説明

有機ELパネルの点灯制御装置

【課題】有機ELパネル駆動時の異常を的確に検知することで、安全性を向上させた点灯制御装置を提供する。
【解決手段】点灯制御装置は、有機ELパネルを駆動するための電力を前記有機ELパネルに供給する電源部と、前記有機ELパネルに流れる電流値を検出する電流検出部と、前記有機ELパネルに印加された電圧値を検出する電圧検出部と、前記電流検出部及び前記電圧検出部で検出された電流値及び電圧値が、前記有機ELパネルの電圧−電流特性曲線に基づいて規定される電圧−電流平面上の安全領域に含まれるか否かを判定し、前記検出された電流値及び電圧値が、前記安全領域を外れたと判定された場合、前記電源部から前記有機ELパネルへの電力供給を停止させる制御部とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護機能を備えた有機ELパネルの駆動に用いる点灯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白熱灯に代わる次世代の照明として、LED電球と共に、有機ELパネルが注目されている。有機ELパネルは、軽量且つ薄型の照明であるため、一般的な住居やオフィスばかりでなく、航空機内など、スペースが制限される環境でも設置が容易である。また、白熱灯と比べると、高エネルギー効率、水銀レスといった特長を有しており、環境に優しい照明と言える。
【0003】
最近では、有機ELパネルが実用化されつつあり、それに伴い、素子の輝度がばらついた際にそのばらつきを補正する点灯制御装置や、有機ELパネルの長寿命化を図る点灯制御装置などが提案されている(特許文献1等)。他方、実用化のためには安全面も考慮する必要がある。したがって、駆動制御装置には装置故障を防止するための保護機能も備える必要もある。この保護機能には当然、有機ELパネルの異常を検知する機能も必要であるが、従来ある保護機能の多くは、駆動電圧や駆動電流を単独で監視することで実現されている(特許文献2、3)。しかし、有機ELパネルは、駆動電流が駆動電圧に対して変化する電圧−電流特性曲線に基づいて動作する。したがって、駆動電圧を監視するのみでは十分に適正な異常検出はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−187467号
【特許文献2】特開2007−5257号
【特許文献3】特開2009−252454号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、有機ELパネル駆動時の異常を的確に検知することで、安全性を向上させた点灯制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る点灯制御装置は、有機ELパネルを駆動するための電力を前記有機ELパネルに供給する電源部と、前記有機ELパネルに流れる電流値を検出する電流検出部と、前記有機ELパネルに印加された電圧値を検出する電圧検出部と、前記電流検出部及び前記電圧検出部で検出された電流値及び電圧値が、前記有機ELパネルの電圧−電流特性曲線に基づいて規定される電圧−電流平面上の安全領域に含まれるか否かを判定し、前記検出された電流値及び電圧値が、前記安全領域を外れたと判定された場合、前記電源部から前記有機ELパネルへの電力供給を停止させる制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有機ELパネル駆動時の異常を的確に検知することで、安全性を向上させた点灯制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る点灯制御装置の機能ブロック図である。
【図2A】有機ELパネルの電圧−電流特性曲線を示すグラフである。
【図2B】同実施形態に係る点灯制御装置が定める安全領域と図2Aに示す有機ELパネルの電圧−電流特性曲線の関係を示すグラフである。
【図3】同実施形態に係る点灯制御装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る有機ELパネル用の点灯制御装置の機能ブロック図である。
【0011】
本点灯制御装置は、おおよそ、外部電源から有機ELパネル(以下、単に「パネル」と呼ぶ)の駆動に必要な直流の駆動電力を供給する電源部、この電源部が供給する駆動電力の電圧等を検出する各種検出部、前記電源部が供給する駆動電力の電流を調整する電流調整部、並びに、各種検出部の検出結果及び調整部の状態に基づいて電源部を制御する制御部を備える。
