説明

普通形コンバイン

【課題】各種装置のコンパクトな機体内組込みを行い、かつ作業能率を向上させた普通形コンバインを提供する。
【解決手段】刈取部(18)の昇降制御用などの各種油圧装置(170)をフィーダハウス(21)の右側方位置に集中配備させ、脱穀部(4)左右外側の左右脱穀カバー(151)(153)を上支点軸(155)(156)を中心として上方に開放自在に設け、脱穀部(4)の後側上方にエンジン(12)を配設すると共に、エンジン(12)より前方の穀物タンク(8)の右外側に、該タンク(8)内の穀物を取出す縦排出オーガ(149)を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
刈取部で刈取った稲、麦、豆類など穀物をフィーダハウスを介し脱穀部に全量投入して脱穀処理する普通形コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の普通形コンバインには、脱穀部やエンジン部や穀物タンクが平面且つ独立的に設けられているものがある。(例えば特許文献1)
【0003】
【特許文献1】特開平9−23730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の普通形コンバインでは、脱穀部やエンジン部や穀物タンクは平面且つ独立的に設けられているため、構成が大型且つ複雑化すると共に、これらに付随する関連装置の設置構造も複雑なものとなるなどの不都合があった。また、脱穀部左右外側のプーリ及びベルトなど駆動系を覆う左右脱穀カバーにあって、駆動系の保守点検時などにはその都度脱穀カバーを取外して作業を行う手間の煩わしさがあった。さらに、刈取部を昇降する油圧昇降シリンダの切換弁や機体水平制御用の水平シリンダの切換弁などの各種油圧装置は、接続される相手シリンダの近傍位置に分散配備される構造のため、これら油圧装置の保守点検などにおいて能率が悪かった。
【0005】
また、脱穀部後側の下位置に三番口や走行用ミッションケースを配備させた構造にあっては、機体の後進時圃場の障害物にこれら三番口やミッションケースを接触させて損傷させるなどの不都合があった。
そこでこの発明の目的は、各種装置のコンパクトな機体内組込みを行い、かつ作業能率を向上させた普通形コンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため請求項1に記載の発明の普通形コンバインは、第1扱胴の後方に第2扱胴を配設し、該第1扱胴及び第2扱胴をフィーダハウスからの穀稈投入方向に対し直交させ、前記フィーダハウスから前記第1扱胴の左側に投入された穀稈を前記第1扱胴で右方向に横送りし、右端連通樋では前記第1扱胴の排稈羽根によって後方の前記第2扱胴に受継いで左方向に横送りし、排稈口では前記第2扱胴左端の排稈羽根によって後方に排稈を排出させる構成を有する脱穀部の後側上方にエンジンを配設すると共に、前記エンジンより前方の、前記脱穀部を構成する左右脱穀側板を支持部材として、前記脱穀部の後側上方に配設した穀物タンクの右外側に、前記穀物タンク内の底部排出オーガによって取出された穀粒を上部排出オーガに受継ぐ縦排出オーガを配設し、該縦排出オーガより前方の前記穀物タンクの右外側面に駆動系を配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、脱穀部の後側上方にエンジンを配設すると共に、エンジンより前方の穀物タンクの右外側に、該タンク内の穀物を取出す縦排出オーガを配設して、脱穀部の後側上方に穀物タンク及びエンジン部を一体とさせたこれらの簡潔な設置を行うと共に、エンジンや脱穀部に悪影響の与えることのない縦排出オーガのコンパクトな設置を可能とさせるものである。さらに、脱穀部の前方にフィーダハウスを介し昇降自在に刈取部を装設する普通形コンバインにおいて、刈取部の昇降制御用などの各種油圧装置をフィーダハウスの右側方位置に集中配備させて、フィーダハウスの右余剰スペースに各種油圧装置をコンパクトに組込むと共に、これら保守点検作業の能率を向上させて、これら油圧装置の性能の安定維持を図るものである。
【0008】
またさらに、脱穀部左右外側の左右脱穀カバーを上支点軸を中心として上方に開放自在に設けて、左右脱穀カバーをその都度取出す手間の煩わしさなく、容易に開放して脱穀性能を安定維持させるものである。
【0009】
