説明

放電回路

【課題】火花放電の発生を確実に検出し得る放電回路を提供する。
【解決手段】波形変換回路Mwは、内部に組み込まれた回路による遅延動作によって、火花放電信号の収束時期が遅延されることとなる。かかる火花放電信号が信号生成回路COMで認識されると、火花放電信号に基づいてPWM信号の出力規制を実施する。具体的に説明すると、当該信号生成回路COMは、火花放電信号が入力されていない場合(入力ポートP3の電圧値がHigh)、PWM信号の出力を許可し、火花信号が入力されている場合(入力ポートP3の電圧値がLow)、PWM信号の出力を不許可とする。この処理の際、信号生成回路COMでは、火花放電信号の発生期間が延長されることで、当該信号の検出が容易となり、PWM信号における出力規制が確実に行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスに含まれる微粒子(以下、排気微粒子と呼ぶ)を除去させる放電回路に関し、特に、火花放電の発生を検出する際に用いて好適のものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは、多量の空気を燃料と供に圧縮燃焼させるため、排気ガスの中には、窒素酸化物(所謂、NOx)及び煤(所謂、パティキュレート)等の排気微粒子が含まれる。このうち、パティキュレートは、人体の呼吸器系統へ悪影響を及ぼすことから、車両にはDPF(Diesel particulate filter)が搭載され、当該パティキュレートの排出量の低減が図られている。
【0003】
例えば、特開2008−051037号公報(特許文献1)では、DPF(Diesel particulate
filter)等に適用可能な排気ガス処理装置が紹介されている。当該排気ガス処理装置は、排気ガスを導入させる排気管と、排気ガス内のパティキュレートを帯電させる静電凝集部(特許請求の範囲における放電部)と、帯電されたパティキュレートを吸着させるハニカムフィルタと、ハニカムフィルタへ吸着されたパティキュレートを熱処理によって浄化させるヒータとから構成される。
【0004】
かかる排気ガス処理装置は、内燃機関から排気ガスが供給されると、静電凝集部によって排ガス中のパティキュレートを帯電させ、パティキュレートのクラスターを形成させる。その後、パティキュレートは、ハニカムフィルタへと導かれ当該フィルタの表面に吸着される。かかる後、フィルタへ吸着されたパティキュレートは、ヒータの発熱によって浄化され、DPFを通過した排気ガスは、この一連の処理によってパティキュレートの含有量が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−051037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、DPFに設けられた放電電極からDPFの内部構造に火花放電を発生させてしまう場合がある。この場合、放電電流は排ガス中の物質を介さずに火花放電の経路を流れるため、排ガス中のパティキュレートは、帯電されず、フィルタ表面への吸着効果が低下してしまう。このため、上述したDPFは、放電電極部で火花放電が発生すると、吸着効果の低減に伴い、浄化作用が著しく低下するとの問題が生じる。
【0007】
また、シャント抵抗を用いて火花放電を検出しようとしても、火花放電の発生期間は数マイクロ秒程度とされるため(図2a参照)、火花放電の検出は、非常に困難なものとされる。図5には、放電電流の検出を行なうDPF用の放電回路が示されている。当該放電回路10は、バッテリ電源VbとトランスTLと整流回路Dkと平滑コンデンサCoと放電部LDとシャント抵抗Ins1と分圧抵抗Ins2と電流検出用アンプAMPsと電圧検出用アンプAMPdと信号生成回路COMとドライブ回路DRVとスイッチング回路Swとから構成される。かかる放電回路10は、スイッチング回路の動作に応じてトランスTLが駆動されると、整流回路Dkを介して平滑コンデンサCoに電荷が蓄積され、この平滑コンデンサの出力電圧によって放電部LDの放電電極が放電することとなる。このとき、信号生成回路COMへは、シャント抵抗Ins1及び電流検出用アンプAMPsによって電流検出信号が送られ、分圧抵抗Ins2及び電圧検出用アンプAMPdによって電圧検出信号が送られる。そして、信号生成回路COMでは、電流検出信号及び電圧検出信号に基づいてPWM信号を出力させ、ドライブ回路DRVでは、このPWM信号に基づいてパワートランジスタTra,Trbを各々駆動させる。
