説明

木質部材の接合方法、接合構造及びそれに使用する接合具

【課題】木質部材の接合構造の構造体としての高い剛性と強度を確保することができ、接合具の構造がより簡単で施工を容易に行うことができると共に接合具に緩みが生じにくい木質部材の接合構造を提供する。
【解決手段】接合される木質部材3,3aの各接合面30,30aが突き合わされ、連結孔31,31間に連結部材1が挿入されている。その連結部材1の各挿通孔11,12に通じる装着孔36,37には、それぞれ一対の拡張部材20,20aが挿入され、その間には連結部材1の各挿通孔11,12を貫通して、全長にわたり同じ太さの丸棒状の止め部材21が打ち込まれている。止め部材21によって各拡張部材20,20aの間隔が拡がってその周りの木質部が圧縮され、止め部材21を拡張部材20,20aで締め付けて固定し、木質部材3,3aが接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質部材の接合方法、接合構造及びそれに使用する接合具に関する。更に詳しくは、木質部材の接合構造の構造体としての高い剛性と強度を確保することができ、接合具の構造がより簡単であり、施工を容易に行うことができると共に接合具に緩みが生じにくいものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば木質の軸組構造体は、構成部材である木質部材を様々な角度で接合して骨組構造を有するように構成されている。このような軸組構造体としては、例えば、三角形の骨組を基本単位とするトラス構造体がある。トラス構造体は、木質の橋や屋根等の各種構造物の骨材として広く用いられている。
トラス構造体等の軸組構造体の各部材の接合には、使用状態が外部から見えないか、見えにくいようにした接合具が使用されている。このような接合具としては、例えば特許文献1に記載の接合金物組体がある。
【0003】
この接合金物組体は、木造建築における仕口またはその他の接合部分を緊結する接合金物として使用される。接合金物組体は、接合金物部材、楔受材及び楔で構成されている。接合金物部材は、柱等の接合溝部の底面から側部に向けて設けられた貫通穴または有底穴に挿通される。接合される横架材の端部からは略軸方向に横穴が設けられ、さらに側面から横穴に連通する縦穴が設けられている。
【0004】
楔受材は、横架材の縦穴より挿入して接合金物部材の先端に係合される。楔は、楔受材の楔導入路に差し込まれ、楔受材によって縦穴の内壁を押して横架材の端部を柱の接合溝部に接合することができる。
そして、楔の打ち込みにより、楔受材が拡張して部材を強固に締め付けるので、それによって楔に生じるスプリングバックが各部材に有効に働き、施工後の構造体としての高い剛性と強度を確保することができるというものである。
【0005】
【特許文献1】特許第3355552号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1記載の接合金物組体には、次のような課題があった。
すなわち、接合金物部材を接合部の貫通穴に固定するため使用される楔受材と楔は、それぞれの接触面(楔受材では楔導入路)が長さ方向に対し斜めになっている。
このため、楔を楔受材の間に打ち込んだ後、楔に作用するスプリングバックによって楔が徐々に抜けてしまうことがあり、これが原因で柱等と横架材の接合部に緩みが出るおそれがあった。したがって、実際の施工現場では、楔を打ち込んだ後、楔受材から楔が抜けないようにする何らかの手段を講じる必要があり、接合作業が繁雑になっていた。
【0007】
(本発明の目的)
そこで本発明の目的は、軸組構造体等、木質部材の接合構造の構造体としての高い剛性と強度を確保することができるようにし、使用される接合具の構造がより簡単であり、接合作業を容易に行うことができると共に、施工後において接合具に緩みが生じにくい木質部材の接合方法、接合構造及びそれに使用する接合具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
(1)本発明は、接合される木質部材の各接合面に互いに通じるように形成された連結孔間に連結部材を挿入して各接合面を突き合わせ、木質部材において、連結部材の各挿通孔に通じるように形成された装着孔に、各挿通孔を貫通するように、長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材を挿通し、止め部材が通る装着孔周りの木質部を圧縮して止め部材を直接または間接的に締め付けて木質部材を接合する、
木質部材の接合方法である。
【0009】
(2)本発明は、接合される木質部材の各接合面が突き合わされ、各接合面に形成された連結孔間に連結部材が挿入されており、
木質部材において接合面とは異なる面に、連結孔に挿入された連結部材の各挿通孔に通じる装着孔が設けられており、
各装着孔には、それぞれ一対の拡張部材が挿入され、各拡張部材の間には連結部材の各挿通孔を貫通して、長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材が挿通され、止め部材によって各拡張部材の間隔が拡がって各拡張部材周りの木質部を圧縮し、止め部材を拡張部材で締め付けて固定し、木質部材が接合されている、
木質部材の接合構造である。
【0010】
(3)本発明は、接合される木質部材の各接合面が突き合わされ、各接合面に形成された連結孔間に連結部材が挿入されており、
木質部材において接合面とは異なる面に、連結孔に挿入された連結部材の各挿通孔に通じる装着孔が設けられており、
各装着孔には、連結部材の各挿通孔を貫通して、長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材が挿通されており、
止め部材が通る装着孔周りの木質部を止め部材へ向かうように圧縮する木圧縮部材が打ち込まれており、圧縮された木質部で止め部材を締め付けて固定し、木質部材が接合されている、
木質部材の接合構造である。
【0011】
(4)本発明は、(2)の発明に使用する接合具であって、
