説明

板状部材の分離送出装置

【課題】複数の板状部材が積層されてなる積層体から板状部材を取り出す作業性の向上を図ることができる板状部材の分離送出装置を提供する。
【解決手段】板状部材の分離送出装置1では、載置台6aが第1の位置まで回動された際に、積層体Sが自重によって摺動して各鋼板Kが送出方向に段状に突出して突当部18aに突き当たる。これにより、積層体Sにおける各鋼板K同士がずれるので、鋼板K同士が剥離し易くなる。そして、剥離しやすくなった積層体Sの最上層の鋼板Kは、載置台6aが第2の位置まで回動された際に、突当部18aから外れて送出端15から前部ローラ19aによって送出される。したがって、積層体Sから鋼板Kを剥離して取り出すといった一連の作業を作業者が行う必要がないので、複数の鋼板Kが積層されてなる積層体Sから鋼板Kを取り出す作業性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材の分離送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板等の板状部材をまとめて購入した場合には、複数の板状部材が積層された状態(以下、積層体という)で納品される。このような状態において、板状部材の加工を行う際には、積層体から一枚ずつ鋼板を剥離して取り扱うことになるが、鋼板等の板状部材は、一枚あたり例えば200kg程度ある。また、特に、鋼板の場合には、錆や油等によって鋼板同士が剥がれ難くなっている。そのため、積層体から鋼板を剥離して取り出すためには、例えば鋼板同士の間にくさびを打ち込んで隙間を形成し、その隙間に棒状部材を挿入して持ち上げる作業が必要となる。したがって、積層体から板状部材を剥離する作業には手間がかかり、また、板状部材を落下させないように作業を慎重に行う必要もあるため、作業者への負担が大きいといった問題がある。
【0003】
そこで、上記のような作業を軽減するために、例えば特許文献1の記載の装置が知られている。特許文献1に記載の板状ワークの剥離装置には、板状のワークの積層体を滑降させる傾斜通路と、この傾斜通路を滑降した積層体の端部が斜めになるように受け止める受取面部とが設けられている。この剥離装置では、積層体を傾斜通路を降下させて受取面部に斜めに衝突させることにより、積層体の積み重ね面にせん断力を働かせ、板状ワーク同士を剥離しやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−106042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した剥離装置は、板状部材同士が剥離しやすくなるため、例えばベニヤ板のような軽量な部材には有意である。しかしながら、鋼板等といった板状部材の場合、上記構成では、鋼板を剥離した後に積層体からその鋼板を一枚ずつ取り出して例えば加工装置まで運ぶ作業が依然として必要であり、やはり時間と手間がかかるといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題解決のためになされたものであり、複数の板状部材が積層されてなる積層体から板状部材を取り出す作業性の向上を図ることができる板状部材の分離送出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の板状部材の分離送出装置は、複数の板状部材を積層してなる積層体から板状部材を分離して送出する板状部材の分離送出装置であって、積層体を載置可能な載置面と、板状部材を外方に送出する送出端とを有する載置台と、載置面が送出端に向かって低くなるように載置台を回動させる駆動手段とを備え、駆動手段によって載置台が第1の位置に回動し、積層体の各板状部材が自重で送出方向に摺動したときに、少なくとも積層体の上層の板状部材が上層であるほど送出方向に突出するように段状に突き当たる突当部と、駆動手段によって載置台が第1の位置からさらに第2の位置に回動したときに、突当部から外れた積層体の最上層の板状部材を送出端に向けて摺動させる摺動部とを有していることを特徴とする。
【0008】
