説明

昇降装置

【課題】簡単な制御により、圧力差をより確実に解消させること。
【解決手段】制御部Sは、フォークFの上昇動作のための油圧ポンプモータ11の動作終了後とフォークFの下降動作のための油圧ポンプモータ11の動作終了後のそれぞれにおいて電磁切換弁19を閉弁し、前記動作の終了後に油圧ポンプモータ11を下降動作方向に回転させる。これにより、電磁切換弁19と油圧ポンプモータ11の間の圧力を予め定めた一定圧とする。そして、下降動作を開始させる場合には、油圧ポンプモータ11をシリンダ圧に応じて上昇動作方向に回転させることで、電磁切換弁19の上流側と下流側の圧力差を解消させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降用の油圧シリンダを備え、その油圧シリンダの油圧駆動によって昇降物を昇降動作させる昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダの油圧駆動によって昇降物を昇降動作させる昇降装置として、例えば、特許文献1に記載されているフォークリフト用の昇降装置が知られている。フォークリフト用の昇降装置は、油圧シリンダへの作動油の給排により、昇降物としてのフォーク(荷役具)を昇降動作させるものである。この種の昇降装置では、油圧シリンダと油圧ポンプの間の油圧配管に作動油の流れを制御する切換バルブが配設されており、その切換バルブの開閉制御によってフォークの昇降動作と停止が行われる。
【0003】
しかしながら、フォークリフト用の昇降装置では、切換バルブにおける作動油の流れの上流側と下流側で圧力差が生じている状態でフォークを下降動作させるために切換バルブを開弁すると、作動油が流れ出した際にショックが生じる虞がある。このショックは、フォークの動作を不安定とするから、荷崩れなどの要因となる。
【0004】
そこで、特許文献1の昇降装置では、上記問題を解決するための対策が施されている。具体的に言えば、特許文献1の昇降装置では、前述した圧力差を解消させるために、下降動作の開始時に、フォークを上昇動作させるように油圧ポンプを一旦作動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−7258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の昇降装置は、下降動作の指示がなされた場合、前回の下降動作の指示が与えられなくなった時点からの経過時間をもとに、フォークを上昇動作させる時間を決定している。すなわち、特許文献1の昇降装置は、経過時間から圧力の低下分を推定し、その推定した低下分の圧力に応じた時間、フォークを上昇動作させている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の昇降装置では、下降動作の指示がなされるまでの時間が一定時間ではないことから、下降動作を開始させる時に推定される圧力低下分も不定であり、その結果、制御が複雑化してしまう。また、特許文献1の昇降装置は、経過時間によって圧力の低下分を推定しているので、圧力差を解消するための手法として信頼性に欠ける。例えば、異なる重量の荷を搭載している場合などにおいて、同一の経過時間の時に同一の圧力低下がなされているとは言い難い。このため、特許文献1の昇降装置では、図3(a)に示すように、実際のシリンダ圧以上に昇圧させてしまう場合(図中の符号「A」)や、実際のシリンダ圧に対して昇圧量が不足する場合(図中の符号「B」)が生じてしまう。シリンダ圧以上に昇圧させると、フォークが実際に上昇動作してしまい、その状態から下降動作を行うことになるので、下降動作を指示してから実際に下降動作が開始するまでの間にタイムラグが発生してしまう。一方、昇圧量が不足すると、圧力差が解消されていない状態でフォークの下降動作を行うことになるので、作動油が流れ出した際にショックが生じる。
【0008】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、簡単な制御により、圧力差をより確実に解消させることができる昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、油圧シリンダへの作動油の給排によって昇降物を昇降動作させる昇降装置において、前記油圧シリンダへ作動油を供給する油圧ポンプと、前記油圧シリンダと前記油圧ポンプの間の油路上に配設される電磁切換弁と、前記油圧ポンプの回転制御、及び前記電磁切換弁の開閉制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記昇降物の上昇動作の終了後に前記油圧ポンプを下降動作方向に回転させるとともに、前記昇降物の下降動作の終了後に前記電磁切換弁を閉弁してから前記油圧ポンプを下降動作方向に回転させることにより、前記電磁切換弁と前記油圧ポンプの間の圧力を一定圧とし、前記下降動作の開始時に、前記油圧ポンプを前記油圧シリンダのシリンダ圧に応じて上昇動作方向に回転させることを要旨とする。
