説明

有機EL素子の封止膜、有機EL表示パネルおよびその製造方法

【課題】 衝撃等に対する耐久性を維持しつつ、クラックの発生を効果的に防止することができ、これにより有機EL素子を長期にわたって湿気、酸素から保護することにより信頼性を向上させることができる封止膜、および有機EL表示パネル並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】 基板3に搭載された有機EL素子4を被覆して封止する。窒化シリコンからなる第2バリヤ層51と、この第2バリヤ層51の内側に配設され当該バリヤ層53が積層される窒酸化シリコンからなる応力緩和層52とを含む複数層から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子を湿気、酸素から保護するために当該有機EL素子を被覆封止する有機EL素子の封止膜およびこれを用いて有機EL素子を封止した有機EL表示パネル並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルミニウムキノリノール錯体などの有機化合物を発光材料とする有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を用いた有機EL表示パネルが注目を浴びている。このパネルに用いられる有機EL素子は、応答速度が速く、視野角も広いとともに、自己発光型であるためバックライトを不要とし表示パネルに使用した場合にはこのパネルの薄型、軽量化に貢献できるという種々の利点がある。反面、この有機EL素子は、湿気や酸素によってその構成材料の構造が変化することにより劣化し、表示パネルにおいていわゆるダークスポット(発光欠陥点)が生じるという問題がある。従って、この種の分野では、有機EL素子を湿気、酸素から保護して長寿命化を図るため、当該素子を封止する技術の研究が盛んに行われている。
【0003】
従来、この種の封止構造として、有機EL素子をシリコンの酸化膜(SiOx)、窒酸化膜(SiOxNy)や窒化膜(SiNx)のいずれかの単層膜によって封止するものが知られている。これらの封止膜のうち、シリコン窒化膜(SiNx膜)は、湿気、酸素の透過率が非常に低いうえ、光学的な透過率が高いことから、有機EL素子の封止膜として注目されている。
【0004】
ここで、これらの封止膜は、光学的な透過率や屈折率等の観点からは薄ければ薄いほど好ましいが、膜厚が薄くなりすぎると、外部衝撃に対する強度の低下が懸念される。従って、強度、信頼性を低下させない程度の膜厚にすることが求められる。しかしながら、シリコン窒化膜は、成膜後の残留応力がシリコン酸化膜やシリコン窒酸化膜に比べて大きいため、強度等を確保する程度にまで膜厚を大きくすると、当該残留応力に基づいて短期間にクラックを生じ、このクラックを通じて湿気や酸素が封止膜内に侵入し、却って有機EL素子の封止に対する信頼性を低下させる虞がある。
【0005】
この点、例えば特許文献1では、密度の高低に応じて残留応力が引張、圧縮応力になることに着目し、引張応力が残留するSiNx層と、圧縮応力が作用するSiNx層とを交互に積層させることにより、封止膜全体の残留応力を大きく低下させ、クラックの発生を効果的に抑制する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−63304号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の封止膜は、層間の残留応力を相殺することにより膜全体の残留応力を低下させるものと考えられるが、各層に全く正反対の残留応力が作用することから、経時に伴って層間剥離、すなわち正反対の応力が生じる各層が剥離する虞がある。このような層間剥離を生じると、この剥離部分が進行して封止膜にクラックとして表面化し、結果として、この特許文献1に記載の封止膜でも、封止に対する信頼性を充分に向上させることができるものではなかった。
【0007】
一方、シリコン酸化膜やシリコン窒酸化膜は、シリコン窒化膜に比べて成膜によって生じる残留応力が小さく、柔軟性に富む反面、湿気、酸素の透過率が劣るため、経時に伴って湿気、酸素が膜内に侵入することがあり、その信頼性に劣るという欠点がある。
【0008】
本発明は、このような事情のもとになされたものであり、衝撃等に対する耐久性を維持しつつ、クラックの発生を効果的に防止することができ、これにより有機EL素子を長期にわたって湿気、酸素から保護することにより信頼性を向上させることができる封止膜、および有機EL表示パネル並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明に係る有機EL素子の封止膜は、基板に搭載された有機EL素子を被覆して封止する封止膜において、窒化シリコンからなるバリヤ層と、このバリヤ層の内側に配設され当該バリヤ層が積層される窒酸化シリコンおよび酸化シリコンの少なくともいずれか一方の層からなる応力緩和層とを含む複数層から構成されることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、有機EL素子を被覆封止するための封止膜に、湿気、酸素の透過率が非常に低い窒化シリコン(SiNx)からなるバリヤ層を含むので有機EL素子を確実に封止することができ、これにより当該素子を湿気および酸素から有効に保護してその信頼性を向上させることができる。
【0011】
ここで、窒化シリコンからなるバリヤ層を形成する場合、衝撃等に対する物理的強度の向上と膜厚増に伴うクラック発生の防止との両立が問題になる。この点、本発明では、このバリヤ層の内側に、窒化シリコンよりも柔軟な窒酸化シリコン(SiOxNy)および酸化シリコン(SiOx)の少なくともいずれか一方の層からなる応力緩和層が配設され、この応力緩和層に上記バリヤ層が積層されているので、窒化シリコンからなるバリヤ層が単層で配設されているものに比べて、この応力緩和層でバリヤ層の成膜に伴う残留応力を吸収することができ、これによりバリヤ層を比較的厚く成膜することができる。しかも、応力緩和層を構成する窒酸化シリコンや酸化シリコンは、バリヤ層を構成する窒化シリコン膜よりも成膜に伴う残留応力が小さいので、バリヤ層よりも層厚を厚くすることができ、これによりたとえバリヤ層を薄く形成する場合でも物理的強度も向上させることができる。すなわち、バリヤ層の内側(基板側)に応力緩和層を設け、当該応力緩和層にバリヤ層を積層させるだけで、衝撃等に対する物理的強度の向上と、膜厚増に伴うクラック発生の防止を相乗的に達成することができ、これにより有機EL素子を長期にわたって湿気、酸素から保護することができ、これにより信頼性が飛躍的に向上する。
【0012】
なお、この明細書において、バリヤ層を構成する成分は、窒化シリコン以外の化合物を一切許さないというものではなく、窒化シリコンを主体とするものであればその特質を大幅に変化させない限りアモルファスシリコン(a−Si)、SiO2等の混合物であってもよい。また、応力緩和層についても同様である。
【0013】
上記封止膜の層の構成は、上記したように、応力緩和層の外側にバリヤ層を積層させる構成以外に特に限定するものではなく、応力緩和層を上記有機EL素子を直接被覆する第1層として構成するものであってもよいが、例えば、上記応力緩和層の内側に配設され当該応力緩和層が積層される窒化シリコンからなるバリヤ層をさらに含み、この応力緩和層の内側のバリヤ層が上記有機EL素子を直接被覆する第1層として構成されるのが好ましい(請求項2)。なお、この応力緩和層の内側に配設されるバリヤ層についても上記と同様に混合物であってもよい。
