説明

断熱性を有する浴室ユニットの構築方法

【課題】 浴室ユニットの外周と建物躯体間の隙間が狭い現場においても、室内側より断熱シートを良好に施工することのできる断熱性を有する浴室ユニットの構築方法を提供する。
【解決手段】 床パン2上に複数の支柱3,3,3を建て、この複数の支柱3,3,3の室外側に亘って、浴室ユニット1の内側より断熱シート5,5,5,5を張設した後、支柱3,3の裏内側から壁パネルを固定して、壁パネルの裏面と断熱シート5間に空気層を形成させて断熱構造の浴室ユニットを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性を有する浴室ユニットの構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、複数枚の保温シートを連結して浴室ユニットの周壁を覆う断熱構造が存在する。
【特許文献1】実公平7−21738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の断熱構造では、保温シートの施工は、浴室ユニットの周壁を組み立てた後に行われ、保温シートの上縁端部を周壁の上縁部に貼着し、保温シートを下方側に向かって垂らしてゆく施工方法であるため、浴室ユニットの外側からの施工作業となり、浴室ユニットの外周と建物躯体間の隙間が狭い現場では、保温シートの施工作業が行えない場合が生ずるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、建物躯体との隙間が狭い現場においても良好に浴室ユニットの内側から断熱シートを施工することのできる断熱性を有する浴室ユニットの構築方法を提供せんとするものであり、その請求項1は、床パン上に複数の支柱を建て、該複数の支柱の室外側に亘って断熱シートを張設した後、前記支柱の裏内側から壁パネルを固定して、該壁パネルの裏面と前記断熱シート間に空気層を形成させることである。
また、請求項2は、裏補強フレームを備えた複数枚の壁パネルを床パン上に組んで構成される浴室ユニットにおいて、前記1つの壁パネルの裏補強フレームの縦桟に断熱シートの一端を貼り、壁パネルを組みながら2以上の壁パネルの裏に跨がり前記断熱シートを巻き付けて、該断熱シートの他端を別の壁パネルの裏に貼り、複数の壁パネルの裏面全体を断熱シートで覆うことである。
また、請求項3は、ユニット全体を覆うことが可能な長さの断熱シートの一端をドア一端側の壁パネルの裏に貼り、該断熱シートの他端をドア他端側の壁パネルの裏に貼ったことである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の断熱性を有する浴室ユニットの構築方法は、床パン上に複数の支柱を建て、支柱の室外側に亘って先ず断熱シートを張設し、その後に裏内側に壁パネルを組んでゆく方法であるため、施工を浴室ユニットの内側から全て行うことができ、浴室ユニットの外周と建物躯体間の隙間が狭い現場においても良好に断熱シートを施工して、断熱構造の浴室ユニットを構築できるものとなる。
【0006】
また、裏補強フレームを備えた複数枚の壁パネルを床パン上に組んで構成される浴室ユニットにおいて、1つの壁パネルの裏補強フレームの縦桟に断熱シートの一端を貼り、壁パネルを組みながら2以上の壁パネルの裏に跨がり断熱シートを巻き付けて、断熱シートの他端を別の壁パネルの裏に貼り、複数の壁パネルの裏面全体を断熱シートで覆うこととしたため、壁パネルを組みながら徐々に壁パネルの裏に断熱シートを巻き付けてゆき、壁パネルの裏面全体を断熱シートで覆うことができて、浴室ユニットの内側からの施工作業となり、建物躯体との隙間が狭い現場においても良好に浴室ユニットの外周に断熱シートを施工することができるものとなる。
【0007】
また、ユニット全体を覆うことが可能な長さの断熱シートの一端をドア一端側の壁パネルの裏に貼り、断熱シートの他端をドア他端側の壁パネルの裏に貼ったことにより、1枚の断熱シートの一端をドアの一端側の壁パネルの裏に予め貼り付けておき、壁パネルを組み付けながら壁パネルの裏側に断熱シートを徐々に巻き付けてゆき、断熱シートの他端をドア他端側の壁パネルの裏に貼着して、壁パネルの裏面全体を断熱シートで覆うことができ、断熱シートの施工作業を壁パネルを組みながら浴室ユニットの内側から良好に行うことができるものとなる。
