説明

校正用インクジェット記録材料の製造方法

【課題】校正対象のマット調印刷用紙に面感が類似し、インクジェットの印字画像と校正対象の印刷用紙に印刷した画像との見栄えが類似した校正用インクジェット記録材料の製造方法を提供する。
【解決手段】JIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)が0.5μm以上2.7μm以下である非吸収性支持体上の少なくとも一方の面に、平均二次粒子径が0.5μm以下である無機微粒子、親水性バインダー、及び、該非吸収性支持体のRa75をa(μm)、インク受像層の厚みをb(μm)とした際に、a<r<bで規定される平均粒径r(μm)を有する顔料を含有するインク受像層塗布液に、水溶性多価金属塩を塗布直前にインライン添加して塗布することを特徴とする校正用インクジェット記録材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は校正用インクジェット記録材料の製造方法に関するものである。更に詳しくは、校正対象の印刷用紙に面感が類似し、インクジェットで印字した画像と印刷用紙に印刷した画像との見栄えが類似した、印刷校正用に適した校正用インクジェット記録材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンターやプロッターの目ざましい進歩により、フルカラーでしかも高精細な画像が容易に得られるようになってきた。
【0003】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の記録材料に付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。インクジェット記録方式はコンピューターにより作成した文字や各種図形等の画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途において近年急速に普及している。特に多色インクジェット記録方式により形成されるカラー画像は製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較しても遜色のない記録を得ることが可能であり、更に作成部数が少ない用途においては、印刷技術や写真技術によるよりも安価で済むことから広く応用されている。
【0004】
近年、インクジェット記録方式によって印刷されたインクジェット記録材料を使用して、印刷仕上がりをシミュレーションする印刷校正用途に利用することも多くなってきた。最近のインクジェットプリンターでは、印刷校正用専用機とした製品も市場に出てきており、それに対応したインクジェット記録材料の製品化が望まれてきた。このような印刷校正に利用されるインクジェット記録材料は、校正対象の印刷用紙の色相や質感を忠実に再現することが重要であり、特に印刷仕上がり色を校正するために、インクジェット記録材料の色相を校正対象の印刷用紙の色相に近似させることが最も重要である。
【0005】
そのため、このようなインクジェット記録材料は蛍光染料、着色染料、あるいは着色顔料等の色材を用い、インク受像層の色相を調整することが一般的であり、特に校正用インクジェット記録材料については色相、光沢度、及び坪量等を校正対象の印刷用紙に近似させることにより、校正用の記録材料として違和感をなくすことにつとめている(例えば、特許文献1参照)。また、非吸収性支持体の中心線平均粗さ(Ra)を特定し、顔料を含有するインク受像層を設けることで、色相、光沢度を校正対象の印刷用紙に近似させた校正用インクジェット記録材料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、インク受像層の平均表面粗さを特定して、面感を調整する方法が提案されているが、インク受像層のみで校正対象とする印刷用紙に面感を合わせるのは困難である(例えば、特許文献3参照)。また、非吸収性支持体の中心線平均粗さ(Ra)を特定して、光沢差を改善する、または、高い光沢、平滑性を得る方法が提案されているが、インクジェットの印字画像と校正対象の印刷用紙に印刷した画像との見栄えに差異が生じ、十分満足できるものではなかった(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平12−343815号公報
【特許文献2】特開2004−299162号公報
【特許文献3】特開2000−52649号公報
【特許文献4】特開平7−25133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、校正対象の印刷用紙に面感が類似し、校正対象の印刷用紙に印刷した画像との見栄えが類似したインクジェットの印字画像が得られる校正用インクジェット記録材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、JIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)が0.5μm以上2.7μm以下である非吸収性支持体上の少なくとも一方の面に、平均二次粒子径が0.5μm以下である無機微粒子、親水性バインダー、及び、該非吸収性支持体のRa75をa(μm)、インク受像層の厚みをb(μm)とした際に、a<r<bで規定される平均粒径r(μm)を有する顔料を含有するインク受像層塗布液に、水溶性多価金属塩を塗布直前にインライン添加して塗布することを特徴とする校正用インクジェット記録材料の製造方法によって達成される。
【0010】
また、該校正用インクジェット記録材料に用いられる平均二次粒子径が0.5μm以下である無機微粒子の含有量Aに対する、非吸収性支持体のRa75をa(μm)、インク受像層の厚みをb(μm)とした際に、a<r<bで規定される平均粒径r(μm)を有する顔料の含有量Bの比率B/Aが、0.03以上0.21以下であることが好ましい。
【0011】