少なくとも二箇所に所要間隔をおいて形成された挿通孔を有する連結部材と、連結部材を木質部材間に固定する止め具を備えており、
止め具は、
木質部材において前記連結部材の挿通孔に通じる装着孔に入れられる対となった拡張部材と、
各拡張部材の間に挿通することによって連結部材の挿通孔を貫通し各拡張部材の間隔を拡げて各拡張部材周りの木質部を圧縮する、長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材と、
を備えており、
各拡張部材の相対向する面には、止め部材が挿通されたときに止め部材が収まる凹部が、その表面が長さ方向と平行になるように設けられている、
木質部材を接合する接合具である。
【0012】
(5)本発明の接合具は、各拡張部材を凹部の断面形状が円弧形状となるよう形成し、止め部材を凹部の形状に合う直径を有する丸棒形状に形成することもできる。
【0013】
(6)本発明は、(3)の発明に使用する接合具であって、
少なくとも二箇所に所要間隔をおいて形成された挿通孔を有する連結部材と、連結部材を木質部材間に固定する止め具を備えており、
止め具は、
長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材と、
止め部材が通る装着孔周りの木質部を止め部材へ向かうように圧縮するよう打ち込まれる木圧縮部材と、
を備えている、
木質部材を接合する接合具である。
【0014】
(7)本発明の接合具は、木圧縮部材を、一方の口部を形成する板に刃部を有すると共に止め部材を挿通させることができる内部空間を有する角筒体で形成してもよい。
【0015】
(8)本発明の接合具は、木圧縮部材を、一端側に刃部を有する所要厚さの板で形成してもよい。
【0016】
連結部材の形状は、例えば丸棒等の棒状体、板状体あるいは各種形状の複数の部材を組み合わせたり複合させたもの等であるが、これらに限定するものではない。
連結部材、拡張部材及び止め部材の素材は、例えば鉄等の金属であるが、十分な強度を有するものであれば、これに限定するものではなく、合成樹脂等、他の素材を採用することもできる。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「締め付け」の用語は、止め部材に対し複数の方向から木質部の圧縮力が作用する場合だけでなく、一方向からのみ圧縮力が作用する場合も含む意味で使用している。
【0018】
(作用)
本発明に係る木質部材の接合構造及びそれに使用する接合具の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0019】
接合具を使用して木質部材の接合構造を構築する方法を説明する。ここでは、断面長方形状の木質部材を長さ方向の一端面を突き合わせるようにして接合する場合で、第1の接合構造(請求項2)と第2の接合構造(請求項3)に分けて説明する。
【0020】
(第1の接合構造の作用)
各木質部材(3,3a)の連結孔(31,31)間に渡すように連結部材(1)を収容した状態で接合面(30,30a)を突き合わせる。連結部材(1)の挿通孔(11,12)が、木質部材(3,3a)の装着孔(36,37)に合うようにする。各装着孔(36,37)に一対の拡張部材(20,20a)を凹部(22)を向かい合わせにして挿入し、全体が各装着孔(36,37)にほぼ埋没するようにする。
【0021】
拡張部材(20,20a)の挿入後、拡張部材(20,20a)の間に止め部材(21)を打ち込む。打ち込まれる止め部材(21)は、連結孔(31,31)内の連結部材(1)の挿通孔(11,12)に貫通すると共に各拡張部材(20,20a)を外方向へ押して間隔を拡げる。各拡張部材(20,20a)は装着孔(36,37)の木質の孔壁に強く押し付けられる。孔壁周りの木質部分は圧縮され、そのスプリングバックまたは反力によって拡張部材(20,20a)が止め部材(21)を締め付けて固定する。これにより、接合具を構成する連結部材(1)と止め具(2)は木質部材(3,3a)の内部で強固に一体化し、木質部材(3,3a)は接合面(30,30a)で接合される。
【0022】
各拡張部材(20,20a)が装着孔(36,37)の孔壁に強く押し付けられて孔壁が圧縮されることにより、変形して木組織の密度が高くなっているので、孔壁はさらなる圧縮に対する変形代が小さくなっている。これにより、接合構造体の構築後、装着孔(36,37)の孔壁に、孔壁に接触している各拡張部材(20,20a)によって応力(荷重)が作用しても、孔壁の新たな変形を抑えることができるので、施工後の構造体としての高い剛性と強度を確保することができる。
【0023】
また、各拡張部材(20,20a)の相対向する面には、止め部材(21)が挿通されたときに止め部材(21)が収まる凹部(22)が、その表面が長さ方向と平行になるように設けられており、さらに止め部材(21)は長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成されており、従来の楔を使用したものとは相違して、加工が困難な傾斜面を備えた構造とはなっていない。したがって、各拡張部材(20,20a)で孔壁が圧縮されて変形することで生じるスプリングバックによる止め部材(21)の緩みや抜け等は生じにくい。これにより、接合作業において、従来のような止め具の緩み止め等の作業は不要になるので、作業の繁雑さを低減できる。また、止め具の構造がより簡単であり、製造コストを安価に抑えることができる。
【0024】
このようにして、断面長方形状の木質部材(3,3a)を長さ方向の一端面である接合面(30,30a)を突き合わせるようにして接合した木質部材の接合構造を構築することができる。
また、前記接合構造によれば、軸組構造体の施工後に解体や一部の木質部材(3,3a)の組み替えを行う場合にも、止め部材(21)を抜き取るだけで、連結部材(1)が連結孔(31,31)から外れるので、木質部材(3,3a)を接合面(30,30a)で簡単に分離させることができる。
【0025】
