説明

板状体の搬送用容器

【課題】ガラス基板等の板状体を重ねて収納する搬送用容器として、縦置きした場合にも、蓋体が容易に開いてしまわない嵌合状態を保持でき、しかも容器本体に対し蓋体を嵌合して被着する作業及び蓋体を開く作業も容易に行えるようにする。
【解決手段】容器本体10と蓋体30とが、容器本体10の開口部に有する嵌合突縁13と蓋体30の周縁部に有する嵌合壁33とが嵌合する構造にして、容器本体10と蓋体30の縦横一方の対向両辺部aにおける嵌合突縁13と嵌合壁33の嵌合面部15,35に、それぞれ弾力的に嵌合して抜脱方向に係合する凹凸係合部16a,36a;16c,36cを設け、一方側辺部aの凹凸係合部16a,36aを、他方側辺部cの凹凸係合部16c,36cよりも抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素板ガラスのほか、液晶表示用やプラズマ表示用のガラス基板、タッチパネル用のガラス基板その他の主として薄肉の板状体の搬送、保管に使用する搬送用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、素板ガラス、液晶表示用のガラス基板等の比較的大型のガラス基板、あるいは太陽電池パネルやタッチパネル等のパネルその他の衝撃に弱い板状体を収納して搬送するための搬送用容器として、緩衝性を有する合成樹脂発泡体製の容器本体と蓋体とよりなる容器で、容器本体の一方の相対向する側壁内面に等間隔に並設された縦溝に、前記の板状体を1枚ずつ挿入して相互に接触させないように直立状態に支持して収納するようにしたものが一般に使用されていた。
【0003】
近年、液晶テレビやプラズマテレビの大型化の需要の増大から、テレビ用のガラス基板としても、縦横の一方もしくは両方が100cmを超える大型のガラス基板も採用されており、このため、かかるガラス基板を搬送するための運搬用容器も大型化している。
【0004】
しかし、従来の側壁内面の縦溝によりガラス基板を直立状態にして収容する方式では、大型で重くなったガラス基板のために、ガラス基板自体が自重によって曲げ変形したり、ガラス基板の重量が容器本体の底部に集中して負荷されることで、容器底部が圧縮変形し、クッション機能や衝撃緩和機能が損なわれる虞があった。
【0005】
前記の問題を生じさせないために、容器本体内に、ガラス基板と防護用のシートとを交互に重ねて平積み状態で収納し、各ガラス基板を防護用のシートを介して面で受けるようにした搬送用容器も出現している(特許文献1〜3)。この搬送用容器を用いる輸送や保管作業においては、積載効率や保管スペース等の観点から、該容器を縦置き状態にすることも多い。
【0006】
ところで、容器本体にガラス基板を収納して蓋体を被着した状態で、該容器を縦置きに起立させる際に、容器本体の開口部に嵌合被着した蓋体が開いてしまうおそれがある。特に、容器を縦置きするように起立させた際に、内容物による荷重が蓋体にも作用することもあって、蓋体の縦置き姿勢での上部側が下端側の辺部を支点に容器本体から離脱する方向に回動して開き易くなる。
【0007】
そのため、従来は、容器本体とこれに被着した蓋体との接合部に粘着テープを用いて両者を接合状態に保持したり、あるいはプラスチック製バンド等により容器周囲を緊縛するようにバンド掛けして、縦置きする場合にも蓋体が妄りに開かないようにしている。
【0008】
しかしながら、バンド掛けを利用するするのは、その緊縛作業に手数がかかることになる上、内容物の取り出しのために縦置き状態のままでバンド掛けを外した場合に、蓋体の縦置き姿勢の上部側が開くおそれがあり、その作業に注意を要することになる。
【0009】
そうかといって、容器本体の開口部に対して蓋体が容易に開かないように過度に強く嵌合し係合する構造であると、蓋体の被着操作及び抜脱操作が行い難くなり、またその操作の繰り返しによって破損が生じるおそれもあるため、嵌合力を無やみに大きくすることはできないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−314236号公報
【特許文献2】特開2008−239210号公報
