説明

木製家具における部材の連結構造

【課題】家具を構成する部材が高い強度にて連結することが出来る連結構造の提供。
【解決手段】テーブルを構成する上板1と側板2は所定の傾斜角をもって互いに当接する接合面7,7を有し、この接合面7,7には嵌合溝6,6を設け、そして該嵌合溝6,6には金属アングル3の上片4と側片5を隙間なく嵌合して連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木製家具を対象とし、各部材が安定して連結されるように、高い強度を備えた連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木製家具は日本の和風様式の住宅に適合することから、昔から色々な種類及び形態の家具が使用されている。ところで、これら木製家具は複数の木材が連結した構造となっているが、各部材の連結強度が問題となる。図5は木製のテーブルを示した具体例であり、上板(イ)と両側板(ロ)、(ロ)から成って、上板(イ)の両側端に側板(ロ)、(ロ)が連結した門形テーブルを構成している。
【0003】
ここで、上板(イ)の両側端は側板(ロ)、(ロ)の上に載った状態でネジ止めされている。又はクギ打ちする場合もあるが、頭部が上板(イ)の表面に露出しないように埋め込まれている。ところが、複数本のネジ止めにて上板(イ)と側板(ロ)を連結した構造はその連結強度が十分でなく、他の手段にて補強する場合が多い。
【0004】
一方、上記図5に示すように、側板(ロ)の上端に上板(イ)を載置した連結構造はテーブルの外観が損なわれることから、一般的には上板(イ)と側板(ロ)の接合面を45°とした突合せ面を形成し、この状態でネジ止めしたりクギ打ちする場合が多い。しかし、連結強度が不足するのは同じであり、何らかの補強が必要となる。
【0005】
図6a)は上板(イ)と側板(ロ)の内側コーナーに三角形断面の補給部材(ハ)を取着した場合である。内側コーナーに該補強部材(ハ)をネジ止め又はクギ打ちなどで固定することで、上板(イ)と側板(ロ)の連結強度は向上するが、内側コーナーに該補強部材(ハ)が存在することが邪魔になるケースも多い。又同図の(b)は金属製のL形金具(ニ)を取付けた場合であり、上片(ホ)は上板(イ)にネジ止めされ、側片(ヘ)は側板(ロ)にネジ止めされている。
【0006】
従って、上板(イ)と側板(ロ)の連結強度は高くなる。すなわち、側板表面に垂直方向の外力が作用しても、又上板(イ)に左右の力(F)が働いても、側板(ロ)は連結部を基点として折れ曲がったり、倒れたりすることはない。
【0007】
金属製の上記L形金具(ニ)にて上板(イ)と側板(ロ)の連結部を補強する場合、三角形断面の補強部材(ハ)ほどではないが、邪魔になることもあり、何よりも木製家具に金属製のL形金具(ニ)を取付けることは該家具の外観を損なうことになる。これらの他にも連結部を補強する手段は色々存在するが、補強手段が邪魔にならず、外観を損なわないことが条件となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、木製家具は複数の木材を連結して構成しているが、該連結構造に関して上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、簡単な構造でもって高い連結強度を得ることが出来、しかも家具の外観を損なうことのない連結構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る家具における部材の連結構造には金属アングル(例えばL形金具など)が使用される。しかし、従来のように互いに連結する部材の内側コーナーに上記金属アングルを取付けるのではなく、内部に埋め込んだ構造としている。そこで、互いに当接する部材の接合面には嵌合溝が形成され、この嵌合溝に金属アングルの各片が嵌合して連結部材が連結される。
【0010】
互いに連結される各部材の交差角度は90°に限定するものではなく、この交差角度に応じた金属アングルが使用される。嵌合溝は接合面の全幅にわたって形成されるが、金属アングルの長さは嵌合溝と同一寸法にする必要はない。嵌合溝に複数の金属アングルを取付ける場合もある。そして、嵌合溝の端面は開口しないように木片を埋めて塞がれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る家具を構成している各部材は金属アングルを介して連結されるが、しかし従来のようなネジ止めではなく、接合面に嵌合溝を形成し、この嵌合溝に金属アングルの各片が嵌合する。従って、金属アングルの強度がそのまま各部材の連結強度となって非常に高くなり、安定した連結構造が構成される。例えば、前記図5に示す門形テーブルの場合、天板に左右の力Fが働いても、金属アングルの各片の交差角が変化しない限り側板が折れ曲がることはない。そして、該金属アングルは連結部の表面に露出することはなく、その為に家具の外観が損なわれることもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の連結構造を備えた門形テーブル。
【図2】連結部の縦断面拡大図。
【図3】金属アングルの具体例。
【図4】本発明の連結構造を備えたもたれ椅子。
【図5】従来の連結構造を備えた門形テーブル。
【図6】従来の連結部の補強手段。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の連結構造が適用される家具は色々あるが、説明の都合上前記図 5に示した門形テーブルとする。図1はこの門形をしたテーブルの正面図、底面図、側面図を示している。上板1の両側端に側板2,2を連結した門形形態をなし、本発明では上板1と側板2の連結構造が強固であり、しかもテーブルの外観が損なわれないように構成している。
