説明

椅子型簡易便器

【課題】 座面から立ち上がり易くするとともに、使用する人の背丈や体格あるいは座高に十分に対応できるように背もたれ深さを調整可能となし、さらに手の不自由な方や腕力が劣る人のことを考慮して開閉式便座と開閉式座りパットの開閉をほとんど力を要することなく軽快に行うことができる椅子型簡易便器の提供。
【解決手段】 脚体に高さ調整可能に支持された座部枠体に開閉式便座を有し、前記座部枠体には背もたれが一体に設けられ、前記便座の両サイド部に肘掛けを備え、便座の上に載置する開閉式座りパットを有する椅子型簡易便器であって、前記座部枠体の前部を内側に傾斜した前面板および該前面板の下部内面に沿って上下にスライド可能に装着された湾曲板とから構成し、前記背もたれの背当て材が前後方向に移動可能となして背もたれ深さを調整可能となし、前記開閉式便座の開閉動作力の軽減と倒れを防止するための弾性支持手段と、前記開閉式座りパットの開閉動作力を軽減するための弾性手段を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高齢者や足腰の弱い人、身体の不自由な人が、介護者の手助けを借りずに自力で安全にかつ容易に、しかも清潔に使用できる椅子型の簡易便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者や足腰の弱い人、身体の不自由な人のために開発された椅子型の簡易便器は、各種施設や病院、一般家庭において広く普及しつつある。
この種の従来の簡易便器としては、例えば椅子型の便器本体の座面部に蝶番で取着された開閉式の便座の下にバケツ形便器(図面省略)が取付けられ、かつ便座の上側に蝶番で取着された開閉式の座りパットが設けてあり、便座の両サイドには肘掛けが取付けられたものがある。この椅子型の簡易便器は、便器使用時には座りパットを起こして背もたれに相重ね、この座りパットを背もたれにして用を足し、一方、椅子として使用する場合は、前記座りパットを倒して便座の上に相重ねるようになっている。しかしながら、この種の椅子型簡易便器は両サイドに設けられている肘掛けが邪魔になり便座の横から出入りできない不便さがあった。かかる対策として、座面部の両サイドに設ける肘掛けを、一方を短く、他方を長くしたものが知られている(特許文献1)。すなわち、この種の椅子型便器は、座面部の両サイドに設ける肘掛けを長把手と短把手とで構成したもので、その長把手と短把手は左右の取付け位置が互いに交換可能となっている。しかるに、座面部の両サイドに設ける肘掛けとして、一方を短く、他方を長くした把手を採用した従来の椅子型簡易便器の場合、肘掛けとして用いる長把手と短把手は対になっているため、その取付け位置が互いに交換可能であっても、便器として使用する場合も、椅子として使用する場合も肘掛けは長さが異なったままで使用することになり、便座の横から出入りできる点は便利であっても、特に椅子として長時間使用する場合には快適性に欠けるという問題点があった。
【0003】
かかる問題点を解決するため、本発明者は、便器としても、椅子としても快適に使用でき、また本体を木製とした場合には家具調性の高い椅子型簡易便器を先に提案した(特許文献2、特許文献3参照)。
例えば特許文献3に記載されている椅子型簡易便器は、脚体に高さ調整可能に支持された座部枠体に開閉式便座を有し、前記座部枠体には背もたれが一体に設けられ、前記便座には着脱式の便器を有し、前記便座の両サイド部には肘掛けを兼ねる一対の着脱式把手を備え、便座の上に載置する開閉式座りパットを有する椅子型簡易便器であって、前記脚体は相平行する左右一対の接地部材と該接地部材の上面に立設した垂直板とで構成され、該脚体に前記座部枠体がねじピン挿通方式の高さ調整機構により高さ調整可能に取付けられ、前記開閉式便座と開閉式座りパットはそれぞれ前記座部枠体の背面側に相重なるように着脱可能に取着され、前記肘掛けを兼ねる左右一対の着脱式把手は、それぞれ長把手部と該長把手部の端部より直角に屈曲した垂直部および該垂直部より長把手部と相平行するごとく直角に屈曲した短把手部を有する1本の部材で構成され、かつ前記座部枠体と背もたれ部の側面に高さ位置可変に着脱可能に取付けられ、それぞれ長把手部を上側に、短把手部を下側に、または短把手部を上側に、長把手部を下側にして取着できる構造となしたことを特徴とするものである。
【0004】