【特許文献3】特開2009−269610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記の問題を解決するためになしたものであり、素板ガラス、液晶表示用等のガラス基板、タッチパネル等の板状体を重ねて収納して搬送するための板状体の搬送用容器として、特に縦置きした場合にも、蓋体が容易に開いてしまわない安定した嵌合状態を保持できて、しかも容器本体に対し蓋体を嵌合して被着する作業及び蓋体を開く作業も容易に行えるようにした板状体の搬送用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する本発明は、上方に開口する平面矩形の容器本体と、該容器本体の開口部に嵌合被着される蓋体とからなり、容器本体の開口部に有する嵌合突縁と、蓋体の周縁部に有する嵌合壁とが内外に嵌合する構造を備えてなる板状体の搬送用容器であって、前記容器本体と蓋体の縦横一方の対向両辺部における前記嵌合突縁と嵌合壁の嵌合面部には、それぞれ嵌合時に弾力的に嵌合して抜脱方向に係合する凹凸係合部が設けられ、一方側辺部の凹凸係合部が、他方側辺部の凹凸係合部よりも抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造をなしていることを特徴とする。
【0013】
この搬送用容器によれば、ガラス基板等の板状体を水平状態で重ねて収納し、蓋体を被着して搬送する際、容器本体の開口部の嵌合突縁に対し蓋体の嵌合壁を嵌合し被着した状態においては、縦横一方の対向両辺部における嵌合面部の凹凸係合部が抜脱方向に係合することで、単なる嵌合の場合に比して嵌合状態が安定し、蓋体が容易に開くことがない。
【0014】
特に、一方側辺部の凹凸係合部が、他方側辺部の凹凸係合部よりも抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造であり、抜脱し難くなっているため、例えば、搬送用容器を縦置きして輸送に供する場合、前記の抜脱し難い係合構造の凹凸係合部の側(前記一方側辺部の側)を縦置き姿勢の上部側にして起立させることにより、該蓋体の上部側が容易に開くことがなく、蓋体被着状態を良好に保持できる。しかも、内容物の取り出しのために蓋体を開くときには、前記一方側辺部の凹凸係合部よりも抜脱に対する抵抗力の小さい係合構造の凹凸係合部が設けられた前記他方側辺部の側から、蓋体を開くようにすれば、比較的容易に開くことができる。
【0015】
従って、前記の板状体の搬送用容器としては、前記凹凸係合部が設けられた対向両辺部を上下にして縦置き状態で輸送に供する容器であり、縦置き姿勢の上部側になる一方側辺部におげる凹凸係合部が、他方側辺部の凹凸係合部よりも抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造をなしているものであるのが好ましい。
【0016】
前記の板状体の搬送用容器において、前記凹凸係合部が設けられた対向両辺部が長辺側の両辺部であるものとするのが、縦置きする際の安定性の点から好ましい。
【0017】
前記の板状体の搬送用容器において、前記一方の対向両辺部の嵌合面部における凹凸係合部として、前記嵌合突縁及び嵌合壁のそれぞれに、容器幅方向の凹条及び/又は凸条が、互いに他方の凸条及び/又は凹条と嵌合するとともに、嵌合状態において抜脱に対する抵抗力が対向両辺部で異なる係合構造をなすように設けられてなるものとすることができる。
【0018】
前記の板状体の搬送用容器において、前記一方側辺部の嵌合面部における凹凸係合部の凹条及び/又は凸条の容器幅方向長さが、前記他方側辺部の嵌合面部における凹凸係合部の凹条及び/又は凸条の容器幅方向長さより長くなっているものとすることができる。
【0019】
前記の板状体の搬送用容器において、前記一方側辺部の嵌合面部における前記凹凸係合部として、前記嵌合突縁及び前記嵌合壁が、それぞれの嵌合面部の先端側部分が基部側部分に対して段差をなすように減肉形成され、前記嵌合突縁の嵌合面部における基部側部分及び先端側部分と、前記嵌合壁の嵌合面部における先端側部分及び基部側部分とが互いに段差をなして嵌合するように設けられるとともに、前記嵌合突縁及び前記嵌合壁の嵌合面部における前記基部側部分と先端側部分との間に容器幅方向の凹条及び/又は凸条が、互いに他方の凸条及び/又は凹条と嵌合するように設けられてなるものとすることができる。
【0020】
この場合、前記一方側辺部では、蓋体の嵌合壁と容器本体の嵌合突縁の嵌合面部を、前記段差を利用して先端側同士を合わせ易く、こうして蓋体を押し込むことにより容易に嵌合操作でき、蓋体の嵌合壁の嵌合面部における先端側部分及び基部側部分が容器本体の嵌合突縁の嵌合面部における基部側部分と先端側部分とに段差をなして嵌合するとともに、前記凹凸係合部が弾力的に嵌合して抜脱方向に係合することになる。
【0021】