【0014】
すなわち、湿気、酸素の透過率について窒酸化シリコンや酸化シリコンは窒化シリコンよりも劣ることが知られており、経時に伴って応力緩和層の端縁から湿気等が侵入してくることも懸念される。従って、窒化シリコンからなるバリヤ層によって有機EL素子を直接被覆して、このバリヤ層に上記応力緩和層を積層させることにより、経時に拘わらず確実に有機EL素子を封止することができる。しかも、バリヤ層に応力緩和層が積層されているので、バリヤ層の成膜によって生じる残留応力をこの応力緩和層で吸収することができ、残留応力の発生に伴う不都合を可及的に抑制することができる。なお、応力緩和層よりも内側に配設されるバリヤ層について、その層厚を比較的薄く成膜した場合には、封止効果を維持しつつ、残留応力の影響を可及的に抑制することができる。
【0015】
上記応力緩和層の外側に配設されるバリヤ層の層厚は、適宜設定されるが、ピンホールおよびクラックの発生を効果的に防止する観点から、500Å〜8000Åの範囲内に設定されるのが好ましい(請求項3)。
【0016】
上記応力緩和膜の層厚は、特に限定するものではないが、バリヤ層の残留応力を効果的に吸収するためには、上記応力緩和層の外側に配設されるバリヤ層の最大層厚に対して2倍〜10倍に設定されるのが好ましい(請求項4)。
【0017】
上記各バリヤ層および応力緩和層の成膜方法は特に限定するものでなく、スピンコート、スパッタリング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)方式等によるプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって成膜するものであってもよいが、このプラズマCVD法のうち、特に、上記バリヤ層および応力緩和層は、上記基板に対向配置された平板型コイルによる磁場によって原料ガスをプラズマ化することにより当該基板上に成膜する誘導結合型のプラズマCVD法によって形成されるのが好ましい(請求項5)。
【0018】
このように構成すれば、平板型コイルによりプラズマ化した原料ガスを多方向に加速させることができ、例えば断面視逆テーパ状の有機EL素子の逆テーパ部分など、平板型コイルと対向していない部分まで各層を確実に合成、成長させることができる。従って、例えば平行平板の電極を用いて原料ガスをプラズマ化するプラズマCVD法によって各層を成膜する場合に比べて、有機EL素子を確実に封止することができる。
【0019】
しかも、誘導結合型のプラズマCVD法によれば、平行平板型のプラズマCVD法に比べてイオン電流密度およびプラズマ密度が高いため、加速された電子が原料ガス分子と衝突する確率が高くなり、これにより原料ガス分子を効率的にプラズマ化することができる。従って、プラズマ化していないガス分子の割合を減らし、このガス分子が基板に衝突することによる基板温度の上昇を抑制して、低温雰囲気の下で有機EL素子の損傷を効果的に防止しつつ良質の膜を成膜することができる。さらに、誘導結合型のプラズマCVD法によれば、プラズマ発生源と基板との距離を離間させることができ、これによりプラズマの発生に伴う熱が基板に伝達され難くなって基板温度の上昇を抑制することができる。従って、低温下で成膜することができるので、熱による有機EL素子の損傷を効果的に防止することができる。
【0020】
このようにプラズマCVD法によってシリコンの窒化膜、窒酸化膜、酸化膜を成膜する場合には、通常どおり、シラン系ガス(SiH4等)にアンモニア(NH3)や水素ガス(H2)を加えて行われるものであってもよいが、良質の膜を形成するためには、上記バリヤ層は、上記原料ガスとしてシラン系ガスおよび窒素ガスが用いられることにより形成され、上記応力緩和層は、上記原料ガスとしてシラン系ガス、窒素ガスおよび酸素ガスが用いられることにより形成されるのが好ましい(請求項6)。
【0021】
すなわち、上記したように有機EL素子は熱により損傷することから、このような誘導結合型のプラズマCVD法によって成膜する場合には、低温(80℃以下)で成膜することが求められる。従来、誘導結合型のプラズマCVDによってシリコンの窒化膜、窒酸化膜、酸化膜を成膜する場合には、シラン系ガスにアンモニアガス(NH3)や水素ガス(H2)を導入することによって行われていたが、水素原子の量が多くなるとプラズマ中の水素イオンの量も増加し、この水素イオンが基板に衝突して基板の温度が上昇する。従って、上記のように構成すれば、基板に衝突する水素イオンの量を減少させることにより、低温下での良質の膜(層)の形成が可能になるとともに、水素イオンの衝突に基づく基板のダメージを軽減することが可能になる。
【0022】
また、この発明に係る有機EL表示パネルは、複数の有機EL素子とこれらの有機EL素子が搭載される基板とを備えた有機EL表示パネルにおいて、上記有機EL素子が請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の封止膜によって封止されていることを特徴とするものである(請求項7)。
【0023】
この発明によれば、上記封止膜によって有機EL素子を確実かつ長期的に封止することができることから、発光欠陥点、いわゆるダークスポットの発生およびその拡大を効果的に防止することができる。
【0024】
一方、この発明に係る有機EL表示パネルの製造方法は、基板に搭載された有機EL素子を被覆して封止することにより有機EL表示パネルを製造する有機表示パネルの製造方法において、上記有機EL素子に第1層として窒化シリコンからなる第1バリヤ層を積層する素子封止工程と、この素子封止工程の後、第2層として窒酸化シリコンおよび酸化シリコンの少なくとも一方からなる応力緩和層を上記バリヤ層上に積層する応力緩和工程と、この応力緩和工程の後、第3層として窒化シリコンからなる第2バリヤ層を上記応力緩和層上に積層するバリヤ工程とを含むことを特徴とするものである(請求項8)。
【0025】
この発明によれば、有機EL表示パネル、特にこのパネルに含まれる有機EL素子を、上記構成の封止膜で確実に被覆封止することができる。従って、本発明に係る製造方法による有機EL表示パネルは長期にわたってダークスポットの発生を効果的に防止することができる。
【0026】
この場合、この製造方法に用いる装置は、特に限定するものではなく、例えばスピンコート装置、スパッタリング装置、プラズマCVD装置等を用いることができるが、上記素子封止工程、応力緩和工程およびバリヤ工程では、上記基板に対向配置された平板型コイルによる磁場によって原料ガスをプラズマ化することにより当該基板上に成膜する誘導結合型のプラズマCVD装置を用いて、上記第1および第2バリヤ層並びに応力緩和層を形成するのが好ましい(請求項9)。
【0027】
このように構成すれば、平板型コイルによりプラズマ化した原料ガスを多方向に加速させることができ、例えば断面視逆テーパ状の有機EL素子の逆テーパ部分など、平板型コイルと対向していない部分まで各層を確実に合成、成長させることができる。従って、例えば電場によって原料ガスをプラズマ化するプラズマCVD装置によって各層を成膜する場合に比べて、有機EL素子を確実に封止することができる。しかも、本製造方法では無機膜を積層させるものであるため、一のプラズマCVD装置、詳しくは同一の処理室で全ての層を成膜することができ、その工程も簡易なものとなる。
【0028】
