説明

新規な化合物、その合成中間体及びそれらの製造方法

【課題】7員環複素環を含んだ多環縮環型化合物、及びその製造方法の提供。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物。


(Mは、置換基があってもよいSi等の金属元素、P原子等を、A及びBは、それぞれn個、m個の芳香環縮環構造を、nは1以上、mは2以上の整数を表す。)例えば、下式の合成中間体4aから製造される5aのようなSi化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な多環縮環型化合物、その合成中間体、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
π共役系芳香環が多数縮合した多環縮環型化合物は、その高い平面性に起因する特殊な分子相互作用により、有機エレクトロニクス分野をはじめとする広範な分野における有用性が知られている(非特許文献1)。例えば特許文献1には、有機エレクトロルミネッセンス化合物としてジナフチルエチレン派生物が記載されている。
【0003】
特に、ヘテロ原子を含む複素環が含まれる縮環化合物は、多様な合成手段を用いることができ、また容易に精製できるため、実用化にむけて、その製造方法の研究開発が近年急速に進展している。このような縮環化合物として、例えば特許文献2には、有機ケイ素を含む多環縮環型π共役有機材料およびその製造方法が開示されている。
【0004】
ところで、ヘテロ原子を含む7員環は、ヘテロ原子の種類や酸化状態により構造を変化させるという性質を有することが知られているため、ヘテロ原子を含む7員環が含まれる多環縮環型化合物は、ヘテロ原子の特徴を生かした新しい機能を発現することが期待されている。このような縮環化合物として、例えば非特許文献2には、ヘテロ原子としてケイ素(Si)を用いた化合物及びその合成方法が記載されており、また非特許文献3には、ヘテロ原子としてケイ素、ゲルマニウム(Ge)又はセレン(Se)を用いた、4つ以上の環を縮環させた化合物およびその合成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−247887号公報(2008年10月16日公開)
【特許文献2】特開2005−154410号公報(2005年6月16日公開)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.E.Anthony、Angew.Chem.Int.Ed.Vol.47、pp452−483、2008
【非特許文献2】Y.Nakadaira、R.Sato、H.Sakurai、Organometallics Vol.10、pp435−442、1991
【非特許文献3】Organometallics 2008、27、3960−3963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これまでに知られているヘテロ原子を含む7員環の製造法では、多環縮環型化合物の製造に適用した場合に、合成中間体の製造が非常に困難あるいは不可能であるという問題がある。また、上述した非特許文献3に記載されている合成方法は、限られたヘテロ原子にしか適用できない。したがって、4つ以上の環を縮環させた化合物の系統的製造法については知られていない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、7員環複素環を含んでおり、縮環を構成する環が4つ以上である多環縮環型化合物において、構成する環と、7員環複素環に含まれるヘテロ原子とが高い柔軟性を有する新規な多環縮環型化合物、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る化合物は、下記式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
(上記式(1)において、Mは、置換基があってもよい金属元素、置換基があってもよいリン原子、硫黄原子またはセレン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表され、下記式(2)
【0012】
【化2】

【0013】
(上記式(2)において、Xはジメチルケイ素、ジメチルゲルマニウム又はセレンを表す)
で表される化合物を除くことを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る化合物は、さらに、上記式(1)において、nとmとの和が6以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る化合物では、A及びBは、それぞれ独立して置換基があってもよいベンゼン、置換基があってもよいナフタレン、置換基があってもよいベンゾチオフェン、置換基があってもよいチオフェン、置換基があってもよいキノリン、置換基があってもよいアントラセン、置換基があってもよいフラン、置換基があってもよいベンゾフラン、及び置換基があってもよいインドールからなる群より選択されることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る化合物では、上記式(1)中のMは、置換基があってもよいホウ素原子、置換基があってもよいアルミニウム原子、置換基があってもよいガリウム原子、置換基があってもよいインジウム原子、置換基があってもよい亜鉛原子、及び置換基があってもよい銅原子からなる群より選択されることが好ましい。
【0017】
本発明に係る合成中間体は、下記式(3)
【0018】
【化3】

【0019】
(上記式(3)において、Dはハロゲン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表され、下記式(4)
【0020】
【化4】

【0021】
で表される化合物を除くことを特徴としている。
【0022】
また、本発明に係る合成中間体は、さらに、上記式(3)において、nとmとの和が6以下であることが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る合成中間体では、A及びBは、それぞれ独立して置換基があってもよいベンゼン、置換基があってもよいナフタレン、置換基があってもよいベンゾチオフェン、置換基があってもよいチオフェン、置換基があってもよいキノリン、置換基があってもよいアントラセン、置換基があってもよいフラン、置換基があってもよいベンゾフラン、及び置換基があってもよいインドールからなる群より選択されることが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る合成中間体では、上記式(3)中のDが臭素原子であることが好ましい。
【0025】
本発明に係る化合物の製造方法は、下記式(1)
【0026】
【化5】

【0027】
(上記式(1)において、Mは、置換基があってもよい金属元素、置換基があってもよいリン原子、硫黄原子またはセレン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表される化合物の製造方法であって、下記式(3)
【0028】
【化6】

【0029】
(上記式(3)において、Dはハロゲン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表される合成中間体を、アルカリ金属もしくはマグネシウム又はこれらの有機金属化合物と反応させてジメタル中間体を生成した後、上記ジメタル中間体を、上記式(1)中のMを含む求電子剤と反応させて上記式(1)で表される化合物を得ることを特徴としている。
【0030】
また、本発明に係る化合物の製造方法では、上記式(3)中のDが臭素原子であり、上記有機金属化合物が有機リチウム化合物であることが好ましい。
【0031】
本発明に係る化合物の製造方法は、下記式(1)
【0032】
【化7】

【0033】
(上記式(1)において、Mは、置換基があってもよい金属元素、置換基があってもよいリン原子、硫黄原子またはセレン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表される化合物の製造方法であって、上記式(1)中のMは、置換基があってもよいホウ素原子、置換基があってもよいアルミニウム原子、置換基があってもよいガリウム原子、置換基があってもよいインジウム原子、置換基があってもよい亜鉛原子、及び置換基があってもよい銅原子からなる群より選択され、下記式(6)
【0034】
【化8】

【0035】
(上記式(6)において、Snはスズ原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表し、R及びRはそれぞれ独立して置換基があってもよい炭素数1〜5の炭化水素基を表す)
で表される化合物を、上記式(1)中のMを含む求電子剤と反応させる第1工程を有することを特徴とする。
【0036】
また、本発明に係る製造方法は、第1工程で得られた化合物を、アリールリチウムと反応させる第2工程を有することが好ましい。
【0037】
また、本発明に係る合成中間体の製造方法は、下記式(3)
【0038】
【化9】

【0039】
(上記式(3)において、Dはハロゲン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表される合成中間体の製造方法であって、下記式(5)
【0040】
【化10】