前記の板状体の搬送用容器において、前記嵌合突縁及び前記嵌合壁のそれぞれの嵌合面部の先端側部分及び基部側部分が、容器本体の底部上面及び蓋体下面に対して垂直面をなすように形成されてなるものとするのが好ましい。これにより、他方側辺部を支点として容器本体から離脱する方向の蓋体の回動に対して前記嵌合面部が抵抗になり、抜脱を抑制できることになる。
【0022】
前記の板状体の搬送用容器において、前記一方側辺部の前記嵌合突縁及び嵌合壁のそれぞれの嵌合面部に、前記基部側部分との間に容器幅方向の凹条を形成するように間隔をおいて前記段差に相当する高さの凸条が形成され、前記凹条が前記凸条に対応した深さをなし、前記凹条と凸条が互いに他方の凸条と凹条とに嵌合し係合するように設けられてなるものとすることができる。これにより、段差を利用して比較的容易に嵌合できて、しかも凹条と凸条が断面S字状の波形をなして嵌合し係合することで、嵌合状態を良好に保持できる。
【0023】
前記の板状体の搬送用容器において、前記他方側辺部の嵌合面部における凹凸係合部として、前記嵌合突縁と嵌合壁の一方に容器幅方向の凹条、他方に該凹条に嵌合する容器幅方向の凸条が形成されてなるものとすることができる。
【0024】
前記の板状体の搬送用容器において、前記他方側辺部における前記嵌合突縁及び嵌合壁の嵌合面部が、容器本体の底部上面及び蓋体下面に対する垂直面に対して傾斜面をなし、該傾斜面に前記凸条又は凹条が設けられてなるものとすることができる。
【0025】
前記の板状体の搬送用容器において、前記他方側辺部における蓋体の側面に、開蓋操作の際の手掛け用の切欠部が設けられてなるものとすることができる。
【0026】
前記の板状体の搬送用容器において、容器本体及び蓋体が、それぞれ発泡樹脂製の成形容器であるものとする。
【発明の効果】
【0027】
上記したように、本発明の板状体の搬送用容器によれば、容器本体の開口部に有する嵌合突縁と蓋体の嵌合壁との嵌合構造において、縦横一方の対向両辺部の嵌合面部における凹凸係合部が抜脱方向に係合することで、単なる嵌合の場合に比して抜脱し難く、蓋体が容易に開くことがないばかりか、特に、前記相対向辺部における凹凸係合部の構造を異にし、一方側辺部の嵌合面部における凹凸係合部を、他方側辺部の嵌合面部における凹凸係合部よりも抜脱に対する抵抗力が大きい、すなわち抜脱し難い係合構造としたことにより、例えば、搬送用容器を縦置きして輸送等に供する場合に、前記一方側辺部の抜脱し難い係合構造の凹凸係合部の側を縦置き姿勢の上部側にして起立させることにより、バンド掛けされていなくても、蓋体が上部側から開くことがなく、閉蓋状態を良好に保持できる。
【0028】
しかも、蓋体を開くときには、前記一方側辺部の凹凸係合部よりも抜脱し易い係合構造の凹凸係合部が設けられている前記他方側辺部の側から蓋体を開くようにすれば、比較的容易に開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の板状体の搬送用容器の一実施例を示す分離した容器本体と蓋体の斜視図である。
【図2】容器本体の一方側辺部の側からの一部の拡大斜視図である。
【図3】容器本体の平面図(a)と、底面図(b)である。
【図4】蓋体の下面側の平面図である。
【図5】容器本体と蓋体の分離した正面図(a)と、背面図(b)と、側面図(c)である。
【図6】容器本体と蓋体の分離した図5のL1−L1線での拡大断面図である。
【図7】容器本体に蓋体を被着した状態の断面図である。
【図8】図7のC部の拡大図である。
【図9】図7のD部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0031】
図は本発明にかかる板状体の搬送用容器の1実施例を示している。この実施例の搬送用容器Aは、上方に開口し、収納対象のガラス基板等の板状体Bを、各板状体間にスペーサー用の保護シート(図示省略)を介して重ねた状態で収納できる平面長方形や正方形の平面矩形の容器本体10と、該容器本体10の開口部に対し嵌合被着される蓋体30とからなるものであり、該容器本体10及び蓋体30が、それぞれ主として緩衝性のある発泡樹脂製の成形容器からなる。
【0032】
前記容器本体10は、底部11と、該底部11の周縁部より起ち上がった四方の側壁12a,12b,12c,12dにより収納部空間が形成されてなる。前記収納部空間は、保護シートを介して重ねた所要数枚の板状体Bを収納できる深さに形成されている。通常、板状体Bの厚みによっても異なるが、例えば厚み2〜5mmのガラス基板等の板状体Bの場合、10〜数10枚程度を収納できるように比較的浅く形成される。
【0033】
