制御するようになっている。
【0021】
なお、制御装置18は、上記制御部25の他に、切り替え可能な多段階式のスイッチ26を有しており、放射線検出器10の製造時においてスイッチ26がシンチレータ14の種類に応じた状態とされている。例えば、放射線検出器10の製造時にGOSの蛍光体から構成されたシンチレータ14が配される場合には、スイッチ26が「1」を示す状態とされ、放射線検出器10の製造時にCsIの蛍光体から構成されたシンチレータ14が配される場合には、スイッチ26が「0」を示す状態とされる。
【0022】
一方、画像処理装置3においては、制御装置30は汎用のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成された制御部35を有している。制御部35は、ROMに記録された処理プログラムをRAMに展開し、CPUにより当該処理プログラムを実行するようになっている。
【0023】
特に、制御部35のROMには、シンチレータ14の種類に応じた複数の画像処理方法が処理プログラムの一部として記録されている(シンチレータ14の種類と画像処理方法とが1対1で対応している。)。各画像処理方法はシンチレータ14の種類ごとに異なり、各画像処理方法中では、シンチレータ14の種類ごとにその特性に応じた最適な画像処理条件が規定されている。制御部35のCPUは、複数の画像処理方法の中から任意の画像処理方法を選択することができ、その選択した画像処理方法に従いながら、当該処理プログラムを実行するようになっている。
【0024】
また、制御部35にはコネクタ31、ディスプレイ32、キーボード・マウス33等の各部材が接続されており、制御部35は、コネクタ31、ディスプレイ32、キーボード・マウス33等の各部材の動作状況等に基づいて各構成を制御するようになっている。
【0025】
以上の放射線撮影システム1では、放射線検出器10のコネクタ20と画像処理装置3のコネクタ31とがケーブル等の部材で接続されるようになっており、各コネクタ20、31を通じて放射線検出器10と画像処理装置3との間で互いに通信可能となっている。
【0026】
なお、放射線検出器10と画像処理装置3との通信は、上記の通り有線によるものであってもよいが、周知の無線によるものであってもよいし、ネットワークを介した周知の有線又は無線によるものであってもよく、特にネットワークを介した通信を適用する場合には、画像処理装置3及び放射線検出器10からネットワークへの接続は例えば無線LAN(Local Aria Network)によって実現するのが好ましい。
【0027】
続いて、放射線撮影システム1の動作・作用について説明する。
【0028】
放射線検出器10と画像処理装置3とが互いに通信可能とされた状態において、被写体Mの放射線撮影が開始されると、撮影装置2が、寝台6に横たわった被写体Mに対し放射線源4から絞り装置5を介して放射線を照射し、被写体Mを透過した放射線が放射線検出器10に入射する。放射線が放射線検出器10に入射すると、当該放射線は、放射線検出器10のグリッド12で散乱成分が吸収・除去されてシンチレータ14に入射し、シンチレータ14が放射線の強度に応じた強度で蛍光を発する。
【0029】
シンチレータ14が蛍光を発すると、蛍光検出パネル15の各光電変換素子がシンチレータ14で発された蛍光を受光してその受光量に応じた電荷を蓄積する。各光電変換素子が電荷を蓄積すると、制御装置18の制御部25が走査ドライバ16及び信号ドライバ17を制御して、走査ドライバ16が各光電変換素子にパルスを送り、信号ドライバ17が各光電変換素子に蓄積された電荷量を読み出す。
【0030】
信号ドライバ17が電荷量を読み出すと、当該信号ドライバ17がその読み出した電荷量を電気信号に変換してその電気信号を制御装置18の制御部25に出力する。制御装置18の制御部25は、入力された電気信号から被写体Mの「画像情報」を生成するとともに、スイッチ26の状態を読み出してシンチレータ14の種類を示す「シンチレータ情報」を生成する。
【0031】
画像情報及びシンチレータ情報を生成したら、制御装置18の制御部25は、シンチレータ情報付加手段となってそのシンチレータ情報をヘッダー情報として画像情報に付加し、当該画像情報(シンチレータ情報を含む。)をコネクタ20から画像処理装置3に送信する。
【0032】
画像処理装置3はその画像情報をコネクタ31で受信し、制御装置30の制御部35が、受信した画像情報からシンチレータ情報を抽出し、予め格納された複数の画像処理方法の中から、抽出したシンチレータ情報に基づく画像処理方法を選択する。そして制御装置30の制御部35は、その選択した画像処理方法に従いながら、受信した画像情報を画像処理して放射線画像を生成する。生成された放射線画像は、被写体Mの放射線画像としてディスプレイ32に表示される。
【0033】
以上の放射線撮影システム1では、放射線検出器10がシンチレータ情報を画像情報に付加し、画像処理装置3が、付加されたシンチレータ情報に基づく画像処理方法に従いながら画像情報を画像処理するため、当該画像情報は、シンチレータ14の種類に応じた最適な条件で自動的に画像処理される。そのため、シンチレータ14の種類に応じた被写体Mの放射線画像を生成することができる。
【0034】
[第2の実施形態]
図4は第2の実施形態に係る放射線撮影システム100の回路構成を示すブロック図である。第2の実施形態に係る放射線撮影システム100では、下記の点で上記放射線撮影システム1と異なっており、それ以外の構成、動作及び作用は上記放射線撮影システム1と同様である。