またさらに、脱穀部の右外側でエンジンの下方位置にエンジンの燃料タンクを配設して、例え大容量の燃料タンクでも、脱穀部・穀物タンクやエンジンに悪影響を与えたり場所をとることなくコンパクトに設置可能とさせるものである。
【0010】
また、脱穀部後側でミッションケースより後方の脱穀開放部に後部ガードフレームを配設して、機体後進時に後進方向の圃場面に障害物がある場合でも、ガードフレームによってミッションケースなどが直接的に障害物に接触する不都合を回避させて、脱穀部の三番口やミッションケースの損傷防止を図るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1はコンバインの全体側面図、図2は同平面図であり、図中(1)は走行クローラ(2)をトラックフレーム(3)に装備する機台、(4)は機体の進行方向に対し軸芯を直交させる大径及び小径2つのスクリュ形第1及び第2扱胴(5)(6)や選別部である揺動選別盤(7)などを備える脱穀部、(8)は脱穀部(4)の後部上方に配備して揚穀筒(9)を介して取出す脱穀部(4)の穀粒を貯留する穀物タンク、(10)は穀物タンク(8)内の穀粒を取出す上部搬出オーガ、(11)は穀物タンク(8)の後方に配備してエンジン(12)を内設するエンジンルーム、(13)は運転席(14)及び旋回操作部材である操向ハンドル(15)などを運転台(16)に備えて脱穀部(4)の前部上方に配設する運転操作部、(17)は運転台(16)の左右両側に配備する左右の作業者乗降用ステップ、(18)は脱穀部(4)の下部前方に油圧昇降シリンダ(19)を介し昇降可能に装備する刈取部である。
【0012】
そして、前記刈取部(18)は、未刈り穀稈を取入れる穀物刈取ヘッダー(20)と、該ヘッダー(20)の後部略中央に連結させて刈取穀稈を脱穀部(4)に送給するフィーダハウス(21)によって構成すると共に、未刈り穀稈掻込み用リール(22)と、往復駆動型刈刃(23)と、穀稈掻込オーが(24)とを前記穀物ヘッダー(20)に備え、前記フィーダハウス(21)を運転台(16)の下方で運転台(16)中央の運転席(14)より左側に偏位して配設させ、前記ヘッダー(20)に取込まれる刈取穀稈をフィーダハウス(21)に内設する供給チェンコンベア(25)を介し脱穀部(4)の左側に送り込んで脱穀処理するように構成している。
【0013】
また、図4に示す如く、前記走行クローラ(2)を駆動するミッションケース(26)は、1対の油圧変速ポンプ(27)及び油圧変速モータ(28)からなる走行用の油圧式無段変速機構(29)と、1対の油圧操向ポンプ(30)及び油圧操向モータ(31)からなる旋回用の油圧式無段変速機構(32)とを備え、前記エンジン(12)の出力軸(12a)の駆動力を変速及び操向ポンプ(27)(30)の入力軸(33)に伝達ベルト(34)を介して連動連結させて、各ポンプ(27)(30)を駆動するように構成している。
【0014】
そして、前記変速モータ(28)の出力軸(35)に、副変速機構(36)及び強制差動機構(37)を介し、左右走行クローラ(2)(2)の駆動輪(38)(38)を連動連結させるもので、前記差動機構(37)は左右対称の1対の遊星ギヤ機構(39)(39)を有し、該遊星ギヤ機構(39)は1つのサンギヤ(40)と、該サンギヤ(40)の外周で噛合う3つのプラネタリギヤ(41)…と、各プラネタリギヤ(41)…に噛合うリングギヤ(42)などで形成している。
【0015】
さらに、前記各プラネタリギヤ(41)…は、サンギヤ軸(43)と同軸線上とのキャリヤ軸(44)のキャリヤ(45)にそれぞれ回転自在に軸支させ、左右のサンギヤ(40)(40)を挾んで左右のキャリヤ(45)を対向配置させると共に、前記リングギヤ(42)は、各プラネタリギヤ(41)に噛み合う内歯(42a)を有し、サンギヤ軸(43)と同一軸芯上のキャリヤ軸(44)に回転自在に支持させている。
【0016】
またさらに、走行用の油圧式無段変速機構(29)は、変速ポンプ(27)の回転斜板の角度変更調節により変速モータ(28)の正逆回転と回転数の制御を行うもので、変速モータ(28)の回転出力を出力軸(35)の伝達ギヤ(46)から、各ギヤ(47)(48)(49)及び副変速機構(36)を介し、サンギヤ軸(43)に固定したセンタギヤ(50)に伝達してサンギヤ(40)を回転するように構成している。前記副変速機構(36)は、前記ギヤ(49)を有する副変速軸(51)と、前記センタギヤ(50)に噛合うギヤ(52)を有する駐車ブレーキ軸(53)とを備え、副変速軸(51)とブレーキ軸(53)間に、低速用ギヤ(54)(52)及び中速用ギヤ(55)(56)及び高速用ギヤ(57)(58)を設け、中央位置の副変速切換用ギヤ(55)のスライダ(55a)の摺動操作によって副変速の低速と中速と高速の切換を行うように構成している。なお、低速と中速の間及び中速と高速の間には中立ゾーンを有する。また前記駐車ブレーキ軸(53)に車速検出ギヤ(59)と、該ギヤ(59)の回転数によって車速を検出する車速センサ(60)を設けると共に、刈取部(18)に回転力を伝達する刈取PTO軸(61)のPTO入力ギヤ(62)に、前記出力軸(35)の伝達ギヤ(46)を噛合連結させている。