また、該校正用インクジェット記録材料に用いられる非吸収性支持体のRa75をa(μm)、インク受像層の厚みをb(μm)とした際に、a<r<bで規定される平均粒径r(μm)を有する顔料が無機顔料であることが好ましい。
【0012】
また、該校正用インクジェット記録材料に用いられる水溶性多価金属塩がジルコニウム塩またはアルミニウム塩であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、校正対象の印刷用紙に面感が類似し、校正対象の印刷用紙に印刷した画像との見栄えが類似したインクジェットの印字画像が得られる校正用インクジェット記録材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の校正用インクジェット記録材料の製造方法について詳細に説明する。
【0015】
本発明においては、校正対象の印刷用紙に面感を合わせるため、非吸収性支持体のRa75をa(μm)、インク受像層の厚みをb(μm)とした際に、a<r<bと規定される平均粒径r(μm)を有する顔料をインク受像層が含有する必要がある。r≦aの場合、顔料の粒状感が非吸収性支持体の凸凹中に埋没してしまうため、校正対象の印刷用紙の面感に合わせることができず、また、r≧bの場合、インク受像層表面の凸凹が大きくなりすぎてしまい校正対象の印刷用紙の面感に合わせることができない。また、顔料を含有しない場合も、校正対象の印刷用紙の面感に合わせることができないため、十分満足しうるインクジェットの印字画像が得られない。
【0016】
本発明における校正対象の印刷用紙としては、一般に用いられている紙の上に、各種カオリン、焼成カオリン、シリカ、アルミナ、タルク、粉砕炭酸カルシウム等の精製した天然鉱物顔料、サチンホワイト、リトポン等の複合合成顔料、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、水酸化アルミナ等の半合成顔料、有機密実顔料、有機中空顔料等の合成樹脂顔料等の顔料、澱粉、ラテックス、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カゼイン、ポリアクリルアミド等のバインダー、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、カチオン化剤、滑剤等を配合した塗工液を塗布して得られる、一般的な印刷用紙が挙げられる。中でも本発明の製造方法により得られる校正用インクジェット記録材料は、面質が低光沢でしっとりとした視感のあるマット調の印刷用紙の校正用インクジェット記録材料として好適である。
【0017】
本発明に用いられる非吸収性支持体としては、合成紙、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙の両面にポリオレフィン樹脂をラミネートした樹脂被覆紙等が挙げられる。中でも樹脂被覆紙が最も好ましい。本発明においてこれら非吸収性支持体は、校正対象印刷用紙に面感を類似させるため、Ra75が0.5μm以上2.7μm以下である必要があり、例えば、熱可塑性樹脂の熱溶融押出ラミネート法でのクーリングロールに微粗面加工したもの等を用いることができる。Ra75が0.5μm未満のものを使用しても、支持体自体の平滑性が高く、インク受像層のみで校正対象の印刷用紙に面感を類似させることができない。また、Ra75が2.7μmを超えるものを使用しても、支持体自体の平滑性が低すぎるためその影響が大きくなり、インク受像層によって校正対象の印刷用紙に面感を類似させることができず、本発明では使用することができない。
【0018】
本発明において好ましく用いられる樹脂被覆紙を構成する基紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。基紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
【0019】
更に、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0020】
また、基紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性のよいものが好ましく、その坪量は30g/m以上250g/m以下が好ましい。
【0021】
基紙を被覆するポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体等のオレフィンの二つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0022】
また、ポリオレフィン樹脂被覆紙の樹脂中には、二酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等の白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、ヒンダードフェノール系化合物等の酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルー等のブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫等のマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0023】
ポリオレフィン樹脂被覆紙の製造においては、樹脂を押出機で加熱溶融し、紙等のシート状基体とクーリングロールとの間に樹脂をフィルム状に押出し、圧着、冷却することで製造される。クーリングロールは樹脂コーティング層の表面形状の形成に使用され、樹脂被覆紙の表面はクーリングロール表面の形状により高光沢か、無光沢か、またはパターン化された例えば絹目状やマット状等の粗面型付けを形成することができる。また、樹脂を基紙に被覆する前に、基紙にコロナ放電処理、火炎処理等の活性化処理を施すことが好ましい。樹脂被覆層の厚みとしては、5μm以上50μm以下が適当である。