【0008】
ここで、放電部LDで火花放電が発生すると、火花放電の発生期間は数マイクロ秒とされるため、信号生成回路COMへ入力される電流検出信号の波形も、非常に短い数マイクロ秒程度の波形とされてしまう。更に、かかる電流検出信号の波形は、電流検出用アンプAMPsによって上限値が制限されてしまうので、非常に短期間のパルス波形とされてしまう。そして、信号生成回路COMがマイコン等で構成される場合、このような電流検出信号は、高周波ノイズとして処理されてしまい、火花放電が発生していると認識されることは殆ど無い。このため、同図における放電回路10では、火花放電が実際に発生しているにも関わらず、当該火花放電を検出できないとの問題が生じる。また、かかる火花放電が継続的に発生すると、フィルタ部の損傷、バッテリの消費電力の増大をも招く。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み、火花放電の発生を確実に検出し得る放電回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では次のような放電回路の構成とする。即ち、直流電圧を供給するバッテリと、前記直流電圧について昇圧させた昇圧電圧を出力させるトランスと、入力された制御信号に応じて前記トランスを駆動させるスイッチング回路と、前記昇圧電圧について平滑させた平滑電圧を出力させる平滑コンデンサと、前記平滑電圧を放電電極へ印加させ排気ガス中の排気微粒子を帯電させる放電部と、前記放電電極の放電時に発生する電流を検出し当該電流の値を電流検出信号として出力させる電流検出回路と、少なくとも前記電流検出信号に基づいて前記制御信号を出力させ前記スイッチング回路を制御する制御回路とを備えた放電回路において、
前記電流検出信号の大きさに応じて火花放電の発生を検知し且つ前記電流検出信号に基づいて形成される火花放電信号の収束時期を遅延させる波形変換回路を備えていることとする。
【0011】
好ましくは、前記波形変換回路は、前記電流検出信号の大きさに応じて前記火花放電の発生を検知するゲート回路と、前記火花放電に相当する電流検出信号の入力に応じて内部信号を出力させ当該内部信号の出力値を緩慢に減衰させる減衰回路と、前記火花放電信号を前記内部信号に応じて出力させる火花放電報知回路とを備えることとする。
【0012】
前記波形変換回路は、上述した構成の他、前記電流検出信号の大きさに応じて前記火花放電の発生を検知するゲート回路と、前記火花放電に相当する電流検出信号の入力に応じて第1の内部信号を出力させ当該第1の内部信号の出力値を緩慢に減衰させる減衰回路と、前記第1の内部信号に基づいて第2の内部信号を出力させる内部信号変換回路と、前記火花放電信号を前記第2の内部信号に応じて出力させる火花放電報知回路とを備えることとしても良い。
【0013】
この場合、より好ましくは、前記内部信号変換回路は、前記第2の内部信号の出力期間を前記第1の内部信号の出力期間よりも長期化させる信号長期化回路を含んでいることとする。
【0014】
より好ましくは、前記火花放電信号が出力されている期間について前記スイッチング回路の動作を停止させる安全回路が更に設けられていることとする。
【0015】
より好ましくは、前記制御回路は、前記火花放電報知回路に接続されるものであって、前記火花放電信号の入力に応じて前記制御信号の出力を停止させ、其の停止後に、当該制御信号の出力を再開させることとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る放電回路によると、火花放電が発生した場合、火花放電に相当する電流検出信号の収束時期を遅延させるので、マイコンその他IC回路から成る信号生成回路で火花放電の発生を確実に認識することができる。
【0017】