この容器本体10に対する蓋体30の被着構造として、前記容器本体10の開口部を形成する四方の側壁12a,12b,12c,12dには、内外一方側に、例えば図のように外側が切欠されることにより内側に嵌合突縁13が形成され、前記蓋体30の周縁部31には、前記嵌合突縁13に対し内外他方側、例えば図のように外側に嵌合する下方向きの嵌合壁33が設けられている。図の場合、容器本体10の四方の側壁12a,12b,12c,12dが嵌合突縁13を兼ねて形成されており、その外側の切欠部14に嵌合壁33が嵌合することにより、蓋体30を容器本体10に被着した状態に保持できるようになっている。収納部空間の深さによっては、側壁12a,12b,12c,12dの上端部に前記の嵌合突縁が形成される場合もある。
【0034】
そして、前記容器本体10と前記蓋体30の縦横一方の対向両辺部、例えば長辺側の対向両辺部a,cにおける前記嵌合突縁13と前記嵌合壁33の嵌合面部15,35には、それぞれ嵌合時に弾力的に嵌合して抜脱方向に係合する凹凸係合部16a,16c;36a,36cが設けられ、該対向両辺部a,cのうちの一方側辺部aの凹凸係合部16a,36aが、他方側辺部cの凹凸係合部16c,36cよりも抜脱に対する抵抗力、すなわち嵌合力が大きい係合構造をなしている。
【0035】
特に、前記搬送用容器Aが、前記凹凸係合部16a,16c;36a,36cが設けられた長辺側の対向両辺部a,cを上下にして縦置き状態で輸送に供する容器である場合において、縦置き姿勢の上部側になる一方側辺部aにおける凹凸係合部16a,36aが、他方側辺部cの凹凸係合部16c,36cよりも抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造をなしている。短辺側の対向両辺部を上下にして縦置きする場合は、該対向両辺部に凹凸係合部を設けるとともに、その一方側辺部の凹凸係合部を、他方側辺部の凹凸係合部よりも抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造とするが、縦置き状態での安定性等の点から、図のように長辺側の対向両辺部a,cを上下にして縦置きすることとして、前記のように凹凸係合部16a,16c;36a,36cを設けて実施するのが好ましい。
【0036】
前記一方の対向両辺部a,cの嵌合面部15,35における凹凸係合部16a,16c;36a,36cとして、前記嵌合突縁13及び嵌合壁33のそれぞれに、容器幅方向の凹条17,37及び/又は凸条18,38が、互いに他方の凸条38,18及び/又は凹条37,17と嵌合するとともに、嵌合状態において抜脱に対する抵抗力が対向両辺部a,cで異なる係合構造をなし、これにより、一方側辺部aが他方側辺部cより抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造をなすように設けられている。
【0037】
前記の抜脱に対する抵抗力が異なる係合構造としては、例えば、前記一方側辺部aの嵌合面部15,35における凹凸係合部16a,36aの凹条37,17及び/又は凸条38,18の容器幅方向長さを、前記他方側辺部cの嵌合面部15,35における凹凸係合部16c,36cの凹条37,17及び/又は凸条38,18の容器幅方向長さより長くして、係合長さの範囲を異ならせることもできる。この場合、凹凸係合部の断面形状が同形であっても、抜脱に対する抵抗力が異なることになる。このほか、対向両辺部a,cの嵌合面部15,35における凹条及び/又は凸条による凹凸係合部の断面形状を、例えば凹条及び/又は凸条の本数を異にしたり、凹凸の深さや高さを異にして、断面形状を異ならせることもできる。この場合、容器幅方向の長さが同じであっても、抜脱に対する抵抗力が異なることになる。
【0038】
図示する実施例の場合は、前記対向両辺部a,cのうち、前記の抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造を有する前記一方側辺部aにおける16a,36aとして、前記嵌合突縁13及び前記嵌合壁33が、それぞれの嵌合面部15,35の先端側部分15a,35aが基部側部分15b,35bに対して段差dをなすように減肉形成され、前記嵌合突縁13の嵌合面部15における基部側部分15b及び先端側部分15aと、嵌合壁33の嵌合面部35における先端側部分35a及び基部側部分35bとが互いに段差dをなして嵌合するように設けられるとともに、前記嵌合突縁13及び嵌合壁33の嵌合面部15,35における前記先端側部分15a,35aと基部側部分15b,35bとの間に、それぞれ容器幅方向の凹条17,37及び/又は凸条18,38が、互いに他方の凸条38,18及び/又は凹条37,17と嵌合するように設けられている。