【0024】
本発明に用いられる非吸収性支持体は、インク受像層が塗設される側に下引き層を設けるのが好ましい。この下引き層は、インク受像層が塗設される前に、予め非吸収性支持体の表面に塗布乾燥されたものである。この下引き層は、皮膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を主体に含有する。好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーであり、特に好ましくはゼラチンである。これらの水溶性ポリマーの付着量は、10mg/m以上500mg/m以下が好ましく、20mg/m以上300mg/m以下がより好ましい。更に、下引き層には、他に界面活性剤や硬膜剤を含有するのが好ましい。非吸収性支持体上に下引き層を設けることによって、インク受像層塗布時のひび割れ防止に有効に働き、均一な塗布面が得られる。
【0025】
本発明における非吸収性支持体には帯電防止性、搬送性、カール防止性等のために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤等を適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0026】
本発明におけるインク受像層に用いられる無機微粒子としては、平均二次粒子径が0.5μm以下のものであり、より好ましくは10nm以上300nm以下のものである。このような無機微粒子としては、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等公知の各種微粒子が使用される。より大きい細孔容積が得られる点で非晶質合成シリカ、アルミナまたはアルミナ水和物が好ましく、校正対象の印刷用紙に面感を類似させやすいため、気相法シリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物が特に好ましく用いられる。
【0027】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカはケイ酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして市販されている。ゲル法シリカはケイ酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販されている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0028】
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0029】
気相法シリカは、カチオン性、アニオン性いずれの化合物の存在下で分散してもよいが、カチオン性化合物の存在下で分散するのが好ましい。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。なお、本発明でいう平均二次粒子径とは、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることができるが、簡易的にはレーザー散乱式の粒度分布計(例えば、(株)堀場製作所製LA920)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。
【0030】
上記気相法シリカの分散に使用するカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーを好ましく使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号公報、特開昭59−33176号公報、特開昭59−33177号公報、特開昭59−155088号公報、特開昭60−11389号公報、特開昭60−49990号公報、特開昭60−83882号公報、特開昭60−109894号公報、特開昭62−198493号公報、特開昭63−49478号公報、特開昭63−115780号公報、特開昭63−280681号公報、特開平1−40371号公報、特開平6−234268号公報、特開平7−125411号公報、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性及び分散液粘度の面で、これらのカチオン性ポリマーの質量平均分子量は2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。
【0031】
本発明に用いられるアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で粉砕したものが使用できる。
【0032】
本発明に用いられるアルミナ水和物はAl・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。本発明に使用されるアルミナ水和物はアルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。
【0033】
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、カチオン性、アニオン性いずれの化合物の存在下で分散してもよい。カチオン性化合物としては、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸、アミド硫酸、メタンスルホン酸等の公知の分散剤によって分散されたものが好ましく用いられる。
【0034】
上記した無機微粒子の中から2種以上の無機微粒子を併用することもできる。例えば、微粉砕した湿式法シリカと気相法シリカとの併用、気相法シリカとアルミナあるいはアルミナ水和物との併用等が挙げられる。
【0035】
