説明

有害物質の処理方法

【課題】アスベスト含有廃材などの有害固形状物質と、PCBなどの有害液状物質とを、同時に、しかも安全に無害化処理する有害物質の処理方法を提案すること。
【解決手段】アスベスト含有廃材などの有害固形状物質と、PCBなどの有害液状物質とを、混合或いは混合粉砕して粘度(25℃)が10000mPa・s以下の混合物或いは混合粉砕物とし、該混合物或いは混合粉砕物をセメント焼成用のロータリーキルンに投入して無害化する有害物質の処理方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質の処理方法に関するもので、詳しくは、アスベスト含有廃材などの有害固形状物質と、PCBなどの有害液状物質とを、同時に、しかも安全に無害化処理する有害物質の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスベスト(石綿)は、耐熱性、耐薬品性、絶縁性などの諸特性に優れているため、建設資材、電気製品、自動車および家庭用品などの分野で幅広く利用されていた。
しかし、近年、周知のように人体への毒性が指摘され、現在では、アスベストの使用が完全に禁止されていることは勿論、過去において使用されたアスベストを無公害的に取り除き、無害化処理することが国を挙げての大きな懸案となっている。
このアスベスト含有廃材の無害化方法としては、例えば、特許文献1乃至3などに記載されているように、焼成炉などを用いてアスベスト含有廃材を溶融し、針状繊維で無くすることが提案されている。
【0003】
また、PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、化学的に非常に安定で、かつ電気絶縁性に優れているため、コンデンサーや変圧器の絶縁油、熱媒体、機械油など多くの用途に使用されてきた。
しかし、上記アスベストと同様に、その後PCBの毒性が指摘され、製造、使用が禁止されていると共に、それまでに製造されたPCBの処理が急務となっている。
このPCBの処理方法としては、例えば特許文献4に提案されたPCB蒸発炉、燃焼炉、急速冷却炉および排ガス処理炉からなる燃焼処理施設による処理や、特許文献5に提案されたPCB焼却炉に不活性ガスを充填して爆発を防止しつつ燃焼させ、燃焼排ガスを二次燃焼炉で燃焼させる焼却処理方法などがある。
【0004】
【特許文献1】特開平8−141537号公報
【特許文献2】特開平8−187482号公報
【特許文献3】特開平9−206726号公報
【特許文献4】特開平7−217848号公報
【特許文献5】特開平7−63315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1乃至3などに記載されたアスベスト含有廃材の無害化方法においては、その無害化処理に際して、焼成温度の低減等を目的として、都市ゴミ焼却灰、ガラス粉、粘土などの特定物質をアスベスト含有廃材に混合することとしており、その混合処理などの際に、実施の形態によってはアスベスト含有粉塵が飛散し、作業員などの安全が十分確保されない場合があった。
また、焼成炉における熱処理に際し、アスベストが無害化される温度域に達するまで時間がかかるため、その間に無害化されていないアスベストが飛散する可能性があり、また、アスベスト含有廃材が粉塵飛散防止などの目的で多量の水分を含んでいる場合には、熱処理によって多量の水蒸気が発生し、熱処理が困難となると共に、該水蒸気に紛れて十分に熱処理を受けないまま無害化されていないアスベストが炉外に排出される危険性もあった。
【0006】
また、PCBを処理する最も実用的な方法は、特許文献4,5などに提案された燃焼処理方法であるが、上記特許文献において提案された装置は非常に大掛かりなものであり、実用性に乏しいと言う欠点があった。また、PCBの燃焼処理施設は、燃焼排ガス中に有害物質が含まれる可能性があるために地域住民の理解が得られ難く、大掛かりな処理工場を建設すること自体が困難であり、その対策が求められていた。なお、PCBの化学的処理方法も提案されているが、この方法は高額な費用が必要となり、上記燃焼処理方法以上に実用性に乏しいと言う問題がある。
【0007】
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、アスベスト含有廃材などの有害固形状物質と、PCBなどの有害液状物質とを、同時に、しかも安全に無害化処理する有害物質の処理方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明は、有害固形状物質と有害液状物質とを混合し、該混合物を焼成炉に投入して無害化する有害物質の処理方法とした。
また、本発明は、有害固形状物質と有害液状物質とを混合粉砕し、該混合粉砕物を焼成炉に投入して無害化する有害物質の処理方法とした。