また、ドライブ回路又は信号生成回路は、火花放電の発生を確実に認識できるので、火花放電時に確実に放電部の運転を停止させることが可能となる。これに加え、火花放電後に放電部の運転を再開させる処理を加えることで、本発明に係る放電回路では、火花放電の発生時に一時的に放電部の運転を停止させることが可能となる。かかる一連の動作を実施させることにより、当該放電回路では、フィルタ表面での吸着作用を維持させ、排気ガスの浄化作用を好適に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1に係る放電回路の構成を示す図。
【図2】放電電流及びその他の波形を示す図。
【図3】実施例2に係る放電回路の構成を示す図。
【図4】実施例3に係る放電回路の構成を示す図。
【図5】従来例に係る放電回路の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態につき、実施例1乃至実施例3、及び、これらの実施例に対応する図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、車両に搭載される放電回路の構成が示されている。本実施例に係る放電回路101は、図示の如く、車載バッテリVbとトランスTLとスイッチング回路Swと出力側整流回路Dkと平滑コンデンサCoと放電部LDと電流検出回路Ins1と電圧検出回路Ins2と電流検出用アンプAMPsと電圧検出用アンプAMPdと波形変換回路Mwと信号生成回路COMとドライブ回路DRVとから構成される。
【0021】
車載バッテリVbは、ディーゼル式内燃機関によって駆動される自動車に搭載されるものであって、12V〜24Vの直流電圧を供給する。
【0022】
スイッチング回路Swは、パワートランジスタTra,Trbから成り、上述したトランスTLを駆動させる。具体的に説明すると、パワートランジスタTra,Trbは、各々のオン/オフ状態が交互に切換えられ、このとき、バッテリ電流の流れる経路が「一次コイルL1a→パワートランジスタTra→グランド」又は「二次コイルL1b→パワートランジスタTrb→グランド」の何れかに切換えられる。
【0023】
トランスTLは、一次側コイルL1a,L1bと、二次側コイルL2と、これらのコイルに挿通される鉄心(フェライトコア等を含む)とから構成される。一次コイルの中点には、車載バッテリVbの陽極端子が接続される。一方、一次トランスの端部にはスイッチング回路Swを成すパワートランジスタが各々接続される。二次コイルL2には、図示の如く、出力側整流回路Dkの入力端子が接続されている。かかるトランスTLは、スイッチング回路Swの切換動作に応じて磁束の変動を生じさせ、これにより、車載バッテリVbから印加された直流電圧を昇圧させ、かかる動作によって昇圧電圧を出力させる。
【0024】
出力側整流回路Dkは、コンデンサCa〜Cd及びダイオードDa〜Ddが格子状に配線され、昇圧電圧に伴う電荷を平滑コンデンサCoへと供給させる。
【0025】
平滑コンデンサCoは、供給された電荷を一次的に蓄積させることにより、トランスTLによる昇圧電圧を平滑させ、これによって生成された平滑電圧を出力させる。当該平滑電圧は、−15kV程度になるものであり、後段の放電部に内蔵される放電電極へ印加される。
【0026】
本実施例に係る放電部LDは、従来技術で説明したように、ディーゼル式内燃機関の排気ガスを浄化させるDPE(Diesel
particulate filter)である。かかる放電部LDは、放電電極とフィルタとヒータとから構成される。放電電極は、平滑コンデンサCoからの平滑電圧が印加されるものであって、排ガス中の分子から陽イオンを発生させる。そして、排気ガスが供給される際、この放電電極は、電極間において陽イオンを移動させ、パティキュレート(特許請求の範囲における排気微粒子)と陽イオンとを衝突させ、排ガス中のパティキュレートを帯電させる。かかるパティキュレートがフィルタへ導かれると、当該フィルタでは、パティキュレートがフィルタ表面へ吸着され、ヒータの燃焼効果によってパティキュレートが消滅し、これにより、排気ガスが浄化されることとなる。
【0027】