各拡張部材(20,20a)を凹部(22)の断面形状が円弧形状となるよう形成し、止め部材(21)を凹部(22)の形状に合う直径を有する丸棒形状に形成した接合具は、止め部材(21)を挿通する連結部材(1)の挿通孔(11,12)を円孔とすることができ、円孔はドリルによる加工ができるので、例えばレーザー加工が必要な四角形の挿通孔を設ける場合と比較して、連結部材(1)の加工を容易かつ低コストで行うことができる。
【0026】
(第2の接合構造の作用)
各木質部材(9,9)の連結孔(31,31)間に渡すように連結部材(6)を収容した状態で接合面を突き合わせる。連結部材(6)の挿通孔(60,60)が、木質部材(9,9)の装着孔(92,92)に合うようにする。
長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材(71)を装着孔(92,92)から連結部材(6)の挿通孔(60,60)に貫通させる。装着孔(92,92)と挿通孔(60,60)の大きさは、止め部材(71)を挿通する(または打ち込む)ことができ、かつ止め部材(71)との間でほぼ隙間がないように形成されている。
【0027】
止め部材(71)が通る装着孔(92,92)周りの木質部に木圧縮部材(70)を打ち込む。木圧縮部材(70)は、少なくとも止め部材(71)により応力が作用する方向側の木質部に打ち込まれる。木圧縮部材(70)が木質部に打ち込まれることにより、その厚さの分だけ木組織は圧縮される。このときの圧縮は、その変形量の一部または全部が止め部材(71)へ向かうように行われる。これにより、圧縮された木質部で止め部材(71)が締め付けられて固定され、接合具を構成する連結部材(6)と止め具(7)は木質部材(9,9)の内部で強固に一体化し、木質部材(9,9)は接合面で接合される。
【0028】
止め部材(71)の周りの木質部が止め部材(71)へ向かうように圧縮されることにより、木質部は変形して木組織の密度が高くなっているので、木質部はさらなる圧縮に対する変形代が小さくなっている。これにより、接合構造体の構築後、装着孔(92,92)の孔壁に、孔壁に接触している止め部材(71)によって応力(荷重)が作用しても、木質部の新たな変形を抑えることができるので、施工後の構造体としての高い剛性と強度を確保することができる。
【0029】
なお、木圧縮部材(70)が、一方の口部を形成する板(702)に刃部(703)を有すると共に止め部材(71)を挿通させることができる内部空間(705)を有する角筒体で形成されている場合、刃部(703)で止め部材(71)を囲むようにして木質部に打ち込むことにより、止め部材(71)周りの全方向から木質部を圧縮することができる。したがって、装着孔(92.92)周りの木質部に止め部材(71)による応力が色々な方向から作用しても木質部の新たな変形を抑えることができる。
【0030】
また、装着孔に収まる止め部材(71)は長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成されており、木圧縮部材(70)の構造も従来の楔を使用したものとは相違して、加工が困難な傾斜面を備えた構造とはなっていない。したがって、木圧縮部材(70)で孔壁が圧縮されて変形することで生じるスプリングバックによる止め部材(71)の緩みや抜け等は生じにくい。これにより、接合作業において、従来のような止め具の緩み止め等の作業は不要になるので、作業の繁雑さを低減できる。また、止め具の構造がより簡単であり、製造コストを安価に抑えることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、拡張部材が装着孔の孔壁に強く押し付けられて孔壁が圧縮されることにより、または、止め部材が通る装着孔周りの木質部に木圧縮部材が打ち込まれて圧縮されることにより、装着孔周りの木組織が変形して木組織の密度が高くなっているので、孔壁はさらなる圧縮に対する変形代が小さくなっている。これにより、接合構造体の構築後、装着孔の孔壁に、孔壁に接触している拡張部材または止め部材によって応力(荷重)が作用しても、孔壁の新たな変形を抑えることができるので、施工後の構造体としての高い剛性と強度を確保または維持することができる。
【0032】
拡張部材の相対向する面には、止め部材が挿通されたときに止め部材が収まる凹部が、その表面が長さ方向と平行になるように設けられており、さらに止め部材は長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成されている。または、装着孔に収まる止め部材は長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成されている。つまり、いずれも従来の楔を使用したものとは相違して、加工が困難な傾斜面を備えた構造とはなっていない。
したがって、各拡張部材で孔壁が圧縮されて変形することで生じるスプリングバックによる止め部材の緩みや抜け等は生じにくい。これにより、接合作業において、従来のような止め具の緩み止め等の作業は不要になるので、作業の繁雑さを低減できる。また、止め具の構造がより簡単であり、製造コストを安価に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
〔実施の形態〕
【0034】
図1は本発明に係る接合構造の第1実施形態を示す断面説明図、
図2は図1におけるA−A断面説明図、
図3は図1に示す接続構造を構成する部材を示し、(a)は木質部材の側面視説明図、(b)は接合面を表したB矢視図、(c)は連結部材の側面図、
図4は二組の拡張部材と一本の止め部材で構成される止め具の斜視説明図、
図5は止め部材の打ち込みによる拡張部材の拡がり方を示し、(a)は一組の拡張部材が装着孔に収まっている状態のC矢視説明図、(b)は止め部材が拡張部材間に打ち込まれて装着孔内で拡張部材の間隔が拡がった状態のD矢視説明図である。
【0035】
本実施の形態に係る接合構造は、接合される木質部材3、3aと、これらを接合する接合具A1により構成されている。まず、図1に示す接合構造で使用されている接合具A1について説明する。木質部材3、3aについては後で説明する。