【0014】
そこで、この連結部にはL形断面の金属アングル3,3が取付けられ、しかも金属アングル3,3は外に露出しないように埋着されている。図2は図1における連結部の縦断面拡大図を示している。上記金属アングル3はL形断面をした部材であり、上片4と側片5を有して互いに垂直をなし、上片4は上板1に形成した嵌合溝6に嵌合し、側片5は側板2に形成した嵌合溝6に嵌合している。
【0015】
上板1の側端は45°に傾斜した接合面7を形成し、同じく側板5の上端は45°に傾斜した接合面7を形成している。上記嵌合溝6は接合面7から切込まれて上板1及び側板2の表面に平行に設けられ、L形断面をした金属アングル3の上片4及び側片5は該嵌合溝6,6に嵌ることで連結される。従って、上板1と側板2の連結強度は金属アングル3の上片4と側片5の曲げ強度(上片4と側片5の交差角90°を増減させるモーメント)に匹敵することになり、非常に強靭な連結構造となる。
【0016】
図1の側面図から明らかなように、嵌合溝6は正面から背面にかけて連続して形成されているが、この嵌合溝6に2本の金属アングル3,3が嵌っている。そして、正面と背面に開口した嵌合溝6には木片が嵌められて塞がっている。このように上記金属アングル3を嵌めることで、側板5の表面に大きな外力が作用しても曲がったり倒れることはなく、高い強度の連結構造と成るが、このままでは上板1及び側板2は金属アングル3の上片4及び側片5から抜けてしまう。
【0017】
そこで、上板1と側板2の接合面7が離れないように、該接合面7は接着剤にて接着されている。又は正面側及び背面側にて両接合面7,7が離れないようにクサビを打ち込むことも出来る。ここで、該金属アングル3の上片4及び側片5は嵌合溝6,6に圧入状態で嵌っていて、間には隙間が生じないように嵌合溝6の溝幅が設定される。
【0018】
図3は金属アングル3を単独で示しているように、一般にはアルミの押出し材を適当な長さに切断して用いられる。ところで、該金属アングル3は上片4と側片5の交差角θは90°と成っているが、家具の連結部を構成する各部材によっては色々な交差角の金属アングルが使用される。
【0019】
図4は本発明の連結構造を備えたもたれ椅子を示している。該もたれ椅子は前方上板8、後方上板9、前脚10、及び後脚11で構成し、これら各板材は互いに連結している。前方上板8と後方上板9とは金属アングル12を介して連結している。又前方上板8と前脚10とは金属アングル13を介して連結している。さらに、後方上板9と後脚11とは金属アングル14を介して連結している。
【0020】
ところで、図4に示すもたれ椅子は上に載って横たわることが出来る椅子であり、後方上板9は身体の胴体部を、前方上板8には腰及び脚部を支えることが出来る。そこで、前方上板8と後方上板9とは交差角αにて連結され、前方上板8と前脚10とは交差角βにて連結され、さらに後方上板9と後脚11とは交差角γにて連結している。
【0021】
その為に、金属アングル12の両片は交差角αと成っている。勿論、前方上板8と後方上板9の接合面には嵌合溝が形成され、この嵌合溝に金属アングル12の各片が嵌合して連結し、しかも接合面が離れないように接着されている。又、金属アングル13の両片は交差角βとなっていて、前方上板8と前脚10の接合面には嵌合溝が形成され、この嵌合溝に金属アングル13の各片が隙間なく嵌合している。さらに、金属アングル14の両片は交差角γと成っていて、後方上板9と後脚11の接合面には嵌合溝が設けられ、この嵌合溝に金属アングル14の各片が隙間なく嵌合している。
【0022】
このもたれ椅子の前方上板8及び後方上板9の連結部は床面に接しておらず、上に載るならば前方上板8及び後方上板9は下方へ撓むことに成る。この場合、両前方上板8と後方上板9の連結部には大きなモーメントが作用するが、金属アングル12を嵌めて連結することで該モーメントに耐えることが出来る。ただし、この場合、接合面が離れないように金属アングル12の各片と前方上板8及び後方上板9を連結する為にネジ止め、又はピン止めする方がよい。
【符号の説明】
【0023】
1 上板
2 側板
3 金属アングル
4 上片
5 側片
6 嵌合溝
7 接合面
8 前方上板
9 後方上板
10 前脚
11 後脚
12 金属アングル
13 金属アングル
14 金属アングル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具を構成する部材の連結構造において、各部材は所定の傾斜角をもって互いに当接する接合面を有し、この接合面には嵌合溝を設け、そして該嵌合溝には金属アングルの各片を隙間なく嵌合して連結したことを特徴とする家具における部材の連結構造。
【請求項2】
互いに当接した上記接合面が離れないように、接着剤などの固定手段も受けた請求項1記載の家具における部材の連結構造。
【請求項3】
上記嵌合溝を接合面に沿って全長にわたって形成した請求項1、又は請求項2記載の家具における部材の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−17364(P2011−17364A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161579(P2009−161579)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(503212124)
【Fターム(参考)】