電流検出回路Ins1は、放電電極の放電時に発生する電流(以下、放電電流と呼ぶ)を検出し、放電電流の電流値に比例する電流検出信号を出力する。本実施例では、シャント抵抗Rsが用いられ、当該シャント抵抗Rsは、ローサイドラインLbに介挿されている。シャント抵抗Rsから出力される電流検出信号は、火花放電が発生している場合、数アンペアオーダーの電流値とされ、コロナ放電等の通常の放電状態の場合、火花放電時の1/10〜1/100程度となるような比較的小さい電流値とされる。尚、電流検出回路は、上述した放電電流を検出する回路構成であれば、シャント抵抗Rsに限定されるものではない。
【0028】
ハイサイドラインLaは、カーボン製の導通ケーブルを用いると良い。これにより、入力側の抵抗値が調整されて、ノイズの低減が図られる。また、ノイズ低減機能を与えるため、カーボン製の導通ケーブルの替わりとして、ハイサイドラインへ抵抗素子を介挿させても良い。
【0029】
電流検出用アンプAMPsの入力端子は、電流検出回路Ins1に接続され、電流検出信号が入力される。電流検出用アンプAMPsは、入力された電流検出信号の値を電源電圧の範囲内で増幅出力させる。電流検出信号は、コロナ放電等の通常の放電状態、火花放電といった短絡状態等をも示すものである。しかし、電流検出用アンプAMPsは出力値を電源電圧Vk(V)に制限してしまうところ、電流検出用アンプAMPsの出力は、火花放電時には数マイクロ秒程度の極度に短時間のパルス波形とされる。このため、後段の信号生成回路COMでは、電流検出用アンプAMPsからの出力信号に基づいて火花信号を検出することは困難である。尚、本実施例において、電源電圧Vk及びVjは図示されないレギュレータによって安定供給されるものとし、電源電圧Vkは12(V)であるとし、電源電圧Vjは5(V)であることとする。
【0030】
電圧検出回路Ins2は、抵抗Rd1及びRd2から成る分圧抵抗であって、中点の電圧値が電圧検出信号として出力される。電圧検出用アンプAMPdの入力端子は、電圧検出回路Ins2に接続され、電圧検出信号が入力される。尚、電圧検出用アンプAMPdにあっても、入力された電圧検出信号の値を電源電圧の範囲内で増幅出力させる。
【0031】
本実施例に係る波形変換回路Mwは、図示の如く、ゲート回路Mw1と減衰回路Mw2と内部信号変換回路Mw3と火花放電報知回路Mw4とから構成される。当該波形変換回路Mwは、電流検出信号の大きさに応じて火花放電の発生を検知し、且つ、電流検出信号に基づいて形成される火花放電信号の収束時期を遅延させる機能を担う。以下、波形変換回路Mwの細部について説明する。
【0032】
ゲート回路Mw1は、ツェナーダイオードZdを備え、ツェナーダイオードZdのカソードが電流検出回路Ins1の方向へ配置される。このツェナーダイオードZdは、適宜なツェナー降伏値の素子が用いられることにより、火花放電発生時の電流検出信号を通過させ、通常放電時の電流検出信号の通過を阻止させる。このため、火花放電が発生すると、ゲート回路Mw1は、電流検出信号がツェナーダイオードZdを通過させ、後段の回路Mw2〜Mw4を駆動させる。一方、火花放電に至らない場合、ゲート回路Mw1は、電流検出信号を通過させないので、後段の回路Mw2〜Mw4を駆動させることは無い。このように、ゲート回路Mw1は、電流検出信号の大きさに応じて火花放電の発生を検知する機能を担う。尚、本実施例に係るゲート回路Mw1は、ダイオードD1が更に設けられている。ダイオードD1は、カソードが当該ゲート回路Mw1の出力側へ配置されている。
【0033】
減衰回路Mw2は、火花放電に相当する電流検出信号の入力に応じて第1の内部信号を出力させ、当該第1の内部信号の出力値を緩慢に減衰させる機能を担う。本実施例に係る減衰回路Mw2は、コンデンサC1と分圧抵抗R1,R2とが並列接続され、分圧抵抗の中点が内部信号変換回路Mw3の入力部に接続されている。当該減衰回路Mw2は、ゲート回路Mw1から電流検出信号が入力されると、これに応じてコンデンサC1に電荷がチャージされる。かかる電流検出信号は、図2(a)に示す如く、火花放電時にあっては高い振幅を有する高周波波形が重畳されてしまう。このため、上述したダイオードD1がゲート回路Mw1へ設けられることにより、コンデンサC1では、蓄積された電荷の逆流が阻止される。また、減衰回路Mw2は、分圧抵抗の中点から第1の内部信号を出力させる。第1の内部信号は、コンデンサC1に電荷がチャージされた後、抵抗を介して緩慢に減衰する。