接合具A1は、鉄製の連結部材1及び同じく鉄製の四組の止め具2を備えている。各止め具2は、対となる拡張部材20、20aを二組と、一本の止め部材21により構成されている。
【0036】
連結部材1は、丸棒の四箇所に孔を加工した構造を有している。詳しくは、連結部材1の長さ方向の両端寄りには、それぞれ二箇所に直径方向に貫通した挿通孔11、12が設けられている。挿通孔11、12は、断面が円形状の孔であり、連結部材1の長さ方向に所要の間隔をおいて、かつ互いに軸周方向に90°を成すように設けられている(図1、図3(c)参照)。
【0037】
なお、本実施の形態では、連結部材1の片側あたりの挿通孔の数は二であるが、一または三以上でもよく、適宜設定が可能である。また、挿通孔11、12の内径は、後述する止め部材21の直径とほぼ同じに形成され、止め部材21を挿通することができる。挿通孔11、12の成す角度は90°以外の適宜角度でもよく、さらには角度をつけずに相互に平行に設けることもできる。
【0038】
図4、図5を主に参照する。
止め具2を構成する拡張部材20、20aは、どちらも同じ形状を有しているので、ここでは一方の拡張部材20についてのみ構造を説明する。
拡張部材20は、直方体の一方の広大面側に全長にわたり断面ほぼ半円形の凹部22を設けた形状を有している。この凹部22の円弧部分の曲率は、拡張部材20、20aの間に打ち込まれる止め部材21の曲率と同じになるように形成されている。凹部22の円弧部分の周方向の長さは、半円よりやや短くなるように形成されている。また、凹部22の長さ方向の表面は、拡張部材20の長さ方向の表面と平行である。
【0039】
凹部22の長さ方向の両端部には、面取りをすることによって誘導面23が設けられている。凹部22裏側の他方の広大面側には、多数の先端が尖った突起24が設けられている。そして、この構造の拡張部材20は、同じ構造の他方の拡張部材20aと組んで一組として使用される。なお、拡張部材20、20aは、凹部22を相対向させて合わせた状態で、後述する装着孔36、36a、37、37aにほぼ収まるように形成されている。
【0040】
図1、図4を主に参照する。
拡張部材20、20aと共に止め具2を構成する止め部材21は、所要長さの丸棒である。止め部材21の長さ方向の両端には、面取りをすることによって誘導面25が設けられている。止め部材21の長さは、後述する木質部材3、3aの厚さ(上下面間の長さ)とほぼ同じ長さに形成されている。また、止め部材21の直径は、軸周方向の表面の曲率が前記したように拡張部材20、20aの凹部22の内面の曲率と同じになるように設定されている。止め部材21は、各誘導面25を除き、全長にわたり同じ太さである。
【0041】
次に、図2、図3を主に参照して接合具A1と共に接合構造を構成する木質部材3、3aの構造を説明する。
木質部材3、3aは断面正方形の角材である。木質部材3、3aのそれぞれの接合面30、30aには、連結孔31が設けられている。各連結孔31は円孔であり、木質部材3、3aの中心軸線方向に、つまり上面32、下面33と平行に所要深さ(挿入される連結部材1の約1/2の長さ)に形成されている。
【0042】
また、木質部材3、3aの接合面30、30a寄りの二箇所には、上面32から下面33へ貫通した装着孔36、36aと、側面34から側面35へ貫通した装着孔37、37aが、木質部材3、3aの長さ方向に所要間隔で位置をずらして設けられている。装着孔36、36aと装着孔37、37aは断面形状がほぼ正方形状の角孔であり、互いに軸周方向へ90°を成して設けられている。装着孔36、36a、37、37aは、前記連結孔31と連通しており、装着孔36、36aは連結孔31を挟んで位置し、装着孔37、37aは連結孔31を挟んで位置している。
【0043】
(作用)
図1ないし図5を参照して、本実施の形態の接合具A1の作用、接合具A1を使用した木質部材の接合構造及びその構築方法を説明する。
ここでは、断面形状が長方形状の木質部材3、3aを長さ方向の一端面を突き合わせるようにして接合する場合で説明する。
【0044】
(1)各木質部材3、3aの連結孔31、31間に渡すように連結部材1を収容した状態で接合面30、30aを突き合わせる。各木質部材3、3aの木繊維方向は、長手方向とほぼ平行である。接合面30、30aを突き合わせた状態で、連結部材1の挿通孔11、12が、木質部材3、3aの装着孔36、36a及び装着孔37、37aに合うようにする。各木質部材3、3aの各装着孔36、36a、37、37aに、それぞれ一対一組の拡張部材20、20aを凹部22側を向かい合わせにして挿入し、全体が各装着孔36、36a、37、37aにほぼ埋没するようにする(図1及び図5(a)参照)。
【0045】
(2)各装着孔36、36a、37、37aに拡張部材20、20aを挿入した後、拡張部材20、20aの凹部22の間に止め部材21を打ち込む。打ち込まれる止め部材21は、連結孔31内の連結部材1の挿通孔11、12に貫通すると共に各拡張部材20、20aを外方向(木質部材3、3aの木繊維方向)へ押して間隔を拡げる。これによって各拡張部材20、20a外面は装着孔36、36a、37、37aの木質の孔壁に強く押し付けられる(図5(b)参照)。このとき、止め部材21によって木質部に放射状に生じる応力を拡張部材20、20aによって木繊維方向へ変えることができるので、装着孔36、36a、37、37aからの割裂を防止することができる。
【0046】
また、孔壁に拡張部材20、20aの突起24が食い込み、拡張部材20、20aのずれを防止することができる。孔壁周りの木質部分は圧縮され、そのスプリングバックまたは反力によって拡張部材20、20aが止め部材21を締め付けて固定する。接合具を構成する連結部材1と止め具2は木質部材3、3aの内部で強固に一体化し、木質部材3、3aは接合面30、30aで接合される。
【0047】
(3)各拡張部材20、20aが装着孔36、36a、37、37aの孔壁に強く押し付けられて孔壁が圧縮されることにより、孔壁が変形して木組織の密度が高くなっているので、孔壁はさらなる圧縮に対する変形代が小さくなっている。
