説明

放送受信装置

【課題】仕向け先が多数の国や地域におよぶ製品においても相当数の品種を揃える必要がなく、かつ、手動での設定変更を不要とする放送受信装置を提供する。
【解決手段】放送波を受信する放送受信手段(チューナ1、DSP8)と、エリア毎、放送規格情報が設定される記憶手段(フラッシュメモリ4)と、位置検出手段(GPSレシーバ2)で検出された位置情報に従い特定されるエリア情報に基づき記憶手段4を参照し、該当する放送規格情報を選択して放送受信手段(DSP8)へ設定する制御手段(制御装置3)とにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この説明は、GPS(Global Positioning System)等、位置検出手段を備えた放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AM、FMラジオの放送方式は世界各国でほぼ同一であるが、その放送規格は、国や地域により若干の違いがある。例えば、FM放送周波数に関し、米国では87.7MHz〜107.MHz、日本では、76.0MHz〜90.0MHzとなっている。
また、副搬送波に、放送番組に関連する情報、交通情報等を重畳して放送を行う放送形態も知られている。例えば、欧州で広く普及しているFM多重放送であるラジオデータシステム(RDS)、米国におけるラジオブロードキャストデータシステム(RDBS)、デジタルオーディオブロードキャスティング(DAB)等である。
【0003】
上記したRDSは、欧州では広く普及しているが、その他の地域ではあまり普及しておらず、他も同様である。これらの地域差により、例えば、北米向け、欧州向けのラジオ受信機を日本で使用することは、ラジオの受信周波数範囲が異なるため不可能である。
また、例えば、RDS放送が無い地域でRDS放送受信機能搭載のラジオ受信機の使用を試みても、RDS放送受信機能に関連したスイッチが画面に表示されているにもかかわらず情報の受信が出来ないため、ドライバーに不快感を与えることになる。
【0004】
上記した問題を解決するために、GPSを利用し、自車位置により必要な地域の交通情報を取得し、国境付近を走行している場合に誤って隣国の交通情報を受信しないように制御する多重放送受信装置(例えば、特許文献1参照)、あるいは、受信環境が悪化したとき、自車位置によって代替周波数に自動切換えする放送受信機のパラメータの制御方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−64391号公報(段落「0013」〜「0016」、図2)
【特許文献2】特開2003−526995号公報(段落「0008」〜「0013」、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1、特許文献2に開示された技術によれば、国や地域等エリア毎に最適な情報あるいは放送が受信できるが、上記同様、例えば、RDS放送が無い地域でRDS放送受信機能搭載のラジオ受信機の使用を試み、画面表示された内容に基づきボタン操作しても情報の受信は不可能であり、したがって上記した課題を根本的に解決できるものではない。
このことを解決するために、通常、メーカでは仕向け先毎にソフトウェアを変更し、仕向け先の規格に合った仕様に変更して製品を出荷するが、仕向け先が多数の国や地域におよぶ製品では相当数の品種を揃える必要があり、決して得策といえる方法ではない。また、車両を販売する時点で設定を変更する方法もあるが、作業ミス等により誤った設定になる可能性もある。
【0007】
この発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、国や地域等エリアによって異なる放送規格情報をパラメータとして持つことにより、仕向け先が多数の国や地域におよぶ製品においても相当数の品種を揃える必要がなく、かつ、手動での設定変更を不要とした、放送受信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る多放送受信装置は、放送波を受信する放送受信手段と、エリア毎、放送規格情報が設定される記憶手段と、位置検出手段で検出された位置情報に従い特定されるエリア情報に基づき記憶手段を参照し、該当する放送規格情報を選択して放送受信手段へ設定する制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、国や地域等エリアによって異なる放送規格情報をパラメータとして持つことにより、仕向け先が多数の国や地域におよぶ製品においても相当数の品種を揃える必要がなく、かつ、手動での設定変更を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る放送受信装置の内部構成を示すブロック図である。ここでは、放送受信装置として車載用RDS放送対応受信機を例示する。
車載用RDS放送対応受信機は、放送受信手段としてのチューナ1およびDSP(Digital Signal Processor)8と、位置検出手段としてのGPSレシーバ2と、マイクロプロセッサを制御中枢とする制御手段としての制御装置3と、後述する放送規格情報(以下、パラメータという)が設定記憶される記憶手段としてのフラッシュメモリ4と、地図データが記憶されるハードデスク装置(以下、HDDという)5と、LCD(Liquid Crystal Device)タッチパネル6と、デコーダ7と、アンプ9と、スピーカ10とで構成される。
【0011】
チューナ1により受信される放送波はDSP8に供給される。DSP8は、後述する制御装置3により設定されるパラメータに従い動作し、チューナ1から出力される放送を音声信号に変換し、アンプ8により増幅後、その音声信号をスピーカ10により音声出力する。
一方、GPSレシーバ2は、地球を周回している複数の衛星からの電波を受信し、緯度、経度等の位置情報を演算して制御装置3へ出力する。制御装置3へは、他に、放送波に重畳されるデータを復調してデコードするデコーダ7出力も供給されている。
