説明

木造建物における柱の固定装置

【課題】 引き寄せ金物と同様に引き寄せられ、柱を基礎コンクリートに固定できる装置を提供する。
【解決手段】 基礎コンクリートBに該基礎コンクリートB上に設けた柱脚金物1を介して柱Pを固定するようにしたものであって、前記柱Pにその下面から挿入して組付け杆9を取付ける。該組付け杆9に縦設した雌螺子13に締付けボルト15を、前記柱脚金物1の前記柱Pの受支板7を通じて螺合する。そして、組付け杆9の下端に非円形状の鍔片9Aを設け、該鍔片9Aを柱脚金物1の受支板7に形成した、非円形状の嵌合部14´に嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概し、管柱や通し柱を、柱脚金物を用いて基礎コンクリートに固定するために適用する木造建物における柱の固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基礎コンクリート上に配した柱脚金物を介して柱を前記基礎コンクリートに固定することは、柱の基礎コンクリートに対する固定手段として一般に行われているところであるが、当該柱脚金物は、例えば、Zマーク表示金物の一つとして挙げられているもののように、受支板上に載置した柱の下部の相対する両側に、前記受支板に相対して立設した組付け板を配し、該組付け板と前記柱下部をこれらに貫通させたボルト先端にナットを螺合締付けるようにして用いるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の従来例は、基礎コンクリートに固定した柱脚金物に柱を載置してボルトおよびナットによっていわば接続するだけであるから、柱と柱脚金物(基礎コンクリート)との接合強度は必ずしも万全とはいえず、このため、引き寄せ金物(ホールダウン金物)を別途用いて柱を基礎コンクリートに緊締させ、前記接合強度を確保しなければならないことがあり、従って、柱の固定装置としていわば二重の取付け作業を要する場合がある。本発明は、引き寄せ金物を用いたと同様に引き寄せ機能を備えた柱の固定装置を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
基礎コンクリートに該基礎コンクリート上に設けた柱脚金物を介して柱を固定するようにした柱の固定装置において、前記柱にその下面から挿入して組付け杆を取付け、該組付け杆に縦設した雌螺子に締付けボルトを前記柱脚金物の、前記柱の受支板を通じて螺合すると共に、組付け杆の下端に非円形状の鍔片を設け、該鍔片を柱脚金物の受支板に形成した、非円形状の嵌合部に嵌合したことを基本的手段とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は前記の通りの構成であるから、柱脚金物を介して柱を基礎コンクリートに固定するに良好な、作業性の優れた装置を提供することができる。
【0006】
また、ボルトを締付けることにより柱を固定するものであるから、柱を基礎コンクリート側に引き寄せられ、該引き寄せ状態を得るために一般に用いられている引き寄せ金物(ホールダウン金物)を必要としなくて済むことから実用的な装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】縦断面図。
【図2】図1のb−b線断面図。
【実施例】
【0008】
図面は本発明に係る柱の固定装置の実施例を示し、図1は縦断面図、図2は図1のb−b線断面図である。
【0009】
図中、Bは基礎コンクリートで、基礎コンクリートBにはアンカー部を埋入して固装したアンカーボルトbの螺杆部b´を突設し、該螺杆部b´を柱脚金物1の基板2に形成した透孔3に相対的に貫通させるようにして前記柱脚金物1を前記基礎コンクリートB上に載置し、該柱脚金物1は、基板2より突出する前記螺杆部b´先端に固定ナット4をワッシャー5を介して螺合締付けることにより基礎コンクリートBに固定してある。
【0010】
柱脚金物1は、前記透孔3を中央に設けた方形状の前記基板2に横断面円弧状にした一対の支持板6,6を、円弧縁が対向方向に膨出するようにして相対して立設し、該支持板6,6上に受支板7を載置固定して構成したものである。
【0011】
なお、支持板6を横断面円弧状すなわち屈曲形状にしたのは、受支板7を介する荷重の負荷に対処するためである。
【0012】
