説明

椅子における背板の取付方法

【課題】背板の背凭れフレームへの取付けを極めて簡単かつ確実に行うことができ、併せて着座者が左右側方から包み込まれるような快適な座り心地を得ることができる椅子における背板の取付方法を提供する。
【解決手段】座体1の後部から上方に延出させた背凭れフレーム2の前面に、合成樹脂等の硬質弾性体からなる背板3を支持させる際に、背板3と背凭れフレーム2とを、両者の左右側部における上端部近傍において、一方に設けた第1係止部8に、他方に設けた第1係合部9を上方から嵌合させた後に、前記左右側部における下部において、一方に設けた第2係合部15に、他方に設けた第2係止部14を前後方向から嵌合させることにより、背板3を背凭れフレーム2に支持させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子における座体の後部から上方に延出した背凭れフレームの前面に、合成樹脂等の硬質弾性体からなる背板を取付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背凭れフレームの前面に、硬質弾性体からなる背板を取り付ける方法は、たとえば特許文献1により公知である。
同文献に記載される発明においては、背板の上部に上下方向の長孔を穿設し、この長孔と、背凭れフレームの上部に設けた突軸とを係合させて上下方向への移動を可能とするとともに、背凭れフレームの下部に、円弧状で上向きに開口する左右方向の嵌合溝を設けた包持片を前向きに突設し、背板に、前記包持片と対応する位置に、前記嵌合溝に上方より圧嵌される左右方向の膨出部を設けて、背板を背凭れフレームに支持してある。
これにより、背板が後向きに撓曲可能となっている。しかし、この背板においては、着座者を左右側方から包み込むような撓曲は得られなかった。
【特許文献1】特開2001−128785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、背板の背凭れフレームへの取付けを極めて簡単かつ確実に行うことができ、併せて好ましくは、着座者の背中による後向きの荷重によって、背板の左右側部が適度に撓曲し、着座者が左右側方から包み込まれるような快適な座り心地を容易に得ることができる、椅子における背板の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、上記課題は、特許請求の範囲における各請求項に記載するように、次のようにして解決される。
(1)座体の後部から上方に延出させた背凭れフレームの前面に、合成樹脂等の硬質弾性体からなる背板を支持させる際に、背板と背凭れフレームとを、両者の左右側部における上端部近傍において、一方に設けた第1係止部に、他方に設けた第1係合部を上方から嵌合させた後に、前記左右側部における下部において、一方に設けた第2係合部に、他方に設けた第2係止部を前後方向から嵌合させることにより、背板を背凭れフレームに支持させる椅子における背板の取付方法とする。
【0005】
(2)座体の後部から上方に延出させた背凭れフレームに、合成樹脂等の硬質弾性体からなる背板を支持させる際に、背板と背凭れフレームとを、両者の左右側部における下部において、一方に設けた第1係止部に、他方に設けた第1係合部を上方から嵌合させた後に、前記左右側部における上端部近傍において、一方に設けた第2係合部に、他方に設けた第2係止部を前後方向から嵌合させることにより、背板を背凭れフレームに支持させる椅子における背板の取付方法とする。
【0006】
(3)上記(1)項または(2)項において、第1係止部と第1係合部、および第2係止部と第2係合部とを、それぞれ上下方向の軸線まわりに、相対的に回動可能に嵌合させる。
【0007】
(4)上記(1)項〜(3)項のいずれかにおいて、第1係止部を、上下方向の第1軸部をもって形成し、この第1軸部を支持体により背板または背凭れフレームに固定し、第1係合部を、横断面がほぼC字状の一端がスリット状に開口する上下方向の筒状体の上面の少なくとも一部を閉塞することにより形成し、前記第1軸部を筒状体内に下方から嵌合させるとともに、前記支持体を筒状体における上下方向の前記スリット状開口内に嵌挿させることにより、第1係止部に第1係合部を上方から嵌合させ、かつ第2係合部を、左右1対の係止片を左右方向に適寸離間して設け、両係合片の遊端近傍の対向する内面を、平面視弧状となるように凹ませることにより形成するとともに、第2係止部としての軸部を、前記係合片よりもやや長い上下方向の軸体の上下面に、軸体の径よりもやや大きい上下板を設けて形成し、かつ軸体を、前後方向から前記1対の係合片の遊端間の開口に押しつけて、前記開口を拡開して、平面視弧状に形成された前記対向内面間に嵌合させることにより、第2係止部を第2係合部に嵌合させて、背板を背凭れフレームに支持させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