【0012】
制御装置3は、GPSレシーバ2から出力される車両の現在位置情報に基づき特定される国や地域等のエリア情報からフラッシュメモリ4を参照し、このフラッシュメモリ4から該当するパラメータを選択してチューナ1およびDSP8へ設定する。
なお、制御装置3によるコントロールにより、LCDタッチパネル6は、ユーザがタッチパネルを操作することにより入力されるデータを取り込み、あるいはLCDデスプレイにデータ表示を行う。
【0013】
図2は、図1に示す制御装置の内部構成を機能展開して示したブロック図である。制御装置3の構成を機能的に区分すれば、位置情報取得部31と、現在地判定部32と、パラメータ選択部33と、パラメータ設定部34と、画面デザイン生成部35と、文字情報生成部36とから成る。
【0014】
位置情報取得部31は、GPSレシーバ2から車両の現在位置情報を取得して現在地判定部32へ供給する。現在判定部32は、位置情報取得部31から取得される車両の現在位置情報に基づき、HDD5に記憶された地図データを参照して現在地(エリア)判定を行い、パラメータ選択部33へ供給する。
パラメータ選択部33は、現在地判定部32により出力されるエリア情報に基づきフラッシュメモリ4を参照してパラメータを選択してパラメータ設定部34に出力する。パラメータ設定部34は、パラメータ選択部33により出力されるパラメータをチューナ1およびDSP8に供給し、チューナ1およびDSP8にそのパラメータを設定する。
【0015】
パラメータ選択部33により選択されたパラメータは、画面デザイン生成部35にも供給される。画面デザイン生成部35には、他に、現在地判定部32出力であるエリア情報、および、文字情報生成部36により生成される文字情報も供給されている。画面デザイン生成部35は、これら入力データから画面デザイン情報を生成し、表示のためにLCDタッチパネル35へ供給する。
【0016】
図3は、エリア毎設定されるパラメータの一例を示す図であり、ここでは、エリア(欧州、米国、日本)毎、受信周波数範囲、選局時のスキャン周波数ステップ、デエンファシス(放送波の受信時、ノイズを改善するために強調された高域の信号を元の周波数特性に戻すこと)等、放送規格に係る情報が、更には、図示せぬRDSの対応有無の情報等がともにパラメータとしてフラッシュメモリ4に設定され保持されている。
放送規格にかかわるデータとして、例えば、欧州(Europe)では、87.5MHz〜108.0MHzの周波数範囲の放送波を受信し、選局時100周波数ステップ単位でスキャンし、50のデエンファシスで放送波を受信する規格を持つ。また、米国(USA)では、87.7MHz〜107.9MHzの周波数範囲の放送波を受信し、選局時200周波数ステップ単位でスキャンし、75のデエンファシスで放送波を受信する規格を持ち、日本(JAPAN)では、76.0MHz〜90.0MHzの周波数範囲の放送波を受信し、選局時100周波数ステップ単位でスキャンし、50のデエンファシスで放送波を受信する規格を持つ。
【0017】
図4は、この発明の実施の形態1に係る放送受信装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
以下、図4に示すフローチャートを参照しながら、図1〜図3に示す発明の実施の形態1の動作について詳細に説明する。
【0018】
制御装置3は、まず、位置情報取得部31がGPSレシーバ2から車両の現在位置情報を取得する(ステップST401)。そして、現在地判定部32は、その現在位置情報が正常に取得されたことを判定した後(ステップST402“YES”)、HDD5に記憶されてある地図データから、現在地(その緯度、経度情報が、どの国、地域に属するかを示すエリア情報)を判定する(ステップST403)。
【0019】
ここで、エリア情報が日本に属すると判定された場合(ステップST403“JAPAN”)、パラメータ選択部33は、フラッシュメモリ4から、受信周波数範囲76.0MHz〜90.0MHz、周波数ステップ100等々で示されるパラメータを選択し(ステップST404)、また、エリア情報が米国に属すると判定された場合(ステップST403“USA”)、受信周波数範囲87.7MHz〜107.9MHz、周波数ステップ200等々で示されるパラメータを選択し(ステップST405)、更に、エリア情報が欧州と判定された場合(ステップST403“Europe”)、受信周波数範囲87.5MHz〜108.0MHz、周波数ステップ100等々で示されるパラメータを選択し(ステップST406)、それぞれパラメータ設定部34へ供給する。
【0020】
パラメータ設定部34は、パラメータ選択部33によりフラッシュメモリ4が参照され、取得したパラメータをチューナ1およびDSP8へ設定する(ステップST407)。
【0021】
なお、図5、図6に表示画面構成の一例が示されるように、LCDタッチパネル6には受信周波数が表示され、さらに周波数を変更したい場合に備えて、「TUNE UP」あるいは「TUNE DOWN」等々、複数のホダン類がグラフィックとして表示されている。
画面デザイン生成部35は、エリア情報に基づき画面デザインデータを生成し、以前表示していた画面情報に変更があった場合(ステップST408“YES”)、例えば、米国用に、「TUNE UP」や「TUNE DOWN」ボタンを押下した時の周波数範囲を87.7MHz〜107.9MHzに固定し、選局時の周波数ステップを200KHz単位として表示する(ステップST410)。つまり、図5(a)に示されるように、90.0MHzに周波数設定された放送波によるラジオを聞いている時に「TUNE UP」ボタンを押下すると、その次は90.2MHzに設定されるように内部で制御され、表示されるようになっている。
【0022】
また、日本用にも同様、その周波数範囲を76.0MHzに、選局時の周波数ステップを100KHzに設定してLCDタッチパネル6画面上に表示し(ステップST409)、欧州用にも同様、その周波数範囲を90.0MHzに、選局時の周波数ステップを200KHzに設定してLCDタッチパネル6画面上に表示している(ステップST411)。このことは図5(b)、図6(a)のそれぞれに示されている。
