説明

木材製品

【課題】 形状が安定した木材製品を提供する。
【解決手段】 原木の芯部5を通り、少なくとも5mmの幅寸法に形成された溝部3、を有することを特徴とする。なお、溝部3は、第一溝部6と、該第一溝部6の開口部6aに位置し、第一溝部6の溝幅より大きい溝幅を有する第二溝部7とを備えてなり、溝部3を有する主体部材2と、第二溝部7に嵌入され、第一溝部の開口部を閉塞する嵌入部材4とを具備するものとしてもよい。また、溝部3は、第二溝部7の底面から、第一溝部6の開口部を挟み、第一溝部6に並行して凹設された一対の第三溝部8をさらに備え、嵌入部材は4、一対の第三溝部8に係合する一対の係合部9を有するものとしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材製品に関するものであり、詳しくは、建築物の構成材として用いられる木材製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、柱材や壁材等の建築物の構成材として用いられる木材製品がある。この木材製品は、原木を、角柱形状、又は円柱形状等に製材してなる材木を乾燥させてこの材木に含まれる水分を除去した後に、所望の形状に成形することによって製造されるものである。
【0003】
ここで、木は、乾燥によって収縮、反り、及び歪み等の変形が生じる性質を有している。そのため、乾燥が不十分な木材製品の場合、乾燥の進行によって変形が生じる。さらには、この変形が進行した場合、材木の表面に亀裂が発生する可能性がある。
【0004】
そして、この亀裂の発生を防止するために、予め木材製品の表面から原木の芯部に向かって切込(所謂、「背割り」)を設けることは従来から行なわれている。
【0005】
また、原木の芯部を抜き取る作業である「芯抜き」を行なうことも従来から行なわれている。これは、特に変形が生じやすい芯部を抜き取ることによって大きな変形を抑制するものである。
【0006】
上記従来技術は、一般的な事項であり、本出願人は、本出願時において、この従来技術を特定する文献を特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、木材製品に設けられる「背割り」は、鋸刃によって設けられるものであり、幅寸法は鋸刃の幅寸法と同寸法の2mm程度と狭いものであるため、木材製品を十分に乾燥させることはできず、木材製品の形状を安定させることはできなかった。
【0008】
また、「芯抜き」を行なった場合も、内部に空洞が形成されるだけであることから、やはり、木材製品全体を十分に乾燥させることはできず、木材製品の形状を安定させることはできなかった。特に、長尺状の木材製品である場合、空洞の内周面からは水蒸気が外部に放出されにくいため、木材製品を十分に乾燥できないといった問題を顕著に生じる。さらに、長尺状の木材製品では芯部を抜き取る作業は困難でもあった。
【0009】
このように、木材製品に「背割り」を設けることや、「芯抜き」を行なうことは、木材製品に生じる変形を見込んで、亀裂又は大幅な変形を抑制するためのものであり、乾燥を十分に行なうことはできず、変形自体を免れることができるものではなかった。このため、「背割り」を設けた木材製品、及び、「芯抜き」を行なった木材製品を含め、従来の木材製品は形状が不安定となり、この木材製品を使用した建築物に支障を来すおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みて、形状が安定した木材製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために本発明の採った手段は、
「原木から形成され、建築物の構成材として用いられる木材製品であって、
前記原木の芯部を通り、少なくとも5mmの幅寸法に形成された溝部、を有することを特徴とする木材製品」
である。
【0012】
上記構成の木材製品では、原木の芯部を通る深さを有し、溝幅が少なくとも5mmに形成された溝部が凹設されている。よって、係る形状の木材製品を製造するための材木にも、一次的な溝部として、原木の芯部を通る深さを有し、溝幅の広い溝部を凹設することができる。これにより、材木は、乾燥させることが困難である芯部が切除かれるばかりでなく、溝部の内側面が大きく開放されるため、この内側面から材木に含まれる水分が水蒸気として良好に放出される。その結果、材木は十分に乾燥され、この材木を用いて成形された木材製品においての変形は防止される。従って、上記構成の木材製品によれば、形状の安定した木材製品とすることができる。
