説明

有機ELドライバ及びそれを搭載した有機EL表示装置並びに有機EL表示装置の駆動方法

【課題】有機EL素子によって電流密度が異なっても、表示特性が良好な有機ELドライバ及びそれを搭載した有機EL表示装置並びに有機EL表示装置の駆動方法を得ること。
【解決手段】本発明にかかる有機ELドライバ2は、素子基板101上に設けられたセグメント部4の有機EL素子115と、マトリクス状に設けられるドットマトリクス部3の有機EL素子115を駆動させるものである。セグメント部4の有機EL素子115を駆動させるセグメント用ドライバ6はパルス信号のパルス幅を変化させることにより輝度を制御する。ドットマトリクス用ドライバ5は、パルス信号のパルスの高さを変えることによって輝度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELドライバ及びそれを搭載した有機EL表示装置並びに有機EL表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は有機LED素子とも呼ばれ、陽極と陰極とで有機発光材料を含む有機層を挟持する構成を備え、両電極間に電流を供給することにより発光する。具体的には、対向する電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の有機発光材料を励起させ、有機発光材料に応じた色の発光を行う。このような有機EL素子を有する有機EL表示パネルは自己発光表示パネルであるため、視野角が広く、応答速度が速い。また、バックライトが不要であるため、薄型軽量化が可能である。これらの理由から、近年、有機EL表示パネルは、液晶表示パネルに代わる表示パネルとして注目されている。
【0003】
このよう有機EL表示パネルには、パッシブマトリクス駆動によって表示を行うドットマトリクス部と、スタティック駆動によって表示を行うセグメント部とが混在したものが開発されている(例えば特許文献1参照)。パッシブマトリクス駆動では、複数の画素に接続された走査線ごとに電圧を印加させ、時分割的に駆動させる。このため、全走査線数をNとした場合、1フレーム期間の1/Nの時間しか電圧を印加することができない。すなわち、ここではデューティ比が1/Nとなる。一方、スタティック駆動では、1フレーム期間中連続して電圧を印加させることができる。このように、ドットマトリクス駆動はスタティック駆動に比べて電圧を印加する時間が短くなるので、電流密度を高くする必要がある。このため、ドットマトリクス部とセグメント部とが混在した有機EL表示パネルでは、ドットマトリクス部に流れる電流密度とセグメント部に流れる電流密度が異なる。
【0004】
一方、有機EL表示パネル用の有機EL素子の開発が盛んに行われ、特に白色発光できる有機EL素子が注目されている。白色有機EL素子を用いることにより、モノカラー表示、バックライトなどの照明としての用途の他、カラーフィルタを有機EL表示装置に装着し、フルカラー表示することができる。このような有機EL素子により白色発光を得る方法では、1種類の発光材料だけで白色を得るものは少なく、通常は複数の発光材料を一つの有機EL素子の中で同時に発光させている。例えば特許文献2に記載の有機EL発光装置では、青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を順次積層させた多層構造の発光層を用い、白色発光を実現している。
【特許文献1】特開2006−107884号公報
【特許文献2】特開平10−3990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような白色発光の有機EL素子では、図7に示すように、電流密度によって色味が変化してしまう。図7は、電流密度による色度を示すグラフである。図7においては、縦軸を色度(x,y)、横軸を電流密度(mA/cm)とする。ここでは、一例として青緑色発光層、橙色発光層の2層構造の発光層を用いた有機EL素子の結果を示す。図7から分かるように、低電流になるにつれて、色変化が大きくなり、特に1mA/cm以下の領域では極端に色変化が大きくなった。このような挙動は、有機EL素子によって多少異なるが、複数の発光層を有する有機EL素子であれば、低電流になるにつれて、色変化が大きくなってしまう。
【0006】
このため、上記のような有機EL素子を有し、ドットマトリクス部とセグメント部とが混在する有機EL表示装置は、電流密度の違いにより、ドットマトリクス部とセグメント部とで色味に違いが生じてしまう。すなわち、表示色が白色から大きくずれてしまう。これは、低電流領域において特に顕著に現れる。また、最近では、車載用途等において表示パネルにディスプレイの輝度を落とす機能、すなわちディミング(減光)が求められている。これにより、夜間にディスプレイを表示させても、まぶしくなく視認性を向上させることができる。ディミングには、通常時の1/10〜1/200程度まで輝度を落とすことが要求される。このため、ディミング時には有機EL素子に供給する電流値も低電流値となり、ドットマトリクス部とセグメント部との色味が大きく変わってしまう。有機EL素子の改善により、低電流領域の色変化をある程度抑えることは可能であるが、寿命や効率などとトレードオフの関係となる。また、量産ばらつきも抑えにくく、量産レベルで実現するのは困難である。
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みるためになされたものであり、有機EL素子によって電流密度が異なっても、表示特性が良好な有機ELドライバ及びそれを搭載した有機EL表示装置並びに有機EL表示装置の駆動方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる有機ELドライバは、基板上に設けられた低デューティの第1有機EL素子と前記基板上にマトリクス状に設けられるとともに前記第1有機EL素子よりも高いデューティの第2有機EL素子を駆動させる有機ELドライバであって、前記第1有機EL素子を駆動させ、前記第1有機EL素子に出力する第1パルス信号のパルス幅を変化させることにより輝度を制御する第1ドライバと、第2パルス信号によってダイナミック駆動させ、前記第2パルス信号の高さを変化させることにより輝度を制御する第2ドライバとを有するものである。これにより、有機EL素子によって電流密度が異なっても、表示特性が良好になる。なお、本明細書においてデューティとはデューティ比の分母のことを指し、デューティが高いとは分母の数値が大きいことを示している。また、スタティック駆動はデューティ比が1/1であり、低デューティとなる。
【0009】
また、上述の有機ELドライバであって、前記第1有機EL素子に供給する瞬間電流密度が1mA/cm以上であることが好ましい。これにより、色度の変化をより小さくすることができる。
【0010】