【0012】
先ず、本点灯制御装置は、電源部として、スイッチング部20を備える。このスイッチング部20は、DCジャック10を介して供給される外部電源からパネルの駆動に必要な駆動電力を生成するDC−DCコンバータである。この生成された駆動電力は、出力コネクタ30を介してパネルに供給される。出力コネクタ30は、4つのピン31〜34を有している。スイッチング部20からの駆動電力は、このうちピン31、32を介してパネルに供給される。ここで、電源部には、必要に応じて、過電流保護回路を設けても良い。この場合、パネルの不良に起因して出力コネクタ30のピン31、32が短絡した場合でも、点灯制御装置自体を保護することができる。なお、以下において、具体例として、外部電源の入力電圧を15V、スイッチング部20が生成する最大出力を電圧13V、電流1700mAとして説明する。
【0013】
また、本点灯制御装置は、各種検出部として、電流検出部40、及び電圧検出部60を備える。
【0014】
電流検出部40は、スイッチング部20と出力コネクタ30との間に直列に設けられ、パネルに流れる電流値を検出する。この電流検出部40が検出した電流値は、電流検出結果増幅部である電流フィードバック部50を介してスイッチング部20にフィードバックされる他、後述する制御部に出力される。ここで、電流フィードバック部50は、増幅器を備えており、電流検出部40が出力する電流値を増減させる機能を有する。
【0015】
電圧検出部60は、出力コネクタ30とスイッチング部20及び制御部90との間に設けられ、パネルへの印加電圧を検出する。この電圧検出部60が検出した電圧値は、スイッチング部20にフィードバックされる他、後述する制御部90に出力される。
【0016】
また、本点灯制御装置は、必要に応じてパネル種検出部70を備えても良い。このパネル種検出部70は、出力コネクタ30に接続されているパネルの種類(以下、「パネル種」と呼ぶ)を判別するものである。検出されたパネル種は、制御部に出力される。制御部は、この種類に応じてスイッチング部20の制御方法を切り替える。ここで、パネル種は、例えば、パネルに設けられるコネクタ(以下、パネル種コネクタ)の有無によって判別する。このパネル種コネクタが有る場合、出力コネクタ30のピン33、34間は短絡し、パネル種コネクタが無い場合、ピン33、34間は開放する。このピン33、34間の短絡/開放の状態を検出することで、2種類のパネルを自動で判別することが可能となる。なお、このピン33、34間に抵抗素子を設けるなどによって、3以上のパネル種を判別することも可能である。
【0017】
また、本点灯制御装置は、電流調整部として電流調整ボリューム80を備える。この電流調整ボリューム80は、電流フィードバック部50の増幅器の増幅率を調整すると同時に、制御部90に電流調整のための指令値を与える。これによって、パネルの輝度を調整することができる。
【0018】
最後に、本点灯制御装置は、制御部としてCPU90を備える。CPU90は、上述の電流検出部40(電流フィードバック部50)、電圧検出部60、パネル種検出部70からの検出結果、及び電流調整ボリューム80からの指令値に基づいて、スイッチング部20を制御する。この制御には、指令値に基づいて駆動電力の電流値を調整する他、パネルの異常を検出した場合、スイッチング部20からの駆動電力の供給を停止させるといったパネルを保護する制御も含まれる。
【0019】
次に、このCPU90が行うパネル保護方法について説明する。
【0020】
このCPU90は、電流検出部40が検出した電流値と電圧検出部60が検出した電圧値の組み合わせが、安全領域内にあるか否かを判断し、安全領域外であった場合には、スイッチング部20からの駆動電力の供給を停止させる。ここで、安全領域とは、パネルが持つ電圧−電流特性曲線に基づいて定められる電圧−電流平面上の領域であって、パネルが正常且つ安全に動作することができる領域である。
【0021】
図2Aは、パネルの電圧−電流特性曲線を示すグラフの具体例である。また、図2Bは、パネルの電圧−電流特性曲線と安全領域との関係を示すグラフの具体例である。上述の通り、この点灯制御装置の最大出力は13V(図2Bに示すC1)、1700mA(図2Bに示すC2)となっている。
【0022】
始めに、正常なパネルの動作について説明する。
【0023】