【0010】
これによれば、上昇動作及び下降動作の終了後に油圧ポンプを下降動作方向に回転させることにより、電磁切換弁と油圧ポンプの間の圧力が一定圧とされる。そして、下降動作を開始させる場合は、油圧ポンプを油圧シリンダのシリンダ圧に応じて上昇動作方向に回転させることで、電磁切換弁の上流側(作動油の流入側)と下流側(作動油の流出側)の圧力差を解消させることができる。すなわち、油圧ポンプの上昇動作方向への回転開始時の圧力を常に一定圧としているので、シリンダ圧に応じた圧力に確実に昇圧させることができる。その結果、下降動作時におけるショックを低減させるとともに、迅速に動作させることができる。また、前回の動作状態を必要とせず、下降動作を開始させる時の状態のみに基づき、昇圧を行わせることができるので、制御を簡素化できる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の昇降装置において、前記一定圧は、前記作動油を貯留する油タンクのタンク圧と同一圧、又は前記タンク圧に対して1MPaの許容差内の圧とされていることを要旨とする。これによれば、上昇動作及び下降動作の終了時にタンク圧を基準として圧力が制御されるので、制御を簡素化できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の昇降装置において、前記油圧ポンプの吐出口と前記作動油を貯留する油タンクの間の油路上に配設されたチェック弁を備え、前記チェック弁は、前記チェック弁よりも前記油タンク側の圧力が前記チェック弁よりも前記油圧ポンプ側の圧力に比して一定値以上高くなることで開弁し、前記油タンクから前記油圧ポンプの方向に作動油を流すことが可能となることを要旨とする。これによれば、油圧ポンプを下降動作方向に回転させたときに生じる不足油を補うことができ、圧力を一定圧に制御することができる。
【0013】
請求項4の記載の発明は、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の昇降装置において、前記下降動作の開始時に、前記油圧ポンプを前記油圧シリンダのシリンダ圧に応じた回転数で上昇動作方向に回転させることを要旨とする。これによれば、シリンダ圧に応じた圧力に確実に昇圧させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な制御により、圧力差をより確実に解消させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】昇降装置の回路図。
【図2】(a)は、上昇動作を停止させる時の油圧ポンプモータの回転数の変遷を説明する説明図、(b)は、下降動作を停止させる時の油圧ポンプモータの回転数の変遷を説明する説明図。
【図3】(a)は、従来の昇降装置における圧力の変遷を説明する説明図、(b)は、実施形態の昇降装置における圧力の変遷を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、フォークリフトのフォークを昇降動作させるリフトシリンダを備えた昇降装置に具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
フォークリフトの前方に配置される荷役具(昇降物)としてのフォークFは、運転席に設けられたリフトレバーLの操作により、油圧シリンダとしてのリフトシリンダ10が伸縮されることによって昇降動作する。
【0017】
以下、本実施形態においてリフトシリンダ10を動作させるための油圧制御機構を、図1にしたがって説明する。
閉回路構成をなす主配管Kには、油圧ポンプ及び油圧モータとして機能する油圧ポンプモータ11が接続されているとともに、主配管Kには、リフトシリンダ10への作動油の給排経路をなすとともに、リフトシリンダ10のボトム室10aに接続される配管K1が接続されている。油圧ポンプモータ11は、双方向回転可能に構成されている。そして、主配管Kは、油圧ポンプモータ11の流通口11a,11bに接続されている。油圧ポンプモータ11の流通口11a,11bは、作動油の流通方向によって吸込口又は吐出口となる。
【0018】
また、油圧ポンプモータ11には、電動機及び発電機として機能するリフト用モータ(回転電機)12が接続されている。リフト用モータ12は、図示しないステータのコイルへの通電によってロータを回転させることで電動機として機能する一方で、ロータが回転することによってステータのコイルに電力を生じさせることで発電機として機能する。本実施形態においてリフト用モータ12は、油圧ポンプモータ11を油圧ポンプとして作動させる場合に電動機となり、油圧ポンプモータ11を油圧モータとして作動させる場合に発電機となる。
【0019】