そして、上述の有機ELドライバであって、高輝度発光モードで発光される輝度よりも低輝度で発光される低輝度発光モードにおいて、(前記第2有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)/(前記第1有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)≧1/50であることが好ましい。これにより、双方の有機EL素子の色度を略同じにすることができる。
【0011】
本発明にかかる有機EL表示装置は、基板上に設けられた低デューティの第1有機EL素子と、前記基板上にマトリクス状に設けられるとともに前記第1有機EL素子よりも高いデューティの第2有機EL素子と、前記第1有機EL素子を駆動させ、前記第1有機EL素子に出力する第1パルス信号のパルス幅を変化させることにより輝度を制御する第1ドライバと、第2パルス信号によってダイナミック駆動させ、前記第2パルス信号の高さを変化させることにより輝度を制御する第2ドライバとを有するものである。これにより、有機EL素子によって電流密度が異なっても、表示特性が良好にすることができる。
【0012】
また、上述の有機EL表示装置であって、前記第1有機EL素子及び前記第2有機EL素子の発光層が2層以上の積層構造になっていてもよい。この場合、特に生じやすい色どの変化を抑制することができる。
【0013】
また、上述の有機EL表示装置であって、前記第1有機EL素子に供給する瞬間電流密度が1mA/cm以上であることが好ましい。これにより、色度の変化をより小さくすることができる。
【0014】
また、上述の有機EL表示装置であって、高輝度発光モードで発光される輝度よりも低輝度で発光される低輝度モードにおいて、(前記第2有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)/(前記第1有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)≧1/50であることが好ましい。これにより、双方の有機EL素子の色度を略同じにすることができる。
【0015】
本発明にかかる有機EL表示装置の駆動方法は、基板上に設けられた低デューティの第1有機EL素子と前記基板上にマトリクス状に設けられるとともに前記第1有機EL素子よりも高いデューティの第2有機EL素子を駆動させる有機EL表示装置の駆動方法であって、高輝度発光モードにおいて、前記第1有機EL素子及び前記第2有機EL素子をそれぞれのデューティ比において駆動させる工程と、前記高輝度発光モードで発光される輝度よりも低輝度で発光される低輝度発光モードにおいて、第1パルス信号のパルス幅を変化させることにより前記第1有機EL素子の輝度を制御する工程と、第2パルス信号のパルス高さを変化させることにより前記第2有機EL素子の輝度を制御する工程とを有するものである。これにより、有機EL素子によって電流密度が異なっても、表示特性が良好になる。
【0016】
また、上述の有機EL表示装置の駆動方法であって、前記第1有機EL素子に供給する瞬間電流密度が1mA/cm以上であることが好ましい。これにより、色度の変化をより小さくすることができる。
【0017】
また、上述の有機EL表示装置の駆動方法であって、前記低輝度発光モードにおいて、(前記第2有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)/(前記第1有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)≧1/50であることが好ましい。これにより、双方の有機EL素子の色度を略同じにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有機EL素子によって電流密度が異なっても、表示特性が良好な有機ELドライバ及びそれを搭載した有機EL表示装置並びに有機EL表示装置の駆動方法を得ることを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態1.
本実施の形態にかかる有機EL表示装置の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態にかかる有機EL表示装置の概略図である。
【0020】
有機EL表示装置は、有機EL表示パネル1、有機ELドライバ2とを備えている。有機EL表示パネル1は、有機ELドライバ2によって制御され、画像表示を行う。有機EL表示パネル1の表示領域には、高デューティのドットマトリクス部3と低デューティのセグメント部4とがある。ドットマトリクス部3とセグメント部4とは、それぞれ異なる領域に配置される。ドットマトリクス部3では、マトリクス状に形成された有機EL素子によって文字等をドットの集合体で表示する。セグメント部4では、文字や絵の形状にパターニングされた電極間に配置された有機EL素子によって文字や絵を表示する。ここでは、ドットマトリクス部3をデューティ比が1/N(Nは1より大きい整数)の高デューティのパッシブマトリクス(ダイナミック)駆動、セグメント部4をデューティ比が1/1の低デューティのスタティック駆動させる。有機ELドライバ2は、外部から入力される表示データ等に基づいて、画像の表示に必要な各種の制御信号、走査信号、表示信号等を出力する。有機ELドライバ2には、ドットマトリクス部3を制御するドットマトリクス用ドライバ5、セグメント部4を制御するセグメント用ドライバ6等を有する。なお、有機ELドライバ2の詳細については後述する。
【0021】
ここで、図2及び図3を用いて、有機EL表示パネル1について説明する。図2は、ドットマトリクス部3の有機EL素子115の構成を示す断面図である。図3は、有機EL素子115が形成されている素子基板101の要部を示す平面図である。図2及び図3において、同一の要素には同一の符号を付している。
【0022】
図2、3に示すように、有機EL表示パネル1は、素子基板101、陽極102、絶縁層103、有機層104、陰極105、封止基板106、陽極補助配線107、陰極補助配線109、円偏光板110、隔壁111、捕水材112、接着材113を有している。なお、図2における断面図は、図3の素子基板101に封止基板106を貼り合わせた後の断面図である。
【0023】
まず、ドットマトリクス部3の構成について説明する。素子基板101は、ガラスなどからなる透明な矩形状の平板部材である。陽極102は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明性導電材料からなり、素子基板101上に形成されている。図3に示すように、複数の陽極102は、一定間隔を隔ててそれぞれ平行に形成されている。また、素子基板101上には、それぞれの陽極102に延設された陽極補助配線107及び陽極補助配線107の端部に配置される陽極接続端子108が設けられる。
【0024】