そして、実施例は、柱Pの下面中央を開口して設けた縦穴8に組付け杆9を嵌挿し、該組付け杆9の側面に設けた透孔10と前記柱Pに形成した貫通孔11を互いに一致させ、これらにドリフトピン12を嵌挿して前記組付け杆9を柱Pに固着し、該組付け杆9を利用して受支板7上に載置した柱Pを受支板7すなわち柱脚金物1に固定し、柱脚金物1を介して柱Pを前記基礎コンクリートBに固定するようにしたものである。
【0013】
なお、組付け杆9の柱Pに対する固定は、ドリフトピン12を用いているが、該ドリフトピン12に代えてボルトとこれに螺合するナットを用いても良く(いずれにしても、これら固定杆と前記透孔10や貫通孔11と組合わせることにより組付杆9の柱Pに対する取付け乃至固定作業を円滑に行え、かつ、柱Pとの相対的な回転を防ぐことができる)、組付け杆9は円筒体で構成しても良く、角筒体でも良く、また、中実体で構成しても、差し支えはない。
【0014】
そして、組付け杆9の先端に角形状(非円形であれば良い)の鍔片9Aを設け、鍔片9Aを備えた組付け杆9を、貫通孔11および透孔10に挿通したドリフトピン12で柱Pに固着し(組付け)、鍔片9A部を柱Pの下面(縦穴8)より突出させ、この鍔片9Aを、受支板7に設けた角孔(鍔片9Aの輪郭形と一致する)14´に嵌合し、締付けボルト15を組付け杆9に設けた雌螺子13に螺合締付けて、柱Pを受支板7に引き寄せ、固定したものである。そして、隙間18´がボルト頭部15a(ワッシャー16)と鍔片9Aその間に生じるように、組付け杆9を柱Pにドリフトピン12を用いて固定してあり、この隙間18´の存在により引き寄せ、固定が行われる。
【0015】
すなわち、締付けボルト15を締付けることにより組付け杆9を柱脚金物1(受支板7)側に引き寄せ、組付け杆9はドリフトピン12を介して柱Pに組付けた状態にあるから、組付け杆9が引き寄せられると同時に、柱Pも柱脚金物1側に引き寄せられ、柱Pは柱脚金物1に緊結される。そして、組付け杆9に設けた鍔片9とボルト頭部15aとの間に隙間18が生じるように組付け杆9は柱Pに固定されているため、組付け杆(金属製)9の規制を受けることなく、柱Pの下面はその木質により平滑に変形して受支板7に圧接して、尚一層強固な引き寄せ固定状態を得られるのである。
【0016】
なお、経年変化によって仮に緩んでも、ボルト15を増し締めすることにより、原状の引き寄せ固定状態を得られることはいうまでもない。
【0017】
また、ボルト頭部15aが角孔14´の径より小径であることからワッシャー16を用いているが、径の関係を解決したものであればワッシャー16は省略しても良いし、緩みを防ぐという意味ではワッシャー16を用いた方が良い。
【0018】
隙間18´は締付けボルト15(頭部15a)の緊締受縁(実施例では受支板7の下面)と鍔片9Aとの間にあれば良く、請求項でいう「鍔片とボルト頭部との間」とはこのような意味である。また、角形の鍔片9Aを、受支板7に設けた非円形の角孔14´に嵌合させていることにより、柱Pに回転方向の外力が負荷してもそれに追従することがなく、原状を維持する効果を期待できる。
【符号の説明】
【0019】
B 基礎コンクリート
P 柱
1 柱脚金物
7 受支板
9 組付け杆
9A 鍔片
15 締付けボルト
18´ 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートに該基礎コンクリート上に設けた柱脚金物を介して柱を固定するようにした柱の固定装置において、前記柱にその下面から挿入して組付け杆を取付け、該組付け杆に縦設した雌螺子に締付けボルトを前記柱脚金物の、前記柱の受支板を通じて螺合すると共に、前記組付け杆の下端に非円形状の鍔片を設け、該鍔片を柱脚金物の受支板に形成した、非円形状の嵌合部に嵌合した、木造建物における柱の固定装置。
【請求項2】
鍔片とボルト頭部との間に隙間が生じるように、組付け杆を柱に取付けた請求項1記載の木造建物における柱の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−248906(P2010−248906A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178629(P2010−178629)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【分割の表示】特願2001−46194(P2001−46194)の分割
【原出願日】平成13年2月22日(2001.2.22)
【出願人】(591027499)株式会社カネシン (49)
【Fターム(参考)】