また、主配管Kには、リフトシリンダ10を上昇動作させる場合に油圧ポンプモータ11の作動によって油タンク13から汲み上げられる作動油を流通させる供給配管K2が接続されているとともに、供給配管K2には主配管Kから油タンク13への逆流を防止するチェック弁(逆止弁)14が配設されている。また、主配管Kには、リフトシリンダ10を下降動作させる場合に油圧ポンプモータ11の作動によって油タンク13に戻される作動油を流通させる排出配管K3が接続されているとともに、排出配管K3には油タンク13から主配管Kへの逆流を防止するチェック弁(逆止弁)15が配設されている。また、排出配管K3には、油タンク13とチェック弁15との間にフィルタ16が配設されている。
【0020】
また、主配管Kには、油圧ポンプモータ11の流通口11aに接続される主配管Kから油圧ポンプモータ11の流通口11bに接続される主配管Kへの逆流を防止するチェック弁(逆止弁)17が配設されている。チェック弁17は、油圧ポンプモータ11の吐出口となり得る流通口11aと作動油を貯留する油タンク13の間の油路上に配設されている。そして、チェック弁17は、油タンク13側から油圧ポンプモータ11の流通口11b側の主配管Kへの作動油の流通を許容する。チェック弁17は、チェック弁17よりも油タンク13側の圧力が、チェック弁17よりも油圧ポンプモータ11側の圧力に比して一定値以上高くなることで開弁し、油タンク13から油圧ポンプモータ11の方向に作動油を流す。また、主配管Kには、圧力上昇を防止するリリーフ弁18が配設されている。
【0021】
リフトシリンダ10のボトム室10aに接続される配管K1には、電磁切換弁19が配設されている。電磁切換弁19は、ボトム室10aへの作動油の供給及びボトム室10aからの作動油の排出を許容する開状態としての第1位置19aと、作動油の給排を不能とする閉状態としての第2位置19bの2位置を取り得る。
【0022】
次に、油圧制御機構の制御手段としての制御部Sの構成を説明する。
制御部Sには、リフトレバーLの操作量を検出するポテンショメータLmが電気的に接続されている。制御部Sは、リフトレバーLの操作量に基づくポテンショメータLmからの検出信号をもとに、リフト用モータ12の回転数を制御する。また、制御部Sには、リフトシリンダ10の下部付近の油圧回路内に配設されている荷重センサ20が電気的に接続されている。制御部Sは、荷重センサ20からの検出信号をもとに、荷の有無や、荷重からシリンダ圧を推定する。また、制御部Sは、上昇動作時、及び下降動作時、電磁切換弁19の開度を制御する。
【0023】
また、制御部Sには、インバータS1が電気的に接続されている。そして、リフト用モータ12には、フォークリフトに搭載されるバッテリBTの電力がインバータS1を介して供給される。なお、リフト用モータ12で生じた電力は、インバータS1を介してバッテリBTに蓄積される。本実施形態のフォークリフトは、バッテリBTに蓄積された電力を原動機となる走行用モータに供給して走行するバッテリ式のフォークリフトとされている。
【0024】
以下、本実施形態の油圧制御機構の作用を説明する。
最初に、フォークFの上昇動作について説明する。
フォークFを上昇動作させる場合は、リフトシリンダ10のボトム室10aに作動油を供給する。このため、制御部Sは、リフトレバーLの操作量に応じた指示速度で上昇動作させるように油圧ポンプモータ11及びリフト用モータ12の回転数を制御する。また、制御部Sは、電磁切換弁19を第1位置19aとする。これにより、油圧ポンプモータ11によって汲み上げられた油タンク13の作動油は、主配管Kを流通して電磁切換弁19に至るとともに、ボトム室10aに供給される。その結果、リフトシリンダ10の伸長によってフォークFが上昇動作する。なお、上昇動作時の油圧ポンプモータ11は、油圧ポンプとして作動する。
【0025】
一方、制御部Sは、上昇動作を終了させる場合、電磁切換弁19を第2位置19bとする。そして、制御部Sは、上昇動作を終了させる場合、電磁切換弁19を閉じた状態で、図2(a)に示すように、油圧ポンプモータ11を、下降動作方向に所定時間(0.1〜0.5秒程度)の間、微小回転させるようにリフト用モータ12を制御する。このとき、制御部Sは、油圧ポンプモータ11を低速回転させる。そして、制御部Sは、油圧ポンプモータ11を、微小回転させた後に停止させて上昇動作を終了させる。
【0026】
本実施形態では、上昇動作の終了時に油圧ポンプモータ11を下降動作方向に回転させることで、油圧ポンプモータ11と電磁切換弁19の間の主配管K内の圧力を一定圧に制御する。具体的には、主配管K内の圧力を前記一定圧として、油タンク13のタンク圧(大気圧)に制御する。なお、電磁切換弁19を閉じた状態(第2位置19b)で油圧ポンプモータ11を回転させる場合は、主配管K内の作動油が不足する。このため、不足分の作動油は、チェック弁17により、油タンク13から吸い込まれて主配管Kを流通する。
【0027】
次に、フォークFの下降動作について説明する。