本発明において無機微粒子と共にインク受像層を構成する親水性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、キトサン誘導体、カゼイン、大豆蛋白、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらバインダーは2種類以上併用することも可能である。バインダーの使用にあたっては、バインダーが保存中の湿度等により膨潤し、空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的膨潤性の低いバインダーが好ましく用いられる。好ましいバインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールや、カチオン変成ポリビニルアルコールである。また、バインダーとして各種エマルジョンやラテックスを使用してもよい。
【0036】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度200以上5000以下のものが好ましい。
【0037】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号公報に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0038】
本発明は、インク受像層を構成する上記バインダーと共に必要に応じ硬膜剤を用いることもできる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル)尿素、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、米国特許第2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
親水性バインダーとしてケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したポリビニルアルコールを用いる場合には、硬膜剤としてホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類が好ましく、ホウ酸が特に好ましい。
【0040】
また、インク受像層を構成する親水性バインダーとしてケト基を有するバインダーを用いることもできる。ケト基を有する親水性バインダーは、ケト基を有するモノマーと他のモノマーを共重合する方法、ポリマー反応でケト基を導入する方法等によって合成することができる。特にケト基を有する変性ポリビニルアルコールが好ましい。ケト基を有する変性ポリビニルアルコールとしては、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0041】
アセトアセチル変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールとジケテンの反応等の公知の方法によって製造することができる。アセトアセチル化度は0.1%以上20%以下が好ましく、更に1%以上15%以下が好ましい。ケン化度は80%以上が好ましく、更に85%以上が好ましい。重合度としては、500以上5000以下のものが好ましく、特に2000以上4500以下のものが更に好ましい。また、部分または完全ケン化のポリビニルアルコールや、カチオン変成ポリビニルアルコールと、ケト基を有するバインダーを併用することも可能である。
【0042】
本発明において、インク受像層に含有するケト基を有する親水性バインダーは、架橋剤で架橋されることが好ましい。かかる架橋剤としては、脂肪族ポリアミン類、脂環式ポリアミン、複素環式ポリアミン、芳香族ポリアミン類、ポリアミドポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ジシアンジアミド誘導体、ヒドラジン化合物、ポリヒドラジド化合物、アルデヒド類、メチロール化合物、活性化ビニル化合物、エポキシ化合物、多価金属塩等の化合物が挙げられる。特に、ポリヒドラジド化合物、及び多価金属塩が好ましい。また、アセトアセチル変性、ジアセトンアクリルアミド変性された部位以外は、通常のポリビニルアルコールと同様の構造を持つため、硬膜剤を併用することができる。特にホウ砂あるいはホウ酸、ホウ酸塩を併用することが好ましい。
【0043】
また、本発明におけるインク受像層における親水性バインダーの含有量は、インク受像層の全固形分に対して1質量%以上50質量%以下の範囲が好ましく、特に5質量%以上40質量%以下が好ましい。また、インク受像層が含有する平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子の含有量は、インク受像層の全固形分に対して50質量%以上が好ましく、特に60質量%以上が好ましい。このようなインク受像層は、インク受像層内に微細な細孔を形成し、多孔質な層を形成するため、インク吸収性に優れるために好ましい。
【0044】
本発明の製造方法では、無機微粒子と親水性バインダー、及び前記した特定の平均粒径r(μm)を有する顔料を含有するインク受像層塗布液を製造し、水溶性多価金属塩を含有する液を該塗布液中にインライン混合することが必要である。この方法は、インライン添加とも称されており、そのための混合装置も、インラインミキサーやスタティックミキサーとして市販されている。例えば、(株)ノリタケカンパニー製スタティックミキサー、Kenics社(アメリカ)製スタティックミキサー、Sulger社(スイス)製スタティックミキシングエレメントSMV型、晃立工業(株)製シマザキパイプミキサー、東レ(株)製Hi−Mixer等がある。また、インライン動的ミキサーとしては、例えば特開2000−271463号公報に記載のものを用いることができる。該塗布液に対し、水溶性多価金属塩を混合すると、液自身の粘度が時間と共に上昇し、塗工することが困難になってしまうため、塗布直前に水溶性多価金属塩をインライン添加する必要がある。なお、本発明において塗布直前とは、少なくともインライン添加後180秒以下で塗布することを意味し、好ましくはインライン添加後60秒以下で塗布することである。