また、素子基板101上には、後述するそれぞれの陰極105に接続された陰極補助配線109及び陰極補助配線109の端部に配置された陰極接続端子(不図示)が設けられる。陰極補助配線109は陰極105に対応して形成される。陽極補助配線107、陽極接続端子108、陰極補助配線109、陰極接続端子は、接続部の低抵抗化のために金属材料から形成することができる。
【0025】
陽極102、陰極補助配線109、陰極接続端子が形成された素子基板101上には、絶縁層103が形成される。絶縁層103は、陽極102と後述する陰極105との絶縁を確保するために設けられる。絶縁層103は、ポリイミドなどの絶縁材料からなる。絶縁層103には、陽極102と後述する陰極105との交差位置、すなわち画素114となる位置に対応して開口部が設けられている。つまり、絶縁層103は、有機層104と陽極102とが接触する開口部を画定する役割を果たしている。この開口部に対応する位置が画素114となる。また、絶縁層103には、陰極105と陰極補助配線109とを電気的に接続するためのコンタクトホールが設けられている。
【0026】
絶縁層103上には、隔壁111が形成される。隔壁111は、分離された陰極105を形成するため、陰極105を蒸着などにより形成する前に所望のパターンに形成される。陽極102に対し垂直に、陰極105に対して平行に設けられる。陰極105の分離をより確実なものとするため、隔壁111は逆テーパ構造を有している。すなわち、素子基板101から離れるにつれて、断面が広がるように形成される。
【0027】
有機層104は、一般的な、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを順次積層した構成を有している。ここでは、発光層を第1発光層、第2発光層を順次積層した積層構造としている。第1発光層は、青緑色発光層、第2発光層は橙色発光層である。そして、青緑色発光層から発光される青緑色と、橙色発光層から発光される橙色との2色の合成により、白色発光させる。また、有機層104の層構造は、上記に限らず、例えばホール輸送層、発光層、電子輸送層を順次積層した構成としたり、これらの層の間に中間層を設けてもよい。また、発光層は、単層構造や3層以上の構造であってもよく、それぞれの発光層の発光色は、任意の色とすることができる。有機層104は、前述した陽極102、絶縁層103、隔壁111の上に、所定の大きさで配置される。
【0028】
陰極105は、光反射性を有するアルミニウムなどの導電性材料からなり、有機層104上に設けられる。陰極105は、隔壁111によって分離されるため、隔壁111の間に配設される。したがって、陰極105は陽極102に対して垂直に設けられる。陽極102と陰極105とが交差する位置が画素114となる。有機EL素子115は、素子基板101上に順次積層された陽極102、有機層104、陰極105を備える。ここでは、ドットマトリクス部3に形成される有機EL素子115が第2有機EL素子である。複数の画素114から構成される領域が、表示領域(ドットマトリクス部3)となる。また、陽極補助配線107を走査線、陰極補助配線109をデータ線に設定してもよいし、陽極補助配線107をデータ線、陰極補助配線109を走査線に設定してもよい。
【0029】
次に、セグメント部4の構成について説明する。なお、ドットマトリクス部3と共通する構成要素については、ドットマトリクス部3と同様のものを用いることができるので、詳細な説明は省略する。陽極102は、素子基板101上に形成されている。ここでは、陽極102は表示したい文字や絵の形状にパターニングされている。具体的には、陽極102は四角形状、三角形状、丸形状、十字形状等の所定の形状にパターニングされている。パターニングされたそれぞれの陽極102は分離して設けられる。そして、1本の陽極補助配線107によってすべての陽極102は接続され、陽極補助配線107の端部には陽極接続端子108が設けられる。ここでは、陽極補助配線107がコモン線となる。すなわち、陽極102には一定電圧が印加されている。なお、陽極102は、表示したい文字や絵の形状にパターニングされていなくてもよく、全ての陽極102パターンを包含するように大きく形成してもよい。また、素子基板101上には、後述するそれぞれの陰極105に接続された陰極補助配線109及び陰極補助配線109の端部に配置された陰極接続端子(不図示)が設けられる。ここでは、陰極補助配線109がセグメント線となる。
【0030】
そして、ドットマトリクス部3と同様、画素114となる位置に対応して開口部を有する絶縁層103を形成する。そして、絶縁層103上に、陰極105を分離形成するための隔壁111を所望の形状にパターン形成する。その後、絶縁層103の開口部において陽極102上に有機層104を形成する。そして、有機層104上に陰極105が設けられる。すなわち、陽極102と陰極105は、有機層104を介して対向配置される。そして、陽極102と陰極105とが重なる位置が画素114となる。有機EL素子115は、素子基板101上に順次積層された陽極102、有機層104、陰極105を備える。ここでは、セグメント部4の有機EL素子115が第1有機EL素子である。複数の画素114から構成される領域が表示領域(セグメント部4)となる。図3では、対向する陽極102及び陰極105を同一形状とする。なお、陽極102又は陰極105の形状は、上記以外に、数字、記号等の形状であってもよい。
【0031】
封止基板106は、パネル中に水分や酸素が入らないように、ドットマトリクス部3及びセグメント部4の有機EL素子115を覆うように設けられる。封止基板106としては、ステンレス鋼、アルミニウム又はその合金などの金属類のほか、ガラス、アクリル系樹脂などの1種類又は、2種類以上からなるものを使用することができる。封止基板106の画素に対向する面上には、捕水材112を配置するための凹部が形成されている。
【0032】
封止基板106と素子基板101とは、光硬化型の接着材113を介して固着されている。接着材113としては、水分などの透過性の低い紫外線硬化型のエポキシ系接着材などを用いることができる。接着材113は、表示領域を囲むように形成されている。すなわち、接着材113は、封止基板106に形成されている凹部を囲む凸部に配置される。接着材113は、封止基板106と素子基板101とを固着し、表示領域を含む空間を封止する。すなわち、有機EL素子115は、素子基板101、封止基板106、接着材113とで形成される気密空間に配置される。
【0033】
気密空間内には、画素114のほか、画素114への水分や酸素の影響を抑制し、安定した発光特性を維持するための捕水材112が設けられている。捕水材112は、封止基板106上の、有機EL素子115と対向する面に形成された凹部に設けられている。また、捕水材112は、封止基板106に形成された凹部の内部側面と接触しないように、一定の間隔を設けて配設されている。
【0034】
捕水材112としては、無機系の乾燥剤や、水分と反応性の高い有機金属化合物を膜状にしたもの、さらに、フッ素系オイルからなる不活性液体中に固体の吸湿剤を混合したものなどを用いることができる。
