説明

放熱吸遮音ハニカムパネル体及びボックス状構造物

【課題】通常は両立し難い、吸・遮音性と熱放散性とを兼ね備えるハニカムパネル体を実現すること。
【解決手段】良好な熱伝導体であるアルミニウム製ハニカム材のセルに、良好な音エネルギー減衰物質である連通気泡構造を有するフェノール硬質発泡体を押込み充填して芯層材を形成し、該芯層材の一方の面に音と熱を通過させる通気性表面材を、他方の面に音を反射するが熱を通過させる板材を接着剤で貼りつけた、熱放散性と共に吸音性を兼ね備えるハニカムパネル体、又は該芯層材の両面に音を反射するが熱を通過させる板材を接着剤で貼りつけた、熱放散性と共に遮音性を兼ね備えるハニカムパネル体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音性又は遮音性と共に熱放散性を備えるハニカムサンドイッチパネル及びこれを用いたボックス状構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンプレッサー室等、熱と騒音が発生する空間に騒音対策を施そうとすると騒音の遮断と共に熱の放散が妨げられるため、その空間の温度が上昇するだけでなく、壁や扉の内外温度差による熱応力が不具合を惹き起こすことがある。
【0003】
そこで、比較的薄くても吸・遮音性を発揮するハニカムパネル体の使用が考えられるが、そのようなパネル体の熱放散性が不足していると、やはり空間温度上昇の問題や熱応力の問題が発生する。そのため、熱伝導を阻害する傾向を持つフォーム材等をハニカムセルに充填せず、セルを空のままで使用することが少なくない。しかし、空のままのハニカムパネルは有効な吸音性を期待できず、遮音性も不十分である。
【0004】
【特許文献1】特開平10−128886号公報
【特許文献2】特開平11−329253号公報
【特許文献3】特開2005−167233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、通常は両立し難い、吸・遮音性と熱放散性とを兼ね備えるハニカムパネル体を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
アルミニウム製ハニカム材のセルに連通気泡構造を有するフェノール硬質発泡体を押込み充填して芯層材を形成し、該芯層材の一方の面に音と熱を通過させる通気性表面材を、他方の面に音を反射するが熱を通過させる板材を接着剤で貼りつけ、又は該芯層材の両面に音を反射するが熱を通過させる板材を接着剤で貼りつけた、吸音性又は遮音性と共に熱放散性を兼ね備えるハニカムパネル体である。なお、ハニカム材のセルの形状は六角形が一般的であるが、それに限られない。
【発明の効果】
【0007】
良好な熱伝導体であるアルミニウム製ハニカム材を芯層材に用い、該芯層材の両面に熱を通す表面材を取付けることにより、パネル体の表面から裏面への熱の伝導が良好になり、パネル体表裏の温度差が小さく保たれるので、熱応力によるパネル体の変形が防止される。熱放散性が改良されるため、このパネル体で覆った空間の温度上昇を抑えることができる。
【0008】
また、良好な音エネルギー減衰物質である、連通気泡構造を有するフェノール硬質発泡体をハニカム材のセルに押込み充填して芯層材を形成するので、空のままのハニカムパネルと比較して、吸音性又は遮音性が格段に改善される。そのため、アルミニウム製ハニカム材と表面材との熱伝導効果と相俟って、熱の放散と騒音の抑制とを同時に実現することができる。
【0009】
当該ハニカムパネル体に吸音性を持たせる場合は、パネル体の一方の面から音エネルギーを取り入れるように、板状に成形した金属繊維やセラミックス繊維等、通気性と伝熱性を有する表面材を接着により芯層材に取り付ける。パネル体の他方の面には音を反射するが熱を通すアルミニウム板等の非通気性表面材を取り付けて、一旦芯層材を透過した音エネルギーを反射させて発泡体内へ戻し、さらに吸収・減衰させる。
【0010】
当該ハニカムパネル体に遮音性を付与する場合は、パネル体の両面に音を反射するが熱を通すアルミニウム板等の非通気性表面材を取り付ける。この場合にも、芯層材にフェノール硬質発泡体を充填することにより、表面材を透過して芯層材中へ侵入した音エネルギーを減衰させて、パネル裏面への音の漏れ出しをより完全に抑えることができる。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の第1実施例としての、吸音性と熱放散性とを兼ね備えるハニカムパネル体の一部破断斜視図である。図中の参照符号1は通気性表面材、2は接着剤、3はアルミニウム製ハニカム材、4はフェノール硬質発泡体、6は非通気性表面材を示す。
【0012】
本実施例では、高さ25mm、六角形のセル壁の間隔が9mm、セル壁の厚さが3/1000インチのアルミニウム製ハニカム材3を用い、そのセルに、厚さが24mmで、連通気泡構造を有する密度23kg/m3のフェノール硬質発泡体4をプレスで押し込んで充填した。
【0013】
通気性表面材として厚さ1.6mmのアルミニウム繊維板1を用いた。なおハニカム材3のセルの先端には1mmだけ発泡体4が充填されない空間が存在するので、発泡体4の気泡を塞がないため、当該空間部分のセル壁先端にのみ接着剤2を付着させ、そこに繊維板1を押し当てて接着した。接着剤2は、熱伝導率向上のためアルミニウム等の金属粉を混練しても良い。