この板状部材の分離送出装置には、積層体を載置する載置台に突当部と摺動部とが設けられている。載置台に載置された積層体は、載置台が第1の位置まで回動された際に、自重によって摺動して各板状部材が送出方向に段状に突出して突当部に突き当たる。これにより、積層体における各板状部材同士がずれるので、板状部材が剥離し易くなる。そして、剥離しやすくなった積層体の最上層の板状部材は、載置台が第2の位置まで回動された際に、突当部から外れて送出端から摺動部によって送出される。つまり、積層体を載置台の載置面に載置して、載置台に積層体を載置して回動させることにより、積層体の最上層の板状部材を分離して取り出すことができる。このように、積層体から板状部材を分離して取り出すといった一連の作業を行うことができるので、複数の板状部材が積層されてなる積層体から板状部材を取り出す作業性の向上を図ることができる。
【0009】
また、載置台は、載置台が第2の位置に回動したときに、最上層の板状部材の下層の板状部材を突当部の送出端側で保持する保持面を更に有していることが好ましい。この場合には、最上層の板状部材の下層の板状部材が保持面において保持されるので、最上層の板状部材のみを確実に分離して送出することができる。
【0010】
また、摺動部は、載置台が第2の位置に回動したときに、保持面によって保持されている下層の板状部材の傾斜角度よりも、最上層の板状部材の傾斜角度が小さくなるように、最上層の板状部材を摺動させることが好ましい。このように、最上層の板状部材の傾斜角度(送出角度)が下層の板状部材の傾斜角度よりも小さくなるように摺動部をスライドさせることにより、板状部材の傾斜角度の違いに起因して、最上層の板状部材と下層の板状部材と間に隙間が形成される。したがって、最上層の板状部材と下層の板状部材とを確実に分離することができる。
【0011】
また、摺動部は、ローラであり、載置台が第2の位置に回動したときに、最上層の板状部材の送出端側が下層の板状部材から浮くようにローラが設けられていることが好ましい。この場合には、最上層の板状部材とその下層の板状部材との間に確実に隙間を形成することができ、最上層の板状部材と下層の板状部材とをより確実に分離することができる。
【0012】
また、載置台には、積層体の最下層の板状部材と当接するローラが設けられていることが好ましい。この場合には、最下層の板状部材が載置面に直接載置される場合に比べて摺動しやすくなるので、載置台が回動した際に、最下層の板状部材を送出方向に向けて好適に摺動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の板状部材が積層されてなる積層体から板状部材を取り出す作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る板状部材の分離送出装置の使用形態を示す図である。
【図2】図1に示す板状部材の分離送出装置を示す斜視図である。
【図3】板状部材の分離送出装置の側面図である。
【図4】板状部材の分離送出装置の一部を拡大して示す側面図である。板状部材の分離送出装置の側面図である。
【図5】板状部材の分離送出装置の動作を説明するため図である。
【図6】板状部材の分離送出装置の動作を説明するため図である。
【図7】板状部材の分離送出装置の動作を説明するため図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る板状部材の分離送出装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る板状部材の分離送出装置の使用形態を示す図であり、図2は、図1に示す板状部材の分離送出装置を示す斜視図である。図1に示すように、板状部材の分離送出装置1は、例えば鋼板Kを切断装置(シャー)2によって切断加工を行う際に、複数(本実施形態では6枚)の鋼板Kが積層された状態(以下、積層体Sという)から鋼板Kを一枚ずつ分離して作業台3に送出する装置である。板状部材の分離送出装置1によって作業台3に送出された鋼板Kは、切断装置2のベッドBに載置されて、加工が行われる。この鋼板Kは、例えば板厚6mm、幅1524mm、長さ3048mmであり、その重量は、例えば200kgである。なお、以下の説明においては、鋼板Kが送り出される方向を送出方向として説明する。
【0017】
続いて、板状部材の分離送出装置1について、図2〜図4を参照しながら説明する。図3は、板状部材の分離送出装置の側面図であり、図4は、板状部材の分離送出装置の一部を拡大して示す側面図である。図2〜図4に示すように、板状部材の分離送出装置1は、固定台5と、載置台6a〜6bと、シリンダ7a〜7cとを備えている。なお、以下の説明において、図3及び図4に示す鋼板K1〜K6を鋼板Kと称することもある。
【0018】