これにより、接合構造体の構築後、接合構造体を構成する各木質部材が相互に動くことによって、各拡張部材20、20aにより装着孔36、36a、37、37aの孔壁に応力(荷重)が作用しても、孔壁の新たな変形を抑えることができる。したがって、結果的に各木質部材が相互に動きにくくなるので、施工後の構造体としての高い剛性と強度を確保することができる。
【0048】
(4)各拡張部材20、20aの相対向する面には、止め部材21が打ち込まれたときに止め部材21が収まる凹部22が、その表面が長さ方向と平行になるように設けられており、さらに止め部材21は丸棒状であり長さ方向のほぼ全長にわたり同じ太さに形成されている。つまり、従来の楔を使用したものとは相違して、加工が困難な傾斜面を備えた構造とはなっていない。
したがって、各拡張部材20、20aで孔壁が圧縮されて変形することで生じるスプリングバックによる止め部材21の緩みや抜け等は生じにくい。これにより、接合作業において、従来のような止め具の緩み止め等の作業は不要になるので、作業の繁雑さを低減できる。また、止め具の構造がより簡単であり、製造コストを安価に抑えることができる。
【0049】
このようにして、木質部材3、3aを長さ方向の一端面である接合面30、30aを突き合わせるようにして接合した木質部材の接合構造を構築することができる。
また、この接合構造によれば、軸組構造体の施工後に解体や一部の木質部材3、3aの組み替えを行う場合にも、止め部材21を抜き取り、木質部材3、3aを引き離すことにより連結部材1が連結孔31、31から外れるので、木質部材3、3aを接合面30、30aで簡単に分離させることができる。
【0050】
図6は本発明に係る接合構造の第2実施形態を示し、(a)は側面視説明図、(b)は平面視一部断面説明図、
図7は図6に示す接続構造を構成する部材を示し、(a)は木質部材の側面視説明図、(b)はE矢視図、(c)は連結板の側面図である。
【0051】
図6に示す木質部材の接合構造においては、木質部材5、5aの接合に使用される接合具A2は、長方形状の鉄製の連結板4と、前記接合具A1の止め具2と同じ止め具2によって構成されている。
連結板4の長さ方向の両側には、それぞれ三箇所に円形の挿通孔40、41、42が表裏面を貫通して設けられている(図6(b)参照)。
【0052】
接合される木質部材5、5aは各接合面50、50aが突き合わされており、接合面50、50aには上面52から下面53へ貫通する連結溝51が木質部材5、5aの長さ方向へ所要深さに形成されている。また、木質部材5、5aの接合面50、50a寄りの三箇所には、側面54から側面55へ貫通した装着孔56、56a、装着孔57、57a、装着孔58、58aがそれぞれ設けられている。
【0053】
装着孔56、56a、装着孔57、57a、装着孔58、58aは断面形状がほぼ正方形状の角孔であり、互いに平行に設けられている。装着孔56、56a、装着孔57、57a、装着孔58、58aは、前記連結溝51と連通しており、装着孔56、56aは連結溝51を挟んで位置し、装着孔57、57aは連結溝51を挟んで位置し、装着孔58、58aは連結溝51を挟んで位置している。
【0054】
連結溝51、51間には、前記連結板4が渡されて挿入されている。連結板4は、連結板4の両側にそれぞれ設けられている挿通孔40、41、42を木質部材5、5aの装着孔56、56a、装着孔57、57a、装着孔58、58aにそれぞれ合わせてある。
そして、装着孔56、56a、装着孔57、57a、装着孔58、58aには、前記接合具A1と同様にそれぞれ止め具2が装着されている。これにより、接合具を構成する連結板4と止め具2は木質部材5、5aの内部で強固に一体化し、木質部材5、5aは接合面50、50aで接合される。
【0055】
図8は本発明に係る接合構造の第3実施形態を示す断面説明図、
図9は第3実施形態の接続構造で使用する止め具を構成する木圧縮部材の斜視図、
図10は接合後の木圧縮部材にかかる応力の説明図である。
【0056】
なお、以下に説明する第3実施形態、第4実施形態及び第5実施形態は、止め部材を打ち込むことにより装着孔内で拡張部材を拡げて木質部を圧縮する前記第1実施形態及び第2実施形態とは異なり、木圧縮部材を止め部材とやや離れた木質部に打ち込むことにより止め部材との間の木質部を圧縮するものである。
また、図8は接合される木質部材9、9のうち一方の木質部材9側の接合構造のみを示している。これについては、後述する図11、図15も同様である。
【0057】
図8に示す木質部材の接合構造において使用される接合具A3は、鉄製の連結部材6と、同じく鉄製の止め具7によって構成されている。
連結部材6は、前記連結部材1と同様に丸棒形状であり、挿通孔60は連結部材1とは相違し片側一箇所に設けられているが、数を限定するものではない。
【0058】
止め具7は、木圧縮部材70と止め部材71により構成されている。止め部材71は、前記止め具2の止め部材21と同様にほぼ丸棒形状に形成されている。
木圧縮部材70は、ほぼ四角筒状(断面長方形状)に形成されている。木圧縮部材70は、それぞれ相対向する厚い板体702、702及び薄い板体702a、702aで構成されている。
【0059】
各板体702において一方の口部701を形成する側には両刃形状の刃部703が形成されている。また、各板体702aにおいて一方の口部701を形成する側には片刃形状の刃部703aが形成されている。なお、片刃は各板体702aの内面側に傾斜した刃面がある。
【0060】
木圧縮部材70には、外面側の角部四箇所に抜け止めのための先部が尖った突起704が設けられている。各突起704は、前記両刃が設けられている板体702の外面側に突出して設けられている。
また、木圧縮部材70の内部空間705は、やや余裕をもって止め部材71を挿通させることができる大きさに形成されている(図10参照)。
【0061】
(作用)
図8ないし図10を参照し、本実施の形態の接合具A3の作用、接合具A3を使用した木質部材の接合構造及びその構築方法を説明する。