【0009】
ここで、上記本発明において、上記有害固形状物質がアスベスト含有廃材、有機系汚染土壌のいずれか1種以上であること、また、上記有害液状物質がPCB、PCBを含む廃油のいずれか1種以上であること、また、上記混合物或いは混合粉砕物の粘度(25℃)を10000mPa・s以下とすること、さらには、上記焼成炉がセメント焼成用のロータリーキルンであることは、いずれも好ましい実施の形態である。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明に係る有害物質の処理方法によれば、有害固形状物質と有害液状物質とを混合或いは混合粉砕することとしたため、混合或いは混合粉砕に際して、有害液状物質が有害固形状物質の飛散を効果的に防止する役割を果たし、例えば有害固形状物質がアスベスト含有廃材である場合においても、アスベスト含有粉塵の飛散を阻止することができ、これらの作業に従事する作業員などの安全が確保される。また、得られる混合物或いは混合粉砕物は、有害液状物質の存在により流動性を有するものとなり、人手には直接触れないポンプ圧送等の搬送が可能となり、その後の処理工程でも有害固形状物質の飛散が生じ難いものとなるため、安全に取り扱うことができる。
【0011】
また、本発明によれば、有害固形状物質と有害液状物質との混合物或いは混合粉砕物を焼成炉に投入して無害化することとしたため、例えば有害液状物質がPCBである場合には、該PCBが焼成炉内において燃焼して焼失すると共に、該PCBの燃焼エネルギーは混合物中の有害固形状物質を直接的かつ効率的に加熱するため、例えば有害固形状物質がアスベスト含有廃材である場合には、該アスベスト含有廃材中のアスベストは短時間に無害なフォルステライト或いはエンスタタイトに変性し、アスベストは無害化され、また、有害固形状物質が有機系汚染土壌である場合には、該土壌中の有機系汚染物質、例えばダイオキシン、PCB、シアン化合物、VOCなどは熱分解して無害化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、上記した本発明に係る有害物質の処理方法の実施の形態を、詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る有害物質の処理方法は、有害固形状物質と有害液状物質とを混合或いは混合粉砕し、該混合物或いは混合粉砕物を焼成炉に投入して無害化するものである。
【0014】
ここで、上記有害固形状物質としては、アスベスト含有廃材、有機系汚染土壌が挙げられる。
アスベスト含有廃材には、建築物への吹き付け用アスベスト材、アスベストを強度改善の目的で所定量添加した石綿スレート、石綿セメント板、屋根瓦、樹脂製水道管、自動車のブレーキパッド、更にはアスベストを断熱性、絶縁性の付与の目的で含有したガスケット、シーリング材などが含まれるが、中でも、今後大量の発生が見込まれる石綿スレート、石綿セメント板などのアスベスト含有建材の処理に、本発明は好適に用いられる。
また、上記有機系汚染土壌とは、ダイオキシン、PCB、シアン化合物、VOCなどによって汚染された土壌であり、これら有機系汚染物質を含む土壌である。
【0015】
また、有害液状物質としては、PCB、PCBを含む廃油、廃農薬、有害廃棄塗料、有害薬品、廃棄燃料などが挙げられるが、中でも、PCB、PCBを含む廃油は、多量に未処理物が存在すると共にその処理が急務となっており、しかも低粘度であるために上記した有害固形状物質との混合或いは混合粉砕を良好に行えることから、本発明において好適に用いられる。
【0016】
上記有害固形状物質が大きな塊である場合には、破砕した後に有害液状物質との混合或いは混合粉砕が行われる。
この有害固形状物質の破砕に際しては、粉塵の飛散防止処理を行った後に行うことが好ましい。粉塵の飛散防止処理は、例えば、有害固形状物質が建築物に吹き付けられたアスベスト材、或いは建築物に取り付けられた石綿スレート、石綿セメント板などである場合には、その解体時におけるポリマーエマルジョン、各種ラテックスなどの飛散防止剤の吹き付け処理が成されていればそれでもよいが、該飛散防止剤が乾いてしまい、再飛散が懸念される場合、また、特に石綿スレート、石綿セメント板などの非飛散性アスベスト含有製品にあっては、解体時においては飛散防止剤の吹き付け処理が成されずに解体される場合もあることから、破砕の直前において、アスベスト含有廃材に対してあらためて粉塵の飛散防止処理を施すことが好ましい。
【0017】