【0045】
本発明に用いられる水溶性多価金属塩として、例えば、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデン等から選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には、例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、蟻酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、蟻酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、フェノールスルフォン酸ニッケル、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、フェノールスルフォン酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、リンタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストリン酸n水和物等が挙げられる。これらの中にはpHが不適当に低いものもあり、その場合は適宜pHを調節して用いることも可能である。なお水溶性とは、常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。本発明では、ジルコニウム塩またはアルミニウム塩からなる水溶性多価金属塩を用いることで、校正対象の印刷用紙の印刷部と、本発明における校正用インクジェット記録材料の印字部との見た目が更に類似するため、特に好ましい。また、水溶性多価金属塩の添加量は、インライン添加後の添加量として、平均二次粒子径が500nm以下の無機微粒子に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0046】
本発明に用いられる非吸収性支持体のRa75をa(μm)、インク受像層の厚みをb(μm)とした際に、a<r<bと規定される平均粒径r(μm)を有する顔料として、例えば、無色もしくは白色顔料として、ケイソウ土、クレー、焼成クレー、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、二酸化チタン被覆雲母、硫酸バリウム、モリブデンホワイト、亜鉛華、リトポン、硫化亜鉛、石膏、鉛白、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ゼオライト、水酸化マグネシウム、シリカ、ガラス粉、硫酸バリウム等の無機顔料、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート共重合樹脂等の有機顔料等、また、有色顔料として、チタンブラック、チタニウムイエロー、群青、紺青、コバルト青、カーボンブラック、鉄黒、酸化亜鉛、酸化コバルト、酸化珪素、水酸化アルミニウム、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、染色レーキ、澱粉、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン樹脂等の合成樹脂粒子、シリコーン粒子等、公知のものが挙げられる。中でも、校正対象の印刷用紙に面感を合わせるために、無機顔料を用いることが好ましく、その中でもシリカを用いることが特に好ましい。また、上記平均粒径r(μm)を有する顔料の添加量として、平均二次粒子径が0.5μm以下の無機微粒子に対して0.001質量部以上0.4質量部以下であることが好ましく、その中でも0.03質量部以上0.21質量部以下であることが、校正対象の印刷用紙に更に面感が類似するため特に好ましい。
【0047】
インク受像層には更に、カチオン性ポリマー、防腐剤、界面活性剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤等を添加することもできる。
【0048】
本発明におけるインク受像層は、2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらの受像層の構成はお互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0049】
本発明において、インク受像層の塗液を塗工する方法に特に制限はなく、スプレーガン方式、スライドビード方式、スライドカーテン方式、エクストルージョン方式、スロットダイ方式、グラビアロール方式、エアナイフ方式、ブレードコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等各種の塗工方法を用いることができる。本発明のインク受像層の塗液を支持体上に塗工する量に特に制限はないが、インク吸収性と経済性を両立させるためには通常、固形分として15g/m以上50g/m以下を塗工することが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、部及び%は、質量部及び質量%を示す。
【0051】
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して0.2%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量100g/mになるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙とした。抄造した基紙に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100%の樹脂に対して、10%のアナターゼ型二酸化チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、厚さ35μmになるように押出被覆し、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し表面の樹脂被覆紙層を設けた。もう一方の面には密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂30部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し裏面の樹脂被覆紙層を設け、非吸収性支持体Aを得た。この非吸収性支持体Aの表面の中心線平均粗さRa75は1.5μmであった。