【0035】
すなわち、図4に示す通り、放射線検出器10において、制御装置18にはスイッチ26(図3参照)が配されておらず、その代わりに、放射線検出器10に固有の「ID(IDentification)情報」が制御装置18の制御部25(のROM)に予め記録されている。当該ID情報は放射線検出器10ごとに異なるものである。
【0036】
画像処理装置3においては、ID情報に対応するシンチレータ情報(シンチレータ14の種類を示す情報)が制御装置30の制御部35(のROM)に予め格納されており、制御装置30の制御部35は、ID情報を取得すると、そのID情報からシンチレータ情報を特定することができるようになっている。
【0037】
このような構成を具備した放射線撮影システム100において、被写体Mの放射線撮影が開始され、その後、信号ドライバ17が各光電変換素子に蓄積された電荷量を電気信号に変換してその電気信号を制御装置18の制御部25に出力すると、制御装置18の制御部25は、入力された電気信号から被写体Mの「画像情報」を生成するとともに、予め格納されたID情報をヘッダー情報として上記画像情報に付加し、当該画像情報(ID情報を含む。)をコネクタ20から画像処理装置3に送信する。
【0038】
画像処理装置3はその画像情報をコネクタ31で受信し、制御装置30の制御部35が、受信した画像情報からID情報を抽出し、そのID情報に対応するシンチレータ情報を特定する。シンチレータ情報を特定したら、制御装置30の制御部35は、シンチレータ情報付加手段となって、特定したシンチレータ情報を画像情報に付加する。
【0039】
シンチレータ情報を画像情報に付加したら、制御装置30の制御部35は、その画像情報からシンチレータ情報を抽出し、予め格納された複数の画像処理方法の中から、抽出したシンチレータ情報に基づく画像処理方法を選択する。そして制御装置30の制御部35は、その選択した画像処理方法に従いながら、受信した画像情報を画像処理して放射線画像を生成する。生成された放射線画像は、被写体Mの放射線画像としてディスプレイ32に表示される。
【0040】
以上の放射線撮影システム100では、画像処理装置3が、放射線検出器10のID情報からシンチレータ情報を特定し、そのシンチレータ情報を画像情報に付加し、付加したシンチレータ情報に基づく画像処理方法に従いながら画像情報を画像処理するため、当該画像情報は、シンチレータ14の種類に応じた最適な条件で自動的に画像処理される。そのため、シンチレータ14の種類に応じた被写体Mの放射線画像を生成することができる。
【0041】
なお、本発明は上記の第1,第2の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更をおこなってもよい。
例えば、第1,第2の実施形態では、画像処理装置3の制御部35に予め格納された画像処理方法がシンチレータ14の種類と1対1で対応したが、1種類のシンチレータ14に対し複数の画像処理方法を対応させて、シンチレータ14の種類ごとに複数の画像処理方法を制御部35に予め格納してもよい。この場合、制御部35が画像情報からシンチレータ情報を抽出したら、制御部35が複数の画像処理方法の中から最適な条件の画像処理方法を自動的に選択してもよいし、制御部35が複数の画像処理方法をディスプレイ32に表示させ、ユーザがキーボード・マウス33による操作で画像処理方法を選択するような構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】放射線撮影システムの概略構成を示す図面である。
【図2】放射線検出器の概略構成を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る放射線撮影システムの回路構成を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態に係る放射線撮影システムの回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1,100 放射線撮影システム
3 画像処理装置
30 制御装置
35 制御部(シンチレータ情報付加手段)
10 放射線検出器
14 シンチレータ
18 制御装置
25 制御部(シンチレータ情報付加手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線を受けて蛍光を発するシンチレータを有し、当該シンチレータから発された蛍光強度に基づき前記被写体の画像情報を生成する放射線検出器と、
前記シンチレータの種類を示すシンチレータ情報を前記画像情報に付加するシンチレータ情報付加手段と、
を備える放射線撮影システム。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影システムにおいて、
前記シンチレータの種類に応じた画像処理方法を予め格納した画像処理装置を備え、
前記画像処理装置が、
前記シンチレータ情報を取得し、取得した前記シンチレータ情報に応じた画像処理方法に従いながら、前記画像情報を画像処理することを特徴とする放射線撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−330274(P2007−330274A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269977(P2004−269977)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】