請求項1記載の発明によれば、第1係止部に、第1係合部を上方から嵌合させた後に、第2係合部に第2係止部を前後方向から嵌合させることにより、背板を背凭れフレームに取付けるものであるため、極めて簡単かつ確実に背板を背凭れフレームに取付けることができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な効果が奏せられる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、第1係止部と第1係合部、および第2係止部と第2係合部とを、それぞれ上下方向の軸線まわりに、相対的に回動可能に嵌合させて背板を背凭れフレームに取付けてあるため、着座者の背中による後向きの荷重による背板の左右側部における変位が容易となり、平面視において後向きに膨出する望ましい形状の撓曲が得られ、着座者が左右側方から包み込まれるような快適な座り心地を容易に得ることができる。
【0011】
請求項4記載の発明によれば、係止部と係合部によって構成される支持部における、上下方向の軸線まわりの回動が容易であるとともに、背板の上下方向の揺動が効果的に防止されるため、一層座り心地が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明を実施した椅子の側面図、図2は、図1におけるII−II線拡大端面図、図4は、図1におけるIV−IV線拡大端面図、図8は、背板の拡大正面図、図9は、背板の拡大背面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明における椅子は、座体1の後部から上方に延出された背凭れフレーム2の前面に、合成樹脂等の硬質弾性体からなる背板3が支持されている。
【0014】
背板3は、図8,図9に示すように、背板3の周縁、すなわち左右側部と上下端部とを高剛性の枠部4とし、このやや縦長のほぼ四角形の枠部4より内方の部位を、着座者の背中による後向きの荷重によって弾性変形する可撓部5としてある。この可撓部5は、前面から後面へ貫通する縦長の開口部6を多数設けることにより弾性変形が容易なように形成されている。
【0015】
背板3と背凭れフレーム2の両者は、図1に示すように、下端部よりも若干上方の部位が、前方へ突出するように屈曲する側面視ほぼくの字状となっている。
【0016】
背板3は、枠部4における前記屈曲部7aと上端近傍とのそれぞれの左右側部において、上下方向の軸線まわりに回動可能に背凭れフレーム2に支持されている。
【0017】
図3は、図2におけるIII−III線断面図、図6は、図1における破線円VI内の要部拡大分解斜視図である。図1〜図3、および図6に示すように、背凭れフレーム2の上端近傍の左右側部に、それぞれ第1係止部8,8が設けられるとともに、背板3の上端近傍の左右側部にそれぞれ第1係合部9,9が設けられ、前記第1係止部8,8を、第1係合部9,9に下方から嵌合させることにより、背板3が背凭れフレーム2に上端部近傍において支持されている。
【0018】
図6に示すように、第1係止部8は、上下方向の第1軸部10をもって形成され、この第1軸部10の後面に設けられた上下方向の支持体11により、背凭れフレーム2の前面に前向きに突設されている。
【0019】
第1係合部9は、横断面がほぼC字状の一端がスリット状に開口する上下方向の筒状体12の上面の一部を閉塞することにより形成されている。第1係止部8における第1軸部10を、第1係合部9における筒状体12内に下方から遊嵌状態で嵌合させるとともに、支持体11を筒状体12におけるスリット状開口13内に嵌挿させることにより、第1軸部10が、上下方向の軸線まわりに筒状体12に対して相対的に回動可能に嵌合されている。
【0020】
図5は、図4におけるV−V線断面図、図7は、図1における破線円VII内の要部拡大分解斜視図である。
【0021】