【0041】
(上記式(5)において、Dはハロゲン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表される化合物を還元剤と反応させて上記式(3)で表される合成中間体を得ることを特徴としている。
【0042】
また、本発明に係る合成中間体の製造方法では、上記還元剤は、水素化ジイソブチルアルミニウムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、7員環複素環を含んでおり、縮環を構成する環が4つ以上である多環縮環型化合物において、構成する環と、7員環複素環に含まれるヘテロ原子とが高い柔軟性を有する新規な多環縮環型化合物、及びその製造方法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、化合物5a及び5gにおける紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。
【図2】化合物9a及び9hにおける紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の実施の形態について説明する。
【0046】
〔1.本発明に係る化合物〕
まず、本発明に係る化合物の実施の形態について以下に説明する。
【0047】
(1−1.本発明に係る化合物)
本発明に係る化合物は、上記式(1)で表され、上記式(2)で表される化合物を除くことを特徴とする。
【0048】
本発明に係る化合物は、上記式(1)に示すように、Mで表されるヘテロ原子を含む7員環複素環を含んでいる。
【0049】
上記式(1)において、Mは、置換基があってもよい金属元素、置換基があってもよいリン原子、硫黄原子またはセレン原子を表している。
【0050】
本明細書中では、金属元素とは、金属性の単体をつくる、一般的な金属元素だけでなく、ホウ素原子、ケイ素原子、ヒ素原子、テルル原子などのいわゆる半金属元素をも含む。Mで表される元素としては、例えばホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、銅原子、ケイ素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、ビスマス原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子などが挙げられる。この中でも、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、又は銅原子が好ましく、ホウ素原子、アルミニウム原子、又はガリウム原子がより好ましい。これらの原子であれば、電子を有さない軌道(空軌道)を持つため、本発明に係る化合物は、その平面性が高くなり、また、電子材料として好適に用いられ得る。
【0051】
また、上記Mで表される元素は、置換基があってもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、置換基があってもよい炭化水素基等が挙げられる。特に、上記Mがホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、銅原子、ケイ素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、またはビスマス原子を表す場合には、該置換基としては、アルキル基、O−アルキル基、アリール基、置換されたビニル基等の炭化水素基;ハロゲン原子;等が挙げられる。炭化水素基としては、炭化水素基としては、炭素数1〜10個のものが好ましく、炭素数1〜5個のものがより好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子または臭素原子が好ましい。また、特に上記Mがホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、または銅原子を表す場合には、置換基として、アリール基を用いることが好ましい。アリール基としては、下記式(7)で表されるものであることが好ましい。
【0052】
【化11】