【0017】
そして、前記センタギヤ(50)を介しサンギヤ軸(43)に伝達された変速モータ(28)からの駆動力を、左右の遊星ギヤ機構(39)(39)を介して左右キャリヤ軸(44)(44)に伝達させると共に、各キャリヤ軸(44)(44)に伝達された回転出力を左右1対2組の減速ギヤ(63)(64)・(63)(64)を介して左右の駆動輪(38)(38)の車軸(38a)(38a)にそれぞれ伝えるように構成している。
【0018】
また、旋回用の油圧式無段変速機構(32)は、操向ポンプ(30)の回転斜板の角度変更調節により操向モータ(31)の正逆回転切換と回転数の制御を行うもので、操向モータ(31)の出力軸(65)の出力ギヤ(66)からギヤ伝達機構(67)を介し最終出力軸である旋回軸(68)の旋回ギヤ(69a)(69b)に回転出力を伝達し、右側のリングギヤ(42)の外歯(42b)に対して右旋回ギヤ(69a)を噛合させ、また左側のリングギヤ(42)の外歯(42b)に逆転軸(70)の逆転ギヤ(71)を介して左旋回ギヤ(69b)を連結させ、操向モータ(31)の正転時に左右のリングギヤ(42)(42)を左右同一回転数で回転させ、かつ左リングギヤ(42)を正転させ、右リングギヤ(42)を逆転させるように構成している。
【0019】
而して、旋回用の操向モータ(31)の駆動を停止させ、かつ左右リングギヤ(42)を静止固定させた状態で、走行用の変速モータ(28)を駆動させると、変速モータ(28)からの回転出力はセンタギヤ(50)から左右のサンギヤ(40)に同一回転数で伝達され、左右遊星ギヤ機構(39)のプラネタリギヤ(41)及びキャリヤ(45)及び減速ギヤ(63)(64)を介して左右の車軸(38a)(38a)に左右同一回転方向でかつ同一回転数で伝達され、機体の前後直進走行が行われる。一方、走行用の変速モータ(28)を停止させ、かつ左右のサンギヤ(40)(40)を静止固定させた状態で、旋回用の操向モータ(31)を正逆回転駆動すると、左側の遊星ギヤ機構(39)が正或いは逆回転し、また右側の遊星ギヤ機構(39)が逆或いは正回転し、左右走行クローラ(2)(2)の一方を前進回転させかつもう一方を後進回転させ、機体を左或いは右にその場でスピンターン(心地旋回)させ、圃場枕地での方向転換などを行うように構成している。
【0020】
また、走行用の変速モータ(28)を駆動させながら、旋回用の操向モータ(31)を駆動すると、左右走行クローラ(2)(2)の駆動速度に差が生じて大きな旋回半径の旋回によって走行方向が修正され、また前記旋回半径は左右走行クローラ(2)(2)の速度差に応じて決定されるように構成している。
【0021】
図5乃至図13に示す如く、前記走行用の油圧式無段変速機構(29)に連結する走行変速操作部材である主変速レバー(72)と、旋回用の油圧式無段変速機構(32)に連結する操向ハンドル(15)とを、走行及び旋回操作連動機構(73)に連動連結させると共に、該連動機構(73)をプッシュプル形走行変速及び旋回ワイヤ(74)(75)介し走行及び旋回用の無段変速機構(29)(32)のコントロールレバー(76)(77)に連動連結させている。
【0022】
前記操作連動機構(73)は操向ハンドル(15)の旋回操作系(73a)と、主変速レバー(72)の走行操作系(73b)と、これら操作系(73a)(73b)を連結させる連動操作系(73c)とを備え、前記運転台(16)の下側に下面(16a)に沿って平面状に操作連動機構(73)を配設するもので、運転台(16)の下面(16a)略中央に旋回操作系(73a)を、また下面(16a)の左側に走行操作系(73b)を、さらに下面(16a)の右側に連動操作系(73c)をそれぞれ配設して、連動操作系(73c)からの走行及び操向変速操作出力をワイヤ(74)(75)を介し走行及び旋回用無段変速機構(29)(32)に伝達するように構成している。