固定台5は、載置台6を回動可能に支持固定する台である。固定台5は、構造用鋼材等の柱状部材から構成されており、矩形状の枠体10と、この枠体10を支持する複数本(本実施形態では6本)の脚部11とから構成されている。枠体10の前端部には、一対のピローユニット12a,12bが配設されている。ピローユニット12a,12bには、シリンダ7a〜7cによって駆動される載置台6a〜6cが軸13を介して回動可能に軸支されている。ピローブロック12a,12bのそれぞれは、軸13が軸支される半円状の頂部と、頂部の下側の直方体状の脚部とによって構成されている。ピローブロック12a,12bは、脚部が枠体10に対してボルト固定されている。
【0019】
載置台6a〜6cは、積層体Sが載置される台である。載置台6a〜6cは、固定台5にピローユニット12a,12bを介して回動可能に設けられている。この載置台6a〜6cは、送出方向に直交する水平方向(以下、幅方向とする)において、所定の間隔を有して複数台(本実施形態では3台)並設されている。
【0020】
載置台6aを例にして具体的に説明する。載置台6aは、例えば耐摩耗性鋼板等からなり、固定台5の長さに対応する長尺状をなしている。載置台6aは、鋼板Kを外方に送出する送出端15と、鋼板Kを搬入する搬入端16とを有している。そして、載置台6aは、載置面17aと、突当部18aと、前部ローラ19aと、後部ローラ20aと、軸孔21aとを備えている。この載置台6aは、載置面17aが送出端15に向かって低くなるように、或いは、載置面17aが搬入端16に向かって高くなるように回動する。
【0021】
載置面17aは、積層体Sが載置される面である。載置面17aは、載置台6上端の平坦面であり、載置台6aの長手方向に沿って設けられている。
【0022】
突当部18aは、載置台6aが第1の位置に回動し、積層体Sの鋼板K1〜K6が自重で送出方向に摺動したときに、積層体Sの上層の鋼板Kが上層であるほど送出方向に突出するように段状に突き当たる部分である。この突当部18aは、送出方向における載置面17aの前方において、載置面17aに連設されている。具体的には、突当部18aは、載置台6aの水平状態(図3に示す状態)において、載置面17aの先端から送出端15側に向けて登り勾配で傾斜しており、その傾斜角度は、載置面17aに対して例えば15〜30°である。このような構成により、載置部6aにおいて、載置面17aと突当部18aとは、略V字状をなしている。
【0023】
突当部18aの送出端15側には、保持面22aが設けられている。保持面22aは、載置台6aが第1の位置よりもさらに第2の位置に回動したときに、最上層の鋼板K1の下層の鋼板K2を突当部18aの送出端15側で保持する。この保持面22aは、突当部18aにおいて登り勾配の送出端15側に形成されており、載置面17aに対して略垂直となっている(図4参照)。保持面22の高さは、例えば6〜12mmであり、鋼板Kの厚さに対応している。
【0024】
前部ローラ19aは、突当部18aから外れた積層体Sの最上層の鋼板K1を送出端15に向けてスライドさせる。より具体的には、前部ローラ19aは、載置台6aが第2の位置に回動したときに、保持面22aによって保持されている鋼板K2〜K6の傾斜角度よりも、最上層の鋼板K1の傾斜角度が小さくなるように、最上層の鋼板K1を摺動させる(図6参照)。前部ローラ19aは、載置台6の送出端15側に配設されている。
【0025】
具体的には、載置台6における保持面22aの送出端15側には、載置面17aと略平行で保持面22aと略直角を成す上端面27aを有する突出部27が形成されており、前部ローラ19aは、その突出部27に設けられている。前部ローラ19aは、例えば深溝玉軸受け(ベアリング)であり、外径が100mm、幅が25mmである。この前部ローラ19aは、載置台6の送出端15側において、突出部27を両側から挟むように軸23を介して一対取り付けられている。そして、前部ローラ19aは、その回転面が上端面27aよりも突出するように設けられている。
【0026】
上記の構成により、前部ローラ19aは、載置台6aの水平状態において、その回転面の頂部が保持面22の形成されている高さ位置よりも高い位置となるように、載置台6aの突出部27に取り付けられている。
【0027】
後部ローラ20aは、図3に示すように、載置面17aに載置された積層体Sの最下層の鋼板K6をスライドさせる。後部ローラ20aは、載置台6の搬入端16側に配設されている。後部ローラ20aは、前部ローラ19aと同様に、例えば例えば深溝玉軸受け(ベアリング)であり、外径が100mm、幅が25mmである。この後部ローラ20aは、載置台6の搬入端16側に軸24を介して、載置台6を両側から挟むように一対取り付けられている。
