説明

架橋可能なゴム組成物および成形品。

【課題】低反発弾性、低圧縮永久ひずみを兼備し、温度依存性の少ない制振性に優れたゴム組成物および該組成物を含有してなる成形品を提供すること。
【解決手段】ゴム成分(A)100重量部、制振性付与成分(B)5重量部〜200重量部、形状保持成分(C)0.1重量部〜50重量部、架橋剤成分(D)0.1重量部〜25重量部及び架橋促進成分(E)0.1重量部〜20重量部からなるゴム組成物を含有する成形品によって上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反発弾性、低圧縮永久ひずみを兼備し、温度依存性の少ない制振性に優れたゴム組成物に関し、詳しくはクッション性・衝撃吸収性・制振性が要求される製品・部材などの成形品に好適なゴム組成物および該組成物を含有する成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から多種のポリマーやポリマー組成物が、自動車関連、機器関連、住宅・建設・土木関連、エレクトロニクス関連、スポーツ・レジャー・日用品関連などあらゆる分野で汎用されている。これらの使用分野によっては、ポリマー等に大きな衝撃が加わる環境下や振動の激しい環境下で使用されることもあり、ポリマー等には特性として高度なクッション性、耐衝撃性あるいは制振性が要求されることがある。
【0003】
従来からクッション性のあるポリマー等としては、特に軟質ポリウレタンフォームが汎用されている。この種の軟質ポリウレタンは、40%〜80%の高反発弾性を有するものが一般的で、特にシートなどの用途では硬い感触に起因し、使用者が疲労感を覚えるというような不都合があった。そのため、ポリウレタンフォームを改良し、低反発弾性でクッション性のあるクッション材が提供されている(特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
また、従来から制振性のあるポリマー等としては、ゴム材料が汎用されている。しかしながら、上記の特許文献1や特許文献2に記載のクッション材では、反発弾性が低いものの硬度が十分でないため、荷重が加わった場合の成形体の変形量が大きく、フォーム構造が破壊されることがあった。また、ゴム材料は一般のポリマーの中では最も減衰性に優れるものの、比較的低荷重下における低圧縮永久歪、低反発弾性の両立が可能という限定されたものであった。このような問題点を解決する方法として、剛性を上げるためにジブロック成分を含有するスチレン系熱可塑性エラストマーとゴムの組み合わせで対応する提案がなされている。(特許文献3)また、双極子モーメント量を増加させる活性成分をポリマー中に配合し、低反発弾性と剛性のバランスをとる方法が提案されている。(特許文献4)しかしながら、これらのいずれも、剛性は維持できるものの圧縮永久歪性に弊害が生じ、特に高温環境下ではその弊害がより顕著である。これは、熱可塑性樹脂が高温域では、圧縮変形を受けた状態で室温に戻されるとそのまま永久変形してしまうことに起因している。
【特許文献1】特開11−170469号公報
【特許文献2】特開平10−52866号公報
【特許文献3】特開2002−179927号公報
【特許文献4】特開2006−8859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、高温下、高荷重下においても低反発弾性でありながら低圧縮永久歪性(成形品に荷重が加えられた状態で使用された後、その荷重を取り去った場合に、もとの形状に戻る特性いわゆる変形し難さを示す)、クッション性、耐衝撃性を有し、さらに優れた制振性を有するゴム組成物およびそれを用いた成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討した結果、ゴム成分(A)、制振性付与成分(B)、形状保持成分(C)、架橋剤成分(D)及び架橋促進成分(E)からなるゴム組成物を含有してなる制振材料が、従来実現できなかった低反発弾性、低圧縮永久ひずみ、形状保持性を兼備しながら制振性に優れた性能を有することを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下の1〜15を提供する。
【0007】
1.請求項1記載の発明は、ゴム成分(A)100重量部、制振性付与成分(B)5重量部〜200重量部、形状保持成分(C)0.1重量部〜50重量部、架橋剤成分(D)0.1重量部〜25重量部及び架橋促進成分(E)0.1重量部〜20重量部からなることを特徴とするゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【0008】
2.請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ゴム成分(A)が、ハロゲン化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴム、ジビニルベンゼン共重合ブチルゴムの一種または二種以上であることを特徴とするゴム組成物および該ゴム組成物を用いた成形品。
【0009】
3.請求項3記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ゴム成分(A)が、天然ゴムおよびまたはブタジエンゴムであることを特徴とするゴム組成物および該ゴム組成物を用いた成形品。
【0010】
4.請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、制振性付与成分(B)が、石油系樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂のいずれか一種あるいは二種以上であり、その軟化点が80℃〜150℃であることを特徴とするゴム組成物および該ゴム組成物を用いた成形品。
【0011】