さらに、上記したように、誘導結合型のプラズマCVD装置によれば、平行平板型のプラズマCVD装置に比べてイオン電流密度およびプラズマ密度が高いため、加速された電子が原料ガス分子と衝突する確率が高くなり、これにより原料ガス分子を効率的にプラズマ化することができる。従って、プラズマ化していないガス分子の割合を減らし、このガス分子が基板に衝突することによる基板温度の上昇を抑制して、低温雰囲気の下で有機EL素子の損傷を効果的に防止しつつ良質の膜を成膜することができる。さらに、誘導結合型のプラズマCVD法によれば、プラズマ発生源と基板との距離を離間させることができ、これによりプラズマの発生に伴う熱が基板に伝達され難くなって基板温度の上昇を抑制することができる。従って、低温下で成膜することができるので、熱による有機EL素子の損傷を効果的に防止することができる。
【0029】
また、誘導結合型のプラズマCVD装置を用いる場合に、この具体的構成を特に限定するものではなが、上記素子封止工程、応力緩和工程およびバリヤ工程では、上記平板型コイルの巻回し部が略矩形状に形成されるとともにこの巻回し部が略同一平面内に並設されているプラズマCVD装置を用いるのが好ましい(請求項10)。
【0030】
すなわち、この窒化シリコン膜等を成膜する場合には、この成膜に伴う残留応力によるクラックおよび成膜に伴うピンホールの発生を防止可能な程度の厚さに調整する必要があり、従って、この調整を図る上で基板全体で均一な膜厚に成膜することが求められている。誘導結合型のプラズマCVD装置において、均一な膜厚にする場合には、基板に対するプラズマ分布も均一にすることが求められており、このようにプラズマを均一に生成するためには磁場強度の分布も均一にすることが求められている。従来の誘導結合型のプラズマCVD装置によれば、上記平板型コイルについて、金属線を中心から略円形渦巻き状に形成しているものが大半であり、このような円形平板型コイルを用いると、平板型コイルの外周部および周辺部では中心部に比べて磁場強度が低下ないしは無くなっており、この外周部および周辺部に対向する基板上では、平板型コイルの中心部に対応して生成されたプラズマが拡散することにより成膜され、このためコイルの外周部および周縁部に対向する基板上ではコイルの中心部に比べて膜厚が薄くなるという傾向がある。
【0031】
従って、上記のように構成すれば、巻回し部が略矩形状に形成されているので、基板に対向して緻密に巻回し部を配設することができ、磁場強度を比較的均一にすることができ、これにより均一な膜厚に成膜することができる。しかも、磁場強度が高い巻回し部が同一平面内に敷き詰められている(並設されている)ので、巻回し部同士の間における磁場強度が低い箇所が存在する場合でも、隣接する磁場強度が高い複数の巻回し部で生成されたプラズマのそれぞれが拡散して磁場強度が低い基板上に成膜されることから、膜厚差がほとんどなくなり、可及的均一な成膜が可能となる。しかも、成膜面積に拘わらず膜厚を均一に形成させることができるので、面積が比較的広い基板に対しても均一な膜厚の封止膜を成膜することができる。
【0032】
上記素子封止工程およびバリヤ工程では、原料ガスを特に限定するものではないが、上記原料ガスとしてシラン系ガスおよび窒素ガスを用いるとともに、上記応力緩和工程では、上記原料ガスとしてシラン系ガス、窒素ガスおよび酸素ガスを用いるのが好ましい(請求項11)。
【0033】
このように構成すれば、基板に衝突する水素イオンの量を減少させることにより、低温下での良質の膜(層)の形成が可能になるとともに、水素イオンの衝突に基づく基板のダメージを軽減することが可能になる。
【0034】
この場合、各層(第1および第2バリヤ層、応力緩和層)の成膜の際における各種条件は特に限定するものではないが、例えば上記素子封止工程、応力緩和工程およびバリヤ工程において積層される上記第1および第2バリヤ層並びに応力緩和層は、上記プラズマCVD装置内において0.1Pa以下の圧力下で形成するのが好ましい(請求項12)。
【0035】
このように構成すれば、圧力が0.1Pa以下の高真空雰囲気下で成膜するので、窒化シリコン等を効率的に基板上に堆積させることができる。
【発明の効果】
【0036】
上記構成の発明によれば、有機EL素子を確実に封止することができ、これにより当該素子を湿気および酸素から有効に保護して有機EL表示パネルにおける信頼性を向上させることができるという利点がある。しかも、バリヤ層の内側(基板側)に応力緩和層を設け、当該応力緩和層にバリヤ層を積層させるだけで、衝撃等に対する物理的強度の向上と、膜厚増に伴うクラック発生の防止を相乗的に達成することができ、これにより有機EL素子を長期にわたって湿気、酸素から保護することができ、これにより信頼性が飛躍的に向上するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
図1は、本発明の有機EL素子の封止膜によって封止された有機EL表示パネルの概要を示す断面図である。図2は、封止膜によって被覆封止された有機EL素子を拡大して示す断面図である。
【0039】
本実施形態の封止膜5によって封止される有機EL表示パネル2は、透明基板3と、この透明基板3上に搭載された一個ないし複数個の有機EL素子4と、この有機EL素子4を含めた透明基板3の一面側を被覆して封止する封止膜5とを備え、有機EL素子4に所定の電圧が印加されることにより有機EL素子4を発光させるものである。
【0040】
透明基板3は、可視領域の光を所定の透過率(当実施形態では90%)で透過可能で、かつ表面が平滑に形成された板状体であり、本実施形態では透明ガラス板が用いられる。なお、透明基板3として用いられる材質は、透明ガラスに限定されるものではなく、例えば半透明ガラスであってもよく、またポリカーボネート、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂を用いてもよい。合成樹脂のうち、例えばPETなどの可撓性を有するものを用いると、フレキシブルな有機EL表示パネルを製造することができる。ただし、材質として合成樹脂を用いる場合には、透明基板3を通じて湿気および酸素が透過しないように基板3の表面が例えば封止膜5によってバリヤ処理がなされる。
【0041】
有機EL素子4は、電極間に有機材料が挟まれて構成されており、具体的には透明基板3上に形成された透明電極6(陽極)と、この透明電極6上に積層された有機層8と、有機層8上に積層された金属電極7(陰極)とを備える。
【0042】
透明電極6は、正孔注入能が高く、金属電極7に比べて仕事関数の大きい金属、合金等の電気伝導性化合物等が好ましく用いられる。例えば、透明電極6は、ITO(スズをドープした酸化インジウム)、ATO(酸化アンチモンをドープしたすず)、AZO(アルミニウムをドープした一酸化亜鉛)、金、酸化スズなどの導電性材料が蒸着法やスパッタリング法等によって透明基板3上に成膜されることにより形成される。透明電極6の膜厚は特に限定するものではないが、通常、10nm〜3μmに形成される。一方、金属電極7は、仕事関数の低い(例えば4.0ev以下)金属、合金等の電気伝導性化合物等が好ましく用いられる。例えば、金属電極7は、アルミニウム、ナトリウム、マグネシウム、インジウム、チタン等の金属や、アルミ合金、インジウム合金などの導電性材料が蒸着法、スパッタリング法等によって有機層8上に形成される。金属電極7の膜厚も、上記透明電極6の膜厚と略同様に、10nm〜3μmに形成される。
【0043】
有機層8は、1層ないし複数層(例えば2,3層)構造のものが知られているが、ここでは3層構造のものについて説明する。すなわち、有機層8は、正孔と電子とが再結合することにより発光する発光層10と、透明電極6に当接し発光層10に正孔を注入する正孔輸送層9と、金属電極7に当接し発光層10に電子を注入する電子輸送層11とを有する。なお、有機層8を構成する材質は低分子系材料、高分子系材料いずれのものであってもよい。