【0034】
内部信号変換回路Mw3は、入力部に印加された第1の内部信号に基づいて、当該第1の内部信号の電圧値を適宜な値に変換させ、その後、出力部から第2の内部信号を出力させる。本実施例に係る内部信号変換回路Mw3は、入力部をベース端子とするトランジスタT1と、トランジスタT1のコレクタ電圧に応じて通過電流を調整するトランジスタT2と、当該トランジスタT2の出力側に接続された分圧抵抗R7,R8とを主構成素子とする。かかる構成素子のうち入力部に設けられたトランジスタT1は、入力される第1の内部信号が徐々に減衰されるので、トランジスタT1のコレクタ電圧もこれに応じて徐々に減衰する。具体的に説明すると、図2(b)に示す如く、第1の内部信号の発生に応じてコレクタ電圧が立下り、第1の内部信号が或る値以上の場合には飽和状態を維持して通過電流を多量に流す。その後、第1の内部信号が更に減衰すると、これに応じてコレクタ電圧も減衰し、最終的に通過電流が流れなくなる。本実施例では、火花放電の発生期間t1が5〜10(μsec)であるとき、各抵抗値及びコンデンサ容量を適宜に設定することにより、トランジスタT1でのコレクタ電圧の低下期間t2を100〜150(msec)に設定している。このうち、トランジスタT1の飽和期間Tkは、5〜10(msec)に設定されている。
【0035】
このようにトランジスタT1のコレクタ電圧が変動すると、トランジスタT2では、コレクタ電圧の低下期間t2に応じてベース電圧が低下し、電源電圧Vkに基づいて通過電流が流れることとなる。このとき、分圧抵抗R7,R8の中点では、通過電流によって第2の内部信号が出力される。即ち、本実施例に係る内部信号変換回路Mw3では、入力された第1の内部信号の電圧値を電源電圧Vkに基づく第2の内部信号へと変換させることとなる。
【0036】
内部信号変換回路Mw3には、本実施例のように、第2の内部信号の出力期間を第1の内部信号の出力期間よりも長期化させる信号長期化回路を含んでいるのが好ましい。具体的に説明すると、本実施例に係る信号長期化回路Mw3aは、コンデンサC2と、これに並列接続された分圧抵抗R4,R5とから構成される。このうち、分圧抵抗R4,R5の中点はトランジスタT2の中点に接続され、抵抗R4とコンデンサC2との接点には電源電圧Vkが印加されている。内部信号変換回路Mw3に信号長期化回路Mw3aが組み込まれた場合、トランジスタT2のベース電圧は、他方のトランジスタT1のコレクタ電圧が低下すると、当該コレクタ電圧の低下期間t2より長い期間、その電圧値が低下することとなる。このため、トランジスタT2での通過電流もこれに応じて通過時間が延長され、第2の内部信号の出力期間も延長されることとなる。
【0037】
火花放電報知回路Mw4は、電流検出信号に基づいて火花放電信号を生成する回路であって、具体的には、火花放電信号を第2の内部信号に基づいて出力させる。本実施例における火花放電報知回路Mw4は、抵抗R12及びトランジスタT3から成るものであって、第2の内部信号の出力期間に応じて、電圧値がロジックレベルのLow状態(以下、単にLow状態と言う)とされた火花放電信号を出力させる。かかる火花放電信号は、当該信号の値に比例して、この信号の収束時期が遅延されることとなる。ここで、内部信号変換回路Mw3に信号長期化回路Mw3aが組み込まれた場合、トランジスタT3のコレクタ電圧は、トランジスタT1におけるコレクタ電圧の低下期間t2が100〜150(μsec)であるとき、各抵抗値及びコンデンサ容量を適宜に設定することにより、其の低下期間t3が200〜300(msec)となるように設定されている(図2c参照)。
【0038】