【0053】
上記式(7)中のRは、炭素数1〜5個のアルキル基を示す。また、Rとしては、メチル基、イソプロピル基、またはtert−ブチル基であることが好ましい。このようなアリール基としては、例えば、2,4,6−トリメチルフェニル(メシチル)基等が挙げられる。
【0054】
このような置換基を有することにより、本発明に係る化合物が安定になり、容易に扱うことが可能になる。特に、上記Mが、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子、又は銅原子等の空軌道を有する元素を表す場合には、置換基としてアリール基を有することにより、空気中においてもより安定に取り扱えるようになるため、応用面での有用性を向上させることができる。
【0055】
また、上記式(1)において、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表す。各芳香環は、それぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環である。
【0056】
A及びBとしては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、ベンゾチオフェン、チオフェン、キノリン、アントラセン、フラン、ベンゾフラン、インドールなどが挙げられる。
【0057】
また、A及びBは、それぞれ独立して置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜10個の炭化水素基;水素原子、ハロゲン原子;などが挙げられる。炭化水素基としては、アルキル基、O−アルキル基、アリール基、置換されたビニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数5〜10個の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数5〜10個の直鎖アルキル基である。該炭化水素基は、さらに置換基があってもよい。該置換基としては、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0058】
AとBとは、同一の構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0059】
AとBとの組み合わせとしては、例えば、置換基があってもよいベンゼンと置換基があってもよいナフタレンとの組み合わせ、置換基があってもよいナフタレンと置換基があってもよいナフタレンとの組み合わせ、ベンゾチオフェンとナフタレンとの組み合わせ、ベンゾチオフェンとベンゼンとの組み合わせ、チオフェンとナフタレンとの組み合わせ、ベンゾチオフェンとベンゾチオフェンとの組み合わせ等が好ましい。
【0060】
また、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す。なお、nとmとは、芳香環の数を表しており、例えばAがベンゼンであればnは1であり、Aがナフタレンであればnは2であり、Aがアントラセンであればnは3である。これにより、本発明に係る化合物は、縮環を構成する環が4つ以上となっている。なお、nとmとは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
さらに、nとmとの和が6以下であることが好ましい。すなわち、本発明に係る化合物は、縮環を構成する環が7個以下であることが好ましい。これにより、本発明に係る化合物の溶解性が向上し、取り扱いが容易になる。
【0062】
次に、本発明に係る合成中間体の実施の形態について以下に説明する。
【0063】
(1−2.合成中間体)
本発明に係る合成中間体は、上記式(3)で表され、上記式(4)で表される化合物を除くことを特徴とする。
【0064】
上記式(3)において、Dはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0065】
また、上記式(3)において、A及びBとしては、上述した本発明に係る化合物の説明において、A及びBとして例示したものと同じものを挙げることができる。
【0066】
〔2.本発明に係る化合物の製造方法1〕
次に、本発明に係る化合物の製造方法における実施の形態について、以下に説明する。
【0067】
本発明に係る化合物の製造方法は、上記式(1)で表される化合物の製造方法であって、上記式(3)で表される合成中間体を、アルカリ金属もしくはマグネシウム又はこれらの有機金属化合物と反応させてジメタル中間体を生成した後、上記ジメタル中間体を、上記式(1)中のMを含む求電子剤と反応させて上記式(1)で表される化合物を得ることを特徴としている。
【0068】
ここで、上記式(1)におけるM、A及びBとしては、上述した本発明に係る化合物の説明においてM、A及びBとして例示したものと同じものを挙げることができる。なお、本製造方法においては、上記式(1)におけるMの種類は限定されないが、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子又は銅原子以外の金属の場合に特に好適に用いることができる。一方、Mがホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、亜鉛原子又は銅原子の場合は、後述する製造方法2にかかる金属交換反応にて、より容易に製造が可能となる。
【0069】
また、上記(3)におけるD、A及びBとしては、上述した本発明に係る合成中間体の説明においてD、A及びBとして例示したものと同じものを挙げることができる。
【0070】
上記式(3)で表される合成中間体は、本発明に係る合成中間体の製造方法を用いて製造することができる。まず、本発明に係る合成中間体の製造方法について以下に説明する。
【0071】
(2−1.合成中間体の製造方法)
本発明に係る合成中間体の製造方法は、上記式(3)で表される合成中間体の製造方法であって、上記式(5)で表される化合物を還元剤と反応させて上記式(3)で表される合成中間体を得ることを特徴とする。
【0072】
上記式(5)において、D、A及びBとしては、上述した本発明に係る合成中間体の説明において、D、A及びBとして例示したものと同じものを挙げることができる。
【0073】
還元剤としては、三重結合に水素原子を付加させるものが好ましく、三重結合に選択的に水素原子をシス付加させるものがより好ましい。還元剤として、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)、ジアルキルボラン、水素雰囲気下活性炭担持パラジウム(Pd/C)等が挙げられる。中でも、水素化ジイソブチルアルミニウムを用いれば、水素原子を選択的にシス付加させることができるので、上記式(5)で表される化合物から、上記式(3)で表される合成中間体を選択的に合成することができる。
【0074】
還元剤の量は、上記(5)で表される化合物に対して2〜4モル当量であることが好ましく、3〜4モル当量であることがより好ましい。
【0075】
反応に用いる溶媒としては、反応に対して不活性なものが好ましく、ヘキサン、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。また、これらを組み合わせてもよい。中でもトルエンが好ましい。
【0076】
反応させる温度は、60〜120℃であることが好ましく、100〜120℃であることがより好ましい。
【0077】
反応させる時間は、6〜18時間であることが好ましく、12〜18時間であることがより好ましい。
【0078】
反応における圧力は、常圧であることが好ましい。
【0079】
上記式(5)で表される化合物は、例えば、ヒドロキシアレーン類などを用いて合成することができる。ここで、ヒドロキシアレーン類を用いて、上記式(5)で表される化合物を合成する方法の例について以下に説明する。
【0080】
まず、ヒドロキシアレーン類をハロゲン化する。次に、ヒドロキシル基をトリフラート化し、化合物(X)を得る。
【0081】
次に、化合物(X)を用いて、さらにトリフラートをアルキニル化した化合物(Y)を得る。ここで、化合物(X)に代えて、ヒドロキシアレーン類をハロゲン化する際に化合物(X)とは異なる位置にハロゲン原子を導入して得られる化合物、及び、化合物(X)の合成に用いたヒドロキシアレーン類とは異なるヒドロキシアレーン類から得られる化合物、等を用いて化合物(Y)を合成してもよい。これにより、同一の化合物(X)に対して、多様な構造を有する化合物(Y)を組み合わせることができる。
【0082】
次に、化合物(X)と化合物(Y)とを原料とし、これらをカップリングさせて、上記式(5)で表される化合物を得ることができる。
【0083】
ここで、化合物(X)と化合物(Y)とをカップリングさせる方法としては、例えば、パラジウム錯体を用いる方法等が挙げられる。
【0084】
すなわち、入手が容易なヒドロキシアレーン類を2分子(式(1)中のA及びBに相当する構造にヒドロキシル基が付された化合物)用い、当該ヒドロキシアレーン類が有するヒドロキシル基を、7員環複素環構築の足がかりとする位置選択的なハロゲン化、トリフラート化及びカップリング反応のための官能基として用いることで、様々な複素環、置換様式を含む合成中間体(式(3)又は(5)の化合物)を選択的、かつ系統的に製造することができる。
【0085】
化合物(X)は、化合物(Y)に対して1モル当量を用いることがより好ましい。
【0086】
パラジウム錯体としては、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(PdCl(PPh)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)等が挙げられる。パラジウム錯体は、化合物(Y)を100モル%とした場合に、3〜20モル%用いることが好ましく、3〜5モル%用いることがより好ましい。また、銅錯体を共存させることが好ましい場合がある。具体的には、銅錯体としてヨウ化銅(CuI)が挙げられる。銅錯体は、化合物(Y)を100モル%とした場合に、1〜10モル%用いることが好ましく、1〜2モル%用いることがより好ましい。
【0087】
反応に用いる溶媒としては、反応に対して不活性なものが好ましく、ジメチルホルムアミド(DMF)、トリエチルアミン、ジエチルアミン等が挙げられる。また、これらを組み合わせてもよい。中でもジメチルホルムアミドとトリエチルアミンとを組み合わせることが好ましい。
【0088】
反応させる温度は、室温〜90℃であることが好ましく、室温〜40℃であることがより好ましい。
【0089】
反応させる時間は、2〜48時間であることが好ましく、12〜24時間であることがより好ましい。
【0090】
反応における圧力は、常圧であることが好ましい。
【0091】
なお、例えば、化合物(X)及び(Y)として、多様な化合物を作り分けて共通な中間体とし、それらを様々な組み合わせにおいて用いれば、上記式(5)で表される化合物として多様な構造を有する化合物を得ることができ、さらに本発明に係る化合物として多様な構造を有する化合物を製造することが可能となる。
【0092】
また、このように、本発明に係る化合物の製造方法は、出発原料として、誘導体を作ることが容易であるヒドロキシアリール類等を用いることができるので、容易に実施することができる。
【0093】
次に、上記式(3)で表される合成中間体から上記式(1)で表される化合物を製造する方法について以下に説明する。
【0094】
(2−2.本発明に係る化合物の製造方法1)
まず、上記式(3)で表される合成中間体を、アルカリ金属もしくはマグネシウム又はこれらの有機金属化合物と反応させて、ジメタル中間体を生成させる。
【0095】
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0096】
有機金属化合物としては、上述したアルカリ金属又はマグネシウムの有機金属化合物を用いることができる。このような有機金属化合物としては、例えば、アルキルリチウム、グリニャール試薬等が挙げられる。アルキルリチウムとしては、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等が挙げられる。グリニャール試薬としては、イソプロピルマグネシウムクロライド、tert−ブチルマグネシウムクロライド等が挙げられる。
【0097】
有機金属化合物の量は、上記式(3)で表される合成中間体に対して、2〜3モル当量用いることが好ましい。
【0098】
反応に用いる溶媒としては、反応に対して不活性なものが好ましく、ジエチルエーテル、ペンタン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。また、これらを組み合わせてもよい。中でもジエチルエーテルが好ましい。
【0099】
反応させる温度は、−78〜0℃であることが好ましく、−78℃であることがより好ましい。
【0100】
反応させる時間は、1〜3時間であることが好ましく、1〜2時間であることがより好ましい。
【0101】
反応における圧力は、常圧であることが好ましい。
【0102】
次に、得られたジメタル中間体を、上記式(1)中のMを含む求電子剤と反応させることにより、環を縮合させ、上記式(1)で表される化合物を得ることができる。ここでは、例えば、Chem. Pharm. Bull.2003、51、1283に記載された手法等を適用することができる。
【0103】
求電子剤は、上記式(1)中のMで表される元素を含むものであればよい。求電子剤として、例えば、Mがケイ素(Si)であれば、ジメチルジクロロシラン(MeSiCl)など、Mがスズ(Sn)であれば、ジメチルジクロロスズ(MeSnCl)など、Mがリン(P)であれば、ジクロロフェニルホスフィン(PhPCl)など、Mがゲルマニウム(Ge)であれば、ジメチルジクロロゲルマニウム(MeGeCl)など、Mがヒ素(As)であれば、ジクロロフェニルアルシン(PhAsCl)など、Mがアンチモン(Sb)であれば、ジクロロフェニルアンチモン(PhSbCl)など、Mがビスマス(Bi)であれば、ジクロロフェニルビスマス(PhBiCl)など、Mが硫黄(S)であれば、ビス(フェニルスルホニル)スルフィド((PhSOS)など、Mがセレン(Se)であれば、四塩化セレン(SeCl)など、Mがテルル(Te)であれば、四塩化テルル(TeCl)など、Mがホウ素(B)であれば、三塩化ホウ素(BCl)など、Mがアルミニウム(Al)であれば、三塩化アルミニウム(AlCl)など、Mがガリウム(Ga)であれば、三塩化ガリウム(GaCl)など、Mがインジウム(In)であれば、三塩化インジウム(InCl)など、Mが亜鉛(Zn)であれば、塩化亜鉛(ZnCl)など、Mが銅(Cu)であれば、シアン化銅(CuCN)などを用いることができる。これにより、本発明における化合物に、種々のヘテロ原子を導入することが可能となる。
【0104】
求電子剤の量は、上記式(3)で表される合成中間体に対して、1〜2モル当量用いることが好ましい。
【0105】
反応に用いる溶媒としては、反応に対して不活性なものが好ましく、ジエチルエーテル、ペンタン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。また、これらを組み合わせてもよい。中でもジエチルエーテルが好ましい。
【0106】
反応させる温度は、0℃〜室温であることが好ましく、室温付近であることがより好ましい。
【0107】
反応させる時間は、2〜24時間であることが好ましく、6〜18時間であることがより好ましい。
【0108】
反応における圧力は、常圧であることが好ましい。
【0109】
上述した方法により、本発明に係る化合物として、多様な構造を有する化合物を系統的に製造することが可能となる。
【0110】
ここで、上述した出発原料として、無置換のナフトール類を用いた場合の例を以下に示す。
【0111】
例えば、まず無置換のナフトール類を臭素化し、下記化合物(1a)、(1b)及び(1c)の3種類を得る。
【0112】
【化12】

【0113】
【化13】

【0114】
【化14】

【0115】
次に、上記化合物(1a)、(1b)及び(1c)を共通中間体とし、これらの何れか2つを組み合わせて上述した方法を用いることにより、以下の6種類の縮環様式を有する化合物を得ることができる。
【0116】
例えば、上記化合物(1a)を2つ組み合わせた場合には、下記化合物(a)を得ることができる。
【0117】
【化15】