上記構成の椅子型簡易便器の場合は、肘掛けとして用いる長把手と短把手を適宜選択して使用できる機能を有するので、便座の横から簡単に出入りできるばかりでなく、使用する人の身長や体格、あるいは身体の状態や腕力などに応じて短把手と長把手を容易に使い分けできる上、高齢者や足腰の弱い人、身体の不自由な人でも安全かつ快適に使用することができる利点を有する。また、便座および座りパット共に容易に取外し可能となっているので、便座および座りパットを簡単に交換できる上、それぞれ丸ごと清掃することができ、常に清潔に使用できるという点も優れている。さらに、本体を木製とした場合には家具調性の高い椅子型簡易便器を提供することができる点も優れた特徴の一つとしてあげることができる。
【特許文献1】特公平5−38619号公報
【特許文献2】特許第3199367号公報
【特許文献3】特許第3199368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献3に記載されている椅子型簡易便器の場合は、座面から立ち上がる際に座部枠体の前面板より内側に足を位置させることができないため、若干立ち上がりにくいという難点があること、また背もたれの背当て材が前後方向に移動できないように固着されて背もたれ深さを調整できないため、座面に座る時に使用する人の背丈や体格あるいは座高に十分に対応できないこと、さらに手の不自由に方や腕力が劣る人の場合、開閉式便座と開閉式座りパットの開閉動作をスムースに行うことができない場合がある等の欠点があり、改善が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記した特許文献3に記載されている椅子型簡易便器の欠点を解消するためになされたもので、座部枠体の前面部を改良して座面から立ち上がり易くするとともに、使用する人の背丈や体格あるいは座高に十分に対応できるように背もたれ深さを調整可能となし、さらに手の不自由な方や腕力が劣る人のことを考慮して開閉式便座と開閉式座りパットの開閉をほとんど力を要することなく軽快に行うことができる椅子型簡易便器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る椅子型簡易便器は、脚体に高さ調整可能に支持された座部枠体に開閉式便座を有し、前記座部枠体には背もたれが一体に設けられ、前記便座には着脱式の便器を有し、前記便座の両サイド部には跳ね上げ式または着脱式の肘掛けを備え、便座の上に載置する開閉式座りパットを有する椅子型簡易便器であって、前記脚体は相平行する左右一対の接地部材と該接地部材の上面に立設した広幅の垂直板とで構成され、該脚体に前記座部枠体がねじピン挿通方式の高さ調整機構により高さ調整可能に取付けられ、前記開閉式便座と開閉式座りパットがそれぞれ前記座部枠体の背面側に相重なるように着脱可能に取着された椅子型簡易便器において、前記座部枠体は左右両側板と後面板、内側に傾斜した前面板および該前面板の下部内面に沿って上下にスライド可能に装着された湾曲板とから構成され、前記背もたれは背当て材が左右一対の支柱間に前後方向に移動可能に装着されて背もたれ深さを調整可能となし、前記開閉式便座の開閉動作力の軽減と倒れを防止するための弾性支持手段と、前記開閉式座りパットの開閉動作力を軽減するための弾性手段を備えたことを特徴とするものである。
また、前記弾性支持手段にはバネシリンダーを、前記弾性手段にはキックバネをそれぞれ使用し、前記バネシリンダーは開閉式便座を弾性支持するごとく前記座部枠体に取付けられ、前記キックバネは前記開閉式座りパットに一定方向の回動力を付勢するごとく該座りパットの枢着部に装着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の椅子型簡易便器は、以下に記載する効果を奏する。
(1)座部枠体の前面部を内側に傾斜した前面板と、当該前面板の下部内面に沿って上下にスライド可能に装着された湾曲板とで構成したことにより、足をより内側に位置させることが可能となり立ち上がり易い。
(2)背もたれの背当て材を前後方向に移動可能に装着して背もたれ深さを調整可能となしたことにより、使用する人の背丈や体格あるいは座高に十分に対応できる。
(3)開閉式便座をバネシリンダー等の弾性支持手段にて支持する方式を採用したことにより、手の不自由な方や腕力が劣る人であってもほとんど力を要することなく容易に開閉することができる上、背もたれ側に立てた当該便座の倒れも防止することができる。