各木質部材9の連結孔91(図8参照)間に渡すように連結部材6を収容した状態で接合面(図示省略)を突き合わせる。連結部材6の各挿通孔60が、各木質部材9の装着孔92、92aに合うようにする。
【0062】
止め部材71を一方の装着孔92から連結部材6の挿通孔60に貫通させ、さらに他方の装着孔92aに通るように打ち込む。装着孔92、92aと挿通孔60の大きさ(内径)は、止め部材71を打ち込むことができ、かつ止め部材71との間でほぼ隙間がないように形成されている。
【0063】
止め部材71が通る各装着孔92、92a周りの木質部に木圧縮部材70を打ち込む。木圧縮部材70は、刃部703で止め部材71を囲むように、かつ各板体702aが木繊維と平行になるようにして打ち込まれる(図8、図10参照)。木圧縮部材70が木質部に打ち込まれることにより、その厚さの分だけ木組織は圧縮される。このときの圧縮は、その変形量の一部または全部が止め部材71へ向かうように行われる。
【0064】
これにより、木質部が圧縮された圧縮部93によって止め部材71が締め付けられて固定され、接合具A3を構成する連結部材6と止め具7は各木質部材9の内部で強固に一体化し、各木質部材9は接合面で接合される。なお、前記とは逆に、まず各装着孔92、92aを囲むようにして木圧縮部材70を木質部に打ち込み、その後止め部材71を装着孔92、92aに打ち込んでもよい。これによっても前記と同様の作用が得られる。
【0065】
本実施の形態によれば、止め部材71の周りの木質部が止め部材71へ向かうように圧縮されることにより、木質部は変形して木組織の密度が高くなっているので、木質部はさらなる圧縮に対する変形代が小さくなっている。すなわち、変形しにくくなっている。これにより、接合構造体の構築後、接合構造体を構成する各木質部材が相互に動くことによって、止め部材71により装着孔92、92aの孔壁に応力(荷重)が作用しても、孔壁の新たな変形を抑えることができる。したがって、結果的に各木質部材が相互に動きにくくなるので、施工後の構造体としての高い剛性と強度を確保することができる。
【0066】
なお、木圧縮部材70は前記構造を有しているので、板体702で止め部材71を囲むようにして刃部703から木質部に打ち込むことにより、各板体702によって止め部材71周りの全方向から木質部を圧縮することができる。したがって、装着孔92、92a周りの木質部に止め部材71による応力が色々な方向から作用しても木質部の新たな変形を抑えることができる。また、図10に示すように、止め部材71によって木質部に放射状に生じる応力を木圧縮部材70によって木繊維方向へ変えることができるので、装着孔92、92aからの割裂を防止することができる。
【0067】
図11は本発明に係る接合構造の第4実施形態を示す断面説明図、
図12は第4実施形態の接続構造で使用する止め具を構成する木圧縮部材の斜視図、
図13は接合後の木圧縮部材にかかる応力の説明図、
図14は木圧縮部材の他の使用例を示す説明図である。
【0068】
図11に示す木質部材の接合構造において使用される接合具A4は、前記接合具A3の連結部材6と同じ連結部材6と、鉄製の止め具7aによって構成されている。
止め具7aは、木圧縮部材72と前記接合具A3の止め部材71と同じ止め部材71により構成されている。
【0069】
木圧縮部材72は長方形状の板体720を備え、板体720の幅方向両端部には一方の表面側に突出して端板721が全長にわたり直角に設けられている。端板721の先端縁には、抜け止めのための先端が尖った多数の突起722が設けられている。
木圧縮部材72の先端部には刃部723が形成されており、刃部723は全部が両刃で形成されている。なお、前記端板721の間隔は、止め部材71の直径よりやや広くなるように形成されている(図13参照)。
【0070】
(作用)
図11ないし図14を参照し、本実施の形態の接合具A4の作用、接合具A4を使用した木質部材の接合構造及びその構築方法を説明する。
各木質部材9の連結孔91(図11参照)間に渡すように連結部材6を収容した状態で接合面(図示省略)を突き合わせる。連結部材6の各挿通孔60が、各木質部材9の装着孔92、92aに合うようにする。
止め部材71を一方の装着孔92から連結部材6の挿通孔60に貫通させ、さらに他方の装着孔92aに通るように打ち込む。各装着孔92、92aと挿通孔60の大きさ(内径)は、止め部材71を打ち込むことができ、かつ止め部材71との間でほぼ隙間がないように形成されている。
【0071】
止め部材71が通る各装着孔92、92a周りにおいて、接合後に止め部材71によって応力が作用する矢印方向(木繊維方向とほぼ平行)側の木質部に、止め部材71とやや距離をおいて、木圧縮部材72を板体720が木繊維方向とほぼ直角になるようにして打ち込む。木圧縮部材72は、端板721を止め部材71側に向けるようにする(図13参照)。なお、図14に示すように木圧縮部材72を止め部材71を挟んで二箇所に打ち込んで、両矢印方向の応力に対応できるようにすることもできる。
【0072】
木圧縮部材72が木質部に打ち込まれることにより、その厚さの分だけ木組織は圧縮される。このときの圧縮は、その変形量の一部または全部が止め部材71へ向かうように行われる。これにより、木質部が圧縮された圧縮部93で止め部材71が締め付けられて固定され、接合具A4を構成する連結部材6と止め具7aは各木質部材9の内部で強固に一体化し、各木質部材9は接合面で接合される。
【0073】
本実施の形態によれば、止め部材71の周りの木質部が止め部材71へ向かうように圧縮されることにより、木質部は変形して木組織の密度が高くなっているので、木質部はさらなる圧縮に対する変形代が小さくなっている。すなわち、変形しにくくなっている。これにより、接合構造体の構築後、接合構造体を構成する各木質部材が相互に動くことによって、止め部材71により装着孔92、92aの孔壁に応力(荷重)が作用しても、孔壁の新たな変形を抑えることができる。したがって、結果的に各木質部材が相互に動きにくくなるので、施工後の構造体としての高い剛性と強度を確保することができる。