【0044】
発光層10は、低分子蛍光色素、蛍光性の高分子、金属錯体などが用いられる。この発光層10は、電界印加時に陽極側から正孔を、陰極側から電子を注入できること、注入された電荷を移動させ、正孔と電子が再結合する場を提供できること、発光効率が高いことが求められ、かつ製造時における便宜を考慮すると成膜性のよいものが好ましく用いられる。例えば、アルミニウムキノリノール錯体(Alq3)やジアミン類等公知の材料が用いられる。正孔輸送層9はキャリヤ輸送性能が高く、透明で成膜性のよいものが好ましく、例えば銅フタロシアニン(CuPc)、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、TPD等公知の材料が用いられる。電子輸送層11は、例えばアントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、オキサジアゾール誘導体等公知の材料が用いられる。
【0045】
封止膜5は、窒化シリコン(SiNx:例えばSi3N4)からなるバリヤ層と、このバリヤ層の内側に配設され当該バリヤ層が積層される窒酸化シリコン(SiOxNy:例えばSiON)からなる応力緩和層とを含む複数層から構成される。本実施形態では、封止膜5は、図3に示すように、窒化シリコン(SiNx)からなる第1および第2バリヤ層53,51との間に窒酸化シリコンからなる応力緩和層52が介在する3層構造に形成されている。
【0046】
第1バリヤ層53は、応力緩和層52を通じた湿気や酸素の侵入を確実に防止するために設けられるものであり、応力緩和層52の内側に配設され、有機EL素子4を直接被覆する第1層として構成されている。具体的には、この第1バリヤ層53は、透明基板3上であって、有機EL素子4が搭載される領域よりも広い領域に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって窒化シリコン(SiNx)が堆積されることにより成膜されている。このプラズマCVD法による成膜にあたって、後述する誘導結合型のプラズマCVD装置15を用い、その材料ガスとしてシランガス(SiH4)および窒素ガス(N2)が用いられる。このプラズマCVD法による成膜方法については後述する。
【0047】
また、第1バリヤ層53は、その層厚が他の層51,52の層厚と比較して薄く形成されているが、窒化シリコンからなる層を単層で設ける場合に比べて厚く形成することができる。すなわち、窒化シリコンからなる層を単層で設ける場合には、厚く成膜するとその残留応力(内部応力)に起因してクラックを生じる虞がある。しかしながら、本実施形態では第1バリヤ層53の上に応力緩和層52が積層されるため、この応力緩和層52によってそのクラックに対する強度の向上が図られ、従って膜厚を通常の場合に比べて厚く形成することができる。具体的には、第1バリヤ層53の層厚t1は、その上限が2500Å以下、好ましくは1500Å以下に設定される。一方、窒化シリコンからなる第1バリヤ層53の層厚t1を薄く形成しすぎれば、成膜不良に伴ういわゆるピンホールの発生が懸念される。従って、第1バリヤ層53の層厚t1は、その下限が500Å以上、好ましくは600Å以上に設定されている。本実施形態では、この第1バリヤ層53の層厚t1は、800Å〜1200Åの範囲内、平均で1000Å程度に設定されている。
【0048】
応力緩和層52は、第1バリヤ層53上に積層されている。この応力緩和層52は、窒化シリコンからなる層内に生じる残留応力を緩和するために設けられるものであり、従って窒化シリコンからなる上記第1および第2バリヤ層53,51よりも柔軟な窒酸化シリコン(SiOxNy)や、酸化シリコン(SiOx:例えばSiO2)、これらの混合物から構成されている。本実施形態では、酸化シリコンと比較して、柔軟性の点では劣るものの、湿気、酸素の透過率の低い窒酸化シリコンが用いられている。この応力緩和層52は、本実施形態では、窒酸化シリコンからなる単層構造が採用されているが、酸化シリコンからなる単層構造、或いは窒酸化シリコンからなる層間に酸化シリコンからなる層を介在させるなど、窒酸化シリコンまたは酸化シリコンからなる複数層によって構成されるものであってもよい。
【0049】
また、応力緩和層52は、第1および第2バリヤ層53,51の残留応力を効果的に吸収するために、その層厚t2が第2バリヤ層51の層厚t3、特に第2バリヤ層51の層厚のうち最大層厚に対して2〜10倍の範囲内に設定されている。具体的には、応力緩和層52はの層厚t2は、1000Å〜10000Åの範囲内に設定されるのが好ましく、更に好ましくは3000Å〜9000Åの範囲内がよい。本実施形態では、この応力緩和層52の層厚t2は、7700Å〜8300Åの範囲内、平均で8000Å程度に設定されている。
【0050】
このように、応力緩和層52が比較的厚く形成されるので、透明基板3に付着している種々のパーティクルをこの応力緩和層52内に効果的に封止することができる。従って、例えば成膜によって透明基板3に付着しているパーティクルを埋めることができず、当該パーティクル周辺部を通じて湿気、酸素が侵入してくる事態を効果的に防止することができる。
【0051】
第2バリヤ層51は、応力緩和層52上に積層されている。この第2バリヤ層51は、上記第1バリヤ層53よりも厚く形成することができる。すなわち、第2バリヤ層51は、窒化シリコンに比べて柔軟な窒酸化シリコンからなる応力緩和層52上に積層されているため、第2バリヤ層51の残留応力に応じてこの応力緩和層52が僅かながら伸縮し、これによって残留応力に基づくクラックが発生し難くなっている。具体的には、第2バリヤ層51の層厚t3は、その上限が8000Å以下、好ましくは5000Å以下に設定される。一方、窒化シリコンからなる第1バリヤ層53の層厚t1を薄く形成しすぎれば、外部衝撃等の物理的強度の低下および成膜不良に伴ういわゆるピンホールの発生が懸念される。従って、第2バリヤ層51の層厚t3は、その下限が500Å以上、好ましくは800Å以上に設定されている。本実施形態では、この第2バリヤ層51の層厚t3は、1500Å〜2500Åの範囲内、平均で2000Å程度に設定されている。
【0052】
また、この第2バリヤ層51は、図示していないが、その形成領域の外縁部において、第1バリヤ層53および応力緩和層52の形成領域よりも広く形成され、これにより第1バリヤ層53および応力緩和層52の端縁部を封止している。
【0053】
上記構成の封止膜5によって有機EL表示パネル2を封止して、この有機EL表示パネル2の発光状態を確認した後、当該パネル2を65℃、湿度90%の環境下にて60日間(1440時間)程度保管した。その後、この有機EL表示パネル2について再び発光状態を確認したところ、いわゆるダークスポットはほとんど見られず良好な発光状態を示した。このように上記構成の封止膜5によれば、有機EL素子4を被覆封止するための封止膜に、湿気、酸素の透過率が非常に低い窒化シリコン(SiNx)からなるバリヤ層51,53を含むので有機EL素子4を確実に封止することができ、これにより当該素子4を湿気および酸素から有効に保護してその信頼性を向上させることができる。
【0054】