点灯制御装置のスイッチング部20が駆動電力の供給を開始し、この駆動電圧が7.2Vに達するとパネルが発光する(図2A、図2Bに示す発光開始電圧B3)。例えば、発光開始時のパネル温度が25℃であった場合、発光開始から暫くの間は、図2A、図2Bに示す電圧−電流特性曲線B1に沿った駆動電流・駆動電圧で動作する。その後、パネル自身の発熱の影響でパネル温度が上昇する。この場合、電圧−電流特性曲線は、電圧−電流特性曲線B1の位置から矢印B4に示す低電圧方向に次第にシフトして行き、パネル温度が55℃に達した時点で、電圧−電流特性曲線B2の位置になる。
【0024】
続いて、故障したパネルの動作について説明する。
【0025】
パネルの特定箇所への衝撃や、部品不良などに起因して部分的にパネルに故障が生じた場合、部分的な異常発熱により、パネルの焼損等に至るケースがある。その際にポイント破壊が発生すると、駆動電圧が低下する傾向にある。したがって、パネルが故障したか否かは、駆動電圧が所定の閾値電圧よりも低下したか否かで判断することができる。しかし、図2A、図2Bに示す電圧−電流特性曲線B1、B2から分かるように、駆動電圧・駆動電流は正の相関関係に有り、且つ、駆動電流は、駆動電圧に対して指数関数的に上昇する関係に有る。この場合、駆動電圧が同じであっても、パネルが正常動作しているか否かは、その時の駆動電流によって異なる。したがって、駆動電圧を監視するだけではパネルの状態を的確に把握することはできない。そこで、本実施形態では、電圧・電流が正の相関関係に有るカット閾値を設定する。このカット閾値は、予め設定した複数の基準点を線で結んだものであり、パネルの安全領域と危険領域を区画するものである。図2Bに示す場合、パネルに対応するカット閾値B5が設定されている。
【0026】
具体的には、パネルのカット閾値B5は、3つの基準点(6.5V、0mA)、(8V、500mA)、(9V、2000mA)をそれぞれ直線で結んだ折れ線となる。そして、このカット閾値B5の低電圧側(図2Bの左側)が、パネルに異常があると判断する危険領域、高電圧側(図2Bの右側)が、パネルが正常であると判断する安全領域となる。したがって、例えば、9V付近の駆動電圧でパネルが駆動している場合、駆動電流が500mA程度であれば、パネルが安全領域で正常に動作していると判断する。一方、駆動電流が1500mA程度あった場合、パネルが危険領域で動作していることになり、何らかの異常が発生したと判断する。
【0027】
以上説明したような領域設定によれば、電圧−電流平面上の動作領域のうち、閾値電圧及び閾値電流が示す2本の直交する直線で安全領域と危険領域を区画する場合に比べ、パネルの電圧−電流特性曲線を考慮した領域設定ができる。
【0028】
なお、図2Bの例では、点灯制御装置の最大出力の関係で、13Vよりも高電圧側、1700mAよりも大電流側には動作領域はない。したがって、カット閾値B5の設定は、最大電流として2000mAもあれば十分である。
【0029】
また、カット閾値をパネル種に応じて選択できるようにしても良い。これによって、電圧−電流特性曲線が異なる複数種類のパネルに対して、異なる安全領域、危険領域を設定することができ、パネル毎に最適な制御が可能になる。
【0030】
図3は、本実施形態に係る点灯制御装置のフローチャートである。
【0031】
先ず、ステップS1で、点灯制御装置の電源が投入された後、ステップS2で、点灯制御装置の初期設定が行われる。この初期設定では、必要に応じてCPU90が、パネル種検出部70を介して、出力コネクタ30に接続されたパネル種を認識する。例えば、パネルが有するパネル種コネクタで出力コネクタ30のピン33、34が短絡されている場合、ある種のパネルXが接続されていると認識し、逆に、ピン33、34が開放されている場合、パネルXと異なるパネルYが接続されていると認識する。
【0032】
続いて、ステップS3で、CPU90は、電流検出部40(電流フィードバック50)、電圧検出部60、及び電流調整ボリューム80が検知又は出力した駆動電流、駆動電圧、及び指令値から、無負荷かどうかを判定する。ここで、無負荷の場合、更にステップS3を繰り返す。一方、負荷がある場合、つまり、パネルが接続されている場合、CPU90における処理は、次のステップS4に遷移する。
【0033】
ステップS4では、必要に応じてステップS1で認識したパネル種に基づいて処理が分けられる。例えばパネルXの場合、CPU90は、後述するステップS6〜S8を実行し、パネルYの場合は、CPU90は、後述するステップS9〜ステップS11を実行する。
【0034】