フォークFを下降動作させる場合は、リフトシリンダ10のボトム室10aから作動油を排出する。そして、本実施形態において制御部Sは、下降動作の開始時に、電磁切換弁19を閉じた状態(第2位置19b)で、油圧ポンプモータ11を、上昇動作方向に所定時間の間、所定の回転数で回転させるようにリフト用モータ12を制御する。このとき、制御部Sは、荷重センサ20の検出結果から推定されるシリンダ圧によって決定される回転数で油圧ポンプモータ11を上昇動作方向に回転させる。シリンダ圧によって決定される回転数とは、電磁切換弁19の上流側(作動油の流入側)と下流側(作動油の流出側)の圧力が等しくなる回転数(シリンダ圧と等しくなる回転)、又は油圧ポンプモータ11の吐出口となる流通口11a側の圧力がシリンダ圧よりも若干低くなる回転数である。このような回転数で油圧ポンプモータ11を回転させることにより、油圧ポンプモータ11と電磁切換弁19の間の主配管K内の圧力は昇圧される。その結果、電磁切換弁19の上流側と下流側、すなわちリフトシリンダ10と電磁切換弁19の間と、電磁切換弁19と油圧ポンプモータ11の間との圧力差が解消される。
【0028】
図3(b)には、本実施形態において前述の制御を行うことによる圧力の変遷を示す。本実施形態では、上昇動作の終了時に油圧ポンプモータ11と電磁切換弁19の間の主配管K内の圧力をタンク圧としている。このため、下降動作を開始させる時点における前記主配管K内の圧力とシリンダ圧の圧力差は、下降動作を開始させる時点のシリンダ圧によって変動するが、昇圧開始時の圧力は常に一定圧(タンク圧)となっている。これにより、上昇動作から下降動作が行われるまでの経過時間や荷重の影響を受けることなく、電磁切換弁19の上流側と下流側の圧力差を解消させることができる。つまり、シリンダ圧に応じて昇圧を行えば良いので、必要以上に昇圧されることや昇圧不足となることが防止される。また、経過時間などの前回の動作状態を必要とせず、下降動作を開始させる時の状態のみに基づき、昇圧を行わせることができる。
【0029】
そして、油圧ポンプモータ11を上昇動作方向に回転させた後、制御部Sは、リフトレバーLの操作量に応じた指示速度で下降動作させるように油圧ポンプモータ11及びリフト用モータ12の回転数を制御する。また、制御部Sは、電磁切換弁19を第1位置19aとする。これにより、リフトシリンダ10のボトム室10aから排出された作動油は、主配管Kを流通して油圧ポンプモータ11の流通口11aに吸い込まれる。このとき、流通口11aは、吸込口として機能する。そして、油圧ポンプモータ11は、ボトム室10aから排出された作動油を駆動力とし、油圧モータとして作動する。その結果、リフト用モータ12は、発電機として機能することになり、リフト用モータ12で生じた電力がインバータS1を介してバッテリBTに蓄電される。すなわち、フォークFの下降動作時には、回生動作が行われる。
【0030】
そして、制御部Sは、下降動作を終了させる場合、電磁切換弁19を第2位置19bとする。また、制御部Sは、下降動作を終了させる場合、電磁切換弁19を閉じた状態で、図2(b)に示すように、油圧ポンプモータ11を、下降動作方向に所定時間(0.1〜0.5秒程度)の間、微小回転させるようにリフト用モータ12を制御する。このとき、制御部Sは、油圧ポンプモータ11を低速回転させる。すなわち、制御部Sは、上昇動作の終了時と同様に、下降動作の終了時に油圧ポンプモータ11を下降動作方向に回転させることで、油圧ポンプモータ11と電磁切換弁19の間の主配管K内の圧力を一定圧(タンク圧)に制御する。
【0031】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)上昇動作及び下降動作の終了後に油圧ポンプモータ11を下降動作方向に回転させることにより、油圧ポンプモータ11と電磁切換弁19の間の圧力を一定圧とする。そして、下降動作を開始させる場合は、油圧ポンプモータ11をリフトシリンダ10のシリンダ圧に応じて上昇動作方向に回転させることで、電磁切換弁19の上流側と下流側の圧力差を解消させることができる。すなわち、油圧ポンプモータ11の上昇動作方向への回転開始時の圧力を常に一定圧としているので、シリンダ圧に応じた圧力に確実に昇圧させることができる。したがって、昇降物(フォークF)を下降動作させる場合に生じ得るショックを低減させることができる。
【0032】
(2)また、油圧ポンプモータ11を上昇動作方向に回転させるだけで、実際にはフォークFを上昇動作させていない。このため、下降動作を指示してから実際に下降動作する迄の間のタイムラグを最小限に止めることができる。その結果、昇降物(フォークF)を迅速に動作させることができる。すなわち、リフトシリンダ10(フォークF)の動作として、一旦上昇動作してから下降動作する形態をとらず、下降動作のみを行う。
【0033】
(3)また、前回の動作状態を必要とせず、下降動作を開始させる時の状態のみに基づき、昇圧を行わせることができるので、制御を簡素化できる。
(4)油圧ポンプモータ11と電磁切換弁19の間の圧力を一定圧として、油タンク13のタンク圧と同一となるように油圧ポンプモータ11を下降動作方向に回転させている。このため、上昇動作及び下降動作の終了時にタンク圧を基準として圧力が制御されるので、制御を簡素化できる。
【0034】