(4)開閉式座りパットにキックバネ等の弾性手段にて一定方向の回動力を付勢したことにより、手の不自由な方や腕力が劣る人であってもほとんど力を要することなく容易に開閉することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における座部枠体は、前面および左右両側面を囲む矩形の枠体からなり、この座部枠体の前面板を内側に傾斜して設けると共に、この前面板の下部に当該前面板の内面に沿って上下にスライド可能な湾曲板を備え、左右両側面の背面側開口端部に背もたれを固着している。
【0010】
前記座部枠体を支持する左右一対の脚体は、それぞれ細幅の長尺材からなる接地部材と、該接地部材の上面に立設した広幅の板材(矩形板等)からなる垂直板とで構成され、かつ前記垂直板の中央部には高さ調整用の垂直に長いガイド孔が穿設され、さらに該垂直板の内側面に高さ調整用の突起が前記ガイド孔の左右に高さ方向に間隔を置いて複数個設けられている。一方、座部枠体の左右両側面の内面には前記突起が嵌入する有底穴が設けられ、脚体との結合は前記垂直板を座部枠体の左右両側面の内側に相重ねた状態で予め座部枠体の左右両側面に前記垂直板のガイド孔と対応する位置に穿設したピン孔より締結用ねじピンを挿入して垂直板のガイド孔に貫通させるとともに、脚体側に設けた高さ調整用の突起を座部枠体側に設けた有底穴に凹凸嵌合させて締結用ねじピンを締付けることにより行われるようになっている。すなわち、締結用ねじピンを緩めた状態で座部枠体を上下動させて脚体側に設けた高さ調整用の突起を座部枠体側に設けた有底穴に凹凸嵌合させることにより座部の高さ位置を調整できるようになっている。
【0011】
本発明における背もたれは、座部枠体の背面側端部に固着された左右一対の支柱と該支柱間に横設された背当て材とで構成され、かつ左右一対の支柱には水平方向に長いガイド孔が穿設され、背当て材の両端部に突設した締結用ねじピンが前記ガイド孔に挿入され、該ねじピンをガイド孔内の任意の位置で締めつけることにより背もたれ深さを調整可能となしている。この背もたれ深さの調整手段としては、前記ねじピンに替えて先端に板状のフランジを有するピンを用い、さらに一端に前記フランジが嵌合する凹部を有するブラケットを用い、該ブラケットを前記ガイド孔の部分に凹凸嵌合方式により着脱可能に取付けて当該背もたれを左右一対の支柱に取着する方式を採用した場合には、前記ブラケットの前後の向きを逆にするだけで背もたれ深さを簡単に調整することができる。
【0012】
開閉式便座は、当該便座の背もたれ側底面に横設した1本のロッドの両端部を、座部枠体の背もたれ側左右両側面に設けた溝部に上から着脱可能に凹凸嵌合させ、該ロッドを支点に開閉自在となし、さらに座部枠体の後面側に設けられた背もたれの補強板の内壁にブラケットを介して取付けたバネシリンダーにより当該便座を弾性支持した構成となしたもので、不使用時には背もたれ側に縦向きに支持されると共に前記バネシリンダーにより背もたれ側に軽く押圧されて倒れることがなく、使用時には当該便座に対して座面側に軽く力を付与するだけでバネシリンダーの作用により座部枠体の前面板の上面に載置され、当該便座を開く時(背もたれ側に起こす時)には当該便座に対して背もたれ側に軽く力を付与するだけでバネシリンダーの作用により背もたれ側に回動して縦向きに支持されるようになっている。なお、この開閉式便座には便器が着脱可能に取付けられるようになっている。この種の簡易便器に使用する便器としては、バケツ形が一般的である。
【0013】
この開閉式便座の上に載置する開閉式座りパットは、二つ折構造のパットの付け根部を背もたれの支柱にL形のブラケットを介して回動可能に枢着され、かつ前記枢着部に装着したキックバネにより一定方向の回動力が付勢されて当該座りパットの開閉動作力が軽減される構造となしたもので、使用時には当該座りパットに対して座面側に軽く力を付与するだけでキックバネの作用により前記開閉式便座の上に相重なり、当該座りパットを開く時(背もたれ側に起こす時)には当該座りパットに対して背もたれ側に軽く力を付与するだけでキックバネの作用により背もたれ側に回動して二つに折り畳まれて縦向きに支持されるようになっている。
【0014】
