説明

映像配信装置、映像配信方法、映像配信システム、及び映像配信プログラム

【課題】観視者が立体映像観視中あるいは立体映像観視後に体調不良となることを避けることを可能とする映像配信技術を提供する。
【解決手段】観視者に対して映像を表示する受信装置に立体映像を配信するための映像配信装置を、前記観視者を立体映像に順応させるための映像を前記受信装置に配信する順応処理手段と、前記観視者により要求された立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断するための配信可否判断手段と、前記配信可否判断手段により、配信不可と判断された場合に、前記観視者が立体映像の観視を練習するための映像を前記受信装置に配信する練習処理手段と、前記配信可否判断手段により、配信可と判断された場合に、前記受信装置に、前記観視者により要求された立体映像を配信する要求映像配信手段と、を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像を受信装置に配信する技術に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
TV、ゲーム端末、携帯端末等で立体映像を観視できる環境が整いつつある。立体映像サービスでは、モニタを裸眼や専用メガネ、あるいは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用して観視可能であるが、立体映像観視時に体調不良を起こすことが問題視されている(非特許文献1)。
【0003】
そのため、政府や業界として立体映像をみる前にガイドライン(非特許文献2)を基に注意喚起を促すテロップを流して対応している。しかし、テロップによる注意喚起だけでは安全性の観点から十分ではなく、上記問題を技術的に解決することが望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3D映画による体調不良、http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20100804_2.pdf、平成23年7月19日検索
【非特許文献2】3Dコンソーシアムガイドライン、http://www.3dc.gr.jp/jp/scmt_wg_rep/guide_index.html、平成23年7月19日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
立体映像観視時に体調不良となる理由には以下のようなものが挙げられる。
【0006】
1) 観視者が立体映像呈示装置の呈示方式に順応し(慣れ)ていない。
【0007】
2) 観視者が現状の自分の立体視力、立体視機能、眼精疲労を認識できていない。
【0008】
3) 観視者が立体視を楽しめるだけの立体視能力を身につけていない。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、観視者が立体映像観視中あるいは立体映像観視後に体調不良となることを避ける、あるいは、その発生確率を減らすことを可能とする映像配信技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、観視者に対して映像を表示する受信装置に立体映像を配信するための映像配信装置であって、
前記観視者を立体映像に順応させるための映像を前記受信装置に配信する順応処理手段と、
前記観視者により要求された立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断するための配信可否判断手段と、
前記配信可否判断手段により、配信不可と判断された場合に、前記観視者が立体映像の観視を練習するための映像を前記受信装置に配信する練習処理手段と、
前記配信可否判断手段により、配信可と判断された場合に、前記受信装置に、前記観視者により要求された立体映像を配信する映像配信手段と、を備えることを特徴とする映像配信装置により解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、観視者が立体映像観視中あるいは立体映像観視後に体調不良となることを避ける、あるいは、その発生確率を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る映像配信システム100の構成図である。
【図2】映像配信装置20における制御部21の機能構成図である。
【図3】映像配信装置20が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【図4】ステップ100(順応処理)で配信する映像シーケンスを示す図である。
【図5】受信装置10の構成の一例を示す図である。
【図6】受信装置10の構成の一例を示す図である。
【図7】受信装置10の構成の一例を示す図である。
【図8】配信可否判断処理で配信される両眼立体視テスト映像のシーケンスである。