【0023】
前記連動操作系(73c)は、運転台(16)下面(16a)の固定板(77)に固設するリンク取付体(78)と、該取付体(78)の前端に支持する上下方向の第1枢軸(79)に基端筒軸(80)を回動自在に取付けて第1枢軸(79)とは直交させる前後方向の第2枢軸(81)と、前記第2枢軸(81)の軸回りにそれぞれ回動自在に基端を連結する旋回及び変速揺動リンク(82)(83)と、前記取付体(78)の後端に支持する上下方向の第3枢軸(84)に基端を固設する変速アーム(85)と、第3枢軸(84)外側の回動筒軸(86)に基端を固設する旋回アーム(87)と、前記揺動リンク(82)(83)の第2枢軸(81)とは偏心位置の操作出力部(82a)(83a)の出力軸(88)(89)と各アーム(87)(85)間を連結する旋回及び変速自在継手軸(90)(91)と、前記第3枢軸(84)の右端に固設する変速出力アーム(92)と、前記第2枢軸(81)に固設する略L形のロッド取付金具(93)などを備え、前記旋回及び走行操作系(73a)(73b)からの旋回及び変速ロッド(94)(95)を旋回自在継手軸(90)前端及び取付金具(93)に連動連結させると共に、前記旋回及び変速出力アーム(87)(92)にワイヤ(75)(74)を連結させて、前記第1枢軸(79)を中心とした変速揺動リンク(83)の前後方向の回動(α1)(α2)によって走行用のコントロールレバー(76)を、また走行中の第2枢軸(81)を中心とした旋回揺動リンク(82)の左右方向の回動(β1)(β2)によって操向用のコントロールレバー(77)を操作して走行変速及び操向制御を行うように構成している。
【0024】
前記主変速レバー(72)は運転席(14)左前方で運転台(16)より立設する操作コラム(96)に設けて該レバー(72)の上端部を運転席(14)側に屈曲させて近接させたもので、上端の握り部(72a)に刈取昇降スイッチ(97)などを有し、操作コラム(96)の上部内側に枢軸(98)及びレバー板(99)及び筒軸(100)を介し前記レバー(72)の基端を前後及び左右方向に回動自在に取り付けけると共に、前記コラム(96)下部の中間軸(101)に支持する筒軸(102)の第1揺動アーム(103)に、上下方向のロッド(104)を介しレバー板(99)を連結させると共に、筒軸(102)の第2揺動アーム(105)に前記ロッド(95)を介し取付金具(93)を連動連結して、運転台(16)左側位置で操作される主変速レバー(72)の枢軸(98)を中心とした前後方向の回動操作出力を変速出力として運転台(16)左側位置の連動操作系(73c)に伝達するように構成している。なお(106)は前記レバー(72)を右方向に付勢する板バネ、(107)は前記レバー(72)の右移動位置を規制するストッパボルトである。
【0025】
一方、前記旋回操作系(73a)は、操向ハンドル(15)下端の旋回操作軸(108)にギヤ(109)を設け、この後方の回転軸(110)に取付けるセクタギヤ(111)に前記ギヤ(109)を噛合せると共に、前記セクタギヤ(111)に一体連結する出力アーム(112)を旋回ロッド(94)を介し旋回自在継手軸(90)前端に連結させて、操向ハンドル(15)の回動操作出力を旋回出力として連動操作系(73c)に伝達して、前記第2枢軸(81)を中心として旋回揺動リンク(82)を回動するように構成している。
【0026】
また、前記旋回操作軸(108)のギヤ(109)下方に中立位置決め板(113)を設け、該位置決め板(113)下面の突出軸(114)に操向検出リンク(115)の一端を連結させ、旋回及び連動操作系(73a)(73c)間に配設する減速操作系である減速アーム軸(116)の第1揺動アーム(117)と前記検出リンク(115)他端とを軸(118)を介し連結させると共に、減速アーム軸(116)の第2揺動アーム(119)と前記変速揺動リンク(83)とを自在継手形減速ロッド(120)を介し連結させて、走行状態で前記ハンドル(15)の操向操作量を大きくする程減速ロッド(120)を左方向に引張り、操向操作量に比例させて走行速度を減速させるように構成している。
【0027】
なお、(121)は中立検出リンク(122)などを介し前記位置決め板(113)の中立位置を検出する旋回中立センサである。
【0028】