ここで、窒化シリコンからなるバリヤ層51,53を形成する場合、衝撃等に対する物理的強度の向上と膜厚増に伴うクラック発生の防止との両立が問題になるが、第1バリヤ層53の外側、あるいは第2バリヤ層51の内側に、窒化シリコンよりも柔軟な窒酸化シリコンからなる応力緩和層52が配設され、この応力緩和層52が第1バリヤ層53上に積層され、或いはこの応力緩和層52上に第2バリヤ層51が積層されているので、窒化シリコンからなるバリヤ層が単層で配設されているものに比べて、この応力緩和層52でバリヤ層53,51の成膜に伴う残留応力を吸収することができ、これによりクラックの発生を防止しつつ第1および第2バリヤ層53,51を比較的厚く成膜することができる。しかも、応力緩和層52を構成する窒酸化シリコンは、バリヤ層を構成する窒化シリコン膜よりも成膜に伴う残留応力が小さいので、第1および第2バリヤ層53,51よりも層厚を厚くすることができ、これによりたとえバリヤ層51,53を薄く形成した場合であっても封止膜5における物理的強度も向上させることができる。さらに、窒酸化シリコンからなる応力緩和層52は、窒化シリコンからなる第1および第2バリヤ層53,51よりも成膜における堆積速度が速く、従って所望の物理的強度を有する封止膜5を迅速に形成することができる。
【0055】
ここで、この封止膜5を成膜する誘導結合型のプラズマCVD装置15およびこの装置15を用いた成膜封止方法(有機EL表示パネル2の製造方法)について説明する。まず、誘導結合型プラズマCVD装置15について説明した後に、成膜方法について説明する。
【0056】
図4は本実施形態の誘導結合型プラズマCVD装置の概略を示す正面断面図であり、図5は後述する処理容器の蓋体を開放した状態の平面図である。このプラズマCVD装置15は、誘導コイル18によってプラズマを励起する誘導結合型のCVD装置であり、略50℃以下(例えば40℃)の常温雰囲気下でプラズマCVD法を行えるように構成されている。
【0057】
このプラズマCVD装置15は、封止膜5による封止前の有機EL表示パネル(以下、「封止前パネル」という)2aを収容する処理容器16と、この処理容器16内に配設され封止前パネル2a等を設置させる基板設置部材17と、処理容器16の上方に配設され当該処理容器16内に磁場を発生させる平板型の誘導コイル18と、処理容器16内に配設されガス供給源30〜32から当該容器16内に所定の原料ガスを供給するガス供給部19と、処理容器16内を所定気圧の高真空状態にする真空ポンプ20とを備え、本実施形態では、ガス供給部19が基板設置部材17に設置された封止前パネル2aに対して均一に原料ガスが供給されるように構成されるとともに、基板設置部材17に設置された封止前パネル2aの下方側に位置して真空ポンプ20によって排気されるガスを整流する整流板21が設けられている。そして、このプラズマCVD装置15は、ガス供給部19から処理容器16内に原料ガスを導入し、この原料ガスを誘導コイル18によってプラズマ化して、このプラズマ化した原料を基板設置部材17に設置された封止前パネル2a上に堆積させ、これにより封止膜5を形成して封止前パネル2a上の有機EL素子4を封止することにより有機EL表示パネル2を製造する。
【0058】
具体的には、処理容器16は、略真空にした内部で封止前パネル2aに対して成膜処理を施すものである。この処理容器16は、封止前パネル2aを収容可能な大きさに形成され上方に開口する容器本体61と、この上方開口部を閉塞する蓋体62とを有し、全体として直方体状の箱体をなしている。容器本体61は、図4および図5に示すように、その底壁部の略中央に排気口61aが設けられ、排気管22を通じて真空ポンプ20に接続されている。この底壁部の周縁から立設された周壁部のうちの一つには、横長のパネル挿通口61bが設けられ、このパネル挿通口61bを通じてCVD装置15がこれに並設されたパネルセット装置23に接続されるとともに、上記パネル挿通口61bにはこの挿通口61bを気密に閉塞可能な開閉蓋体63が配設されている。そして、この開閉蓋体63を開放して、封止前パネル2aがパネルセット装置23からパネル挿通口61bを通じて基板設置部材17にセットされ、開閉蓋63を閉塞してこの封止前パネル2aにプラズマCVD処理を実行して有機EL表示パネル2を製造する。その後、再び開閉蓋63を開放して有機EL表示パネル2をパネル挿通口61bを通じてパネルセット装置23に搬送されるように構成されている。
【0059】
蓋体62は、その中央領域に貫通孔が形成され、この貫通孔内に透過窓62aが気密状態に嵌め込まれている。この透過窓62aの上面には誘導コイル18が配置され、この誘導コイル18によって発生した磁場は透過窓62aを通じて処理容器16内に生じる。また、この蓋体62の下面には、矩形枠状のガス供給部19が固定されている。
【0060】
一方、基板設置部材17は、設置本体部171と、この本体部171から上方に突出する複数本の設置突出部172と、下面がこの設置突出部172の先端に支持された板状の設置板部173とを有し、この設置板部173上にパネル(有機EL表示パネル2または封止前パネル2a等)を載置するものとなされている。この設置本体部171と、設置板部173との間には、整流板21が配置されている。整流板21は、上記したように、真空ポンプ20によって排気されるガスを整流するためのものであり、所定のパターンで多数の貫通孔210が配置された偏平体をなしている(図6参照)。特に、本実施形態では、整流板21は、パネル2,2aを収容可能な偏平皿状体を構成し、プラズマCVD処理の際に、設置板部173とともに封止前パネル2aを収容して当該パネル2aの回りを囲むことにより原料ガスが封止前パネル2a回りに対流し易いように構成されている。なお、整流板21は、後述するように、基板設置部材17に対して相対移動するように構成されているが、この相対移動時も含めて基板設置部材17の設置突出部172が当該整流板21と干渉しないように干渉回避孔211が設けられている(図6参照)。
【0061】
上記基板設置部材17および整流板21は、次に説明する昇降機構24により上下昇降可能に構成されている。すなわち昇降機構24は、長手方向両端部が容器本体61の所定箇所に軸支された左右一対の駆動軸241と、この駆動軸241を正逆方向に回転駆動させる駆動モータ(図示せず)と、下端部がこの駆動軸241に固定され駆動軸241の正逆回転に伴い揺動する一対の揺動部材242とを備え、各揺動部材242の途中部分に基板設置部材17が枢支されるとともに、揺動部材242の先端(上端)部分に整流板21が枢支されている。
【0062】
従って、図7に示すように、基板設置部材17および整流板21は、この昇降機構24における揺動部材242の揺動に伴って、相対高さを変更しつつ、双方とも上下昇降動するものとなされている。言い換えると、昇降機構24は、揺動部材242を倒伏させて設置板部173および整流板21の相対位置を離間させることによりパネル2,2aを容易にセットおよび取出可能なセット姿勢(図7で実線で示す)と、このセット姿勢から揺動部材242を駆動軸241回りに引き起こして設置板部173と整流板21との相対位置を近接させるとともに整流板21の上端縁をガス供給部19の下面に当接させることによりパネル2,2a回りにガスを対流させやすくした処理姿勢(図4で実線で示す或いは図7で二点鎖線で示す)と、を切換可能に構成されている。なお、揺動部材242の揺動に伴い基板設置部材17と整流板21との相対高さが変わるのは、各部材17,21の揺動部材242の取付位置に起因する。すなわち、揺動部材242の駆動軸241から離れた先端側に取り付けられると、その途中部分に取り付けられるよりも昇降高さが高くなるからである。
【0063】