信号生成回路(特許請求の範囲における制御回路)COMは、本実施例にあってはPWM信号生成用のマイコンが用いられる。当該信号生成回路COMは、CPU、AD変換回路、メモリ回路、クロック回路等が内蔵され、ADポートP1,P2、入力ポートP3に入力された信号値に基づいて、出力ポートP4,P5からPWM信号(特許請求の範囲における制御信号)が出力される。具体的に説明すると、メモリ回路には、検出信号及び検出電圧に対応して出力すべきPWM信号のデューティ比情報が格納されている。そして、ADポートP1,P2に電流検出信号及び電圧検出信号が入力されると、信号生成回路COMは、その入力信号に基づいてメモリ回路から適宜なデューティ情報を抽出し、この情報に基づいてPWM信号を生成出力させる。このとき、ドライブ回路DRVでは、入力されたPWM信号を増幅させ、パワートランジスタTra,Trbを駆動させる。尚、ドライブ回路DRVは、電源電圧Vkに基づいて信号波形を増幅させている。
【0039】
また、信号生成回路COMは、入力ポートP3が火花放電報知回路Mw4の出力部に接続され、信号ラインLeを介して入力ポートP3に火花放電信号が入力される。本実施例の場合、入力ポートP3には、火花放電が発生していないとき、波形変換回路Mwが駆動されないので、ロジックレベルのHigh状態(以下、単にHigh状態と言う)となる信号が印加される。一方、火花放電が発生したとき、波形変換回路Mwが駆動されるため、電圧値がLow状態とされた火花放電信号が印加される。上述の如く、入力ポートP3へ印加される火花放電信号の発生期間は少なくとも数十(msec)以上確保されるので、信号生成回路COMでは、火花放電信号を正規の入力信号として認識することが可能となる。
【0040】
信号生成回路COMは、火花放電信号に基づいてPWM信号の出力規制を実施する。具体的に説明すると、当該信号生成回路COMは、火花放電信号が入力されていない場合(入力ポートP3の電圧値がHigh)、PWM信号の出力を許可し、火花信号が入力されている場合(入力ポートP3の電圧値がLow)、PWM信号の出力を不許可とする。信号生成回路COMでは、火花放電信号の発生期間が延長されることで、当該信号の検出が容易となり、PWM信号の出力規制に係る処理が確実に行なわれる。
【0041】
上述の如く、本実施例に係る放電回路101によると、火花放電が発生した場合、火花放電に相当する電流検出信号の収束時期を遅延させるので、マイコンその他IC回路から成る信号制御回路COMで火花放電の発生を確実に認識することができる。
【0042】
また、信号生成回路は、火花放電の発生を確実に認識できるので、火花放電時に確実に放電部LDの運転を停止させることが可能となる。これに加え、火花放電後に放電部の運転を再開させる処理を加えることで、本発明に係る放電回路では、火花放電の発生時に一時的に放電部の運転を停止させることが可能となる。かかる一連の動作を実施させることにより、当該放電回路では、フィルタ表面での吸着作用を維持させ、排気ガスの浄化作用を好適に維持できる。
【0043】
更に、本実施例に係る放電回路101によると、火花放電の発生が信号生成回路COMによって確実に認識されるので、火花放電の発生状態が継続されることも無くなり、フィルタ部の長寿命化及びバッテリの消費電力の低減が図られる。
【実施例2】
【0044】
図3は、実施例1に係る放電回路の改変例が示されている。尚、実施例1にて既に説明した同一構成部については、同一符号を付し、その説明を省略することとする。
【0045】
本実施例に係る放電回路102は、スイッチング回路の動作を停止させる安全回路が追加されている。当該安全回路は、火花放電信号検出回路Mw3bと信号遮断回路SFCとから構成され、火花放電信号の発生期間に応じて、スイッチング回路Swの動作を強制的に停止させるものである。
【0046】
本実施例の場合、火花放電信号検出回路Mw3bは、内部信号変換回路Mw3に組み込まれる。当該火花信号検出回路Mw3bは、トランジスタT4と抵抗R9,R10,R11とから成り、トランジスタT4のベース部には分圧抵抗R9,R10の中点が接続される。トランジスタT4のコレクタは、常時所定電位が印加されており、信号ラインLfを介して信号遮断回路SFCが接続されている。また、抵抗R9は、トランジスタT2の出力端子に接続され、当該トランジスタT2の通過電流の一部がトランジスタT4のベース電流として流れる様に配線されている。
【0047】