上記粉塵の飛散防止処理の方法としては、アスベスト含有廃材などの有害固形状物質を液状の油が入れられた油槽に浸漬する、或いは有害固形状物質に液状の油を噴霧することにより行われることが好ましい。これは、液状の油は、何ら有害固形状物質の破砕に支障を与えることなく、有効に破砕時における粉塵の飛散を防止することができると共に、本発明は、この有害固形状物質の破砕後に、該破砕物とPCBなどの有害液状物質とを混合或いは混合粉砕することを必須としており、該混合或いは混合粉砕工程においても、飛散防止剤として用いた該液状の油が支障を与えることはなく、むしろこの混合或いは混合粉砕工程においても有効に飛散防止剤として利用されることとなるために好ましい。また、飛散防止剤として液状の油を使用することは、有害固形状物質の含水率を上げないため、焼成時における水蒸気の発生も少なく、効率的な有害固形状物質の熱処理が可能となるために好ましい。なお、この粉塵飛散防止剤として用いる液状の油としては、A重油、B重油、C重油、廃潤滑油、植物油、重油スラッジ、原油スラッジなどを用いることができ、また、後に該有害固形状物質の破砕物と混合或いは混合粉砕するPCB、PCBを含む廃油、廃農薬、有害廃棄塗料、有害薬品、廃棄燃料などの有害液状物質を用いることもできる。特に、PCB、PCBを含む廃油は、揮発性が低くかつ低粘度であるために、破砕機等への付着が少なく、好適に粉塵飛散防止剤として用いることができる。
【0018】
粉塵の飛散防止処理が施されたアスベスト含有廃材などの有害固形状物質は、破砕機によって適度な粒径に破砕される。破砕機としては、ロールクラッシャ、ジョークラッシャ、コーンクラッシャ、インパクトクラッシャ、ハンマークラッシャ、ロッドミル、ボールミルなどを挙げることができ、これらの装置を単独で用いてもよく、また多段に構成し、先ず、例えばジョークラッシャで有害固形状物質を粗砕した後、ボールミルで目標粒径まで微砕する構成としてもよい。
有害固形状物質の目標破砕粒径は、平均粒径で5mm以下、更には平均粒径で3mm以下が好ましい。これは、この程度まで有害固形状物質を破砕すれば、ポンプ圧送が可能となり、その取扱いが容易なものとなる。また、後のPCBなどの有害液状物質との混合或いは混合粉砕操作も良好に行え、さらに、セメント焼成用のロータリーキルンで、アスベスト含有廃材などの有害固形状物質を容易に無害化できるるために好ましい。
【0019】
続いて、適度な粒径に破砕されたアスベスト含有廃材などの有害固形状物質、或いは破砕の必要がなかった例えば有機系汚染土壌などの有害固形状物質は、上記PCB、PCBを含む廃油、廃農薬、有害廃棄塗料、有害薬品、廃棄燃料などの有害液状物質と混合或いは混合粉砕され、所定の流動性を有する混合物或いは混合破砕物とされる。
この際、有害固形状物質と混合或いは混合粉砕する有害液状物質としては、特に、PCB或いはPCBを含む廃油を用いることが好ましい。これは、PCB或いはPCBを含む廃油は、多量に未処理物が存在すると共にその処理が現在急務となっており、しかも低粘度であるために上記した有害固形状物質との混合或いは混合粉砕を良好に行え、高い混合或いは混合粉砕効率が得られ、混合物或いは混合粉砕物の流動性の調整幅を広げることができるために好ましい。
【0020】
上記有害固形状物質と有害液状物質とを混合する装置としては、パグミキサー、リボンミキサーなどのバッチ式の混合機を挙げることができ、これらの混合機にアスベスト含有廃材などの有害固形状物質を投入し、続いて標準的な量のPCBなどの有害液状物質を投入して混合する。混合物の流動性は、混合機に設置したセンサなどにより測定し、流動性が悪い場合には、計算値などから求めた油量を追加添加し、混合する装置とすることは好ましい。
【0021】
また、上記有害固形状物質と有害液状物質とを混合粉砕する装置としては 湿式ボールミル、湿式振動ミル、媒体攪拌ミルなどを挙げることができ、これらの装置を単独で用いてもよく、また多段に構成し、先ずアスベスト含有廃材などの有害固形状物質を粗粉砕した後、目標粒径まで微粉砕する構成としてもよい。
【0022】
上記有害固形状物質と有害液状物質との混合或いは混合粉砕に際しての割合は、混合する両者の性状によっても左右されるが、有害固形状物質の割合を10〜70重量%、更には20〜50重量%とすることが好ましい。
これは、アスベスト含有廃材などの有害固形状物質の割合が70重量%を超えると、混合物或いは混合粉砕物の流動性が悪くなり、取り扱いが困難となると共に、混合物中のPCBなどの有害液状物質の粉塵飛散防止効果、また該有害液状物質の燃焼による有害固形状物質の効果的な無害化が望めないために好ましくない。逆にアスベスト含有廃材などの有害固形状物質の割合が10重量%に満たない場合には、有害固形状物質の効率的な処理が図れない。
【0023】
また、上記有害固形状物質と有害液状物質とを混合粉砕する際の固形分の目標粉砕粒径は、2mm以下が好ましく、更には1mm以下が好ましい。