【図9】配信可否判断処理で配信される両眼立体視力テスト映像のシーケンスである。
【図10】配信可否判断処理で配信される限界両眼立体視力テスト映像のシーケンスである。
【図11】配信可否判断処理で配信される立体運動視力テスト映像のシーケンスである。
【図12】配信可否判断処理で配信される動揺病テスト映像のシーケンスである。
【図13】物体の表示位置を変えるテスト映像の例である。
【図14】左右映像表示テスト映像の例である。
【図15】判断データ格納部23が格納しているテーブルの例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
(映像配信システムの構成及び動作概要)
図1に本発明の実施の形態に係る映像配信システム100の構成図を示す。図1に示すように、本実施の形態に係る映像配信システム100は、受信装置10と映像配信装置20とがネットワーク30を介して接続された構成を有する。
【0015】
映像配信装置20は、制御部21、映像データを格納する映像データ格納部22、及び、配信可否判断等の判断を行う際に参照するデータ等を格納する判断データ格納部23を備える。制御部21は、本発明の実施の形態に係る映像配信及び各種判断を行うための機能部である。受信装置10は、映像配信装置20から映像を受信し、観視者に対して映像を表示する機能(例えば、裸眼型、メガネ型、ヘッドマウント型などのディスプレイ)、観視者に情報を入力させて、入力した情報を映像配信装置20に送信する機能(例えば、リモコン)、及び、観視者の生体情報や観視環境情報を測定・収集し、収集した情報を映像配信装置20に送信する機能を含む。動作の概要は次のとおりである。
【0016】
受信装置10から映像配信装置20に立体映像の配信要求が出されると、映像配信装置20の制御部21は、立体映像を安全に配信するため、まず、観視者を立体映像に順応させるための映像を映像データ格納部22から読み出して受信装置10に配信し、次に配信可否判断を判断データ格納部23にある判断データを基に行う。その結果、NGであれば、立体映像を見ることを練習するための映像を映像データ格納部22から読み出して配信し、OKになれば、映像データ格納部22にある配信要求された立体映像を受信装置10に配信する。このような処理により、立体映像配信サービスが実現される。
【0017】
図2に、映像配信装置20における制御部21の機能構成図を示す。図2に示すように、制御部21は、順応処理部211、配信可否判断部212、練習処理部213、要求映像配信部214を備える。順応処理部211は、観視者を立体映像に順応させるための映像を配信する機能部である。配信可否判断部212は、要求された映像の配信可否等を判断する機能部である。練習処理部213は、立体映像を見ることを練習するための映像を配信する機能部である。要求映像配信部214は、要求された映像を配信するための機能部である。
【0018】
このような機能構成を備える映像配信装置20が実行する処理手順の概要を図3のフローチャートを参照して説明する。映像配信装置20が受信装置10から立体映像の配信要求を受信すると、制御部21における順応処理部211は、立体映像に順応するための映像を受信装置10に配信することにより、受信装置10における立体映像再生に観視者の目を順応させる(ステップ100)。
【0019】
そして、配信可否判断部212が、後述するように観視者から入力された回答や測定された生体情報等を利用して、観視者の立体視力を確認し、要求された映像の配信可否判断を行う(ステップ200)。ここで、配信可(ステップ200のYes)であれば、要求映像配信部214が要求された映像の配信を行う(ステップ400)。配信不可(ステップ200のNo)であれば、練習処理部213が、練習するための映像を受信装置10に配信することにより(ステップ300)、観視者の立体視力を向上させ、安全性を向上させた上で、再度判断(ステップ200)を行い、配信可となれば要求映像配信部214により映像を配信する(ステップ400)。
【0020】
映像配信装置20は、CPU、メモリ、通信装置等から構成されるコンピュータに、本実施の形態で説明する機能に対応したプログラムを実行させることにより実現可能である。すなわち、映像配信装置20の各部が有する機能は、当該映像配信装置20を構成するコンピュータに内蔵されるCPUやメモリなどのハードウェア資源を用いて、各部で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。また、上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体、例えばFD(Floppy(登録商標) Disk)や、MO(Magneto−Optical disk)、ROM(Read Only Memory)、メモリカード、CD(Compact Disk)−ROM、DVD(Digital Versatile Disk)−ROM、BD(Blu−ray Disk)−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW、BD−R、BD−RE、HDD、リムーバブルディスクなどに記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メールなど、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0021】