【0028】
軸孔21aは、載置台6の送出端15側において、前部ローラ19aの下部に形成されている。軸孔21aは、外径が例えば45mmであり、軸孔21aの軸中心は、前部ローラ19aを支持する軸23の軸中心と垂直方向において同一線上となっている。軸孔21aには、固定台5のピローユニット12a,12bに支持される軸13が挿入さている。これにより、載置台6は、送出端15側を中心として回動する。
【0029】
載置台6b,6cにおいても、上記載置台6aと同様の構成を有している。すなわち、載置台6b,6cは、載置面17b,17cと、突当部18b,18cと、前部ローラ19b,19cと、後部ローラ20b,20cと、軸孔21b,21cとを備えている。
【0030】
シリンダ7a〜7cは、載置面17aが送出端15に向かって低くなるように載置台6を回動させる駆動手段である。このシリンダ7a〜7cは、例えば空気圧によって駆動されるエアーシリンダである。シリンダ7a〜7cは、載置台6a〜6cの搬入端16側に配置されており、載置台6a〜6cに対応して複数台(本実施形態では3台)設けられている。
【0031】
シリンダ7aを例にして説明する。シリンダ7aには、ピストン25aが伸縮自在に設けられており、ピストン25aの先端部は、載置台6aの後部ローラ20aの下部に軸26を介して連結されている。この軸26の軸中心は、後部ローラ20aを支持する軸24の軸中心と垂直方向において同一直線上となっている。シリンダ7aは、ピストン25aを伸ばすことにより、載置台6を水平方向に対して例えば15〜20°傾斜させる。
【0032】
シリンダ7b,7cにおいても、上記シリンダ7aと同様の構成を有している。すなわち、シリンダ7b,7cは、ピストン25b,25cが伸縮自在に設けられており、ピストン25b,25cの先端部は、載置台6b,6cに連結されている。なお、シリンダ7a〜7cは、図示しない制御装置によって、ピストン25a〜25cの伸縮が制御されている。
【0033】
続いて、板状部材の分離送出装置1の動作について、図3及び図5〜図7を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、載置台6aを例にして説明する。
【0034】
図3に示すように、まず載置台6aの載置面17a上に積層体Sが搬入端16側から搬入される。この状態において、積層体Sの各鋼板Kの送出端15側の端部は、略面一となっている。次に、シリンダ7aにおいてピストン25aを上昇させ、図5に示すように、載置台6aを軸13周りに第1の位置まで回動させる。このとき、載置台6aの水平方向に対する傾斜角度はθ1となっている。これにより、載置台6aの回動に伴い積層体Sの各鋼板Kが自重によって送出端15側に向かって摺動し、鋼板Kが突当部18aに突き当たる。鋼板Kは、積層体Sの上層の鋼板Kが上層であるほど送出方向に突出するように段状に突当部18aに突き当たる。つまり、最下層の鋼板K6の端部に対して、それより上層の鋼板K5〜K1の端部が段々に突出している。
【0035】
続いて、載置台6aを軸13周りに第1の位置よりもさらに第2の位置まで回動させる。このとき、載置台6aの水平方向に対する傾斜角度はθ2となっており、第1の位置よりもその傾斜角度が大きく(θ2>θ1)なっている。これにより、図6に示すように、最上層の鋼板K1は、自重と下層の鋼板K2に突き上げられる力とによって下層の鋼板K2から浮くように保持面22aから外れ、前部ローラ19aにより送出端15側に向けてスライドされる。
【0036】
このとき、最上層の鋼板K1の水平方向に対する傾斜角度は、保持面22aによって保持されている下層の鋼板K2〜K6の傾斜角度よりも小さくなっている。具体的には、最上層の鋼板K1は、送出端15側が前部ローラ19aに支持されると共に、搬入端17側が直下の鋼板K2によって支持されることにより、傾斜角度(送出角度)が設定されている。すなわち、前部ローラ19aの回転面に鋼板K1が乗り上げることにより、鋼板K1の水平方向に対する傾斜角度が下層の鋼板K2〜K6の傾斜角度よりも小さくなる。このように、最上層の鋼板K1が前部ローラ19aに乗り上がることで下層の鋼板K2よりも浮き上がり、その鋼板K1と下層の鋼板K2〜K6との傾斜角度に差が発生することで、鋼板K1と鋼板K2との間に隙間Dが形成されて、鋼板K1,K2同士が分離される。