図1,図4,図5,図7に示すように、背板3の屈曲部7aにおける左右側部に、それぞれ第2係止部14,14が設けられるとともに、背凭れフレーム2の屈曲部7bにおける左右側部に、それぞれ第2係合部15,15が設けられている。この第2係合部15,15に前記第2係止部14,14を前方から嵌合させることにより、背板3が背凭れフレーム2に屈曲部7a,7bにおいて支持されている。
【0022】
図7に示すように、第2係合部15は、左右1対の係合片16,16を、左右方向に適寸離間して設けられるとともに、両係合片16,16の遊端近傍の対向する内面16a,16aを、平面視弧状となるように凹ませることにより形成されている。
【0023】
第2係止部14としての第2軸部17は、前記係合片16よりもやや長い上下方向の軸体18の上下面に、軸体18の径よりもやや大きい上下板19,19を設けることにより形成されている。
【0024】
第2係止部14における軸体18を、前方から第2係合部15における1対の係合片16,16の遊端間の開口20に押しつけて、前記開口20を弾性変形により拡開させて、平面視弧状に形成された対向内面16a,16a間に嵌合させることにより、第2係止部14における第2軸部17が、上下方向の軸線まわりに相対的に回動可能に第2係合部15に嵌合されている。
【0025】
図10は、背板3を背凭れフレーム2に支持させる手順を示す図である。
【0026】
まず、図10(a)、図6に示すように、背板3を背凭れフレーム2の前方上方に位置させて、下方に移動させ、背凭れフレーム2における左右1対の縦フレームの上端近傍に設けられた第1係止部8の第1軸部10を、背板3の枠部4の左右側部における上端部近傍に設けられた第1係合部9の筒状体12に下方から遊嵌状態で嵌合させるとともに、第1軸部10を背凭れフレーム2に固定している支持体11を筒状体12におけるスリット状開口13内に嵌挿させて、図10(b)に示す状態とする。
【0027】
次いで、図10(b)、図7に示すように、背板3の枠部4の左右側部における屈曲部7aに設けられている第2係止部14の軸体18を、背凭れフレーム2の左右1対の縦フレームの屈曲部7bに設けられている第2係合部15における1対の係合片16,16の遊端間の開口20に、前方から押しつけて、前記開口20を拡開させて、両係合片16,16間に嵌合させて、図10(c)に示す状態にする。
【0028】
これにより、背板3は、背凭れフレーム2に、左右側部における上端部近傍および屈曲部7a,7bの4箇所において、充分な強度をもって取付けられ支持される。
【0029】
各支持部においては、軸部10,17が上下方向の軸線まわりに回動可能に支持されている。
【0030】
図11,図12,図13は、それぞれ図8におけるXI-XI線端面図、XII−XII線端面図、XIII−XIII線端面図である。
【0031】
図11に示すように、背板3における枠部4より内方の可撓部5において、屈曲部7aよりも上方の部位における前後方向の肉厚は、左右の枠部4から左右方向の中央へ向かうにしたがって漸次大きくなっている。
【0032】
図11と図12を対比することにより理解されるように、背板3の枠部4より内方の可撓部5において、屈曲部7aよりも上方の部位の前後方向の肉厚D1は、前記屈曲部7aにおける肉厚d1よりも大きく形成されている。
【0033】
さらに、図13に示すように、背板3の前記屈曲部7aよりも上方の可撓部5における上下方向の中央部における前後方向の肉厚D2は、この中央部の上下外方における前後方向の肉厚d2よりも大きく形成されている。
【0034】
このようにすることにより、背板3の屈強部7aより上方の部位における可撓部5の中央部分の過度の撓みが防止され、前記可撓部5における中央部分以外の周辺部分が適度に変位し、図11,図13に破線で示すように、着座者の背を左右上下から包み込むように作用する背板3が得られる。
【0035】
図11,図12に示すように、背板3における枠部4の後面には、上下方向に延びるリブ21a,21bが設けられている。これにより、枠部4の上下方向の曲げ剛性が向上し、好ましい適度の剛性を有する背板3が得られる。
【0036】
図2,図4に示すように、背凭れフレーム2における左右1対の縦フレーム2a,2aの屈曲部7bよりも上方における横断面は、後向きに突出するハ字状に形成されており、縦フレーム2aの前面と、背板3の後面との間には、着座者の背中による後向きの荷重により、背板3の前記可撓部5が後方に撓んで湾曲しうるように、撓み空間22が設けられている。
【0037】