【実施例】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は第1実施例を示すものであり、図1に示すように、浴室ユニット1は、床パン2の外周に沿ってコーナー及び中間位置に複数本の支柱3,3,3を立設させ、それぞれの支柱3,3の上端間を上連結材4で連結して、先ず複数の支柱3,3を床パン2上に組み付ける。その後、各支柱3,3の裏側(室外側)に浴室ユニット1の室内側より断熱シート5を張設する。
【0009】
図1では、4枚の断熱シート5をそれぞれ支柱3,3間に張設して、4枚の断熱シート5,5,5,5で、ドア設置部Dを除く浴室ユニット1の外周全域を覆うように構成する。
なお、断熱シート5は、紙またはアルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレートフイルム等で構成されている。
図2は、浴室ユニット1の4辺の支柱3,3の裏側に、それぞれ接着剤または両面テープを用いて断熱シート5,5,5,5を張設した状態の平面概略構成図である。
なお、図3は、コーナー部に立設された支柱3周辺の拡大平面構成図である。
【0010】
支柱3は、略四角断面形状に形成され、壁パネル6の端部を差し込むために開口3aが縦方向に形成されている。
また、壁パネル6は、支柱3,3間に断熱シート5,5,5,5を張設した後に、支柱3,3の内側に固定されるものであり、壁パネル6は、表面の化粧板7の裏側に石膏ボード8が設けられた構造で、化粧板7の横方向端部には、90°折り曲げて先端折曲片7aが形成されており、この先端折曲片7aを、支柱3の開口3aから支柱3の係止片3bの内側に係合させて、それぞれ壁パネル6を支柱3,3間に固定することができるものである。
なお、壁パネル6,6を支柱3に固定した後に、支柱3の開口3aには目地9が充填されて、開口3aが塞がれるものである。
【0011】
このような施工方法では、浴室ユニット1の内側から、支柱3を立設した後に、支柱3の裏側に断熱シート5を張設し、その後に浴室ユニットの内側から支柱3に壁パネル6を固定して、全て浴室ユニット1の内側から施工することができるため、浴室ユニットの外周と建物躯体間の隙間が狭い現場においても、外側からの作業がないため、良好に断熱シート5及び壁パネル6を施工することができるものであり、施工後においては、図3に示すように、壁パネル6の裏面と断熱シート5間には空気層Sが形成されるため、この空気層Sが良好な断熱効果を発揮するものとなる。
【0012】
なお、図4は第1実施例の変更例を示すものであり、図4では、1枚の断熱シート5が用いられ、この断熱シート5は、予め浴室ユニット1の外周全体を覆うことができる長さに設定しておき、先ず、ドア設置部Dの一端側の支柱3に断熱シート5の一端5aを貼り付けて、その状態で断熱シート5を各支柱3の裏側を回して各支柱3の全体の裏面に張設し、断熱シート5の他端側をドア設置部Dの他端側の支柱3に貼着して、ドア設置部Dを除く全周を1枚の断熱シート5で覆うことができ、その後に、内側より各支柱3,3間に壁パネル6を固定して施工することができるものであり、全て内側から施工作業を行うことができ、良好な断熱構造の浴室ユニット1を構築することができるものとなる。
【0013】
次に、図5〜図8は第2実施例を示すものであり、本例では、壁パネル6は、裏面に縦桟10aと横桟10bで構成される裏補強フレーム10が設けられた構造であり、複数の壁パネル6を床パン2上に組んで浴室ユニット1が構成され、第1実施例のような支柱3は存在しない浴室ユニットに関するものである。
【0014】
なお、断熱シート5は紙またはアルミニウム蒸着したポリエチレンテレフタレートフイルム等で構成されており、浴室ユニット1の4辺のそれぞれを覆う4枚の断熱シート5を用いても、また2枚の断熱シート5を用いても良いが、本例では、予め浴室ユニット1の全体を覆うことが可能な長さの1枚の断熱シート5を用いた場合を例示しており、断熱シート5の一端5aを図5,図6及び図7に示すように、ドアDの左端側に立設される壁パネル6の右端側の縦桟10aに接着剤または両面テープを用いて貼着しておき、徐々に右回りで壁パネル6,6,6を連結させながら組み付けてゆき、壁パネル6の組み付けに沿ってその裏側に断熱シート5を巻き付けてゆき、最終的には図5に示すように、ドアDの右端側に配置される壁パネル6の左端側の縦桟10aに断熱シート5の他端5bを貼着することで、複数の壁パネル6,6の裏側全体を断熱シート5で覆うものである。