パネルXの場合、ステップS6で、パネルXに対応した基準点から、閾値電流を算出する。そしてステップS7で、この算出した閾値電流と、ステップS3で求めた駆動電流とを比較し、パネルXが危険領域で駆動しているか否かを判定する。ここでもし危険領域にあった場合、ステップS8で、駆動電力の供給を停止し、パネルXを消灯させる。一方、安全領域にあった場合、さらに、パネルXの状態の監視を継続すべくステップS3からの処理を繰り返す。
【0035】
なお、パネルYの場合、ステップS9で用いる基準点が異なる以外は、ステップS6〜S8と同様であるため説明を省略する。
【0036】
以上、本実施形態に係る点灯制御装置によれば、パネルの電圧−電流特性曲線に基づいて、安全領域の閾値を折れ線で設定しているため、パネルの異常発生時に、より適正な安全領域で出力を停止させることができる。また、閾値となる基準点をパネル種毎に設けることで、複数のパネルに対する適切な点灯制御が可能である。さらに、パネル種検出部によってパネル種を自動的に判別できるため、ユーザの誤設定に起因した点灯制御装置の誤動作を防止することができる。
【0037】
[その他]
以上、発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。
【0038】
上記実施形態では、複数の基準点間を直線で結んだ例を説明したが、これとは異なり、基準点間を曲線で結んでも良い。また、上記実施形態では、パネル種毎の基準点が3点ずつ設定されていたが、これとは異なり、基準点が4点以上設定されていても良い。これらの場合、制御部での処理量は増えるが、より適正化された安全領域、危険領域の設定が可能となり、安全性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
10・・・電源入力(DCジャック)、20・・・スイッチング部、30・・・出力コネクタ(4ピンコネクタ)、40・・・電流検出部、50・・・電流フィードバック部、60・・・電圧検出部、70・・・パネル種検出部、80・・・電流調整ボリューム、90・・・制御部(CPU)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ELパネルを駆動するための電力を前記有機ELパネルに供給する電源部と、
前記有機ELパネルに流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記有機ELパネルに印加された電圧値を検出する電圧検出部と、
前記電流検出部及び前記電圧検出部で検出された電流値及び電圧値が、前記有機ELパネルの電圧−電流特性曲線に基づいて規定される電圧−電流平面上の安全領域に含まれるか否かを判定し、前記検出された電流値及び電圧値が、前記安全領域を外れたと判定された場合、前記電源部から前記有機ELパネルへの電力供給を停止させる制御部と
を備えたことを特徴とする点灯制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記有機ELパネルの電圧−電流特性曲線に基づいて定められた前記有機ELパネルの電圧−電流平面上の複数の基準点を曲線もしくは直線で結んで前記安全領域を定める
ことを特徴とする請求項1記載の点灯制御装置。
【請求項3】
前記有機ELパネルの種類を検出する種類検出部を備え、
前記制御部は、前記種類検出部の検出結果に基づいて、前記安全領域を変更する
ことを特徴とする請求項1又は2項記載の点灯制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記種類毎に異なる前記基準点の組を有する
ことを特徴とする請求項3記載の点灯制御装置。
【請求項5】
前記電流検出部の検出結果を増減させて、この増減させた検出結果を前記制御部に出力する電流検出結果増幅部と
前記電流検出結果増幅部の増減率を調整する電流調整部と
を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の点灯制御装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−222341(P2011−222341A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91141(P2010−91141)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000103633)オーデリック株式会社 (10)
【出願人】(510038670)Lumiotec株式会社 (5)
【Fターム(参考)】