【0039】
前記凹凸係合部16a,36aとして、図の場合、前記嵌合突縁13及び嵌合壁33のそれぞれの嵌合面部15,35に、前記基部側部分15b,35bの間の前記嵌合突縁13及び嵌合壁33のそれぞれの嵌合面部15,35に、前記基部側部分15b,35bとの間に容器幅方向の凹条17,37を形成するように間隔をおいて前記段差dに相当する高さの凸条18,38が形成され、前記凹条17,37が前記凸条18,38に対応した深さをなし、前記凹条17,37と凸条18,38が、互いに他方の凸条38,18と凹条37,17とに断面S字状をなして弾力的に嵌合し係合するように設けられている。これにより、抜脱に対して所定の抵抗力を奏するようになっている。
【0040】
前記凹条17,37が前記凸条18,38については、2条とすることもでき、また容器幅方向のほぼ全長にわたって形成するほか、一部に間隔をおいて断続して形成しておくこともできる。
【0041】
前記嵌合面部15,35の先端側部分15a,35a及び基部側部分15b,35bは、容器本体10の底部11の上面11a及び蓋体30の下面30aに対する垂直面に対して先端側程嵌合が緩くなる方向の傾斜面に形成しておくこともできるが、実施上は、図のように、容器本体10の底部上面11a及び蓋体下面30aに対して垂直面をなすように形成しておくのが、抜脱に対する抵抗力を大きくして嵌合状態を保持する上で特に好ましい。
【0042】
すなわち、前記一方側辺部aの嵌合突縁13と嵌合壁33との嵌合状態において、前記嵌合面部15,35が前記のような傾斜面をなしていると、底部上面11aに対し直角の方向の抜脱だけでなく、他方側辺部cを支点として蓋体が回動する方向の抜脱に対する抵抗も小さくなる。これに対して、前記嵌合面部15,35が前記垂直面をなしていると、他方側辺部cを支点として容器本体10から離脱する方向の蓋体30の回動に対して抵抗となり、前記他方側辺部cを下にして縦置きした場合に、蓋体30の上部側からの開きを抑制できる効果がある。
【0043】
また、前記一方側辺部aと対向する他方側辺部cにおける前記嵌合突縁13及び嵌合壁33の嵌合面部15,35の凹凸係合部16c,36cとしては、前記一方側辺部aの凹凸係合部16a,36aよりも抜脱に対する抵抗力が小さい係合構造であれば、種々の形態による実施が可能である。
【0044】
図示する実施例の場合は、前記凹凸係合部16c,36cとして、前記嵌合突縁13と嵌合壁33の一方、例えば嵌合突縁13に容器幅方向の凸条18が、他方の嵌合壁33に該凸条18に嵌合する容器幅方向の凹条37が形成されている。特に、前記他方側辺部cにおける前記嵌合突縁13及び嵌合壁33の嵌合面部15,35において、容器幅方向に間隔をおいて中央部と両端部の複数個所が、前記容器本体10の底部上面11a及び蓋体下面30aに対する垂直面(嵌合突縁及び嵌合壁の本来の嵌合面部)に対して傾斜面15c,35cをなしており、該傾斜面15c,35cに前記凸条18と凹条37とが設けられ、凹凸係合部16c,36cとして形成されている。
【0045】
これにより、前記嵌合突縁13と前記嵌合壁33との嵌合による蓋体30の被着状態において、底部上面11aに対し直角の方向の蓋体30の抜脱に対しては前記凸条18と凹条37との係合によりある程度の抜脱抵抗を示し容易に抜脱しないが、一方側辺部aを支点として回動する方向の蓋体30の抜脱に対しては係合が弱くて、比較的容易に抜脱できるようになっている。すなわち、他方側辺部cの側からは蓋体30を比較的容易に開くことかできるようになっている。
【0046】
図中の39は、前記他方側辺部cにおける前記蓋体30の嵌合壁33の下端外側に設けた手掛け用の切欠部であり、容器本体10に嵌合し被着した蓋体30を開くときには、該切欠部39に手(指先)を掛けて蓋体30を持ち上げることにより開蓋操作できるようになっている。
【0047】
前記凸条18と凹条37を含む前記凹凸係合部16c,36cは、容器幅方向に間隔をおいて設けておくことにより、凸条18と凹条37との嵌合による係合力、すなわち抜脱に対する抵抗力が、他方側辺部cのほぼ全長に亘って形成した場合より小さく設定されているが、このほか、前記凹凸係合部16c,36cにおける凸条18の高さ及び凹条37の深さ等を適宜設定して、前記一方側辺部aにおける凹凸係合部16a,36aより抜脱に対する抵抗力を小さく設定することもできる。
【0048】