【0014】
非通気性表面材として厚さ1.2mmのアルミニウム板6を用いた。その全面に接着剤2を塗布し、ハニカム材3の下面に押し当てて接着した。その結果仕上り厚さ27.8mmのパネル体が形成された。
【0015】
次に、サンドイッチパネルの熱的性能と音響的性能を測定した。
(1)熱的性能の一つである熱貫流抵抗は、ハニカム材3のセルを空のままにする場合とセルにフェノール硬質発泡体4を充填する場合を調べたところ、いずれも0.4[m2・K/W]で同一であった。この結果は、アルミニウム製ハニカム材3の熱伝導が支配的であるところから生じたもので、例えばペーパーハニカムのように熱伝導率が小さい場合は当てはまらない。その場合は、セルに発泡体を充填するとセル内の対流伝熱が減少する結果、セルが空のままの状態より熱貫流抵抗が増大する。
【0016】
(2)音響的性能としては、各種高さ(厚さ)の発泡体充填ハニカム材について、125Hzから4000Hzまでの垂直入射吸音率を測定した。図2の記号×は高さ20mm、○は30mm、□は40mm、△は50mmの場合である。これによれば、高さ20mmのものは1000Hz以下の領域で吸音率が劣るが、30mmを超えれば大差がなくなり、30mmを選べば十分であることが分かる。
【実施例2】
【0017】
図3は、本発明の第2実施例としての、ハニカムパネル体を用いたボックス状構造物の概念図である。ハニカムパネル体で天面及び4側面を覆い、幅1400、奥行600、高さ1000mmの防音室を形成した。図3において参照符号7は熱放散性と遮音性とを兼ね備えるパネル体、8は熱放散性が少ないパネル体、9は容量1.5kWの空冷式コンプレッサー、10はコンクリート床面、11は棒温度計である。棒温度計11は、感熱球が防音室の天面の中央から150mm下方の室内空間に位置するように配置した。また、図示しない表面温度計を用いて各ハニカムパネル体の外面温度を測定した。
【0018】
本実施例に用いたハニカムパネル体のうち参照符号7のものは、実施例1に示したものと同一である。また参照符号8のものは、上記パネル体7のアルミニウム製ハニカム材を同寸法のペーパーハニカムで置き替え、フェノール硬質発泡体を充填したものである。
【0019】
防音室が無いときの90dBの騒音が、上記防音室により55dBに低下した。
【0020】
図4は、上記防音室を囲む5面のパネル体中の2面(天面及び前面)をパネル体7又は8のいずれで構成するかによる相違を、防音室内の温度とパネル体の外面温度により示したグラフである。縦軸は表示温度[℃]、横軸は経過時間[分]である。このグラフの4本の曲線中上方の2本は室内温度を示し、「断熱」はパネル体8、「放熱」はパネル体7を用いた場合である。パネル体の熱放散性の大小による室内温度の差(390分経過時点で「断熱」の方が約15℃高い)は時間と共に増大する。また、下方の2本の曲線はパネル体の外面温度である。「断熱」より「放熱」の方が5〜6℃高く表示されるが、その差は次第に縮小する傾向を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施例としての、吸音性と熱放散性とを兼ね備えるハニカムパネル体の一部破断斜視図である。
【図2】各種高さ(厚さ)の発泡体充填ハニカム材の垂直入射吸音率を示すグラフである。
【図3】本発明の第2実施例として、防音室の天面及び4側面をハニカムパネル体で覆って騒音を遮断する事例を示す概念図である。
【図4】実施例2における室内温度とパネル体の外面温度の時間的推移を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
1 厚さ1.6mmのアルミニウム繊維板
2 接着剤
3 アルミニウム製ハニカム材
4 連通気泡フェノール硬質発泡体
6 厚さ1.2mmのアルミニウム板
7 熱放散性を有するハニカムパネル体
8 熱放散性を有しないハニカムパネル体
9 コンプレッサー
10 コンクリート床面
11 棒温度計



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製ハニカム材のセルに連通気泡構造を有するフェノール硬質発泡体を押込み充填して芯層材を形成し、該芯層材の一面に音と熱を通過させる通気性表面材を、他の面に音を反射するが熱を通過させる板材を接着剤で貼りつけてなる、吸音性と熱放散性とを兼ね備えるハニカムパネル体。
【請求項2】
請求項1記載の芯層材の両面に、音を反射するが熱を通過させる板材を接着剤で貼りつけてなる、遮音性と熱放散性とを兼ね備えるハニカムパネル体。
【請求項3】
金属粉が混練された接着剤を用いる請求項1又は2記載のハニカムパネル体。
【請求項4】
騒音低減のために発熱を伴う騒音源を覆うボックス状構造物であって、当該構造物の壁面の少なくとも1面を、請求項1乃至3記載のハニカムパネル体をもって構成した前記構造物。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−313698(P2007−313698A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143654(P2006−143654)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(506083844)株式会社 静 科 (8)
【Fターム(参考)】