【0052】
また、非吸収性支持体Aの表面の樹脂被覆層を設ける際に用いたクーリングロールを更に凹凸の粗い粗面に型付けされたものに代えた以外は同様にして、非吸収性支持体Bを作製した。表面の樹脂被覆層の中心線平均粗さRa75は2.4μmであった。
【0053】
また、非吸収性支持体Bの表面の樹脂被覆層を設ける際に用いたクーリングロールを更に凹凸の粗い粗面に型付けされたものに代えた以外は同様にして、非吸収性支持体Cを作製した。表面の樹脂被覆層の中心線平均粗さRa75は3.0μmであった。
【0054】
また、非吸収性支持体Aの表面の樹脂被覆層を設ける際に用いたクーリングロールを更に凹凸の細かい鏡面に型付けされたものに代えた以外は同様にして、非吸収性支持体Dを作製した。表面の樹脂被覆層の中心線平均粗さRa75は0.6μmであった。
【0055】
また、非吸収性支持体Dの表面の樹脂被覆層を設ける際に用いたクーリングロールを更に凹凸の細かい鏡面に型付けされたものに代えた以外は同様にして、非吸収性支持体Eを作製した。表面の樹脂被覆層の中心線平均粗さRa75は0.4μmであった。
【0056】
(実施例1)
上述した非吸収性支持体Aの表面に下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/mとなるように塗布乾燥した。更に該下引き層上に、インク受像層として、下記組成からなるインク受像層塗布液1に対し、下記組成からなるインク受像層用添加液1を塗布直前にインライン混合し撹拌した後に、スライドビード塗布装置を用いて、塗布量が固形分23g/mになるように塗布、乾燥してインク受像層を設け、実施例1の校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。また、インク受像層用添加液1をインライン添加した後、塗布するまでの時間は20秒であった。
【0057】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0058】
<気相法シリカ分散液>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9000)4部と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g)100部を添加し予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザーで処理して、固形分濃度20%のシリカ分散液を製造した。平均二次粒子径は、粒度分布計(LA920、(株)堀場製作所製)を用いて測定すると130nmであった。
【0059】
<インク受像層塗布液1>
気相法シリカ分散液 (シリカ固形分として) 100部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 21部
ホウ酸 4部
顔料(ミズカシルP78A、水澤化学工業(株)製、平均粒径3μm) 5部
有色顔料A(TB500、大日精化(株)製、平均粒径0.3μm) 0.01部
有色顔料B(TB906、大日精化(株)製、平均粒径0.3μm) 0.016部
固形分濃度が12%になるように水で調整し、インク受像層塗布液1とした。
【0060】
<インク受像層用添加液1>
水溶性多価金属塩(ポリ塩化アルミ、タキバイン#1500、多木化学(株)製) 2部
酢酸ナトリウム 1部
固形分濃度が12%となるように水で調整し、インク受像層用添加液1とした。なお、上記部数は、インク受像層塗布液1中の気相法シリカ固形分100部に対する部数である。
【0061】
(実施例2)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、非吸収性支持体Aの代わりに非吸収性支持体Bを用いた以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。
【0062】
(実施例3)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、非吸収性支持体Aの代わりに非吸収性支持体Dを用いた以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。
【0063】
(実施例4)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1の代わりに下記インク受像層塗布液2を用い、塗布量が固形分30g/mになるように塗布、乾燥した以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは35μmであった。
【0064】
<アルミナ水和物分散液>
水に解膠剤として硝酸をAl換算100gに対して25mmol添加した分散媒をディゾルバ(周速10m/s)で撹拌しながら擬ベーマイトアルミナ水和物(DISPERAL HP14、サソール製、平均一次粒子径14nm)を徐々に添加し、固形分濃度がAl換算で25%、平均二次粒子径が160nmのアルミナ水和物分散液を得た。
【0065】
<インク受像層塗布液2>
アルミナ水和物分散液 (アルミナ固形分として) 100部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 15部
ホウ酸 1部
顔料(ミズカシルP78A、水澤化学工業(株)製) 5部
有色顔料A(TB500、大日精化(株)製) 0.01部