【0013】
なお、溝部における底面の幅寸法については、大きくすると、乾燥しにくい芯部が大きく切り除かれると共に内部が大きく開放され、材木の乾燥が十分に行なわれる点で好適であり、5mm以上、好ましくは10mm以上、さらに好ましくは15mm以上とするのがよい。一方、上限としては、特に限定されるものではないが、例えば、木材製品の断面積に対する溝部の占有面積の割合を少なく抑えられるという点では、幅寸法を小さくすることが好適であり、35mm以下、好ましくは30mm以下、さらに好ましくは25mm以下とするのがよい。
【0014】
また、木材製品には、複数の部材を組み付けて形成されるものがある。この場合、係る木材製品の主体となる部材に、上述の溝部が凹設されていることが望ましい。これにより、主体となる部材を十分に乾燥させることが可能になり、形状が安定するため、木材製品としての形状も確実に安定させることができる。さらに、溝部が凹設されている部材としては、木材製品を構成するもののうちいずれか一つに限定されるものではなく、複数の部材に溝部が凹設されていても構わない。これによって、部材各々を十分に乾燥させることが可能になり、木材製品としての形状をより確実に安定させることができる。
【0015】
また、上記において、
「前記溝部は、第一溝部と、該第一溝部の開口部に位置し、前記第一溝部の溝幅より大きい溝幅を有する第二溝部とを備えてなり、
前記溝部を有する主体部材と、前記第二溝部に嵌入され、前記第一溝部の開口部を閉塞する嵌入部材とを具備する
ことを特徴とする木材製品」
としてもよい。
【0016】
溝部が凹設され、この溝部が一面に開放された形態の木材製品では、溝部を有しない従来の木材製品の外形形状と異なる外形形状を呈するため、建築物の構成材として用いることができない場合がある。
【0017】
上記構成の木材製品では、第一溝部より幅広の第二溝部に嵌入部材が嵌入される。これにより、第二溝部の底部に位置する第一溝部の開口部は閉塞される。従って、上記構成の木材製品によれば、木材製品の外径形状は溝部を有しない木材製品と同様の形状とすることが可能になり、従来の木材製品と同様に扱うことができる。
【0018】
また、上記において、
「前記溝部は、前記第二溝部の底面から、前記第一溝部の開口部を挟み、前記第一溝部に並行して凹設された一対の第三溝部をさらに備え、
前記嵌入部材は、一対の前記第三溝部に係合する一対の係合部を有する
ことを特徴とする木材製品」
としてもよい。
【0019】
ここで、芯部を通る溝部が凹設された木材製品に乾燥による変形が生じた場合、溝部の対向する側面を形成する一対の側壁部は互いに離間する方向に変形する。
【0020】
上記構成の木材製品では、第二溝部の底面に第一溝部の開口部を挟んで一対の第三溝部が形成されている。そして、嵌入部材には、一対の第三溝部に係合する一対の係合部が形成されている。主体部材の第三溝部に嵌入部材の係合部が係合することにより、上述の側壁部は、互いに離間する方向への変形が制限される。従って、上記構成の木材製品によれば、より確実な形状の安定化を図ることができる。
【0021】
また、上記において、
「前記溝部の開口部が設けられた面と反対の面に凸設され、他の木材製品の溝部の開口部に嵌合可能な嵌合部をさらに有することを特徴とする木材製品」
としてもよい。
【0022】
上記構成の木材製品では、溝部の開口部と反対の面に嵌合部が形成される。そして、この嵌合部を他の木材製品の溝部の開口部に嵌合させることによって木材製品同士が連結される。よって、この連結を繰り返すことによって、複数の木材製品が連結される。従って、上記構成の木材製品によれば、施工に際して複数の木材製品を連結する場合に、各木材製品を良好に連結することができる。
【発明の効果】
【0023】
上述の通り、本発明によれば、形状が安定した木材製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明に係る木材製品の実施形態の一例を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本例では、柱材や壁材等の建築物の構成材として用いられる少なくとも90cm以上、好適には180cm以上に形成された長尺状の木材製品1を例示する。
【0025】
本実施形態の木材製品1は、図1(a)に示すように、略角柱形状を呈し、一つの面2aに溝部3を有する主体部材2と、この溝部3に嵌入された嵌入部材4とから構成されている。ここで、主体部材2、及び嵌入部材4は共に原木から製造されたものである。