【0118】
また、例えば、上記化合物(1a)及び(1b)を組み合わせた場合には、下記化合物(b)を得ることができる。
【0119】
【化16】

【0120】
また、例えば、上記化合物(1a)及び(1c)を組み合わせた場合には、下記化合物(c)を得ることができる。
【0121】
【化17】

【0122】
また、例えば、上記化合物(1b)を2つ組み合わせた場合には、下記化合物(d)を得ることができる。
【0123】
【化18】

【0124】
また、例えば、上記化合物(1b)及び(1c)を組み合わせた場合には、下記化合物(e)を得ることができる。
【0125】
【化19】

【0126】
また、例えば、上記化合物(1c)を2つ組み合わせた場合には、下記化合物(f)を得ることができる。
【0127】
【化20】

【0128】
このように、本発明に係る製造方法を用いれば、無置換のナフトール類を出発原料とした場合に、製造される化合物として考えられる、上記化合物(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)のような縮環様式を有する化合物の全てを、選択的に作り分けることが可能である。さらに、出発原料とする化合物を変えることによって、より多様な構造を有する化合物を製造することが可能である。
【0129】
〔3.本発明に係る化合物の製造方法2〕
次に、〔2.本発明に係る化合物の製造方法1〕にて説明した本発明に係る化合物の製造方法(以下、「本発明に係る化合物の製造方法1」という。)とは別の本発明に係る化合物の製造方法(以下、「本発明に係る化合物の製造方法2」という。)について、以下に説明する。
【0130】
本発明に係る化合物の製造方法2は、上記式(1)で表される化合物の製造方法であって、上記式(6)で表される化合物を、上記式(1)中のMを含む求電子剤と反応させる第1工程を行う方法である。
【0131】
上記式(1)中のMは、置換基があってもよいホウ素原子、置換基があってもよいアルミニウム原子、置換基があってもよいガリウム原子、置換基があってもよいインジウム原子、置換基があってもよい亜鉛原子、及び置換基があってもよい銅原子からなる群より選択される。該置換基としては、上述した本発明に係る化合物の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。
【0132】
ここで、上記式(1)におけるA及びB、ならびに上記式(6)におけるA及びBとしては、上述した本発明に係る化合物の説明においてA及びBとして例示したものと同じものを挙げることができる。
【0133】
上記式(6)におけるSnは、スズ原子を表す。
【0134】
また、上記式(6)におけるR及びRは、それぞれ独立して置換基があってもよい炭素数1〜5の炭化水素基を表す。中でもメチル基またはn−ブチル基が好ましい。
【0135】
上記式(6)で表される化合物は、上述した本発明に係る化合物の製造方法1を用いて合成することができるが、他の方法により合成されたものであってもよい。
【0136】
第1工程では、上記式(6)で表される化合物を、上記式(1)中のMを含む求電子剤と反応させればよい。これにより、金属交換反応が起こり、上記式(6)中のスズ(Sn)とMとが置き換わるので、上記式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0137】
求電子剤としては、上記式(1)中のMを含むものであればよく、例えば、MXで表される求電子剤を用いることができる。ここで、Xはハロゲン元素を表す。また、kは1以上の整数を表し、かつ、Mで表される金属元素の状態に固有の数値であればよい。例えば、Mがホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムなどの場合には、k=3であることが好ましく、Mが亜鉛、銅などの場合には、k=2であることが好ましい。
【0138】
このような求電子剤としては、例えば、Mがホウ素(B)であれば、三塩化ホウ素(BCl)など、Mがアルミニウム(Al)であれば、三塩化アルミニウム(AlCl)など、Mがガリウム(Ga)であれば、三塩化ガリウム(GaCl)など、Mがインジウム(In)であれば、三塩化インジウム(InCl)など、Mが亜鉛(Zn)であれば、塩化亜鉛(ZnCl)など、Mが銅(Cu)であれば、シアン化銅(CuCN)などを用いることができる。
【0139】
求電子剤の量は、上記式(6)で表される化合物に対して、1〜2モル当量用いることが好ましい。
【0140】
反応に用いる溶媒としては、反応に対して不活性なものが好ましく、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。また、これらを組み合わせてもよい。中でもトルエンが好ましい。
【0141】
反応させる温度は、−78℃〜室温であることが好ましく、−78℃〜0℃であることがより好ましい。
【0142】
反応させる時間は、2〜12時間であることが好ましく、2〜6時間であることがより好ましい。
【0143】
反応における圧力は、常圧であることが好ましい。
【0144】
また、本発明に係る化合物の製造方法2では、さらに、第1工程で得られた化合物を、アリールリチウムと反応させる第2工程を有することが好ましい。これにより、上記式(1)中のM上にアリール基が置換した化合物を合成することができる。
【0145】
アリール基は、上記式(7)で表されるものであることが好ましい。
【0146】
アリールリチウムとしては、例えば、2,4,6−トリメチルフェニルリチウム(メシチルリチウム)(MesLi)等が挙げられる。これにより、上記式(1)中のM上に2,4,6−トリメチルフェニル(メシチル)(Mes)基が置換した化合物を合成することができる。
【0147】
アリールリチウムの量は、第1工程で得られた化合物に対して、4〜5モル当量用いることが好ましい。
【0148】
反応に用いる溶媒としては、反応に対して不活性なものが好ましく、ジエチルエーテル、ペンタン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。また。これらを組み合わせてもよい。中でもテトラヒドロフランが好ましい。
【0149】
反応させる温度は、−78℃〜室温であることが好ましく、室温付近であることがより好ましい。
【0150】
反応させる時間は、2〜18時間であることが好ましく、12〜18時間であることがより好ましい。
【0151】
反応における圧力は、常圧であることが好ましい。
【0152】
本製造方法2を用いた場合の例を下記式(8)に示す。下記式(8)は、求電子剤としてMXを用いた場合の例である。
【0153】
【化21】

【0154】
上記式(8)において、A、B、R、R、M、X、及びkとしては、本発明に係る化合物の製造方法2において上述したA、B、R、R、M、X、及びkと同じものを表す。また、ArLiはアリールリチウムを表し、Arは、アリール基を表す。
【0155】
〔4.本発明に係る化合物の用途〕
本発明に係る化合物の用途の一例としては、半導体の素子における発光材料、電子輸送材料等が挙げられる。例えば、有機EL素子に用いる発光層、電子輸送層、二次電池の活物質等に用いることができる。
【0156】
また、本発明に係る化合物は、溶解性及び構造多様性に優れているので、発光層、電子輸送層等の大面積化、発光波長の調節による発光層のフルカラー化等のための使用に適している。
【0157】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0158】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【実施例】
【0159】
〔実施例1〕
実施例1においては、下記反応式(I)〜(VI)により、下記化合物5aを製造した例について説明する。
【0160】
(2−Bromo−3−Naphthol(7a)の合成)
まず、下記反応式(I)により、2−Bromo−3−Naphthol(7a)を合成した。
【0161】
【化22】

【0162】
まず、保護体6を合成した。0℃に冷却した2−ナフトール(7.28g、50.0mmol)、炭酸カリウム(34.6g、0.25mol)のアセトン溶液(100mL)にクロロメチルメチルエーテル(6.1mL、75mmol)を滴下した。18時間加熱還流した後、不溶物を濾過により除き、ろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、目的物である保護体6を無色の液体として得た(収量7.2g、収率76%)。
【0163】
得られた保護体6のスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.76−7.71(3H、m)、7.44−7.39(2H、m)、7.33−7.31(1H、m)、7.22−7.19(1H、m)、5.27(2H、s)、3.50(3H、s)。LRGCMS(EI)m/z Found:188。
【0164】
次に、2−Bromo−3−Naphthol(7a)を合成した。アルゴン雰囲気下、−78°Cに冷却した保護体6(5.0mL、29.2mmol)のテトラヒドロフラン溶液(70mL)にtert−ブチルリチウムのペンタン溶液(1.57M、40.8mL、64.2mmol)を滴下した。一旦0℃まで昇温して3時間撹拌した後、反応液をもう一度−78°Cまで冷却し、1,2−ジブロモエタン(6.3mL、72.9mmol)を滴下した。室温に昇温後、16時間撹拌し、水を加えて反応を停止した。混合物を酢酸エチル(50mL×2)で抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)を用いて分離し、目的物を含む画分を集めて濃縮した。これをメタノール(100mL)に溶解し、0℃に冷却後、濃塩酸(12M、20mL)を加えて室温に昇温し、3時間撹拌した。反応液に、液性が塩基性になるまで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、混合物を酢酸エチル(100mL×3)で抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)を用いて精製し、目的物7aを淡黄色の固体として得た(収量4.3g、収率66%(二段階後))。
【0165】
得られた2−Bromo−3−Naphthol(7a)のスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.03(1H、s)、7.71−7.68(2H、m)、7.45−7.39(1H、m)、7.39(s、1H)、7.37−7.35(1H、m)、5.63(1H、s)。LRGCMS(EI)m/z Found:222。
【0166】
(合成中間体1aの合成:ヒドロキシル基のトリフラート化)
次に、下記反応式(II)により、ヒドロキシル基のトリフラート化を行い、合成中間体1aを合成した。
【0167】
【化23】