火花放電信号検出回路Mw3bでは、トランジスタT2から通過電流が出力されると、トランジスタT4のコレクタ電圧が低下し、トランジスタT2から通過電流が止まると、トランジスタT4のコレクタ電圧が上昇する。このように、トランジスタT4のコレクタ電圧は、トランジスタT2の通過電流に応じて切換えられるところ、コレクタ電圧の低下期間が第2の内部信号の出力期間に略一致する。このため、コレクタ電圧が低下する期間は、少なくとも数十(msec)以上とされ、本実施例の信号長期化回路Mw3aが組み込まれる場合、200〜300(msec)程度に設定されることとなる。
【0048】
信号遮断回路SFCは、端子aの電圧値と検出しており、端子aでの印加電圧が低下するとドライブ回路DRVへの電力供給を遮断させ、端子aでの印加電圧が復帰(上昇)すると所定時間後にドライブ回路DRVへの電力供給を再開させる。即ち、端子aでの印加電圧が復帰してから電源電圧の供給が再開されるまで、所定時間のタイムラグが設けられる。ここで、端子aへの印加電圧は、トランジスタT4のコレクタ電圧によって制御される。即ち、信号遮断回路SFCは、火花放電報知回路Mw4から火花放電信号を出力させている間についてはトランジスタT2から通過電流が出力されるので、端子aでの印加電圧が低下し、ドライブ回路DRVの信号出力を停止させる。一方、火花放電信号の出力が止まると、端子aでの印加電圧が復帰(上昇)し、所定時間経過後に、ドライブ回路DRVの信号出力を再開させる。尚、信号遮断回路SFCの端子aへ印加される電圧信号は、火花放電信号が発生している期間に対応させて少なくとも数十(msec)以上とされる。このため、IC回路又はトランジスタ等によって構成される信号遮断回路SFCは、この電圧信号の変動を認識することが可能であり、電源電圧Vkを供給するか否かの動作処理が確実に行われることとなる。
【0049】
かかる構成を具備する放電回路102は、火花放電が発生すると、この放電電流の大きさに応じて、波形変換回路Mwから火花放電信号を長期間出力させる。そして、火花放電信号が出力されている期間については、安全回路によってドライブ回路DRVへの電源供給を強制的に遮断させ、これにより、放電部LDにおける放電動作を一次的に遮断させる。この電源遮断期間内には、火花放電信号に基づく信号処理が信号生成回路COMによって実施される。かかる信号処理は、例えば、PWM信号の出力を再開させても良いか否かの判定処理等が挙げられる。このような処理は、上述したタイムラグの期間内に実施され、ドライブ回路DRVが復帰する迄にはPWM信号の出力再開に係る処理が完了し、ドライブ回路DRVの復帰後直ちに信号生成回路COMからPWM信号を出力させることが可能となる。
【0050】
即ち、本実施例に係る放電回路102は、波形変換回路Mwから出力される火花放電信号に基づいて直ちにドライブ回路DRVの駆動を停止させ、ドライブ回路DRVの停止期間内に信号生成回路COMでの信号処理を完了させる。このため、ドライブ回路DRVへの電源供給が再開される頃には、信号生成回路COMで正しく処理されたPWM信号の出力が行われることとなる。
【実施例3】
【0051】
図4は、実施例1に係る放電回路の変更例が示されている。尚、本実施例にあっても、前述した同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略することとする。
【0052】
図示の如く、波形変換回路Mwは、ゲート回路Mw1と減衰回路Mw2と火花放電報知回路Mw4とから構成されている。即ち、本実施例に係る波形変換回路Mwは、実施例1における波形変換回路Mwのうち、内部信号変換回路Mw3が省略された構成となる。
【0053】
本実施例に係る波形変換回路Mwは、火花放電が発生すると、ゲート回路Mw1にて其の火花放電の発生を検知し、減衰回路Mw2にて内部信号を出力させる。この内部信号は、既に説明した通り、火花放電の大きさに応じて出力期間が長期化され、これにより、火花放電報知回路Mw4から出力される火花放電信号の発生期間も長期化される。
【0054】
本実施例に係る放電回路にあっても、波形変換回路Mwによる信号の長期化作用が一定の範囲で機能するので、火花放電信号の発生期間を長期化させる効果が期待できる。従って、その範囲において、実施例1で記される効果が奏されることとなる。また、本実施例に係る放電回路では、実施例1で設けられていた内部信号変換回路Mwが省略されるので、回路構成の簡素化が図られる。