【0026】
さらに詳しく説明すると、溝部3は、原木の芯部5を通り、5mm以上の溝幅を有する第一溝部6、この第一溝部6の開口部6aに位置する第二溝部7、及び、第二溝部7の底面に凹設された一対の第三溝部8とから形成されている。
【0027】
そして、嵌入部材4は、溝部3の開口部3a(すなわち、第二溝部7の開口部)の幅と略同一の幅寸法を有して形成されており、図1(b)に示すように、この嵌入部材4を主体部材2に嵌入することによって、第一溝部6の開口部6aは閉塞される。また、嵌入部材4は、嵌入方向(図1(a)矢印参照)に対する厚み寸法を、第二溝部7の深さ寸法と略同一に形成されており、嵌入部材4を主体部材2に嵌入することによって、主体部材2の表面と嵌入部材4の表面とが面一になり、木材製品1の外面形状は略角柱となる。これによって、木材製品の外径形状は溝部を有しない木材製品と同様の形状となり、例えば柱材として良好に用いることができる。
【0028】
さらに、嵌入部材4には、嵌入した際に第三溝部8に対応する位置に、係合部9が形成されている。これによって、嵌入部材4を主体部材2に嵌入した際に、係合部9が第三溝部8に係合し、溝部3の対向する側面を形成する一対の側壁部10が固定される。その結果、側壁部10の互いに離間する方向への変形が制限される。さらに、嵌入部材4における一対の係合部9の間には、第一溝部6に対応する位置に介在部11が設けられており、嵌入部材4を主体部材2に嵌入した状態では、第一溝部6に介在部11が介在される。これにより、木材製品1の断面積に対する溝部3の占有面積の割合が減少し、木材製品1としての強度の低下を軽減することができる。
【0029】
次に、木材製品1の別例を示す。木材製品1は、図2に示すように、溝部3の開口部3aが設けられた面2aと反対の面2bに他の木材製品1の開口部3aに嵌合可能な嵌合部21をさらに有する主体部材2と、厚み寸法が第二溝部7の深さ寸法より小寸に設定されている嵌入部材4とから構成されている。このとき、嵌入部材4の外面は主体部材2の外面から陥没した状態となり、木材製品1の外面には凹部22が形成される。この場合には、主体部材2の嵌合部21を、他の木材製品1の凹部22に嵌合させることによって二つの木材製品1を連結することができる。そして、図3に示すように、複数の木材製品1を連結することによって壁面23を形成することができる。なお、主体部材2の一面2cは、円弧状に形成されている。これによって、壁面23の外面も円弧状に形成され、壁面23の装飾性を高めることができる。また、本例の木材製品1では、嵌合部21、及び凹部22の他は、上記例の木材製品1と同様であり、図面に同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0030】
次に、原木の芯部を通り、5mm以上の溝幅を有する溝部が凹設された木材製品の製造方法について説明する。まず、原木から材木を製材する。ここで、材木は、上述の木材製品と同様に、原木の芯部を通り、溝幅の広い一次的な溝部を有する形状に製材することができる。
【0031】
ところで、原木の芯部を通り、溝幅の大きい溝部が凹設された材木の場合、乾燥によって溝部の対向する側面が互いに離間する方向に変形する。特に、十分な乾燥を行なえば行なうほど、溝部の形状が大幅に変形してしまう。このため、材木を木材製品としての形状と近い形状に製材すると、材木は木材製品として所望する形状と大きく異なる形状に変形し、木材製品を成形できなくなるおそれがある。そこで、製材する材木の形状を、乾燥の際に生じる変形と相反する形状、すなわち、溝部の底部の幅寸法に比べ、開口部の幅寸法を小さく設定した形状にすることが好適である。これによって、乾燥による開口部の大幅な拡開を抑制することができる。
【0032】
そして、製材後に材木を乾燥させる。このとき、材木に凹設された溝部の内側面が大きく開放されるため、材木に含まれる水分が水蒸気として良好に放出される。従って、材木を十分に乾燥させ、原木の含水率(すなわち、材木の全乾重量に対する含有水分量を百分率にて表したもの)が60%以上、100%以下であるのに対し、材木の含水率が、30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下になるまで乾燥を行なうことができる。その結果、乾燥後にさらに乾燥が大きく進行することを抑制でき、形状を安定化させることができる。そして、このとき、材木に変形が生じるが、上述のように、溝部の開口部が底部よりも狭くなるよう製材されているため、係る変形によって開口部が拡開し、木材製品に近い形状を呈することになる。