【0037】
その後、最上層の鋼板K1は、スライドされて例えば図1に示す作業台3の上に載置される。スライドする鋼板K1の下層の鋼板K2は、最上層の鋼板K1と当接することによって下方に押圧されているため、下層の鋼板K3から突き上げられる力が抑制され、保持面22aによって保持される。このようにして、積層体Sから最上層の鋼板K1が分離されて送出される。
【0038】
更に、積層体Sから鋼板K2を分離して送出させる場合、シリンダ7aのピストン25aを収縮させて、図7に示すように、載置台6aが定常状態(水平状態)に戻される。このとき、積層体Sにおける各鋼板K2〜K6の送出端15側の端部は、突当部18aに突き当てられて段状となっている。そして、載置台6aを軸13周りに第2の位置まで回動させる。これにより、上述のように、最上層の鋼板K2が下層の鋼板K3に突き上げられ、突当部18aの保持面22aから積層体Sの最上層の鋼板K2が外れる。そして、最上層の鋼板K2が前部ローラ19aに乗り上がることで、鋼板K2の水平方向に対する傾斜角度が下層の鋼板K3〜K6の傾斜角度よりも小さくなる。
【0039】
このように、最上層の鋼板K2が前部ローラ19aに乗り上がることで下層の鋼板K3よりも浮き上がり、その鋼板K2と下層の鋼板K3〜K6との傾斜角度に差が発生することで、鋼板K2と鋼板K3との間に隙間Dが形成されて、鋼板K2,K3同士が分離されて送出される。以上のような動作を繰り返すことにより、板状部材の分離送出装置1では、積層体Sから最上層の鋼板Kが分離されて送出される。
【0040】
以上説明したように、本発明の板状部材の分離送出装置1には、積層体Sを載置する載置台6a〜6cに突当部18a〜18cと前部ローラ19a〜19cとが設けられている。載置台6a〜6cに載置された積層体Sは、載置台6a〜6cが第1の位置まで回動された際に、自重によって摺動して各鋼板K1〜K6が送出方向に段状に突出して突当部18a〜18cに突き当たる。これにより、積層体Sにおける各鋼板K1〜K6同士がずれるので、鋼板K1〜K6同士が剥離し易くなる。そして、剥離しやすくなった積層体Sの最上層の鋼板K1は、載置台6a〜6cが第2の位置まで回動された際に、突当部18a〜18cから外れて送出端15から前部ローラ19a〜19cによって送出される。
【0041】
つまり、積層体Sを載置台6a〜6cの載置面17a〜17cに載置して、載置台6a〜6cに積層体Sを回動させることにより、積層体Sの最上層の鋼板K1を取り出すことができる。したがって、積層体Sから鋼板Kを剥離して取り出すといった一連の作業を作業者が行う必要がないので、複数の鋼板Kが積層されてなる積層体Sから鋼板Kを取り出す作業性の向上を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態の板状部材の分離送出装置1は、積層体Sを突当部18a〜18cに突き当てる際に、鋼板Kの自重を利用しているため、鋼板Kを移動させるための機構を必要とせず、簡易な構成とすることができる。
【0043】
また、載置台6a〜6bは、この載置台6a〜6bが第2の位置に回動したときに、最上層の鋼板Kの下層の鋼板Kを突当部18a〜18cの送出端15側で保持する保持面22a〜22cを更に有している。これにより、最上層の鋼板Kの下層の鋼板Kが保持面22a〜22cにおいて保持されるので、最上層の鋼板Kのみを確実に分離して送出することができる。
【0044】
また、前部ローラ19a〜19cは、載置台6a〜6cが第2の位置に回動したときに、保持面22a〜22cによって保持されている下層の鋼板Kの傾斜角度よりも、最上層の鋼板Kの傾斜角度が小さくなるように、最上層の鋼板Kを摺動(スライド)させる。このように、最上層の鋼板Kの傾斜角度(送出角度)が下層の鋼板Kの傾斜角度よりも小さくなるように前部ローラ19a〜19cをスライドさせることにより、鋼板Kの傾斜角度の違いに起因して、最上層の鋼板Kと下層の鋼板Kと間に隙間Dが形成される。したがって、最上層の鋼板Kと下層の鋼板Kとを確実に分離することができる。
【0045】
また、載置台6a〜6cが第2の位置に回動したときに、最上層の鋼板Kの送出端15側が下層の鋼板Kから浮くように前部ローラ19a〜19cが設けられている。このため、最上層の鋼板Kとその下層の鋼板Kとの間に確実に隙間Dを形成することができ、最上層の鋼板Kと下層の鋼板Kとをより確実に分離することができる。
【0046】