【0035】
また、封止基板106は、陽極補助配線107の一部と陽極接続端子108及び陰極補助配線109の一部と陰極接続端子からなる引き出し部を素子基板101、封止基板106、接着材113とで形成される気密空間から露出するために、素子基板101よりも大きさが小さくなっている。すなわち、陽極接続端子108及び陰極接続端子は、接着材113の外側に配置される。
【0036】
図1に示される有機ELドライバ2は、陽極接続端子108、陽極補助配線107を介して陽極102と電気的に接続されている。図2に示すように、有機ELドライバ2が設けられたTCP(Tape Carrier Package)117と陽極接続端子108又は陰極接続端子とは、ACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)118を介して接続される。陽極接続端子108とTCP117との間にACF118が配置される。ACF118が、陽極接続端子とTCP117とを物理的に固定し、さらに、ACF118に含まれる導電粒子により陽極接続端子108とTCP117の接続配線を電気的に接続する。なお、陰極105も同様に有機ELドライバ2が接続される。ここでは、有機ELドライバ2の第2ドライバであるドットマトリクス用ドライバ5とドットマトリクス部3の陽極接続端子108及び陰極接続端子が電気的に接続される。また、有機ELドライバ2の第1ドライバであるセグメント用ドライバ6とセグメント部4の陽極接続端子108及び陰極接続端子が電気的に接続される。ここでは、ドットマトリクス用ドライバ5とセグメント用ドライバ6とを1チップLSI化した有機ELドライバ2を用いる。もちろん、ドットマトリクス用ドライバ5とセグメント用ドライバ6とを別々に設けてもよい。ドットマトリクス用ドライバ5は、パルス信号のパルスの高さを変化させることにより、輝度を制御する。セグメント用ドライバ6は、パルス信号のパルス幅を変化させることにより、輝度を制御する。なお、有機ELドライバ2による駆動方法の詳細は後述する。
【0037】
素子基板101の視認側には、円偏光板110が配置される。この円偏光板110は、視認側から入って金属膜からなる陰極105によって反射される光を遮蔽し、有機EL表示装置の表示コントラストを改善するために設けられる。円偏光板110は、直線偏光板とλ/4波長板とからなる。また、素子基板101にλ/4波長板の機能を持たせて、直線偏光板だけを貼着するようにしてもよい。本実施の形態にかかる有機EL表示装置は、上記のように構成される。なお、有機EL表示装置は、上記の構成に限らず、これ以外の構成でもよい。
【0038】
画素114の陽極102と陰極105との間に電流を供給することによって、陽極102からはホールが、陰極105からは電子がそれぞれ有機層104に注入されて再結合する。その際に生ずるエネルギーにより有機層104内の有機発光性化合物の分子が励起される。励起された分子は基底状態に失活し、その過程において有機層104が発光する。各画素114が有機ELドライバ2からの信号に従って発光層の発光量を制御することによって、表示領域は画像表示を行う。
【0039】
上記のような有機EL表示装置は、例えば車載に用いることができる。車載用の有機EL表示装置は、夜間に用いる場合、ディスプレイの輝度を落とす機能、すなわちディミング(減光)を行う。これにより、夜間にディスプレイを表示させてもまぶしくなく視認性が向上する。ディミング時には、通常の輝度の1/10〜1/200程度まで輝度を落とす必要がある。本実施の形態では、図4に示されるような有機ELドライバ2によってディミング時の輝度の制御を行う。図4は、有機ELドライバ2の構成を示す概略ブロック図である。
【0040】
有機ELドライバ2は、インターフェース10、電源11、コマンドデコーダ12、コマンドレジスタ13、グラフィックメモリ14、ドットマトリクス用ドライバ5、及びセグメント用ドライバ6を備える。インターフェース10は、外部のマイコンと、コマンドデコーダ12及びグラフィックメモリ14との情報のやり取りを行う。すなわち、インターフェース10は、マイコンから送信される表示データ等の各種信号を受信し、コマンドデコーダ12及びグラフィックメモリ14に各種信号を送信する。電源11は、外部の電源回路に接続され、定電流を出力することができる。電源回路は、入力電力から必要とされる出力電力を生成する電力回路である。
【0041】
コマンドデコーダ12は、一定の規則に基づいて符号化されたデータを復号し、もとのデータを取り出す。コマンドレジスタ13は、コマンドデコーダ12によって、読み出されたデータを記憶する。例えばマイコンからディミング開始のコマンドを受信した場合、ドットマトリクス用ドライバ5及びセグメント用ドライバ6にディミング指示を行う。また、ディミング終了のコマンドを受信した場合、ドットマトリクス用ドライバ5及びセグメント用ドライバ6のディミング指示を解除する。なお、ディミング指示やディミング指示の解除は、ドットマトリクス用ドライバ5及びセグメント用ドライバ6に対して同時に行われる。これにより、ドットマトリクス部3及びセグメント部4の輝度を合わせることができる。ここでは、通常時を高輝度発光モード、ディミング時を低輝度発光モードとする。すなわち、ドットマトリクス用ドライバ5及びセグメント用ドライバ6にディミング指示が行われると高輝度発光モードから低輝度発光モードに切り替わる。そして、ディミング指示が解除されると低輝度発光モードから再び高輝度発光モードに切り替わる。このように、発光モードを切り替えることによって、同じ表示データでも、輝度が変化する。すなわち、同じ表示データでも高輝度発光モードのほうが低輝度発光モードよりも高輝度で発光される。グラフィックメモリ14は、ドットマトリクス部3及びセグメント部4への表示データを記憶し、1画像ごとに各種信号をドットマトリクス用ドライバ5及びセグメント用ドライバ6へ送信する。
【0042】
ドットマトリクス用ドライバ5は、有機EL表示装置のドットマトリクス部3に走査信号、表示信号等を出力する。走査信号及び表示信号はパルス信号として出力される。また、ドットマトリクス用ドライバ5は、電流値制御回路15を有し、コマンドレジスタ13からのディミング指示を受け、電流値を可変させることにより輝度を制御することができる。セグメント用ドライバ6は、有機EL表示装置のセグメント部4にコモン信号、セグメント信号等を出力する。また、セグメント用ドライバ6は、PWM制御回路16を有し、コマンドレジスタ13からのディミング指示を受け、パルス幅変調(PWM)させることによって輝度を制御することができる。車載に用いられる有機EL表示装置の場合、ディミング指示は、例えばバックライトのオン/オフに基づいて行われる。バックライトをオンにするとき、ディミングを開始させ、バックライトをオフにするとき、ディミングを終了させる。ディミング指示はこれに限らず、外光を検知することにより行ってもよい。この場合、閾値が設定され、閾値より外光の光量が少なくなるとディミングを開始させ、閾値より外光の光量が多くなるとディミングを終了させる。すなわち、コマンドデコーダ12には、バックライトをオン/オフする信号等が送信される。