本実施の形態では、映像データ格納部22に格納された映像を制御部21が受信装置10に配信することを想定しているが、映像の配信方法はこれに限られるわけではない。例えば、映像データ格納部22を、制御部21とネットワーク接続された映像配信サーバとし、制御部21から映像配信サーバに配信命令を送ることにより、映像配信サーバから受信装置10に向けて映像を配信することとしてもよい。この場合でも、制御部21、映像配信サーバ(映像データ格納部22に相当)、判断データ格納部23を含む構成を映像配信装置20と称することができる。
【0022】
(映像配信システム100の動作の詳細)
以下、図3に示した各ステップにおけるシステムの動作をステップ毎に詳細に説明する。
【0023】
<ステップ100:順応処理>
ステップ100(順応処理)では、順応処理部211が、受信装置10に対して、固有の3D表示特性に観視者の目を慣らす為にテスト映像を配信する。具体的には、順応処理部211は、図4の(a)〜(d)に示すような映像を映像データ格納部22から順次読み出して配信する。図4の(a)〜(d)は、それぞれ、受信装置10にて観視者が観視する映像を表現したものである。すなわち、映像配信装置20は、受信装置10において、図に示される映像が表示されるように、映像データを取得・処理して、受信装置10に送信している。他の映像の図も同様である。
【0024】
図4(a)は、静止物体が立体化していくシーンであり、2D映像に視差をつけて3D映像に変化させる映像を示す。この映像は、観視者に3D映像を認識し始めてもらうための映像である。
【0025】
図4(b)は、画面上を3D物体が上下左右に移動するシーンである。この映像は、観視者に画面上のいろいろな位置における立体表示に慣れてもらうための映像である。
【0026】
図4(c)は、画面の手前や奥に3D物体を移動させるシーンである。この映像は、観視者に飛び出しや奥行き感に慣れてもらうための映像である。
【0027】
図4(d)は、立体的な背景に複数の物体が存在するシーンである。すなわち、飛び出しや位置が様々な複数の3D物体が立体シーンの中に存在する。この映像は、観視者に立体的な背景の上に複数の3D物体が移動し、現実的な3D映像に慣れてもらうための映像である。
【0028】
以上のような映像を観視者に見てもらい3D表示モニタ固有の見方も含め3D映像に順応してもらう。なお、図4(a)〜(d)の映像を表示する順番は図4に示す順番に限られず、他の順番でもよい。また、図4(a)〜(d)の映像の内容は一例である。
【0029】
<ステップ200:配信可否判断処理>
ステップ200の配信可否判断処理では、配信可否判断部212が観視者の立体視力を測定するテスト映像を流し、その映像を立体視できるかどうかを観視者に回答してもらい、さらに、目や脳や脈波や発汗などの生体情報や観視環境を計測することにより観視者の立体視能力を判断する。そして、これらの回答結果及び測定結果に基づき、配信可否判断やレベル判断を行う。
【0030】
ここで、上記の回答や測定を行うことを可能ならしめる本実施の形態に係る受信装置10の構成例について図5〜図7を参照して説明する。
【0031】
図5に示す構成例において、受信装置10は、制御端末11、モニタ12(ディスプレイ)、リモコン13を備える。制御端末11は、映像配信装置20との間でデータ通信を行う機能を備える。また、制御端末11は、映像配信装置20から配信された映像(シーケンス)を受信し、受信した映像をモニタ12に出力する機能を備える。モニタ12は、制御端末11から出力された映像を表示する機能を備える。また、モニタ12は、観視者によりなされたリモコン操作(ボタン入力)による入力情報をリモコン13から受信し、その情報を制御端末11に送信する機能を備え、制御端末11は当該情報を映像配信装置20に送信する。なお、リモコンからの情報を制御端末11が直接受信することとしてもよい。上記の構成を有する受信装置10に係る動作例を以下に説明する。
【0032】
後に詳しく説明するように、映像配信装置20から受信装置10に配信される映像のシーケンスには、指示や質問の映像が挿入されている。その指示・質問の表示に合わせて、観視者はリモコン13のボタンを押すことにより情報を入力する。なお、この「ボタン」とは、モニタ12上に表示されるボタンであってもよく、「リモコンのボタンを押す」とは、リモコン13にて、モニタ12に表示されたボタンを選択することを含むものとする。