これは、上記粒径より大きい固形分を有する混合粉砕物は、後にその性状を調整したとしても、固形分の分散性が悪く、貯蔵中や輸送中に固形分が沈降したり圧密化することが生じ、安定性に欠けると共に圧送性の悪いものとなるために好ましくない。
ただし、混合粉砕設備や貯蔵タンクがセメント焼成用ロータリーキルンなどの焼成炉に隣接して設置され、貯蔵タンクに適当な撹拌設備などが設置されている場合には、固形分の沈降などを考慮する必要がないためにこの限りではない。この場合は、焼成炉に送入ためのポンプやバーナー先端の形状・大きさにより粒径が制限され、通常は、5mm程度が最大粒径である。
【0024】
上記有害固形状物質と有害液状物質との混合或いは混合粉砕により得られた混合物或いは混合粉砕物は、必要に応じて調整タンクなどを用いて性能調整することにより、以下の性状を有するものとすることが好ましい。
有害固形状物質と有害液状物質との混合物或いは混合粉砕物の性状としては、燃焼エネルギー量(発熱量)、流動性(ポンプ圧送性、粘度)、固形分の分散性、含有空気量、含有水分量などが考慮されるが、特に該混合物或いは混合粉砕物の燃焼によるアスベスト、PCB、ダイオキシン、シアン化合物、VOCなどの有害物質の無害化の観点から燃焼エネルギー量(発熱量)が、該混合物或いは混合粉砕物の取り扱い性の観点から流動性(ポンプ圧送性、粘度)が、それぞれ重要となる。
混合物或いは混合粉砕物の燃焼エネルギー量(発熱量)は、好ましくは3000kcal/kg以上、特に好ましくは5000kcal/kg以上である。また、流動性の観点から混合物或いは混合粉砕物の粘度(25℃)は、好ましくは10000mPa・s以下、更に好ましくは7000mPa・s以下、特に好ましくは4000mPa・s以下である。
上記混合物或いは混合粉砕物の発熱量、粘度などの性能調整は、アスベスト含有廃材などの有害固形状物質の破砕粒径、混合するPCBなどの有害液状物質の性状、更には、有害固形状物質と有害液状物質との混合割合の調整などにより行うことができる。
【0025】
上記のようにして得られた有害固形状物質と有害液状物質との混合物或いは混合粉砕物は、焼成炉に投入して無害化される。
焼成炉としては、ロータリーキルンが好ましい。ロータリーキルンの中でも、加熱方式は、内熱式のものが外熱式に比して高温での焼成が可能であるため、アスベスト、PCB、ダイオキシン、シアン化合物、VOCなどの有害物質の無害化処理には好適である。また、ガスと被焼成物の流れの向きによる分類では、並流式に比して向流式のものは、被焼成物が燃焼排ガスで余熱され、火炎近傍で最高温度に達するため、粗大なアスベスト塊などが十分な熱処理がされないまま着地した場合においても、被焼成物と共に再度加熱されて無害化され後に排出されるため、向流式のものが好適である。用途としては、骨材・土木資材焼成用、石灰・石膏焼成用、或いは焼却用のロータリーキルンに比して、セメント焼成用のロータリーキルンが好適である。これは、セメント焼成用のロータリーキルンは、高温焼成される内熱式であり、粗大なアスベスト塊なども最終的にはフレーム近傍で高温処理され、完全に無害化された後に排出される。また、微細な粒子は火炎中で無害化後、サスペンションプレヒーターや集塵機で回収され、最終的には全量がセメントクリンカに取り込まれるため、廃棄物が発生しない。
【0026】
焼成炉への混合物或いは混合粉砕物の投入方法としては、重油などの液体燃料の吹き込みの場合と同様に、例えば、主燃料である重油吹き込みバーナーの中央部に設けられたパイプやその近接周辺より、或いは主燃料吹き込みバーナーとは別個に設置された専用の吹き込みバーナーから、ポンプなどによって計量しながら圧送することにより投入する方法が挙げられる。
【0027】
焼成炉内に投入された有害固形状物質と有害液状物質との混合物或いは混合粉砕物は、該混合物中のPCBなどの有害液状物質の存在によって、それ自体が燃焼し、その燃焼エネルギーは、混合物中のアスベスト含有廃材などの有害固形状物質を直接的かつ効率的に加熱するため、アスベスト含有廃材中のアスベストは短時間で無害なフォルステライト或いはエンスタタイトに変性し、アスベストは確実に無害化され、また、有機系汚染土壌中の汚染物質、例えばダイオキシン、PCB、シアン化合物、VOCなどは熱分解して無害化される。また、混合物或いは混合粉砕物の燃焼によって発生した熱は、当然に焼成炉内の被焼成物(例えば、セメント原料、軽量骨材原料)の加熱にも利用される。
【0028】
そして、無害化された有害固形状物質或いは有害液状物質中の固形分は、前記被焼成物の一部として資源化される。例えば、セメント焼成用のロータリーキルンにおいて燃料として窯前のバーナーから吹き込んだ場合には、窯尻側から流れてきたセメント原料に取り込まれ、焼成帯において1450℃以上の温度で再び熱処理され、セメントクリンカの一部として資源化される。