有色顔料B(TB906、大日精化(株)製) 0.016部
固形分濃度が16%になるように水で調整し、インク受像層塗布液2とした。
【0066】
(実施例5)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層用添加液1の水溶性多価金属塩として、ポリ塩化アルミを2部用いる代わりにジルコゾール(登録商標)(ZA−30、第一稀元素(株)製)を1部用いた以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。
【0067】
(実施例6)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液の塗布量を固形分16g/mとした以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは20μmであった。
【0068】
(実施例7)
実施例4の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液の塗布量を固形分40g/mとした以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは45μmであった。
【0069】
(実施例8)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1のミズカシルP78Aの添加量を1部にした以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0070】
(実施例9)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1のミズカシルP78Aの添加量を16部にした以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0071】
(実施例10)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1のミズカシルP78Aを5部用いる代わりにミズカシルP707(水澤化学工業(株)製、平均粒径2μm)を5部用いる以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0072】
(実施例11)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1のミズカシルP78Aを5部用いる代わりにミズカシルP78F(水澤化学工業(株)製、平均粒径12μm)を5部用いる以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0073】
(実施例12)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1のミズカシルP78Aの添加量を0.5部にした以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0074】
(実施例13)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1のミズカシルP78Aの添加量を25部にした以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0075】
(実施例14)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1のミズカシルP78Aを5部用いる代わりにポリスチレン粒子SBX6(積水化成工業(株)製、平均粒径6μm)を5部用いる以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0076】
(実施例15)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層用添加液1の代わりに下記インク受像層用添加液2を用いた以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。
【0077】
<インク受像層用添加液2>
水溶性多価金属塩(塩化マグネシウム六水和物) 1部
酢酸ナトリウム 0.1部
固形分濃度が12%となるように水で調整し、インク受像層用添加液2とした。なお、上記部数は、インク受像層塗布液1中の気相法シリカ固形分100部に対する部数である。
【0078】
(比較例1)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、非吸収性支持体Aの代わりに非吸収性支持体Cを用いた以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。
【0079】
(比較例2)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、非吸収性支持体Aの代わりに非吸収性支持体Eを用いた以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。
【0080】
(比較例3)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1の代わりに下記インク受像層塗布液3を用いた以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0081】
<沈降法シリカ分散液>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9000)4部と沈降法シリカ(吸油量200mL/100g、平均一次粒子径16nm)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(周速30m/s)を使用して予備分散液を作製した。次に得られた予備分散液をビーズミルで処理して、固形分濃度30%の沈降法シリカ分散液を得た。平均二次粒子径は0.6μmであった。