【0033】
例えば、「立体映像が見えたらボタンを押してください。」という指示に合わせて観視者がボタンを押す。リモコン13のボタンが押されると、赤外線や無線や有線を利用して、押されたボタン情報が制御端末11に送られる。制御端末11は押されたボタン情報を映像配信装置20に送信する。より詳細には、制御端末11は押されたボタン情報を解析し、観視者のアクション結果を示す情報として映像配信装置20に送信する。
なお、図5に示す受信装置10は、通信機能を備えるテレビを想定しているが、受信装置10として、パソコン、ゲーム機、携帯端末などを使用してもよい。
【0034】
図6は、生体情報を収集する装置の一例として、各種センサを搭載した眼鏡14を示している。この眼鏡14は、眼間に照度センサ141を備え、鼻支え部に発汗センサ142を備え、こめかみに血流センサ143を備え、眼鏡外側に眼球撮影CCDセンサ144を備えている。この場合、受信装置10は、図5に示す構成に、この眼鏡14を含む構成となる。この眼鏡14に搭載された各センサで測定された生体情報がリアルタイムに制御端末11に送られ、制御端末11から生体情報が映像配信装置20に送信される。生体情報の測定・送信は、例えば一定時間間隔で行うこととしてもよいし、観視者から指示があったときに測定・送信することとしてもよい。
【0035】
更に、生体情報を収集する装置として、図7に示す帽子15を用いることもできる。つまり、この場合、図5に示す構成に加えて、図6に示す眼鏡14、及び図7に示す帽子15が受信装置10を構成する。当該帽子15は、脳波計測センサがその内側に搭載されており、脳波を計測するとともに、計測結果を制御端末11に送信する機能を備える。図7に示すように、本例での脳波計測センサは、NIRS(Near Infra- Red Spectroscopy)方式であり、帽子の内側にNIRS端子151と脳波測定端子152が搭載されている。この帽子15に搭載された脳波計測センサで測定された脳波情報がリアルタイムに制御端末11に送られ、制御端末11から脳波情報が映像配信装置20に送信される。脳波情報の測定・送信は、例えば一定時間間隔で行うこととしてもよいし、観視者から指示があったときに行ってもよい。
【0036】
以上のような構成により、照度、視距離、発汗情報、血流情報、眼間距離、瞳孔サイズ、眼球運動情報、脳波情報等が測定され、映像配信装置20に送信される。なお、照度、視距離は観視環境を示し、これらを観視環境情報と呼ぶことができる。本例では、図6に示す眼鏡14や、図7に示す帽子15を用いているが、生体情報等を測定するための装置はこれらに限られるわけではない。例えば、専用の測定装置を用いて生体情報を測定することとしてもよい。また、測定・送信する生体情報は、照度、視距離、発汗情報、血流情報、眼間距離、瞳孔サイズ、眼球運動情報、脳波情報等の全部であってもよいし、これらのうちの一部であってもよい。また、観視者の生体情報が、観視者の個人プロファイルとして映像配信装置20の判断データ格納部23に既に格納されている場合には、ステップ200において生体情報の測定を行わないこととしてもよい。
【0037】
次に、ステップ200(配信可否判断処理)の内容を詳細に説明する。
【0038】
配信可否判断部212は映像データ格納部22から順次映像を読み出すことにより、図8から図12に示す映像のシーケンスを受信装置10に配信する。そして、映像毎に表示される質問に対するアクション(回答)が観視者によりボタン操作として入力され、受信装置10から回答を受信する。
【0039】
まず、配信可否判断部212は図8に示す映像シーケンスを配信し、受信装置10に表示させる。図8(a)に示す映像は、両眼立体視を行うことができるか(立体に見えるか)を確認するための両眼立体視テスト映像である。配信可否判断部212は、この映像を配信した後、図8(b)に示す質問映像を配信する。
【0040】
観視者は、図8(a)の両眼立体視テスト映像を見た後、「両眼立体視ができたらボタンを押す」という質問が表示されるので、リモコン13のボタンを押して回答を行う。回答結果は映像配信装置20に送信される。
【0041】
続いて、配信可否判断部212は、図9に示す映像シーケンスを配信し、受信装置10に表示させる。図9に示す映像シーケンスは、両眼立体視の程度を把握するための両眼立体視力テスト映像のシーケンスである。具体的には、まず、図9(a)に示すように「立体に見えなくなったらボタンを押して下さい」という内容の質問の映像を配信し、続いて、図9(b)〜(e)に示すように、立体視をし易い映像から、立体感を順次減らした映像を配信する。
【0042】
図9(b)〜(e)に示す映像を見る観視者は、立体視できなくなった時点でリモコン13のボタンを押して回答を行う。回答結果は映像配信装置20に送信される。
【0043】