この昇降機構24のセット姿勢においては、基板設置部材17および整流板21はともに容器本体61のパネル挿通口61bよりも下方に位置する下限位置にあり、設置板部173に対するパネル2,2aの載置、および設置板部173からパネル2,2aの取出が容易に実行できるようになっている。一方、処理姿勢においては、基板設置部材17、言い換えるとこの設置板部173に載置されたパネル2,2aが、ガス供給部19に略対向する位置にあるとともに、高さ方向において透過窓62aの下面から比較的離間した位置(例えば200mm程度の位置)にあるように設定されている。すなわち、平行平板型のCVD装置では、透過窓62aからパネルまでの距離が50mm程度と比較的近接した位置に設けられていたが、本実施形態の装置は誘導結合型のプラズマCVD装置であるため、上記のように透過窓62aから設置板部173までの距離を比較的離間した位置に設けることができる。従って、発生するプラズマから離れた距離にパネル2,2aを配置することができ、プラズマに起因するパネル2,2aの温度上昇を抑制することができ、これにより温度上昇に伴う有機EL素子4の損傷を効果的に防止することができる。また、整流板21によりガス供給部19から供給された原料ガスがパネル2,2a回りに対流するので、均一な膜厚の封止膜5を形成することができ、ピンホールの発生を効果的に防止することができるとともに、残留応力に起因する膜厚調整が容易になる。
【0064】
誘導コイル18には、インピーダンス整合器25を介して高周波電源26に接続されている。この誘導コイル18は、金属等の導電性線材が略同一平面内に巻回された平板型のコイルである。特に、本実施形態では、この巻回し部180が略矩形状に形成されるとともに、この巻回し部180が略同一平面内に密集した状態で並設されている。すなわち、誘導コイル18は、導線が略矩形状に一回り(回り方向は特に限定するものではないが図示例では左回り)して形成された巻回し部180と、この巻回し部180から延びる導線を集合させてインピーダンス整合器25に接続される分岐部181とを有し、基板設置部材17に設置されたパネル2,2aよりも広い領域において磁場を発生可能に構成されている。巻回し部180の配設パターンは特に限定するものではないが、ここでは、矩形状の巻回し部180がその短辺方向に所定間隔置きに配設されている。
【0065】
このように、誘導コイル18に複数の巻回し部180を設けるとともに各巻回し部180が略矩形状に形成され、この巻回し部180が同一平面内に並設されているので、処理容器16内において磁場を比較的均一に発生させることができるとともに、磁場強度のピークを近接して設けることができ、これによりこの磁場によってプラズマをコイル配設領域の全域に亘って満遍なく発生させ、パネル2,2aにおいてプラズマによって均一な膜厚で成膜することができる。
【0066】
ガス供給部19は、供給するガスの種類によって複数設けられている。本実施形態では、3種類のガスが2つのガス経路を通って処理容器16内に供給可能に構成されており、従って、ガス供給部19が上下2つ重ねた状態で蓋体62に取り付けられている。なお、これらの2種類のガス供給部19a,19bは、導入されるガスの種類や後述するガス噴出チューブ192の本数等を除き、その構成が略同様であるので、ここでは下方に配設されたガス供給部19bを中心に説明する。
【0067】
本実施形態のガス供給部19は、基板設置部材17に設置されたパネル2,2aに略対向した状態で設けられるとともに、ガス噴出孔195が散点的に設けられている。
【0068】
すなわち、ガス供給部19は、例えば石英、或いはアルミナ等のセラミックスなどの化学的に安定な材料で形成されている。このガス供給部19は、図5および図6に示すように、左右方向に延びる前後一対のヘッダ191と、両端部がこのヘッダ191に連通接続された複数本のガス噴出チューブ192と、一対のヘッダ191の長手方向両端部を連結する連結部材193とを備え、平面視略方形状の枠状体をなしている。ヘッダ191は、長手方向に沿って内部にガス流通路191aが形成され、このガス流通路191aとガス噴出チューブ192とが連通する状態で当該ガス噴出チューブ192の端部を気密保持している。このガス流通路191aは、蓋体62に設けられたガス流通路62bを介して、図4に示すガス供給源31〜32に連通接続されている。なお、ヘッダ191間の距離は、上方側に配設されたガス供給部19aが、下方側に配設されたもの19bよりも若干短くなっている。
【0069】
蓋体62に設けられたガス流通路62bには、処理容器16内に開口する排気口62cが設けられ、ガス流通路62bを排気口62c側とガス供給部19側との間で切り換える切換弁621が配設されている。この排気口62cは、プラズマCVD処理後にガス供給部19やガス流通路62bに残存するガスを早期に排出するために設けられたものであり、プラズマ処理後に切換弁621を切り換えて開口(図6に実線で示す状態)されるように構成されている。なお、切換弁621はプラズマCVD処理時には、図6に二点鎖線で示すように、排気口62cを閉塞するように構成され、ガス供給源31〜32から供給されるガスはこの切換弁621の周囲を通ってガス供給部19に供給される。
【0070】
ガス噴出チューブ192は、直径略6mmに設計された細管部材であり、その長手方向に沿って所定間隔置きに原料ガスを処理容器16内に噴出するガス噴出孔195が均一に設けられている。このガス噴出孔195は、水平方向に開口するものとなされている。また、ガス噴出孔195の配設位置は、ここでは他方のガス供給部19における噴出口195に対して千鳥配置となるように設けられている。さらに、ガス噴出孔195の直径は、非常に小さいものとなっており、例えば0.1mmに設計されている。
【0071】
ここで、これらのガス供給部19a,19bに導入される原料ガスについて説明する。このプラズマCVD装置15において上記封止膜5を成膜するには、ガス供給源30〜32のそれぞれにシランガス(SiH4)、窒素ガス(N2)、酸素ガス(O2)が封入されている。そして、第1バリヤ層53を成膜するにあたって、ガス供給源30,31からガス供給部19aにシランガスおよび窒素ガスが導入され、ガス噴出孔195を通じて処理容器16内に供給されるように構成されている。この状態で応力緩和層52を成膜する場合には、ガス供給部19aからシランガスおよび窒素ガスが導入されるのに加えて、ガス供給源32からガス供給部19bに酸素ガスが導入されるように構成されている。最後に、第2バリヤ層51を成膜するために、ガス供給部19bに導入される酸素ガスの供給を停止してシランガスおよび窒素ガスのみが処理容器16内に導入されるように構成されている。なお、これらのガス供給量や供給タイミング等、この装置15における種々の制御は、CPU、ROM等からなる図示しない制御手段によって行われており、同じく図示しない入力手段からの設定条件に基づいて、制御手段が種々の制御を実行するように構成されている。
【0072】
すなわち、制御手段によって、第1および第2バリヤ層53,51の成膜時には、シランガスが30sccmの割合で、窒素ガスが300sccmの割合で処理容器16内に供給され、応力緩和層52の成膜時にはシランガス、窒素ガス、酸素ガスがそれぞれ30sccm、300sccm、50sccmの割合で処理容器16内に供給される。
【0073】
ここで、この装置15では、第1および第2バリヤ層53,51、すなわち窒化シリコン膜を成膜するにあたって、アンモニアガス(NH3)や水素ガス(H2)を導入するのではなく、窒素ガス(N2)を導入するように構成されている。これは、原料ガスとして水素原子を用いた場合、励起させやすい反面、水素原子の量が多くなりすぎると、雰囲気温度が上昇してパネル2,2aに悪影響を与えるためである。従って、原料ガスとして窒素ガスを用いることにより温度上昇を抑制して、この温度上昇に伴う有機EL素子4の損傷を効果的に防止することができる。