(5)油圧ポンプモータ11を下降動作方向に回転させる場合に、不足油を吸い込むチェック弁17を有している。このため、油圧ポンプモータ11を下降動作方向に回転させたときに生じる不足油を補うことができ、圧力を一定圧に制御することができる。
【0035】
(6)荷重センサ20の結果からシリンダ圧を推定するので、シリンダ圧を直接的に検出する構成を採用する場合に比して、製造コストの増加を抑制することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0036】
○ 荷重センサ20に代えて圧力センサを配設し、シリンダ圧を直接検出しても良い。これによれば、下降動作の開始時に、シリンダ圧をより正確に検出することができる。その結果、電磁切換弁19の上流側と下流側の圧力差をより確実に解消させることができる。
【0037】
○ 上昇動作の終了後、及び下降動作の終了後、油圧ポンプモータ11と電磁切換弁19の間の圧力を、油タンク13のタンク圧と略同一となるように制御を行っても良い。具体的には、タンク圧に対して1MPaの許容差内の圧(±1MPa)となるように制御を行っても良い。
【0038】
○ 油圧ポンプモータ11と電磁切換弁19の間の圧力を一定圧とする場合、その一定圧を固定値として制御を行っても良いし、変動値として制御を行っても良い。
○ 電磁切換弁19の第2位置19bの構成を変更しても良い。具体的には、油圧ポンプモータ11側からリフトシリンダ10側への作動油の流通を許容する一方で、リフトシリンダ10側から油圧ポンプモータ11側への作動油の流通を許容しない構成としても良い。すなわち、フォークFの高さ位置を維持するためにボトム室10a内の作動油を油圧ポンプモータ11側へ流出させない構成であれば良い。
【0039】
○ 実施形態の油圧制御機構は、フォークリフトに限らず、下降動作を自重によって行うものであれば適用することができる。例えば、油圧エレベータなどに適用しても良い。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0040】
(イ)前記シリンダ圧は、圧力センサによって直接的に検出する、又は荷重センサの検出結果から推定して間接的に検出することを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の昇降装置。
【符号の説明】
【0041】
10…リフトシリンダ、11…油圧ポンプモータ、11a…流通口、13…油タンク、17…チェック弁、19…電磁切換弁、K…主配管、K1,K3…配管、F…フォーク、S…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧シリンダへの作動油の給排によって昇降物を昇降動作させる昇降装置において、
前記油圧シリンダへ作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧シリンダと前記油圧ポンプの間の油路上に配設される電磁切換弁と、
前記油圧ポンプの回転制御、及び前記電磁切換弁の開閉制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記昇降物の上昇動作の終了後に前記油圧ポンプを下降動作方向に回転させるとともに、前記昇降物の下降動作の終了後に前記電磁切換弁を閉弁してから前記油圧ポンプを下降動作方向に回転させることにより、前記電磁切換弁と前記油圧ポンプの間の圧力を一定圧とし、前記下降動作の開始時に、前記油圧ポンプを前記油圧シリンダのシリンダ圧に応じて上昇動作方向に回転させることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
前記一定圧は、前記作動油を貯留する油タンクのタンク圧と同一圧、又は前記タンク圧に対して1MPaの許容差内の圧とされていることを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記油圧ポンプの吐出口と前記作動油を貯留する油タンクの間の油路上に配設されたチェック弁を備え、
前記チェック弁は、前記チェック弁よりも前記油タンク側の圧力が前記チェック弁よりも前記油圧ポンプ側の圧力に比して一定値以上高くなることで開弁し、前記油タンクから前記油圧ポンプの方向に作動油を流すことが可能となることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記下降動作の開始時に、前記油圧ポンプを前記油圧シリンダのシリンダ圧に応じた回転数で上昇動作方向に回転させることを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−103823(P2013−103823A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249990(P2011−249990)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】