さらに、図示する実施例の搬送用容器Aの場合、前記容器本体10の底部11の上面11aには、四方の各側壁12a,12b,12c,12dの内側に沿ってごく凹部21が設けられており、収納された板状体Bの裏面周縁部が底部上面11aに接触するのを防止できるようになっている。さらに、前記底部14の各側壁12a,12b,12c,12dによる隅角部の内側には、板状体Bの隅角部の当接を回避するための上下方向の切欠22が前記凹部21に連続して形成されている。これにより、通常の収納状態においては、底部11上に収納される板状体Bの隅角部が、前記切欠22のために側壁12a,12b,12c,12dに対して接触せず、かつ、最下層の板状体Bの周縁部及び隅角部が底部11に接触しないようになっている。
【0049】
前記容器本体10の四方の側壁12a,12b,12c,12dのうちの少なくとも一方の相対向する両側壁、例えば四方の各側壁12a,12b,12c,12dの内面には、辺の長さ方向の1個所又は長手方向に間隔をおいて複数個所に、上下方向の凹溝状をなす板状体Bの収納及び取り出し操作用の切欠凹部23が設けられている。図の場合、長辺側の側壁12a,12cには3個所,短辺側の側壁12b,12dには2個所の内面に、側壁上端から前記底部11の凹部21に至る所要深さの凹溝状をなす切欠凹部23が形成されている。これにより、板状体Bの収納及び取り出し操作の際に、該切欠凹部23の部分で挿入して最下層の板状体Bの下に指先を掛けることができるように、あるいは機械的な係止手段を底部11上の部分にまで挿入して最下層の板状体Bの下に係止できるようになっている。前記容器本体10の底部11の下面11bの周縁部には、切欠部24が形成されるとともに、長辺側の対向両辺部a,cの側端部に持ち上げ用の手掛け部となる凹欠部25が設けられている。
【0050】
また、前記蓋体30の下面30aには、前記嵌合壁33の内周に沿って前記容器本体1の底部上面11aの凹部21に対応する凹部32が設けられ、さらに上面30bにおける周縁部には、容器本体10に蓋体30を被着した状態の搬送用容器Aを積み重ねた際に前記容器本体10の切欠部24に嵌合する凸縁34が設けられている。
【0051】
図中の符号26と及び40は、容器本体10及び蓋体30におけるバンド掛け用の凹部を示し、容器本体10には長辺側の両側面から底部下面11bにわたって連続して、蓋体30には長辺側の両側面から上面30bの前記凸縁34の部分にわたって凹溝状に形成されている。
【0052】
前記容器本体10及び蓋体30は、任意の発泡樹脂成形体により製作でき、例えば任意の発泡樹脂成形体により製作できるが、熱可塑性樹脂の発泡成形体であることが好ましい。熱可塑性樹脂にはポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂)、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリスチレンとポリエチレンを含む複合樹脂を用いることが好ましい。また、前記発泡体の発泡倍率は3〜50倍が好ましい。
【0053】
上記した実施例の板状体の搬送用容器Aによれば、素板ガラス、液晶表示用のガラス基板等の板状体Bを収納する。この際、容器本体10内の底部11上に、厚み0.2〜5.0mmのスペーサー用の保護シート(図示省略)と板状体Bを交互に重ねて収納する。このようにして板状体Bを収納した後、容器本体10の開口部の嵌合突縁13に対し蓋体30の嵌合壁33を嵌合して被着する。この際、縦横一方の対向両辺部a,cにおける嵌合面部15,35の凹凸係合部16a,16c;36a,36cを弾力的に嵌合し抜脱方向に係合させる。こうして必要に応じて搬送用容器Aの全体にベルト掛け(図示省略)して輸送及び保管等に供する。
【0054】
本発明にかかる搬送用容器Aの場合、前記のように容器本体10の嵌合突縁13に蓋体30の嵌合壁33が嵌合した状態においては、縦横一方の対向両辺部a,cにおける嵌合突縁13と嵌合壁33との嵌合面部15,35の凹凸係合部16a,16c;36a,36cが抜脱方向に係合することで、単なる嵌合の場合に比して抜脱に対する抵抗力が大きく、蓋体30が容易に開くことがない。
【0055】
特に、一方側辺部aの凹凸係合部16a,36aが、他方側辺部cの凹凸係合部16c,36cよりも抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造であり、抜脱し難くなっている。そのため、搬送用容器Aを縦置きして輸送に供する場合に、前記の抜脱し難い係合構造の凹凸係合部16a,36aの側(前記一方側辺部aの側)を縦置き姿勢の上部側にして起立させることにより、該搬送用容器Aの蓋体30の上部側が開き難いものになる。そのため、仮に、バンド掛けがされていなくても、またバンド掛けを外した場合にも、蓋体30の縦置き姿勢での上部側が下側の他方側辺部cを支点に容器本体10から離脱する方向に回動しようとするのを前記凹凸係合部16a,36aにより規制でき、そのため蓋体30が勝手に開くことがなく、蓋体被着状態を良好に保持できる。