跳ね上げ式肘掛けは、後端部が背もたれの支柱に回動可能に枢着され、前端部が座部枠体の側面板に支持部材を介して着脱可能に取着され、かつ側面板と支持部材との着脱部には手動式のロック機構を備え、跳ね上げる場合にはロックを解除して後端部の枢着部を支点に上下方向に回動させる方式となしたものを用いることができる。また、着脱式肘掛けとしては、例えば長把手部と短把手部を有する部材を座部枠体の両方の側面板と背もたれ部の支柱にねじピン等にて着脱可能に取付け、同じ位置で向きを180度変えることによって長把手部と短把手部の上下位置を逆にして取着できる構造のもの、すなわち長把手部を上側に、短把手部を下側に、または短把手部を上側に、長把手部を下側にして取着できる構造のものを用いることができる。
【実施例】
【0015】
図1はこの発明に係る椅子型簡易便器の構造例を示す斜視図、図2は同上簡易便器の使用状態を示す斜視図、図3は同上簡易便器の使用状態における縦断正面図、図4は同上簡易便器の座部枠体と脚体の結合部分を示す要部縦断面図、図5は同上簡易便器の背もたれの背当て材と支柱の取付け部を拡大して示す斜視図、図6は同上取付け部の拡大縦断面図、図7は同上簡易便器の開閉式便座を支持するバネシリンダーを示す拡大縦断面図、図8は同上簡易便器の開閉式座りパットの取付け部を拡大して示す斜視図、図9は同上簡易便器の肘掛けの他の実施例を示す側面図、図10は同上簡易便器を椅子として用いる例を示す斜視図であり、1は座部枠体、2は脚体、3は背もたれ、4は開閉式便座、5は座りパット、6Aは跳ね上げ式肘掛け、6Bは着脱式肘掛け、7は締結用ねじピン、8はバケツ形便容器である。
【0016】
すなわち、この発明に係る椅子型簡易便器は、前面板1−1および左右両側面板1−2で構成された矩形の枠体からなる座部枠体1と、この座部枠体1を高さ調整可能に支持する左右一対の脚体2および、背もたれ3とで便器本体を構成したもので、前記座部枠体1の前面板1−1は内側に傾斜してその両端部が左右両側面板1−2に取着され、さらに該前面板1−1の下部には当該前面板の内面に沿って上下にスライド可能な湾曲板1−3が取付けられている。前記湾曲板1−3は、座部枠体1の左右両側面板1−2に突設したピン1−3aを当該湾曲板の両端部に設けたガイド溝1−3bにスライド可能に凹凸嵌合させて支持している(図3)。
【0017】
座部枠体1を支持する左右一対の脚体2は、便器本体の奥行き長さとほぼ同程度の長さを有する細幅の長尺材からなる接地部材2−1と、該接地部材2−1の上面に立設した広幅の矩形板からなる垂直板2−2とで構成され、座部枠体1の高さ調整機構は図3、図4に示すごとく前記垂直板2−2の中央部に穿設した垂直に長いガイド孔2−2aと、同垂直板2−2の内側面に前記ガイド孔の左右に高さ方向に間隔を置いて複数個設けた高さ調整用突起2−2bと、座部枠体1の左右両側面板1−2の内面に設けた前記高さ調整用突起2−2bが嵌入する有底穴1−2aと、座部枠体1の左右両側面板1−2に前記垂直板2−2のガイド孔2−2aと対応する位置に穿設したピン孔より挿入して垂直板2−2のガイド孔2−2aに貫通させて締付ける締結用ねじピン7とからなり、座部枠体1と脚体2の締結は脚体2の垂直板2−2を座部枠体1の左右両側面の内側に相重ねた状態で締結用ねじピン7を垂直板2−2を貫通させてガイド孔2−2aに挿入するとともに、脚体2側に設けた高さ調整用の突起2−2bを座部枠体側に設けた有底穴1−2aに凹凸嵌合させて締結用ねじピン7を締付けることにより行われるようになっている。すなわち、締結用ねじピン7を緩めた状態で座部枠体1を上下動させて脚体2側に設けた高さ調整用の突起2−2を座部枠体1側に設けた有底穴1−2aに凹凸嵌合させることにより座部の高さ位置を調整できるようになっている。なお、脚体2の接地部材2−1には四隅にキャスターやゴム製のキャップ形接地部材等を取付けてもよい。
【0018】
背もたれ3は、座部枠体1の背面側端部に固着された左右一対の支柱3−1と該支柱間に横設された背当て材3−2および当該支柱の下部に横設された補強材3−5とで構成されている。前記背当て材3−2は背もたれ深さを調整可能に支柱3−1に取着されており、その背もたれ深さの調整手段としては、図5、図6に示すように、左右一対の支柱3−1の上部に背当て材3−2の幅に合わせて水平方向に長い上下二つのガイド孔3−3を穿設し、このガイド孔3−3に背当て材3−2の両端部に突設したフランジ3−4a付き締結用ねじピン3−4を貫通し、一端に前記フランジ3−4aが嵌合する凹部3−5aを有するブラケット3−5を前記ガイド孔3−3の部分に凹凸嵌合方式により着脱可能に取付けて当該背当て材3−2を左右一対の支柱に取着する方式を採用することができる。すなわち、この方式の場合は、ブラケット3−5の前後の向きを逆にするだけで背もたれ深さを簡単に調整することができる。