続いて、配信可否判断部212は、図10に示す映像シーケンスを配信し、受信装置10に表示させる。図10に示す映像シーケンスは、融合限界視力を把握するための限界両眼立体視力テスト映像のシーケンスである。すなわち、融合限界視力を探るため視差を大きくする場合にどこまで立体視ができるかを把握するための映像シーケンスである。具体的には、まず、図10(a)に示すように「立体に見えなくなったらボタンを押して下さい」という内容の質問の映像を配信し、続いて、図10(b)〜(d)に示すように、視差を順次大きくした映像を配信する。
【0044】
図10(b)〜(d)に示す映像を見る観視者は、立体視できなくなった時点でリモコン13のボタンを入力して回答を行う。回答結果は映像配信装置10に送信される。
【0045】
次に、配信可否判断部212は、図11に示す映像シーケンスを配信し、受信装置10に表示させる。図11に示す映像シーケンスは、物体が画面の手前や後ろに動くのがわかるか否かを検査するための立体運動視力テスト映像のシーケンスである。すなわち、手前や奥に運動する物体に対する視力を確認するための映像シーケンスである。具体的には、まず、図11(a)に示すように「次の映像を見た後、その状態にあう番号を押して下さい」という内容の質問の映像を配信し、続いて、図11(b)に示すように、立体物体が3次元的に動く映像を配信し、表示させる。そして、図11(c)に示すように選択肢を有する映像を配信し、観視者に1つの番号を選択させる。同様に、図11(b)と異なる図11(d)に示す映像を配信し、図11(e)の選択肢から1つを選択させる。
【0046】
図11に示す映像を見る観視者は、自身の見え具合に応じて、リモコン13のボタンを押して回答を行う。回答結果は映像配信装置20に送信される。
【0047】
上記の例は、複数の回答の中から観視者自身の見え具合に合っているものを選択させる例であるが、質問・回答方法はこの例に限られるわけではなく、観視者の見え具合を把握できる質問・回答方法であればどのような質問・回答方法を用いてもよい。
【0048】
次に、配信可否判断部212は、図12に示す映像シーケンスを配信し、受信装置10に表示させる。図12に示す映像シーケンスは、画面全体(背景)の揺れの大きさを大きくしていき観視者が気持ち悪くなるまでの時間を検査するための動揺病のテスト映像のシーケンスである。すなわち、立体や仮想現実空間における映像酔い(動揺病)への耐性を確認するための映像シーケンスである。具体的には、まず、図12(a)に示すように「気持ち悪くなったらボタンを押して下さい」という内容の質問の映像を配信し、続いて、図12(b)〜(c)に示すように、背景の揺れの程度を次第に増やす映像を配信する。
【0049】
図12(b)〜(c)に示す映像を見る観視者は、気持悪くなった時点でリモコンのボタンを入力して回答を行う。回答結果(例えば、映像配信開始から回答までの時間)は映像配信装置20に送信される。
【0050】
このステップ200の間、前述した各センサを用いて受信装置10において、観視者の視覚や脳や脈波や発汗などの生体情報及び観視環境情報が自動計測され、自動計測された生体情報等は映像配信装置20に送られ、配信可否判断部212が受け取る。
【0051】
ここで、受信装置10における立体表示の精度や立体視力自身の位置依存性の影響を考慮して、すなわち、表示位置によって観視者の立体視力の感度が異なる場合も考慮して、図8〜図12に示した各処理において、物体の表示位置を観視者毎に変えた映像を表示して、観視者の見え具合を検査することとしてもよい。この場合、例えば、図13に示すテスト映像を表示して、観視者毎に表示位置による感度を確かめることとしてよい。
【0052】
また、左右の映像が適切にモニタ入力されていないため、あるいは、左右の映像がメガネなどの機器と同期がとれていないため、立体視が適切に行えない場合があることから、左眼用、右眼用の映像、例えば図14に示すような映像を同時に表示し、左右片目で観視した際に、どちらかの映像だけが見えることを確認してもらうこととしてもよい。
【0053】
なお、本例では、配信可否判断のため、すなわち、観視者の立体映像を見る能力を確認するために、図8〜図12に示す映像シーケンスを配信することとしたが、これらの映像の内容や順番は一例であり、これらに限定されるわけではない。
【0054】
配信可否判断部212は、図8〜図12での映像シーケンス表示により得られた回答、及びその間に得られたセンサ測定情報をメモリ等の記憶手段に記憶している。そして、配信可否判断部212は、回答及びセンサ測定情報と判断データ格納部23に格納された判断データとから、観視者の観視可否(要求された映像の配信可否)や視聴レベルを判断する。
【0055】
判断データ格納部23に格納されているデータベース(テーブル)の一例を図15に示す。図15に示すように、各テスト結果と各センサ結果(センサの測定結果)に対応付けて、配信可否(○か×)、視聴レベル(−5〜5)が格納されている。ここでの視聴レベルとは、立体映像視聴の適合度合であり、視聴レベルが高いほど該当観視者は立体映像の視聴に適しており、低いほど立体映像の視聴に適していないことを示す。視聴レベルは立体視能力情報と呼んでもよい。また、配信可否は、例えば、視聴レベルが所定値以上であれば可、所定値以下であれば不可というように予め定めておく。もしくは、視聴レベルを含めずに、配信可否情報だけをデータベースに格納しておいてもよい。