【0055】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記された技術的思想の範囲内において、種々の変更が可能である。例えば、上述した実施の形態では車両用のDPFに用いられる装置として説明されているが、本発明は、様々な分野で用いられるディーゼル機関のDPF装置として適用することが可能である。具体的には、発電設備/建設機械/船舶用等のディーゼル機関にも本発明に係るDPFを使用することができる。
【符号の説明】
【0056】
101 放電回路
Vb バッテリ
TL トランス
Sw スイッチング回路
Co 平滑コンデンサ
LD 放電部
Ins1 電流検出回路
COM 信号生成回路(制御回路)
Mw 波形変換回路
Mw1 ゲート回路
Mw2 減衰回路
Mw3 内部信号変換回路
Mw4 火花放電報知回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を供給するバッテリと、前記直流電圧について昇圧させた昇圧電圧を出力させるトランスと、入力された制御信号に応じて前記トランスを駆動させるスイッチング回路と、前記昇圧電圧について平滑させた平滑電圧を出力させる平滑コンデンサと、前記平滑電圧を放電電極へ印加させ排気ガス中の排気微粒子を帯電させる放電部と、前記放電電極の放電時に発生する電流を検出し当該電流の値を電流検出信号として出力させる電流検出回路と、少なくとも前記電流検出信号に基づいて前記制御信号を出力し前記スイッチング回路を制御する制御回路とを備えた放電回路において、
前記電流検出信号の大きさに応じて火花放電の発生を検知し且つ前記電流検出信号に基づいて形成される火花放電信号の収束時期を遅延させる波形変換回路を備えていることを特徴とする放電回路。
【請求項2】
前記波形変換回路は、前記電流検出信号の大きさに応じて前記火花放電の発生を検知するゲート回路と、前記火花放電に相当する電流検出信号の入力に応じて内部信号を出力させ当該内部信号の出力値を緩慢に減衰させる減衰回路と、前記火花放電信号を前記内部信号に応じて出力させる火花放電報知回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の放電回路。
【請求項3】
前記波形変換回路は、前記電流検出信号の大きさに応じて前記火花放電の発生を検知するゲート回路と、前記火花放電に相当する電流検出信号の入力に応じて第1の内部信号を出力させ当該第1の内部信号の出力値を緩慢に減衰させる減衰回路と、前記第1の内部信号に基づいて第2の内部信号を出力させる内部信号変換回路と、前記火花放電信号を前記第2の内部信号に応じて出力させる火花放電報知回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の放電回路。
【請求項4】
前記内部信号変換回路は、前記第2の内部信号の出力期間を前記第1の内部信号の出力期間よりも長期化させる信号長期化回路を含んでいることを特徴とする請求項3に記載の放電回路。
【請求項5】
前記火花放電信号が出力されている期間について前記スイッチング回路の動作を停止させる安全回路が更に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の放電回路。
【請求項6】
前記制御回路は、前記火花放電信号の入力に応じて前記制御信号の出力を停止させ、其の停止後に、当該制御信号の出力を再開させることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の放電回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−5153(P2012−5153A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134620(P2010−134620)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】