【0056】
しかも、内容物の取り出しのために蓋体30を開くときには、前記一方側辺部aの凹凸係合部16a,36aよりも抜脱に対する抵抗力の小さい係合構造の凹凸係合部16c,36cが設けられた前記他方側辺部cの側から、蓋体30を、例えば手掛け用の切欠部39に指先を掛けて開くようにすれば、比較的容易に開くことができる。特に、前記他方側辺部cの嵌合突縁13と嵌合壁33との嵌合面部15,35が図のような傾斜面をなしていると、前記一方側辺部aを支点にして容器本体から離脱する方向に回動して開き易くなる。
【0057】
さらに、図示する実施例のように、前記一方側辺部aの凹凸係合部16a,36aとして、嵌合突縁13と嵌合壁33の嵌合面部15,35が先端側部分15a,35aと基部側部分15b,35bで段差dをなし、該段差dを利用して凹条17,37と凸条18,38が設けられてなり、また、前記他方側辺部cの凹凸係合部16c,36cとして、嵌合突縁13と嵌合壁33の嵌合面部15,35が傾斜面15c,35cをなし、該傾斜面15c,35cに凸条18と凹条37が設けられてなる場合には、容器本体10の開口部に蓋体30を被着する際の嵌合操作は、前記一方側辺部aでは、嵌合面部15,35の段差dを利用して、先端側部分15a,35a同士を合わせるように位置決めして押し込むことにより容易に嵌合でき、また他方側辺部cでは、嵌合面部15,35の傾斜面15c,35cを利用して容易に嵌合でき、嵌合被着作業を容易に行うことができる。
【0058】
また、嵌合被着状態においては、前記一方側辺部aの凹凸係合部16a,36aの係合と、前記他方側辺部cの凹凸係合部16c,36cの係合により、安定性のよい被着状態を保持できるばかりか、特に、一方側辺部aの凹凸係合部16a,36aが、他方側辺部cの凹凸係合部16c,36cよりも抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造をなしていることで、前述のように、縦置き姿勢においても蓋体30が上部側から容易に開くことがなく、閉蓋状態な良好に良好に保持できる。
【0059】
しかも、蓋体30を開くときには、蓋体30を、例えば手掛け用の切欠部39に指先を掛けて、前記一方側辺部aを支点にして容器本体10から離脱する方向に蓋体30を回動させるようにすることにより、比較的容易に開くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の搬送用容器は、素板ガラス、液晶表示用やプラズマ表示用のガラス基板等の比較的大型のガラス基板、タッチパネルその他の衝撃に弱い各種の板状体を搬送、保管するのに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0061】
A…搬送用容器、B…板状体、a,c…対向両辺部、10…容器本体、11…底部、11a…上面、12a,12b,12c,12d…側壁、13…嵌合突縁、14…切欠部、15…嵌合面部、15a…先端側部分、15b…基部側部分、16a…凹凸係合部,16c…凹凸係合部、17…凹条、18…凸条、21…凹部、22…切欠、23…切欠凹部、24…切欠部、25…凹欠部、26…バンド掛け用の凹部、30…蓋体、30a…上面、31…周縁部、32…凹部、33…嵌合壁、34…凸縁、35…嵌合面部、35…嵌合面部、35a…先端側部分、35b…基部側部分、36a…凹凸係合部,36c…凹凸係合部、37…凹条、38…凸条、39…切欠部、40…バンド掛け用の凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する平面矩形の容器本体と、該容器本体の開口部に嵌合被着される蓋体とからなり、容器本体の開口部に有する嵌合突縁と、蓋体の周縁部に有する嵌合壁とが内外に嵌合する構造を備えてなる板状体の搬送用容器であって、
前記容器本体と蓋体の縦横一方の対向両辺部における前記嵌合突縁と嵌合壁の嵌合面部には、それぞれ嵌合時に弾力的に嵌合して抜脱方向に係合する凹凸係合部が設けられ、一方側辺部の凹凸係合部が、他方側辺部の凹凸係合部よりも抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造をなしていることを特徴とする板状体の搬送用容器。
【請求項2】