【0082】
<インク受像層塗布液3>
沈降法シリカ分散液 (シリカ固形分として) 100部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 21部
ホウ酸 4部
顔料(ミズカシルP78A、水澤化学工業(株)製) 5部
有色顔料A(TB500、大日精化(株)製) 0.01部
有色顔料B(TB906、大日精化(株)製) 0.016部
固形分濃度が13%になるように水で調整し、インク受像層塗布液3とした。
【0083】
(比較例4)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層用添加液1を用いなかった以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0084】
(比較例5)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1にインク受像層用添加液1を添加し1時間撹拌した後に塗工しようとしたが、液が増粘してしまい、校正用インクジェット記録材料を作製することができなかった。
【0085】
(比較例6)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1のミズカシルP78Aを添加しない以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0086】
(比較例7)
実施例1の校正用インクジェット記録材料の製造方法において、インク受像層塗布液1の顔料として、ミズカシルP78Aを5部用いる代わりにローペイクHP−91(ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製、平均粒径1μm)を5部用いる以外は実施例1と同様にして、校正用インクジェット記録材料を作製した。この際のインク受像層の厚みbは30μmであった。
【0087】
<評価方法>
実施例1〜15、比較例1〜7の製造方法によって得られた校正用インクジェット記録材料を、以下に示す方法によって評価した。
【0088】
<面感評価>
得られた校正用インクジェット記録材料の白紙部の面感を校正対象の印刷用紙と比較し、感覚的に評価した。感覚的違いの少ないものを○、違いがやや感じられるものを△、違いが強く感じられるものを×とした。本発明にかかる面感の類似とは、△以上の評価である。なお、今回校正対象の印刷用紙として用いたものは、坪量157.0g/mの市販のA2コート紙(ニューVマット、三菱製紙(株)製)である。
【0089】
<印字画像の見栄え評価>
得られた校正用インクジェット記録材料に、インクジェットプリンター(PX−H8000、セイコーエプソン(株)製)を用いて、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのベタ画像と、JIS X 9204−2004記載の標準画像N1(ポートレート)を印字し、印刷物としての見栄えを総合的に評価した。なお、評価では校正対象の印刷用紙にオフセット印刷で同様の印刷を施したものとの比較で評価した。感覚的違いの少ないものを○、違いがやや感じられるものを△、違いが強く感じられるものを×とした。本発明にかかる印字画像の見栄えの類似とは、△以上の評価である。
【0090】
評価結果について、表1に示した。
【0091】
【表1】

【0092】
表1より、本発明にかかる実施例1〜15の製造方法によって得られた校正用インクジェット記録材料は、白紙の面感が校正対象の印刷用紙に類似し、印字画像の見栄えが校正対象の印刷用紙に類似する。一方、本発明に該当しない比較例1〜7の製造方法によって得られた校正用インクジェット記録材料は、本発明にかかる全ての効果を満足することができない。非吸収性支持体のRa75を変化させた比較例1、2においては、Ra75が変化することで、校正対象の印刷用紙と白紙の面感が類似せず、比較例4においては、水溶性多価金属塩が存在しないことで、インクジェット印刷時のインク定着性が悪化し、印字画像の見栄えが類似しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS−B0601に記載されるカットオフ値0.8mmの中心線平均粗さ(Ra75)が0.5μm以上2.7μm以下である非吸収性支持体上の少なくとも一方の面に、平均二次粒子径が0.5μm以下である無機微粒子、親水性バインダー、及び、該非吸収性支持体のRa75をa(μm)、インク受像層の厚みをb(μm)とした際に、a<r<bで規定される平均粒径r(μm)を有する顔料を含有するインク受像層塗布液に、水溶性多価金属塩を塗布直前にインライン添加して塗布することを特徴とする校正用インクジェット記録材料の製造方法。
【請求項2】
平均二次粒子径が0.5μm以下である無機微粒子の含有量Aに対する、非吸収性支持体のRa75をa(μm)、インク受像層の厚みをb(μm)とした際に、a<r<bで規定される平均粒径r(μm)を有する顔料の含有量Bの比率B/Aが、0.03以上0.21以下であることを特徴とする請求項1記載の校正用インクジェット記録材料の製造方法。
【請求項3】
非吸収性支持体のRa75をa(μm)、インク受像層の厚みをb(μm)とした際に、a<r<bで規定される平均粒径r(μm)を有する顔料が無機顔料である請求項1または2に記載の校正用インクジェット記録材料の製造方法。
【請求項4】
水溶性多価金属塩がジルコニウム塩またはアルミニウム塩である請求項1から3のいずれかに記載の校正用インクジェット記録材料の製造方法。

【公開番号】特開2013−86271(P2013−86271A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225794(P2011−225794)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】