5.請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記形状保持成分(C)が、熱可塑性架橋エラストマー(C1)及びまたは熱可塑性樹脂含有ゴム(C2)であることを特徴とするゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【0012】
6.請求項6記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、前記架橋剤成分(D)が、有機過酸化物であることを特徴とするゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【0013】
7.請求項7記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記架橋促進成分(E)が、有機過酸化物架橋の架橋助剤であることを特徴とするゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【0014】
8.請求項8記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記石油系樹脂が、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であることを特徴とするゴム組成物および該ゴム組成物を用いた成形品。
【0015】
9.請求項9記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の発明において、前記テルペン系樹脂が、芳香族変成テルペン樹脂であることを特徴とするゴム組成物および該ゴム組成物を用いた成形品。
【0016】
10.請求項10記載の発明は、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の発明において、
前記熱可塑性架橋エラストマー(C1)を構成する熱可塑性樹脂とゴムとの構成比(重量)が30/70〜1/99であり、熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンまたはポリエチレンであり、重量平均分子量1,000〜100,000、その軟化点は、100℃〜160℃であることを特徴とするゴム組成物および該ゴム組成物を用いた成形品。
【0017】
11.請求項11記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の発明において、成形品が、自転車、バイク用ハンドルグリップあるいはステップである成形品。
【0018】
12.請求項12記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の発明において、成形品が、電動工具用グリップである成形品。
【0019】
13.請求項13記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の発明において、成形品がゴルフクラブ、テニスラケット、バット用グリップである成形品。
【0020】
14.請求項14記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の発明において、成形品が住宅の免震に用いられる成形品。
15.請求項15記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の成形品が、弾球遊技機に用いられる成形品。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、低反発弾性・低圧縮永久ひずみ・制振性を具備したゴム組成物を提供できる。その結果、該組成物を用いて、大きな衝撃の加わる環境下や激しい振動が伴う環境下など、高度なクッション性、耐衝撃性あるいは制振性が要求される分野の製品・部材などの成形品、住宅の免震用ゴム、バイク・自転車のハンドルグリップ、ステップ、動力工具のグリップ、道路工事用の空圧削岩機、地固め用ランマ等のグリップ、ゴルフクラブ、テニスラケット、野球バットなどの打撃を伴う各種スポーツ用具のグリップ、歩行用杖の路面との接触時に生じる衝撃吸収用などに好適に使用できる。さらに、弾球遊技機における遊技球の過度の反発に対する防止用に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分(A)100重量部、制振性付与成分(B)5重量部〜200重量部、形状保持成分(C)0,1重量部〜50重量部、架橋剤成分(D)0.1重量部〜25重量部及び架橋促進成分(E)0.1重量部〜20重量部からなり、低反発弾性にも関わらず低圧縮永久ひずみ性を有しているため成形品の形状保持が優れており、大きな衝撃の加わる環境下や激しい振動が伴う環境下など、高度なクッション性、耐衝撃性あるいは制振性が要求される製品・部材などの成形品に好適なゴム組成物に関する。
【0023】
本発明を構成するゴム成分(A)としては、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴム、ポリウレタンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等の合成ゴム及びこれら天然ゴムまたは合成ゴムの分子鎖末端が変性されたものなどを挙げることができる。これらは単独または2種以上混合して用いることができる。これらの中でも、天然ゴム、ジエン系ゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴムが好ましく、ハロゲン化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴムが特に好ましい。
【0024】
本発明を構成する制振性付与成分(B)としては、石油系樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂などを挙げることができる。軟化点としては、混練り加工性、制振性から80℃〜150℃が好ましい。80℃未満では、混練り時に、粘着性が激しくなり好ましくない。150℃を超えると、加工時に軟化しないため、粘度が高くなり作業性に問題が生じる。