而して図14に示す如く、前記自在継手軸(90)(91)の旋回及び変速アーム(87)(85)との継手部(90a)(91a)を、前記第2枢軸(81)の前後延長水平ライン(L1)上に略一致させる状態に配置させ、前記自在継手軸(90)(91)の出力軸(88)(89)との継手部(90b)(91b)及び減速ロッド(120)の揺動リンク(83)との継手部(120a)を、前記水平ライン(L1)に直交させる第1枢軸(79)の上下垂直延長ライン(L2)上に位置させ、操向ハンドル(15)及び主変速レバー(72)を中立位置に保持しているとき、前記ハンドル(15)或いはレバー(72)の何れか一方の操作で揺動リンク(82)(83)が揺動されても、該リンク(82)(83)を第2及び第1枢軸(81)(79)回りに回動させるだけで、継手軸(90)(91)には旋回及び変速操作出力が伝わらないように構成している。
【0029】
図12乃至図13に示す如く、前記変速及び旋回ワイヤ(74)(75)は、脱穀部(4)後側のミッションケース(26)左位置の脱穀左側板(4a)外側に固設するワイヤ受け(123)に他端側を臨ませ、ミッションケース(26)上方で左右方向に横架する二重軸構造の外軸(124)及び内軸(125)の左端に揺動アーム(126)(127)を介して各ワイヤ(74)(75)の他端を連結すると共に、外軸(124)及び内軸(125)の右端側の固定アーム(128)(129)をロッド(130)(131)を介して走行及び旋回用の無段変速機構(29)(32)のコントロールレバー(76)(77)に連動連結させて、主変速レバー(72)及び操向ハンドル(15)による走行速度の変速や機体の旋回を行うように構成している。
【0030】
ところで図15に示す如く、前記運転台(16)は中央部可動台(16A)とこの周囲の固定枠台(16B)とに分割形成され、前記可動台(16A)の上面に運転操作部(13)を、また下面に連動機構(73)を装備させると共に、可動台(16A)の前端側を回動支点軸(132)を介して固定枠台(16B)に上下動自在に支持させて、支点軸(132)を中心として可動台(16A)の後端側を上方に回動させるとき、可動台(16A)下面の連動機構(73)を開放状態とさせて、連動機構(73)の調整や保守点検作業など容易とさせるように構成している。
【0031】
そして、図11、図14に示す如く、主変速レバー(72)を前後進操作し、第1枢軸(79)を中心として揺動リンク(83)を前後に角度(α1)(α2)傾けるとき、前記継手軸(91)を引張り或いは押して変速アーム(85)を軸(84)中心として回動させ、走行速度の変速や前後進切換を行うと共に、図9に示す如く主変速レバー(72)が中立以外の位置に操作されている状態で、操向ハンドル(15)を回動操作し、第2枢軸(81)を中心として揺動リンク(82)を左右に角度(β1)(β2)傾けるとき、継手軸(90)を引張り或いは押して旋回アーム(87)を軸(84)を中心として回動させ、機体を左及び右旋回させる操向動作を行わせるもので、主変速レバー(72)の中立時に旋回操作を行っても、継手部(90a)を支点として継手軸(90)はライン(L1)を中心とした円錐面上で回転移動し、ライン(L1)(L2)の交点を中心とする同一円周上を継手部(90b)が移動し、旋回出力軸(88)と旋回アーム(87)間の距離が略一定に保たれ、したがって旋回アーム(87)は動作しない。そして主変速レバー(72)が中立位置以外のときにハンドル(19)の旋回操作が行われると、旋回アーム(87)は動作するもので、前後進に切換わるとき旋回アーム(87)は前後逆方向に動作し、操向モータ(31)を前進時と後進時では逆方向に回転させるように構成したものである。
【0032】
例えば、走行用の変速モータ(28)の正回転時を前進時とすると、逆回転時の後進時には旋回用の操向モータ(31)による遊星ギヤ機構(39)の作用は前進時と後進時では逆となるもので、前進時と後進時のハンドル(15)操作による機体の旋回方向を一致させるため、変速モータ(28)の逆回転(後進)時には操向ポンプ(30)の斜板角度を逆方向に切換え、操向モータ(31)を前進時と後進時では逆方向に回転させるように構成している。
【0033】
また、前進操作時の揺動リンク(83)が中立より前方の角度(α1)側に傾き、ハンドル(15)の右回動操作によって旋回ロッド(94)を右方向に押して揺動リンク(82)を右方向の角度(β1)側に傾けることにより、揺動リンク(82)の出力部(82a)を旋回アーム(87)側より遠ざけ、第3枢軸(84)を中心として旋回用継手軸(91)との継手部(91a)を揺動リンク(82)側に近づける方向(図7中時計方向)に旋回アーム(87)を揺動させ、前記旋回ワイヤ(75)などを介しコントロールレバー(77)を下方向に回動させ、旋回用の操向モータ(31)を正回転させる。即ち、機体を前進で右旋回(走行クローラ(2)の速度を左側が大、右側が小)させるように構成している。