【0056】
図15に示すデータベースは、例えば、複数人の観視者に対して実際に検査を行うことにより予め作成しておく。そして、ステップ200において、配信可否判断部212は、受信装置10から受信した回答及びセンサ測定情報に基づき図15のデータベースを参照し、当該回答及びセンサ測定情報に対応する配信可否情報や視聴レベルを取得する。例えば、テスト1(例:図8)の結果がOK、テスト2(例:図9)の結果が5、・・・、センサ1(例:発汗)結果がOK、・・・、センサN(例:照度)結果が4であれば、配信可(○)及び視聴レベル:5との判断結果を得る。なお、配信可否の判定の手法は上記の例に限られるわけではない。
【0057】
また、ステップ200では、観視者から今までの3D観視経験を聞いたり、判定対象の観視者の観視履歴から得られる観視回数や観視時の状況(疲労度等)を判定に利用してもよい。例えば、観視回数が予め定めた回数よりも多ければ、該当観視者は立体映像の視聴に慣れており、配信可であると判断することができる。この場合、生体情報に異常がないことを条件にしてもよい。
【0058】
また、観視者の測定で得られた生体情報を個人プロファイルとして判断データ格納部23に保存しておき、この情報を配信可否判定に利用することとしてもよい。例えば、この場合、ステップ200において、生体情報の測定を行うことなく、個人プロファイルから生体情報を取得し、それを配信可否判断に用いることができる。
【0059】
ステップ200での判断において、配信不可との判断結果(予め定めた値よりも低い視聴レベルが得られた場合を含む)、観視者に注意喚起を行う、あるいは、ステップ300(練習処理)を行う。観視者に注意喚起を行い、なおかつステップ300を行ってもよい。なお、左右映像が反転していたり、映像酔いの耐性や眼精疲労などの理由で3D観視に適せない場合などは、映像再生要求を拒否して処理を終了することとしてもよい。問題がなければ、ステップ400(要求映像配信処理)に移り映像配信を行う。
【0060】
また、ステップ200で判断された観視者の立体視能力(疲労を含む)(具体的には、例えば、視聴レベル及び/又は個々のセンサ測定結果等)は、配信可否判断部212により受信装置10に配信される。これにより、観視者は自身の立体視能力を意識して立体映像を観視できる。
【0061】
なお、本実施の形態では、回答、生体情報(疲労度)、観視環境情報の全てを用いて配信可否判断を行う例を示しているが、いずれか1つ又は2つを使用して配信可否判断を行うこととしてもよい。
【0062】
<ステップ300:練習処理>
ステップ300では、練習処理部213が、観視者の立体視力を向上させるためのトレーニングを提供する。具体的には、練習処理部213が、特定の立体視力向上用の映像を映像データ格納部22から読み出し、受信装置10に配信する。立体視力向上用の映像のシーケンスは、例えば、図3のステップ100(順応処理)で用いる映像の変化や動きを速くして眼の追従を厳しくした映像のシーケンスである。また、ここでは、練習処理部213が、複数種類の練習映像をリストで受信装置10に表示し、その中から観視者に選択してもらうようにしてもよい。
【0063】
例えば、立体の位置や立体の程度を変化させることに特化した映像、特定の立体映像を画面中の手前や奥あるいは上下左右に動かすことに特化した映像、などの複数種類の映像の中から1つを観視者に選択してもらい、選択された映像を配信することにより、一部に特化して立体視力を鍛えることができる。
【0064】
また、判断データ格納部23に、観視者のプロファイル(3D観視経験履歴含)を格納しておき、練習処理部213が、当該プロファイルに適合した立体視力向上向けの映像プログラムを配信することとしてもよい。
【0065】
<ステップ400:要求映像配信処理>
ステップ200で配信可もしくは視聴レベルが所定値以上と判断された場合にステップ400が実行される。ステップ200で配信不可と判断された場合でも、その旨を受信装置10に通知し、それでも観視者が配信を希望した場合には、ステップ400の配信を行うこととしてもよい。この場合、観視者は、自身が立体映像の視聴に慣れていないことを認識するので、注意をして立体映像の視聴を行うことができる。
【0066】
ステップ400では、要求映像配信部214が、最初に配信要望のあった映像を映像データ格納部22から取得し、受信装置10に配信する。なお、視聴レベルによっては(例えば、視聴レベルが所定値以下の場合に)配信する映像にうちの視差量が少ない映像のみを立体映像として配信することとしてもよいし、あるいは、個別に映像の信号処理を行い飛び出し度合いを減らして配信するようにしてもよい。