【0025】
石油系樹脂としては、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂であり、例えば、C5 系石油樹脂(脂肪族系石油樹脂)、C9 系石油樹脂(芳香族系石油樹脂)、C59 共重合石油樹脂が挙げられ、減衰性と剛性の温度依存性とのバランスに優れる点でC59 共重合石油樹脂が好ましい。石油系樹脂は、市販品を用いることができ、例えば、クイントン1325(ジシクロペンタジエン−シクロペンタジエン共重合物、日本ゼオン(株)製)、ハイレジン♯120(C5 系脂肪族不飽和炭化水素とC9 系芳香族不飽和炭化水素の共重合体、東邦化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0026】
クマロン樹脂としては、特に限定されない。クマロン樹脂は、クマロン・インデン共重合物とも言われ、重質軽油の組成のうち、スチレン、クマロン、インデンの3種類からなる重合体である。これらは、各モノマーのホモポリマー、各モノマーいずれか2種類の共重合体、あるいは3種の共重合体などの複雑な混合物である。
クマロン樹脂は、市販品を用いることができ、例えば、クマロンG−90(新日鐵化学(株)製)が挙げられる。フェノール樹脂としては、特に限定されないが、非反応性フェノール樹脂、熱反応性フェノール樹脂、熱可塑性フェノール樹脂などを挙げることができる。フェノール樹脂は市販品を用いることができ、例えば、ヒタノール1501(日立化成(株)製)が挙げられる。テルペン樹脂は、特に限定されず、例えば、ジテルペンの重合体またはそのフェノール変性もしくは芳香族変性体が挙げられる。減衰性と剛性の温度依存性とのバランスに優れる点で芳香族変成テルペン樹脂が好ましい。
【0027】
テルペン樹脂は、市販品を用いることもでき、例えば、YSレジン−TO−125(ヤスハラケミカル(株)製、芳香族変成テルペン)等が挙げられる。
制振性付与成分(B)の添加量としては、ゴム成分(A)100重量部に対し、5重量部〜200重量部、好ましくは10重量部〜150重量部、更に好ましくは20重量部〜100重量部である。この範囲を超えると、制振性あるいは圧縮永久歪が劣り好ましくない。
【0028】
本発明を構成する形状保持成分(C)としては、熱可塑性架橋エラストマー(C1)あるいは熱可塑性樹脂含有ゴム(C2)が挙げられる。熱可塑性架橋エラストマー(C1)は、熱可塑性樹脂を海相、ゴムを島相とする海島構造からなる(いわゆるTPV)。海相を構成する熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、本発明のゴム成分(A)との相溶性が向上し、制振材料としたときの形状保持性の温度依存性が改善される点で、ポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポレエチレンが好ましい。
【0029】
ポリプロピレンあるいはポリエチレンの重量平均分子量は、制振材料としたとき等の加工性に優れる点で、1,000〜100,000であるのが好ましく、3,000〜50,000であるのがより好ましく、5,000〜10,000であるのが特に好ましい。その軟化点は、制振材料としたとき等の加工性に優れる点で、100℃〜160℃であるのが好ましく、100℃〜150℃であるのがより好ましく、105℃〜145℃であるのが特に好ましい。
【0030】
一方、島相を構成するゴムは、該ゴムを架橋可能な架橋剤で架橋され、前記海相中に粒子状に微分散されたものである。島相のゴムが架橋されていることによって圧縮永久歪を抑制する効果が生まれる。島相を構成するゴムとしては特に限定されないが、本発明のゴム成分(A)との相溶性が向上し、制振材料としたときの形状保持性の温度依存性が改善される点で、部分架橋IIR、ハロゲン化IIR、EPM、EPDMであるのがより好ましい。これらは一種単独あるいは二種以上用いても良い。また、熱可塑性架橋エラストマー(C1)を構成する熱可塑性樹脂とゴムとの構成比(重量)は、30/70〜1/99である。ゴムが70未満では、圧縮永久歪性が不十分であり、99以上では海島構造が保たれなくなり好ましくない。熱可塑性架橋エラストマー(C1)は市販品でもよく、例えば、ミラストマー(三井石油化学(株)製)、エキセリンク(JSR(株)製)等が挙げられる。
【0031】
熱可塑性樹脂含有ゴム(C2)としては、ゴム中に熱可塑性樹脂を溶融分散させたものであり、具体的には、市販品としてエプタロイ(三井石油化学(株)製)が挙げられる。
形状保持成分(C)の添加量としては、ゴム成分(A)100重量部に対し、0.1重量部〜50重量部であり、好ましくは1重量部〜20重量部、特に好ましくは1重量部〜10重量部である。50重量部を超えると過度に硬くなり成形加工時の作業性に支障を来し好ましくない。0.1重量部未満では形状保持性が不足し好ましくない。
【0032】
本発明を構成する架橋剤成分(D)としては、硫黄、有機過酸化物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、キノン、キノンジオキシム、ハロゲン化物、アミン、アジリジン化合物、アゾ化合物、イソシアナート、カルボン酸、酸無水物、アルデヒド、アルコール、エポキシ化合物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、有機金属ハロゲン化物、有機酸金属塩、金属アルコキシド、有機金属化合物、シラン化合物などが挙げられる。このうち、硫黄、有機過酸化物が好ましい。特に有機過酸化物がより好ましい。
【0033】