【0168】
アルゴン雰囲気下、0℃に冷却した2−Bromo−3−Naphthol(3.18g、14.3mmol)の塩化メチレン溶液(60mL)に、トリエチルアミン(4.1mL)、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.9mL,17.2mmol)を順次滴下した。室温に昇温後、30分撹拌し、水を加えて反応を停止した。混合物を塩化メチレン(50mL×2)により抽出後、有機層を2N塩酸(40mL×2)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)、及び飽和食塩水により洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)を用いて精製し、目的物1aを白色の固体として得た(収量4.56g、収率90%)。
【0169】
得られた合成中間体1aのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.19−8.13(1H、m)、7.85−7.80(2H、m)、7.71−7.67(1H、m)、7.65−7.57(2H、m)。LRGCMS(EI)m/z Found:354。
【0170】
(合成中間体2aの合成:トリフラートのアルキニル化)
次に、下記反応式(III)により、トリフラートのアルキニル化を行い、合成中間体1aから合成中間体2aを得た。
【0171】
【化24】

【0172】
アルゴン雰囲気下、0℃に冷却したPdCl(PPh(217mg、0.3mmol)のDMF溶液(30mL)に、合成中間体1a(3.55g,10mmol)のDMF溶液(5mL)、トリメチルシリルアセチレン(1.7mL,12mmol)、トリエチルアミン(6mL)を順次滴下した。室温に昇温後、12時間撹拌し、水を加えて反応を停止した。混合物を酢酸エチル(50mL×2)により抽出後、有機層を飽和食塩水により洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)を用いて分離し、目的物を含む画分を集めて濃縮した。これに水酸化カリウム(1.32g,20mmol)のメタノール溶液(10mL)を加え、室温で3時間撹拌した。2N塩酸を液性が酸性になるまで加えた後、酢酸エチル(50mL×2)により抽出後、有機層を飽和食塩水により洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=8/1)を用いて精製し、目的物2aをオレンジ色の固体として得た(収量1.81g、収率78%(二段階後))。
【0173】
得られた合成中間体2aのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.10(s、1H)、8.08(s、1H)、7.79−7.73(m、2H)、7.53−7.51(m、2H)、3.40(s、1H)。LRGCMS(EI)m/z Found:230。
【0174】
(合成中間体3aの合成:フラグメント同士の連結)
次に、下記反応式(IV)により、合成中間体1a及び合成中間体2aから合成中間体3aを得た。
【0175】
【化25】

【0176】
アルゴン雰囲気下、0℃に冷却したPdCl(PPh(27mg、0.034mmol)のDMF溶液(3mL)に、合成中間体1a(435mg、1.2mmol)のDMF溶液(2mL)、合成中間体2a(283mg、1.2mmol)のDMF溶液(2mL)、トリエチルアミン(0.6mL)を順次滴下した。室温に昇温後、12時間撹拌し、水を加えて反応を停止した。析出したものをろ取し、ヘキサンで洗浄後、乾燥して目的物3aを象牙色の固体として得た(収量340mg、収率64%)。
【0177】
得られた合成中間体3aのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.19(s、2H)、8.14(s、2H)、7.86−7.81(m、2H)、7.77−7.74(m、2H)、7.54−7.51(m、4H)。LRGCMS(EI)m/z Found:436。
【0178】
(合成中間体4aの合成:三重結合のシス選択的還元)
次に、下記反応式(V)により、三重結合のシス選択的還元を行い、合成中間体3aから合成中間体4aを得た。
【0179】
【化26】

【0180】
アルゴン雰囲気下、0℃に冷却した合成中間体3a(174mg、0.4mmol)のトルエン溶液(5mL)に、水素化ジイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1M、1.2mL、1.2mmol)を滴下した。16時間加熱還流した後、水を加えて反応を停止した。混合物を酢酸エチル(10mL×3)で抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、目的物4aを淡黄色の固体として得た(収量105mg、収率60%)。
【0181】
得られた合成中間体4aのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.05(s、2H)、7.61(d、2H、J=7.8Hz)、7.45(s、2H)、7.34−7.30(m、4H)、7.24−7.19(m、2H)、6.92(s、2H)。LRGCMS(EI)m/z Found:438。
【0182】
(化合物5aの合成:縮合環の合成)
次に、下記反応式(VI)により、縮合環の合成を行い、合成中間体4aから化合物5aを合成した。
【0183】
【化27】

【0184】
アルゴン雰囲気下、−78℃に冷却した合成中間体4a(36mg、0.08mmol)のジエチルエーテル溶液(6mL)に、tert−ブチルリチウムのペンタン溶液(1.46M、0.17mL、0.24mmol)を滴下し、そのままの温度で2時間撹拌した。続いて、ジメチルジクロロシラン(MeSiCl)(21mg、0.16mmol)のジエチルエーテル溶液(2mL)を加え、室温へ昇温後、18時間撹拌し、水を加えて反応を停止した。混合物を酢酸エチル(10mL×3)で抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)を用いて分離し、目的物を含む画分を集めて濃縮した後、これを更に薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、目的の化合物5aを薄緑色の針状結晶として得た(収量3.7mg、収率14%)。
【0185】
得られた化合物5aのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.08(s、2H)、7.86−7.78(m、6H)、7.48−7.44(m、4H)、7.12(s、2H)、0.69(s、6H)。75MHz 13C−NMR(CDCl)δ(ppm):138.5、136.3、133.7、133.4、133.0、132.3、128.5、127.8、127.7、126.7、126.0、−3.86。LRGCMS(EI)m/z Found:336。
【0186】
〔実施例2〕
実施例2においては、下記反応式(VII)及び(VIII)により下記化合物5bを合成した例について説明する。
【0187】
【化28】

【0188】
【化29】

【0189】
(臭素体7bの合成)
まず、臭素体7bを合成した。0℃に冷却した1−ナフトール(7.28g、50.0mmol)のDMF溶液(100mL)にN−ブロモこはく酸イミド(9.08g、50mmol)のDMF溶液(50mL)を1時間以上かけて滴下した。室温に昇温し、3時間撹拌し、反応液を濃縮した。濃縮物を酢酸エチル(100mL)に溶解させ、水、飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=8/1)を用いて精製し、目的物7bを白色の固体として得た(収量4.5g、収率40%)。
【0190】
得られた臭素体7bのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.25−8.22(m、1H)、7.80−7.77(m、1H)、7.54−7.47(m、3H)、7.32(d、1H、J=8.7Hz)、5.97(s、1H)。LRGCMS(EI)m/z Found:222。
【0191】
(合成中間体1bの合成)
次に、合成中間体1bを、実施例1における合成中間体1aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体1bのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.10(d、1H、J=7.6Hz)、7.88(d、1H、J=7.6Hz)、7.75−7.58(m、4H)。LRGCMS(EI)m/z Found:354。
【0192】
(合成中間体2bの合成)
次に、合成中間体2bを、実施例1における合成中間体2aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体2bのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.36(d、1H、J=8.4Hz)、7.82(d、1H、J=8.4Hz)、7.71−7.52(m、4H)。LRGCMS(EI)m/z Found:230。
【0193】
(合成中間体3bの合成)
次に、実施例1における合成中間体1aと合成中間体2bとを用いて、実施例1における合成中間体3aの合成と同様の方法を用いて、合成中間体3bを合成した。得られた合成中間体3bのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.67(d、1H、J=8.1Hz)、8.27(s、1H)、8.18(s、1H)、7.87−7.53(m、9H)。LRGCMS(EI)m/z Found:436。
【0194】
(合成中間体4bの合成)
次に、合成中間体4bを、実施例1における合成中間体4aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体4bのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.00(s、1H)、7.73−7.69(m、1H)、7.64−7.56(m、3H)、7.39−7.18(m、8H)、6.94(d、1H、J=11.7Hz)。LRGCMS(EI)m/z Found:438。
【0195】
(化合物5bの合成)
次に、化合物5bを、実施例1における化合物5aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた化合物5bのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.26(d、1H、J=7.8Hz)、8.03(s、1H)、7.88−7.79(m、5H)、7.71−7.67(m、2H)、7.54−7.43(m、5H)、0.69(s、6H)。LRGCMS(EI)m/z Found:336。
【0196】
〔実施例3〕
実施例3においては、下記反応式(IX)〜(X)により下記化合物5cを合成した例について説明する。
【0197】
【化30】