また、図13に示すように、止め部材71によって木質部に放射状に生じる応力を木圧縮部材72によって木繊維方向へ変えることができるので、装着孔92、92aからの割裂を防止することができる。
【0074】
図15は本発明に係る接合構造の第5実施形態を示す断面説明図、
図16は第5実施形態の接続構造で使用する止め具を構成する木圧縮部材の斜視図。
図17は接合後の木圧縮部材にかかる応力の説明図、
図18は木圧縮部材の他の使用例を示す説明図である。
【0075】
図15に示す木質部材の接合構造において使用される接合具A5は、前記接合具A3の連結部材6と同じ連結部材6と、鉄製の止め具7bによって構成されている。
止め具7bは、木圧縮部材73と前記接合具A3の止め部材71と同じ止め部材71により構成されている。
【0076】
木圧縮部材73は長方形状の板体730を備え、板体730の幅方向の両端面731には、長さ方向に等間隔で、抜け止めのための先端が尖った多数の突起732が設けられている。木圧縮部材73の先端部には刃部733が形成されており、刃部733は全部が両刃で形成されている。板体730の一方の表面には、長さ方向を向いた多数の山形の条部734が幅方向へ等間隔で並設されている。なお、前記板体730の幅は、止め部材71の直径よりやや広くなるように形成されている(図17参照)。
【0077】
(作用)
図15ないし図18を参照し、本実施の形態の接合具A5の作用、接合具A5を使用した木質部材の接合構造及びその構築方法を説明する。
各木質部材9の連結孔91(図15参照)間に渡すように連結部材6を収容した状態で接合面(図示省略)を突き合わせる。連結部材6の各挿通孔60が、各木質部材9の装着孔92、92aに合うようにする。
止め部材71を一方の装着孔92から連結部材6の挿通孔60に貫通させ、さらに他方の装着孔92aに通るように打ち込む。各装着孔92、92aと挿通孔60の大きさ(内径)は、止め部材71を打ち込むことができ、かつ止め部材71との間でほぼ隙間がないように形成されている。
【0078】
止め部材71が通る装着孔92、92a周りにおいて、接合後に止め部材71によって応力が作用する矢印方向(木繊維方向とほぼ平行)側の木質部に止め部材71とやや距離をおいて木圧縮部材73を板体730が木繊維方向とほぼ直角になるようにして打ち込む(図17参照)。この打ち込みは、条部734の案内作用によって打ち込みの際に位置がずれたり傾くことなく安定して行うことができる。なお、図18に示すように木圧縮部材73を止め部材71を挟んで二箇所に打ち込んで、両矢印方向の応力に対応できるようにすることもできる。
【0079】
木圧縮部材73が木質部に打ち込まれることにより、その厚さの分だけ木組織は圧縮される。このときの圧縮は、その変形量の一部または全部が止め部材71へ向かうように行われる。これにより、木質部が圧縮された圧縮部93で止め部材71が締め付けられて固定され、接合具A5を構成する連結部材6と止め具7bは各木質部材9の内部で強固に一体化し、各木質部材9は接合面で接合される。
【0080】
本実施の形態によれば、止め部材71の周りの木質部が止め部材71へ向かうように圧縮されることにより、木質部は変形して木組織の密度が高くなっているので、木質部はさらなる圧縮に対する変形代が小さくなっている。すなわち、変形しにくくなっている。これにより、接合構造体の構築後、接合構造体を構成する各木質部材が相互に動くことによって、止め部材71により装着孔92、92aの孔壁に応力(荷重)が作用しても、孔壁の新たな変形を抑えることができる。したがって、結果的に各木質部材が相互に動きにくくなるので、施工後の構造体としての高い剛性と強度を確保することができる。
また、図17に示すように、止め部材71によって木質部に放射状に生じる応力を木圧縮部材73によって木繊維方向へ変えることができるので、装着孔92、92aからの割裂を防止することができる。
【0081】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る接合構造の第1実施形態を示す断面説明図。
【図2】図1におけるA−A断面説明図。
【図3】図1に示す接続構造を構成する部材を示し、(a)は木質部材の側面視説明図、(b)は接合面を表したB矢視図、(c)は連結部材の側面図。
【図4】二組の拡張部材と一本の止め部材で構成される止め具の斜視説明図。
【図5】止め部材の打ち込みによる拡張部材の拡がり方を示し、(a)は一組の拡張部材が装着孔に収まっている状態のC矢視説明図、(b)は止め部材が拡張部材間に打ち込まれて装着孔内で拡張部材の間隔が拡がった状態のD矢視説明図。
【図6】本発明に係る接合構造の第2実施形態を示し、(a)は側面視説明図、(b)は平面視一部断面説明図。
【図7】図6に示す接続構造を構成する部材を示し、(a)は木質部材の側面視説明図、(b)はE矢視図、(c)は連結板の側面図。
【図8】本発明に係る接合構造の第3実施形態を示す断面説明図。
【図9】第3実施形態の接続構造で使用する止め具を構成する木圧縮部材の斜視図。
【図10】接合後の木圧縮部材にかかる応力の説明図。
【図11】本発明に係る接合構造の第4実施形態を示す断面説明図。
【図12】第4実施形態の接続構造で使用する止め具を構成する木圧縮部材の斜視図。
【図13】接合後の木圧縮部材にかかる応力の説明図。
【図14】木圧縮部材の他の使用例を示す説明図。
【図15】本発明に係る接合構造の第5実施形態を示す断面説明図。
【図16】第5実施形態の接続構造で使用する止め具を構成する木圧縮部材の斜視図。
【図17】接合後の木圧縮部材にかかる応力の説明図。
【図18】木圧縮部材の他の使用例を示す説明図。
【符号の説明】
【0083】
A1 接合具
1 連結部材
11、12 挿通孔
2 止め具
20、20a 拡張部材
21 止め部材
22 凹部
23 誘導面
24 突起
25 誘導面
3、3a 木質部材
30、30a 接合面
31 連結孔
32 上面
33 下面
34 側面
35 側面
36、37 装着孔
A2 接合具
4 連結板
40、41、42 挿通孔
5、5a 木質部材
50、50a 接合面
51 連結溝
52 上面
53 下面
54 側面
55 側面