【0033】
最後に、材木の外面を適宜削り取って、木材製品として所望する形状に成形する。これにより、原木から木材製品を製造することができる。
【0034】
以上、本発明に係る一例を説明したが、本発明はこれに限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0035】
すなわち、本実施形態の木材製品1において、嵌入部材4を嵌入した際に、主体部材2の表面と嵌入部材4の表面とが面一になるもの、又は、嵌入部材4の外面が主体部材2の外面から陥没した状態となるものを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、嵌入部材4の嵌入方向に対する厚み寸法を、第二溝部7の深さ寸法より大寸にして、嵌入部材4の一部が主体部材2の外面から突出した状態となるものであっても構わない。この場合、木材製品の外面には凸部が形成され、木材製品の外形形状の一部として利用することができる。また、本実施形態の木材製品1において、角柱形状を呈するものを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、円柱形状を呈するものであっても構わない。
【0036】
また、本実施形態の木材製品1において、主体部材2と嵌入部材4とを具備するものを例示したがこれに限定されるものではない。例えば、嵌入部材4を有さず、溝部3が凹設された単体の部材からなる木材製品1であっても構わない。この場合、木材製品1に凹設された溝部3をそのまま他の木材製品1の嵌入等に利用し、連結することが可能である。
【0037】
また、本実施形態において、第一溝部6、第二溝部7、及び、第三溝部8を備えてなる溝部3を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、溝部3の形状が、原木の芯部を通り、少なくとも5mmの幅寸法に形成され、底部と開口部3aとの幅寸法が同一寸法を有する形状を呈するものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る木材製品の一例を示す正面図である。
【図2】本発明に係る木材製品の別例を示す正面図である。
【図3】図2に示した木材製品の使用例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 木材製品
2 主体部材
3 溝部
3a 開口部
4 嵌入部材
5 芯部
6 第一溝部
6a 開口部
7 第二溝部
8 第三溝部
9 係合部
10 側壁部
11 介在部
21 嵌合部
22 凹部
23 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原木から形成され、建築物の構成材として用いられる木材製品であって、
前記原木の芯部を通り、少なくとも5mmの幅寸法に形成された溝部、を有することを特徴とする木材製品。
【請求項2】
前記溝部は、第一溝部と、該第一溝部の開口部に位置し、前記第一溝部の溝幅より大きい溝幅を有する第二溝部とを備えてなり、
前記溝部を有する主体部材と、前記第二溝部に嵌入され、前記第一溝部の開口部を閉塞する嵌入部材とを具備する
ことを特徴とする請求項1に記載の木材製品。
【請求項3】
前記溝部は、前記第二溝部の底面から、前記第一溝部の開口部を挟み、前記第一溝部に並行して凹設された一対の第三溝部をさらに備え、
前記嵌入部材は、一対の前記第三溝部に係合する一対の係合部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の木材製品。
【請求項4】
前記溝部の開口部が設けられた面と反対の面に凸設され、他の木材製品の溝部の開口部に嵌合可能な嵌合部をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の木材製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−56133(P2006−56133A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240265(P2004−240265)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(300076541)親和木材工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】