その有機過酸化物としては、ゴム工業分野で架橋剤として使用されているものが好ましく、例えば、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類などが挙げられ、好ましくはジアルキルパーオキサイド類である。ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。ジアシルパーオキサイド類として、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイドなどが挙げられる。パーオキシエステル類としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなど)などが挙げられる。
【0034】
有機過酸化物の添加量は、ゴム成分(A)100重量部に対し、0.1重量部〜25重量部、好ましくは0.3重量部〜10重量部、特に好ましくは0.5重量部〜7重量部である。有機過酸化物の添加量が少なすぎると、架橋密度が低下し、圧縮永久ひずみが大きくなる。また、有機過酸化物の添加量が多すぎると、ゴム弾性が不十分となる場合がある。
【0035】
本発明を構成する架橋促進成分(E)としては、硫黄架橋における架橋促進剤あるいは有機過酸化物架橋における架橋助剤が挙げられる。
【0036】
架橋促進剤としては、グアニジン系促進剤、アルデヒドーアミン系促進剤、アルデヒドーアンモニア系促進剤、チアゾール系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、チオ尿素系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤、キサントゲン酸塩系促進剤等が挙げられる。これらの架橋促進剤はその種類および配合量は特に限定されず、架橋物の用途、要求性能、架橋剤の種類、架橋促進剤の種類などに応じて決めればよい。
【0037】
架橋助剤としては、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p´−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,N´−m−フェニレンジマレイミド等のパーオキシ架橋助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アクリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー;ビニルブチラート、またはビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマー;等が挙げられる。架橋助剤の種類および配合量は特に限定されず、架橋物の用途、要求性能、架橋剤の種類、架橋助剤の種類などに応じて決めればよい。
【0038】
本発明のゴム組成物には、その他の成分として、本発明の課題である低反発弾性、低圧縮永久ひずみ、及び制振性を阻害しない範囲内において、通常、ゴム配合に添加される配合剤を添加することができる。具体的には、液状ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、スコーチ防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、素練り促進剤、安定剤、滑剤、スリップ剤、防曇剤、帯電防止剤、エポキシ樹脂用硬化剤、エポキシ樹脂用変性剤、活性剤、加工助剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、カーボンブラック、白色充填剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、造核剤、透明化剤、防腐剤、防カビ剤、導電付与剤、着色剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、内部離型剤、難燃剤、熱伝導剤、奪水剤、発泡剤、発泡助剤、抗菌剤などを挙げることができる。
【0039】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、特に制限はなく、本発明のゴム組成物を構成する各成分及びその他の添加剤をバンバリーミキサー、加圧ニーダー、オープンロール、二軸押出機などの混練機を用いて混練りすることによって得ることができる。
本発明のゴム組成物の成形方法としては、上記混練機によって得られた未架橋ゴムを、プレス成形機、射出成形機、UHF成形機、熱風架橋成形機、加硫缶、LCM加硫機、電子線架橋機などを用いて加硫成形することによって得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下具体的に、実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。以下の実施例・比較例において評価した項目については、つぎの方法によって求めたものである。
引張強度、伸びは、島津製作所製の引張試験機を用い、JIS K6251に従い、3号形試験片を用い、標準条件(温度23℃、相対湿度50%)引張速度500mm/分の条件で測定した。硬さは、JIS K6253に従い、タイプAデュロメータ硬さを測定した。 反発弾性は、リュプケ式反発弾性試験機(株式会社上島製作所製)を用い、JIS K6255に従い、標準条件(温度23℃、相対湿度50%)で測定した。圧縮永久歪は、JIS K6262に従い、70℃×22時間で測定した。また、制振性については、粘弾性測定装置(岩本製作所製タイプVES−F−III)により、短冊状試験片を用い、静的歪3%、動的歪0.3%、15Hzに固定し、−20℃、0℃、25℃、50℃におけるtanδを求めその指標とした。混練り加工性の評価としては、ロール作業におけるロール表面への粘着性や巻付け性で評価した。
【0041】
〈実施例1〜5、比較例1〜3〉