【0198】
【化31】

【0199】
(合成中間体1cの合成)
合成中間体1cを、実施例1における合成中間体1aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体1cのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.27(d、1H、J=8.8Hz)、7.85−7.83(m、2H)、7.67−7.63(m、1H)、7.60−7.55(m、1H)、7.40(d、1H、J=9.2Hz)。LRGCMS(EI)m/z Found:354。
【0200】
(合成中間体2cの合成)
次に、合成中間体2cを、実施例1における合成中間体2aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体2cのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.30(d、1H、J=7.8Hz)、7.83−7.74(m、2H)、7.62−7.53(m、3H)、3.51(s、1H)。LRGCMS(EI)m/z Found:230。
【0201】
(合成中間体3cの合成)
次に、実施例1における合成中間体1aと合成中間対2cとを用いて、実施例1における合成中間体3aの合成と同様の方法を用いて、合成中間体3cを合成した。得られた合成中間体3cのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.35(d、1H、J=8.1Hz)、8.21(s、1H)、8.15(s、1H)、7.85−7.75(m、4H)、7.70−7.52(m、5H)。LRGCMS(EI)m/z Found:436。
【0202】
(合成中間体4cの合成)
次に、合成中間体4cを、実施例1における合成中間体4aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体4cのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.37(d、1H、J=7.6Hz)、8.13(s、1H)、7.69−7.67(m、2H)、7.61−7.59(m、1H)、7.48−7.46(m、2H)、7.40−7.38(m、3H)、7.29−7.25(m、1H)、7.09−7.03(m、3H)。LRGCMS(EI)m/z Found:438。
【0203】
(化合物5cの合成)
次に、化合物5cを、実施例1における化合物5aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた化合物5cのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.53(d、1H、J=8.4Hz)、8.15(s、1H)、7.86−7.75(m、5H)、7.51−7.43(m、5H)、7.30(d、1H、J=13.2Hz)、7.15(d、1H、J=13.2Hz)、0.88(s、6H)。LRGCMS(EI)m/z Found:336。
【0204】
〔実施例4〕
実施例4においては、下記反応式(XI)により下記化合物5dを合成した例について説明する。
【0205】
【化32】

【0206】
(合成中間体3dの合成)
実施例2における合成中間体1b及び2bを用いて、実施例1における合成中間体3aの合成と同様の方法を用いて、合成中間体3dを合成した。得られた合成中間体3dのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.84(d、2H、J=8.8Hz)、7.87(d、2H、J=8.8Hz)、7.74(s、2H)、7.70−7.66(m、2H)、7.60−7.52(m、4H)。LRGCMS(EI)m/z Found:436。
【0207】
(合成中間体4dの合成)
次に、合成中間体4dを、実施例1における合成中間体4aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体4dのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.86(d、2H、J=8.1Hz)、7.52−7.46(m、4H)、7.36(d、2H、J=8.8Hz)、7.25−7.21(m、2H)、7.18−7.08(m、4H)。LRGCMS(EI)m/z Found:438。
【0208】
(化合物5dの合成)
次に、化合物5dを、実施例1における化合物5aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた化合物5dのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.28(d、2H、J=8.4Hz)、7.94−7.79(m、6H)、7.65−7.45(m、6H)、0.67(s、6H)。LRGCMS(EI)m/z Found:336。
【0209】
〔実施例5〕
実施例5においては、下記反応式(XII)により下記化合物5eを合成した例について説明する。
【0210】
【化33】

【0211】
(合成中間体3eの合成)
実施例3における合成中間体1cと、実施例2における合成中間体2bとを用いて、実施例1における合成中間体3aの合成と同様の方法を用いて、合成中間体3eを合成した。得られた合成中間体3eのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.68(d、1H、J=8.1Hz)、8.37(d、1H、J=8.1Hz)、7.92−7.46(m、9H)。LRGCMS(EI)m/z Found:436。
【0212】
(合成中間体4eの合成)
次に、合成中間体4eを、実施例1における合成中間体4aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体4eのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.32(d、1H、J=8.4Hz)、7.95(d、1H、J=8.0Hz)、7.72(d、1H、J=7.6Hz)、7.62(s、2H)、7.57−7.53(m、2H)、7.42−7.30(m、4H)、7.19(d、1H、J=8.8Hz)、6.97(d、1H、J=12.4Hz)、6.78(d、1H、J=8.8Hz)。LRGCMS(EI)m/z Found:438。
【0213】
(化合物5eの合成)
次に、化合物5eを、実施例1における化合物5aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた化合物5eのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.52(d、1H、J=8.4Hz)、8.28(d、1H、J=8.4Hz)、7.93−7.75(m、6H)、7.58−7.44(m、6H)、0.86(s、6H)。LRGCMS(EI)m/z Found:336。
【0214】
〔実施例6〕
実施例6においては、下記反応式(XIII)により下記化合物5fを合成した例について説明する。
【0215】
【化34】

【0216】
(合成中間体3fの合成)
実施例3における合成中間体1c及び2cを用いて、実施例1における合成中間体3aの合成と同様の方法を用いて、合成中間体3fを合成した。得られた合成中間体3fのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.35(d、2H、J=8.8Hz)、7.85−7.80(m、4H)、7.71−7.69(m、2H)、7.64−7.62(m、2H)、7.58−7.56(m、2H)。LRGCMS(EI)m/z Found:436。
【0217】
(合成中間体4fの合成)
次に、合成中間体4fを、実施例1における合成中間体4aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体4fのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.37(d、2H、J=8.8Hz)、7.70(d、2H、J=8.4Hz)、7.60(t、2H、J=8.0Hz)、7.52−7.50(m、2H)、7.42(d、2H、J=8.8Hz)、7.13(s、2H)、7.03(d、2H、J=8.8Hz)。LRGCMS(EI)m/z Found:438。
【0218】
(化合物5fの合成)
次に、化合物5fを、実施例1における化合物5aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた化合物5fのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.76(d、2H、J=8.8Hz)、7.82−7.78(m、4H)、7.55−7.46(m、6H)、7.38(s、2H)、0.96(s、6H)。LRGCMS(EI)m/z Found:336。
【0219】
〔実施例7〕
実施例7においては、下記反応式(XIV)により下記化合物5gを合成した例について説明する。
【0220】
【化35】