【0043】
ここで、図5及び図6を参照してドットマトリクス用ドライバ5及びセグメント用ドライバ6の詳細について説明する。図5は、ドットマトリクス用ドライバ5の構成を示す図である。図6は、セグメント用ドライバ6の構成を示す図である。図5では、ドットマトリクス用ドライバ5から有機EL表示パネル1のドットマトリクス部3のデータ線に表示信号が出力される。図6では、セグメント用ドライバ6から有機EL表示パネル1のセグメント部4のセグメント線にセグメント信号が出力される。
【0044】
ドットマトリクス用ドライバ5は、電流値制御回路15、ON/OFF制御回路17等を備える。ドットマトリクス用ドライバ5は、パルス信号(第2パルス信号)である表示信号及び走査信号によってドットマトリクス部3の有機EL素子115をパッシブマトリクス駆動させる。また、ドットマトリクス用ドライバ5は、セグメント部4の有機EL素子115より高いデューティで駆動させる。電源11からは、ドットマトリクス部3の各データ線に定電流が供給される。ドットマトリクス用ドライバ5は表示データに応じた表示信号を各データ線に出力して電流を制御する。ON/OFF制御回路17は、各データ線に対応してスイッチが設けられ、定電流を供給するか否か(オン又はオフ)を切り替える。また、走査線には走査信号が出力され、走査線を順次選択する。これにより、有機EL素子115を選択発光させることができる。電流値制御回路15は、上記のようにディミング指示を受けてパルス信号(第2パルス信号)の高さ、具体的にはデータ線に供給される表示信号のパルスの高さを変化させることにより、輝度を制御する。すなわち、電流値を可変させて輝度を制御する。このとき、1フレームにおける電流印加時間の割合はデューティ比と同じ値となる。具体的には、ディミング指示があったら、リファレンス電流値を下げて輝度を低くする。また、ディミング指示が解除されたら、リファレンス電流値を元に戻し、輝度をディミング時より高くする。しかし、1フレームにおける電流印加時間の割合は変更しない。
【0045】
セグメント用ドライバ6は、PWM制御回路16、ON/OFF制御回路17等を備える。セグメント用ドライバ6は、パルス信号によってセグメント部4の有機EL素子115を駆動させる。電源11からは、セグメント部4の各セグメント線に定電流が供給される。ON/OFF制御回路17は、各セグメント線に対応してスイッチが設けられ、定電流を供給するか否か(オン又はオフ)を切り替える。コモン線には一定のコモン信号が供給される。セグメント信号を制御するPWM制御回路16は、上記のようにディミング指示を受けて有機EL素子115に出力するセグメント信号のパルス幅を可変させて輝度を制御する。具体的には、ディミング指示があったら、ON/OFF制御回路17によってパルス幅を短くし、輝度を低くする。また、ディミング指示が解除されたら、パルス幅を元に戻し、輝度をディミング時より高くする。すなわち、非ディミング時(通常時)は、スタティック駆動のデューティ比が1/1となり、1フレーム期間の間セグメント信号が供給され、ディニング時には、PWMによって1フレーム期間にセグメント信号の供給幅を小さくし、1フレームにおける電流印加時間の割合を非ディミング時に比べて少なくしている。このように、電流印加時間の割合を小さくして、ドットマトリクス部3の電流印加時間の割合に近似させることにより、デューティが異なるドットマトリクス部3とセグメント部4との輝度及び色度をあわせることができる。また、ディミング時には、セグメント信号をパルス信号(第1パルス信号)とする。本実施の形態にかかる有機ELドライバ2は上記のように構成される。
【0046】
次に、上記の有機ELドライバ2を用いた有機EL表示パネル1の通常時の駆動について説明する。ここでは、ドットマトリクス部3をパッシブマトリクス駆動、セグメント部4をスタティック駆動させて表示を行っている。パッシブマトリクス駆動では、画素114の1列単位に走査線が接続され、走査線を順次選択し、その走査線選択時に各画素114に対応するデータ線に表示電圧を印加する。このように時分割的に駆動させるため、全走査線数をN(Nは1より大きい整数)とした場合、1フレーム期間の1/Nの時間ずつ各走査線に電圧が印加される。すなわち、デューティ比は1/Nがとなる。ここで、1フレーム期間とは、全走査線を選択して表示電圧の印加が完了するまでの期間のことである。そして、1フレーム期間ごとに1つの画像が表示される。
【0047】
このように、パッシブマトリクス駆動の場合、1フレーム期間の1/Nの時間しか電圧が印加されない、すなわち1フレームにおける電流印加時間の割合は1/Nしかないので、実際の輝度を1フレーム期間全体で目的とする輝度のN倍にする必要がある。ここで、実際の輝度を素子輝度(瞬間輝度)、目的とする輝度を設定輝度とする。このように、素子輝度は設定輝度より高く定める必要があるため、それに応じて電流密度も高くする必要がある。ここで、電流密度とは、単位面積あたりの電流量のことである。なお、ここでの電流密度とは瞬間電流密度のことを示す。
【0048】
一方、スタティック駆動では、それぞれの陰極105に対して電流を供給することができるので、パッシブマトリクス駆動における1フレーム期間中連続して電圧を印加させることができる。このため、設定輝度と素子輝度は同じ値になり、電流密度を高くする必要がない。このため、例えばパッシブマトリクス駆動させるドットマトリクス部3と、スタティック駆動させるセグメント部4とを同じ設定輝度で表示させようとした場合、素子輝度はセグメント部4よりもドットマトリクス部3のほうをN倍高くする。このため、セグメント部4の電流密度と比べて、ドットマトリクス部3の電流密度を高くする必要がある。すなわち、ドットマトリクス部3の電流密度と、セグメント部4の電流密度とは異なっている。なお、素子輝度とその素子輝度に対応する電流密度とは、略比例関係となるが、デューティが高くなるほど効率が下がるため、電流密度は少し高めに設定する。
【0049】