【0023】
なお、現在地判定部32は、エリア情報がRDS対応エリアに該当するか否かについても判定しており(ステップST412)、ここで、現在地判定部32が、エリア情報はRDS対応エリアに該当すると判定した場合(ステップST412“YES(Europe)”)、画面デザイン生成部35は、その画面デザインを、図6(a)に示されるようにRDS対応表示に変更する。
このとき、文字情報生成部36は、デコーダ7により復調されデコードされた情報から文字情報を生成し、画面デザイン生成部35へ供給する。画面デザイン生成部35は、LCDタッチパネル35に表示するRDS固有のボタン、例えば、番組識別ボタンPTY(Program Type Code)、交通情報ボタンTA(Traffic Announce)表示を行う(ステップST413)。なお、現在地判定部32が、エリア情報はRDS対応エリアに該当しないと判定した場合(ステップST412“NO(JAPAN,USA)”)、例えば、図6(b)に示されるように、RDS放送対応受信機を日本で使用した場合、上記したRDS固有のボタンである、PTY、TAをマスクし、その表示領域に他の表示(「TUNE UP」や「TUNE DOWN」ボタン等々)を施すことで代替表示する。
【0024】
上記したように、この発明の実施の形態1によれば、走行しているエリアに応じて放送波に関連した放送規格情報(パラメータ設定値)を変更できるため、ユーザ(ドライバー)に与える不快感を解消し、また、メーカも仕向け先を意識することなくRDS対応受信機を製造することが可能になり、生産、在庫数の管理面で非常に有利である。
なお、このために記憶手段(フラッシュメモリ4)が余分に必要となるが、本来のプログラム用に用意しているメモリと比較してその量は僅かであり問題になることはない。また、実施の形態1によれば、RDS対応受信機のみ例示したが、他に、RDBS、DAB等のFM多重放送受信機は勿論のこと、AM放送やTV放送でも同様に応用可能であることは言うまでもない。また、国や地域等のエリア毎に、国民性や地域性に応じて音量、音質に関する設定値を変更することも同様に可能である。
【0025】
また、制御装置3は、ハードウェア的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、およびその周辺LSIから成るICチップ(いずれも不図示)により構成され、マイクロプロセッサがROMに記録されたプログラムを逐次読み出し実行することにより、RAMを含む周辺LSIを制御して上記した制御装置3が持つ機能を実行するものである。
このとき、位置情報取得部31と、現在地判定部32と、パラメータ選択部33と、パラメータ設定部34と、画面デザイン生成部35と、文字情報生成部36のそれぞれが持つ機能は、マイクロプロセッサがROMに記録されたプログラムを逐次読み出し実行することにより実現されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1に係る放送受信装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す制御装置の内部構成を機能展開して示したブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る放送受信装置によりエリア毎設定されるパラメータの一例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る放送受信装置の動作を説明するために引用したフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係る放送受信装置により生成される画面構成の一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る放送受信装置により生成される画面構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 チューナ(放送受信手段)、2 GPSレシーバ(位置検出手段)、3 制御装置(制御手段)、4 フラッシュメモリ(記憶手段)、8 DSP(放送受信手段)、31 位置情報取得部、32 現在地判定部、33 パラメータ選択部、34 パラメータ設定部、35 画面デザイン生成部、36 文字情報生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送波を受信する放送受信手段と、
エリア毎に、放送規格情報が設定される記憶手段と、
位置検出手段で検出された位置情報に従い特定されるエリア情報に基づき前記記憶手段を参照し、該当する放送規格情報を選択して前記放送受信手段へ設定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記放送規格情報は、受信周波数範囲、選局時におけるスキャン周波数ステップ、デエンファシス、文字放送対応エリアの有無に関する情報のうち、少なくとも一つとすることを特徴とする請求項1記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記特定されたエリア情報に応じて前記放送規格情報に基づく画面情報を生成し、表示モニタへ表示することを特徴とする請求項1記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記特定されたエリア情報がデータ放送対応エリアか否かを判定し、対応すると判定された場合、前記放送受信手段が受信した放送波に多重化されたデータを復調して前記表示モニタへ表示し、非対応と判定された場合、前記データが表示される領域をマスクして表示することを特徴とする請求項3記載の放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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