また、載置台6a〜6cには、積層体Sの最下層の鋼板Kと当接する後部ローラ20a〜20cが設けられている。これにより、最下層の鋼板Kが載置面17a〜17cに直接載置される場合に比べて摺動しやすくなるので、載置台6a〜6cが回動した際に、最下層の鋼板Kを送出方向に向けて好適に摺動させることができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、板状部材として鋼板Kを例示したが、板状部材の分離送出装置1においては、様々な板状部材に対応することが可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、載置面17a〜17cが送出端15に向かって低くなるように載置台6a〜6cを回動させる駆動手段としてシリンダ7a〜7cを用いたが、駆動手段はシリンダ7a〜7cに限定されず、例えばジャッキ等であってもよい。
【0049】
また、上記実施気形態では、摺動部として前部ローラ19a〜19cを用いたが、摺動部は、鋼板Kがスライドするものであればよく、例えば鋼板Kのとの当接面が滑らかに形成された半円状の部材等であってもよい。
【0050】
また、上記実施形態に加えて、前部ローラ19a〜19cが送出方向に沿って移動自在に設けられてよい。この場合、載置面17a〜17cに載置される鋼板Kが最後の一枚となったときに、前部ローラ19a〜19cを搬入端16側に移動させて前部ローラ19a〜19cの回転面を保持面22a〜22cよりも搬入端16側に位置させることにより、最後の一枚の鋼板Kをスムーズに送出することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…板状部材の分離送出装置、6a〜6c…載置台、7a〜7c…シリンダ(駆動手段)、15…送出端、17a〜17b…載置面、18a〜18b…突当部、19a〜19c…前部ローラ(摺動部)、20a〜20c…後部ローラ(ローラ)、K,K1〜K6…鋼板(板状部材)、S…積層体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状部材を積層してなる積層体から前記板状部材を分離して送出する板状部材の分離送出装置であって、
前記積層体を載置可能な載置面と、前記板状部材を外方に送出する送出端とを有する載置台と、
前記載置面が前記送出端に向かって低くなるように前記載置台を回動させる駆動手段とを備え、
前記駆動手段によって前記載置台が第1の位置に回動し、前記積層体の各板状部材が自重で送出方向に摺動したときに、少なくとも前記積層体の上層の板状部材が上層であるほど前記送出方向に突出するように段状に突き当たる突当部と、
前記駆動手段によって前記載置台が前記第1の位置からさらに第2の位置に回動したときに、前記突当部から外れた前記積層体の最上層の板状部材を前記送出端に向けて摺動させる摺動部とを有していることを特徴とする板状部材の分離送出装置。
【請求項2】
前記載置台は、当該載置台が前記第2の位置に回動したときに、前記最上層の板状部材の下層の板状部材を前記突当部の前記送出端側で保持する保持面を更に有していることを特徴とする請求項1記載の板状部材の分離送出装置。
【請求項3】
前記摺動部は、前記載置台が前記第2の位置に回動したときに、前記保持面によって保持されている前記下層の板状部材の傾斜角度よりも、前記最上層の板状部材の傾斜角度が小さくなるように、前記最上層の板状部材を摺動させることを特徴とする請求項2記載の板状部材の分離送出装置。
【請求項4】
前記摺動部は、ローラであり、
前記載置台が前記第2の位置に回動したときに、前記最上層の板状部材の前記送出端側が前記下層の板状部材から浮くように前記ローラが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の板状部材の分離送出装置。
【請求項5】
前記載置台には、前記積層体の最下層の板状部材と当接するローラが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の板状部材の分離送出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−79649(P2011−79649A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234544(P2009−234544)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】