表1に示される配合成分(いずれも重量部)を3リットルのニーダー(設定温度60℃、回転数30rpm)で各成分が十分に分散するまで混練りした後排出し、次に6インチのオープンロール(設定温度50℃、回転数F/B=20rpm/24rpm)で架橋剤、架橋促進成分を添加して混練りし、十分に分散した後、成形用の本発明のゴム組成物を得た。このようにして得られたゴム組成物について、170℃のプレス成形機を用いて加硫し(プレス圧150kgf/cmの圧力下で15分加熱)、物性評価用加硫シート(2mm×150mm×150mm)及びブロック(Φ29mm、厚さ12.5mm)を得た。
これらの試験用シート、ブロックを用いて上記の各種試験を実施し、その結果を表2に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】



表2から明らかなように、比較例1は、形状保持成分(C)が含まれていないため、硬さが低くなり形状保持性に劣る。比較例2は、制振付与成分(B)が含まれていないため、反発弾性が大きく、また損失正接が小さいことから制振性に劣る。比較例3は、制振付与成分(B)の添加量が本発明の範囲を超えるため、ロール作業において、粘着性が激しく作業効率に劣り成形不可。これらに比し、本発明のゴム組成物は、混練り加工性に優れ、加硫成形品は、形状保持、低反発、低圧縮永久歪性を兼備し、しかも損失正接が低温〜高温に至る範囲に亘って大きい値を示す。従って、クッション性・衝撃吸収性・制振性が要求される製品・部材などの成形品に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分(A)100重量部、制振性付与成分(B)5重量部〜200重量部、形状保持成分(C)0.1重量部〜50重量部、架橋剤成分(D)0.1重量部〜25重量部及び架橋促進成分(E)0.1重量部〜20重量部からなるゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【請求項2】
前記ゴム成分(A)が、ハロゲン化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴム、ジビニルベンゼン共重合ブチルゴムのいずれか一種あるいは二種以上である請求項1に記載のゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【請求項3】
前記ゴム成分(A)が、天然ゴムおよびまたはブタジエンゴムである請求項1に記載のゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【請求項4】
前記制振性付与成分(B)が石油系樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂のいずれか一種あるいは二種以上であり、その軟化点が80℃〜150℃である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【請求項5】
前記形状保持成分(C)が、熱可塑性架橋エラストマー(C1)あるいは熱可塑性樹脂含有ゴム(C2)である請求項1〜請求項4のいずれかに記載のゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【請求項6】
前記架橋剤成分(D)が有機過酸化物である請求項1〜請求項5のいずれかに記載のゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【請求項7】
前記架橋促進成分(E)が有機過酸化物架橋の架橋助剤である請求項1〜請求項6のいずれかに記載のゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【請求項8】
前記石油系樹脂が、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂である請求項1〜請求項7いずれかに記載のゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【請求項9】
前記テルペン系樹脂が、芳香族変成テルペン樹脂である請求項1〜請求項8のいずれかに記載のゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【請求項10】
前記熱可塑性架橋エラストマー(C1)を構成する熱可塑性樹脂とゴムとの構成比(重量)が30/70〜1/99であり、熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンまたはポリエチレンであり、重量平均分子量1,000〜100,000、その軟化点が、100℃〜160℃である請求項1〜請求項9のいずれかに記載のゴム組成物および該ゴム組成物を含有してなる成形品。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の成形品が、自転車、バイク用ハンドルグリップあるいはステップである成形品。
【請求項12】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の成形品が、電動工具用グリップである成形品。
【請求項13】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の成形品が、ゴルフクラブ、テニスラケット、バット用グリップである成形品。
【請求項14】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の成形品が、住宅の免震に用いられる成形品。
【請求項15】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の成形品が、弾球遊技機に用いられる成形品。

【公開番号】特開2008−94973(P2008−94973A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278856(P2006−278856)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(302067844)株式会社ツーワン (12)
【Fターム(参考)】