【0074】
一方、真空ポンプ20は、上記したように排気管22を通じて処理容器16に接続されている。真空ポンプ20には、高出力ポンプ(例えば2300 l/secの性能を有するポンプ)が用いられ、原料ガスが注入されている状態で0.1Pa以下の圧力に設定可能に構成されている。排気管22には、処理容器16内の真空度合を調節するためのゲートバルブ28が設けられている。なお、ゲートバルブ28も処理容器16内に設けられた気圧センサ(図示せず)に基づき、制御手段によって制御される。この真空ポンプ20は、図示しない排気管に接続される。
【0075】
次に、上記構成のプラズマCVD装置15を用いて封止膜5を成膜する成膜方法について説明する。
【0076】
まず、封止前パネル2aをパネルセット装置23によってパネル挿通口61bを通じて基板設置部材17に設置する。このとき、昇降機構24は、揺動部材242が倒伏したセット姿勢にある。次に、開閉蓋体63が気密状態に閉塞されるとともに、駆動軸241が図4で反時計回りに回転駆動し、これにより揺動部材242が駆動軸241回りに回動して引き起こされる。この揺動部材242の引き起こし動作に伴って、基板設置部材17および整流板21がガス供給部19に近接する方向に上昇し、整流板21の周壁部上端縁がガス供給部19のヘッダ191に当接して昇降機構24が処理姿勢に移行する。このとき、設置板部173に載置された封止前パネル2aと整流板21の底壁部とが近接する方向に相対移動し、これにより封止前パネル2aが整流板21内に完全に収容された状態となっている。そして、真空ポンプ20を駆動するとともにゲートバルブ28を調整することにより、処理容器16内を0.1Pa以下の高真空状態として成膜準備工程が完了する。
【0077】
この成膜準備工程が完了すると、次に成膜工程に入り、この成膜工程ではまず第1バリヤ層53を成膜する素子封止工程を行う。具体的には、誘導コイル18にバイアス電位を印加して磁場を生成するとともに、ガス供給源30,31の上流側に設けられた図示しない開閉弁を開放してガス供給部19にシランガスおよび窒素ガスを供給し、このガス供給部19からガス噴出孔195を通して処理容器16内に原料ガスを所定の時間、量、供給する。具体的には、シランガスは30〜50sccmの割合で、窒素ガスは300〜500sccmの割合で、2〜5分供給する。処理容器16内では、シランガス、窒素ガスがプラズマ化し、整流板21によってこのプラズマ化したシリコン(Si)および窒素(N)が封止前パネル2a回りに集まった状態となっている。そして、このプラズマ化したシリコン(Si)および窒素(N)が当該パネル2aの表面上に窒化シリコン膜として堆積し、第1バリヤ層53を形成する。この窒化シリコン膜は、有機EL素子4がある部分ではこの有機EL素子4の形状に沿って成膜され、従って逆テーパー型の有機EL素子4の基端部にまで窒化シリコンが堆積し第1バリヤ層53が形成される。
【0078】
なお、原料ガスは整流板21の貫通孔210を通って排気管22に導出され真空ポンプ20によって排気される。この整流板21によって、ガスが封止前パネル2a上を対称状に流れ、乱流を効果的に防止しつつ、均一な膜厚を成膜するためのガス流に整流される。
【0079】
この第1バリヤ層53を成膜する素子封止工程の後、応力緩和工程へと移行する。この応力緩和工程では、上記素子封止工程における原料ガスの供給に連続して原料ガスを供給するとともに磁場を連続形成するものであっても良いが、ここではいったん上記原料ガスの供給、磁場の形成を停止してから、新たに3種類の原料ガスを供給するとともに磁場を形成するようにしている。すなわち、誘導コイル18による磁場を再度形成し、ガス供給源30,31からシランガス、窒素ガスをガス供給部19aのガス噴出孔195を通して処理容器16内に供給するとともに、ガス供給源32からガス供給部19bのガス噴出孔195を通して処理容器16内に酸素ガスを所定の時間、量、供給する。具体的には、シランガスは30sccmの割合で、窒素ガスは300sccmの割合で、酸素ガスは50sccmの割合で、2〜10分供給する。
【0080】
処理容器16内では、シランガス、窒素ガス、酸素ガスがプラズマ化し、整流板21によってこのプラズマ化したシリコン(Si)、窒素(N)および酸素(O)が封止前パネル2a回りに集まった状態となっている。そして、このプラズマ化したシリコン(Si)窒素(N)、酸素(O)が第1バリヤ層53の表面上に窒酸化シリコン膜として堆積し、応力緩和層52を形成する。この応力緩和層52の成膜速度は、窒化シリコン膜の成膜速度よりも速く、従って膜厚が第1バリヤ層53よりも厚い場合であっても迅速に成膜することができる。しかも、この応力緩和層52は層厚が8000Åと第1バリヤ層53の1000Åよりも厚く、封止前パネル2aに微細なゴミが付着している場合でも、このゴミを封入することができる。このため、この微細なゴミに起因するピンホールの発生を効果的に防止することができ、封止に対する信頼性を向上させることができる。
【0081】
次に、有機EL素子4を確実に封止するべくバリヤ工程において、第2バリヤ層51を形成する。このバリヤ工程では、上記応力緩和工程における原料ガスの供給に連続して原料ガスを供給するとともに磁場を連続形成するものであっても良いが、ここではいったん上記原料ガスの供給、磁場の形成を停止してから、新たに2種類の原料ガスを供給するとともに磁場を形成するようにしている。すなわち、誘導コイル18による磁場を再度形成し、ガス供給源30,31の上流側に設けられた図示しない開閉弁を開放してガス供給部19にシランガスおよび窒素ガスを供給し、このガス供給部19からガス噴出孔195を通して処理容器16内に原料ガスを所定の量、時間、供給する。具体的には、シランガスは30〜50sccmの割合で、窒素ガスは300〜500sccmの割合で、2〜5分供給する。
【0082】
処理容器16内では、シランガス、窒素ガスがプラズマ化し、整流板21によってこのプラズマ化したシリコン(Si)および窒素(N)が封止前パネル2a回りに集まった状態となっている。そして、このプラズマ化したシリコン(Si)および窒素(N)が応力緩和層52の表面上に窒化シリコン膜として堆積し、第2バリヤ層51を形成する。このバリヤ工程における原料ガスの供給時間は、素子封止工程における原料ガスの供給時間よりも長く設定されており、従って、第2バリヤ層51は第1バリヤ層53よりも厚く形成されている。
【0083】
このように第1バリヤ層53、応力緩和層52、第2バリヤ層51を形成して封止前パネル2a上に封止膜5を形成し、これにより有機EL表示パネル2を形成する。そして、このバリヤ工程の終了後に、誘導コイル18に電圧の供給を停止するとともに、真空ポンプ20を停止して、昇降機構24の揺動部材242を倒伏させて処理姿勢からセット姿勢に移行させる。次に、開閉蓋体63を開放してセット姿勢にある設置板173から有機EL表示パネル2をパネル挿通口61bを通じてパネルセット装置23へと取り出す。
【0084】
上記有機EL表示パネル2によれば、封止膜5によって有機EL素子4を確実かつ長期的に封止することができることから、発光欠陥点、いわゆるダークスポットの発生およびその拡大を効果的に防止することができる。
【0085】
また、この有機EL表示パネル2の製造方法によれば、有機EL表示パネル2、特にこのパネル2に含まれる有機EL素子4を、封止膜5で確実に被覆封止することができる。
【0086】
なお、本発明の封止膜5、有機EL表示パネル2、およびその製造方法の具体的構成は、上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。他の実施形態を以下に説明する。