【0034】
さらに、主変速レバー(72)を前方に倒す前進操作時、ハンドル(15)の左回動操作によって旋回ロッド(94)を引張って、揺動リンク(82)を左方向の角度(β2)側に傾けることにより、揺動リンク(82)の出力部(82a)を旋回アーム(87)側に近づけ、第3枢軸(84)を中心として旋回用継手軸(91)との継手部(91a)を揺動リンク(82)側より遠ざける方向(図7中反時計方向)に旋回アーム(87)を揺動させ、前記コントロールレバー(77)を上方向に回動させ、前記操向モータ(31)を逆回転させる。即ち、機体を前進で左旋回(走行クローラ(2)の速度を右側が大、左側が小)させるように構成している。
【0035】
さらに、主変速レバー(72)を後方に倒す後進操作によって揺動リンク(83)が中立より後方の角度(α2)側に傾き、ハンドル(15)の右回動操作によって旋回ロッド(94)を右方向に押して揺動リンク(82)を右方向の角度(β1)側に傾けることにより、揺動リンク(82)の出力部(82a)を旋回アーム(87)側に近づけ、第3枢軸(84)を中心として旋回用継手軸(91)との継手部(91a)を揺動リンク(82)を遠ざける方向(図7中反時計方向)に旋回アーム(87)を揺動させ、前記コントロールレバー(77)を上方向に回動させ、前記操向モータ(31)を逆回転させる。即ち、機体を後進で右旋回(走行クローラ(2)の速度を左側が大、右側が小)させるように構成している。
【0036】
また、主変速レバー(72)後進操作時で、ハンドル(19)の左回動操作によって、揺動リンク(82)を左方向の角度(β2)側に傾けることにより、揺動リンク(82)の出力部(82a)を旋回アーム(87)より遠ざけ、第3枢軸(84)を中心として旋回用継手軸(91)との継手部(91a)を揺動リンク(82)を揺動リンク(82)側に近づける方向(図7中時計方向)に回動させ、前記コントロールレバー(77)を下方向に回動させ、前記操向モータ(31)を正回転させる。即ち、機体を後進で左旋回(走行クローラ(2)の速度を右側が大、左側が小)させるように構成している。
【0037】
このように前進及び後進時の旋回操作において、旋回アーム(87)を逆方向に回転させ、前後進の何れにおいても操向ハンドル(15)の回動操作方向と機体の旋回方向とを一致させるように構成している。
【0038】
ところで、図16乃至図19に示す如く、前記脱穀部(4)は第1扱胴(5)の後方に同一軸芯高さで第2扱胴(6)を配設し、これら第1及び第2扱胴(5)(6)をフィーダハウス(21)からの穀稈投入方向に対し直交させ、フィーダハウス(21)からの第1扱胴(5)の左側に投入された穀稈を第1扱胴(5)で右方向に横送りして、第1扱胴(5)の右端連通樋(133)では排稈羽根(134)によって後方の第2扱胴(6)に受継いで左方向に横送りして、左端の排稈口(135)では排稈羽根(136)によって後方に排稈を排出させるように構成している。
【0039】
また、前記第1及び第2扱胴(5)(6)下方に前記揺動選別盤(7)を配設し、揺動選別盤(7)の下方に唐箕(137)や1番及び2番コンベア(138)(139)などを配設すると共に、選別盤(7)後方に排稈口である三番口(140)を開設している。
【0040】
そして脱穀部(4)を構成する左右脱穀側板(4a)(4b)を支持部材として、脱穀部(4)の後側上方に穀物タンク(8)を、またタンク(8)後方にエンジンルーム(11)を一体形成し、穀物タンク(8)の底板(141)と、エンジンルーム(11)の底板(142)とを脱穀部(4)の後部天板として用いるように構成している。
【0041】
また、第1扱胴(5)上部の第1扱胴カバー(143)を後支点軸(144)を中心として上方に開放自在に設けると共に、第2扱胴(6)上部の第2扱胴カバー(145)を取外し自在に設け、左脱穀側板(4a)外側に前記揚穀筒(9)や、二番コンベア(139)からの二番物を揺動選別盤(7)に還元する二番還元筒(146)や、第1及び第2扱胴(5)(6)などを駆動するエンジン駆動系(147)を配設している。さらに、穀物タンク(8)内の底部排出オーガ(148)によってタンク(8)右外側に取出された穀粒を上部排出オーガ(10)に受継ぐ縦排出オーガ(149)や、一番及び二番コンベア(138)(139)の駆動系(150)を右脱穀側板(4b)外側に配設し、左右脱穀側板(4a)(4b)外側を左右脱穀側部カバー(151)(152)・(153)(154)で覆うように構成している。