56、56a 装着孔
57、57a 装着孔
58、58a 装着孔
A3 接合具
6 連結部材
60 挿通孔
7 止め具
70 木圧縮部材
701 口部
702、702a 板体
703、703a 刃部
704 突起
705 内部空間
71 止め部材
9 木質部材
91 連結孔
92、92a 装着孔
93 圧縮部
A4 接合具
7a 止め具
72 木圧縮部材
720 板体
721 端板
722 突起
723 刃部
A5 接合具
7b 止め具
73 木圧縮部材
730 板体
731 端面
732 突起
733 刃部
734 条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合される木質部材(3,3a)の各接合面(30,30a)に互いに通じるように形成された連結孔(31,31)間に連結部材(1)を挿入して各接合面(30,30a)を突き合わせ、木質部材(3,3a)において、連結部材(1)の各挿通孔(11,12)に通じるように形成された装着孔(36,37)に、各挿通孔(11,12)を貫通するように、長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材(21)を挿通し、止め部材(21)が通る装着孔(36,37)周りの木質部を圧縮して止め部材(21)を直接または間接的に締め付けて木質部材(3,3a)を接合する、
木質部材の接合方法。
【請求項2】
接合される木質部材(3,3a)の各接合面(30,30a)が突き合わされ、各接合面(30,30a)に形成された連結孔(31,31)間に連結部材(1)が挿入されており、
木質部材(3,3a)において接合面(30,30a)とは異なる面に、連結孔(31,31)に挿入された連結部材(1)の各挿通孔(11,12)に通じる装着孔(36,37)が設けられており、
各装着孔(36,37)には、それぞれ一対の拡張部材(20,20a)が挿入され、各拡張部材(20,20a)の間には連結部材(1)の各挿通孔(11,12)を貫通して、長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材(21)が挿通され、止め部材(21)によって各拡張部材(20,20a)の間隔が拡がって各拡張部材(20,20a)周りの木質部を圧縮し、止め部材(21)を拡張部材(20,20a)で締め付けて固定し、木質部材(3,3a)が接合されている、
木質部材の接合構造。
【請求項3】
接合される木質部材(9,9)の各接合面が突き合わされ、各接合面に形成された連結孔(91,91)間に連結部材(6)が挿入されており、
木質部材(9,9)において接合面とは異なる面に、連結孔(91,91)に挿入された連結部材(6)の各挿通孔(60,60)に通じる装着孔(92,92)が設けられており、
各装着孔(92,92)には、連結部材(6)の各挿通孔(60,60)を貫通して、長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材(71)が挿通されており、
止め部材(71)が通る装着孔(92,92)周りの木質部を止め部材(71)へ向かうように圧縮する木圧縮部材(70)が打ち込まれており、圧縮された木質部で止め部材(71)を締め付けて固定し、木質部材(9,9)が接合されている、
木質部材の接合構造。
【請求項4】
請求項2記載の木質部材の接合構造に使用する接合具であって、
少なくとも二箇所に所要間隔をおいて形成された挿通孔(11,12)を有する連結部材(1)と、連結部材(1)を木質部材(3,3a)間に固定する止め具(2)を備えており、
止め具(2)は、
木質部材において前記連結部材(1)の挿通孔(11,12)に通じる装着孔に入れられる対となった拡張部材(20,20a)と、
各拡張部材(20,20a)の間に挿通することによって連結部材(1)の挿通孔(11,12)を貫通し各拡張部材(20,20a)の間隔を拡げて各拡張部材(20,20a)周りの木質部を圧縮する、長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材(21)と、
を備えており、
各拡張部材(20,20a)の相対向する面には、止め部材(21)が挿通されたときに止め部材(21)が収まる凹部(22)が、その表面が長さ方向と平行になるように設けられている、
木質部材を接合する接合具。
【請求項5】
各拡張部材(20,20a)を凹部(22)の断面形状が円弧形状となるよう形成し、止め部材(21)を凹部(22)の形状に合う直径を有する丸棒形状に形成した、
請求項4記載の木質部材を接合する接合具。
【請求項6】
請求項3の木質部材の接合構造に使用する接合具であって、
少なくとも二箇所に所要間隔をおいて形成された挿通孔(60,60)を有する連結部材(6)と、連結部材(6)を木質部材(9,9)間に固定する止め具(7)を備えており、
止め具(7)は、
長さ方向に同じ太さの部分を有するよう形成された止め部材(71)と、
止め部材(71)が通る装着孔周りの木質部を止め部材(71)へ向かうように圧縮するよう打ち込まれる木圧縮部材(70)と、
を備えている、
木質部材を接合する接合具。
【請求項7】
木圧縮部材(70)を、一方の口部を形成する板(702)に刃部(703)を有すると共に止め部材(71)を挿通させることができる内部空間(705)を有する角筒体で形成した、
請求項6記載の木質部材を接合する接合具。
【請求項8】
木圧縮部材(72,73)を、一端側に刃部(723,733)を有する所要厚さの板(722,732)で形成した、
請求項6記載の木質部材を接合する接合具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−293356(P2009−293356A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150859(P2008−150859)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(395006605)
【Fターム(参考)】