次に、ディミング時の駆動について説明する。本実施の形態では、上記のようにドットマトリクス部3では、電流値制御回路15によってリファレンス電流値を小さくすることによって輝度を低くする。これにより、同じ表示データの場合でもディミング時には通常時よりも電流値が小さくなる。また、セグメント部4では、PWM制御回路16によってパルス幅を短くする、すなわち1フレーム期間における電流印加時間の割合を小さくすることによって輝度を低くする。すなわち、ドットマトリクス部3では、電流が印加される時間が変化せず、電流値が小さくなる。これによって、有機EL素子115の電流密度が小さくなる。一方、セグメント部4では、電流が印加される時間が短くなり、ディミング時の設定輝度は、通常時の設定輝度より低くなるが、ディミング時の素子輝度は、通常時の素子輝度とあまり変化しない。従って、セグメント部4では、通常時とディミング時の電流密度があまり変化しない。すなわち、ドットマトリクス部3では、通常時において高かった電流密度がディミング時には低くなる。また、セグメント部4では、通常時において低かった電流密度がディミング時にもあまり変化しない。このため、通常時におけるドットマトリクス部3とセグメント部4の電流密度の差は、ディミング時には小さくなる。これにより、図7に示された色度の電流依存性の影響を受けにくくすることができる。図7においては、本実施の形態で用いられる有機EL素子115の色度の電流依存性を示している。すなわち、ドットマトリクス部3とセグメント部4との有機EL素子115の発光色に違いがほとんどなく、略均一な表示を得ることができる。また、表示される色が設定された色(本実施の形態では白色)から大きく外れることがない。これにより、視認性が向上し、表示特性を良好にすることができる。
実施例1.
【0050】
128×16のドットマトリクス部3と、64セグメントのセグメント部4が混在した有機EL表示パネル1を作成した。すなわち、ドットマトリクス部3では、データ線が128本、走査線が16本となっており、画素数が128×16である。ドットマトリクス部3では、パッシブマトリクス駆動をしており、デューティ比は、1/16である。また、セグメント部4では、コモン線が1本、セグメント線が64本となっており、画素数が64である。セグメント部4では、スタティック駆動をしており、デューティ比は1である。
【0051】
ここで、通常時の設定輝度を300cd/m、ディミング時の設定輝度を15d/mとした。また、有機EL表示パネル1に貼付した円偏光板110の透過率を40%、ドットマトリクス部3の開口率を80%とした。素子輝度は(設定輝度)÷(偏光板の透過率)÷(デューティ比)÷(開口率)となるので、通常時の場合、ドットマトリクス部3の素子輝度は15000cd/mとなった。また、セグメント部4では、開口率が100%となり、上記の式よりセグメント部4の素子輝度は750cd/mとなった。
【0052】
ドットマトリクス部3では、素子輝度が15000cd/mなので、電流密度は175mA/cmとなった。セグメント部4では、素子輝度が750cd/mなので、電流密度は7.5mA/cmとなった。ドットマトリクス部3では、電流密度が175mA/cmなので、図7より色度のx値、y値がそれぞれ0.31、0.33であった。セグメント部4では、電流密度が7.5mA/cmなので、図7より色度のx値、y値が0.30、0.32であった。
【0053】
次に、ドットマトリクス部3では電流値制御、セグメント部4ではパルス幅制御(PWM)によって、ディミングを行った。なお、セグメント部4のセグメント信号のパルス幅は、ドットマトリクス部3における1フレーム期間の1/20にし、1フレーム当たりの電流印加時間の割合を1/20にした。すなわち、セグメント部4のデューティ比が見かけ上1/20となるように発光する。ディミング時の場合、設定輝度は15cd/mなので、ドットマトリクス部3の素子輝度は750cd/mとなった。また、セグメント部4の素子輝度も750cd/mとなった。
【0054】
ドットマトリクス部3及びセグメント部4の素子輝度が750cd/mなので、電流密度は共に7.5mA/cmとなった。ドットマトリクス部3及びセグメント部4で電流密度が同じ値なので、色度のx値、y値も共に0.30、0.32であった。
比較例1.
【0055】
実施例1と同様、128×16のドットマトリクス部3と、64セグメントのセグメント部4が混在した有機EL表示パネル1を作成した。ドットマトリクス部3では、パッシブマトリクス駆動をしており、デューティ比は、1/16である。また、セグメント部4では、スタティック駆動をしており、デューティ比は1である。通常時は、実施例1と同様に駆動させているので、実施例1と同様の結果となる。
【0056】
比較例1では、ディミングをドットマトリクス部3、セグメント部4共に電流値制御によって行った。すなわち、セグメント部4のセグメント信号のパルス幅は通常時と変わらず、1フレーム当たりの電流印加時間の割合も変わらない。よって、ディミング時の場合、設定輝度は15cd/mなので、ドットマトリクス部3の素子輝度は750cd/m、セグメント部4の素子輝度は37.5cd/mとなった。
【0057】
ドットマトリクス部3では、素子輝度が750cd/mなので、電流密度は7.5mA/cmとなった。セグメント部4では、素子輝度が37.5cd/mなので、電流密度は0.42mA/cmとなった。ドットマトリクス部3では、電流密度は7.5mA/cmなので、図7より色度のx値、y値がそれぞれ0.30、0.32であった。セグメント部4では、電流密度は0.42mA/cmなので、図7より色度のx値、y値が0.27、0.33であった。以上の結果を表1に示す。表1は、通常時、実施例1及び比較例1のディミング時のドットマトリクス部3及びセグメント部4の色度を示す表である。
【0058】
【表1】

【0059】
表1から分かるように、ディミング時において、実施例1ではドットマトリクス部3及びセグメント部4の色度が同じ値になったのに対して、比較例1ではドットマトリクス部3と、セグメント部4とは色度が異なる値になった。これは、実施例1では、ドットマトリクス部3及びセグメント部4の電流密度が7.5mA/cmだったのに対して、比較例1ではドットマトリクス部3の電流密度が7.5mA/cm、セグメント部4の電流密度が0.42mA/cmであったためである。図7に示されるように、有機EL素子115の発光色は電流値に依存する。すなわち、ドットマトリクス部3とセグメント部4との電流密度の差が、比較例1より実施例1の方が小さいため、色度の違いも小さく(ここでは等しく)することができる。
【0060】
図7に示される色度の電流依存性は、有機EL素子115によって異なるが、電流値が低電流になるほど、色変化の度合いが大きくなる。これは、本実施の形態のように、有機EL素子115の発光層が2層以上の積層構造になっている場合に生じやすい。ここでは、特に色度の変化が大きくなる領域を低電流領域という。本実施の形態、すなわち図7に示された場合では、1mA/cmより電流密度が小さい領域が低電流領域となる。比較例1のように、セグメント部4でも電流値制御によって輝度を小さくすると、通常時においても小さかった電流密度がさらに小さくなり、低電流領域にシフトしてしまう。このため、色度の変化も特に大きくなってしまい、好ましくない。そこで、実施例1のように、セグメント部4をPWM制御によって輝度を小さくすると、電流密度が比較例1ほど小さくならず低電流領域にシフトしにくい。すなわち、本実施の形態によれば、有機EL素子115に供給される電流密度を低電流領域以上、具体的には1mA/cm以上にすることができる。
【0061】
実施の形態2.