【0042】
左右脱穀側部カバー(151)(152)(153)(154)は、上カバー(151)(153)と下カバー(152)(154)とに2分割され、左右の下カバー(152)(154)を取外し自在に設けると共に、左右の上カバー(151)(153)を上支点軸(155)(156)を中心として上方に開放自在に設けて、各駆動系(147)(150)の保守点検などを容易に可能とさせるように構成している。
【0043】
図17、図20、図21に示す如く、前記エンジン(12)の冷却ファン(157)を臨ませるエンジンルーム(11)の左開口部にラジエータ(158)を配設し、該ラジエータ(158)外側をラジエータカバー(159)で覆うもので、ラジエータカバー(159)はオイルクーラ(160)を内側面に取付け、該カバー(159)後端の後支点軸(161)を中心として右外側にカバー(159)を開放自在に設けている。
【0044】
また、前記エンジン(12)より下側の右脱穀側板(4b)外側にエンジン(12)の燃料タンク(162)を配設すると共に、前記縦排出オーガ(149)より前方の穀物タンク(8)の右外側面に、前記無段変速機構(29)(32)などに作動油を供給する作動油タンク(163)を配設して、脱穀部(4)や穀物タンク(8)やエンジン(12)に悪影響を与えることのないこれらタンク(162)(163)の簡潔な配備を行うように構成している。なお(164)はエアクリーナ、(165)は排気管である。
【0045】
さらに、前記エンジンフレーム(11)後方の脱穀後部カバー(166)を、左側の左支点軸(167)を中心として後方に開放自在に設けて、エンジン(12)の保守点検などを容易に可能とさせるように構成している。
【0046】
またさらに、脱穀部(4)後側のミッションケース(26)より後方に後部ガードフレーム(168)を設けるもので、門形状のガードフレーム(168)の中間部をミッションケース(26)後方に下傾斜状に臨ませると共に、ガードフレーム(168)の左右基端を左右側板(4a)(4b)に固設して、機体後進時に圃場に障害物がある場合などにミッションケース(3)や揺動選別盤(7)や三番口(140)を障害物から保護するように構成している。そして前記変速及び旋回ワイヤ(74)(75)と外軸(124)及び内軸(125)の揺動アーム(126)(127)との連結及び連結解除操作や調整操作を脱穀左側板(4a)外側より容易に可能とさせると共に、各ロッド(130)(131)とコントロールレバー(76)(77)の連結及び連結解除操作や調整操作を機体後側より手を差し入れて容易に可能とさせるように構成している。
【0047】
一方、図17、図21にも示す如く、前記フィーダハウス(21)の右側で運転台(16)のステップ(16a)内側に、バッテリ(169)や、前記油圧昇降シリンダ(19)及び水平制御用シリンダの切換操作弁など油圧装置(170)を集中配備させて、フィーダハウス(21)右側とステップ(16a)下側間に形成される余剰スペース(171)にバッテリ(169)及び油圧装置(170)をコンパクト且つ良好に格納保持すると共に、保守点検なども容易とさせて、これらの性能の安定維持を図るように構成している。
【0048】
以上実施例から明らかなように本発明は、脱穀部(4)の前方にフィーダハウス(21)を介し昇降自在に刈取部(18)を装設する普通形コンバインにおいて、刈取部(18)の昇降制御用などの各種油圧装置(170)をフィーダハウス(21)の右側方位置に集中配備させたものであるから、フィーダハウス(21)の右余剰スペース(171)に各種油圧装置(170)をコンパクトに組込むと共に、これら保守点検作業の能率を向上させて、これら油圧装置(170)の性能の安定維持を図ることができるものである。
【0049】
またさらに、脱穀部(4)左右外側の左右脱穀カバー(151)(153)を上支点軸(155)(156)を中心として上方に開放自在に設けたものであるから、左右脱穀カバー(151)(153)をその都度取出す手間の煩わしさなく、容易に開放して脱穀性能を安定維持させることができるものである。
【0050】