【0015】
なお、図8の拡大平面図で示すように、各壁パネル6,6は、縦桟10a,10aの外側に連結材11を嵌合させることで、各壁パネル6,6が連結されてゆき、この連結材11の裏側を跨ぐようにして断熱シート5が巻き付けられてゆき、断熱シート5と壁パネル6の裏面間に空気層Sが形成されるものである。
なお、2枚あるいは4枚の断熱シート5を用いて施工する場合においても、各断熱シート5が、2以上の壁パネル6,6を連結する連結材11の裏側に跨がり張設されるようにすることで、隙間のない空気層Sを形成させることができるものである。
【0016】
本例においても、床パン2上に壁パネル6を次々と連結させて組み付けながら、徐々に組み付けた壁パネル6の裏側に断熱シート5を巻き付けて施工してゆくことができ、断熱シート5及び壁パネル6の施工全てを浴室ユニット1の内側より行うことができ、浴室ユニット1の外周と建物躯体間の隙間の狭い現場においても良好に断熱シート5を施工することができ、良好な断熱構造の浴室ユニット1を構築することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施例の浴室ユニットの支柱の裏側に断熱シートを張設する前の分解斜視構成図である。
【図2】支柱の裏側に断熱シートを張設した平面構成図である。
【図3】コーナー部の支柱に張設された断熱シートの内側に壁パネルが固定された要部平面拡大構成図である。
【図4】第1実施例の変更例を示す1枚の断熱シートで外周を覆う施工状態の斜視構成図である。
【図5】第2実施例の補強フレームを有する壁パネルの裏側に断熱シートを施工する平面構成図である。
【図6】断熱シートの一端を壁パネルの裏補強フレームの縦桟に貼着する前の施工説明図である。
【図7】さらに図6の要部を拡大して示す斜視構成図である。
【図8】2枚の壁パネルの裏側に跨がって断熱シートが張設された状態の平面拡大構成図である。
【符号の説明】
【0018】
1 浴室ユニット
2 床パン
3 支柱
3a 開口
3b 係止片
4 上連結材
5 断熱シート
5a 一端
5b 他端
6 壁パネル
7 化粧板
7a 先端折曲片
8 石膏ボード
9 目地
10 裏補強フレーム
10a 縦桟
10b 横桟
11 連結材
D ドア(ドア設置部)
S 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床パン上に複数の支柱を建て、該複数の支柱の室外側に亘って断熱シートを張設した後、前記支柱の裏内側から壁パネルを固定して、該壁パネルの裏面と前記断熱シート間に空気層を形成させることを特徴とする断熱性を有する浴室ユニットの構築方法。
【請求項2】
裏補強フレームを備えた複数枚の壁パネルを床パン上に組んで構成される浴室ユニットにおいて、前記1つの壁パネルの裏補強フレームの縦桟に断熱シートの一端を貼り、壁パネルを組みながら2以上の壁パネルの裏に跨がり前記断熱シートを巻き付けて、該断熱シートの他端を別の壁パネルの裏に貼り、複数の壁パネルの裏面全体を断熱シートで覆うことを特徴とする断熱性を有する浴室ユニットの構築方法。
【請求項3】
ユニット全体を覆うことが可能な長さの断熱シートの一端をドア一端側の壁パネルの裏に貼り、該断熱シートの他端をドア他端側の壁パネルの裏に貼ったことを特徴とする請求項2に記載の断熱性を有する浴室ユニットの構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−9323(P2006−9323A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185558(P2004−185558)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】