本実施の形態では、セグメント部4の駆動方法以外、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。本実施の形態では、セグメント部4がスタティック駆動ではなく、マルチプレックス(ダイナミック)駆動とする。これは、ドットマトリクス部3のパッシブマトリクス駆動と同様の駆動方法である。ただし、セグメント部4のデューティは、ドットマトリクス部3のように高くなく、1/2、1/4等の極めて低いデューティである。本実施の形態では、ドットマトリクス部3を高デューティ(例えば1/50以上)で駆動させるのが好ましい。
【0062】
セグメント部4をマルチプレックス駆動させる場合、実施の形態1のように全ての陽極102を1本の陽極補助配線107によって接続するのではなく、複数の陽極102又は陰極105のうちいくつかを選択して複数の陽極補助配線107又は陰極補助配線109に接続する。図3に示されたセグメント部4の場合、例えば4つの陽極102のうち2つを1本の陽極補助配線107、他の2つを他の1本の陽極補助配線107に接続する。もちろん、接続する陽極102又は陰極105はどのように選択してもよい。そして、対向配置される陽極102と陰極105に同時に電圧が印加されたときのみ対応する有機EL素子115が発光する。本実施の形態においても、ドットマトリクス部3を電流値制御、セグメント部4をPWM制御することにより、ディミングさせる。そして、以下に示すように、ディミング時においても、ドットマトリクス部3とセグメント部4との色度の変化を抑制することができる。
実施例2.
【0063】
128×64のドットマトリクス部3と、64セグメントのセグメント部4が混在した有機EL表示パネル1を作成した。すなわち、ドットマトリクス部3では、データ線が128本、走査線が64本となっており、画素数が128×64である。ドットマトリクス部3では、パッシブマトリクス駆動をしており、デューティ比は、1/64である。また、セグメント部4では、画素数が64である。セグメント部4では、実施例1と異なり、マルチプレックス駆動をしており、デューティ比は1/2である。
【0064】
ここで、通常時の設定輝度を300cd/m、ディミング時の設定輝度を15cd/mとした。また、有機EL表示パネル1に貼付した円偏光板110の透過率を40%、ドットマトリクス部3の開口率を80%とした。素子輝度は設定輝度÷偏光板の透過率÷デューティ比÷開口率となるので、通常時の場合、ドットマトリクス部3の素子輝度は60000cd/mとなった。また、セグメント部4では、開口率が100%であり、上記の式よりセグメント部4の素子輝度は1500cd/mとなった。
【0065】
ドットマトリクス部3では、素子輝度が60000cd/mなので、電流密度は800mA/cmとなった。セグメント部4では、素子輝度が1500cd/mなので、電流密度は16mA/cmとなった。ドットマトリクス部3では、電流密度が800mA/cmなので、図7より色度のx値、y値がそれぞれ0.31、0.33であった。セグメント部4では、電流密度が16mA/cmなので、図7より色度のx値、y値が0.30、0.32であった。
【0066】
次に、ドットマトリクス部3では電流値制御、セグメント部4ではパルス幅制御(PWM)によって、ディミングを行った。なお、セグメント部4のセグメント信号のパルス幅は、1フレーム期間の1/40に制御した。つまり、1本のコモン線に電圧を印加するセグメント部4の1選択期間の1/20に制御した。すなわち、1フレーム当たりの電流印加時間の割合を1/40にし、セグメント部4のデューティ比が見かけ上1/40となるように発光するようにした。ディミング時の場合、輝度は15cd/mなので、ドットマトリクス部3の素子輝度は3000cd/mとなった。また、セグメント部4の素子輝度は1500cd/mとなった。
【0067】
ドットマトリクス部3の素子輝度は3000cd/mなので、電流密度は32mA/cmとなった。セグメント部4の素子輝度が1500cd/mなので、電流密度は16mA/cmとなった。ドットマトリクス部3では、電流密度が32mA/cmなので、図7より色度のx値、y値がそれぞれ0.31、0.32であった。セグメント部4では、電流密度が16mA/cmなので、図7より色度のx値、y値が0.30、0.32であった。以上の結果を表2に示す。表2は、実施例2の通常時、ディミング時のドットマトリクス部3及びセグメント部4の色度を示す表である。
【0068】
【表2】

【0069】
表2から分かるように、ディミング時においてドットマトリクス部3及びセグメント部4の色度にほとんど差がなかった。これは、ディミング時においてドットマトリクス部3及びセグメント部4の電流密度の差を小さくすることができたためである。実施例2において、通常時にはセグメント部4の電流密度がドットマトリクス部3の電流密度の1/40倍であったが、ディミング時にはセグメント部4の電流密度がドットマトリクス部3の電流密度の1/2倍と双方の電流密度の差を小さくすることができた。また、実施例1と同様、電流密度が低電流領域にシフトしにくくなり、色度の変化を抑えることができる。すなわち、本実施の形態でも、有機EL素子115に供給される電流密度を低電流領域以上、具体的には1mA/cm以上にすることができる。このように、本実施の形態によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0070】
上記のように、セグメント部4とドットマトリクス部3の駆動方法は限定されることはなく、セグメント部4の有機EL素子115はドットマトリクス部3の有機EL素子115のデューティより小さければ適用可能である。また、ディミング時(低輝度モード)において、(ドットマトリクス部3の有機EL素子115の1フレームにおける電流印加時間の割合)/(セグメント部4の有機EL素子115の1フレームにおける電流印加時間の割合)≧1/50とするのが好ましい。すなわち、ディミング時に電流印加時間の差を小さくすればよい。また、表示方式も一方をセグメント方式、他方をドットマトリクス方式にする必要もなく、例えばいずれもセグメント方式で表示してもよい。さらには、表示領域を3箇所以上に設け、それぞれ異なるデューティ比で駆動させてもよい。この場合、ディミング時に電流密度の差が小さくなるように、制御方法を適宜選択することにより、色度の変化を小さくすることができる。
【0071】