【0067】
なお、本実施の形態では、ネットワークを介した映像配信サービスを想定しているので、図1に示すように映像配信システム100の構成としているが、本発明はこれに限らず適用できる。例えば、本発明を、映像再生機能を有するパソコンもしくは映像再生装置に適用することも可能である。そのような場合でも、当該パソコンもしくは映像再生装置は、映像配信装置20と同様の機能構成を備える。ただし、映像配信装置20に接続されるネットワーク30はインターネット等の広域ネットワークであるのに対し、上記パソコンもしくは映像再生装置と受信装置とを接続するネットワークは、装置間を接続するケーブル、短距離無線ネットワーク、LAN等となる。
【0068】
広域ネットワークにおける映像配信サービスでの映像配信装置や、上記のパソコンもしくは映像再生装置などは、全て映像を受信装置10に配信する装置であるので、映像配信装置と総称できる。そして、当該映像配信装置は、観視者を立体映像に順応させるための映像を受信装置に配信する順応処理手段と、前記観視者により要求された立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断するための配信可否判断手段と、前記配信可否判断手段により、配信不可と判断された場合に、前記観視者が立体映像の観視を練習するための映像を前記受信装置に配信する練習処理手段と、前記配信可否判断手段により、配信可と判断された場合に、前記受信装置に、前記観視者により要求された立体映像を配信する要求映像配信手段とを備える。
【0069】
前記配信可否判断手段は、前記受信装置に対し、前記観視者の立体視力を測定するためのテスト映像を配信し、当該テスト映像を立体視できるかどうかを示す観視者による回答を前記受信装置から受信し、当該回答を用いて前記立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断するように構成される。
【0070】
また、前記受信装置は、前記観視者の生体情報もしくは観視環境情報を測定するセンサを備えており、前記配信可否判断手段は、当該センサにより測定された生体情報もしくは観視環境情報を前記受信装置から受信し、当該生体情報もしくは観視環境情報を用いて前記立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断する。
【0071】
また、前記配信可否判断手段は、前記観視者の立体視能力情報を取得するとともに、当該立体視能力情報を前記受信装置に配信し、前記映像配信手段は、前記配信可否判断手段による判断結果に応じて、立体映像の配信条件を制御する。
【0072】
更に、前記配信可否判断手段は、前記観視者の立体映像観視履歴データを用いて立体映像配信可否判断を行うこともできる。
【0073】
また、本発明の一実施形態によれば、観視者に対して映像を表示する受信装置に立体映像を配信するための映像配信装置が実行する映像配信方法であって、前記観視者を立体映像に順応させるための映像を前記受信装置に配信する順応処理ステップ、前記観視者により要求された立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断するための配信可否判断ステップと、前記配信可否判断ステップにより、配信不可と判断された場合に、前記観視者が立体映像の観視を練習するための映像を前記受信装置に配信する練習処理ステップと、前記配信可否判断ステップにより、配信可と判断された場合に、前記受信装置に、前記観視者により要求された立体映像を配信する要求映像配信ステップとを備えることを特徴とする映像配信方法が提供される。
【0074】
また、本発明の一実施形態によれば、観視者に対して映像を表示する受信装置と、当該受信装置にネットワークを介して接続される、立体映像を配信するための映像配信装置とを備える映像配信システムも提供される。
【0075】
また、本発明の一実施形態によれば、コンピュータを、前記映像配信装置における各手段として機能させるための映像配信プログラムも提供される。
【0076】
(実施の形態の効果)
以上説明したとおり、本実施の形態に係る技術によれば、3D映像配信前に観視者の視機能を確認し、必要に応じて立体視機能を向上させた上で立体映像を観視させることができるようになる。すなわち、観視者は、3D映像の表示に順応して映像を観視できると共に、観視者が自分の立体視能力を意識して立体映像を観視できる。これにより、観視者が観視後に体調不良となることを防ぐ、もしくは体調不良となる確率を低減することができ、立体映像サービスの普及を促進させることが期待できる。
【0077】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0078】
100 映像配信システム
10 受信装置
20 映像配信装置
21 制御部
22 映像データ格納部
23 判断データ格納部
30 ネットワーク