【0029】
次に、上記した本発明に係る有害物質の処理方法の一例を、図面に基づいてより具体的に説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る有害物質の処理方法を概念的に示した図であって、この具体例においては、有害固形状物質として、建物から解体剥離した石綿スレートを用い、有害液状物質として、コンデンサーや変圧器の絶縁油として用いられていたPCBを用いた。
【0031】
先ず、解体現場から搬送されてきた石綿スレートAを、PCBが入れられた油槽1に浸漬し、粉塵の飛散防止処理を施した。
【0032】
続いて、粉塵の飛散防止処理を施した石綿スレートAを、ベルトコンベヤー2にて油槽1から引き上げ、そのまま粗砕機(ロールクラッシャ)3に投入し、平均粒径20mm程度に粗砕した。なお、粗砕機3には、粗砕時の粉塵が外部に飛散しないようにカバー4が設けられ、該カバー4の端部が前記油槽1内に入れられている。
粗砕した石綿スレートAを、続いて粗砕機3の下流側に設置された粉砕機(ハンマークラッシャ)5に投入し、さらに平均粒径5mm程度に微砕した。
【0033】
次に、石綿スレートAの破砕物を、ダクト6を介して外気に触れないようにして混合機(パグミキサー)7に投入し、該混合機7にPCBを投入して両者を混合した。混合割合は、石綿スレートAの破砕物が50重量%程度となるように行った。
得られた石綿スレートAの破砕物とPCBとの混合物Xは、発熱量が5000kcal/kg程度、粘度(25℃)が2000mPa・s程度であった。
【0034】
この石綿スレートAの破砕物とPCBとの混合物Xを、図示は省略したが、セメント焼成用のロータリーキルン(直径:0.5m、長さ8.5m)の窯前より、圧空により投入した。
セメント焼成用のロータリーキルン内に投入された混合物Xは、その中に含まれるPCBが燃焼し、この燃焼エネルギーによって効率的にアスベストは熱処理されて無害なフォルステライト或いはエンスタタイトに変性し、無害化された。また、混合物Xの燃焼によって発生した熱は、ロータリーキルン内を流下するセメント原料の焼成にも利用され、また、無害化されたアスベストは、セメントクリンカの一部として資源化された。
【0035】
以上、本発明に係る有害物質の処理方法について説明したが、本発明は、何ら既述の有害物質の処理方法に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、更に種々の変形、変更を加えた有害物質の処理方法とすることができることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る有害物質の処理方法を概念的に示した図である。
【符号の説明】
【0037】
1 油槽
2 ベルトコンベヤー
3 粗砕機
4 カバー
5 粉砕機
6 ダクト
7 混合機
A 石綿スレート(有害固形状物質)
PCB PCB(有害液状物質)
X 石綿スレートの破砕物とPCBとの混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害固形状物質と有害液状物質とを混合し、該混合物を焼成炉に投入して無害化することを特徴とする、有害物質の処理方法。
【請求項2】
有害固形状物質と有害液状物質とを混合粉砕し、該混合粉砕物を焼成炉に投入して無害化することを特徴とする、有害物質の処理方法。
【請求項3】
上記有害固形状物質が、アスベスト含有廃材、有機系汚染土壌のいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有害物質の処理方法。
【請求項4】
上記有害液状物質が、PCB、PCBを含む廃油のいずれか1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有害物質の処理方法。
【請求項5】
上記混合物或いは混合粉砕物の粘度(25℃)を、10000mPa・s以下とすることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の有害物質の処理方法。
【請求項6】
上記焼成炉が、セメント焼成用のロータリーキルンであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の有害物質の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−253912(P2008−253912A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98297(P2007−98297)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】