さらに、脱穀部(4)の後側上方にエンジン(12)を配設すると共に、エンジン(12)より前方の穀物タンク(8)の右外側に、該タンク(8)内の穀物を取出す縦排出オーガ(149)を配設するものであるから、脱穀部(4)の後側上方に穀物タンク(8)及びエンジン部を一体とさせたこれらの簡潔な設置を行うと共に、エンジン(12)や脱穀部(4)に悪影響の与えることのない縦排出オーガ(149)のコンパクトな設置を可能とさせることができるものである。
【0051】
またさらに、脱穀部(4)の右外側でエンジン(12)の下方位置にエンジン(12)の燃料タンク(162)を配設したものであるから、例え大容量の燃料タンク(162)でも脱穀部(4)・穀物タンク(8)やエンジン(12)に悪影響を与えたり場所をとることなくコンパクトに設置可能とさせることができるものである。
【0052】
また、脱穀部(4)後側でミッションケース(26)より後方の脱穀開放部に後部ガードフレーム(168)を配設したものであるから、機体後進時に後進方向の圃場面に障害物がある場合でも、ガードフレーム(168)によってミッションケース(26)などが直接的に障害物に接触する不都合を回避させて、脱穀部(4)の三番口(140)やミッションケース(26)の損傷防止を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】コンバインの全体平面図である。
【図3】コンバインの全体正面図である。
【図4】ミッションケースの駆動説明図である。
【図5】走行及び旋回連動機構の平面説明図である。
【図6】主変速レバー部の側面説明図である。
【図7】連動操作系部の平面説明図である。
【図8】連動操作系部の側面説明図である。
【図9】連動操作系部の正面説明図である。
【図10】主変速レバー部の平面説明図である。
【図11】連動操作系の平面説明図である。
【図12】ワイヤ受け部の説明図である。
【図13】コントロールレバー部の説明図である。
【図14】連動操作系の説明図である。
【図15】運転台の回動説明図である。
【図16】脱穀部の断面説明図である。
【図17】脱穀部の側面説明図である。
【図18】脱穀部の断面平面説明図である。
【図19】第1扱胴部の正面説明図である。
【図20】エンジン部の平面説明図である。
【図21】エンジン部の背面説明図である。
【図22】ステップ部の正面説明図である。
【符号の説明】
【0054】
(4) 脱穀部
(8) 穀物タンク
(12) エンジン
(14) 運転席
(15) 操向ハンドル(旋回操作部材)
(16)(16A) 運転台
(18) 刈取部
(21) フィーダハウス
(26) ミッションケース(149) 縦排出オーガ
(151)(153) カバー
(155)(156) 支点軸
(162) 燃料タンク
(168) ガードフレーム
(170) 油圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1扱胴の後方に第2扱胴を配設し、該第1扱胴及び第2扱胴をフィーダハウスからの穀稈投入方向に対し直交させ、前記フィーダハウスから前記第1扱胴の左側に投入された穀稈を前記第1扱胴で右方向に横送りし、右端連通樋では前記第1扱胴の排稈羽根によって後方の前記第2扱胴に受継いで左方向に横送りし、排稈口では前記第2扱胴左端の排稈羽根によって後方に排稈を排出させる構成を有する脱穀部の後側上方にエンジンを配設すると共に、前記エンジンより前方の、前記脱穀部を構成する左右脱穀側板を支持部材として、前記脱穀部の後側上方に配設した穀物タンクの右外側に、前記穀物タンク内の底部排出オーガによって取出された穀粒を上部排出オーガに受継ぐ縦排出オーガを配設し、該縦排出オーガより前方の前記穀物タンクの右外側面に駆動系を配設したことを特徴とする普通形コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−197940(P2006−197940A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62593(P2006−62593)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【分割の表示】特願平10−96903の分割
【原出願日】平成10年3月24日(1998.3.24)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【Fターム(参考)】