211 順応処理部
212 配信可否判断部
213 練習処理部
214 要求映像配信部
11 制御端末
12 モニタ
13 リモコン(遠隔制御端末)
14 眼鏡
141 照度センサ
142 発汗センサ
143 血流センサ
144 眼球撮影CCDセンサ
15 帽子
151 NIRS端子
152 脳波測定端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観視者に対して映像を表示する受信装置に立体映像を配信するための映像配信装置であって、
前記観視者を立体映像に順応させるための映像を前記受信装置に配信する順応処理手段と、
前記観視者により要求された立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断するための配信可否判断手段と、
前記配信可否判断手段により、配信不可と判断された場合に、前記観視者が立体映像の観視を練習するための映像を前記受信装置に配信する練習処理手段と、
前記配信可否判断手段により、配信可と判断された場合に、前記受信装置に、前記観視者により要求された立体映像を配信する要求映像配信手段と
を備えることを特徴とする映像配信装置。
【請求項2】
前記配信可否判断手段は、前記受信装置に対し、前記観視者の立体視力を測定するためのテスト映像を配信し、当該テスト映像を立体視できるかどうかを示す観視者による回答を前記受信装置から受信し、当該回答を用いて前記立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の映像配信装置。
【請求項3】
前記受信装置は、前記観視者の生体情報もしくは観視環境情報を測定するセンサを備えており、前記配信可否判断手段は、当該センサにより測定された生体情報もしくは観視環境情報を前記受信装置から受信し、当該生体情報もしくは観視環境情報を用いて前記立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の映像配信装置。
【請求項4】
前記配信可否判断手段は、前記観視者の立体視能力情報を取得するとともに、当該立体視能力情報を前記受信装置に配信し、前記映像配信手段は、前記配信可否判断手段による判断結果に応じて、立体映像の配信条件を制御する
ことを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の映像配信装置。
【請求項5】
前記配信可否判断手段は、前記観視者の立体映像観視履歴データを用いて立体映像配信可否判断を行う
ことを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の映像配信装置。
【請求項6】
観視者に対して映像を表示する受信装置に立体映像を配信するための映像配信装置が実行する映像配信方法であって、
前記観視者を立体映像に順応させるための映像を前記受信装置に配信する順応処理ステップ、
前記観視者により要求された立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断するための配信可否判断ステップと、
前記配信可否判断ステップにより、配信不可と判断された場合に、前記観視者が立体映像の観視を練習するための映像を前記受信装置に配信する練習処理ステップと、
前記配信可否判断ステップにより、配信可と判断された場合に、前記受信装置に、前記観視者により要求された立体映像を配信する要求映像配信ステップと
を備えることを特徴とする映像配信方法。
【請求項7】
観視者に対して映像を表示する受信装置と、当該受信装置にネットワークを介して接続される、立体映像を配信するための映像配信装置とを備える映像配信システムであって、
前記映像配信装置は、
前記観視者を立体映像に順応させるための映像を前記受信装置に配信する順応処理手段と、
前記観視者により要求された立体映像を前記受信装置に配信するか否かを判断するための配信可否判断手段と、
前記配信可否判断手段により、配信不可と判断された場合に、前記観視者が立体映像の観視を練習するための映像を前記受信装置に配信する練習処理手段と、
前記配信可否判断手段により、配信可と判断された場合に、前記受信装置に、前記観視者により要求された立体映像を配信する要求映像配信手段と
を備えることを特徴とする映像配信システム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の映像配信装置における各手段として機能させるための映像配信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−30853(P2013−30853A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163714(P2011−163714)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】