以上、代表的な実施形態を説明したが、たとえば、第1係止部8,第1係合部9と第2係止部14,第2係合部15との両者間で、具体的形態を相互に入れ換えたり、あるいは、背凭れフレーム2と背板3間で、第1係止部8と第1係合部9,または第2係止部14と第2係合部15とを入れ換えたりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を実施した椅子の側面図である。
【図2】図1におけるII−II線拡大端面図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図1におけるIV−IV線拡大端面図である。
【図5】図4におけるV−V線断面図である。
【図6】図1における破線円VI内の要部拡大分解斜視図である。
【図7】同じく、図1における破線円VII内の要部拡大分解斜視図である。
【図8】背板の拡大正面図である。
【図9】背板の拡大背面図である。
【図10】背板を背凭れフレームに支持させる手順を示す図である。
【図11】図8におけるXI−XI線端面図である。
【図12】同じく、図8におけるXII−XII線端面図である。
【図13】同じく、図8におけるXIII−XIII線端面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 座体
2 背凭れフレーム
2a 縦フレーム
3 背板
4 枠部
5 可撓部
6 開口部
7a,7b 屈曲部
8 第1係止部
9 第1係合部
10 第1軸部
11 支持体
12 筒状体
13 スリット状開口
14 第2係止部
15 第2係合部
16 係合片
16a 対向内面
17 第2軸部
18 軸体
19 上板、下板
20 開口
21a,21b リブ
22 撓み空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座体の後部から上方に延出させた背凭れフレームの前面に、合成樹脂等の硬質弾性体からなる背板を支持させる際に、
背板と背凭れフレームとを、両者の左右側部における上端部近傍において、一方に設けた第1係止部に、他方に設けた第1係合部を上方から嵌合させた後に、前記左右側部における下部において、一方に設けた第2係合部に、他方に設けた第2係止部を前後方向から嵌合させることにより、背板を背凭れフレームに支持させることを特徴とする椅子における背板の取付方法。
【請求項2】
座体の後部から上方に延出させた背凭れフレームに、合成樹脂等の硬質弾性体からなる背板を支持させる際に、
背板と背凭れフレームとを、両者の左右側部における下部において、一方に設けた第1係止部に、他方に設けた第1係合部を上方から嵌合させた後に、前記左右側部における上端部近傍において、一方に設けた第2係合部に、他方に設けた第2係止部を前後方向から嵌合させることにより、背板を背凭れフレームに支持させることを特徴とする椅子における背板の取付方法。
【請求項3】
第1係止部と第1係合部、および第2係止部と第2係合部とを、それぞれ上下方向の軸線まわりに、相対的に回動可能に嵌合させたことを特徴とする請求項1または2記載の椅子における背板の取付方法。
【請求項4】
第1係止部を、上下方向の第1軸部をもって形成し、この第1軸部を支持体により背板または背凭れフレームに固定し、第1係合部を、横断面がほぼC字状の一端がスリット状に開口する上下方向の筒状体の上面の少なくとも一部を閉塞することにより形成し、前記第1軸部を筒状体内に下方から嵌合させるとともに、前記支持体を筒状体における上下方向の前記スリット状開口内に嵌挿させることにより、第1係止部に第1係合部を上方から嵌合させ、かつ
第2係合部を、左右1対の係止片を左右方向に適寸離間して設け、両係合片の遊端近傍の対向する内面を、平面視弧状となるように凹ませることにより形成するとともに、第2係止部としての軸部を、前記係合片よりもやや長い上下方向の軸体の上下面に、軸体の径よりもやや大きい上下板を設けて形成し、かつ軸体を、前後方向から前記1対の係合片の遊端間の開口に押しつけて、前記開口を拡開して、平面視弧状に形成された前記対向内面間に嵌合させることにより、第2係止部を第2係合部に嵌合させて、背板を背凭れフレームに支持させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の椅子における背板の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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