また、ドットマトリクス部3の制御方法は、電流値制御に限られず、電荷制御によって輝度を変化させてもよい。電荷制御では、選択期間中に、選択期間よりも短い駆動期間を選択し、駆動期間において画素に投入される電荷の量を設定輝度に応じた量に制御する。また、ドットマトリクス部3もPWM制御することにより輝度を低下させることも考えられるが、クロストーク等が発生しやすくなり、好ましくない。本実施の形態のように、ドットマトリクス部3を電流値制御することにより、クロストークが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施の形態1にかかる有機EL表示装置の概略図である。
【図2】実施の形態1にかかるドットマトリクス部の有機EL素子の構成を示す断面図である。
【図3】実施の形態1にかかる有機EL素子が形成されている素子基板の要部を示す平面図である。
【図4】実施の形態1にかかる有機ELドライバの構成を示す概略ブロック図である。
【図5】実施の形態1にかかるドットマトリクス用ドライバの構成を示す図である。
【図6】実施の形態1にかかるセグメント用ドライバの構成を示す図である。
【図7】電流密度による色度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0073】
1 有機EL表示パネル、2 有機ELドライバ、3 ドットマトリクス部、
4 セグメント部、5 ドットマトリクス用ドライバ、6 セグメント用ドライバ、
10 インターフェース、11 電源、12 コマンドデコーダ、
13 コマンドレジスタ、14 グラフィックメモリ、15 電流値制御回路、
16 PWM制御回路、17 ON/OFF制御回路、
101 素子基板、102 陽極、103 絶縁層、104 有機層、
105 陰極、106 封止基板、107 陽極補助配線、108 陽極接続端子、
109 陰極補助配線、110 円偏光板、111 隔壁、112 捕水材、
113 接着材、114 画素、115 有機EL素子、117 TCP、118 ACF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた低デューティの第1有機EL素子と前記基板上にマトリクス状に設けられるとともに前記第1有機EL素子よりも高いデューティの第2有機EL素子を駆動させる有機ELドライバであって、
前記第1有機EL素子を駆動させ、前記第1有機EL素子に出力する第1パルス信号のパルス幅を変化させることにより輝度を制御する第1ドライバと、
第2パルス信号によってダイナミック駆動させ、前記第2パルス信号の高さを変化させることにより輝度を制御する第2ドライバとを有する有機ELドライバ。
【請求項2】
前記第1有機EL素子に供給する瞬間電流密度が1mA/cm以上である請求項1に記載の有機ELドライバ。
【請求項3】
高輝度発光モードで発光される輝度よりも低輝度で発光される低輝度発光モードにおいて、(前記第2有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)/(前記第1有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)≧1/50である請求項1又は2に記載の有機ELドライバ。
【請求項4】
基板上に設けられた低デューティの第1有機EL素子と、
前記基板上にマトリクス状に設けられるとともに前記第1有機EL素子よりも高いデューティの第2有機EL素子と、
前記第1有機EL素子を駆動させ、前記第1有機EL素子に出力する第1パルス信号のパルス幅を変化させることにより輝度を制御する第1ドライバと、
第2パルス信号によってダイナミック駆動させ、前記第2パルス信号の高さを変化させることにより輝度を制御する第2ドライバとを有する有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第1有機EL素子及び前記第2有機EL素子の発光層が2層以上の積層構造になっている請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第1有機EL素子に供給する瞬間電流密度が1mA/cm以上である請求項4又は5に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
高輝度発光モードで発光される輝度よりも低輝度で発光される低輝度モードにおいて、(前記第2有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)/(前記第1有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)≧1/50である請求項4乃至6のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
基板上に設けられた低デューティの第1有機EL素子と前記基板上にマトリクス状に設けられるとともに前記第1有機EL素子よりも高いデューティの第2有機EL素子を駆動させる有機EL表示装置の駆動方法であって、
高輝度発光モードにおいて、前記第1有機EL素子及び前記第2有機EL素子をそれぞれのデューティ比において駆動させる工程と、
前記高輝度発光モードで発光される輝度よりも低輝度で発光される低輝度発光モードにおいて、第1パルス信号のパルス幅を変化させることにより前記第1有機EL素子の輝度を制御する工程と、第2パルス信号のパルス高さを変化させることにより前記第2有機EL素子の輝度を制御する工程とを有する有機EL表示装置の駆動方法。
【請求項9】
前記第1有機EL素子に供給する瞬間電流密度が1mA/cm以上である請求項8に記載の有機EL表示装置の駆動方法。
【請求項10】
前記低輝度発光モードにおいて、(前記第2有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)/(前記第1有機EL素子の1フレームにおける電流印加時間の割合)≧1/50である請求項8又は9に記載の有機EL表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−209833(P2008−209833A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48709(P2007−48709)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】