【0019】
開閉式便座4は、当該便座の背もたれ側底面に横設した1本のロッド4−1の両端部を、座部枠体1の背もたれ側左右両側面板1−2に設けた溝部1−2cに上から着脱可能に凹凸嵌合させ、該ロッド4−1を支点に開閉自在となし、さらに背もたれ3の補強板3−5の内壁にブラケット4−3を介して取付けたバネシリンダー4−2により当該便座を弾性支持した構成となしたもので、前記バネシリンダー4−2は、図7に示すように長尺の筒体4−2aと、該筒体4−2aに内嵌されたコイルバネ4−2bにより外方へ付勢されたロッド4−2cと、筒体4−2aに穿設した係合孔4−2fに突起4−2gを介して係止されたフック4−2dとで構成され、前記ブラケット4−3の先端に設けられたジョイント4−3aにバネシリンダー4−2のフック4−2dが係合され、ロッド4−2cの上端部が開閉式便座4にブラケット4−2eを介して接続されて開閉式便座4が当該バネシリンダー4−2により弾性支持されている。
すなわち、この開閉式便座4は、不使用時には背もたれ側に縦向きに支持されると共に前記バネシリンダー4−2により背もたれ側に軽く押圧されて倒れることがなく、使用時には当該便座に対して座面側に軽く力を付与するだけでバネシリンダー4−2の作用により座部枠体1の前面板1−1の上面に載置され、当該便座を開く時(背もたれ側に起こす時)には当該便座に対して背もたれ3側に軽く力を付与するだけでバネシリンダー4−2の作用により背もたれ3側に回動して縦向きに支持されるようになっている。この開閉式便座4にはその開口4−1の下方にバケツ形便容器9が吊架方式(図面省略)などにより着脱可能に取付けられるようになっている。
【0020】
この開閉式便座4の上に載置する開閉式座りパット5は、ほぼ同一大きさの2枚のパット単体をその接合部から二つ折りできるように布あるいは蝶番等で回動自在に接続して構成したもので、その取付け構造は図8に示すように、当該パットの付け根部を背もたれの支柱3−1にL形のブラケット5−1を介してねじ5−3により回動可能に枢着され、かつ前記枢着部に装着したキックバネ5−2により一定方向の回動力が付勢されて当該座りパットの開閉動作力が軽減される構造となしたもので、使用時には当該座りパットに対して座面側に軽く力を付与するだけでキックバネ5−2の作用により前記開閉式便座4の上に相重なり、当該座りパットを開く時(背もたれ側に起こす時)には当該座りパットに対して背もたれ3側に軽く力を付与するだけでキックバネ5−2の作用により背もたれ3側に回動して二つに折り畳まれて縦向きに支持されるようになっている。5−4は座りパット側の固定ねじである。
【0021】
跳ね上げ式肘掛け6Aは、その後端部を背もたれ3の支柱3−1に軸ピン6A−1にて上下方向に可動可能に枢着され、かつ前端側に設けたジョイント6A−2に軸ピン6A−3にて上下方向に回動可能に枢着された支持部材6A−4が座部枠体1の左右両側面板1−2に軸ピン6A−6にて枢着された接合突起6A−5に着脱可能に嵌合されて水平に支持されると共に、前記支持部材6A−4の下端部に枢着したL形ストッパー6A−7を前記接合突起6A−5の真下に回動位置させることによってロック(抜け止め)され、L形ストッパー6A−7を横方向に回動位置させることによってロックが解除される仕組みとなっている。
【0022】
また、図9に示す着脱式肘掛け6Bは、長把手部6B−1と短把手部6B−2および長把手部と短把手部をつなぐ連結部材6B−3とで構成され、長把手部6B−1と短把手部6B−2をそれぞれ前記座部枠体1の左右両側面板1−2と背もたれ3の支柱3−1の両側面に固定ねじ6B−4にて着脱可能となしており、したがってこの左右一対の肘掛け6Bの場合は、同じ位置で向きを180度変えることによって長把手部6B−1と短把手部6B−2の上下位置を逆に、すなわち長把手部6B−1を上側に、短把手部6B−2を下側に、または短把手部6B−2を上側に、長把手部6B−1を下側にして取付けることができるようになっている。
【0023】