【0087】
(1)上記実施形態では、封止膜5において第1バリヤ層53の層厚が第2バリヤ層51の層厚よりも薄く形成されているが、各層厚は同じものであってもよいし、また第1バリヤ層53を厚く形成してもよい。
【0088】
ただし、第1バリヤ層53は応力緩和層52によって残留応力が一部吸収されるものの、その性質上厚く形成するのは不適であり、従って、有機EL素子4を確実に封止する観点から、上記実施形態のように、第2バリヤ層51の層厚が第1バリヤ層53の層厚よりも厚く形成されるのが好ましい。
【0089】
(2)上記実施形態におけるプラズマCVD装置15において、誘導コイル18の形状は特に限定されるものではなく、例えば従来装置において採用されている渦巻き型コイルであってもよい。また、図9に示すように、誘導コイル18aは、一本の導線を蛇行状に湾曲形成することにより巻回し部180aを形成するものであってもよい。さらに、巻回し部180の巻回し方向について同一方向である必要はなく、交互に逆方向に巻回されるものであってもよい。
【0090】
ただし、均一な磁場を形成することにより膜圧も均一にすることができることから、平板型コイル18の巻回し部180は、略矩形状に形成されるとともにこの巻回し部180が略同一平面内に並設されているのが好ましい。
【0091】
(3)上記実施形態では、このガス噴出孔195の開口方向や、配設位置、並びに大きさ、形状等は特に限定するものではなく、噴出する原料ガスが満遍なく処理容器16内に充満するように適宜設計されている。例えば、このガス噴出孔195は、パネル2,2aに対向する領域の略中央部分において密に設け、外周部分で粗に設けるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の有機EL表示パネルの一実施形態を示す概念図である。
【図2】同パネルの有機EL素子の封止状態を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の封止膜の一実施形態を示す断面図である。
【図4】この封止膜を形成するためのプラズマCVD装置を示す正面断面図である。
【図5】同CVD装置の処理容器を蓋体を開放した状態で示す平面図である。
【図6】図4のCVD装置を部分的に拡大して示す側面断面図である。
【図7】同CVD装置の昇降装置の作用を示す説明図である。
【図8】同CVD装置の誘導コイルを示す概略斜視図である。
【図9】同誘導コイルの変形例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
2 有機EL表示パネル
3 透明基板
4 有機EL素子
5 封止膜
15 プラズマCVD装置
18 誘導コイル
19 ガス供給部
51 第2バリヤ層
52 応力緩和層
53 第1バリヤ層
180 巻回し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に搭載された有機EL素子を被覆して封止する封止膜において、
窒化シリコンからなるバリヤ層と、このバリヤ層の内側に配設され当該バリヤ層が積層される窒酸化シリコンおよび酸化シリコンの少なくともいずれか一方の層からなる応力緩和層とを含む複数層から構成されることを特徴とする有機EL素子の封止膜。
【請求項2】
上記応力緩和層の内側に配設され当該応力緩和層が積層される窒化シリコンからなるバリヤ層をさらに含み、この応力緩和層の内側のバリヤ層が上記有機EL素子を直接被覆する第1層として構成されることを特徴とする請求項1記載の有機EL素子の封止膜。
【請求項3】
上記応力緩和層の外側に配設されるバリヤ層の層厚は、500Å〜8000Åの範囲内に設定されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の有機EL素子の封止膜。
【請求項4】
上記応力緩和層の層厚は、上記応力緩和層の外側に配設されるバリヤ層の最大層厚に対して2倍〜10倍に設定されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の有機EL素子の封止膜。
【請求項5】
上記バリヤ層および応力緩和層は、上記基板に対向配置された平板型コイルによる磁場によって原料ガスをプラズマ化することにより当該基板上に成膜する誘導結合型のプラズマCVD法によって形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の有機EL素子の封止膜。
【請求項6】
上記バリヤ層は、上記原料ガスとしてシラン系ガスおよび窒素ガスが用いられることにより形成され、上記応力緩和層は、上記原料ガスとしてシラン系ガス、窒素ガスおよび酸素ガスが用いられることにより形成されることを特徴とする請求項5記載の有機EL素子の封止膜。
【請求項7】
複数の有機EL素子とこれらの有機EL素子が搭載される基板とを備えた有機EL表示パネルにおいて、上記有機EL素子が請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の封止膜によって封止されていることを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項8】
基板に搭載された有機EL素子を被覆して封止することにより有機EL表示パネルを製造する有機表示パネルの製造方法において、
上記有機EL素子に第1層として窒化シリコンからなる第1バリヤ層を積層する素子封止工程と、この素子封止工程の後、第2層として窒酸化シリコンおよび酸化シリコンの少なくとも一方からなる応力緩和層を上記バリヤ層上に積層する応力緩和工程と、この応力緩和工程の後、第3層として窒化シリコンからなる第2バリヤ層を上記応力緩和層上に積層するバリヤ工程とを含むことを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項9】
上記素子封止工程、応力緩和工程およびバリヤ工程では、上記基板に対向配置された平板型コイルによる磁場によって原料ガスをプラズマ化することにより当該基板上に成膜する誘導結合型のプラズマCVD装置を用いて、上記第1および第2バリヤ層並びに応力緩和層を形成することを特徴とする請求項8記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項10】
上記素子封止工程、応力緩和工程およびバリヤ工程では、上記平板型コイルの巻回し部が略矩形状に形成されるとともにこの巻回し部が略同一平面内に並設されているプラズマCVD装置を用いることを特徴とする請求項9記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項11】
上記素子封止工程およびバリヤ工程では、上記原料ガスとしてシラン系ガスおよび窒素ガスを用いるとともに、上記応力緩和工程では、上記原料ガスとしてシラン系ガス、窒素ガスおよび酸素ガスを用いることを特徴とする請求項9または請求項10記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項12】
上記素子封止工程、応力緩和工程およびバリヤ工程において積層される上記第1および第2バリヤ層並びに応力緩和層は、上記プラズマCVD装置内において0.1Pa以下の圧力下で形成することを特徴する請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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