【0221】
(合成中間体3gの合成)
まず、合成中間体3gを合成した。アルゴン雰囲気下、0℃に冷却したPdCl(PPh(36mg、0.05mmol)、Copper iodide(4mg、0.02mmol)のジエチルアミン溶液(0.5mL)に2−Bromoiodobenzene(298mg、1.0mmol)、実施例1における合成中間体2a(231mg、1.0mmol)のジエチルアミン溶液(1mL)を順次滴下した。室温に昇温後、5時間撹拌し、水を加えて反応を停止した。混合物を酢酸エチル(10mL×3)により抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、目的物3gを白色の固体として得た(収量181mg、収率47%)。
【0222】
得られた合成中間体3gのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.15(s、1H)、8.13(s、1H)、7.82−7.80(m、1H)、7.76−7.74(m、1H)、7.68−7.64(m、2H)、7.53−7.51(m、2H)、7.35−7.32(m、1H)、7.24−7.50(m、1H)。LRGCMS(EI)m/z Found:386。
【0223】
(合成中間体4gの合成)
次に、合成中間体4gを、実施例1における合成中間体4aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体4gのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.10(s、1H)、7.70(d、1H、J=8.1Hz)、7.60−7.58(m、1H)、7.47−7.36(m、4H)、7.02−6.87(m、5H)。LRGCMS(EI)m/z Found:388。
【0224】
(化合物5gの合成)
次に、化合物5gを、実施例1における化合物5aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた化合物5gのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.04(s、1H)、7.85−7.79(m、3H)、7.61(d、1H、J=7.2Hz)、7.49−7.71(m、2H)、7.37−7.30(m、3H)、7.13(d、1H、J=13.6Hz)、6.96(d、1H、J=7.2Hz)、0.60(s、6H)。75MHz 13C−NMR(CDCl)δ(ppm):141.6、138.3、137.0、136.4、133.5、133.2、133.1、132.9、132.6、132.4、129.6、129.1、128.3、127.7、127.6、127.1、126.6、126.0、−4.29。LRGCMS(EI)m/z Found:286。
【0225】
本実施例のように、本発明に係る製造方法を用いれば、上記式(1)におけるAとBとにおいて、それぞれ異なる個数の芳香環が縮環した構造を有する化合物を製造することが可能である。
【0226】
〔実施例8〕
実施例8においては、下記反応式(XV)により下記化合物8a及び9aをそれぞれ合成した例について説明する。
【0227】
【化36】

【0228】
(化合物8aの合成)
実施例1における合成中間体4aを用いて、化合物8aを合成した。合成方法は、ジメチルジクロロシランの代わりにジクロロフェニルホスフィン(PhPCl)を用いた点以外は、実施例1における化合物5aの合成と同様の方法を用いた。
【0229】
得られた化合物8aのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.50(d、1H、J=16.0Hz)、7.93−7.92(m、2H)、7.84(s、1H)、7.57−7.52(m、3H)、7.17−7.08(m、3H)、6.81(s、2H)。160MHz 31P−NMR(CDCl)δ(ppm):−4。LRGCMS(EI)m/z Found:386。
【0230】
(化合物9aの合成)
実施例1における合成中間体4aを用いて、化合物9aを合成した。合成方法は、ジメチルジクロロシランの代わりにジクロロジメチルスズ(MeSnCl)を用いた点以外は、実施例1における化合物5aの合成と同様の方法を用いた。
【0231】
得られた化合物9aのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.95(s、2H)、7.79−7.74(m、6H)、7.43−7.41(m、4H)、7.11(s、2H)、0.65(s、6H)。100MHz 13C−NMR(CDCl)δ(ppm):140.5、140.0、134.9、134.2、133.4、132.2、127.9、127.8、127.1、126.2、126.0、−11.0。LRGCMS(EI)m/z Found:427。
【0232】
〔実施例9〕
実施例9においては、下記反応式(XVI)により下記化合物10aを合成した例について説明する。
【0233】
【化37】

【0234】
(化合物10aの合成)
アルゴン雰囲気下、−78℃に冷却した実施例8における上記化合物9a(10mg、0.023mmol)のトルエン溶液(5mL)に三塩化ホウ素のヘキサン溶液(0.046M、0.5mL、0.023mmol)を滴下し、ゆっくり室温まで昇温した後4時間撹拌した。続いて、予め調製しておいたメシチルリチウム(MesLi)のTHF溶液(5mL、0.12mmol)を−78℃に冷却して加え、室温へ昇温後、15時間撹拌し、水を加えて反応を停止した。混合物を酢酸エチル(10mL×3)により抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)を用いて分離し、目的物を含む画分を集めて濃縮した後、これを更に薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)を用いて精製し、目的の化合物10aを黄緑色の油状物質として得た(収量2.0mg、収率21%)。
【0235】
得られた化合物10aのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):8.06(s、2H)、7.78−7.72(m、6H)、7.44−7.40(m、4H)、7.08(s、2H)、6.82(s、2H)、2.25(s、3H)、2.22(s、6H)。
【0236】
〔実施例10〕
実施例10においては、下記反応式(XVII)〜(XVIII)により下記化合物9hを合成した例について説明する。
【0237】
【化38】

【0238】
【化39】

【0239】
(合成中間体11の合成)
まず、合成中間体11を合成した。0℃に冷却したベンゾ[b]チオフェン(3.04g、22.0mmol)のクロロホルム溶液(100mL)に臭素(2.5mL、49mmol)のクロロホルム溶液(50mL)を1時間以上かけて滴下した。室温に昇温し、17時間撹拌し、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。混合物の有機層を水、及び飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、目的物である合成中間体11を白色の固体として得た(収量6.29g、収率98%)。
【0240】
得られた合成中間体11のスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.76−7.71(m、2H)、7.45−7.38(m、2H)。LRGCMS(EI)m/z Found:292。
【0241】
(合成中間体12の合成)
次に、合成中間体12を合成した。アルゴン雰囲気下、−78℃に冷却した合成中間体11(6.27g、21.5mmol)のジエチルエーテル溶液(100mL)にノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(2.49M、9.5mL、24mmol)を滴下し、そのままの温度で1時間撹拌した。続いて、ヨウ素(8.17g、32.2mmol)のジエチルエーテル溶液(40mL)を加え、室温へ昇温後、14時間撹拌し、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。得られた混合物の有機層を水、及び飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、目的物である合成中間体12をザラメ色の固体として得た(収量6.78g、収率93%)。
【0242】
得られた合成中間体12のスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.78−7.73(m、2H)、7.40−7.35(m、2H)。LRGCMS(EI)m/z Found:338。
【0243】
(合成中間体2dの合成)
次に、合成中間体2dを合成した。アルゴン雰囲気下、0℃に冷却したPdCl(PPh(289mg、0.40mmol)、ヨウ化銅(Copper iodide)(31mg、0.16mmol)、合成中間体11(2.71g、8.0mmol)のジエチルアミン溶液(17mL)にトリメチルシリルアセチレン(1.35mL、9.6mmol)を滴下した。室温に昇温後、2日撹拌し、水を加えて反応を停止した。得られた混合物を酢酸エチル(50mL×2)により抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)を用いて分離し、目的物を含む画分を集めて濃縮した。これに水酸化カリウム(1.0g、15mmol)のメタノール溶液(8mL)を加え、室温で15時間撹拌した。2N塩酸を液性が酸性になるまで加えた後、酢酸エチル(50mL×2)により抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄し、過剰量の硫酸マグネシウムを用いて乾燥、濾過した後にろ液を濃縮して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、目的物である合成中間体2dを赤黒色の固体として得た(収量1.01g、収率53%(二段階の反応後における収率))。
【0244】
得られた合成中間体2dのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.82−7.74(m、2H)、7.48−7.45(m、2H)、3.72(s、1H)。LRGCMS(EI)m/z Found:236。
【0245】
(合成中間体3hの合成)
次に、合成中間体3hを合成した。アルゴン雰囲気下、0℃に冷却したPdCl(PPh(72mg、0.10mmol)、Copper iodide(8mg、0.04mmol)、合成中間体12(678mg、2.0mmol)のジエチルアミン溶液(4mL)に合成中間体2d(474mg、2.0mmol)のジエチルアミン溶液(2mL)を滴下した。室温に昇温後、18時間撹拌し、水を加えて反応を停止した。析出したものをろ取し、ヘキサンで洗浄後、乾燥して目的物である合成中間体3hを薄茶色の固体として得た(収量895mg、収率100%)。
【0246】
得られた合成中間体3hのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.85−7.83(m、2H)、7.80−7.78(m、2H)。LRGCMS(EI)m/z Found:448。
【0247】
(合成中間体4hの合成)
次に、合成中間体4hを、実施例1における合成中間体4aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体4hのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.83(d、2H、J=8.0Hz)、7.69(d、2H、J=8.0Hz)、7.46−7.42(m、2H)、7.39−7.36(m、2H)、7.01(s、2H)。LRGCMS(EI)m/z Found:450。
【0248】
(化合物9hの合成)
次に、化合物9hを、実施例8における化合物9aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた化合物9hのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.88(d、2H、J=8.0Hz)、7.82(d、2H、J=8.0Hz)、7.39−7.33(m、4H)、6.76(s、2H)、0.78(s、6H)。LRGCMS(EI)m/z Found:440。
【0249】
〔実施例11〕
実施例11においては、下記反応式(XIX)により下記化合物9iを合成した例について説明する。
【0250】
【化40】