上記構造の椅子型簡易便器において、便器として使用する場合は、例えば図2、図3に示すごとく、跳ね上げ式肘掛け6Aをロックした状態にして、座部枠体1の上に載置した開閉式便座4の上の二つ折り開閉式座りパット5を図示のごとく背もたれ3側に縦向きに支持させておく。なお、開閉式便座4の横から出入りする場合は、跳ね上げ式肘掛け6Aのロックを解除して跳ね上げておく。一方、椅子として使用する場合は、図10に示すように、前記座りパット5を倒して開閉式便座4の上に相重ねる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の椅子型簡易便器は、使用する人の身長や体格、あるいは腕力などに対応できるのみならず、高齢者や足腰の弱い人、身体の不自由な人でも介護者の手助けを借りずに自力で安全にかつ容易に、しかも清潔に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に係る椅子型簡易便器の構造例を示す斜視図である。
【図2】同上簡易便器の使用状態を示す斜視図である。
【図3】同上簡易便器の使用状態における縦断正面図である。
【図4】同上簡易便器の座部枠体と脚体の結合部分を示す要部縦断面図である。
【図5】同上簡易便器の背もたれの背当て材と支柱の取付け部を拡大して示す斜視図である。
【図6】同上背もたれの背当て材と支柱の取付け部の拡大縦断面図である。
【図7】同上簡易便器の開閉式便座を支持するバネシリンダーを示す拡大縦断面図である。
【図8】同上簡易便器の開閉式座りパットの取付け部を拡大して示す斜視図である。
【図9】同上簡易便器の肘掛けの他の実施例を示す側面図である。
【図10】同上簡易便器を椅子として用いる例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 座部枠体
1−1 前面板
1−2 側面板
1−3 湾曲板
2 脚体
3 背もたれ
4 開閉式便座
4−2 バネシリンダー
5 座りパット
5−2 キックバネ
6A 跳ね上げ式肘掛け
6B 着脱式肘掛け
7 締結用ねじピン
8 バケツ形便容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚体に高さ調整可能に支持された座部枠体に開閉式便座を有し、前記座部枠体には背もたれが一体に設けられ、前記便座には着脱式の便器を有し、前記便座の両サイド部には跳ね上げ式または着脱式の肘掛けを備え、便座の上に載置する開閉式座りパットを有する椅子型簡易便器であって、前記脚体は相平行する左右一対の接地部材と該接地部材の上面に立設した広幅の垂直板とで構成され、該脚体に前記座部枠体がねじピン挿通方式の高さ調整機構により高さ調整可能に取付けられ、前記開閉式便座と開閉式座りパットがそれぞれ前記座部枠体の背面側に相重なるように着脱可能に取着された椅子型簡易便器において、前記座部枠体は左右両側板と後面板、内側に傾斜した前面板および該前面板の下部内面に沿って上下にスライド可能に装着された湾曲板とから構成され、前記背もたれは背当て材が左右一対の支柱間に前後方向に移動可能に装着されて背もたれ深さを調整可能となし、前記開閉式便座の開閉動作力の軽減と倒れを防止するための弾性支持手段と、前記開閉式座りパットの開閉動作力を軽減するための弾性手段を備えたことを特徴とする椅子型簡易便器。
【請求項2】
前記弾性支持手段にはバネシリンダーを、前記弾性手段にはキックバネをそれぞれ使用し、前記バネシリンダーは開閉式便座を弾性支持するごとく前記座部枠体に取付けられ、前記キックバネは前記開閉式座りパットに一定方向の回動力を付勢するごとく該座りパットの枢着部に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の椅子型簡易便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−110189(P2006−110189A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302122(P2004−302122)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000102234)ウチヱ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】