前記凹凸係合部が設けられた対向両辺部を上下にして縦置き状態で輸送に供する容器であり、縦置き姿勢の上部側になる一方側辺部における凹凸係合部が、他方側辺部の凹凸係合部よりも抜脱に対する抵抗力が大きい係合構造をなしている請求項1に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項3】
前記凹凸係合部が設けられた対向両辺部が長辺側の両辺部である請求項2に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項4】
前記一方の対向両辺部の嵌合面部における凹凸係合部として、前記嵌合突縁及び嵌合壁のそれぞれに、容器幅方向の凹条及び/又は凸条が、互いに他方の凸条及び/又は凹条と嵌合するとともに、嵌合状態において抜脱に対する抵抗力が対向両辺部で異なる係合構造をなすように設けられてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項5】
前記一方側辺部の嵌合面部における凹凸係合部の凹条及び/又は凸条の容器幅方向長さが、前記他方側辺部の嵌合面部における凹凸係合部の凹条及び/又は凸条の容器幅方向長さより長くなっている請求項4に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項6】
前記一方側辺部の嵌合面部における前記凹凸係合部として、前記嵌合突縁及び前記嵌合壁が、それぞれの嵌合面部の先端側部分が基部側部分に対して段差をなすように減肉形成され、前記嵌合突縁の嵌合面部における基部側部分及び先端側部分と、前記嵌合壁の嵌合面部における先端側部分及び基部側部分とが互いに段差をなして嵌合するように設けられるとともに、前記嵌合突縁及び前記嵌合壁の嵌合面部における前記先端側部分と基部側部分との間に、それぞれ容器幅方向の凹条及び/又は凸条が、互いに他方の凸条及び/又は凹条と嵌合するように設けられてなる請求項4に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項7】
前記嵌合突縁及び前記嵌合壁のそれぞれの嵌合面部の先端側部分及び基部側部分が、容器本体の底部上面及び蓋体下面に対して垂直面をなすように形成されてなる請求項6に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項8】
前記一方側辺部の前記嵌合突縁及び嵌合壁のそれぞれの嵌合面部に、前記基部側部分との間に容器幅方向の凹条を形成するように間隔をおいて前記段差に相当する高さの凸条が形成され、前記凹条が前記凸条に対応した深さをなし、前記凹条と凸条が互いに他方の凸条と凹条とに嵌合し係合するように設けられてなる請求項6に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項9】
前記他方側辺部の嵌合面部における凹凸係合部として、前記嵌合突縁と嵌合壁の一方に容器幅方向の凹条、他方に該凹条に嵌合する容器幅方向の凸条が形成されてなる請求項4に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項10】
前記他方側辺部の嵌合面部における凹凸係合部として、前記嵌合突縁と嵌合壁の一方に容器幅方向の凹条、他方に該凹条に嵌合する容器幅方向の凸条が形成されてなる請求項6に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項11】
前記他方側辺部における前記嵌合突縁及び嵌合壁の嵌合面部が、容器本体の底部上面及び蓋体下面に対する垂直面に対して傾斜面をなし、該傾斜面に前記凸条又は凹条が設けられてなる請求項9に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項12】
前記他方側辺部における蓋体の側面に、開蓋操作の際の手掛け用の切欠部が設けられてなる請求項9に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項13】
容器本体及び蓋体が、それぞれ発泡樹脂製の成形容器である請求項4に記載の板状体の搬送用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−206728(P2012−206728A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72193(P2011−72193)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】