【0251】
(合成中間体3iの合成)
実施例10における合成中間体2d及び2−ブロモヨードベンゼンを用いて、実施例10における合成中間体3hの合成と同様の方法により、合成中間体3iを合成した。得られた合成中間体3iのスペクトルデータは以下の通りであった。300MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.83−7.80(m、1H)、7.79−7.75(m、1H)、7.66(dd、1H、J=3.4、1.7Hz)、7.63(dd、1H、J=3.4、1.7Hz)、7.49−7.44(m、2H)、7.33(td、1H、J=7.5、1.1Hz)、7.24(td、1H、J=7.5、1.1Hz)。LRGCMS(EI)m/z Found:392。
【0252】
(合成中間体4iの合成)
次に、合成中間体4iを、実施例1における合成中間体4aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた合成中間体4iのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.78−7.74(m、2H)、7.66−7.60(m、1H)、7.56−7.54(m、1H)、7.46−7.45(m、1H)、7.41−7.34(m、3H)、7.20(d、1H、J=11.6Hz)、6.80(d、1H、J=11.6Hz)。LRGCMS(EI)m/z Found:394。
【0253】
(化合物9iの合成)
次に、化合物9iを、実施例8における化合物9aの合成と同様の方法を用いて合成した。得られた化合物9iのスペクトルデータは以下の通りであった。400MHz H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):7.82−7.79(m、2H)、7.52−7.48(m、1H)、7.40−7.26(m、5H)、6.96(d、1H、J=13.8Hz)、6.85(d、1H、J=13.8Hz)、0.65(s、6H)。LRGCMS(EI)m/z Found:384。
【0254】
〔実施例12〕
実施例12では、実施例1において得られた化合物5aと、実施例7において得られた化合物5gとを用いて、紫外・可視吸光光度測定を行った。また、同時に下記式(8)で表される既知の化合物ジベンゾ[b,f]ジメチルシレピン(DBSI)についても測定を行った。その結果を図1に示す。図1は、化合物5a及び5gにおける紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。なお、縦軸は吸光度(Abs.)を表し、横軸は波長(Wavelength)を表す。
【0255】
【化41】

【0256】
図1に示すように、DBSI、化合物5a、及び化合物5gにおける、最も長波長側にある吸収極大波長は、それぞれ291nm、323nm、317nmであり、化合物5a及び5gは、DBSIに比べ、より長波長側に吸収極大波長を有していることが示された。この結果から、本発明に係る化合物は、半導体の素子における発光材料、電子輸送材料等に有用であることがいえる。また、化合物5aは、化合物5gに比べ、さらにより長波長側に吸収極大波長を有していたため、縮環を構成する環の数が多いほど有用であることが示唆された。
【0257】
〔実施例13〕
実施例13では、実施例8における化合物9a及び実施例10における化合物9hを用いて紫外・可視吸光光度測定を行った。その結果を図2に示す。図2は、化合物9a及び9hにおける紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。なお、縦軸は吸光度(Abs.)を表し、横軸は波長(Wavelength)を表す。
【0258】
図2に示すように、化合物9a及び9hにおける、最も長波長側の吸収極大波長は、それぞれ314nm、407nmであった。化合物9hは、化合物9aに比べ、より長波長側に吸収極大波長を有していたことから、縮環を構成する環にチオフェンを用いることによって、より有用な化合物を合成できることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0259】
本発明に係る化合物は、例えば有機エレクトロニクス分野をはじめとする広範な分野に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(上記式(1)において、Mは、置換基があってもよい金属元素、置換基があってもよいリン原子、硫黄原子またはセレン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表され、
下記式(2)
【化2】

(上記式(2)において、Xはジメチルケイ素、ジメチルゲルマニウム又はセレンを表す)
で表される化合物を除くことを特徴とする化合物。
【請求項2】
さらに、上記式(1)において、nとmとの和が6以下であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
上記式(1)において、A及びBは、それぞれ独立して置換基があってもよいベンゼン、置換基があってもよいナフタレン、置換基があってもよいベンゾチオフェン、置換基があってもよいチオフェン、置換基があってもよいキノリン、置換基があってもよいアントラセン、置換基があってもよいフラン、置換基があってもよいベンゾフラン、及び置換基があってもよいインドールからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
上記式(1)中のMは、置換基があってもよいホウ素原子、置換基があってもよいアルミニウム原子、置換基があってもよいガリウム原子、置換基があってもよいインジウム原子、置換基があってもよい亜鉛原子、及び置換基があってもよい銅原子からなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物。
【請求項5】
下記式(3)
【化3】

(上記式(3)において、Dはハロゲン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表され、
下記式(4)
【化4】

で表される化合物を除くことを特徴とする合成中間体。
【請求項6】
さらに、上記式(3)において、nとmとの和が6以下であることを特徴とする請求項5に記載の合成中間体。
【請求項7】
上記式(3)において、A及びBは、それぞれ独立して置換基があってもよいベンゼン、置換基があってもよいナフタレン、置換基があってもよいベンゾチオフェン、置換基があってもよいチオフェン、置換基があってもよいキノリン、置換基があってもよいアントラセン、置換基があってもよいフラン、置換基があってもよいベンゾフラン、及び置換基があってもよいインドールからなる群より選択されることを特徴とする請求項5に記載の合成中間体。
【請求項8】
上記式(3)中のDが臭素原子であることを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載の合成中間体。
【請求項9】
下記式(1)
【化5】

(上記式(1)において、Mは、置換基があってもよい金属元素、置換基があってもよいリン原子、硫黄原子またはセレン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表される化合物の製造方法であって、
下記式(3)
【化6】

(上記式(3)において、Dはハロゲン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表される合成中間体を、アルカリ金属もしくはマグネシウム又はこれらの有機金属化合物と反応させてジメタル中間体を生成した後、
上記ジメタル中間体を、上記式(1)中のMを含む求電子剤と反応させて上記式(1)で表される化合物を得ることを特徴とする製造方法。
【請求項10】
上記式(3)中のDが臭素原子であり、
上記有機金属化合物が有機リチウム化合物であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
下記式(1)
【化7】

(上記式(1)において、Mは、置換基があってもよい金属元素、置換基があってもよいリン原子、硫黄原子またはセレン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表される化合物の製造方法であって、
上記式(1)中のMは、置換基があってもよいホウ素原子、置換基があってもよいアルミニウム原子、置換基があってもよいガリウム原子、置換基があってもよいインジウム原子、置換基があってもよい亜鉛原子、及び置換基があってもよい銅原子からなる群より選択され、
下記式(6)
【化8】

(上記式(6)において、Snはスズ原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表し、R及びRはそれぞれ独立して置換基があってもよい炭素数1〜5の炭化水素基を表す)
で表される化合物を、上記式(1)中のMを含む求電子剤と反応させる第1工程を有することを特徴とする製造方法。
【請求項12】
第1工程で得られた化合物を、アリールリチウムと反応させる第2工程を有することを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
下記式(3)
【化9】

(上記式(3)において、Dはハロゲン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表される合成中間体の製造方法であって、
下記式(5)
【化10】

(上記式(5)において、Dはハロゲン原子を表し、Aはn個の芳香環が縮環した構造を表し、Bはm個の芳香環が縮環した構造を表し、A及びBにおける各芳香環はそれぞれ独立して置換基があってもよい芳香族炭化水素又は複素環であり、nは1以上の整数を表し、mは2以上の整数を表す)
で表される化合物を還元剤と反応させて上記式(3)で表される合成中間体を得ることを特徴とする製造方法。
【請求項14】
上記還元剤は、水素化ジイソブチルアルミニウムであることを特徴とする請求項13に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−202616(P2010−202616A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52435(P2009−52435)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】